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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137691
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】温度を測定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/125 20210101AFI20240927BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20240927BHJP
   C23C 14/54 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01K11/125
C23C16/52
C23C14/54 D
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220981
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023046434
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】呉 同
【テーマコード(参考)】
2F056
4K029
4K030
5F004
【Fターム(参考)】
2F056VF12
2F056VF16
4K029AA06
4K029AA24
4K029BD01
4K029DA03
4K029EA08
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA01
4K030FA10
4K030JA10
4K030KA17
4K030KA36
4K030KA37
4K030KA39
4K030KA41
4K030LA15
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB29
5F004CA04
5F004CB09
(57)【要約】
【課題】光干渉を利用して測定対象物の温度を適切に測定するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】温度を測定するシステムは、光源と、基板処理装置のチャンバ内に配置される測定対象物に設けられるセンシング部材であって、測定対象物との間に空間を有するように測定対象物と接合されるカバー部材と、カバー部材と測定対象物との間に配置され、測定対象物と熱的に接続され、カバー部材との間にギャップを形成し、測定対象物の温度に応じてカバー部材との相対位置が変位する変位部材と、を有する、センシング部材と、チャンバの外部に設けられ、光をセンシング部材に出射する出射部と、チャンバの外部に設けられ、反射光を受光する受光部と、反射光のスペクトルを検出する分光器と、スペクトルと温度との関係を予め記憶する記憶部と、検出されたスペクトルと記憶された関係とに基づいて測定対象物の温度を算出する制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
基板処理装置のチャンバ内に配置される測定対象物に設けられるセンシング部材であって、前記測定対象物との間に空間を有するように前記測定対象物と接合されるカバー部材と、前記カバー部材と前記測定対象物との間に配置され、前記測定対象物と熱的に接続され、前記カバー部材との間にギャップを形成し、前記測定対象物の温度に応じて前記カバー部材との相対位置が変位するように構成される変位部材と、を有する、前記センシング部材と、
前記チャンバの外部に設けられ、前記光源からの光を前記センシング部材に向けて出射するように構成される出射部と、
前記チャンバの外部に設けられ、前記センシング部材からの反射光を受光するように構成される受光部と、
前記受光部によって受光された反射光のスペクトルを検出するように構成される分光器と、
前記スペクトルと温度との関係を予め記憶するように構成される記憶部と、
前記分光器によって検出されたスペクトルと前記記憶部に記憶された関係とに基づいて前記測定対象物の温度を算出するように構成される制御部と、
を備える、温度を測定するシステム。
【請求項2】
前記光源は、白色光を発光するように構成された光源又は広帯域光源であり、
前記出射部及び前記受光部は、前記チャンバの側壁に設けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記変位部材はバイモルフ構造を有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記測定対象物と気密に接合される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項5】
前記測定対象物はシリコンで構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記測定対象物は前記基板処理装置の上部電極又は基板である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記センシング部材に設けられ、前記出射部からの光を前記センシング部材に向けて出射するとともに、前記センシング部材からの光を前記受光部に向けて出射するように構成される第1光学部材をさらに備え、
前記出射部及び前記受光部は一つの光学部材で構成され、
前記一つの光学部材は前記チャンバに設けられた一つの窓に対応するように配置される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記測定対象物に設けられ、前記出射部からの光を前記第1光学部材に向けて出射するとともに、前記第1光学部材からの光を前記受光部に向けて出射するように構成される第2光学部材をさらに備え、
前記第1光学部材は、前記第2光学部材からの光を前記センシング部材に向けて出射するとともに、前記センシング部材からの光を前記第2光学部材に向けて出射するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
センシング部材を設けた測定対象物を準備する工程であって、前記センシング部材は、前記測定対象物との間に空間を有するように前記測定対象物と接合されるカバー部材と、前記カバー部材と前記測定対象物との間に配置され、前記測定対象物と熱的に接続され、前記カバー部材との間にギャップを形成し、前記測定対象物の温度に応じて前記カバー部材との相対位置が変位するように構成される変位部材と、を有する、工程と、
