(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137880
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240927BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240927BHJP
C08L 23/24 20060101ALI20240927BHJP
C08L 35/00 20060101ALI20240927BHJP
C08L 57/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L67/00
C08L23/24
C08L35/00
C08L57/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045298
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023047153
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山口 実沙紀
(72)【発明者】
【氏名】上田 雅博
(72)【発明者】
【氏名】宮井 章吾
(72)【発明者】
【氏名】成田 和章
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB03W
4J002BB06W
4J002BB07W
4J002BB11W
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4J002GG01
4J002GG02
4J002GK01
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】流動性に優れ、高い靭性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)と、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とα-オレフィンとの共重合体(C)と、を含み、前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が前記共重合体(C)の主鎖にある、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(A)と、
ポリエステル樹脂(B)と、
カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とα-オレフィンとの共重合体(C)と、を含み、
前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が前記共重合体(C)の主鎖にある、樹脂組成物。
【請求項2】
前記共重合体(C)が、炭素原子数が21以上の前記α-オレフィンを含む共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体が、ジカルボン酸無水物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合体(C)の酸価が15mg・KOH/g以上200mg・KOH/g以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記共重合体(C)の質量平均分子量が5,000以上200,000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、及び前記共重合体(C)の合計100質量部における、前記共重合体(C)の含有量が、0.5質量部以上5質量部未満である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリオレフィン樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、及び前記共重合体(C)の合計100質量部における、前記ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が、1質量部以上95質量部以下であり、前記ポリエステル樹脂(B)の含有量が、1質量部以上95質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂(A)がプロピレン系重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、剛性、ガスバリアー性、およびフレーバーバリアー性等に優れている事から、調味料、飲料類、化粧品等の容器、或いは食品包装用フィルムの材料として広く用いられている。一方、ポリエステル樹脂は、高い剛性を有しているものの、そのガラス転移温度が約81℃と高いことから、耐衝撃性を必要とする成形品の製造には不向きである。また、それ自身はヒートシールが不可能であるといった課題があり、用途に合わせて様々な特性の改善が求められる。これらのことから、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンド(ポリマーアロイを含む)が盛んに検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂、及び、カルボン酸変性エチレン・α-オレフィン共重合体を所定の比率で配合することにより、高い低温衝撃強度および高い剛性を有する成形品を製造することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンドは、様々な用途への適用が想定されるために、各用途に合った特性を有するとともに成形体とした際の外観性にも優れることが求められる。しかしながら、本発明者等の検討によると、特許文献1に記載の相溶剤を用いた場合、得られる成形体の靭性および外観が十分ではなく、さらなる改善が必要であることが判明した。
【0006】
本発明の一態様は、流動性に優れ、高い靭性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができるポリマーブレンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等の鋭意検討により、ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、のポリマーブレンドに、特定の構造からなる共重合体を併用することにより、上記課題を解決することができることが判明し、本発明を達成するに至った。すなわち、本発明は、以下を要旨とする。
