(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137917
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240927BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20240927BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L67/04
C08L23/08
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046735
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023047801
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521067751
【氏名又は名称】ニューライト テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100218855
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政輝
(72)【発明者】
【氏名】袋田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】亀尾 幸司
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB052
4J002BB121
4J002BB123
4J002BB141
4J002BB152
4J002DE286
4J002FD016
4J002FD060
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】リサイクル材料を含む樹脂組成物を射出成形する際に、成形品を金型から抜き取りやすいと共に、引張破断歪みが十分に大きい成形体を得ることができる樹脂組成物等が提供される。
【解決手段】プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有し、リサイクル材料(A)中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量が1質量%以上60質量%以下である、樹脂組成物。当該樹脂組成物において、リサイクル材料(A)は自動車用部品由来のリサイクル材料であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有し、
前記リサイクル材料(A)中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量が1質量%以上60質量%以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
リサイクル材料(A)が自動車用部品由来のリサイクル材料である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン単独重合体を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.961以上である、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
エチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
リサイクル材料(A)がエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
充填材を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記充填材が無機充填材である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
リサイクル材料(A)が充填材を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
プロピレン重合体を更に含有し、
リサイクル材料(A)の含有量が樹脂組成物の全量を基準として15~70質量%であり、
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)の含有量が樹脂組成物の全量を基準として1~30質量%であり、
プロピレン重合体の含有量が樹脂組成物の全量を基準として25~85質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
環境への負担を減らすために、使用済みの自動車からバンパー等の樹脂部品を回収、破砕して、合成樹脂材料への再利用が検討されている。例えば、特許文献1には、不溶物を0.1~10重量%混在している車用バンパーの粉砕物(A)、結晶性ポリプロピレン(B)、エラストマー(C)、無機フィラー(D)及び光遮蔽性顔料(E)とを、特定の割合で混合し加熱溶融して得られる樹脂組成物であり、該樹脂組成物に混在する不溶物の大きさが20メッシュスクリーンを通過するものであることを特徴とする自動車内装用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用済みの自動車のリサイクル材料を含む樹脂組成物を射出成形する際、寸法安定性が高く、成形収縮しづらいため、成形品が金型から抜けにくいことがあった。また、リサイクル材料を含む樹脂組成物から得られる成形品が、金型から抜けやすくても、リサイクル材に含まれる不純物由来の異物が多いため、成形品の引張破断歪みが小さく、加工性に劣る場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、リサイクル材料を含む樹脂組成物を射出成形する際に、成形品を金型から抜き取りやすいと共に、引張破断歪みが十分に大きい成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該樹脂組成物から得られる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下の[1]~[26]を含む。
[1]プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有する、樹脂組成物。
[2]リサイクル材料(A)が自動車用部品由来のリサイクル材料である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]プロピレン単独重合体を含む、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]ヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、[1]~[3]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[5]前記ヘテロファジックプロピレン重合材料のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.961以上である、[4]に記載の樹脂組成物。
[6]エチレン-α-オレフィン共重合体を含む、[1]~[5]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[7]リサイクル材料(A)がエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[8]充填材を含む、[1]~[7]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[9]前記充填材が無機充填材である、[8]に記載の樹脂組成物。
[10]リサイクル材料(A)が充填材を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
[11]プロピレン重合体を更に含有し、
リサイクル材料(A)の含有量が樹脂組成物の全量を基準として15~70質量%であり、
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)の含有量が樹脂組成物の全量を基準として1~30質量%であり、
プロピレン重合体の含有量が樹脂組成物の全量を基準として25~85質量%である、[1]~[10]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[12][1]~[11]のいずれか一つに記載の樹脂組成物を含む成形体。
[13] プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有し、
前記リサイクル材料(A)中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量が1質量%以上60質量%以下である、樹脂組成物。
[14] プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有し、
前記リサイクル材料(A)が灰分を含み、
前記灰分の含有量が、前記リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、1質量%以上50質量%以下である、樹脂組成物。
[15] ヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、[13]又は[14]に記載の樹脂組成物。
[16] プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、バージンプロピレン重合体と、を含有し、
前記バージンプロピレン重合体がヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、樹脂組成物。
[17] 前記ヘテロファジックプロピレン重合材料のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.961以上である、[15]又は[16]に記載の樹脂組成物。
[18] リサイクル材料(A)が自動車用部品由来のリサイクル材料である、[13]~[17]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[19] プロピレン単独重合体を含む、[13]~[18]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[20] エチレン-α-オレフィン共重合体を含む、[13]~[19]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[21] リサイクル材料(A)がエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、[13]~[20]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[22] 充填材を含む、[13]~[21]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[23] 前記充填材が無機充填材である、[22]に記載の樹脂組成物。
[24] リサイクル材料(A)が充填材を含む、[13]~[23]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[25] プロピレン重合体を更に含有し、
リサイクル材料(A)の含有量が樹脂組成物の全量を基準として15~70質量%であり、