基板処理装置のチャンバ内に前記センシング部材を設けた前記測定対象物を配置する工程と、
前記チャンバの外部から前記センシング部材に向けて白色光を出射する工程と、
前記チャンバの外部において、前記センシング部材からの反射光を受光する工程と、
受光された反射光のスペクトルを検出する工程と、
検出されたスペクトルと、スペクトルと温度との予め取得された関係とに基づいて前記測定対象物の温度を算出する工程と、
を含む、温度を測定する方法。
【請求項10】
前記出射する工程は、前記基板処理装置のチャンバ内においてプラズマ処理中に実行される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、温度を測定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光干渉を利用して測定対象物の温度を測定するシステムを開示する。このシステムにおいては、基板処理装置のチャンバ内に配置された基板に対して近赤外光が出射され、反射光に基づいて基板の温度が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-127087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、光干渉を利用して測定対象物の温度を適切に測定するシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、温度を測定するシステムである。システムは、光源、センシング部材、出射部、受光部、分光器、記憶部、及び、制御部を備える。センシング部材は、基板処理装置のチャンバ内に配置される測定対象物に設けられる。センシング部材は、カバー部材及び変位部材を備える。カバー部材は、測定対象物との間に空間を有するように測定対象物と接合される。変位部材は、カバー部材と測定対象物との間に配置され、測定対象物と熱的に接続され、カバー部材との間にギャップを形成し、測定対象物の温度に応じてカバー部材との相対位置が変位するように構成される。出射部は、チャンバの外部に設けられ、光源からの光をセンシング部材に向けて出射するように構成される。受光部は、チャンバの外部に設けられ、センシング部材からの反射光を受光するように構成される。分光器は、受光部によって受光された反射光のスペクトルを検出するように構成される。記憶部は、スペクトルと温度との関係を予め記憶するように構成される。制御部は、分光器によって検出されたスペクトルと記憶部に記憶された関係とに基づいて測定対象物の温度を算出するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、光干渉を利用して測定対象物の温度を適切に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図2】例示的実施形態に係る光干渉システムを概略的に示す図である。
図3図2に示されるセンシング部材の構成の一例を示す図である。
図4図3に示される変位部材の一例を示す上面図である。
図5図3に示される変位部材の他の例を示す上面図である。
図6】スペクトルの一例を概略的に示す図である。
図7】例示的実施形態に係る温度測定方法を概略的に示すフローチャートである。
図8】他の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図9】他の例示的実施形態に係る光干渉システムを概略的に示す図である。
図10】センシング部材の配置位置の一例を示す図である。
図11】光学部材を用いた場合におけるセンシング部材の配置位置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
分光器を用いて測定対象物からの反射スペクトルを取得する方式の干渉計は、真空のチャンバ内に配置された測定対象物の温度を測定できる。この干渉計においては、測定光は測定対象物を透過する必要がある。このため、測定対象物の光学的な物性によっては、測定対象物の温度を測定できない場合がある。また、測定対象物の厚さ変化を温度変化として検出するおそれがある。本開示は、光干渉を利用して測定対象物の温度を適切に測定するシステム及び方法を提供する。
【0010】
本開示の一態様は、温度を測定するシステムである。システムは、光源、センシング部材、出射部、受光部、分光器、記憶部、及び、制御部を備える。センシング部材は、基板処理装置のチャンバ内に配置される測定対象物に設けられる。センシング部材は、カバー部材及び変位部材を備える。カバー部材は、測定対象物との間に空間を有するように測定対象物と接合される。変位部材は、カバー部材と測定対象物との間に配置され、測定対象物と熱的に接続される。変位部材は、カバー部材との間にギャップを形成し、測定対象物の温度に応じてカバー部材との相対位置が変位するように構成される。出射部は、チャンバの外部に設けられ、光源からの光をセンシング部材に向けて出射するように構成される。受光部は、チャンバの外部に設けられ、センシング部材からの反射光を受光するように構成される。分光器は、受光部によって受光された反射光のスペクトルを検出するように構成される。記憶部は、スペクトルと温度との関係を予め記憶するように構成される。制御部は、分光器によって検出されたスペクトルと記憶部に記憶された関係とに基づいて測定対象物の温度を算出するように構成される。
【0011】
このシステムにおいては、基板処理装置のチャンバ内に配置される測定対象物にセンシング部材が設けられる。センシング部材の変位部材が測定対象物の温度に応じて変位し、カバー部材と変位部材との相対位置が変位する。つまり、カバー部材と変位部材とのギャップ長が測定対象物の温度に応じて変化する。カバー部材と変位部材とのギャップ長に応じて、センシング部材からの反射光のスペクトルは変化する。反射光のスペクトルと温度との関係は予め記憶部に記憶されている。記憶された反射光のスペクトルと温度との関係に基づいて、検出された反射光のスペクトルから測定対象物の温度が算出される。このように、このシステムは、測定対象物にセンシング部材を設けることにより、測定対象物の光学的な物性に関わらず測定対象物の温度を測定できる。よって、このシステムは、光干渉を利用して測定対象物の温度を適切に測定できる。
【0012】