【0008】
[1]ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)と、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とα-オレフィンとの共重合体(C)と、を含み、前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が前記共重合体(C)の主鎖にある、樹脂組成物。
[2]前記共重合体(C)が、炭素原子数が21以上の前記α-オレフィンを含む共重合体である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体が、ジカルボン酸無水物である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記共重合体(C)の酸価が15mg・KOH/g以上200mg・KOH/g以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記共重合体(C)の質量平均分子量が5,000以上200,000以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記ポリオレフィン樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、及び前記共重合体(C)の合計100質量部における、前記共重合体(C)の含有量が、0.5質量部以上5質量部未満である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記ポリオレフィン樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、及び前記共重合体(C)の合計100質量部における、前記ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が、1質量部以上95質量部以下であり、前記ポリエステル樹脂(B)の含有量が、1質量部以上95質量部以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記ポリオレフィン樹脂(A)がプロピレン系重合体である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]前記ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、成形体とした際に流動性に優れ、高い靭性と優れた外観性を備えるポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、を含む樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例および比較例に係る成形体における、外観評価のサンプルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は目的を逸脱しない範囲において以下の実施形態に限定されるわけではない。なお、本明細書において「~」は、下限と上限とを含むものとする。また、各好ましい範囲については、上限と下限とを任意で組み合わせて使用することができる。
【0012】
<1.樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂(以下、ポリオレフィン樹脂(A)と称す場合がある)と、ポリエステル樹脂(以下、ポリエステル樹脂(B)と称す場合がある)、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とα-オレフィンとの共重合体であり、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が主鎖にある共重合体(以下、共重合体(C)と称す場合がある)と、を含む。
【0013】
ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、のポリマーブレンドの樹脂組成物は、樹脂同士の相溶性を向上するために、相溶化剤が用いられる場合がある。このような相溶化剤として、特開2001-106886号公報に記載されるようなカルボン酸変性エチレン・α-オレフィン共重合体を併用することが提案されている。しかしながら、これらのポリマーブレンドは引張破断伸度またはシャルピー衝撃強度といった靭性が十分ではない。また、上記ポリマーブレンドの成形体にはポリエステル樹脂の分散不良による、いわゆるブツが確認される等、外観性の改善が必要な場合がある。
【0014】
しかしながら、本発明の一態様においては、上記ポリマーブレンドにおいて、特定の構造からなる共重合体(C)を併用することにより高い靭性と優れた外観性を備えた成形体を提供することができる。
【0015】
これは、共重合体(C)はその構造により、ポリエステル樹脂(B)とポリオレフィン樹脂(A)とのポリマーブレンドと併用した際に、α-オレフィン鎖がポリオレフィン樹脂(A)の非晶部分に入り込むことでポリオレフィン樹脂との相溶性を維持し得る。また、共重合体(C)は、カルボン酸又はカルボン酸誘導体を有することにより、該共重合体(C)がポリエステル樹脂(B)と適度に反応し、ポリオレフィン樹脂(A)と相溶しやすい分子構造を付与することができるためであると考えられる。これにより、本発明の一態様に係る樹脂組成物は、混合時の分散が助長されることで、ポリエステル樹脂(B)の流動性および剛性と、ポリオレフィン樹脂(A)の靭性とを併せ持った物性を発現し、優れた外観を有する成形体を得ることができる。
【0016】
このように、本発明の一態様によれば、ポリオレフィン樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)を含む成形体の廃棄物をリサイクルする場合に、物性の低減を最小限とすることで、高効率に新たな樹脂組成物およびその成形体を製造できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任つかう責任」等の達成にも貢献するものである。
【0017】
<1-1.ポリオレフィン樹脂(A)>
上述の通り、本実施形態に係る樹脂組成物はポリオレフィン樹脂(A)を含む。なお、本発明の一態様において「ポリオレフィン樹脂(A)」とは、樹脂を構成する全ての構成単位100mol%に対し、オレフィン単位又はシクロオレフィン単位が占める割合が80mol%以上であり、共重合体(C)とは異なる樹脂である。なかでも、ポリオレフィン樹脂(A)を構成する全ての構成単位100mol%に対し、オレフィン単位及びシクロオレフィン単位の合計割合は、85mol%以上が好ましく、90mol%以上が特に好ましい。
