(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137815
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】樹脂粒子、トナー、樹脂粒子の製造方法、画像形成装置、及び、画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240927BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240927BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G9/08 381
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041023
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2023045619
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】長友 庸泰
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 甲介
(72)【発明者】
【氏名】溝口 由花
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500BA09
2H500CA06
2H500EA13B
2H500EA13C
2H500EA39B
2H500EA40B
2H500EA40C
2H500EA44B
2H500EA52C
2H500EA57C
2H500EA62B
(57)【要約】
【課題】本発明は、低温定着性、耐熱保存性に優れ、安定した画像品質が得られる樹脂粒子を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と、離型剤と、を含有する樹脂粒子であって、
前記結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含み、前記離型剤のドメイン径が1μm以下であり、
前記離型剤表面の80%以上が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われており、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が離型剤の融点よりも高いことを特徴とする樹脂粒子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と、離型剤と、を含有する樹脂粒子であって、
前記結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記離型剤のドメイン径が1μm以下であり、
前記離型剤表面の80%以上が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われており、
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が離型剤の融点よりも高い
ことを特徴とする樹脂粒子。
【請求項2】
前記離型剤のSP値と結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の絶対値(ΔSP値)が1.1(cal/cm3)1/2以下である、請求項1に記載の樹脂粒子。
【請求項3】
前記結着樹脂が脂肪族アルコールモノマーを含有する非晶質ポリエステル樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂粒子。
【請求項4】
前記離型剤が球形である、請求項1又は2に記載の樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の樹脂粒子からなるトナー。
【請求項6】
少なくとも、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、離型剤と、を有機溶媒に溶解または分散させた油相を作製する油相作製工程と、
前記油相に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化工程と、
前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得る脱溶剤工程と、
前記微粒子分散液の微粒子を凝集させる凝集工程と、
を含む、請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、を有し、
前記トナーが、請求項5に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、を含み、
前記トナーが、請求項5に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子、トナー、樹脂粒子の製造方法、画像形成装置、及び、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トナーには、出力画像の高品質化のための小粒径化と耐高温オフセット性、省エネルギー化のための低温定着性、及び製造後の保管時や運搬時における高温高湿に耐え得る耐熱保存性が要求されている。特に、定着時における消費電力は画像形成工程における消費電力の多くを占めるため、低温定着性の向上は非常に重要である。
【0003】
従来、混練粉砕法で作製されたトナーが使用されてきた。しかし、混練粉砕法で作製されたトナーは、小粒径化が困難であると共に、その形状が不定形かつ粒径分布が広い(ブロードである)ことから、出力画像の品質が十分ではないこと、定着エネルギーが高いことなどの問題があった。
【0004】
また、定着性向上のためにワックス(離型剤)を添加している場合、混練粉砕法で作製されたトナーは、粉砕の際に離型剤の界面で割れて、離型剤がトナー表面に多く存在する傾向がある。そのため、離型効果が得られる一方で、キャリア、感光体及びブレードへのトナーの付着(フィルミング)が起こりやすくなり、全体的な性能としては、満足のいくものではないという問題があった。
【0005】
そこで、このような混練粉砕法の問題点を克服するために、重合法によるトナーの製造方法が提案されている。更に、離型剤の内包化も可能である。重合法によるトナーの製造方法としては、低温定着性の改良及び耐高温オフセット性の改良を目的として、トナーバインダーとして、ウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からトナーを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性及び転写性に優れると共に、耐熱保存性、低温定着性及び耐高温オフセット性のいずれにも優れたトナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。
また、安定した分子量分布のトナーバインダーを製造し、低温定着性及び耐高温オフセット性を両立させるための、熟成工程を有するトナーの製造方法が開示されている(例えば、特許文献4、5参照)。
しかし、これら提案の技術は、近年要求される高いレベルの低温定着性を満足するものでない。そこで、高いレベルの低温定着性を得る目的で、結晶性ポリエステル樹脂を含む樹脂、及び離型剤を含有し、樹脂と離型剤が互いに非相溶で海島状の相分離構造を有するトナーが提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、離型剤が存在する近傍は機械的にもろく、特に高温で保管された場合にトナー強度が著しく低下するという問題がある。離型剤を微分散することが特許文献6に示されているが、離型剤は高温保管時に一部染み出すことで強度が低下することは抑制できていない。そのため、離型剤を内部に含有するトナーは機材の汚染やトナー自体の流動性、帯電性が低下し、耐熱保存性及び画像品質が低下する傾向がある。
また、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤及びグラフト重合体を含有するトナーが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
これらの提案の技術は、結晶性ポリエステル樹脂が非晶質ポリエステル樹脂に比べて急速に溶融するため低温定着化を成し得る。しかし、海島状の相分離構造における島にあたる結晶性ポリエステル樹脂が融解しても、大部分の海にあたる非晶質ポリエステル樹脂は未だ融解しない。そうすると、結晶性ポリエステル樹脂、及び非晶質ポリエステル樹脂の双方がある程度融解しないと定着しないため、これらの提案の技術は、近年更に高まっている高いレベルの低温定着性を満足するものでない。また、低温定着性に優れたトナーは様々な課題がある。一つは、耐熱保存性能とのトレードオフである。いっそうの低温定着性が求められる場合、相反である耐熱保存性能と両立する手段が求められる。これまでに、トナー母体粒子の表面を樹脂で覆うことで、耐熱性を担保するような手段も提案されているが、低温定着性能とのトレードオフ、帯電性能低下などの課題がある(特許文献8、特許文献9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、低温定着性、耐熱保存性に優れ、安定した画像品質が得られる樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は以下の構成を備えている。
少なくとも結着樹脂と、離型剤と、を含有する樹脂粒子であって、
前記結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記離型剤のドメイン径が1μm以下であり、
前記離型剤表面の80%以上が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われており、
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が離型剤の融点よりも高い
ことを特徴とする樹脂粒子。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、低温定着性、耐熱保存性に優れ、安定した画像品質が得られる樹脂粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図4】プロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る樹脂粒子、トナー、樹脂粒子の製造方法、トナーの製造方法について適宜図面を参照しながら説明する。
なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
<樹脂粒子>
本発明に係る樹脂粒子は、少なくとも結着樹脂と、離型剤と、を含有する樹脂粒子であって、前記結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含み、前記離型剤のドメイン径が1μm以下であり、前記離型剤表面の80%以上が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われており、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が離型剤の融点よりも高いことを特徴とする。なお、本発明における「ドメイン径」は各ドメインの径の平均値を意味する。
【0013】
