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特開2024-137771組成物、接着剤、接着剤を用いた積層体、積層体の製造方法、及び積層体の解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137771
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】組成物、接着剤、接着剤を用いた積層体、積層体の製造方法、及び積層体の解体方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20240927BHJP
   C09J 145/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240927BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
C08G59/32
C09J145/00
C09J163/00
C09J11/06
C09J5/00
C09J7/30
C08G59/68
B32B27/26
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031676
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2023048484
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】金子 祐三
(72)【発明者】
【氏名】ナゲンドララオ スレッシュラオ
(72)【発明者】
【氏名】水野 康子
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB02C
4F100AG00B
4F100AK53A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CB04A
4F100JB14A
4F100JL11A
4F100JN01B
4F100YY00B
4J004AA06
4J004AA13
4J004AB05
4J036AJ03
4J036AJ09
4J036AJ14
4J036AJ15
4J036AJ18
4J036AJ24
4J036GA22
4J036GA26
4J036HA02
4J036JA06
4J040DK001
4J040EC001
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA12
4J040KA23
4J040KA25
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA42
4J040MA02
4J040MA05
4J040MA10
4J040PA00
4J040PA30
4J040PA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接着と解体を簡便に行うことができ、耐熱性にも優れる接着剤に好適な組成物を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物及び光重合開始剤を含有する組成物である。

(式(1)中、Xは2価の基を表す。Y~Yは各々独立に水素原子または置換若しくは無置換の1価の有機基を表す。Zは置換または無置換の3価以上5価以下の炭素数が3~100の有機基を表す。nは3以上5以下の整数を表す。Zに結合するn個の構造単位は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物及び光重合開始剤を含む、組成物。
【化1】
(式(1)中、Xは2価の基を表す。Y~Yは各々独立に水素原子または置換若しくは無置換の1価の有機基を表し、Y~Yのうちの少なくとも1つの基は、下記式(2)および式(3)で構成される基である。Zは置換または無置換の3価以上5価以下の炭素数が3~100の有機基を表す。nは3以上5以下の整数を表す。Zに結合するn個の構造単位は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
【化2】
【化3】
(式(2)中、Rは酸素原子またはメチレン基、もしくは炭素数2から10個の分岐構造を有していてもよいアルキレン基であり、Rは、式(3)の置換基であり、R、R位のいずれか1カ所に結合している。*は結合手を表す。Rはメチレン基が0から10個連なったアルキレン基であり、またRはメチレン基が1から5個連なったアルキレン基である。Rのメチレン基が0個、かつRのメチレン基が1個の場合、式(3)は環状構造とならず、RはRに結合している。)
【請求項2】
前記式(1)において、Zが芳香族炭化水素基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Zが、複数の芳香族炭化水素基を含み、該芳香族炭化水素基同士は連結基により連結している、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Zが、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、エステル基、シリル基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表される化合物が熱解離性を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
全固形分中の前記式(1)で表される化合物の含有量が30質量%以上である、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
エポキシモノマーをさらに含む、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~3の何れか一項に記載の組成物からなる接着剤。
【請求項9】
基材A、接着層及び基材Bをこの順に有する積層体であって、前記接着層が請求項1~3の何れか一項に記載の組成物を硬化してなる樹脂層である、積層体。
【請求項10】
前記基材A及び基材Bの少なくとも何れか一方の基材の全光線透過率が80%以上である、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
基材A、接着層及び基材Bをこの順に有する積層体の製造方法であって、前記基材A又は前記基材Bに、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物を塗布する工程(a)、前記組成物を介して前記基材Aと前記基材Bを貼り合わせる工程(b)、及び前記組成物に光を照射して接着層を形成する工程(c)を有する、積層体の製造方法。
【請求項12】
基材A、接着層及び基材Bをこの順に有する積層体の解体方法であって、前記接着層が請求項1~3の何れか一項に記載の組成物を硬化してなる樹脂層であり、前記接着層を100℃以上に加熱する工程を有する、積層体の解体方法。
【請求項13】
2つの部材を接合する方法であって、少なくとも一方の部材に請求項1~3の何れか一項に記載の組成物を塗布する工程(d)、前記塗布した組成物上に他方の部材を配置する工程(e)、及び前記組成物に光を照射することにより前記組成物を硬化させる工程(f)を有する、部材の接合方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により接合された部材の解体方法であって、前記硬化された接着層を100℃以上に加熱する工程を有する、接合部材の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着と解体を簡便に行うことができる接着剤に好適な組成物、接着剤、該接着剤を用いた積層体、該積層体の製造方法、及び該積層体の解体方法に関する。また、2つの部材の接合方法及び接合された部材の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
