IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特開2024-137950半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、これを用いたモールディングフィルムおよび半導体パッケージ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137950
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、これを用いたモールディングフィルムおよび半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/36
H01L23/30 R
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098039
(22)【出願日】2024-06-18
(62)【分割の表示】P 2020526875の分割
【原出願日】2019-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0004041
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0001976
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・キョン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ジュ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ジェ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウンビュル・チョ
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱性および機械的物性を有し、熱膨張係数が低く向上した反り特性を示しながら、視認性が向上した半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物およびこのような半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を用いたモールディングフィルムおよび半導体パッケージを提供する。
【解決手段】化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂;および無機フィラー50重量%以上90重量%以下を含む、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂;および
無機フィラー50重量%以上90重量%以下を含む、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物:
【化1】
上記化学式1中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基であり、nは、1~30の整数であり、Cは、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
【化2】
上記化学式2中、C~Cは、それぞれ独立して、エポキシ基が結合した炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項2】
上記化学式1~2中、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数6のシクロヘキサンである、請求項1に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
上記化学式1~2中、Lは直接結合であり、Lは炭素数1~5のアルキレン基である、請求項1または2に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ重合体100重量部に対して、エポキシ化合物を50重量部以上90重量部以下で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂100重量部に対して、無機フィラーを200重量部以上1,000重量部以下で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機フィラーはシリカを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記シリカは100μm以下の平均粒径を有する、請求項6に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物は、熱硬化触媒、エポキシ硬化剤、レベリング剤、分散剤または溶媒をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
下記化学式3で表される繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子;および前記高分子に分散した50重量%以上90重量%以下の無機フィラー;を含む、モールディングフィルム:
【化3】
上記化学式3~4中、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項10】
前記高分子は、下記化学式5で表される繰り返し単位をさらに含む、請求項9に記載のモールディングフィルム:
【化4】
上記化学式5中、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項11】
上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位が架橋される、請求項10に記載のモールディングフィルム。
【請求項12】
上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位が架橋される構造は下記化学式6で表される、請求項11に記載のモールディングフィルム:
【化5】
上記化学式6中、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項13】
前記高分子は、請求項1の化学式1で表されるエポキシ重合体と化学式2で表されるエポキシ化合物との反応生成物を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載のモールディングフィルム。
【請求項14】
前記モールディングフィルムの透過率(550nmで測定)が60%以上90%以下である、請求項9~13のいずれか一項に記載のモールディングフィルム。
【請求項15】
環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックス;および前記環状脂肪族エポキシ樹脂に分散した無機フィラー;を含み、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1以下である、モールディングフィルム。