一実施形態においては、光源は、白色光を発光するように構成された光源又は広帯域光源であり、出射部及び受光部は、チャンバの側壁に設けられてもよい。一般的に、基板処理装置は、プラズマを発生させるための電極又は基板を支持するための静電チャックなどを、チャンバの上部及び下部に備える。出射部及び受光部がチャンバの側壁に設けられることにより、複雑な構造を有する基板処理装置のチャンバの上部及び下部に、光を透過させるための貫通孔及び窓を設けることが回避される。しかしながら、チャンバの側壁から出射される測定光がレーザ光である場合、レーザ光の反射光を適切に受光するためには、部品の位置及び角度の精密な調整が要求される。一実施形態においては、白色光の光源を採用することによって、レーザ光に比べて許容される角度のずれが大きくなるため、部品の位置及び角度の精密な調整が軽減される。部品調整作業が大きく低減されるため、測定効率を飛躍的に向上することができる。
【0013】
一実施形態においては、変位部材はバイモルフ構造を有してもよい。バイモルフ構造は、例えば二つの熱膨張係数の異なる材料が張り合わされて構成される。これにより、測定対象物の温度に応じてカバー部材と変位部材との相対位置が変位する。
【0014】
一実施形態においては、カバー部材は、測定対象物と気密に接合されてもよい。これにより、システムは、プラズマ処理中であっても測定対象物の温度を測定できる。
【0015】
一実施形態においては、測定対象物はシリコンで構成されてもよい。一実施形態においては、測定対象物は基板処理装置の上部電極又は基板であってもよい。
【0016】
本開示の他の態様は、温度を測定する方法である。方法は、準備する工程、配置する工程、出射する工程、受光する工程、検出する工程、及び、算出する工程を含む。準備する工程は、センシング部材を設けた測定対象物を準備する。センシング部材は、カバー部材及び変位部材を備える。カバー部材は、測定対象物との間に空間を有するように測定対象物と接合される。変位部材は、カバー部材と測定対象物との間に配置され、測定対象物と熱的に接続される。変位部材は、カバー部材との間にギャップを形成し、測定対象物の温度に応じてカバー部材との相対位置が変位するように構成される。配置する工程は、基板処理装置のチャンバ内にセンシング部材を設けた測定対象物を配置する。出射する工程は、チャンバの外部からセンシング部材に向けて白色光を出射する。受光する工程は、チャンバの外部において、センシング部材からの反射光を受光する。検出する工程は、受光された反射光のスペクトルを検出する。算出する工程は、検出されたスペクトルと、スペクトルと温度との予め取得された関係とに基づいて測定対象物の温度を算出する。この方法によれば、上述したシステムと同一の効果を奏する。
【0017】
一実施形態においては、出射する工程は、基板処理装置のチャンバ内においてプラズマ処理中に実行されてもよい。この場合、方法は、プラズマ処理中において測定対象物の温度を測定できる。
【0018】
以下、図面を参照して、種々の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び各図面において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0019】
[基板処理装置の概要]
光干渉システム(システムの一例)が導入される基板処理装置の一例を説明する。図1は、例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図1に示されるプラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置10は、チャンバ本体12を備える。チャンバ本体12は、略円筒形状を有しており、内部空間12sを提供する。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから形成される。チャンバ本体12の内壁面には、耐プラズマ性を有する処理が施される。例えば、チャンバ本体12の内壁面には、陽極酸化処理が施されている。チャンバ本体12は、電気的に接地されている。
【0020】
チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。被加工物は、内部空間12sの中に搬入されるとき、また、内部空間12sから搬出されるときに、通路12pを通る。この通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉可能である。
【0021】
チャンバ本体12の底部上には、支持部13が設けられる。支持部13は、絶縁材料から形成される。支持部13は、略円筒形状を有する。支持部13は、内部空間12sの中で、チャンバ本体12の底部から鉛直方向に延在する。支持部13は、ステージ14を支持する。ステージ14は、内部空間12sの中に設けられる。
【0022】
ステージ14は、下部電極18及び静電チャック20を有する。ステージ14は、電極プレート16を更に備え得る。電極プレート16は、例えばアルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状である。下部電極18は、電極プレート16上に設けられる。下部電極18は、例えばアルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状である。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続される。
【0023】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられる。静電チャック20の上面の上には、被加工物が載置される。静電チャック20は、誘電体から形成された本体を有する。静電チャック20の本体内には、膜状の電極が設けられる。静電チャック20の電極は、スイッチを介して電源22に接続される。電源22は、直流電源であってもよく、交流電源であってもよい。静電チャック20の電極に電源22からの電圧が印加されると、静電チャック20と被加工物との間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、被加工物は静電チャック20に引き付けられ、静電チャック20によって保持される。
【0024】
ステージ14上には、被加工物のエッジを囲むように、エッジリングERが配置される。エッジリングERは、エッチングの面内均一性を向上させるために設けられる。エッジリングERは、シリコン、炭化シリコン、又は石英などから形成され得る。
【0025】