解体性接着剤とは、使用後に、特定の刺激により接着力を低下させ、接着(接合)部を容易に解体することができる接着剤である。異種材料の分別回収や不良部品の交換の用途など、資源の有効利用やリサイクルの観点から、様々な技術分野で重要度が増している。
【0003】
解体性接着剤の代表例として、熱膨張性マイクロカプセル等の発泡剤を混入させた接着剤がある。これらの接着剤においては、加熱または温水への浸漬によって接着剤に含まれる発泡剤が膨張し、接着力が低下することにより、接着(接合)部を解体分離することができる(非特許文献1及び2)。
また、特許文献1では、刺激によりガスを発生する、ガス発生剤を含有する光硬化性刺激剥離型接着剤組成物が開示されている。また、特許文献2では熱可逆結合ならびにアクリレート重合反応性基を有し、アゾまたはペルオキシドを開始剤としたフリーラジカル重合によって合成されたポリマー架橋体を形成する一方、閾値以上への加熱処理により解体可能な、熱可逆的ホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】材料の科学と工学,2004年,41号,No.2,17-21項
【非特許文献2】日本接着学会誌,2008年,44号,No.4,19-24項
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-188586号公報
【特許文献2】特表2012-530150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1及び2に開示された解体性接着剤は、30~50質量%もの多量のマイクロカプセルの添加が必要であり、接着剤自体の接着強度や耐湿性、耐久性などに劣ると考えられる。特に、熱膨張材の膨張開始温度が低いため、使用中に接合体が高温に晒されると、十分な接着強度を確保できず、接合体の耐熱性に問題を有する可能性がある。
特許文献1に開示された接着剤組成物は、接着剤中に含まれるガス発生剤の熱に対する安定性が低いために、低温で解体してしまう可能性がある。また特許文献2に開示された接着剤組成物にはポリマーが含まれており、その増粘の効果で接着剤としてのハンドリング特性が悪く、適用部所が限定されてしまう可能性がある。
以上のように、上述の従来技術は、いずれも接着剤に解体性を付与する添加剤や組成物を構成する材料の高分子量化により、耐熱性が低下してしまう、また接着剤としてのハンドリング特性が悪化する、という課題があった。
本発明は、上述の実情に鑑みて、接着と解体を簡便に行うことができる接着剤に好適な組成物、特に耐熱性に優れ、ハンドリング特性が良好であり、かつオンデマンドの解体性を有する組成物を提供することを課題とする。また、該組成物からなる接着剤、該接着剤を用いた積層体、該積層体の製造方法、及び該積層体の解体方法、2つの部材の接合方法及び接合された部材の解体方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、接着と解体を簡便に行うことができる接着剤に好適な組成物を開発するのに際して、可逆性を有する化学結合を利用する技術に着目し、特にディールズアルダー反応の利用について鋭意検討を行った。
ディールズアルダー(以下「DA」と記載することがある。)反応は、共役ジエンとジエノフィルとが反応して環構造を形成する。この反応は、熱可逆性の平衡反応であり、比較的高温においてレトロディールズアルダー(以下、「rDA」と記載することがある。)反応が起こり、元の共役ジエンとジエノフィルとに分解することが知られている。
そして、本発明者等は、上述のジエノフィルが、鎖状の不飽和結合ではなく、マレイミド構造を有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]~[14]に関するものである。
【0008】
[1]下記式(1)で表される化合物及び光重合開始剤を含む、組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(1)中、Xは2価の基を表す。Y~Yは各々独立に水素原子または置換若しくは無置換の1価の有機基を表し、Y~Yのうちの少なくとも1つの基は、下記式(2)および式(3)で構成される基である。Zは置換または無置換の3価以上5価以下の炭素数が3~100の有機基を表す。nは3以上5以下の整数を表す。Zに結合するn個の構造単位は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
(式(2)中、Rは酸素原子またはメチレン基、もしくは炭素数2から10個の分岐構造を有してもよいアルキレン基であり、Rは、式(3)の置換基であり、R、R位のいずれか1カ所に結合している。*は結合手を表す。Rはメチレン基が0から10個連なったアルキレン基であり、またRはメチレン基が1から5個連なったアルキレン基である。Rのメチレン基が0個、かつRのメチレン基が1個の場合、式(3)は環状構造とならず、RはRに結合している。)
[2]前記式(1)において、Zが芳香族炭化水素基を有する、上記[1]に記載の組成物。
[3]前記Zが、複数の芳香族炭化水素基を含み、該芳香族炭化水素基同士は連結基により連結している、上記[2]に記載の組成物。
[4]前記Zが、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、エステル基、シリル基及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する、上記[1]~[3]の何れかに記載の組成物。
[5]前記式(1)で表される化合物が熱解離性を有する、上記[1]~[4]の何れかに記載の組成物。
[6]全固形分中の前記式(1)で表される化合物の含有量が30質量%以上である、上記[1]~[5]の何れかに記載の組成物。
[7]エポキシモノマーをさらに含む、上記[1]~[6]の何れかに記載の組成物。
[8]上記[1]~[7]の何れかに記載の組成物からなる接着剤。
[9]基材A、接着層及び基材Bをこの順に有する積層体であって、前記接着層が上記[1]~[7]の何れかに記載の組成物を硬化してなる樹脂層である、積層体。
[10]前記基材A及び基材Bの少なくとも何れか一方の基材の全光線透過率が80%以上である、上記[9]に記載の積層体。
[11]基材A、接着層及び基材Bをこの順に有する積層体の製造方法であって、前記基材A又は前記基材Bに、上記[1]~[7]の何れかに記載の組成物を塗布する工程(a)、前記組成物を介して前記基材Aと前記基材Bを貼り合わせる工程(b)、及び前記組成物に光を照射して接着層を形成する工程(c)を有する、積層体の製造方法。
[12]基材A、接着層及び基材Bをこの順に有する積層体の解体方法であって、前記接着層が上記[1]~[7]の何れかに記載の組成物を硬化してなる樹脂層であり、前記接着層を100℃以上に加熱する工程を有する、積層体の解体方法。
[13]2つの部材を接合する方法であって、少なくとも一方の部材に上記[1]~[7]の何れかに記載の組成物を塗布する工程(d)、前記塗布した組成物上に他方の部材を配置する工程(e)、及び前記組成物に光を照射することにより前記組成物を硬化させる工程(f)を有する、部材の接合方法。