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)の含有量が樹脂組成物の全量を基準として1~30質量%であり、
プロピレン重合体の含有量が樹脂組成物の全量を基準として25~85質量%である、[13]~[24]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[26] [13]~[26]のいずれか一つに記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リサイクル材料を含む樹脂組成物を射出成形する際に、成形品を金型から抜き取りやすいと共に、引張破断歪みが十分に大きい成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、当該樹脂組成物から得られる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
(樹脂組成物)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有する。
【0010】
樹脂組成物は、プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と共に、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有することにより、リサイクル材料を含む樹脂組成物を射出成形する際に、成形品を金型から抜き取りやすくなる。また、バージンプロピレン重合体と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体と、を含有する樹脂組成物に比べて、成形体は優れた引張破断歪みを有する。
【0011】
<リサイクル材料(A)>
樹脂組成物は、リサイクル材料を含有する。リサイクル材料とは、成形等の加工が施された後、又は何らかの最終用途に使用された後に、回収されて、再使用される材料を意味する。リサイクル材料の原料の例は、自動車の内装部品(インスツルメントパネル、ドアトリム等)、自動車の外装部品(バンパー等)、その他の自動車部品(バッテリーケース等)、包装容器(食品用レトルトパウチ、詰め替え用パウチ、洗剤ボトル等)、家庭用電気製品の筐体、事務用品(トレー等)、家庭用日用品(コンタクトレンズケース等)である。リサイクル材料は、自動車用部品由来のリサイクル材料であってもよい。
【0012】
リサイクル材料は、プロピレン重合体(すなわち、リサイクルプロピレン重合体)を含むものであってもよい。リサイクル材料に含まれるプロピレン重合体は、プロピレン単独重合体であってもよく、ヘテロファジックプロピレン重合材料であってもよい。プロピレン重合体、プロピレン単独重合体、ヘテロファジックプロピレン重合材料については後述する。
【0013】
リサイクル材料の原料にはプロピレン重合体以外の成分が含まれていてもよい。リサイクル材料は、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の樹脂成分、無機充填材等の充填材、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、難燃剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0014】
リサイクル材料は、原料を回収する回収工程の他に、破砕工程、精製工程、溶融工程、他物質との混練工程、ペレット形態への成形工程等を含む方法により得られたものであってもよい。精製工程の例として、水、水性及び/又は油性薬剤による洗浄、微生物処理、磁力選別、比重選別が挙げられる。
【0015】
JIS K7210-2014に従って、温度230℃及び荷重2.16kgfの条件で測定されるリサイクル材料のメルトマスフローレート(MFR)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは1g/10分以上、200g/10分以下である。リサイクル材料のMFRは、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、180g/10分以下、160g/10分以下、140g/10分以下、120g/10分以下、100g/10分以下、80g/10分以下、60g/10分以下、又は50g/10分以下であってもよい。リサイクル材料のMFRは、5g/10分以上、10g/10分以上、20g/10分以上、又は30g/10分以上であってもよく、40g/10分以下、30g/10分以下、20g/10分以下、又は10g/10分以下であってもよい。
【0016】
<ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)>
樹脂組成物は、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体を含有する。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体とは、ヒドロキシアルカン酸のポリエステルである。ヒドロキシアルカン酸の例は、例えば、2-ヒドロキシアルカン酸、3-ヒドロキシアルカン酸、4-ヒドロキシアルカン酸である。
【0017】
2-ヒドロキシアルカン酸の例は、グリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸である。2-ヒドロキシアルカン酸のポリエステル、すなわち、ポリ(2-ヒドロキシアルカノエート)系重合体の例は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸である。
【0018】
3-ヒドロキシアルカン酸の例は、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸である。3ヒドロキシアルカン酸のポリエステル、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシアルカネート)系重合体については後述する。
【0019】
4-ヒドロキシアルカン酸の例は、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシペンタン酸、4-ヒドロキシヘキサン酸である。
【0020】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、ヒドロキシアルカン酸の単独重合体でもよく、2種以上のヒドロキシアルカン酸の重合体でもよい。
【0021】
ポリ(3-ヒドロキシアルカネート)系重合体とは、ポリヒドロキシアルカノエート(すなわち、ヒドロキシアルカン酸のポリエステル)であり、且つ、下記式(1)で示される3-ヒドロキシアルカネートの繰り返し単位を含むものである。
[-O-CHR-CH2-CO-]…(1)
【0022】
式(1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~15のアルキル基、シアノ基、炭素原子数1~18のアミノ基、炭素原子数1~11のアルコキシ基(アルキルオキシ基)、炭素原子数1~20のアミド基、炭素原子数6~12のアリール基、又は、炭素原子数1~9の1価の複素環基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)以外の成分との相溶性の観点から、Rは、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~20のアミド基、又は、炭素原子数6~8のアリール基であってもよい。
【0023】
ハロゲン原子の例は、F、Cl、Br、及びIである。
【0024】
炭素原子数1~15のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基の炭素原子数は、1~8、又は1~4であってもよい。アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル墓である。
【0025】
炭素原子数1~18、又は1~11のアミノ基の例は、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基である。
【0026】
アルキルアミノ基の例は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、sec-ペンチルアミノ基、tert-ペンチルアミノ基、tert-オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、1-アダマンタミノ基、2-アダマンタミノ基である。
【0027】
ジアルキルアミノ基の例は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、ジシクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基である。
【0028】
アリールアミノ基の例は、アニリノ基、1-ナフチルアミノ基、2-ナフチルアミノ基、o-トルイジノ基、m-トルイジノ基、p-トルイジノ基、1-フルオレンアミノ基、2-フルオレンアミノ基、2-チアゾールアミノ基、p-ターフェニルアミノ基である。
【0029】
アルキルアリールアミノ基の例は、N-メチルアニリノ基、N-エチルアニリノ基、N-プロピルアニリノ基、N-ブチルアニリノ基、N-イソプロピルアニリノ基、N-ペンチルアニリノ基である。
【0030】
炭素原子数1~11のアルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペントキシ基である。
【0031】
「アミド基」とは、カルボン酸アミドから窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味する。炭素原子数1~20のアミド基の例は、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチルアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基等の-NH-C(=O)-RAで表される基(ただし、RAは、水素原子、又は、1価の有機基);ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基のように-N(-C(=O)-RA)(-C(=O)-RB)で表される基(ただし、RA
、RBはそれぞれ独立に、水素原子、又は、1価の有機基)である。有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等であり、ハロゲン原子で置換されていてもよい。アミド基は、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチロアミド基、又はベンズアミド基であってもよい。
【0032】
炭素原子数6~12のアリール基の例は、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基である。炭素原子数6~12のアリール基は、フェニル基、トリル基、又はキシリル基であってもよい。
【0033】
炭素原子数1~9の1価の複素環基のヘテロ原子の例は、N、O、及び、Sであり、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、ヘテロ原子が単数であってもよく、複数であっても異種のヘテロ原子を有していてもよい。このような複素環基の例は、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チアゾリル基である。