下部電極18の内部には、流路18fが設けられる。流路18fには、チャンバ本体12の外部に配置されたチラーユニット26から配管26aを介して冷媒が供給される。流路18fに供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニット26に戻される。プラズマ処理装置10では、静電チャック20上に載置された被加工物の温度が、冷媒と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0026】
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と被加工物の裏面との間に供給する。
【0027】
プラズマ処理装置10は、上部電極30を更に備える。上部電極30は、ステージ14の上方に設けられる。上部電極30は、電極プレート34を含む。電極プレート34の下面は、内部空間12s側の下面であり、内部空間12sを画成する。電極プレート34は、発生するジュール熱の少ない低電気抵抗の導電体又は半導体から形成され得る。電極プレート34は、一例としてシリコンで構成される。電極プレート34には、複数のガス吐出孔34aが形成される。複数のガス吐出孔34aは、当該電極プレート34をその板厚方向に貫通する。
【0028】
電極プレート34の上部には、電極プレート34を保持するクーリングプレート37が配置される。クーリングプレート37は、クーリングプレート本体部37Aを備える。クーリングプレート本体部37Aは、アルミニウムといった導電性材料から形成され得る。クーリングプレート37は、クーリングプレート本体部37Aの下面に静電チャック35を有する。静電チャック35の吸着力により、電極プレート34はクーリングプレート本体部37Aに密着する。電極プレート34は、静電チャック35の吸着力によってチャンバ本体12の上部に支持される。部材32及び係止部39は、電極プレート34を下方から支持し、電極プレート34の落下を防止する支持部材である。部材32及び係止部39は、例えば絶縁性を有する材料から形成される。係止部39は、下方に回動可能に構成されてもよい。
【0029】
クーリングプレート本体部37Aの内部には、流路37cが設けられる。流路37cには、チャンバ本体12の外部に配置されたチラーユニット(不図示)から冷媒が供給される。流路37cに供給された冷媒は、チラーユニットに戻される。これにより、クーリングプレート本体部37Aは温度調整される。プラズマ処理装置10では、電極プレート34の温度は、クーリングプレート本体部37Aとの熱交換によって調整される。
【0030】
クーリングプレート本体部37Aの内部には、複数のガス導入路37aが下方に延びるように設けられる。電極プレート34の上面とクーリングプレート本体部37Aの下面との間には、複数のガス導入路37aに対応して複数のガス拡散室37bが設けられる。そして、ガス拡散室37bから電極プレート34に向けて厚さ方向に延びるように複数のガス供給流路37eが設けられる。ガス供給流路37eは、電極プレート34の複数のガス吐出孔34aに処理ガスを供給する。クーリングプレート本体部37Aには、複数のガス拡散室37bに処理ガスを導く複数のガス導入口37dが形成される。ガス導入口37dには、ガス供給管38が接続される。
【0031】
ガス供給管38には、ガス供給部GSが接続される。一実施形態では、ガス供給部GSは、ガスソース群40、バルブ群42、及び流量制御器群44を含む。ガスソース群40は、流量制御器群44及びバルブ群42を介して、ガス供給管38に接続される。ガスソース群40は、複数のガスソースを含む。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含む。流量制御器群44は、複数の流量制御器を含む。複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースは、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続される。
【0032】
プラズマ処理装置10では、チャンバ本体12の内壁に沿って、シールド46が着脱自在に設けられる。シールド46は、支持部13の外周にも設けられる。シールド46は、チャンバ本体12にエッチング副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウム製の部材にY等のセラミックスを被覆することにより構成される。
【0033】
支持部13とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられる。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウム製の部材にY等のセラミックスを被覆することにより構成される。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成される。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられる。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続される。排気装置50は、圧力制御弁、及び、ターボ分子ポンプといった真空ポンプを有する。
【0034】
プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備える。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波(高周波電力)を発生する電源である。第1の高周波の周波数は、例えば、27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。第1の高周波電源62は、整合器66及び電極プレート16を介して下部電極18に接続される。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有する。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して、上部電極30に接続されてよい。
【0035】
第2の高周波電源64は、被加工物にイオンを引き込むための第2の高周波(別の高周波電力)を発生する電源である。第2の高周波の周波数は、第1の高周波の周波数よりも低い。第2の高周波の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。第2の高周波電源64は、整合器68及び電極プレート16を介して下部電極18に接続される。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有する。