【0018】
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、α-オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(3-メチル-1-ブテン)、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のα-オレフィン重合体;エチレン-プロピレンブロック又はランダム共重合体、炭素原子数4以上のα-オレフィン-プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のα-オレフィン共重合体;ポリシクロヘキセン、ポリシクロペンテン等のシクロオレフィン重合体等が挙げられる。
【0019】
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、ステレオブロックポリプロピレン等が挙げられる。炭素原子数4以上のα-オレフィン-プロピレンブロック又はランダム共重合体において、炭素原子数4以上のα-オレフィンとしては、ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂(A)は1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。これらは未使用の重合体であっても、あるいは一旦使用した後の再生重合体であってもよい。
【0020】
上記のなかでも、ポリオレフィン樹脂(A)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリブテンが好ましく、ポリプロピレンおよびブロックポリプロピレン等のプロピレン系重合体が好ましい。
【0021】
ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートは特段の制限はないが、機械特性向上のために、0.1g/10min以上であることが好ましく、0.2g/10min以上であることがさらに好ましく、0.3g/10min以上であることが特に好ましく、一方、加工性向上のために、70g/10min以下であることが好ましく、60g/10min以下であることがより好ましく、50g/10min以下であることが特に好ましく、30g/10min以下であることが極めて好ましく、25g/10min以下であることが殊更好ましく、15g/10min以下であることが大変好ましく、12.5g/10min以下であることがこの上なく好ましく、10g/10min以下であることが最も好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)のメルトフローレートはJIS K7210により算出することができる。
【0022】
なお、ポリオレフィン樹脂(A)の市販品としては、例えば、日本ポリプロ株式会社製のノバテック(登録商標)MA3、ノバテックMA3H、ノバテックMA1B、ノバテックEA9、ノバテックEA9HD、ノバテックEA9FTD、ノバテックEA7AD、ノバテックFY6H、ノバテックEA6A、ノバテックFY6、ノバテックFY6C、ノバテックFY4、ノバテックSA3A、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(登録商標)J105G、プライムポリプロJ106G、プライムポリプロJ106MG、プライムポリプロ107G、プライムポリプロJ137G、プライムポリプロJ108M、エボリュー(登録商標)SP2320、エボリューSP2520、エボリューSP2510、エボリューSP3010、エボリューSP4020、エボリューSP1071C、ハイゼックス(登録商標)1300J、ハイゼックス2100J、ハイゼックス2100JH、ハイゼックス2200J、ハイゼックス2208J、ハイゼックス3300F、ハイゼックス3600F、ハイゼックス7000F、ハイゼックス8000F、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLL UF420、ノバテックLL UF421、ノバテックLL UF621、ノバテックLL UF524、ノバテックLL UF622、ノバテックLL UF230、ノバテックLL UF320、ノバテックLL UF332、ノバテックLL UA421、ノバテックLL UF240、ノバテックLL UF442、ノバテックLL UF641、ノバテックLL UF943、ノバテックLL UJ960、ノバテックLL UJ370、ノバテックLL UJ580、ノバテックLL
UJ480、ノバテックLL UJ990、ノバテックLL UJ790、ノバテックLL UE320、ノバテックLL UR951、ノバテックC6 SF720、ノバテックC6 SF941、ノバテックC6 SF8402、ノバテックHD HJ360、ノバテックHD 362N、ノバテックHD HJ560、ノバテックHD HJ580N、ノバテックHD HJ490、ノバテックHD HJ590N、ノバテックHD HY420、ノバテックHD HY530、ノバテックHD HY430、ノバテックHD
HY331、ノバテックHD HY540、ノバテックHD HE122R、ノバテックHD HF313、ノバテックHD HF111K、ノバテックHD HF560、ノバテックHD HE121、ノバテックHD HE212W、ノバテックHD HE421、ノバテックHD HB420R、ノバテックHD HB338RE、ノバテックHD
HB332E、ノバテックHD HB432E、ノバテックHD HB530、ノバテックHD HB216R、ノバテックHDHB111Rが挙げられる。
【0023】
<1-2.ポリエステル樹脂(B)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(B)を含有する。ここで、ポリエステル樹脂(B)とは、芳香族または脂肪族のジカルボン酸とジオールとの重縮合体であって、製造に際して、ジカルボン酸およびジオールは、各々1種類を選んで通常の重縮合条件下で製造してもよく、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて製造してもよい。
【0024】