【0034】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の繰り返し単位は、1又は複数種の式(1)で示される3-ヒドロキシアルカノエートのみからなってもよく、1又は複数種の式(1)で示される3-ヒドロキシアルカノエート、及び、1又は複数種の他のヒドロキシアルカノエートからなっていてもよい。
【0035】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、式(1)で示される3-ヒドロキシルカノエートの繰り返し単位を、ヒドロキシアルカノエートの全繰り返し単位(100モル%)に対して50モル%以上含むものが好ましく、70モル%以上含むものがより好ましい。
【0036】
式(1)で示される3-ヒドロキシアルカノエートの例は、Rが水素原子又はCnH2n+1で表されるアルキル基であって、nは1~15の整数である場合、n=1である3-ヒドロキシブチレート(以降、3HBと記載することがある)、n=2である3-ヒドロキシバリレート(以降、3HVと記載することがある)、n=3である3-ヒドロキシヘキサノエート(以降、3HHと記載することがある)、n=5の3-ヒドロキシオクタネート、n=15である3-ヒドロキシオクタデカネート、Rが水素原子である3-ヒドロキシプロピオネートである。
【0037】
式(1)で表される1種の繰り返し単位のみを有するポリヒドロキシアルカノエート系重合体の例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(以降、P3HBと記載することがある)である。
【0038】
式(1)で表される複数種の繰り返し単位のみを有するポリヒドロキシアルカノエート系重合体の例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート。以下、P3HB3HHと記載することがある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート。以下、P3HB3HVと記載することがある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート(以下P3HB3HPと記載することがある)である。
【0039】
式(1)で示される3-ヒドロキシアルカノエート以外の他のヒドロキシアルカノエートの例は、式(2)で示される繰り返し単位を含むものである。
[-O-CHR1-CmH2m+1-CO-]…(2)
【0040】
式(2)中、R1は水素原子またはCnH2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数であり、mは2~10の整数である。
【0041】
式(1)及び式(2)の繰り返し単位を含むポリヒドロキシアルカノエート系重合体の例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)(例えば下式(P3HB4HB))である。
【0042】
融点を高くする観点から、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の繰り返し単位が式(1)で示される3-ヒドロキシアルカノエートの中でも3-ヒドロキシブチレートを少なくとも含むことが好ましい。
【0043】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、3-ヒドロキシブチレートの繰り返し単位を、ヒドロキシアルカノエートの全繰り返し単位(100モル%)に対して50モル%以上含むものが好ましく、70モル%以上含むものがより好ましい。
【0044】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、2種以上のエステルの繰り返し単位を有してもよく、例えば、上記のように2種の繰り返し単位を有するジ-コポリマー、3種の繰り返し単位を有するトリ-コポリマー、及び、4種の繰り返し単位を有するテトラ-コポリマーであってもよい。
【0045】
例えば、トリ-コポリマーの例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、(P3HB3HV3HH)と記載することがある。)である。
【0046】
上述のように、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、式(1)で示される3-ヒドロキシアルカノエートの繰り返し単位の中でも3-ヒドロキシブチレートを含むことが好ましい。全ヒドロキシアルカノエートのエステル繰り返し単位100モルに対して、3-ヒドロキシブチレートの繰り返し単位の割合XXは、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることが更に好ましい。割合XXは、通常、100モル%以下であり、99.9モル%以下、又は99.8モル%以下であってもよい。
【0047】
コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式でもよい。
【0048】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、式(1)及び式(2)以外の他のエステル繰り返し単位を有してもよいが、当該他のエステル繰り返し単位の主鎖は芳香族炭化水素構造を含まない。すなわち、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、脂肪族ポリエステルである。ただし、当該他のエステル繰り返し単位の主鎖の炭素に芳香族炭化水素基を有する基が結合していてもよい。
【0049】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体における繰り返し単位の構成比は、L.Tripathi.,M.C.Factories,11,44(2012)に記載されているように、1H-NMRや13C-NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
【0050】
また、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の2種以上のブレンドでもよい。
【0051】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の重量平均分子量(Mw)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、1万~100万であってもよく、2万~80万であることが好ましく、3万~60万であることがより好ましい。重量平均分子量を1万以上とすることにより、衝撃強度及び引張伸びに優れた成形体を得ることができる。重量平均分子量を50万以下にすることにより、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の分散性が優れる。重量平均分子量は、40万以下、30万以下、20万以下、又は10万以下であってもよい。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、GPCにより、標準ポリスチレンを分子量標準物質として用いて測定される。
【0052】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、熱可塑性樹脂であってもよく、結晶性であることが好適である。
【0053】
JIS K7210-2014に従って、温度190℃及び荷重2.16kgfの条件で測定されるポリヒドロキシアルカノエート系重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは0.1g/10分以上、200g/10分以下である。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体のMFRは、0.5g/10分以上、1g/10分以上、1.5g/10分以上、又は2g/10分以上であってもよい。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体のMFRは、150g/10分以下、100g/10分以下、70g/10分以下、50g/10分以下、30g/10分以下、又は20g/10分以下であってもよい。
【0054】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の融点(Tm)は、150℃以上、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、又は175℃以上であってもよい。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の融点(Tm)は、220℃以下、200℃以下、又は190℃以下であってもよい。
【0055】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の融点(Tm)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる結晶の融解に基づく主ピークの位置により測定される。
【0056】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、微生物が生産したものであってもよく、石油又は植物原料から誘導された化合物(例えば環状ラクトンなど)由来のものであってもよい。
【0057】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、微生物から生産されたもののようにヒドロキシアルカネートの各繰り返し単位がD体(R体)のみからなってもよく、D体(R体)及びL体(S体)の混合物から誘導されたもののようにヒドロキシアルカノエートの繰り返し単位がD体(R体)及びL体(S体)を両方含むものでもよい。
【0058】
微生物から生産されたポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系重合体において、(1)式の繰り返し単位は下式のように表すことができる。式(BI-1)中、nは重合度を表す。
【0059】
【0060】
微生物から生産されたポリ-(3-ヒドロキシブチレート)は、例えば、以下のような構造を有する。式(BI-2)中、nは重合度を表す。
【0061】
【0062】
微生物から生産されたポリ-(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)は、例えば、以下のような構造を有する。式(BI-3)中、m及びnは重合度を表す。
【0063】
【0064】
微生物から生産されたポリ-(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)は、例えば、以下のような構造を有する。式(BI-4)中、m及びnは重合度を表す。
【0065】
【0066】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体は、生分解性を有することができる。