<透過型電子顕微鏡におけるトナーに内包される離型剤のドメインの確認方法>
本発明のトナーに内包される離型剤のドメインの確認は、以下のようなTEM(透過型電子顕微鏡)を用いた方法で評価することが好ましい。
透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
トナーをルテニウム染色した場合、トナーに含有される離型剤はコントラストが大きく観察が容易となる。ルテニウム染色を用いた場合、染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分はこれらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。
以下、ルテニウム染色されたトナーの断面の作製手順を説明する。まず、トナーを四酸化ルテニウム0.5質量%溶液に浸漬させて、ブロック染色を30~90分行う。次に主剤であるエポキシ樹脂と硬化剤であるアミンを質量比で1:1の割合で混合させた樹脂中にルテニウム染色したトナーを包埋し、24時間静置させる。次に、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。次に、膜厚250nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。得られた薄片サンプルを、真空電子染色装置(filgen社,VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、走査透過型電子顕微鏡(JEOL社、JEM2100)を用いて、TEM画像を作製する。得られたTEM画像を画像処理ソフト「Image-J」にて離型剤を観察する。
【0014】
<ドメイン径の測定方法>
本発明において、離型剤のドメイン径とは、上記TEM画像をもとに求められる離型剤のドメインの長径の個数平均を意味する。
具体的には、上記に記述した方法で100個のトナーの断面のTEM画像を作製し画像処理ソフト「Image-J」にて100個のトナーの断面に存在する全ての離型剤のドメインの長径を計測し、その算術平均値を算出する。
そして得られた算術平均値を、離型剤のドメイン径とする。
【0015】
本発明の樹脂粒子においては、微分散された離型剤の表面が離型剤よりも融点の高い結晶性ポリエステル樹脂で覆われていることで、微分散された離型剤がトナーの内部に閉じ込められるため、トナー強度を高く保つことができる。
離型剤のドメイン径が1μm以下のドメインが結着樹脂中に微分散することで樹脂粒子全体の強度を高めることができる。ドメイン径が1μmを超えると樹脂粒子の強度が極端に低下する。
【0016】
また、離型剤が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われていることで、高温保管時の離型剤の軟化、染み出しが抑制されるため耐熱保存性が格段に向上する。また、定着時の加熱によって離型剤を覆う結晶性ポリエステル樹脂及び結着樹脂が相溶し、微分散された離型剤が速やかに染み出すことで低温定着性をこれまでの従来技術よりも格段に向上させることができる。
【0017】
離型剤表面が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われる割合を「被覆率」としたとき、離型剤よりも融点の高い結晶性ポリエステル樹脂による離型剤表面の被覆率が80%以上であることによって熱による離型剤の軟化、染み出し性が抑制され、高温保管時でも安定的な樹脂粒子を保つことができる。
結晶性ポリエステルの融点が離型剤の融点よりも低い場合、加熱によって結晶性ポリエステルが結着樹脂と相溶するため離型剤の染み出し性を抑えることができない。また、離型剤表面の結晶性ポリエステルによる被覆率が80%未満になると離型剤の軟化、染み出し性の抑制効果が著しく低下する。
離型剤は球形であることが好ましい。球形であることで定着時に離型剤の染み出しが良好になる。
【0018】
<離型剤のドメイン径および形状>
離型剤のドメイン径、形状判断は、例えば、以下の方法で測定することができる。
トナーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりRuO4染色を行う。
その後、透過型電子顕微鏡(H7500、日立社製)により加速電圧120kVで観察を行う。
観察するトナーは、重量平均粒径から±2.0μm以内のものを50粒選んで撮影を行う。
本発明の構成の場合、RuO4染色を行うとトナー中の結晶性ポリエステル樹脂が濃く、離型剤を用いた場合は離型剤がさらに濃く投影される。
離型剤からなるドメインの平均長径及び平均アスペクト比は、観察画像から判断することが可能であるが、平均アスペクト比に関しては必要に応じて画像処理ソフトを用いて算出することが可能である。
【0019】
画像処理ソフトとしてはImage-Pro Plus5.1J(MediaCybernetics社製)を使用できる。
前述した方法で撮影を行ったトナー粒子の断面画像を使用する。
まず、解析するトナー粒子を抽出するため、トナー粒子と背景部分を分離するために、トナー粒子部分を選択する。Image-Pro Plus5.1Jの「測定」-「カウント/サイズ」を選択する。「カウント/サイズ」のウインドウから、「測定」-「測定項目」を選択する。測定項目から「直径(最少)」及び「直径(最大)」を選択する。
「輝度レンジ選択」では、ポリエステル樹脂Aのみが選択されるよう輝度レンジの調整を行う必要がある。RuO4染色の条件によっては、輝度レンジをその都度変更しなければならないが、前述の濃淡の差により、ポリエステル樹脂Aを容易に判別することができる。「カウント」を選択し、測定結果を表示させる。その後、得られた「直径(最少)」を短径とし、「直径(最大)」を長径としてアスペクト比(長径/短径)を求めることができる。こうして得られたトナー1粒子のアスペクト比のデータの中から、直径(最大)が大きいものから順に10点の平均値を求め、それをトナー10粒子分繰り返し、アスペクト比の平均値とする。アスペクト比が1.4以下を球形と判断した。
離型剤の長径は1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下が更に好ましい。長径が大きくなると離型剤がトナー表面に露出しやすくなり、トナーが軟らかくなり、耐熱保存性が悪化する。また離型効果が低下し、低温定着性が悪化する。
アスペクト比は1.4以下が好ましく、1.2以下が更に好ましい。アスペクト比が大きくなる(非球形)と、結晶性樹脂の被覆率が低下し、耐熱保存性が悪化する。
【0020】
<結晶性ポリエステル樹脂の被覆率>
トナーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりRu染色を行う。
その後、透過型電子顕微鏡(H7500、日立社製)により加速電圧120kVで観察を行う。
観察するトナーは、重量平均粒径から±2.0μm以内のものを50粒選んで撮影を行う。
本発明の構成の場合、RuO4染色を行うとトナー中の結晶性ポリエステル樹脂が濃く、離型剤を用いた場合は離型剤がさらに濃く投影される。
離型剤からなるドメインの平均長径及び平均アスペクト比は、観察画像から判断することが可能であるが、平均アスペクト比に関しては必要に応じて画像処理ソフトを用いて算出することが可能である。
【0021】
離型剤周囲の結晶性ポリエステル樹脂の被覆率は、画像処理ソフト(Image-J)を用いて、以下のようにして算出した。
(1)トナー1個の前記断面像に偏在する全ての離型剤ドメインの外周をFreehand-sectionsで囲い、Analyzeにより周囲長を測定し、周囲長Wとする。
(2)前記断面像における離型剤表面に接触している結晶性ポリエステル樹脂の接触部分の長さをFreehand-sectionsで測定し、被覆長さCとする。
(3)前記(1)で算出した「周囲長W」、及び前記(2)で算出した「被覆長さC」を以下の式(1)に代入することで離型剤表面の結晶性ポリエステル樹脂の被覆率を算出した。
結晶性ポリエステル樹脂の被覆率[%]
=(被覆長さC/周囲長W)×100 ・・・式(1)
(4)前記(1)~(3)の操作を50個のトナー粒子について行い、50個のトナー粒子の離型剤表面の結晶性ポリエステル樹脂の被覆率の平均値を算出し、この平均値を結晶性ポリエステル樹脂の被覆率とした。
【0022】
本発明のトナーは以下のように作られる。
(油相作製工程)
本発明の製造方法においては、まず有機溶媒中に樹脂、着色剤、プレポリマーなどを溶解あるいは分散させた油相を作製する。油相作製方法としては、有機溶媒中に攪拌をしながら樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。分散に際しては公知のものが使用でき、例えばビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
油相作製工程で使用する材料について説明する。
【0023】
(ポリエステル樹脂)
電子写真における静電潜像現像用トナーとして用いる場合には、ポリエステル骨格を有する樹脂を用いることにより良好な定着性が得られる。ポリエステル骨格を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂や、ポリエステルと他の骨格を有する樹脂とのブロックポリマーがあるが、ポリエステル樹脂を用いたほうが得られる着色樹脂粒子の均一性が高く好ましい。
ポリエステル樹脂としては、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物などが挙げられ、設計の自由度の観点からポリオールとポリカルボン酸との重縮合物が好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、通常1000~30000、好ましくは3000~15000、さらに好ましくは5000~12000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、30000を超えると静電潜像現像用トナーとしては低温定着性が悪化する。
また、ポリエステル樹脂のガラス転移温度は35~80℃、好ましくは40~70℃、より好ましくは45~65℃の範囲にあるのが良い。35℃未満では得られる着色樹脂粒子が真夏などの高温環境下に置かれたときに変形する、あるいは着色樹脂粒子同士がくっついてしまい本来の粒子としての振る舞いができなくなる可能性がある。また80℃を超えるような場合、着色樹脂粒子を静電潜像現像用トナーとして用いる場合定着性が悪化する。
【0024】
<ポリオール>
ポリオール(1)としては、ジオール(1-1)と3価以上のポリオール(1-2)が挙げられ、(1-1)単独、または(1-1)と少量の(1-2)の混合物が好ましい。
ジオール(1-1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど);
アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);
ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;3,3´-ジフルオロ-4,4´-ジヒドロキシビフェニル、等の4,4´-ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-フェニル-1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類;