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ジフニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸等を例示することができる。
【0025】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等を例示することができる。重縮合に際して、p-ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸を共存させてもよい。
【0026】
前記のジカルボン酸およびジオールから製造したポリエステル樹脂(B)として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を代表例に挙げることができる。またポリエステル樹脂(B)は、それらの成形品を一旦使用した後の再生品であってもよく、さらに、未使用品と再生品との混合物であってもよい。それらポリエステル樹脂(B)は、フェノール/テトラクロロエチレン=50/50(重量比)混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度(IV)が、0.30~0.85(dl/g)であるポリエステル樹脂(B)が使用に適している。
【0027】
ポリエステル樹脂(B)の固有粘度は、0.30(dl/g)超0.85(dl/g)未満であることが好ましい。使用するポリエステル樹脂(B)の固有粘度が0.30(dl/g)以下である場合、溶融張力の低さにより成形性が悪化し、またフィルム等の成形体の機械特性等が不満足なものとなり好ましくない。使用するポリエステル樹脂(B)の固有粘度が0.85(dl/g)以上である場合、溶融粘度の高さにより成形性が悪化する。
【0028】
<1-3.共重合体(C)>
本実施形態に係る樹脂組成物は、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とα-オレフィンとの共重合体であり、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が主鎖にある共重合体(C)を含有する。この共重合体(C)は、ジエン等の他の成分を含んでいてもよい。
【0029】
カルボン酸としては、特段の制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、グルタコン酸、ノルボルナン-5-エン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を示す。
【0030】
カルボン酸誘導体としては、特段の制限はなく、例えば、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カルボン酸イミド等が挙げられる。
【0031】
カルボン酸エステルとしては、特段の制限はなく、上記カルボン酸のエステル化合物が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0032】
カルボン酸無水物としては、特段の制限はなく、例えば、上記カルボン酸の無水物が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等のジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0033】
カルボン酸イミドとしては、特段の制限はなく、例えば、上記カルボン酸のイミド化合物が挙げられ、例えば、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物が挙げられる。
【0034】
なお、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体として、これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。上記の中では、共重合反応性の点から、カルボン酸エステル又はジカルボン酸無水物が好ましく、ジカルボン酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0035】
カルボン酸誘導体として無水マレイン酸を選択した場合、共重合体(C)は、下記一般式(1)を構成単位として有する。
【0036】
【0037】
式(1)中、R1、R2、R3、およびR4のうち少なくともひとつは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基であり、他は水素原子であり、xおよびyはそれぞれ独立して1またはそれ以上の整数である。
【0038】
共重合体(C)の製造方法は特に制限を受けるものではないが、例えば、(1)α-オレフィンを重合した後、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を有する化合物又は単量体を付加させる方法、(2)α-オレフィンと酸性基を有する化合物又は単量体とを共重合する方法等が挙げられる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等のラジカル重合法、又はリビング重合法を採用することができる。さらに一旦マクロモノマーを形成した後、重合する方法も採用可能である。主鎖にカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を有する共重合体(C)を得やすいという点で、上記(2)の方法が好ましい。
【0039】
共重合体(C)100mol%におけるカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体の合計割合は、特段の制限はないが、ポリエステル樹脂(B)とポリオレフィン樹脂(A)との相溶性改善のために、20mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがさらに好ましく、一方、成形品の外観性向上のために80mol%以下であることが好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
【0040】
α-オレフィンとしては、特段の制限はないが、共重合体(C)は、炭素原子数21以上のα-オレフィンを含むことが好ましい。共重合体(C)に炭素原子数が21以上のα-オレフィンが含まれると、ポリオレフィン樹脂(A)との相溶性に優れる傾向がある。α-オレフィン100質量%において、炭素原子数が21以上のα-オレフィンが0.5質量%以上含まれることが好ましく、1質量%以上含まれることがさらに好ましく、2質量%以上含まれることが特に好ましい。