【0036】
プラズマ処理装置10は、直流電源部70(直流電源の一例)を更に備え得る。直流電源部70は、上部電極30に接続される。直流電源部70は、負の直流電圧を発生し、当該直流電圧を上部電極30に与えることが可能である。
【0037】
プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり得る。制御部Cntは、プラズマ処理装置10の各部を制御する。制御部Cntでは、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部Cntでは、表示装置により、プラズマ処理装置10の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部Cntの記憶部には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラム及びレシピデータが格納される。制御部Cntのプロセッサが制御プログラムを実行して、レシピデータに従ってプラズマ処理装置10の各部を制御することにより、後述する方法がプラズマ処理装置10で実行される。
【0038】
[光干渉システムの概要]
光干渉システムは、基板処理装置のチャンバ内に配置された測定対象物の温度を測定する。以下では、一例として、測定対象物を、チャンバ内に配置されるウエハ(基板の一例)とするが、測定対象物はウエハに限定されず、チャンバ内に配置される部品であれば何でもよい。ウエハは一例として、シリコンで構成される。
【0039】
図2は、例示的実施形態に係る光干渉システムを概略的に示す図である。図2に示されるように、光干渉システム1は、プラズマ処理装置10に適用される。光干渉システム1は、チャンバ本体12の側壁に設けられた第1窓82及び第2窓84を介して光を出射及び受光し、ウエハWの温度を測定する。
【0040】
光干渉システム1は、光源80、第1集光レンズ81(出射部の一例)、センシング部材83、第2集光レンズ85(受光部の一例)、分光器86、記憶部87、及び、制御装置88(制御部の一例)を備える。
【0041】
光源80は、一例として、白色光を発光する白色光源である。光源80は、例えば、キセノンランプ又はLED(Light Emission Diode)光源であって、面発光特性を有する。
【0042】
第1集光レンズ81は、チャンバ本体12の外部に設けられ、光源80からの白色光をセンシング部材83に向けて出射するように構成される。第1集光レンズ81は、白色光を集光し、センシング部材83上で焦点を結ぶ収束光をセンシング部材83の表面へ向けて出射する。チャンバ本体12の側壁には第1窓82が設けられる。第1集光レンズ81は、第1窓82を介して、チャンバ本体12内に収容されたセンシング部材83に向けて白色光を出射する。
【0043】
センシング部材83は、プラズマ処理装置10のチャンバ本体12内に配置されるウエハWに設けられる。センシング部材83は、2つの平行な反射面を有し、ウエハWの温度に応じて2つの反射面の間のギャップ長を変位させる部材である。センシング部材の詳細は後述される。
【0044】
第2集光レンズ85は、チャンバ本体12の外部に設けられ、センシング部材83からの反射光を受光するように構成される。チャンバ本体12の側壁には、第1窓82と向き合う位置に第2窓84が設けられる。第2集光レンズ85は、第2窓84を介して、チャンバ本体12内に収容されたセンシング部材83の反射光を受光する。第2集光レンズ85は、反射光を集光し、分光器86へ出射する。反射光は、2つの平行な反射面それぞれの反射光を含む干渉光となる。
【0045】
分光器86は、第2集光レンズ85によって受光された反射光のスペクトルを検出するように構成される。分光器86は、例えば、分光機構861及び検出部862を有する。分光機構861は、光を波長ごとに所定の分散角で分散させる。分光機構861の一例は回折格子などである。検出部862は、分光機構861によって分散された光を検出する。検出部862の一例はCCD(Charge Coupled Device)である。CCDの素子の数がサンプリング数となる。
【0046】
検出部862は、反射光の波長ごとの強度をスペクトルとして検出する。スペクトルは、波長と反射率との関係を示す反射率曲線であってもよい。上述したセンシング部材83の2つの平行な反射面のギャップ長に応じて、反射率曲線が変化する。つまり、反射率曲線を検出することにより、相関関係からギャップ長が算出される。センシング部材83は、ウエハWの温度に応じてギャップ長を変化させるため、ギャップ長つまり反射率曲線が検出されると、相関関係からウエハWの温度が算出される。
【0047】
記憶部87は、反射率曲線と温度との関係を予め記憶するように構成される。反射率曲線と温度との関係は、基準となるデータであり、事前に取得される。記憶部87は、材質ごとに、反射率曲線と温度との関係を記憶してもよい。
【0048】
制御装置88は、分光器86及び記憶部87に接続される。制御装置88は、分光器86によって検出された反射率曲線と記憶部87に記憶された関係とに基づいてウエハWの温度を算出するように構成される。制御装置88は、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり得る。
【0049】
[センシング部材の詳細]
図3は、図2に示されるセンシング部材の構成の一例を示す図である。図4は、図3に示される変位部材の一例を示す上面図である。図3に示されるように、センシング部材83は、測定対象物であるウエハWに熱的に接続された状態で設けられる。センシング部材83は、カバー部材830及び変位部材831を有する。
【0050】
カバー部材830は、ウエハWとの間に空間830sを有するようにウエハWと接合される。カバー部材830は、一例として箱型であり、上面830a及び下面830bを有する天井部分を有する。カバー部材830の天井部分は、光源80からの光を透過する材料で構成される。カバー部材830は、一例として石英で構成される。カバー部材830は、ウエハWと気密に接合され得る。この場合、空間830sにプラズマなどが入り込むことによって変位部材831が処理されることが抑制される。カバー部材830がウエハWと気密に接合されることで、プラズマ処理中であってもウエハWの温度を計測できる。