上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2~12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2~12のアルキレングリコールとの併用である。
3価以上のポリオール(1-2)としては、3~8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);
3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0025】
<ポリカルボン酸>
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2-1)と3価以上のポリカルボン酸(2-2)が挙げられ、(2-1)単独、または(2-1)と少量の(2-2)の混合物が好ましい。
ジカルボン酸(2-1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)、3-フルオロイソフタル酸、2-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、2,4,5,6-テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6-テトラフルオロテレフタル酸、5-トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2´-ビス(トリフルオロメチル)-4,4´-ビフェニルジカルボン酸、3,3´-ビス(トリフルオロメチル)-4,4´-ビフェニルジカルボン酸、2,2´-ビス(トリフルオロメチル)-3,3´-ビフェニルジカルボン酸、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物などが挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸である。
3価以上のポリカルボン酸(2-2)としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。
ポリオールとポリカルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1~1/2、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.3/1~1/1.3である。
【0026】
(その他の結着樹脂)
本実施形態のトナーを構成するコアには、下記の結着樹脂を含有することができる。
その他の結着樹脂としては、特に制限はなく、例えば、後述するシリコーン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマリン樹脂、アミドイミド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂など、公知の結着樹脂を挙げることができる。
【0027】
(着色剤)
本発明の着色剤としては公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。
【0028】
(有機溶媒)
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の有機溶媒除去が容易になる点から好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒を用いたほうが溶解性が高く好ましく、このなかでは溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0029】
(プレポリマー)
プレポリマーは硬化剤と反応可能な基を有する樹脂であり、一実施形態では樹脂粒子の製造後は樹脂粒子中に「ポリエステル樹脂(以下、「ポリエステル樹脂A」という)」として樹脂粒子中に含まれる。
プレポリマー(反応性前駆体)としては、活性水素基と反応可能な基を持つポリエステルが挙げられる。前記活性水素基と反応可能な基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸、酸クロリド基などが挙げられる。これらの中でも、前記非晶質ポリエステル樹脂にウレタン結合又はウレア結合を導入可能な点で、イソシアネート基が好ましい。
前記プレポリマーは、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかによって付与される分岐構造を有していても良い。
【0030】
前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、例えば、活性水素基を有するポリエステル樹脂とポリイソシアネートとの反応生成物などが挙げられる。前記活性水素基を有するポリエステル樹脂は、例えば、ジオールと、ジカルボン酸と、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸の少なくともいずれかと重縮合することにより得られる。前記3価以上のアルコール及び前記3価以上のカルボン酸は、前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂に分岐構造を付与する。
【0031】
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン基を有するジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;脂環式ジオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂のガラス転移点を20℃以下に制御する観点から、例えば、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の炭素数3以上10以下の脂肪族ジオールを使用することが好ましく、樹脂中のアルコール成分の50mol%以上使用することがより好ましい。これらのジオールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステル樹脂Aは非晶質樹脂であることが望ましく、また、樹脂鎖に立体障害を持たせることで定着時の溶融粘度が低下し、低温定着性がより発現しやすくなる。このため、前記脂肪族ジオールの主鎖は下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0032】
【化1】
[式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、nは3~9の奇数を表す。但し、n個の繰り返し単位において、R
1及びR
2はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。]
【0033】
ここで、本発明における前記脂肪族ジオールの主鎖とは、前記脂肪族ジオールが有する二つのヒドロキシル基間を最短数で結ばれた炭素鎖のことである。前記主鎖の炭素数は奇数である場合、偶奇性により結晶性が低下するので好ましい。また、少なくとも1つ以上の炭素数1~3のアルキル基を側鎖に有する場合、立体性により主鎖分子間の相互作用エネルギーが低下するのでより好ましい。
【0034】
前記ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。また、これらの無水物や低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。これらの中でも、ポリエステル樹脂(A)のTgを20℃以下に制御する観点から、炭素数4以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、樹脂中のカルボン酸成分の50質量%以上使用することがより好ましい。これらのジカルボン酸は、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0036】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、3価以上の芳香族カルボン酸などが挙げられ、特にはトリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数9以上20以下の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。また、これらの無水物や、低級(炭素数1~3)アルキルエステル化物、ハロゲン化物を用いても良い。
【0037】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート、3価以上のイソシアネートなどが挙げられる。
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び/又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4´-及び/又は4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5~20質量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4´,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4´-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-及び2,6-ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;m-及びp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α´,α´-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香脂肪族ジイソシアネート;リジントリイソシアネート、3価以上のアルコールのジイソシアネート変性物等の3価以上のポリイソシアネート;これらのイソシアネートの変性物が挙げられ、これらの2種以上の混合物であっても良い。前記イソシアネートの変性物としては、例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。
【0038】
(帯電制御剤)
油相には、帯電制御剤などを添加してもよい。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE-82、サリチル酸系金属錯体のE-84、フェノール系縮合物のE-89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。帯電制御剤は性能を発現し定着性などへの阻害がない範囲の量で用いられればよく、トナー中に0.5~5質量%、好ましくは0.8~3質量%含まれるのが良い。
【0039】
(転相乳化工程)
次に、油相作製工程で得られた油相を微粒子化する。
本実施形態では、上述の油相を中和剤で中和した後、それに水相を添加していき、油中水型分散液(油中水型エマルション)から水中油型分散液(水中油型エマルション)に転相させる転相乳化によって微粒子分散液を得る。
【0040】
中和剤は、塩基性無機化合物、塩基性有機化合物のいずれを用いても良い。塩基性無機化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、アンモニアなどが挙げられる。塩基性有機化合物としては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、モノメタノールアミン、モルホリン、メトキシプロピルアミン、ピリジン、ビニルピリジン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0041】