【0041】
共重合体(C)には、炭素原子数が21以上のα-オレフィンが含まれることがさらに好ましく、炭素原子数が24以上のα-オレフィンが含まれることがさらに好ましく、炭素原子数が26以上のα-オレフィンが含まれることが特に好ましく、炭素原子数が30以上のα-オレフィンが含まれることが最も好ましい。一方、樹脂への分散性のために、α-オレフィンの炭素原子数は150以下が好ましく、130以下がさらに好ましく、100以下が特に好ましい。
【0042】
共重合体(C)を有機溶剤に溶解し、溶解液を熱分解GC-MS(ガスクロマトグラフィー質量分析計、無極性カラムを使用)に供することで、共重合体(C)の分子量が得られ、α-オレフィンの炭素原子数と含有量とを算出することができる。共重合体(C)を溶解する有機溶剤としては、例えばTHF(テトラヒドロフラン)が挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
共重合体(C)100mol%におけるα-オレフィン単位の割合は、特段の制限はないが、ポリエステル樹脂(B)とポリオレフィン樹脂(A)との相溶性改善のために、20mol%以上であることが好ましく、30mol%以上であることがさらに好ましく、一方、成形品の外観性向上のために80mol%以下であることが好ましく、70mol%以下がさらに好ましい。
【0044】
共重合体(C)の酸価は、成形品の外観性向上のために、15mg・KOH/g以上であることが好ましく、なかでも、31mg・KOH/g以上であることが好ましく、53mg・KOH/g以上であることがより好ましく、57mg・KOH/g以上であることがさらに好ましく、65mg・KOH/g以上であることがさらにより好ましく、80mg・KOH/g以上であることが特に好ましく、85mg・KOH/g以上であることが最も好ましい。
【0045】
一方、共重合体(C)の酸価が高すぎる場合、共重合体(C)がポリエステル樹脂(B)と過剰に反応してしまい、共重合体(C)がポリエステル樹脂(B)およびポリオレフィン樹脂(A)に対して適当な相溶性を得ることが困難になる可能性がある。そのため、該酸価は、200mg・KOH/g以下であることが好ましく、140mg・KOH/g以下であることがより好ましく、135mg・KOH/g以下であることがさらに好ましく、130mg・KOH/g以下であることが特に好ましい。
【0046】
酸価の測定:
共重合体(C)の酸価は、滴定により測定することができる。共重合体(C)2.0gを溶媒(エタノール/トルエン3/7混合液)に90℃で溶解させる。放冷後、溶解液にフェノールフタレイン溶液を3滴添加し、その後0.5mol/L KOHエタノール溶液で滴定する。共重合体(C)が溶媒(エタノール/トルエン3/7混合液)に不溶な場合は、FT-IR測定により酸価を測定することができる。共重合体(C)を、融解温度以上において5MPaで5分間熱プレスして成形品を作製する。この成形品についてFT-IR測定を行い、1780cm-1の吸収によりカルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体の変性率を定量する。変性率に係数11.44を乗じて酸価を算出する。
【0047】
共重合体(C)の質量平均分子量は、特段の制限はないが、耐衝撃性向上のため2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましく、一方、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましく、250,000以下が特に好ましい。また、質量平均分子量が高すぎると樹脂中での分散性が悪くなることから、質量平均分子量は200,000以下が極めて好ましく、100,000以下が殊更好ましく、50,000以下が大変好ましく、30,000以下が最も好ましい。共重合体(C)の質量平均分子量は、例えば、2,000以上50,000以下であってよく、3,000以上30,000以下であってよく、5,000以上200,000以下であってよい。共重合体(C)の質量平均分子量は、共重合体(C)をTHF等の有機溶剤に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0048】
共重合体(C)の市販品としては、例えば、ダイヤカルナ(登録商標)30M(三菱ケミカル(株)製)が挙げられる。
【0049】
<1-4.樹脂組成物の組成>
樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)合計100質量部におけるポリエステル樹脂(B)の含有量は特段の制限はないが、得られる成形品の耐熱性向上のために、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7.5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが特に好ましく、一方、得られる成形品の軽量化のために、99質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、92.5質量部以下であることがさらに好ましく、90質量部以下であることが特に好ましい。
【0050】
樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)合計100質量部におけるポリオレフィン樹脂(A)の含有量は特段の制限はないが、得られる成形品の軽量化のために、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7.5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが特に好ましく、一方、得られる成形品の耐熱性向上のために、99質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、92.5質量部以下であることがさらに好ましく、90質量部以下であることが特に好ましい。
【0051】
樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対する共重合体(C)の含有量は特段の制限はないが、ポリオレフィン樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)と後述する他の成分との親和性を高めるために、0.1質量部以上であることが好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることが特に好ましく、一方、成形品の外観性向上のために、10質量部以下であることが好ましく、7.5質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部未満であることが特に好ましい。