[14]上記[13]に記載の方法により接合された部材の解体方法であって、前記硬化された接着層を100℃以上に加熱する工程を有する、接合部材の解体方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着と解体を簡便に行うことができ、耐熱性にも優れる接着剤に好適な組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の積層体の製造方法を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[組成物]
<式(1)で表される化合物>
本発明の組成物は、下記式(1)で表される化合物(以下、「本発明に係る化合物」と言う場合がある。)及び光重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0017】
【化4】
【0018】
(式(1)中、Xは2価の基を表す。Y~Yは各々独立に水素原子または置換若しくは無置換の1価の有機基を表し、Y~Yのうちの少なくとも1つの基は、下記式(2)および式(3)で構成される基である。Zは置換または無置換の3価以上5価以下の炭素数が3~100の有機基を表す。nは3以上5以下の整数を表す。Zに結合するn個の構造単位は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
式(2)中、Rは酸素原子またはメチレン基、もしくは炭素数2から10個の分岐構造を有してもよいアルキレン基であり、Rは、式(3)の置換基であり、R、R位のいずれか1カ所に結合している。*は結合手を表す。Rはメチレン基が0から10個連なったアルキレン基であり、またRはメチレン基が1から5個連なったアルキレン基である。Rのメチレン基が0個、かつRのメチレン基が1個の場合、式(3)は環状構造とならず、RはRに結合している。
【0022】
は、本発明に係る化合物の式(1)の構造を安定的に維持できる2価の基であれば特に制限はない。具体的には、-O-、-S-、-NH-、-NR-(Rは、炭素数1~20の炭化水素基)、置換又は無置換の炭素数1~20のアルキレン基、置換又は無置換の炭素数6~20のフェニレン基及び置換又は無置換の炭素数2~20のシリレン基(-Si(R11)R12-;R11及びR12は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基を示す。)等の有機基が挙げられる。
これらの中でも、立体障害が小さく、本発明に係る化合物の安定性、耐熱性、原料の調達のしやすさの点から、Xは-O-であることが好ましい。
が置換基を有するアルキレン基、フェニレン基又はシリレン基(以下「アルキレン基等」ということがある。)である場合における置換基は、特に限定されない。具体的には、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、エステル基等が挙げられる。Xがこれらの置換基を複数有する場合、隣接する置換基同士で互いに連結して環を形成していてもよい。
立体障害が起こり難く、接着力が強い組成物を得やすい観点から、Xが炭素原子を有する場合の炭素数は少ないことが好ましい。具体的には、Xが炭素原子を有する場合の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。また、同様の理由から、Xが置換基を有する2価の基である場合における置換基の数は少ないことが好ましい。
【0023】
上述の通り、Y~Yは、各々独立に、水素原子または置換若しくは無置換の1価の有機基を表し、Y~Yのうちの少なくとも1つは、上記式(2)および式(3)で構成される基である。
式(2)および式(3)で示される基以外のY~Y(以下、「その他のY~Y」と言う場合がある。)は、式(1)で表される化合物の安定性、耐熱性、原料の調達のしやすさなどの点から、水素原子又は炭素数が少ない有機基であることが好ましい。具体的には、その他のY~Yが有機基である場合のその他のY~Yの炭素数は、1~50が好ましく、1~30がより好ましく、1~20がさらに好ましく、1~10が特に好ましい。その他のY~Yの有機基としては、置換又は無置換のフェニレン基、置換又は無置換のシリレン基などが挙げられる。その他のY~Yは、水素原子であることが最も好ましい。その他のY~Yは、互いに連結して環を形成していてもよい。
その他のY~Yが置換基を有する有機基である場合における置換基は、特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、エステル基、シリル基、アミノ基等が挙げられる。
【0024】
上述の通り、Rは酸素原子またはメチレン基、もしくは炭素数2から10個の分岐構造を有してもよいアルキレン基である。
【0025】
上記した通り、Rは、式(3)の置換基であり、R、R位のいずれか1カ所に結合している。
【0026】
上記した通り、Rはメチレン基が0から10個連なったアルキレン基である。本発明に係る化合物の安定性と本発明の組成物の硬化性の観点から、その炭素数は、0~7個であることが好ましく、0~5個であることがより好ましい。
【0027】
上記した通り、Rはメチレン基が1から5個連なったアルキレン基である。本発明に係る化合物の安定性と本発明の組成物の硬化性の観点から、その炭素数は、1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましい。
【0028】
上記した通り、Rのメチレン基が0個、かつRのメチレン基が1個の場合、式(3)は環状構造とならず、RはRに結合している。
【0029】
上記した通り、Zは、置換または無置換の3価以上5価以下の炭素数が3~100の有機基を表す。Zが3価以上5価以下の有機基であることにより、多分岐型の架橋構造となりやすい。
Zが有する炭素数は、本発明に係る化合物の合成し易さや立体障害の起こり難さの点では多いことが好ましく、また、一方で、本発明に係る化合物を含む組成物がハンドリングしやすい粘度になりやすい点では少ないことが好ましい。そこで、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、6以上であることが特に好ましく、また、一方で、80以下であることが好ましく、60以下であることがより好ましい。
【0030】
Zは、-O-(エーテル結合)、-CO-(カルボニル結合)、-COO-(エステル結合)、-Si(R11)R12-(シリレン結合)、-NHCO-(アミド結合)、-SO-(スルホニル結合)、-NR13-(アミノ結合)等の結合を有している有機基でもよい。また、Zが芳香族基である場合、単環でも縮合環でもよく、ヘテロ原子を有する複素環式芳香族基であってもよい。
【0031】
Zは、低極性溶剤に対する溶解性が高くなる点から、置換または無置換の炭化水素基であることが好ましい。Zが置換または無置換の炭化水素基である場合、その炭化水素基は、鎖状でも環状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。また、2種類以上の炭化水素基が結合した基であってもよい。
【0032】
炭化水素基の炭素数は、より具体的には、炭化水素基が鎖状の炭化水素基である場合は1~20であることが好ましく、炭化水素基が脂環式の炭化水素基である場合は5~20であることが好ましく、炭化水素基が芳香族の炭化水素基である場合(複素環式芳香族炭化水素基である場合を含む)は4~60であることが好ましく、4~30であることがより好ましく、6~30であることがさらに好ましい。
【0033】
本発明に係る化合物の低極性溶剤に対する溶解性が高くなる点から、Zは、置換または無置換の芳香族炭化水素基を有することが好ましく、置換された芳香族炭化水素基を有することがより好ましい。また、Zは、複数の芳香族炭化水素基を有することが好ましく、該芳香族炭化水素基同士が連結基により連結していることがより好ましい。この連結基は、例えば、炭素数1以上5以下の直鎖アルキレン基などが挙げられる。