中和時は通常の撹拌機や、分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行う。分散装置としては、特に限定は無く、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の撹拌機と分散装置は併用しても良い。
【0042】
水相は、イオン交換水や有機溶剤を含んだイオン交換水を用いる。有機溶剤は酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒が挙げられる。有機溶剤濃度は、造粒性の点からイオン交換水に対する飽和濃度以下であることが好ましい。
【0043】
乳化時は通常の撹拌機や、分散装置を用いて均一に混合、分散させながら行う。分散装置としては、特に限定は無く、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、ホモミキサー、ウルトラミキサー、ディスパーミキサー、貫通型高圧分散装置、衝突型高圧分散装置、多孔型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザーなどが挙げられる。通常の撹拌機と分散装置は併用しても良い。
【0044】
(脱溶剤工程)
得られた微粒子分散体から有機溶媒を除去する。
有機溶媒を除去する方法としては、次の4つの方法が挙げられる。
(1)系全体を攪拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法
(2)得られた微粒子分散液を攪拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去する方法
(3)微粒子分散液を攪拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去する方法
(4)微粒子分散液を攪拌しながら、気体を吹き付けることで有機溶剤を蒸発除去する方法
なお、上記(2)(3)(4)の手段は、上記(1)の手段と併用することも可能である。
【0045】
微粒子分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガスなどを加熱した気体、中でも使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。
スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
吹き付ける気体は、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガスなどを加熱した気体などが用いられる。
以上の方法で、微粒子分散液を得ることが出来る。
【0046】
(凝集工程)
次に、得られた着色微粒子分散液を攪拌しながら任意の粒径になるまで凝集させる。凝集させるためには、凝集剤を添加したり、pH調整など、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集塩は着色粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のTg付近であることが好ましい。液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪く、液温が高すぎると凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生するなど粒径分布が悪化する。
狙いの粒径に達したら、凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法などが使用できる。
以上の方法により、着色凝集粒子の分散液を得ることが出来る。
【0047】
凝集工程においては、離型剤としてワックスを添加したり、低温定着性のために結晶性樹脂を添加してもよい。その場合、ワックスを水系媒体に分散させた分散液や、同様に結晶性樹脂の分散液を用意し、前記着色微粒子分散液と混合した上で凝集させていくことで、均一にワックスや結晶性樹脂が分散した凝集粒子を得ることが出来る。
【0048】
以下、凝集剤、ワックスや結晶性樹脂について説明する。
(凝集剤)
凝集剤としては、公知のものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが使用できる。
【0049】
(ワックス)
ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でもホットオフセット性が良好となる。
【0050】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類、等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子、などを用いてもよい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。融点が、50℃以上であれば、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であれば、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
【0052】
ワックスの溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。
【0053】
ワックスの前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。前記含有量が、40質量%以下であれば、トナーの流動性悪化を防止することができる。
【0054】
(結晶性ポリエステル樹脂)
結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0055】
<<多価アルコール>>
前記多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0056】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。
これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<<多価カルボン酸>>
前記多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0058】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性および軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0060】
本発明における結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができるが、簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例としてあげることができる。
【0061】
分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、o-ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。
更には、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0062】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましく、一方、ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。また、結晶性高分子の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電特性を達成するためには0mgKOH/g~50mgKOH/g、より好ましくは5mgKOH/g~50mgKOH/gのものが好ましい。
【0063】
離型剤のSP値と結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の絶対値(ΔSP値)が1.1(cal/cm3)1/2以下であることが好ましい。
樹脂のSP値は製造時のモノマー仕込量からFedors法により算出することができる。
樹脂モノマー組成が不明な場合は下記のような方法によって、モノマーを特定することが可能である。
<トナー構成成分の樹脂のモノマーの構成比率の算出方法及び分析方法>
前記モノマーの配合量は、どのような手法を用いて算出してもよい。例えば、トナーからゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)等により分離を行い、その分離した各成分について後述の分析手法を採ることで、構成成分の質量比を算出することができる。
また、反応試薬(10%Tetramethyl ammonium hydroxide(TMAH)/Methanol溶液)による300℃のガスクロマトグラフ質量分析法により、樹脂構造中のエステル結合部をメチル化によるソフトな分解から、主な構成成分を推定し、TICC強度の検量線を引くことで定量分析が可能となる。
GPCによる各成分の分離は、例えば、以下の方法により行うことができる。
THF(テトラヒドロフラン)を移動相としたGPC測定において、溶出液についてフラクションコレクターなどにより分取を行い、溶出曲線の全面積分のうちの所望の分子量部分に相当するフラクションをまとめる。
このまとめた溶出液をエバポレーターなどにより濃縮及び乾燥した後、固形分を重クロロホルム又は重THFなどの重溶媒に溶解させ、1H-NMR測定を行い、各元素の積分比率から、溶出成分における樹脂の構成モノマー比率を算出する。
また、他の手法としては、溶出液を濃縮後、水酸化ナトリウムなどにより加水分解を行い、分解生成物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにより定性定量分析することで構成モノマー比率を算出する。
【0064】
(融着工程)
次に、得られた前記凝集粒子を熱処理によって融着させ、凹凸を減らす。融着は、着色凝集粒子の分散液を攪拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のTgを超えた温度付近が好ましい。
【0065】
(シェル化工程)
シェル化工程は、前記融着工程で得られた球形化粒子にシェル層を形成する工程である。
前記シェル層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記融着工程で目的とする粒径の球形化した粒子を作製した後、前記非晶質樹脂を添加し、前記凝集工程及び前記融着工程を繰り返すことで、シェル層を形成する方法などが挙げられる。
【0066】
(アニーリング工程)
結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非晶質樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0067】
(洗浄、乾燥工程)
上記の方法で得られたトナー粒子分散液には、トナー粒子のほかに凝集塩などの副材料が含まれているため、分散液からトナー粒子のみを取り出すために洗浄を行う。