【0052】
樹脂組成物100質量部におけるポリオレフィン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)の合計量の割合は特段の制限はないが、加工性向上のために、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましく、30質量部以上であることが特に好ましく、一方、成形品の外観性向上のために、99.9質量部以下であることが好ましく、99.8質量部以下であることがさらに好ましく、99.7質量部以下であることが特に好ましい。
【0053】
樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(B)、ポリオレフィン樹脂(A)、及び共重合体(C)以外の他の成分を含有していてもよい。
【0054】
他の成分としては、例えば、フィラーが挙げられる。なお、本発明の一態様においてフィラーとは機械強度、光反射・散乱、難燃性、遮音性、制振性等を付与する目的で添加され、樹脂組成物の加工温度以上の融点を有する成分を意味するものとする。
【0055】
フィラーとしては、特段の制限はないが、無機系フィラー又は有機系フィラーが挙げられる。
【0056】
無機系フィラーとしては特段の制限はなく、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、硫酸バリウム、ワラストナイト、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0057】
有機系フィラーとしては特段の制限はなく、木粉、紙粉、セルロース繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0058】
上記のなかでも、フィラーは無機系フィラーおよび紙紛、セルロース繊維であることが好ましく、なかでも、ガラスフィラーガラスビーズ、紙粉、セルロース繊維が好ましい。
【0059】
樹脂組成物がフィラーを含む場合、その割合は特段の制限はないが、機械強度のために樹脂組成物100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが特に好ましく、一方、成形加工性のために70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以下であることが特に好ましい。
【0060】
また、フィラー以外の他の成分としては、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)以外のその他の樹脂、難燃剤(燐系、ブロム系、シリコーン系、有機金属塩系等)、ドリップ防止剤(例えば、フッ素化ポリオレフィン、シリコーン及びアラミド繊維)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等の長鎖脂肪酸金属塩等)、離型剤(例えば、ペンタエリスリトールテトラステアレート等)、成核剤、帯電防止剤、安定剤(例えば、フェノール系安定剤、硫黄系安定剤、リン系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系光安定剤等)、可塑剤、色素及び顔料等が挙げられる。なお、これらのその他の成分は周知の材料を使用することができ、また、樹脂組成物を使用する用途に合わせて任意で選択して使用することができ、また、樹脂組成物における各その他の成分も任意で選択すればよい。
【0061】
樹脂組成物100質量部におけるその他の成分の割合は特段の制限はないが、通常、0.1質量部以上であり、一方、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば、ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)と、共重合体(C)と、必要に応じて他の成分とを、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等の予備混合手段を用いて充分に混合し、場合により押出造粒器またはブリケッティングマシーン等により造粒し、その後、溶融混練機で溶融混練し、押し出す方法が挙げられる。
【0063】
溶融混練機としては、ベント式二軸押出機等の二軸押出機、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸押出機、3軸以上の多軸押出機等が挙げられる。溶融混練する際の温度は、例えば200~320℃である。上記の如く押し出された樹脂組成物は、直接、ペレタイザー等の機器により切断されてペレット化されるか、又は冷却されてストランドを形成した後、かかるストランドがペレタイザー等の機器により切断されてペレット化される。
【0064】
<2.成形体>
本発明の一態様に係る樹脂組成物を成形することにより、成形体を得ることができる。なお、樹脂組成物の用途としては、自動車、オートバイ、船の部品や電機電子部品、雑貨、繊維、フィルムおよび成形品等をリサイクルして得られる成形体、その他の分野で有用な成形体等が挙げられる。
【0065】
成形体は、上記樹脂組成物を含有する。すなわち、成形体はポリオレフィン樹脂(A)と、ポリエステル樹脂(B)と、共重合体(C)と、を含有する。なお、成形体において各成分の好ましい比率は、上述の樹脂組成物に記載した好ましい比率と同じである。成形体の形状は特に限定されず、樹脂板、シート、フィルム、ケーブル、繊維、異形品等の種々の形状をとり得る。
【0066】
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られるフィルムおよびシートは用途に応じて、ポリエチレン或いはポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アルミ箔、紙等、他の基材と二種或いはそれ以上に積層してもよい。
【0067】
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られる繊維は用途に応じて、ポリエチレン或いはポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエステル等、他の基材と二種或いはそれ以上の層を有してもよい。