【0067】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系重合体は、例えば、AlcaligeneseutrophusにAeromonascaviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、受託番号FERMBP-6038(原寄託FERMP-15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生することができる。
【0068】
<プロピレン重合体>
樹脂組成物はプロピレン重合体を含有してもよい。樹脂組成物が含有するプロピレン重合体は、リサイクル材料に由来する(リサイクル材料に含まれる)プロピレン重合体であってもよく、リサイクル材料に由来しないプロピレン重合体(すなわち、バージンプロピレン重合体)を含有してもよい。なお、本明細書において、「バージンプロピレン重合体」とは、リサイクル材料とは異なり、重合工程を含むプロセスによりプロピレン重合体を製造した後、自動車等の製品又はその部品に成形されておらず、かつ、何らかの最終用途に使用されていないプロピレン重合体を意味する。
【0069】
プロピレン系重合体とは、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含有する重合体であり、その例は、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、及び、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体である。プロピレン系重合体は、2種以上のプロピレン系重合体の組み合わせであってもよい。
【0070】
上述のように、プロピレン系重合体とは、プロピレン系重合体に含まれる全構成単位の量を100質量%としたときに、プロピレン単位が50質量%より多く含まれる重合体である。プロピレン単位は、60質量%以上、又は70質量%以上であってもよい。
【0071】
プロピレン系重合体の例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン及びプロピレンと共重合しうる他のモノマーの共重合体が挙げられる。このような共重合体は、ランダム共重合体(以下、ポリプロピレン系ランダム共重合体ともいう。)であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0072】
プロピレン系重合体は、1種単独のプロピレン系重合体を含んでいてもよく、2種以上のプロピレン系重合体を、任意の組み合わせ、任意の割合で含んでいてもよい。
【0073】
2種以上のプロピレン系重合体の組み合わせの例としては、重量平均分子量等が異なる2種以上のプロピレン単独重合体の組み合わせ、下記の重合体(I)及び重合体(II)の組み合わせが挙げられる。
【0074】
プロピレン系重合体は、ヘテロファジックプロピレン重合材料を含んでいてもよい。ヘテロファジックプロピレン重合材料とは、下記の重合体(I)及び重合体(II)を含んでおり、当該重合体(I)及び重合体(II)が相溶することなく、互いに異なる相を形成しているプロピレン系重合体(組成物)を意味する。プロピレン系重合体(A)において、ヘテロファジックプロピレン重合体が占める割合は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%、又は90質量%であってもよい。樹脂組成物が、プロピレン重合体を含むリサイクル材料(A)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、バージンヘテロファジックプロピレン重合材料と、を含有することにより、成形品を金型からより抜き取りやすくなると共に、得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい。
【0075】
重合体(I)は、全構成単位の量を100質量%としたときに、プロピレン単位を80質量%超、100質量%以下含むプロピレン系重合体である。重合体(I)は、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0076】
重合体(II)は、プロピレン単位と、エチレン単位及び炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位との共重合体であるプロピレン系重合体である。
【0077】
重合体(I)及び重合体(II)は、それぞれ1種単独の重合体であってもよく、2種以上の重合体の組み合わせであってもよい。
【0078】
樹脂組成物は、外観を向上させる観点から、ヘテロファジックプロピレン重合材料を含むことが好ましい。
【0079】
プロピレン系重合体は、樹脂組成物の成形体の剛性のさらなる向上の観点から、13C-NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm]分率ともいう。)が、0.961以上であってもよく、0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましい。
【0080】
プロピレン系重合体のアイソタクチック・ペンタッド分率は、1に近いほど、プロピレン系重合体の分子構造の立体規則性が高く、ポリプロピレン系重合体の結晶性が高いといえる。
【0081】
プロピレン系重合体が共重合体である場合は、共重合体中のプロピレン単位の連鎖についてアイソタクチック・ペンタッド分率が測定されうる。
【0082】
プロピレン系重合体は、樹脂組成物の成形加工性をより良好にする観点から、230℃、荷重2.16kgfの条件で、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、10g/10分以上であることが好ましく、15g/10分以上であることがより好ましい。ポリプロピレン系重合体のメルトフローレートは、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、250g/10分以下であることが好ましく、200g/10分以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系重合体のメルトフローレートは、10~200g/10分であることが好ましい。
【0083】
プロピレン系重合体は、例えば、重合触媒を用いる重合方法により製造することができる。
【0084】
重合触媒の例としては、チーグラー型触媒、チーグラー・ナッタ型触媒、周期表第4族の遷移金属元素を含みシクロペンタジエニル環を有する化合物とアルキルアルミノキサンとを含む触媒、周期表第4族の遷移金属元素を含みシクロペンタジエニル環を有する化合物、当該化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物、及び有機アルミニウム化合物を含む触媒、触媒成分(例、周期表第4族の遷移金属元素を含みシクロペンタジエニル環を有する化合物、イオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物等)を、無機粒子(例、シリカ、粘土鉱物等)に担持し変性させた触媒が挙げられる。
【0085】
重合触媒として、触媒の存在下でエチレン、α-オレフィン等の単量体を予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
【0086】
チーグラー・ナッタ型触媒の例としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とが組み合わされた触媒が挙げられる。
【0087】
上記の重合触媒の具体例としては、特開昭61-218606号公報、特開平5-194685号公報、特開平7-216017号公報、特開平9-316147号公報、特開平10-212319号公報、特開2004-182981号公報に記載の従来公知の触媒が挙げられる。
【0088】
重合方法の例としては、バルク重合、溶液重合、及び気相重合が挙げられる。ここで、バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいう。溶液重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
【0089】
上記の重合方法における方式(重合方式)の例としては、バッチ式、連続式及びこれらの組み合わせが挙げられる。重合方式は、直列に連結した複数の重合反応槽を用いて行われる多段式であってもよい。
【0090】
上記の重合方法にかかる重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系重合体に応じて任意好適な条件を適宜決定することができる。
【0091】
プロピレン系重合体を製造するにあたり、上記の重合方法により重合されたプロピレン系重合体中に含まれる残留溶媒や、重合工程において副生したオリゴマー等の不純物を除去するために、上記の重合方法により重合されたプロピレン系重合体を、例えば、残留溶媒やオリゴマー等の不純物が揮発し得る温度であって、かつプロピレン系重合体が融解、変性等し得ない温度で保持してもよい。このような不純物の除去方法の例としては、特開昭55-75410号公報、特許第2565753号公報等に記載の従来公知の任意好適な方法が挙げられる。
【0092】
(プロピレン単独重合体)
プロピレン単独重合体は、樹脂組成物の流動性と、樹脂組成物の成形体の靱性とを良好にする観点から、極限粘度数[η]が、0.1~4dL/gであることが好ましく、0.5~3dL/gであることがより好ましく、0.7~2dL/gであることが更に好ましい。
【0093】
プロピレン単独重合体は、樹脂組成物の流動性と、樹脂組成物の成形体の靱性とを良好にする観点から、分子量分布Mw/Mnが、3以上7未満であることが好ましく、3~5であることがより好ましい。ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。なお、分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される数値である。
【0094】
(プロピレン系ランダム共重合体)
プロピレン系ランダム共重合体の例としては、プロピレン単位とエチレン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム共重合体(1)という。)、プロピレン単位と炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム共重合体(2)という。)、及びプロピレン単位とエチレン単位と炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム共重合体(3)という。)が挙げられる。
【0095】
プロピレン系ランダム共重合体を構成しうる、炭素原子数が4以上のα-オレフィンは、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは炭素原子数が4~10のα-オレフィンである。炭素原子数が4~10のα-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、及び1-デセンが挙げられ、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンである。
【0096】
ランダム共重合体(2)の例としては、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、及びプロピレン-1-デセンランダム共重合体が挙げられる。
【0097】