【0051】
変位部材831は、カバー部材830とウエハWとの間に配置される。変位部材831は、ウエハWと熱的に接続される。変位部材831は、ウエハWと接続する2つの支持部832を備える。2つの支持部832は、熱伝導性に優れた接着剤832aなどによってウエハWに接合される。
【0052】
変位部材831は、プラットフォーム833を有する。プラットフォーム833は、一例として上面視で円形である。プラットフォーム833は、支持部832、第1腕部834及び第2腕部834aからなる支持体によって、両持ち構造で支持される。これにより、プラットフォーム833とカバー部材830との間にギャップGが形成される。
【0053】
プラットフォーム833は、カバー部材830の下面830bと平行な上面833aを有する。つまり、プラットフォーム833の上面833aと、カバー部材830の下面830bとが上述した2つの反射面に相当する。
【0054】
変位部材831は、ウエハWの温度に応じてカバー部材830との相対位置が変位するように構成される。一例として、変位部材831の第1腕部834それぞれには、第1腕部834とは熱膨張率の異なる材料からなる膜835が設けられる。一例として、第1腕部834はシリコンで構成され、膜835はアルミニウムで構成される。このように、変位部材831は、第1腕部834及び膜835からなるバイモルフ構造を有する。バイモルフ構造は、一例として、MEMS製造方法で作成できる。ウエハWから伝導された熱によってバイモルフ構造は変位し、プラットフォーム833を上下に移動させる。つまり、プラットフォーム833の上面833aは、ウエハWの温度に応じて変位する。これにより、プラットフォーム833の上面833aと、カバー部材830の下面830bとのギャップ長が変化し、ギャップ長の変化に応じて反射光のスペクトルが変化する。バイモルフ構造の長さ、つまり、第1腕部834及び膜835の長さを調整することによって、プラットフォーム833の変位量、つまり、センサの感度を調節可能である。また、バイモルフ構造を構成する第1腕部834及び膜835の厚さを調整することによって、センサの感度を調整可能である。
【0055】
変位部材831は、3以上の支持体に支持されてもよい。図5は、図3に示される変位部材の他の例を示す上面図である。図5に示されるように、変位部材831Aにおいては、プラットフォーム833が、支持部832、第1腕部834及び第2腕部834aからなる3つの支持体によって支持される。変位部材831Aのその他の構造は、変位部材831と同一である。変位部材831Aは、変位部材831と比べて、プラットフォーム833とカバー部材830との平行度を向上させることができる。
【0056】
[反射スペクトルの詳細]
図6は、スペクトルの一例を概略的に示す図である。図6に示されるスペクトルは、横軸が波長[nm]であり、縦軸が反射率[%]である。なお、縦軸は強度であってもよい。図6に示されるスペクトルは、ギャップGの長さに応じて、ピーク位置が移動する。一例としてギャップ長を長くした場合、実線で示すスペクトルが右側にシフトする(図中の破線で示すスペクトル)。つまり、温度とスペクトルとの関係を事前に測定しておくことにより、検出されたスペクトルの位置に基づいて温度を導くことができる。なお、制御装置88は、事前に測定された温度とスペクトルとの関係と、検出されたスペクトルとをマッチングさせる際に、フィッティング関数を用いて類似するスペクトルを特定してもよいし、極値の位置同士をマッチングさせてもよい。
【0057】
[温度測定方法]
図7は、例示的実施形態に係る温度測定方法を概略的に示すフローチャートである。図7に示されるように、方法MTは、準備工程S10、配置工程S12、出射工程S14、受光工程S16、検出工程S18及び算出工程S20を含む。
【0058】
図7に示されるように、最初に準備工程S10が実行される。準備工程S10においては、ウエハWにセンシング部材83が設けられる。
【0059】
続いて、配置工程S12において、図示しないロボットアームなどが、センシング部材83が設けられたウエハWをチャンバ本体12内に収容する。
【0060】
続いて、出射工程S14において、第1集光レンズ81は、チャンバ本体12の側壁の第1窓82からセンシング部材83へ向けて白色光を出射する。
【0061】
続いて、受光工程S16において、第2集光レンズ85は、チャンバ本体12の側壁の第2窓84からセンシング部材83からの反射光を受光する。
【0062】
続いて、検出工程S18において、分光器86は、受光された反射光のスペクトルを検出する。分光器86は、スペクトルとして反射率曲線を検出してもよい。
【0063】
最後に、算出工程S20において、制御装置88は、記憶部87を参照し、検出されたスペクトルと、スペクトルと温度との予め取得された関係とに基づいてウエハWの温度を算出する。算出工程S20が終了すると、図7に示すフローチャートは終了する。
【0064】
(実施形態のまとめ)
光干渉システム1においては、プラズマ処理装置10のチャンバ本体12内に配置されるウエハWにセンシング部材83が設けられる。センシング部材83の変位部材831がウエハWの温度に応じて変位し、カバー部材830と変位部材831との相対位置が変位する。つまり、カバー部材830と変位部材831とのギャップ長がウエハWの温度に応じて変化する。カバー部材830と変位部材831とのギャップ長に応じて、センシング部材83からの反射光のスペクトルは変化する。反射光のスペクトルと温度との関係は予め記憶部87に記憶されている。記憶された反射光のスペクトルと温度との関係に基づいて、検出された反射光のスペクトルからウエハWの温度が算出される。このように、光干渉システム1は、ウエハWにセンシング部材83を設けることにより、ウエハWの光学的な物性に関わらずウエハWの温度を測定できる。よって、光干渉システム1は、光干渉を利用してウエハWの温度を適切に測定できる。
【0065】
また、プラズマ処理装置10は、プラズマを発生させるための電極又は基板を支持するための静電チャックなどを、チャンバ本体12の上部及び下部に備える。第1集光レンズ81及び第2集光レンズ85がチャンバ本体12の側壁に設けられることにより、複雑な構造を有するプラズマ処理装置10のチャンバ本体12の上部及び下部に、光を透過させるための貫通孔及び窓を設けることが回避される。しかしながら、チャンバ本体12の側壁から出射される測定光がレーザ光である場合、レーザ光の反射光を適切に受光するためには、部品の位置及び角度の精密な調整が要求される。光干渉システム1は、白色光の光源を採用することによって、レーザ光に比べて許容される角度のずれが大きくなるため、部品の位置及び角度の精密な調整が軽減される。部品調整作業が大きく低減されるため、光干渉システム1は、測定効率を飛躍的に向上することができる。