トナー粒子の洗浄方法としては、遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0068】
いずれの方法によってもトナー粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系溶媒に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法でトナー粒子を取り出す工程を繰り返しても良いし、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系溶媒をケーキに貫通させて着色樹脂粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採っても良い。
この洗浄に用いる水系溶媒は水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いるが、コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0069】
洗浄されたトナー粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行って水系媒体を除去することでトナー粒子のみを得ることができる。乾燥方法としては、スプレイドライアー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。
乾燥されたトナー粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。
また、乾燥後の着色樹脂粒子は軟凝集をしており使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしても良い。
【0070】
(外添工程)
本発明で得られたトナー粒子には、流動性、帯電性、クリーニング性などを持たせるために、無期微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤などを添加、混合してもよい。
具体的な混合手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
【0071】
(外添剤)
無機微粒子の一次粒子径は、5nm~2μmであることが好ましく、特に5nm~500nmであることが好ましい。
また、BET法による比表面積は、20~500m2/gであることが好ましい。
この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。
【0072】
無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0073】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0074】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。
ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μmから1μmのものが好ましい。
【0075】
(トナー収容ユニット)
本発明におけるトナー収容ユニットとは、トナーを収容する機能を有するユニットに、トナーを収容したものをいう。ここで、トナー収容ユニットの態様としては、例えば、トナー収容容器、現像器、プロセスカートリッジが挙げられる。
トナー収容容器とは、トナーを収容した容器をいう。
現像器は、トナーを収容し現像する手段を有するものをいう。
【0076】
<プロセスカートリッジ>
本発明に関するプロセスカートリッジは、各種画像形成装置に着脱可能に形成されており、静電潜像を担持する感光体と、感光体上に担持された静電潜像を本発明の現像剤で現像してトナー像を形成する現像手段を少なくとも有する。なお、本発明のプロセスカートリッジは、必要に応じて、他の手段をさらに有していてもよい。
前記現像手段としては、本発明の現像剤を収容する現像剤収容部と、現像剤収容部内に収容された現像剤を担持すると共に搬送する現像剤担持体を少なくとも有する。なお、現像手段は、担持する現像剤の厚さを規制するため規制部材等をさらに有してもよい。
【0077】
前記トナー収容ユニットを、画像形成装置に装着して画像形成することで、耐オフセット性、帯電安定性、耐ストレス性、地汚れに優れた、高精細・高品質な画像を長期にわたって提供することのできる前記トナーの特徴を活かし、長期的な画像安定性を有し、かつ高品質・高精細な画像を形成することができる。
【0078】
(画像形成装置、及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関する画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成手段により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像手段により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の手段により好適に行うことができる。
【0079】
本発明の画像形成装置は、より好ましくは、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着手段とを含む。
また、本発明の画像形成方法は、より好ましくは、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、前記静電潜像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー像を定着する定着工程とを含む。
【0080】
前記現像手段において、前記トナーが使用される。好ましくは、前記トナーを含有し、更に必要に応じて、キャリアなどのその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、前記トナー像を形成するとよい。
【0081】
<静電潜像担持体>
前記静電潜像担持体(以下、「感光体」とも称する)の材質、構造、大きさとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、その材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体などが挙げられる。
【0082】
<静電潜像形成手段>
前記静電潜像形成手段としては、前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記静電潜像担持体の表面を帯電させる帯電部材と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光部材とを少なくとも有する手段などが挙げられる。
【0083】
<現像手段>
前記現像手段としては、前記静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像して可視像を形成する、トナーを備える現像手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0084】
<クリーニング手段>
本発明の画像形成装置においては、クリーニング手段を有することが好ましい。
上述したように、本発明のトナーは、クリーニング性に優れる。したがって、前記トナーを、クリーニング手段を有する前記画像形成装置に適用することにより、以下の点で、クリーニング性が向上する。
・トナーのスペーサー効果を向上することにより、ストレス下においてもトナーの流動性が維持され、クリーニング性が向上する。
・外添剤(シリカ)遊離量B(質量%)が、0.3<B<2.0を満たすことにより、感光体上におけるトナーから外添剤が十分に遊離するため、クリーニングブレードニップ部における外添剤の堆積層(ダム層)を形成することにより、高いクリーニング性を達成することができる。
【0085】
前記クリーニング手段としては、前記感光体上に残留する前記トナーを除去できる手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナなどが挙げられる。
【0086】
<その他の手段>
前記その他の手段としては、例えば、転写手段、定着手段、除電手段、リサイクル手段、制御手段などが挙げられる。
【0087】
次に、本発明の画像形成装置により画像を形成する方法を実施する一の態様について、
図1を参照しながら説明する。
【0088】
図1に、本発明の画像形成装置の一例を示す。
図1に示すカラー画像形成装置100Aは、前記静電潜像担持体としての感光体ドラム10(以下「感光体10」と称することがある)と、前記帯電手段としての帯電ローラ20と、前記露光手段としての露光装置30と、前記現像手段としての現像器40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有する前記クリーニング手段としてのクリーニング装置60と、前記除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0089】
中間転写体50は、無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50の近傍には、クリーニングブレードを有するクリーニング装置90が配置されている。また、中間転写体50の近傍には、記録媒体としての転写紙Pに現像像(トナー画像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が、中間転写体50に対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、中間転写体50上のトナー画像に電荷を付与するためのコロナ帯電器52が、該中間転写体50の回転方向において、感光体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と転写紙95との接触部との間に配置されている。
【0090】
感光体ドラム10の周囲に、ブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M及びシアン現像ユニット45Cが直接対向して配置されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラに回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0091】
図1に示すカラー画像形成装置100Aにおいて、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光体ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。感光体ドラム10上に形成された静電潜像を、現像器40からトナーを供給して現像してトナー画像を形成する。該トナー画像が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、感光体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、感光体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0092】
図2に、本発明の画像形成装置の他の一例を示す。
図2に示す画像形成装置100Bは、複写装置本体150と、給紙テーブル200と、スキャナ300と、原稿自動搬送装置(ADF)400とを備えている。