【請求項16】
前記モールディングフィルムの透過率(550nmで測定)が60%以上90%以下である、請求項15に記載のモールディングフィルム。
【請求項17】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、請求項9の化学式3で表される繰り返し単位および請求項9の化学式4で表される繰り返し単位を含む環状脂肪族エポキシ樹脂またはその硬化物を含む、請求項15または16に記載のモールディングフィルム。
【請求項18】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、請求項1の化学式1で表されるエポキシ重合体と化学式2で表されるエポキシ化合物との反応生成物を含む環状脂肪族エポキシ樹脂またはその硬化物を含む、請求項15~17のいずれか一項に記載のモールディングフィルム。
【請求項19】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスに分散した無機フィラーの含有量は、モールディングフィルム全体重量を基準にして50重量%以上90重量%以下である、請求項15~18のいずれか一項に記載のモールディングフィルム。
【請求項20】
請求項9~19のいずれか一項に記載のモールディングフィルムで密封される半導体を含む、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年1月11日付の韓国特許出願第10-2018-0004041号および2019年1月7日付の韓国特許出願第10-2019-0001976号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、これを用いたモールディングフィルムおよび半導体パッケージに関し、より詳しくは、優れた耐熱性および機械的物性を有し、熱膨張係数が低く向上した反り特性を示しながら、視認性が向上した半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、および該半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を用いたモールディングフィルム、並びに半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、半導体チップの製造工程は、ウェハに微細なパターンを形成する工程と、最終装置の規格に合うようにウェハを研磨してパッケージング(packaging)する工程とを含む。
【0004】
上述したパッケージング工程は、半導体チップの不良を検査するウェハ検査工程;ウェハを切断して個々のチップに分離するダイシング工程;分離されたチップを回路フィルム(circuit film)またはリードフレームの搭載板に付着させるダイボンディング工程;半導体チップ上に備えられたチップパッドと回路フィルムまたはリードフレームの回路パターンとをワイヤのような電気的接続手段で連結させるワイヤボンディング工程;半導体チップの内部回路とその他の部品を保護するために封止材で外部を包むモールディング工程;リードとリードとを連結しているダムバーを切断するトリム工程;リードを所望の形態に曲げるフォーミング工程;および完成したパッケージの不良を検査する完成品検査工程などを含む。
【0005】
特に、モールディング工程は、半導体チップの内部回路とその他の部品が外部に露出して湿気、衝撃、熱などにより性能が急激に低下することを防止するために必須である。一般に、モールディング工程で使用される封止材としては、価格が経済的で、成形が容易なエポキシ樹脂が使用されている。
【0006】
しかし、最近、電子機器がますます小型化、軽量化、高機能化に伴い、半導体パッケージも小さく、軽く、薄く製造されている。これにより、既存の半導体パッケージング工程に比べて薄型の半導体パッケージ製造工程では、モールディング工程でエポキシ樹脂組成物の熱収縮、硬化収縮などによりパッケージが曲がる問題が発生している。
【0007】
これを解決するために、モールディング工程で使用されるエポキシ樹脂に多量の無機フィラーを添加して、エポキシ樹脂組成物の熱膨張係数と半導体チップ間の熱膨張係数との差を縮めて反り特性を改善しようとする試みがあった。
【0008】
しかし、このように過剰の無機フィラーを添加することにより、最終製造される半導体パッケージで別途の顔料や染料を添加しないにもかかわらず、視認性が低下する限界があった。
【0009】
そこで、熱膨張係数が低く向上した反り特性を示しながら、視認性が向上した半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、優れた耐熱性および機械的物性を有し、熱膨張係数が低く向上した反り特性を示しながら、視認性が向上した半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、前記半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を用いて得られるモールディングフィルムを提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、前記モールディングフィルムで密封された半導体を含む、半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂;および無機フィラー50重量%以上90重量%以下を含む、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0014】
【化1】
【0015】
上記化学式1中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基であり、nは、1~30の整数であり、Cは、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
【0016】
【化2】
【0017】
上記化学式2中、C~Cは、それぞれ独立して、エポキシ基が結合した炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0018】
また、本発明は、下記化学式3で表される繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子;および前記高分子に分散した50重量%以上90重量%以下の無機フィラー;を含むモールディングフィルムを提供する。
【0019】
【化3】
【0020】
上記化学式3~4中、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0021】
また、本発明は、前記他の実施形態のモールディングフィルムで密封された半導体を含む、半導体パッケージを提供する。