ランダム共重合体(3)の例としては、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、及びプロピレン-エチレン-1-デセン共重合体が挙げられる。
【0098】
ランダム共重合体(1)中のエチレン単位の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0099】
ランダム共重合体(2)中の炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0100】
ランダム共重合体(3)中のエチレン単位及び炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位の合計含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0101】
ランダム共重合体(1)~(3)中のプロピレン単位の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは60~99.9質量%であり、より好ましくは70~99.9質量%であり、さらに好ましくは85~98質量%である。
【0102】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれうる重合体(I)は、既に説明したとおり、プロピレン単位を、80質量%超、100質量%以下含有する重合体である。重合体(I)中のプロピレン単位以外のモノマー単位の合計の含有量は、通常0質量%以上20質量%未満であり、0質量%であってもよく、0.01質量%以上であってもよい。
【0103】
重合体(I)を構成しうるプロピレン以外のモノマーの例としては、エチレン及び炭素原子数が4以上のα-オレフィンが挙げられる。
【0104】
重合体(I)を構成しうる炭素原子数が4以上のα-オレフィンは、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは炭素原子数が4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンであり、更に好ましくは1-ブテンである。
【0105】
重合体(I)の例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0106】
重合体(I)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、これらの中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体であることが好ましく、樹脂組成物を含む成形体の剛性の観点から、プロピレン単独重合体であることがより好ましい。
【0107】
重合体(I)のGPCで測定された分子量分布(Mw/Mn)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは3以上7未満であり、より好ましくは3~5である。
【0108】
重合体(II)は、既に説明したとおり、プロピレン単位と、エチレン単位及び炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位との共重合体である。
【0109】
重合体(II)中のエチレン単位及び炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位の合計の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは20~60質量%である。
【0110】
重合体(II)を構成しうる炭素原子数が4以上のα-オレフィンは、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは炭素原子数が4~10のα-オレフィンである。重合体(II)を構成しうるα-オレフィンの例としては、既に説明した重合体(I)を構成しうるα-オレフィンの例と同様の例が挙げられる。
【0111】
重合体(II)の例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられ、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくはプロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体であり、より好ましくはプロピレン-エチレン共重合体である。
【0112】
ヘテロファジックプロピレン重合材料における重合体(II)の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、重合体(I)及び重合体(II)の合計を100質量%としたときに、1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることが更に好ましく、8~15質量%であることが特に好ましい。
【0113】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の例としては、重合体(I)がプロピレン単独重合体である、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、及びプロピレン単独重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせが挙げられる。
【0114】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の別の例としては、重合体(I)が、プロピレン単位及びプロピレン単位以外のモノマー単位を含む重合体である、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ;(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ;(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ;(プロピレン-1-オクテン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-オクテン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体等との組み合わせが挙げられる。なお、上記の組み合わせの例示においては、重合体(I)を先に記載し、重合体(II)を後に記載している。
【0115】
樹脂組成物に含まれうるヘテロファジックプロピレン重合材料は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、(プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、及び(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせであることが好ましく、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせであることがより好ましい。
【0116】
ヘテロファジックプロピレン重合材料は、重合体(I)を生成させる第1の重合工程と、第1の重合工程で生成した重合体(I)の存在下に重合体(II)を生成させる第2の重合工程を含む多段の重合工程を含む製造方法により製造することができる。ヘテロファジックプロピレン重合材料の重合は、既に説明したポリプロピレン系重合体の製造に使用可能な触媒として例示した触媒を用いて行うことができる。
【0117】
重合体(I)の極限粘度数(以下、[η]Iという。)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは0.1~4dL/gであり、より好ましくは0.5~3dL/gであり、さらに好ましくは0.7~2dL/gである。
【0118】
重合体(II)の極限粘度数(以下、[η]IIという。)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは1~10dL/gであり、より好ましくは2~10dL/gであり、さらに好ましくは5~8dL/gである。
【0119】
[η]IIの[η]Iに対する比([η]II/[η]I)は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~10であり、さらに好ましくは2~9である。
【0120】
ポリプロピレン系重合体が上記のとおり多段の重合工程により形成された重合体(I)と重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料である場合には、第1の重合工程で生成した重合体(I)を、第1の重合工程を行った重合槽からその一部を抜き出して極限粘度数を求め、第2の重合工程により最終的に生成したヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度数(以下、([η]Totalという。)を求め、これらの極限粘度数の値と含有量とを用いて、第2の重合工程で生成した重合体(II)の極限粘度数を算出する。
【0121】
重合体(I)と重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料が、重合体(I)が第1の重合工程で得られ、重合体(II)が第2の重合工程で得られる製造方法によって製造された場合には、重合体(I)及び重合体(II)の各々の含有量、極限粘度数([η]Total、[η]I、[η]II)の測定及び算出の手順は、以下のとおりである。
【0122】
第1の重合工程で得られた重合体(I)の極限粘度数([η]I)、第2の重合工程により得られた最終重合体(すなわち、重合体(I)と重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料)について既に説明した方法で測定した極限粘度数([η]Total)、最終重合体が含有している重合体(II)の含有量から、重合体(II)の極限粘度数[η]IIを、下記式により計算する。
式:[η]II=([η]Total-[η]I×XI)/XII
式中、
[η]Totalは、最終重合体の極限粘度数(単位:dL/g)を表し、
[η]Iは、重合体(I)の極限粘度数(単位:dL/g)を表し、
XIは、最終重合体に対する重合体(I)の質量比を表し、
XIIは、最終重合体に対する重合体(II)の質量比を表す。
なお、XI及びXIIは重合工程における物質収支から求めることができる。
【0123】
ここで、最終重合体に対する重合体(II)の質量比XIIは、重合体(I)及び最終重合体それぞれの結晶融解熱量を用いて下記式により算出してもよい。
式:XII=1-(ΔHf)T/(ΔHf)P
式中、
(ΔHf)Tは、最終重合体(重合体(I)及び重合体(II))の融解熱量(単位:cal/g)を表し、
(ΔHf)Pは、重合体(I)の融解熱量(単位:cal/g)を表す。
【0124】
(エチレン-α-オレフィン共重合体)
樹脂組成物は、エチレン-α-オレフィン共重合体を含有してもよい。樹脂組成物が含有するエチレン-α-オレフィン共重合体は、リサイクル材料に由来する(リサイクル材料に含まれる)エチレン-α-オレフィン共重合体であってもよく、リサイクル材料に由来しないエチレン-α-オレフィン共重合体(バージンエチレン-α-オレフィン共重合体)を含有してもよい。
【0125】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含有するエチレン及びα-オレフィンの共重合体である。エチレン-α-オレフィン共重合体中のエチレンに由来する構造単位の含有量は、60重量%以上、又は70質量%以上であってもよい。