【0066】
光干渉システム1において、変位部材831がバイモルフ構造を有するため、ウエハWの温度に応じてカバー部材830と変位部材831との相対位置を変位させることができる。光干渉システム1において、カバー部材830がウエハWと気密に接合されることによって、光干渉システム1は、プラズマ処理中であってもウエハWの温度を測定できる。
【0067】
(変形例)
本開示の実施形態は、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0068】
例えば、測定対象物は、シリコンで構成された上部電極であってもよい。光源80は、白色光源(380 nm~780 nmの間の波長帯域)に限定されない。光源80は、広帯域光源であるSLD(Super Luminescent Diode)が用いられてもよい。広帯域光源はレーザの単一波長と異なり、ある程度帯域(一般的に100nm以上)をもつ光源である。
【0069】
一実施形態においては、光干渉システムは、センシング部材に設けられ、出射部からの光をセンシング部材に向けて出射するとともに、センシング部材からの光を受光部に向けて出射するように構成される第1光学部材をさらに備え、出射部及び受光部は一つの光学部材で構成され、一つの光学部材はチャンバに設けられた一つの窓に対応するように配置されてもよい。以下、図面を用いて概説する。
【0070】
図8は、他の例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図8に示される光干渉システム1A(システムの一例)は、チャンバ本体12の側壁に設けられた第1窓82を介して光を出射及び受光し、ウエハWの温度を測定する。つまり、光干渉システム1Aは、光干渉システム1と比較して、チャンバ本体12の側壁に窓が一つあればウエハWの温度を測定できる点が相違する。以下では、光干渉システム1との相違点に係る構成及び機能を中心に説明する。
【0071】
光干渉システム1Aは、検出装置90、フォーカーサ91(第1光学部材の一例)、センシング部材83、記憶部87、及び、制御装置88を備える。センシング部材83、記憶部87、及び、制御装置88は、光干渉システム1と同一である。
【0072】
検出装置90は、白色光をフォーカーサ91に出射するとともに、フォーカーサ91からの光(戻り光)を受光するように構成される。検出装置90の詳細は後述する。
【0073】
フォーカーサ91は、センシング部材83に設けられる。フォーカーサ91は、センシング部材83のカバー部材830(図3参照)の上面830a上に固定される。フォーカーサ91は、検出装置90からの光をセンシング部材83に向けて出射するとともに、センシング部材83からの光を検出装置90に向けて出射するように構成される。フォーカーサ91の詳細は後述する。
【0074】
センシング部材83は、フォーカーサ91の光を入射し、図3に示されるプラットフォーム833の上面833aと、カバー部材830の下面830bとで光を反射させ、フォーカーサ91へ光を出射する。プラットフォーム833の上面833aは、ウエハWの温度に応じて変位する。これにより、プラットフォーム833の上面833aと、カバー部材830の下面830bとのギャップ長が変化し、ギャップ長の変化に応じて反射光のスペクトルが変化する。
【0075】
検出装置90は、反射光のスペクトルを取得して制御装置88へ出力する。制御装置88は、光干渉システム1で説明したとおり、記憶部87を参照し、検出されたスペクトルと、スペクトルと温度との予め取得された関係とに基づいてウエハWの温度を算出する。
【0076】
図9は、他の例示的実施形態に係る光干渉システムを概略的に示す図である。図9に示されるように、検出装置90は、光源901、ビームスプリッタ902、コリメータ903(出射部及び受光部を構成する光学部材の一例)、及び、分光器904を備える。
【0077】
光源901は、光源80と同一の構成を有する。光源901は、一例として、白色光を発光する白色光源である。光源901は、例えば、キセノンランプ又はLED光源であって、面発光特性を有する。
【0078】
ビームスプリッタ902は、光束を分離させる光学部材である。ビームスプリッタ902は、例えば直角プリズムを接続して構成される。ビームスプリッタ902は、光源901からの光を第1窓82へ透過させるとともに、戻り光を分光器904へ出射するように構成される。
【0079】
コリメータ903は、光源901からの白色光をセンシング部材83に向けて出射するように構成される。コリメータ903は、光源901の白色光を平行光としてセンシング部材83へ向けて出射する。チャンバ本体12の側壁には第1窓82が設けられる。コリメータ903は、第1窓82を介して、チャンバ本体12内に収容されたセンシング部材83に向けて白色光を出射する。
【0080】
センシング部材83上には、フォーカーサ91が設けられる。フォーカーサ91は、集光レンズ911及びプリズム912を有する。集光レンズ911は、入射した光を集光する。プリズム912は、集光レンズ911によって集光された光を、センシング部材83へ出射する。プリズム912は、センシング部材83からの戻り光を集光レンズ911へ出射する。集光レンズ911は、戻り光を平行光とし、コリメータ903へ戻り光を出射する。コリメータ903は戻り光を集光する。ビームスプリッタ902は、戻り光を分光器904へ出射する。
【0081】
分光器904は、分光器86と同一の構成を有する。分光器904は、コリメータ903によって受光された戻り光(反射光)のスペクトルを検出するように構成される。
【0082】
以上、図8及び図9に示される光干渉システム1Aによれば、コリメータ903が出射部及び受光部として機能するため、チャンバ本体12の側壁に窓が一つあればウエハWの温度を測定できる。
【0083】