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態による半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、これを用いたモールディングフィルムおよび半導体パッケージについてより詳しく説明する。
【0023】
本明細書において、ある部分がある構成要素を‘含む’とすると、これは、特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0024】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常公知の分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速を適用することができる。前記測定条件の具体的な例としては、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用い、Waters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検量線を用いてMw値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0025】
本明細書において、
【化4】
は、他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合は、Lで表示される部分に他の原子が存在しないことを意味する。
【0026】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。他の実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに他の実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘプチルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。他の実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに他の実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、シクロアルカン(cycloalkane)は、環状炭化水素であって、C2nの分子式を有し、炭素数nは3~20、または3~10、または4~8、または5~6であってもよく、具体的な例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどになってもよい。
【0030】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来する2価の官能基であって、例えば、直鎖型、分枝型または環状であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などになることができる。
【0031】
本明細書において、‘隣接した’基は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味し得る。例えば、ベンゼン環でオルト(ortho)位置に置換された2個の置換基および脂肪族環で同一の炭素に置換された2個の置換基は互いに‘隣接した’基に解釈されてもよい。
【0032】
1.半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物
本発明の一実施形態によれば、上記化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂;および無機フィラー50重量%以上90重量%以下を含む、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物が提供され得る。
【0033】
本発明者らは、エポキシ樹脂と一緒に過剰の無機フィラーを含有する既存の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物で視認性が低下する限界を発見し、これを改善するために、化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含む新たなエポキシ樹脂を導入する方案を開発した。このように、化学式1および化学式2で表される特定構造を含む新たなエポキシ樹脂と一緒に50重量%以上90重量%以下の無機フィラーを含む組成物から得られるモールディングフィルムの場合、透明度が増加して優れた視認性を持ちながらも、過剰の無機フィラーの添加による機械的物性、耐熱性、反り特性の向上効果を同時に実現できることを実験を通して確認して発明を完成した。
【0034】
前記エポキシ樹脂は、耐熱特性とモジュラスに優れた化学式1のエポキシ重合体、および常温で液状で存在して高含量の無機フィラーを含有するのに有利な化学式2のエポキシ化合物を混合して、液状のエポキシ化合物による無機フィラーの溶解性向上により無機フィラーがエポキシ樹脂表面から溶出しながら視認性が低下する現象を抑制でき、かつ重合したエポキシ構造を通して耐熱特性、機械的物性、および反り特性が顕著に改善され、互いに異なる2種の物質が均一に分散して全体的に均一な物性を示すことができる。
【0035】
前記エポキシ樹脂は、一般的なエポキシ樹脂とは異なり、不飽和脂肪族官能基を含まず、環状脂肪族官能基を含有して、無機フィラーとして使用されるシリカフィラー自体の屈折率と非常に類似した屈折率を有することができ、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0036】
特に、前記エポキシ樹脂と一緒に高含量の無機フィラーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップのモールディング工程を行う場合、モールディングが完了した半導体パッケージ内部で半導体チップと回路基板の反り特性が最小化されて薄型の半導体パッケージの耐久性を向上することができ、半導体パッケージの外部モールディングフィルムの耐熱特性および機械的物性が向上して、半導体パッケージの保護フィルムとしての性能を向上させることができる。また、無機フィラーの溶解性を高めて視認性を改善できるので、半導体パッケージ内部の半導体チップと回路基板の欠陥を容易に把握でき、顔料や染料などを配合して目標とするカラーを明確に実現することができる。
【0037】
以下、本発明の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物の各構成要素別に細部的な内容について説明する。
【0038】
(1)エポキシ樹脂
前記エポキシ樹脂はバインダー樹脂であって、エポキシ樹脂組成物にさらに適用されるエポキシ硬化剤などにより熱硬化され得る熱硬化性樹脂である。
【0039】