【0034】
Zの有機基が置換基を有する場合における置換基は特に限定されない。例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、エステル基、シリル基及びアミノ基などが挙げられる。ここで、これらの置換基同士は、結合して環を形成していてもよい。
【0035】
Zの具体例としては、以下の有機基が挙げられる。
【化7】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
【化12】
【0040】
【化13】
【0041】
上記構造式中、*は、結合手を表し、p、q、及びrは、それぞれ独立して、1以上の整数である。
前述のとおり、式(1)中、Zに結合するn個の構造単位は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
一定の温度で基材や部材を脱着(解体)させやすい観点からは、n個の構造単位は同一であることが好ましい。また、一方で、段階的に基材や部材を脱着(解体)させやすい観点からは、n個の構造単位の少なくとも1つがそれ以外の構造単位と異なることが好ましい。すなわち、Zに異なる構造を有する構造単位を結合させることにより、基材や部材の脱着温度(解体温度)を調整することができる。
【0042】
本発明に係る化合物の分子量は、特に限定されない。但し、本発明に係る化合物の粘度が低くなり、取り扱いやすい点では低いことが好ましく、また、一方で、多分岐構造となる点では高いことが好ましい。そこで、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、また、一方で、10,000以下であることが好ましく、3,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。ここで、本発明に係る化合物のZが付加反応体又は重合体である場合、分子量はGPC測定による数平均分子量である。
【0043】
本発明に係る化合物は、DA反応部位(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン構造)を有する。そこで、本発明に係る化合物は、ジエノフィルとジエンから合成することができる。
本発明に係る化合物は、具体的には、以下の反応式に示す、ジエノフィル(A)とジエン(B)から合成することができる。
式(1)中のDA反応部位(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン構造)は、加熱下で、rDA反応によりジエンとジエノフィルとに解離する。このため、この構造により架橋された本発明に係る化合物も熱解離性を有する。
【0044】
【化14】
【0045】
ジエン(B)は、以下の式(2)及び式(3)で構成される少なくとも何れかの重合性基を有する。
【0046】
【化15】
【0047】
【化16】
【0048】
式(2)中のR、R及び式(3)中のR、Rは前述した通りである。*は結合手を表す。R、R、R及びRの好ましい態様も前述した通りである。
すなわち、Y~Yのうち少なくとも1つは、上記式(2)及び式(3)で表される基であり、当該重合性基により、本発明に係る化合物は光重合させることが可能であり、光硬化性を有する。
【0049】
ジエン(B)として用いるジエン化合物の例としては、フラン、チオフェン、ピロール、シクロペンタジエン、シラシクロペンタジエン(シロール)などが挙げられる。ジエン化合物の安定性と反応性、取り扱いやすさ及び原料入手のしやすさの点から、フランが好ましい。
【0050】
本発明に係る化合物の合成に用いるジエノフィル(A)は、多官能マレイミド構造であることを特徴とする。マレイミド構造を鎖状の不飽和結合ではなく、多官能マレイミド構造とすることにより、本発明に係る化合物の安定性や耐熱性が高くなる。
ジエノフィル(A)としては、種々の公知の多官能マレイミド化合物を用いることができる。
【0051】
ジエノフィル(A)は、溶解性、本発明に係る化合物の安定性、耐熱性、原料の調達のしやすさの点から、以下の構造を有することが好ましい。
【0052】
【化17】
【0053】
(式中、qは、p-2の整数である。)
ジエノフィル(A)としては、例えば、大日本インキ化学社製の多官能マレイミド化合物などを用いることができる。
【0054】
本発明に係る化合物を合成する際、ジエノフィル(A)とジエン(B)とのモル当量の比率(ジエン(B)/ジエノフィル(A)比)は、ジエノフィル(A)中のほぼ全てのビスマレイミド基がジエン(B)と反応し、未反応ジエノフィル(A)による接着力低下が生じ難いことから、2.0倍以上とすることが好ましい。該比の上限値については、特に制限はないが、本発明に係る化合物の安定性(接着性、解体性)の点から5.0以下とすることが好ましい。
【0055】
式(1)で表される化合物の合成例の一つとして、以下にフルフリルグリシジルエーテルと多官能マレイミド(上記式中q=1)の反応を示す。
【0056】
【化18】
【0057】
本発明の組成物中の本発明に係る化合物の含有量は、接着強度及び加熱時の解体性に優れる点では多いことが好ましい。具体的には、30質量%以上であることが好ましい。また、さらに後述する光重合開始剤等の本発明に係る化合物以外の成分の量を考慮すると、本発明に係る化合物の含有量は、40質量%以上であることがより好ましく、また、一方で、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがさらに好ましい。但し、本発明に係る化合物以外の接着剤(以下、「その他の接着剤」と言う場合がある。)を併用する場合等には、本発明に係る化合物とその他の接着剤の合計量が上述した範囲内であることが好ましい。
【0058】
本発明の組成物中の本発明に係る化合物の含有量は、H-NMR測定法により確認することができる。より具体的には、本発明に係る化合物の含有量は、H-NMRの絶対定量法(内部標準法)により確認することができる。すなわち、H-NMRの測定溶液中に既知量の標準物質を添加することにより、本発明に係る化合物の絶対量を定量することができる。
【0059】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により本発明の光硬化性樹脂組成物を重合硬化する成分である。
本発明においては、光重合開始剤としてカチオン開始剤ならびにラジカル開始剤の両方を使用することができる。ただし、カチオン開始剤により、エポキシ基の重合を効率的に進行させることができることから、カチオン開始剤が好ましい。
【0060】
光重合開始剤の具体例としては、例えば、トリアリールスルホニウム塩類(市販品;CPI-100、200、300、400シリーズ)、ジアリールヨードニウム塩類(市販品;IK-1シリーズ)、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(市販品;Omnirad184)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類などが挙げられる。
光重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されない。但し、十分に硬化して強い接着力を発現しやすい点では多いことが好ましく、また、一方で、耐熱性に優れる点では少ないことが好ましい。そこで、具体的には、光重合開始剤の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、1.5質量%以上であることが殊更このましく、また、一方で、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましく、16質量%以下であることがよりさらに好ましく、14質量%以下であることが特に好ましく、12質量%以下であることが殊更好ましい。