複写装置本体150には、無端ベルト状の中間転写体50が中央部に設けられている。そして、中間転写体50は、支持ローラ14、15及び16に張架され、
図2中、時計回りに回転可能とされている。支持ローラ15の近傍には、中間転写体50上の残留トナーを除去するための中間転写体クリーニング装置17が配置されている。支持ローラ14と支持ローラ15とにより張架された中間転写体50には、その搬送方向に沿って、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4つの画像形成手段18が対向して並置されたタンデム型現像器120が配置されている。タンデム型現像器120の近傍には、前記露光部材である露光装置21が配置されている。中間転写体50における、タンデム型現像器120が配置された側とは反対側には、二次転写装置22が配置されている。二次転写装置22においては、無端ベルトである二次転写ベルト24が一対のローラ23に張架されており、二次転写ベルト24上を搬送される転写紙と中間転写体50とは互いに接触可能である。二次転写装置22の近傍には前記定着手段である定着装置25が配置されている。定着装置25は、無端ベルトである定着ベルト26と、これに押圧されて配置された加圧ローラ27とを備えている。
なお、タンデム画像形成装置においては、二次転写装置22及び定着装置25の近傍に、転写紙の両面に画像形成を行うために該転写紙を反転させるためのシート反転装置28が配置されている。
【0093】
次に、タンデム型現像器120を用いたフルカラー画像の形成(カラーコピー)について説明する。即ち、先ず、原稿自動搬送装置(ADF)400の原稿台130上に原稿をセットするか、あるいは原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス32上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。
【0094】
スタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットした時は、原稿が搬送されてコンタクトガラス32上へと移動された後で、一方、コンタクトガラス32上に原稿をセットした時は直ちに、スキャナ300が駆動する。そして、第1走行体33及び第2走行体34が走行する。このとき、第1走行体33により、光源からの光が照射されると共に原稿面からの反射光を第2走行体34におけるミラーで反射し、結像レンズ35を通して読取りセンサ36で受光されてカラー原稿(カラー画像)が読み取られ、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの画像情報とされる。
【0095】
そして、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各画像情報は、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段、及びシアン用画像形成手段)にそれぞれ伝達される。そして、各画像形成手段18において、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各トナー画像が形成される。即ち、タンデム型現像器120における各画像形成手段18(ブラック用画像形成手段、イエロー用画像形成手段、マゼンタ用画像形成手段及びシアン用画像形成手段)は、
図3に示すように、それぞれ、静電潜像担持体10(ブラック用静電潜像担持体10K、イエロー用静電潜像担持体10Y、マゼンタ用静電潜像担持体10M、及びシアン用静電潜像担持体10C)と、該静電潜像担持体10を一様に帯電させる前記帯電手段である帯電装置20と、各カラー画像情報に基づいて各カラー画像対応画像様に前記静電潜像担持体を露光(
図3中、L)し、該静電潜像担持体上に各カラー画像に対応する静電潜像を形成する露光装置と、該静電潜像を各カラートナー(ブラックトナー、イエロートナー、マゼンタトナー、及びシアントナー)を用いて現像して各カラートナーによるトナー画像を形成する前記現像手段である現像装置61と、該トナー画像を中間転写体50上に転写させるための転写帯電器62と、クリーニング装置63と、除電器64とを備えている。そして、各画像形成手段18は、それぞれのカラーの画像情報に基づいて各単色の画像(ブラック画像、イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像)を形成可能である。こうして形成された該ブラック画像、該イエロー画像、該マゼンタ画像及び該シアン画像は、支持ローラ14、15及び16により回転移動される中間転写体50上にそれぞれ、ブラック用静電潜像担持体10K上に形成されたブラック画像、イエロー用静電潜像担持体10Y上に形成されたイエロー画像、マゼンタ用静電潜像担持体10M上に形成されたマゼンタ画像及びシアン用静電潜像担持体10C上に形成されたシアン画像が、順次転写(一次転写)される。そして、中間転写体50上に前記ブラック画像、前記イエロー画像、マゼンタ画像、及びシアン画像が重ね合わされて合成カラー画像(カラー転写像)が形成される。
【0096】
一方、給紙テーブル200においては、給紙ローラ142の1つを選択的に回転させ、ペーパーバンク143に多段に備える給紙カセット144の1つからシート(記録紙)を繰り出す。シートは、分離ローラ145で1枚ずつ分離されて給紙路146に送り出され、搬送ローラ147で搬送されて複写機本体150内の給紙路148に導かれ、レジストローラ49に突き当てて止められる。あるいは、給紙ローラ142を回転して手差しトレイ54上のシート(記録紙)を繰り出し、分離ローラ52で1枚ずつ分離して手差し給紙路53に入れ、同じくレジストローラ49に突き当てて止める。なお、レジストローラ49は、一般には接地されて使用されるが、シートの紙粉除去のためにバイアスが印加された状態で使用されてもよい。そして、中間転写体50上に合成された合成カラー画像(カラー転写像)にタイミングを合わせてレジストローラ49を回転させ、中間転写体50と二次転写装置22との間にシート(記録紙)を送出させ、二次転写装置22により該合成カラー画像(カラー転写像)を該シート(記録紙)上に転写(二次転写)する。そうすることにより、該シート(記録紙)上にカラー画像が転写され形成される。なお、画像転写後の中間転写体50上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置17によりクリーニングされる。
【0097】
カラー画像が転写され形成された前記シート(記録紙)は、二次転写装置22により搬送されて、定着装置25へと送出され、定着装置25において、熱と圧力とにより前記合成カラー画像(カラー転写像)が該シート(記録紙)上に定着される。その後、該シート(記録紙)は、切換爪55で切り換えて排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。あるいは、シートは、切換爪55で切り換えてシート反転装置28により反転されて再び転写位置へと導かれ、裏面にも画像を記録した後、排出ローラ56により排出され、排紙トレイ57上にスタックされる。
【0098】
図4に、本発明に関するプロセスカートリッジの一例を示す。プロセスカートリッジ110は、感光体ドラム10、コロナ帯電器52、現像器40、転写ローラ80及びクリーニング装置90を有する。
【実施例0099】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。また、以下の記載においては特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。
【0100】
<実施例1>
(ポリエステル樹脂1の作製)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物/ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3mol付加物(モル比40/60)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸/アジピン酸(モル比85/15)、全モノマー量に対して3.5mol%のトリメチロールプロパンを、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.2となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmを入れ、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、全モノマー量に対して1.0mol%の無水トリメリット酸と、全モノマー量に対して200ppmのオルトチタン酸テトラブチルを入れ、常圧にて180℃で1時間反応させた後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させ、DSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移点が57℃、重量平均分子量が7,700の[ポリエステル樹脂1]を得た。
【0101】
(プレポリマー1の作製)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分として3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸/アジピン酸(モル比55/45)、全モノマー量に対して1.0mol%のトリメチロールプロパン、全モノマー量に対して0.5mol%の無水トリメリット酸を、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.5となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmを入れ、窒素気流下にて2時間かけて200℃まで昇温し、更に2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら3時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて5時間反応させ、重量平均分子量が18,000の[中間体ポリエステル1]を得た。
【0102】
次いで、冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、[中間体ポリエステル1]と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を、IPDIのイソシアネート基と[中間体ポリエステル1]の水酸基のモル比(NCO/OH)が、2.0となる量を入れ、50%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて溶解した。その後、窒素気流下にて80℃まで昇温して5時間反応させ、ポリエステル樹脂(A)の反応性前駆体である[プレポリマー1]の酢酸エチル溶液を得た。
得られた[プレポリマー1]のアミン伸長物のDSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移点は-37℃であった。
【0103】