上記化学式1中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基であり、nは1~30の整数であり、Cは、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0040】
特に、上記化学式1で表されるエポキシ重合体は、Cで表される炭素数3~10のシクロアルカンにエポキシ官能基が結合した構造であって、分子内に二重結合を全く含まない化学構造的特徴により、高い耐候性および透明性を有することができる。
【0041】
具体的には、上記化学式1で表されるエポキシ重合体は、一般的な不飽和脂肪族官能基を含まず、環状脂肪族官能基を含有して、それから合成されるエポキシ樹脂が無機フィラーとして使用されるシリカフィラー自体の屈折率と非常に類似した屈折率を有することができ、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0042】
反面、従来のモールディングフィルムに使用されてきたエポキシ重合体であるビスフェノール系エポキシ重合体は、分子内に二重結合を含むことによって相対的に低い耐候性および透明性を示す。
【0043】
また、上記化学式1で表されるエポキシ重合体は、低い粘度特性を有して過剰のフィラー添加に非常に有利で、重合体の合成がシクロアルキンの2重結合の酸化反応で行われることによって、一般的なビスフェノール系エポキシ重合体の合成過程に比べて、最終合成されるエポキシ重合体内のイオン性不純物(例えば、塩化イオン)が顕著に減少する効果を有することができる。
【0044】
一方、上記化学式2中、C~Cは、それぞれ独立して、エポキシ基が結合した炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0045】
上記化学式2中、エポキシ基が結合した炭素数3~10のシクロアルカンは、炭素数3~10のシクロアルカンの隣接した2個の炭素原子によりエポキシ基が結合することができる。
【0046】
好ましくは、上記化学式1中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基であり、nは1~20の整数であり、Cは炭素数6のシクロヘキサンであり、Lは直接結合である。
【0047】
具体的には、上記化学式1は下記化学式1-1で表される。
【0048】
【化5】
【0049】
上記化学式1-1中、R、n、Lに関する内容は上記化学式1で上述した内容を全て含む。
【0050】
また、上記化学式2中、好ましくは、C~Cは、それぞれ独立して、エポキシ基が結合した炭素数6のシクロヘキサンであり、Lは、炭素数1~5のアルキレン基(例えば、炭素数1のメチレン基)である。
【0051】
上記化学式2で表されるエポキシ化合物は、一般的な不飽和脂肪族官能基を含まず、環状脂肪族官能基を含有して、それから合成されるエポキシ樹脂が無機フィラーとして使用されたシリカフィラー自体の屈折率と非常に類似した屈折率を有することができ、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0052】
具体的には、上記化学式2は下記化学式2-1で表される。
【0053】
【化6】
【0054】
上記化学式2-1中、Lに関する内容は上記化学式2で上述した内容を全て含む。
【0055】
上記化学式1で表されるエポキシ重合体は、重量平均分子量(GPCによって測定)が100g/mol以上5,000g/mol以下であり得る。上記化学式1で表されるエポキシ重合体によって、製造される反応生成物であるエポキシ樹脂の透明性、耐熱性およびモジュラスを向上させることができ、低い粘度により高含量の無機フィラーの分散性を高めることができる。
【0056】
上記化学式2で表されるエポキシ化合物は、常温(20℃~30℃)で液状で存在してもよく、製造される反応生成物であるエポキシ樹脂が高含量の無機フィラーを含有することができる。
【0057】
一方、上記化学式1で表されるエポキシ重合体100重量部に対して、上記化学式2で表されるエポキシ化合物を50重量部以上90重量部以下、または60重量部以上85重量部以下、65重量部以上85重量部以下含むことができる。上記化学式2で表されるエポキシ化合物が減少しすぎる場合、製造されるエポキシ樹脂が無機フィラーを高含量で十分に含有できず、モールディングフィルムの機械的物性や反り特性が悪くなり、上記化学式2で表されるエポキシ化合物が増加しすぎる場合、最終モールディングフィルムの耐熱性および機械的物性が減少する恐れがある。
【0058】
一方、前記エポキシ樹脂は、前記エポキシ樹脂組成物全体重量を基準にして5重量%以上40重量%以下、または5重量%以上30重量%以下、または5重量%以上25重量%以下で含まれ得る。
【0059】
(2)無機フィラー
前記半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物は、全体組成物重量を基準にして50重量%以上90重量%以下、または60重量%以上80重量%以下、または70重量%以上90重量%以下の無機フィラーを含むことができる。具体的には、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、無機フィラーを200重量部以上1,000重量部以下、または220重量部以上700重量部以下、または230重量部以上620重量部以下含むことができる。このように前記無機フィラーを高含量で添加することによって、前記半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物から得られるモールディングフィルムの熱膨張係数が低くなり、半導体チップとの熱膨張係数の差が減少して、最終製造される半導体パッケージの反り程度が減少でき、モールディングフィルムの機械的物性を向上させることができる。
【0060】
前記無機フィラーは、組成物の取扱い性、耐熱性および熱伝導の改善、および溶融粘度調整などのために追加することができ、その例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、滑石または窒化アルミニウムの1種または2種以上の混合が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
ただし、好ましくは、無機フィラーとしてシリカを使用することができる。特に、前記シリカとしては、100μm以下、または10μm以下、または0.1μm以上100μm以下、または0.1μm以上10μm以下の平均粒径を有するシリカを使用することができる。
【0062】
前記シリカの平均粒径は、前記全体シリカの粒径を確認して求めることができ、前記シリカの粒径は、後述するモールディングフィルムの断面などで確認可能である。また、前記シリカの平均粒径は、モールディングフィルムの製造時に使用される全体シリカの粒径やこれらの平均粒径によっても確認可能である。
【0063】