【0062】
<その他成分>
本発明の光硬化性樹脂組成物には、上記式(1)で表される化合物に加えて、必要に応じて、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸アミル、4-ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することができる。
【0063】
<エポキシモノマー>
本発明の組成物は、硬化速度や塗工性(粘度調整)の観点から、エポキシ群から選ばれる少なくとも1種類のモノマーをさらに含むことが好ましい。エポキシ樹脂としては、いずれのエポキシ樹脂でも使用可能であり、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環骨格を有するエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンから選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、後述する液状および固形のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。特に、これらのエポキシ樹脂を複数組み合わせることで、優れた取り扱い性を有することができる。
【0064】
<液状エポキシ樹脂>
液状エポキシ樹脂は、25℃で液状のエポキシ樹脂である。液状エポキシ樹脂は主に、熱可塑性樹脂の溶解性向上と本樹脂組成物の樹脂硬化物の強度や弾性率、耐熱性の向上に寄与する。尚、ここで「液状」とは、エポキシ樹脂が流動性を示すことを示す。25℃で液状のエポキシ樹脂の粘度は、25℃において500mPa・s以下であることが好ましく、300mPa・s以下であることがより好ましい。また、0.1mPa・s以上であることが好ましい。粘度をこの範囲にすると、本樹脂組成物の作業性を良好なものとすることができる。粘度の測定は回転式レオメーターで試料に周期的な変形(歪み)を与え、それによって生じる応力と位相差を検出することで測定できる。
【0065】
液状エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品として入手可能な、25℃で液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂)としては、これらに限定されないが、jER827(エポキシ当量185g/eq)、jER828(エポキシ当量189g/eq)(以上、三菱ケミカル社製)、YD-127(エポキシ当量185g/eq)、YD-128(エポキシ当量189g/eq)(以上、日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON840(エポキシ当量185g/eq)、EPICLON850(エポキシ当量189g/eq)(以上、DIC社製)、D.E.R331(エポキシ当量187/eq)、D.E.R332(エポキシ当量173g/eq)(THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)等が挙げられる。市販品として入手可能な、25℃で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂(液状エポキシ樹脂)としては、これらに限定されないが、jER806(エポキシ当量165g/eq)、jER807(エポキシ当量170g/eq)(以上、三菱ケミカル社製)、YDF-170(エポキシ当量170g/eq)(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON830(エポキシ当量170g/eq)、EPICLON835(エポキシ当量172g/eq)(以上、DIC社製)、D.E.R354(エポキシ当量170g/eq)(以上、THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)等が挙げられる。これらの中から1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0066】
<固形エポキシ樹脂>
固形エポキシ樹脂は、軟化点70℃以上のビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましい。軟化点は、樹脂硬化物が優れた靱性を有することから、好ましくは72℃以上、より好ましくは75℃以上である。一方、樹脂硬化物の耐熱性が適正に保たれることから、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。
【0067】
固形エポキシ樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品として入手可能な、軟化点70℃以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、jER1055、jER1004、jER1007、jER1009(いずれも商品名、三菱ケミカル社製)やEPICLON2050、EPICLON3050、EPICLON4050、EPICLON7050、EPICLON HM-091、EPICLON HM-101(いずれも商品名、DIC社製)やYD-902、YD-903N、YD-904、YD-907、YD-7910、YD-6020(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。また、市販品として入手可能な、軟化点70℃以上のビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、これらに限定されないが、jER4004P、jER4005P、jER4007P、jER4010P(いずれも商品名、三菱ケミカル社製)やYDF2004、YDF-2005RD(いずれも商品名、日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
市販品として入手可能な軟化点70℃以上のオキサゾリドン環状構造を有するエポキシ樹脂としては、AER4152、AER4151、LSA3301、LSA2102(いずれも商品名、旭化成イーマテリアルズ社製)やACR1348(商品名、ADEKA社製)、DER852、DER858(商品名、THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)、TSR-400(商品名、DIC社製)などがあげられ、いずれも本発明に好ましく用いられるが、AER4152やTSR-400が特に好ましい。固形エポキシ樹脂として、これらの中から1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて併用してもよい。
【0068】
これらのモノマーを用いる場合、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
<溶剤>
本発明の組成物は、さらに溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含むことにより、組成物の粘度を調整することができる。
【0070】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。溶剤を用いる場合、溶剤は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