前記[プレポリマー1]のアミン伸長物は、まず[プレポリマー1]が20%酢酸エチル溶液となるように酢酸エチルを加えて調整し、撹拌しながらイソホロンジアミン(IPDA)の20%酢酸エチル溶液を、[プレポリマー1]のイソシアネート基とIPDAのアミノ基のモル比(NH2/NCO)が1.1となる量を滴下し、十分に撹拌することで得られる。得られたアミン伸長物の酢酸エチル溶液を、テフロン(登録商標)シャーレ上にキャストし、80℃の環境下で10時間乾燥し、更に120℃、10kPa以下の環境下で減圧乾燥し、十分に溶媒を除去し、[プレポリマー1]のアミン伸長物を得た。
【0104】
(結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1の作製)
<結晶性ポリエステル樹脂C-1の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を得た。
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-1](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を溶解させた。
[結晶性ポリエステル樹脂C-1]のSP値は10.2(cal/cm3)1/2であった。
【0105】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1の作製>
撹拌棒、及び温度計をセットした容器に[結晶性ポリエステル樹脂C-1]45部、及び酢酸エチル450部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒間、直径0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行い、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は450nm、樹脂粒子の固形分濃度は10%であった。
また、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の融点は74.9℃であり、SP値は10.2(cal/cm3)1/2であった。
【0106】
<結晶性ポリエステル樹脂C-2の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、エチレングリコールとセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-2]を得た。
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-2](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-2]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記[結晶性ポリエステル樹脂C-2]を溶解させた。
[結晶性ポリエステル樹脂C-2]のSP値は10.0(cal/cm3)1/2であった。
【0107】
<結晶性ポリエステル樹脂C-3の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールと1,10デカンジカルボン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-3]を得た。
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-3](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-3]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記[結晶性ポリエステル樹脂C-3]を溶解させた。
[結晶性ポリエステル樹脂C-3]のSP値は9.7(cal/cm3)1/2であった。
【0108】
<結晶性ポリエステル樹脂C-4の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、エチレングリコールとアジピン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-4]を得た。
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-4](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-4]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記[結晶性ポリエステル樹脂C-4]を溶解させた。
[結晶性ポリエステル樹脂C-4]のSP値は10.9(cal/cm3)1/2であった。
【0109】
<結晶性ポリエステル樹脂C-5の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-5]を得た。
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-5](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-5]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記[結晶性ポリエステル樹脂C-5]を溶解させた。
[結晶性ポリエステル樹脂C-5]のSP値は9.8(cal/cm3)1/2であった。
【0110】
<結晶性ポリエステル樹脂C-6の合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、1,6-ヘキサンジオールとシュウ酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、攪拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-6]を得た。
四つ口フラスコに、[結晶性ポリエステル樹脂C-6](55部)、メチルエチルケトン(35部)、及び2-プロピルアルコール(10部)を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-6]の融点温度で加熱しながら撹拌し、上記[結晶性ポリエステル樹脂C-6]を溶解させた。[結晶性ポリエステル樹脂C-6]のSP値は10.8(cal/cm3)1/2であった。
【0111】
<マスターバッチ用非晶質ポリエステル樹脂MBの合成>
窒素導入管、脱水管、撹拌機及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物、テレフタル酸及びアジピン酸を、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物とビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物とがモル比(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物/ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物)で60/40であり、テレフタル酸とアジピン酸とがモル比(テレフタル酸/アジピン酸)で97/3であり、水酸基とカルボキシル基とのモル比であるOH/COOHが1.3となるように仕込み、チタンテトライソプロポキシド(樹脂成分に対して500ppm)と共に常圧、230℃で8時間反応させ、更に10mmHg~15mmHgの減圧で4時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸を全樹脂成分に対して1mol%になるよう入れ、180℃、常圧、4時間で反応させ、[マスターバッチ用非晶質ポリエステル樹脂MB]を得た。
【0112】
<マスターバッチ1の調製>
水1,200部、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕500部、及び[マスターバッチ用非晶質ポリエステル樹脂MB]500部を加え、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)で混合し、混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
【0113】
(WAX分散液1の作製)
イオン交換水720部にエステルワックス180部(日油株式会社製、WE-11、植物由来モノマーの合成ワックス、融点67℃)、界面活性剤としてアニオン系界面活性剤17部(第一工業製薬製、ネオゲンSC、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を添加した。これを90℃に加熱しながらホモジナイザーで分散処理し、[WAX分散液1]を得た。得られたワックス粒子の体積平均粒径は300nm、樹脂粒子の固形分濃度は25%であった。
上記エステルワックスのSP値は9.5(cal/cm3)1/2であった。
【0114】
(WAX分散液2の作製)
WAX分散液1の作製において、エステルワックス(日油株式会社製、WE-11、融点67℃)をエステルワックス(日油株式会社製、WE-10、融点70.4℃)に代えた以外はWAX分散液1と同様にして[WAX分散液2]を得た。
上記エステルワックスのSP値は9.7(cal/cm3)1/2であった。
【0115】
<トナー作製>
<油相の調製>
[プレポリマー1のアミン伸長物]50部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]50部、[WAX分散液1]50部、[ポリエステル樹脂1]550部、[マスターバッチ1]100部を容器に入れ、TKホモミキサー(プライミクス株式会社製)で5,000rpmで60分間混合し、[油相1]を得た。
なお、上記配合量は、各原材料における固形分の配合量を示す。
【0116】
<水相の調製>
水990部、ドデシル硫酸ナトリウム20部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とした。
【0117】
<乳化>
[油相1]700部をTKホモミキサーで、回転数8,000rpmで撹拌しながら、中和率400%になるようにして28%アンモニア水20部を加え、10分間混合した後、[水相1]1,200部を徐々に滴下していき、[乳化スラリー1]を得た。[乳化スラリー1]の粒径を測定したところ、0.50μmであった。また固形分濃度を測定したところ、23.0%であった。
【0118】
<凝集・融着工程>
[乳化スラリー1]を100部、イオン交換水300部を容器に入れて1分間攪拌した。
次に、3%塩化マグネシウム溶液100部を滴下して更に5分攪拌した後、60℃に昇温した。
その後、粒径が5.0μmになったところで塩化ナトリウムを50部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。
そのまま[凝集スラリー1]を攪拌しながら70℃に加熱して、所望の円形度である0.957になったところで冷却し、[樹脂粒子分散液1]を得た。
【0119】
<アニーリング工程・洗浄・乾燥工程>
[樹脂粒子分散液1]を、45℃で10時間保管した後に減圧濾過し、以下のように洗浄と乾燥を行った。
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。リスラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した後濾過して、[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[樹脂粒子1]を得た。
【0120】
<外添>