【0126】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する単量体単位と、エチレンに由来する単量体単位とを有する共重合体であってよい。炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、及び1-ドデセン等が挙げられ、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、又は1-オクテンである。
【0127】
上記のエチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、及びエチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体については、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、好ましくは、エチレン-1-ブテン共重合体、又はエチレン-1-オクテン共重合体である。
【0128】
樹脂組成物の一態様として、エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量は、樹脂組成物の全質量100質量%に対して、1質量%以上、又は5質量%以上であってよい。エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量は、樹脂組成物の全質量100質量%に対して、50質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0129】
リサイクル材料(A)がエチレン-α-オレフィン共重合体を含んでもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量は、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、1質量%以上、又は5質量%以上であってよい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体の含有量は、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、50質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0130】
(充填材)
樹脂組成物は充填材(フィラー)を含有してもよい。充填材の例は、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク等のガラス粉、珪酸塩鉱物、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸塩鉱物、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、硫化カドミウム、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、セルロースパウダー、及び、木粉からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0131】
樹脂組成物が充填材を含有する場合、充填材はリサイクル材料に由来する(リサイクル材料に含まれる)充填材であってもよく、リサイクル材料に由来しない充填材(すなわち、バージン充填材)であってもよい。
【0132】
充填材が粒子である場合、その形状は特に限定されず、板状、針状、又は、繊維状であってもよい。
【0133】
樹脂組成物及び成形体の剛性、耐衝撃性及び寸法安定性の観点から、充填材は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、無機充填材が好ましく、板状ケイ酸塩鉱物であるタルクがより好ましい。
【0134】
樹脂組成物の一態様として、充填材の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、樹脂組成物の全質量100質量%に対して、好ましくは1質量%以上であり、5質量%以上であってよい。充填材の含有量は、樹脂組成物の全質量100質量%に対して、50質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0135】
リサイクル材料(A)が充填材を含んでもよい。充填材の含有量は、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、1質量%以上、又は5質量%以上であってよい。充填材の含有量は、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、50質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0136】
一態様として、リサイクル材料(A)は、灰分を含んでもよい。灰分とは、リサイクル材料(A)を600℃で60分加熱後に灰として残った成分を意味する。灰分量は以下の方法により求められる。
【0137】
(灰分量の測定方法)
ルツボを、電気炉を用いて600℃で60分加熱し、ルツボを取り出してデシケーター中で1時間冷却した後に精密天秤で秤量する。リサイクル材料(A)をルツボに10g秤量し、電気炉を用いて600℃で60分加熱し、完全灰化させる。次いで、ルツボをデシケーター中で1時間冷却した後に精密天秤で灰分の質量を0.1mg単位まで測定し、リサイクル材料(A)に対する灰分量(質量%)を算出する。
【0138】
リサイクル材料(A)において、灰分の含有量は、得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上である。灰分の含有量は、得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。一態様として、リサイクル材料(A)において、灰分の含有量は、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、1質量%以上20質量%以下、1質量%以上15質量%以下、1質量%以上10質量%以下、2質量%以上20質量%以下、2質量%以上15質量%以下、又は2質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0139】
リサイクル材料(A)が充填材を含む場合、充填材の大半はリサイクル材料(A)の灰分に含まれる。リサイクル材料(A)が充填材を含む場合、充填材の含有量は、概ねリサイクル材料(A)の灰分量に対応する。
【0140】
リサイクル材料(A)中のキシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、好ましくは40質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上95質量%以下である。リサイクル材料(A)中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、成形品を金型からより抜き取りやすくなる観点及び得られる成形体の引張破断歪みがより大きくなりやすい観点から、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、好ましくは1質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上50質量%以下である。一態様として、リサイクル材料(A)中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、リサイクル材料(A)の全質量100質量%に対して、1質量%以上40質量%以下、5質量%以上40質量%以下、9質量%以上40質量%以下、1質量%以上30質量%以下、5質量%以上30質量%以下、又は9質量%以上30質量%以下であってもよい。
【0141】
リサイクル材料(A)中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、以下の方法により測定することができる。すなわち、リサイクル材料(A)を4g秤量し、円筒ろ紙とソックスレー抽出管を用いて、沸騰キシレンで5時間還流する。次いで、抽出液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、ポリマー成分を得る。得られたポリマー成分を秤量する(「ポリマー成分の質量」を「a」とする)。ポリマー成分を2g秤量し、沸騰キシレンで2時間加熱溶解する。次いで、20℃まで冷却した後、ろ紙を用いてろ別する。ろ別したろ液を、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、CXS成分を得る。得られたCXS成分を秤量する(「CXS成分の質量」を「b」とする)。リサイクル材料(A)中のCXS成分の含有量は、数値a及びbを用いて下記式により算出する。
CXS成分量(質量%)=(b/a)×100
【0142】
リサイクル材料(A)中のCXIS成分は、主として、リサイクル材料(A)に含まれるヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体(I)、及び/又は、プロピレン単独重合体から構成されると考えられる。リサイクル材料(A)中のCXS成分は、主として、リサイクル材料(A)に含まれるヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体(II)、及び/又は、エチレン-α-オレフィン共重合体から構成されると考えられる。
【0143】
一実施形態に係る樹脂組成物は、キシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量(又は、キシレン可溶成分(CXS成分)の含有量)が上記の範囲内であるリサイクルポリプロピレン重合体(リサイクル材料(A))、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有することにより、当該樹脂組成物を用いて成形品を製造する際に、成形品を金型から抜き取りやすいと共に、引張破断歪みが十分に大きい成形体を得ることができる。なお、樹脂組成物が、キシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量(又は、キシレン可溶成分(CXS成分)の含有量)が上記の範囲内であるバージンプロピレン重合体と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(B)と、を含有する場合であっても成形品を金型から抜き取りやすいと共に、引張破断歪みが十分に大きい成形体を得ることができるものの、樹脂組成物が、キシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量(又は、キシレン可溶成分(CXS成分)の含有量)が上記の範囲内であるリサイクルプロピレン重合体を含有する場合と比較すると、得られる成形品の引張破断歪みがやや劣る傾向がある。すなわち、リサイクルプロピレン重合体とバージンプロピレン重合体とがいずれもキシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量(又は、キシレン可溶成分(CXS成分)の含有量)が上記の範囲内である場合、樹脂組成物は、キシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量(又は、キシレン可溶成分(CXS成分)の含有量)が上記の範囲内であるリサイクルプロピレン重合体を含有する方が、得られる成形品の引張破断歪みを向上させやすい。