溶剤を用いる場合、蒸発速度や塗工性(粘度調整)の点から、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの低極性溶剤が好ましい。そして、本発明に係る化合物は、低極性溶剤に対する溶解性が高いため、低極性溶剤を含む組成物に好適である。
溶剤を用いる場合、組成物中の含有量は、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の組成物を接着剤等として用いる場合、本発明の組成物を塗布後に、通常溶剤を乾燥除去する。
【0071】
<その他の成分>
本発明の組成物には、本発明の効果を大幅に損なわない範囲内において、上述した以外の成分が含まれていてもよい。具体的には、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤等を用いることができる。
これらの成分の含有量は、本発明の組成物の固形分(本発明の組成物が溶剤を含む場合は、この溶剤以外の成分)の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。また、これらの添加剤の他にも、組成物製造に用いた未反応原料等の不純物等が少量含有されていてもよい。
【0072】
[組成物]
本発明の組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。また、本発明の組成物を重合することにより、本発明の組成物は硬化樹脂となり、接着機能を発現する。そこで、本発明の組成物は接着剤(以下、「本発明の接着剤」と言う場合がある。)として好適に用いることができる。
重合は、光を照射することにより行うことができる。
【0073】
本発明の組成物の25℃における粘度は、通常、1~100,000mPa・sであり、好ましくは、1~50,000mPa・s、特に好ましくは2~30,000mPa・sである。そこで、本発明の組成物は、塗工性(ムラなく、塗工しやすい)に優れる点でも接着剤等の用途に好適である。
【0074】
本発明に係る化合物のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性に優れる点では高いことが好ましく、また、一方で、本発明の組成物を易解体性接着剤に用いる場合における解体のしやすさの点では低いことが好ましい。そこで、具体的には、ガラス転移温度は、20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、また、一方で、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度は、動的粘性測定(DMA測定)等の方法により測定することができる。
【0075】
[積層体]
本発明の組成物を接着剤として用いる場合、この本発明の接着剤により、2つの基材を接着させることができる。すなわち、本発明の組成物を接着剤として用いることにより、基材A、本発明の組成物を硬化してなる樹脂層及び基材Bをこの順に有する積層体(以下、「本発明の積層体」と言う場合がある。)を得ることができる。なお、本発明の積層体は、基材A、基材B及び接着層以外の層を有していてもよい。
【0076】
<基材>
基材A及び基材Bの材質は、プラスチック、ガラス、金属等が挙げられる。
プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
ガラスとしては、アルカリガラス、無アルカリガラス及び石英ガラス等が挙げられる。
【0077】
基材の形状は特に限定されず、フィルム、シート、板、各種立体形状等を挙げることができる。
基材の厚みは、基材Aと基材Bの間に挟持された接着剤に光や熱を十分に印加することができれば、特に限定されない。当該観点から、例えば、基材A及び基材Bそれぞれの厚みは、数μmと薄くてもよい。
接着性向上の点から、基材には表面処理が行われていてもよい。具体的には、例えば、コロナ処理、表面磨耗処理等が挙げられる。あるいは、プライマー層や表面改質層を設けてもよく、その上でこれらの表面処理を行ってもよい。
基材A及び基材Bを本発明の組成物により接着する場合、基材A及び基材Bの少なくとも一方は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
【0078】
<接着層>
本発明の積層体は、本発明の組成物を硬化してなる樹脂層を接着層として有する。
接着層の厚みは、用途に応じて適宜設定されるが、接着強度が得やすい点ではある程度厚いことが好ましく、また、一方で、微小な基材や薄い基材を積層させる際は、薄くすることが好ましい。そこで、具体的には、1μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましく、20μm以上とすることがさらに好ましく、また、一方で、10mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましく、2mm以下とすることがさらに好ましく、1mm以下とすることが特に好ましい。
【0079】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体は、一方の基材に光を照射して硬化する組成物を塗布してから、この組成物を介して他方の基材を貼り合わせた後に、この組成物に光を照射して接着層を形成させることにより製造することができる。すなわち、本発明の積層体の製造方法は、基材A又は基材Bに、本発明の組成物を塗布する工程(a)、この組成物を介して基材Aと基材Bを貼り合わせる工程(b)、及びこの組成物に光を照射して接着層を形成する工程(c)を有する。
【0080】
工程(a)における組成物の塗布方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。具体的には、バーコート法、アプリケーター法、カーテンフローコート法、ロールコート法、スプレー法、グラビアコート法、コンマコート法、リバースロールコート法、リップコート法、ダイコート法、スロットダイコート法、エアーナイフコート法、ディップ法等の方法が挙げられる。なお、工程(a)において、組成物の塗布は、両方の基材に対して行ってもよい。
【0081】
工程(b)においては、両基材を圧着してもよい。圧着させる際は、機械を用いて行ってもよい。
工程(c)においては、紫外線等の本発明の組成物を硬化させることのできる波長の光を照射することにより、本発明の組成物を硬化させて接着層を形成する。
【0082】
工程(c)において用いられる光源は、本発明の組成物を硬化させることができればよく、特に限定されない。例えば、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト、及びLEDランプ等の光源を用いることができる。
【0083】
工程(c)における光の照射量は、本発明の組成物を硬化させることができればよく、特に限定されない。但し、十分に硬化され、接着強度が強くなりやすい点では多いことが好ましく、また、一方で、短時間で簡便に行いやすい点では、少ないことが好ましい。そこで、具体的には、例えば、光源に紫外線を用いた場合には、積算光量は、2~20,000mJ/cmとすることが好ましく10~10,000mJ/cmとすることがより好ましく、100~10,000mJ/cmとすることがさらにより好ましく、1,000~8,000mJ/cmとすることがさらに好ましい。
なお、本発明の組成物が溶剤を含む場合は、工程(c)の前に乾燥工程を設けて、溶剤を加熱等により除去することが好ましい。
【0084】
[部材の接合方法]
本発明の組成物を接着剤として用いる場合、この接着剤を介して、2つの部材を接合させることもできる。ここで、接合させる各部材の材質、形状等については、前述の積層体の基材の場合と同様である。