図10は、光干渉システム1Aにおける、センシング部材の配置位置の一例を示す図である。図10は、図9を上面視した概略図である。図10に示されるように、フォーカーサ91が設けられたセンシング部材83は、検出装置90の光軸Lと重なるように、ウエハWに配置され得る。例えば、ウエハW上の第1位置P1にセンシング部材83が設けられることにより、検出装置90に近いウエハW端部の温度が測定される。例えば、ウエハW上の第2位置P2にセンシング部材83が設けられることにより、ウエハW中央の温度が測定される。例えば、ウエハW上の第3位置P3にセンシング部材83が設けられることにより、検出装置90から遠いウエハW端部の温度が測定される。このように、光干渉システム1Aは、光軸Lと重なるウエハW上の任意の位置で温度を測定できる。また、光干渉システム1Aは、平行光を用いるため、光干渉システム1と比較して、測定位置に起因する誤差を低減できる。
【0084】
一実施形態によれば、光干渉システムは、測定対象物に設けられ、出射部からの光を第1光学部材に向けて出射するとともに、第1光学部材からの光を受光部に向けて出射するように構成される第2光学部材をさらに備え、第1光学部材は、第2光学部材からの光をセンシング部材に向けて出射するとともに、センシング部材からの光を第2光学部材に向けて出射するように構成されてもよい。以下、図面を用いて説明する。
【0085】
図11は、光学部材を用いた場合におけるセンシング部材の配置位置の一例を示す図である。図11に示されるように、光干渉システム1Aは、プリズム92(第2光学部材の一例)をさらに備える。プリズム92は、ウエハWに予め設けられる。プリズム92は、一例として、光軸Lと、センシング部材83から光軸Lへの垂線との交点に配置される。プリズム92は、コリメータ903からの光をフォーカーサ91に向けて出射するとともに、フォーカーサ91からの光をコリメータ903に向けて出射するように構成される。プリズム92を用いることにより、センシング部材83を光軸Lと重ならない位置(例えば第4位置P4、第5位置P5)に配置したとしても、戻り光(反射光)のスペクトルが検出される。よって、光干渉システム1Aは、ウエハW上の任意の位置で温度を測定できる。
【0086】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E8]に記載する。
[E1]
光源と、
基板処理装置のチャンバ内に配置される測定対象物に設けられるセンシング部材であって、前記測定対象物との間に空間を有するように前記測定対象物と接合されるカバー部材と、前記カバー部材と前記測定対象物との間に配置され、前記測定対象物と熱的に接続され、前記カバー部材との間にギャップを形成し、前記測定対象物の温度に応じて前記カバー部材との相対位置が変位するように構成される変位部材と、を有する、前記センシング部材と、
前記チャンバの外部に設けられ、前記光源からの光を前記センシング部材に向けて出射するように構成される出射部と、
前記チャンバの外部に設けられ、前記センシング部材からの反射光を受光するように構成される受光部と、
前記受光部によって受光された反射光のスペクトルを検出するように構成される分光器と、
前記スペクトルと温度との関係を予め記憶するように構成される記憶部と、
前記分光器によって検出されたスペクトルと前記記憶部に記憶された関係とに基づいて前記測定対象物の温度を算出するように構成される制御部と、
を備える、温度を測定するシステム。
[E2]
前記光源は、白色光を発光するように構成された光源又は広帯域光源であり、前記出射部及び前記受光部は、前記チャンバの側壁に設けられる、[E1]に記載のシステム。
[E3]
前記変位部材はバイモルフ構造を有する、[E1]又は[E2]に記載のシステム。
[E4]
前記カバー部材は、前記測定対象物と気密に接合される、[E1]~[E3]の何れか一項に記載のシステム。
[E5]
前記測定対象物はシリコンで構成される、[E1]~[E4]の何れか一項に記載のシステム。
[E6]
前記測定対象物は前記基板処理装置の上部電極又は基板である、[E1]~[E5]の何れか一項に記載のシステム。
[E7]
前記センシング部材に設けられ、前記出射部からの光を前記センシング部材に向けて出射するとともに、前記センシング部材からの光を前記受光部に向けて出射するように構成される第1光学部材をさらに備え、
前記出射部及び前記受光部は一つの光学部材で構成され、
前記一つの光学部材は前記チャンバに設けられた一つの窓に対応するように配置される、[E1]~[E6]の何れか一項に記載のシステム。
[E8]
前記測定対象物に設けられ、前記出射部からの光を前記第1光学部材に向けて出射するとともに、前記第1光学部材からの光を前記受光部に向けて出射するように構成される第2光学部材をさらに備え、
前記第1光学部材は、前記第2光学部材からの光を前記センシング部材に向けて出射するとともに、前記センシング部材からの光を前記第2光学部材に向けて出射するように構成される、[E7]に記載のシステム。
[E9]
センシング部材を設けた測定対象物を準備する工程であって、前記センシング部材は、前記測定対象物との間に空間を有するように前記測定対象物と接合されるカバー部材と、前記カバー部材と前記測定対象物との間に配置され、前記測定対象物と熱的に接続され、前記カバー部材との間にギャップを形成し、前記測定対象物の温度に応じて前記カバー部材との相対位置が変位するように構成される変位部材と、を有する、工程と、
基板処理装置のチャンバ内に前記センシング部材を設けた前記測定対象物を配置する工程と、
前記チャンバの外部から前記センシング部材に向けて白色光を出射する工程と、
前記チャンバの外部において、前記センシング部材からの反射光を受光する工程と、
受光された反射光のスペクトルを検出する工程と、
検出されたスペクトルと、スペクトルと温度との予め取得された関係とに基づいて前記測定対象物の温度を算出する工程と、
を含む、温度を測定する方法。
[E10]
前記出射する工程は、前記基板処理装置のチャンバ内においてプラズマ処理中に実行される、[E9]に記載の方法。
【符号の説明】
【0087】
1,1A…光干渉システム(システムの一例)、10…プラズマ処理装置(基板処理装置の一例)、12…チャンバ本体、80,901…光源、81…第1集光レンズ(出射部の一例)、83…センシング部材、85…第2集光レンズ(受光部の一例)、86…分光器、87…記憶部、88…制御装置(制御部の一例)、91…フォーカーサ(第1光学部材の一例)、92…プリズム(第2光学部材の一例)、830…カバー部材、831…変位部材、903…コリメータ(出射部及び受光部の一例)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11