【0144】
(添加剤)
樹脂組成物は、必要に応じて、上記以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を含んでいてよい。その他の成分の例としては、例えば、熱可塑性樹脂(ポリスチレン類(例えばポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、天然ゴム等)、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、バイオ原料から抽出された植物由来のモノマーを重合して製造されるPLA樹脂(ポリ乳酸)、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、発泡剤、発泡核剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤及び光拡散剤が挙げられる。樹脂組成物は、上記の成分を1種のみ含んでもよく、2種以上の組み合わせを含んでもよい。
【0145】
樹脂組成物が含有しうるその他の成分は、リサイクル材料に由来しないバージン材であってもよく、リサイクル材料に由来してもよく、リサイクルする際の原料に含まれてよく、リサイクルプロピレン重合体と共に本樹脂組成物の製造の原料に含まれてよい。
【0146】
<樹脂組成物>
JIS K7210-2014に従って、温度230℃及び荷重2.16kgfの条件で測定される樹脂組成物のメルトマスフローレート(MFR)は、1g/10分以上、10g/10分以上、30g/10分以上、50g/10分以上、70g/10分以上、100g/10分以上、120g/10分以上、140g/10分以上、又は160g/10分以上であってもよい。樹脂組成物のMFRは、500g/10分以下、450g/10分以下、400g/10分以下、350g/10分以下、300g/10分以下、又は250g/10分以下であってもよい。
【0147】
樹脂組成物の引張破断歪みは、10%以上、15%以上、20%以上、又は25%以上であってもよい。樹脂組成物の引張破断歪みは、55%以下、50%以下、45%以下、又は40%以下であってもよい。樹脂組成物の引張破断歪みは後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0148】
リサイクル材料の含有量は、樹脂組成物の全量を基準として15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上であってもよい。リサイクル材料の含有量は、樹脂組成物の全量を基準として90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。
【0149】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の含有量は、樹脂組成物の全量を基準として1質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は10質量%以上であってもよい。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の含有量は、樹脂組成物の全量を基準として30質量%以下、27質量%以下、25質量%以下、22質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。
【0150】
リサイクル材料の含有量に対するポリヒドロキシアルカノエート系重合体の含有量の比率(ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の含有量/リサイクル材料の含有量)は、0.01以上、0.1以上、0.2以上、又は0.3以上であってもよく、2以下、1.5以下、1以下、又は0.8以下であってもよい。
【0151】
プロピレン重合体の含有量は、樹脂組成物の全量を基準として25質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上であってもよい。プロピレン重合体の含有量は、樹脂組成物の全量を基準として85質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってもよい。
【0152】
リサイクル材料の含有量に対するプロピレン重合体の含有量の比率(プロピレン重合体の含有量/リサイクル材料の含有量)は、0.1以上、0.5以上、1以上、又は1.5以上であってもよく、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2.5以下であってもよい。
【0153】
樹脂組成物がリサイクル材料に由来しないプロピレン重合体(例えば、バージンプロピレン重合体)を更に含有する場合、リサイクル材料の含有量、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の含有量、及びプロピレン重合体の含有量は、樹脂組成物の全量を基準としてそれぞれ以下のとおりであってもよい。リサイクル材料の含有量が、15~70質量%、20~60質量%、又は25~50質量%であり、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の含有量が1~30質量%、5~27質量%、又は7~25質量%であり、プロピレン重合体の含有量が25~85質量%、35~75質量%、40~70質量%であってもよい。
【0154】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る上述の樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0155】
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、部品からプロピレン重合体を含むリサイクル材料を得る工程、リサイクル材料と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体と、を混合する工程を少なくとも備える。具体的には、上述した各原料成分を溶融混練することにより樹脂組成物を得ることができる。溶融混練時の温度は、180℃以上であってもよく、180~300℃、又は180~250℃であってもよい。
【0156】
溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等を使用できる。
【0157】
各原料成分の混練順序は特に限定されるものではない。例えば、各原料成分を一括に混練してもよく、各原料成分のうち、一部の成分を混練した後、得られた混練物と他の成分とを混練してもよい。
【0158】
プロピレン樹脂組成物の形状に特に制限はないが、プロピレン樹脂組成物は、例えば、ストランド状、シート状、平板状、又はペレット状の形態であってもよい。ペレット状の樹脂組成物は、例えば、ストランド状の樹脂組成物を形成した後、これを適当な長さに裁断することにより製造できる。
【0159】
樹脂組成物の成形加工性、及び、成形体を製造する場合の生産安定性の観点から、成形体に成形加工する前の樹脂組成物の形状は、長さが1~50mm程度のペレット状であることが好ましい。
【0160】
<成形体の用途>
本発明に係る成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、OA機器材料、建材、排水設備、トイレタリー材料、各種タンク、コンテナー、シート等が挙げられる。
【0161】
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーインナーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品や、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ、ドア・アウターパネル等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、ラジエターリザーブタンク、ウインドウ・ウオッシャータンク、フェンダーライナー、ファン等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0162】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー、洗濯パン等)、乾燥機用材料(外装、内箱、蓋など)、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
【0163】
OA機器・メディア関連材料としては、磁気記録媒体や光記録媒体のケース、パソコン用部品、プリンター用部品等が挙げられる。
【0164】
建材としては、コンクリートなどを固める枠や、壁部材等が挙げられる。排水設備としては、パイプやポンプ部品等が挙げられる。コンテナー材料としては、食品充填用容器、運搬用コンテナー、衣装コンテナー等が挙げられる。また、運送用パレットなどが挙げられる。
【実施例0165】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0166】
[実施例、比較例、及び参考例で用いた成分]
実施例、比較例、及び参考例では、以下の原料を使用した。
【0167】
成分A:プロピレン重合体を含むリサイクル材料
プロピレン重合体を含むリサイクル材料として、下記リサイクルポリプロピレン組成物を準備した。
【0168】
(A-1)市場回収した自動車バンパー由来のリサイクルポリプロピレン組成物
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):42.0g/10分
灰分量:18.1質量%
CXIS量(キシレン不溶成分):70.0質量%
CXS量(キシレン可溶成分):30.0質量%
【0169】
(A-2)市場回収した自動車バンパー由来のリサイクルポリプロピレン組成物
CXIS量(キシレン不溶成分):99.7質量%
CXS量(キシレン可溶成分):0.3質量%
【0170】
(A-3)市場回収した自動車ウォッシャータンク由来のリサイクルポリプロピレン組成物
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):5.3g/10分
灰分量:2.3質量%
CXIS量(キシレン不溶成分):90.9質量%
CXS量(キシレン可溶成分):9.1質量%
【0171】
<灰分量の測定方法>
電気炉を用いて800℃でルツボを60分加熱し、ルツボを取り出してデシケーター中で1時間冷却した後に精密天秤で秤量した。リサイクルポリプロピレン組成物をルツボに10g秤量し、電気炉を用いて800℃で60分加熱し、完全に灰化させた。次いで、ルツボをデシケーター中で1時間冷却した後に精密天秤で灰分の重量を0.1mg単位まで測定し、リサイクルポリプロピレン組成物に対する灰分量(質量%)を算出した。
【0172】
<CXIS成分及びCXS成分の含有量の測定方法>