2つの部材の接合は、前述の積層体を製造する場合と同様に行うことができる。具体的には、一方の部材に光照射により硬化する組成物を塗布してから、この組成物を介して他方の部材を貼り合わせた後に、この組成物に光を照射して接着層を形成させることにより、2つの部材を接合することができる。すなわち、本発明の部材の接合方法は、少なくとも一方の部材に本発明の組成物を塗布する工程(d)、この組成物上に他方の部材を配置する工程(e)、及びこの組成物に光を照射することにより組成物を硬化させる工程(f)を有する。ここで、工程(d)~(f)は、各々、前述の工程(a)~(c)と同様に行うことができる。
【0085】
[積層体の解体方法]
前述のとおり、本発明に係る化合物は、加熱により、rDA反応を起こし、ジエンとジエノフィルとに解離する。そこで、本発明の接着剤により貼り合わせた積層体は、加熱により解体することができる。具体的には、基材A、本発明の組成物を硬化してなる樹脂層(接着層)及び基材Bをこの順に有する積層体は、この接着層を加熱することにより解体することができる。すなわち、基材A、本発明の組成物を硬化してなる樹脂層(接着層)及び基材Bをこの順に有する積層体の解体方法は、この接着層を加熱する工程を有する。
【0086】
加熱条件は、rDA反応が進行する温度以上で、解体にかかる時間や基材や部材等の耐熱性などに応じて適切な温度で行えばよい。具体的には、例えば、100℃以上で行うことが好ましく、120℃以上で行うことがより好ましく、140℃以上で行うことがさらに好ましく、また、一方で、300℃以下で行うことが好ましく、250℃以下で行うことがより好ましい。
加熱時間は、加熱方法や加熱温度により適宜設定すればよいが、好ましくは5秒間以上、より好ましくは10秒間以上、さらに好ましくは20秒間以上、特に好ましくは1分間以上であり、また、一方で、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは50分間以下である。
【0087】
加熱方法は、接着層に熱を十分に伝えることができればよく、特に限定されない。例えば、積層体全体を熱伝導により加熱する方法、赤外線、マイクロ波、白色光などの電磁波を用いて局所的に加熱する方法などが挙げられる。
加熱装置は、特に限定されず、公知の加熱装置を用いることができる。具体的には、ホットプレート、熱風乾燥機、ヒートガン、ドライヤー等が挙げられる。
なお、接着剤に導電性フィラーを配合し、電磁誘導加熱装置を使用して、接着層を加熱することもできる。また、接着剤にマイクロ波応答粒子(例えば、鉄ナノ粒子)を充填し、マイクロ波加熱装置を使用して接着層を加熱することもできる。
【0088】
[接合部材の解体方法]
本発明の接着剤を介して接合させた接合部材についても、上述の積層体の解体方法と同様にして解体することができる。すなわち、上述の本発明の部材の接合方法により接合された部材の解体方法は、この硬化された接着層を加熱する工程を有する。なお、ここで、加熱条件、加熱方法、加熱装置等については、各々、前述の本発明の積層体の解体方法の場合と同様に行うことができる。
このように、本発明の接着剤の接着機能と熱解離性を利用することにより、容易に接着や接合と解体を行うことができ、易解体性接着剤として、2つの基材や2つの部材の接着と解体を簡便に行うことができる。
【0089】
<積層体の用途>
本発明の積層体は、優れた耐熱性を有する。そこで、本発明の積層体は、高温環境下で置かれる種々の光学部品や光学デバイス、電子部品、精密機器、包装材料として有用である。
【実施例0090】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例中で「部」、「%」とあるのは、特に記載のない限り、質量基準を意味する。
【0091】
<原料>
実施例及び比較例において用いた原料及び溶剤の略称は、以下の通りである。
(光重合開始剤)
・CPI-400S:光応答性カチオン重合開始剤(サンアプロ社製、トリアリールスルホニウム塩)は以下の構造を有する。
【0092】
【化19】
【0093】
(溶剤)
・アセトン(和光純薬社製、試薬特級、沸点56℃)
【0094】
<基材(I)、基材(II)>
・スライドガラス(材質:高級ソーダガラス):幅26mm×長さ76mm×厚み1.3mm
・アルミニウム板:幅45mm×長さ120mm×厚み0.5mm
・鉄板:幅45mm×長さ120mm×厚み0.5mm
・銅板:幅45mm×長さ120mm×厚み0.5mm
・ポリメチルメタクリレート(PMMA)板:幅45mm×長さ120mm×厚み0.5mm
基材は使用前にアセトンですすぎ、乾燥させたものを使用した。
【0095】
(合成例1)
[熱解離性架橋モノマー(M1)の調製]
多官能フェニルメタンマレイミド(BMI-2300、大和化成工業社製)2.2gにフルフリルグリシジルエーテル(シグマアルドリッチ社製、純度95%)2.1gを加え、60℃で1日間反応させた。H-NMRの測定結果から、マレイミド構造由来のδ6.86ppmのピークの消失から、反応の進行を確認し、熱解離性架橋モノマー(M1)を得た。
【0096】
【化20】
【0097】
H-NMR測定>
H-NMRの測定は、核磁気共鳴装置(ブルカージャパン社製ADVANCE NEO400(400MHz))を使用して行った。溶媒は重クロロホルムを使用した。固形分濃度1.0質量%、積算回数16回にて測定を行い、化学シフト及び積分値よりピークの帰属を行った。
【0098】
(合成例2)
[熱解離性架橋モノマー(M2)の調製]
エピクロロヒドリン313mlに2,5-ビス(ヒドロキシメチル)フラン51.25g、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド2.57gを加えて、65℃で5時間加熱後、30℃まで冷却した。その後、攪拌下で50%水酸化ナトリウム水溶液200mlを徐々に加えて反応させ、1日間静置した。反応物をジクロロメタン中に3回抽出し、残留溶媒を脱イオン水で洗浄後、MgSOを加えて数回脱水操作をした。さらにロータリーエバポレーターで完全に溶媒を分離した後、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒(体積比2:1)を展開溶媒とするシリカゲルカラムを通したクロマトグラフィーにより精製し、2,5-フルフリルジグリシジルエーテルを得た。
次に、合成例1と同様に、多官能フェニルメタンマレイミド(BMI-2300、大和化成工業社製)2.2gに、上記で得られた2,5-フルフリルジグリシジルエーテル3.3gを加え、60℃で1時間加熱攪拌して溶解後、50℃で3日間反応させた。H-NMRの測定結果から、マレイミド構造由来のδ6.47ppmのピークの消失から、反応の進行を確認し、熱解離性架橋モノマー(M2)を得た。
【0099】
【化21】
【0100】
[製造実施例1]
(接着剤組成物の調製)
合成例1で調製した熱解離性架橋モノマー(M1)を1.0g秤量した。100質量部相当に対して光重合開始剤を10質量部加え、室温(20℃)で2時間撹拌混合し、接着剤組成物(MA1)を製造した。
【0101】
[製造実施例2]
合成例1で調製した熱解離性架橋モノマー(M1)0.75gをアセトン0.25gに溶解させた。100質量部相当に対して光重合開始剤を10質量部加え、室温(20℃)で2時間撹拌混合し、接着剤組成物(MA2)を製造した。
【0102】
[実施例1]
基材(I)及び(II)として、スライドガラスを使用した。図1に示すように、基材(II)(図1の2)の端の26mm×26mmの領域に、製造実施例1で製造した光重合開始剤CPI-400Sを含む接着剤組成物(MA1)61mg(図1の1)を塗布し、その上に基材(I)(図1の3)を設置し、圧着させた。続いて、無電極紫外線照射装置へレウス製「FUSION LightHammer 6」(Dバルブ使用 主要波長385nm)を用いて、積算光量5000mJ/cmの条件にて紫外線を照射して接着剤組成物を硬化させ、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0103】