[樹脂粒子1]100部に対して無機微粒子であるキャボジル社製TS530を2.5部添加し、ヘンシェルミキサーで40m/sで10分間混合処理し、[トナー1]を得た。
【0121】
<実施例2>
実施例1において、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製における[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-2]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を68℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー2]を得た。
【0122】
<実施例3>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-3]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリー1の加熱温度を75℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー3]を得た。
【0123】
<実施例4>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-2]に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー4]を得た。
【0124】
<実施例5>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-2]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして[トナー5]を得た。
【0125】
<実施例6>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-2]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を72℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー6]を得た。
【0126】
<実施例7>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-6]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を72℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー7]を得た。
【0127】
<比較例1>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-4]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を72℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー8]を得た。
【0128】
<比較例2>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-4]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]に、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を75℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー9]を得た。
【0129】
<比較例3>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-5]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を65℃に変更した以外は実施例1と、同様にして[トナー10]を得た。
【0130】
<比較例4>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-4]に、[WAX分散液1]を[WAX分散液2]にそれぞれ変更し、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を65℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー11]を得た。
【0131】
<比較例5>
実施例1において[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]の作製において[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を[結晶性ポリエステル樹脂C-4]に、凝集・融着工程において凝集スラリーの加熱温度を68℃に変更した以外は実施例1と同様にして[トナー12]を得た。
【0132】
実施例1~7、比較例1~5の油相の組成を表1に示す。表1中の「↑」は「上の欄記載したものと同じ」を意味する。
【0133】
【0134】
実施例1~7、比較例1~5におけるワックスの物性および前述の測定方法で計測した形状、結晶性ポリエステル樹脂の物性および前述の測定方法で計測した結晶性ポリエステル樹脂の被覆率、凝集スラリーの条件を表2に示した。
【0135】
【0136】
<キャリアの作製>
トルエン100部に、シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコーン)100部、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部、及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。
流動床型コーティング装置を用いて、体積平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000部の表面に前記樹脂層塗布液を塗布して、[キャリア]を作製した。
【0137】
<現像剤の作製>
ボールミルを用いて、各[トナー]5部と[キャリア]95部とを混合し、各[現像剤]を作製した。
【0138】
次に、得られた各トナー及び各現像剤を用い、以下のようにして諸特性を評価した。
【0139】
<低温定着性>
複合樹脂粒子を紙面上に0.8mg/cm2となるように均一に載せる。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いる。
上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。
この紙を加圧ローラに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
【0140】
〔評価基準〕
◎:定着下限温度が130℃以下
○:定着下限温度が130℃より大きく135℃以下
△:定着下限温度が135℃より大きく140℃以下
×:定着下限温度が140℃より大きい
【0141】
<耐熱保存性>
50mLのガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽に24時間放置した後、24℃まで冷却した。次に、針入度試験(JISK2235-1991)により針入度[mm]を測定し、耐熱保存性を評価した。
〔評価基準〕
◎:針入度20mm以上
○:針入度15mm以上20mm未満
△:針入度10mm以上15mm未満
×:針入度10mm未満
【0142】
<画質品質>
カラープロダクションプリンター(株式会社リコー製、RICOH Pro C7210S)を用いて、コート紙(王子製紙社製、PODグロスコート紙)上に、400dpi評価用標準ラインチャート画像(出力画像)を形成した。出力画像は、ブラックベタ画像のライン画像が作成されるように形成した。
形成した細線ライン部分を原稿ファイル画像と比較し、再現性を下記表各準により評価した。なお、評価結果が「3」以上であると、実用上使用可能なレベルである。
【0143】
[評価基準]
5:原稿画像の連続したライン部の画像がルーペで観察しても、高輝性ラインの抜け部分なく、再現されている。
4:100倍の拡大率でルーペを用いて観察するとわずかにライン画像の部分的な抜けが見られる。
3:100倍の拡大率でルーペを用いて観察するとライン画像の部分的な抜けが見られる。
2:目視でライン画像の部分的な抜け一部が見られる。
1:目視でライン画像の連続して欠けている部分が明瞭に見られる。
【0144】
実施例1~7、比較例1~5の評価結果を表3に示した。
【0145】
【0146】
表3の結果から、本発明の実施例1~7は、低温定着性、耐熱保存性、画像品質のいずれも優れた性能を示すことがわかった。
一方で、比較例1~5は、低温定着性、耐熱保存性、画像品質が悪化していることが分かった。
【0147】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
(1)少なくとも結着樹脂と、離型剤と、を含有する樹脂粒子であって、
前記結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含み、
前記離型剤のドメイン径が1μm以下であり、
前記離型剤表面の80%以上が結晶性ポリエステル樹脂によって覆われており、
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点が離型剤の融点よりも高い
ことを特徴とする樹脂粒子。
(2)前記離型剤のSP値と結晶性ポリエステル樹脂のSP値との差の絶対値(ΔSP値)が1.1(cal/cm3)1/2以下である、上記(1)に記載の樹脂粒子。
(3)前記結着樹脂が脂肪族アルコールモノマーを含有する非晶質ポリエステル樹脂である、上記(1)又は(2)に記載の樹脂粒子。
(4)前記離型剤が球形である、上記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の樹脂粒子。
(5)上記(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の樹脂粒子からなることを特徴とするトナー。
(6)少なくとも、結晶性ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、離型剤と、を有機溶媒に溶解または分散させた油相を作製する油相作製工程と、
前記油相に水相を添加して、油中水型分散液から水中油型分散液に転相させる転相乳化工程と、
前記水中油型分散液から有機溶媒を除去して微粒子分散液を得る脱溶剤工程と、
前記微粒子分散液の微粒子を凝集させる凝集工程と、
を含むことを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の樹脂粒子の製造方法。
(7)静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する、トナーを備える現像手段と、を有し、
前記トナーが、上記(5)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(8)静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像担持体上に形成された前記静電潜像を、トナーを用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、を含み、
前記トナーが、上記(5)に記載のトナーであることを特徴とする画像形成方法。