リサイクルポリプロピレン組成物、A-2又はC-6を4g秤量し、円筒ろ紙とソックスレー抽出管を用いて、沸騰キシレンで5時間還流した。次いで、抽出液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、ポリマー成分を得た。得られたポリマー成分を秤量した(以下、「ポリマー成分の質量」を「a」とする)。ポリマー成分を2g秤量し、沸騰キシレンで2時間加熱溶解した。次いで、20℃まで冷却した後、ろ紙を用いてろ別した。ろ別したろ液を、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、CXS成分を得た。得られたCXS成分を秤量した(以下、「CXS成分の質量」を「b」とする)。リサイクルポリプロピレン組成物、A-2又はC-6中のCXIS成分及びCXS成分の含有量は、数値a及びbを用いて下記式により算出した。また、ろ紙上に残った固形物を真空乾燥することにより、CXIS成分を得た。得られたCXIS成分は、分子量分布の評価に用いた。
CXS成分量(質量%)=(b/a)×100
CXIS成分量(質量%)=100-CXS成分量(質量%)
【0173】
成分B:ポリヒドロキシアルカノエート系重合体
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体として、下記のポリ(3-ヒドロキシブチレート)を準備した。
【0174】
成分B-1:ポリ(3-ヒドロキシブチレート)
Newlight Technologies社製
メルトフローレート(MFR)(190℃、2.16kg荷重):2.4g/10分
融点:170.9℃
【0175】
成分C:プロピレン重合体
プロピレン重合体として、下記の成分C-1、C-2、C-3、C-4、C-5、C-6を準備した。
【0176】
(C-1)バージンプロピレン単独重合体
特開2004-182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相-気相重合法によって、バージンプロピレン単独重合体(C-1)を製造した。物性は以下のとおりであった。
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):118g/10分
【0177】
(C-2)バージンプロピレン単独重合体
特開2004-182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相-気相重合法によって、バージンプロピレン単独重合体(C-2)を製造した。物性は以下のとおりであった。
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):298g/10分
【0178】
(C-3)バージンプロピレン単独重合体
特開2004-182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相-気相重合法によって、バージンプロピレン単独重合体(C-3)を製造した。物性は以下のとおりであった。
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):700g/10分
【0179】
(C-4)バージンプロピレン単独重合体
バージンプロピレン単独重合体(C-4)として、LyondellBasell社製のMF650Yを用いた。
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):1800g/10分
【0180】
(C-5)バージンヘテロファジックププロピレン重合材料
ヘテロファジックププロピレン重合材料を、特開2004-182981号公報の実施例1に記載の方法によって得られる重合触媒の存在下、気相重合法によって製造した。得られた成分C-5の物性は下記のとおりである。
メルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kg荷重):32.4g/10分
(a)プロピレン単独重合体(重合体(I))極限粘度:1.00dL/g
(b)エチレン-プロピレンランダム共重合体(重合体(II))極限粘度:5.0dL/g
エチレン-プロピレンランダム共重合体(重合体(II))の含有量:16質量%
重合体(II)中のエチレンに由来する構造単位の含有量:43.0質量%
成分C-5において、「プロピレン-エチレンランダム共重合体」中の「エチレンに由来する構造単位の含有量」は、重合体(II)中のエチレン含量(重合体(II)の全質量を基準とした、エチレンに由来する構造単位の含有量)を示す。
【0181】
<重合体(II)中のエチレン含量の測定方法>
重合体(II)中のエチレン含量は、下記の条件で測定した13C-NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules,15,1150-1152(1982))に基づいて求めた。13C-NMRスペクトルは、直径10mmの試験管中でヘテロファジックプロピレン重合材料約200mgを3mLのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させた試料を用い、下記条件で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0182】
(C-6)バージンヘテロファジックプロピレン重合材料
CXIS量(キシレン不溶成分):69.5質量%
CXS量(キシレン可溶成分):30.5質量%
【0183】
<極限粘度の測定方法>
極限粘度(単位:dL/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
【0184】
ウベローデ型粘度計を用いて、濃度0.1g/dL、0.2g/dL及び0.5g/dLの3点について還元粘度を測定した。還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法により、極限粘度数を求めた。外挿法による極限粘度数の計算方法は、例えば、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載されている。
【0185】
成分D:その他の成分
その他の成分として、以下の成分を用いた。
・協和化学工業社製 ハイドロタルサイト 「DHT-4C」
・住友化学社製「スミライザーGA80」(酸化防止剤)
・BASF社製「Irgafos168」(酸化防止剤)
・住友化学社製「スミライザーTPM」(酸化防止剤)
・住化ケムテックス社製「スミソーブ400」(紫外線吸収剤)
・BASF社製「Uvinul5050H」(光安定剤)
・日油社製「アルフローH-50P」(滑剤)
【0186】
<実施例1~4>
プロピレン系樹脂組成物を次の方法で製造した。
バージンプロピレン単独重合体(C-1)を10質量部、ポリ(3-ヒドロキシブチレート(B-1)を90質量部、添加剤として「スミライザーTPM」を0.1重量部、「スミソーブ400」を0.1重量部それぞれ秤量した後、全成分を混合し、田辺プラスチック機械製のスクリュー径が40mmの単軸混練機を用いて、バレル温度を175℃、スクリュー回転数45rpmの条件で混練した。次いで、混練物をダイ穴から押し出し、溶融状態のストランドを冷却水槽に浸漬して冷却固化し、ペレタイザーで切断して、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)組成物(B-2)のペレットを得た。表1の組成の原料と、添加剤として「DHT-4C」を0.03重量部、「スミライザーGA80」を0.1重量部、「Irgafos168」を0.05重量部、「スミライザーTPM」を0.02重量部、「Uvinul5050H」を0.15重量部、「スミソーブ400」を0.2重量部、「アルフローH-50P」を0.05重量部それぞれ秤量した後、全成分を混合し、テクノベル(株)製 二軸混練機KZW-15/45MG(シリンダー内径15.5mm、スクリュー外径15.0mm、L/D=45)を用いて、溶融混練することによりペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。溶融混練の条件は、シリンダー温度200℃;スクリュー回転数500rpm;スクリーンメッシュは100メッシュと50メッシュの2枚重ね;押出量6kg/hrとした。
【0187】
<比較例1~4>
表1の組成に従い、実施例1~4と同様の方法でペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0188】
<実施例5、比較例5、参考例1>
プロピレン系樹脂組成物を次の方法で製造した。
バージンプロピレン単独重合体(C-1)を10質量部、ポリ(3-ヒドロキシブチレート(B-1)を90質量部、添加剤として「スミライザーTPM」を0.1重量部、「スミソーブ400」を0.1重量部それぞれ秤量した後、全成分を混合し、田辺プラスチック機械製のスクリュー径が40mmの単軸混練機を用いて、バレル温度を175℃、スクリュー回転数45rpmの条件で混練した。次いで、混練物をダイ穴から押し出し、溶融状態のストランドを冷却水槽に浸漬して冷却固化し、ペレタイザーで切断して、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)組成物(B-2)のペレットを得た。表2の組成の原料と、添加剤として「DHT-4C」を0.03重量部、「スミライザーGA80」を0.1重量部、「Irgafos168」を0.05重量部、「スミライザーTPM」を0.02重量部、「Uvinul5050H」を0.15重量部、「スミソーブ400」を0.2重量部、「アルフローH-50P」を0.05重量部それぞれ秤量した後、全成分を混合し、テクノベル(株)製 二軸混練機KZW-15/45MG(シリンダー内径15.5mm、スクリュー外径15.0mm、L/D=45)を用いて、溶融混練することによりペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。溶融混練の条件は、シリンダー温度200℃;スクリュー回転数500rpm;スクリーンメッシュは100メッシュと50メッシュの2枚重ね;押出量6kg/hrとした。
【0189】
<メルトフローレート(MFR)の測定>
JIS K7210に規定された方法に従って、得られたプロピレン系樹脂組成物のMFRを温度230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0190】
<引張破断歪み評価用射出成形体の製造>
ペレット状のプロピレン系樹脂組成物をJIS K7152に記載されている範囲の以下の条件で射出成形して、引張破断歪み評価用の射出成形体を製造した。射出成形機で溶融されたプロピレン系樹脂組成物は、ゲートから金型キャビティ内へ射出成形機により供給された。測定結果を表1及び2に示す。
射出成形機:東洋機械金属Si30III(型締力30トン、シリンダー径18mm)
シリンダー温度:180℃
金型温度:50℃
射出速度:20mm/秒
冷却時間:30秒
【0191】
<スプルー離型性の評価>
ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を100℃で1時間乾燥させた後、以下の条件で射出成形した。金型開閉時にスプルーランナーが金型の固定側に残った場合、離型性が悪いは判断し、金型開閉時にスプルーランナーが金型の固定側に残らなかった場合、離型性が良いと判断した。10ショット成形したうち、離型性が良いと判断した回数を評価した。評価結果を表1及び2に示す。なお、表中で「-」と表記されているものは、未測定であることを意味する。
射出成形機:東洋機械金属Si30III(型締力30トン、シリンダー径18mm)
シリンダー温度:180℃
金型温度:50℃
射出速度:20mm/秒
冷却時間:30秒
【0192】
【0193】