[実施例2]
実施例1において、基材[I]としてスライドガラス、[II]として鉄板を使用し、接着剤組成物(MA1)の塗布量を62mgにした以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0104】
[実施例3]
実施例1において、基材[I]としてスライドガラス、[II]としてアルミニウム板を使用し、接着剤組成物(MA1)の塗布量を61mgにした以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0105】
[実施例4]
実施例1において、基材[I]としてスライドガラス、[II]として銅板を使用し、接着剤組成物(MA1)の塗布量を61mgにした以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0106】
[実施例5]
実施例1において、基材[I]及び[II]としてPMMA板を使用し、接着剤組成物(MA1)の塗布量を64mgにした以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0107】
[実施例6]
実施例1において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造実施例2で製造した接着剤組成物(MA2)を65mg塗布した以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0108】
[実施例7]
実施例2において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造実施例2で製造した接着剤組成物(MA2)を55mg塗布した以外は、実施例2と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0109】
[製造実施例3]
(接着剤組成物の調製)
合成例2で調製した熱解離性架橋モノマー(M2)を1.0g秤量した。100質量部相当に対して光重合開始剤を10質量部加え、50℃で8時間撹拌混合し、接着剤組成物(MA3)を製造した。
【0110】
[実施例8]
実施例1において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造実施例3で製造した接着剤組成物(MA3)を51mg塗布した以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0111】
[実施例9]
実施例8において、基材[I]としてスライドガラス、[II]として鉄板を使用し、接着剤組成物(MA3)の塗布量を52mgにした以外は、実施例8と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0112】
[実施例10]
実施例8において、基材[I]としてスライドガラス、[II]としてアルミニウム板を使用し、接着剤組成物(MA3)の塗布量を55mgにした以外は、実施例8と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0113】
[実施例11]
実施例8において、基材[I]としてスライドガラス、[II]として銅板を使用し、接着剤組成物(MA3)の塗布量を53mgにした以外は、実施例8と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0114】
[製造比較例1]
(3‘、4’-Epoxycyclohexene)methyl 3,4-epoxycyclohexenecarboxylate(脂環式エポキシC2021P、ダイセル社製)を100質量部、および光重合開始剤CPI-400Sを10質量部準備し、室温(20℃)で2時間撹拌混合し、接着剤組成物(C1)を製造した。
【0115】
[製造比較例2]
(3‘、4’-Epoxycyclohexene)methyl 3,4-epoxycyclohexenecarboxylate(脂環式エポキシC2021P、ダイセル社製)0.75gをアセトン0.25gに溶解させた。100質量部相当に対して光重合開始剤を10質量部加え、室温(20℃)で2時間撹拌混合し、接着剤組成物(C2)を製造した。
【0116】
[比較例1]
実施例1において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造比較例1で製造した接着剤組成物(C1)を56mg塗布した以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0117】
[比較例2]
実施例2において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造比較例1で製造した接着剤組成物(C1)を59mg塗布した以外は、実施例2と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0118】
[比較例3]
実施例1において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造比較例2で製造した接着剤組成物(C2)を58mg塗布した以外は、実施例1と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0119】
[比較例4]
実施例2において、接着剤組成物(MA1)の代わりに製造比較例2で製造した接着剤組成物(C2)を63mg塗布した以外は、実施例2と同様にして、基材(I)、接着層(図1の1’)及び基材(II)から構成される積層体を製造した。
【0120】
<積層体の接着性の評価>
積層体の基材[I]または基材[II]の一方のみを指でつまんで持ち、接着しているか否か評価した。この結果、何れの積層体も基材[I]と基材[II]を分離できず、接着性は良好であった。
【0121】
<室温(20℃)での積層体の解体性の評価>
室温(20℃)下、積層体中の基材[I]と基材[II]を引張せん断試験方向に手で引っ張り、基材[I]と基材[II]を解体できるか否か評価した。この結果、何れの積層体も解体されなかった。
【0122】
<150℃での積層体の解体性の評価>
積層体を150℃に設定したホットプレート上で20分間加熱した状態で、基材[II]をピンセットで押さえ、基材[I]を引張せん断方向にピンセットで引っ張り、解体できるか否か評価した。評価結果を表1に示す。表1において、基材を解体できた場合は、解体するまでに要した時間を記載した。また、解体できなかった場合は「解体不可能」とした。
【0123】
【表1】
【0124】
製造1及び2の組成物を接着剤として用いて2つの基材を接着して製造した実施例1~7の積層体の接着性と解体性の評価結果、ならびに製造実施例3の組成物を接着剤として用いて2つの基材を接着して製造した実施例8~11の積層体の接着性と解体性の評価結果より、本発明の組成物は、加熱により、2つの基材の接着と解体を簡便に行えることが裏付けられた。また、その加熱温度を変えた評価結果において、100℃未満では解体せず、150℃で解体されたことから、耐熱性が高いことも裏付けられた。
本発明の組成物を用いて基材を接着することにより、加熱という非常に簡便な方法によって製造した積層体を解体することができ、基材のリサイクルが可能であることが裏付けられた。
【符号の説明】
【0125】
1・・・接着剤
1’・・・接着層(接着剤組成物の硬化物)
2・・・基材(II)
3・・・基材(I)

図1