【0068】
成形体を得るための成形方法は、特に限定されるものではなく、押し出し加工、カレンダー加工、射出成形、ロール、圧縮成形、ブロー成形等が挙げられる。本発明の一態様に係る樹脂組成物を成形する際の温度は、例えば、200~320℃である。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。尚、以下の実施例等において、%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0070】
[実施例1~10、比較例1~11]
表1及び表2に示す比率で各原料を配合し、ハンドブレンドで混合した。その後、φ30mm異方向二軸押出機(機種名「PCM-30」、(株)池貝製)を用い、スクリュー回転数150rpm、シリンダー温度250~270℃の条件で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のペレットを用いて温度 270℃、荷重 21.2Nの条件でMFR(メルトマスフローレート)またはMVR(メルトボリュームレート)の測定を行った。
【0071】
なお、表1及び表2に示す各原料の詳細は下記の通りである。
【0072】
(ポリオレフィン樹脂(A-1))
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP МA1B、メルトマスフローレート21.0g/10min)
(ポリオレフィン樹脂(A-2))
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP FY-4、メルトマスフローレート5.0g/10min)
【0073】
(ポリエステル樹脂(B-1))
ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製、ベルペット(登録商標) EFG70、極限粘度(IV)=0.75 dl/g)
【0074】
(共重合体(C-1))
ダイヤカルナ30M(三菱ケミカル(株)製、α-オレフィンと無水マレイン酸との共重合体、酸価80mgKOH/g、質量平均分子量10,000)
(共重合体(C-2))
ユーメックス(登録商標)1010(三洋化成(株)製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、酸価52mgKOH/g、質量平均分子量30,000)
(共重合体(C-3))
モディック(登録商標)P908(三菱ケミカル(株)製、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、酸価10mgKOH/g、質量平均分子量150,000)
【0075】
共重合体(C-1)は、含有するα-オレフィン100質量%において、炭素原子数21以上100以下のα-オレフィンを少なくとも0.5質量%以上含む共重合体である。
【0076】
得られた樹脂組成物を、100t射出成形機(機種名「SE-100DU」、住友重機械工業(株)製)を用い、成形温度250~270℃の条件で射出成形して長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの成形体(シャルピー衝撃強度試験片)、JIS-7139で定める引張試験片および長さ100mm×幅50mm×厚さ2mmの平板を得た。各成形体を用いて、以下に記載の評価を行った。得られた結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2において、「―」の項目は未測定または未評価であることを示す。
【0077】
[シャルピー衝撃試験]
ISO-179-1に準拠し、ISO2818に準拠したTYPE Aのノッチを刻んで測定した。
【0078】
[引張試験]
ISO-527に準拠し、引張速度は5mm/minとした。
【0079】
[外観評価]
得られた成形体(厚さ2mmの平板)の背面より光を照射し、
図1に示すように、色むらがある場合を「不適」、色むらが無い場合を「適」と判断した。
【0080】
[透過率]
得られた成形体(厚さ2mmの平板)を用い、JIS K-7361に準拠して透過率を測定した。
【0081】
【0082】
【0083】
実施例1~2と比較例1~2、実施例3と比較例7をそれぞれ比較するとわかるように、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂とを含む樹脂組成物において、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体とα-オレフィンとの共重合体であり、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体に由来する構造単位が主鎖にある共重合体(C-1)を併用することで、引張破断伸度およびシャルピー衝撃強度により表される靭性が大きく向上した。MVRおよびMFRで表される流動性も向上し、また、全光線透過率が高く色むらも無い外観性に優れた成形品を得ることができた。
【0084】
また、実施例1~2と比較例3~6、実施例3と比較例8~9をそれぞれ比較するとわかるように、ポリオレフィン樹脂とポリエステル樹脂とを含む樹脂組成物において、共重合体(C-2)または(C-3)といった、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を主鎖ではなくグラフト鎖に有する重合体を併用すると、引張破断伸度およびシャルピー衝撃強度により表される靭性および流動性が十分ではなく、全光線透過率も低下するため成形品の外観性も十分ではなかった。これに対して、カルボン酸及び/又はカルボン酸誘導体を主鎖に有する共重合体(C-1)を併用すると、特に、引張破断伸度およびシャルピー衝撃強度により表される靭性が大幅に向上し、全光線透過率も高く、成形品の外観性も優れることが確認できた。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ポリエステル樹脂とポリオレフィン樹脂とが相溶し流動性に優れている。このような樹脂組成物により、高い靭性と優れた外観性とを備えた成形体を得ることができる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物を用いて得られた成形体は、自動車、オートバイ、船の部品や電機電子部品、雑貨、繊維、フィルムおよび成形品等をリサイクルして得られる成形体、その他の分野で有用な成形体等に好適に用いることができる。