前記シリカは、100μm以下、または10μm以下、または0.1μm以上100μm以下、または0.1μm以上10μm以下の平均粒径を有する個別粒子のグループ(group)であって、このようなグループ(group)に含まれる個別微粒子は、平均的に100μm以下、または10μm以下、または0.1μm以上100μm以下、または0.1μm以上10μm以下の粒径を有することができる。より具体的には、前記グループ(group)に含まれる個別微粒子の95%、または99%が100μm以下、または10μm以下、または0.1μm以上100μm以下、または0.1μm以上10μm以下の粒径を有することができる。
【0064】
(3)エポキシ樹脂組成物
前記エポキシ樹脂組成物は、上述したエポキシ樹脂と無機フィラーとを含み、これを製造する方法の例は特に限定されず、エポキシ樹脂と無機フィラーを多様な方法、例えば、ミキサーなどを用いて混合する方法を使用することができる。
【0065】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、熱硬化触媒、エポキシ硬化剤、レベリング剤、分散剤または溶媒をさらに含むことができる。
【0066】
また、前記熱硬化触媒は、熱硬化時に前記熱硬化性バインダーのエポキシ樹脂の硬化を促進させる役割を果たす。添加可能な熱硬化触媒は特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミンなどのアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィンなどの化合物などが挙げられる。
【0067】
また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT3503N、UCAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0068】
ただし、使用可能な熱硬化触媒が上述した例に限定されるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基および/またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進する熱硬化触媒として知られている化合物は特に制限なく使用することができる。
【0069】
また、グアナミンは、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジンイソシアヌル酸付加物などのS-トリアジン誘導体を用いることもできる。
【0070】
前記熱硬化触媒は、エポキシ樹脂の硬化程度を考慮して適切な量で用いることができ、例えば、前記エポキシ樹脂組成物は、前記熱硬化触媒0.1重量%以上20重量%以下、または0.1重量%以上10重量%以下を含むことができる。
【0071】
前記エポキシ硬化剤としては、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などを使用することができる。アミン系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミンなどを使用することができる。酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などを使用することができる。アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとから合成されるポリアミド樹脂などを使用することができる。フェノール系化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノールなどの多価フェノール類;フェノール類とアルデヒド類、ケトン類またはジエン類などの縮合により得られるフェノール樹脂;フェノール類および/またはフェノール樹脂の変性物;テトラブロモビスフェノールA、臭素化フェノール樹脂などのハロゲン化フェノール類;その他イミダゾール類、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体などを使用することができる。
【0072】
前記エポキシ硬化剤は、製造されるモールディングフィルムの機械的物性を考慮して適切な量で用いることができ、例えば、前記エポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ硬化剤0.01重量%以上10重量%以下、または0.1重量%以上5重量%以下を含むことができる。
【0073】
前記溶媒は、前記エポキシ樹脂組成物を溶解させ、また組成物を塗布するのに適切な程度の粘度を付与する目的で使用することができる。前記溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水素添加石油ナフサ、溶媒ナフサなどの石油系溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド類などが挙げられる。これら溶媒は単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。
【0074】
前記溶媒は、前記エポキシ樹脂組成物の分散性、溶解度または粘度などを考慮して適切な量で用いることができ、例えば、前記エポキシ樹脂組成物は、前記溶媒0.1重量%以上50重量%以下、または1重量%以上30重量%以下を含むことができる。前記溶媒の含有量が少なすぎる場合には、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなってコーティング性を低下することがあり、溶媒の含有量が多すぎる場合には、乾燥がうまくいかず、形成されたフィルムの粘着性が増加できる。
【0075】
2.半導体モールディング用モールディングフィルム
本発明の他の実施形態によれば、上記化学式3で表される繰り返し単位および上記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子;および前記高分子に分散した50重量%以上90重量%以下の無機フィラー;を含む、モールディングフィルムが提供される。
【0076】
前記他の実施形態のモールディングフィルムに含まれる無機フィラーに対する内容は、前記一実施形態の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物で上述した内容を全て含む。
【0077】
前記高分子は、上記化学式3および化学式4で表される繰り返し単位を全て含むことができ、前記一実施形態のエポキシ樹脂の硬化物を含むことができる。これにより、2個の繰り返し単位それぞれから具現される物性をフィルム全体で均一に実現することができる。
【0078】
具体的には、前記高分子に含まれる化学式3で表される繰り返し単位で、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0079】
このように、前記高分子に含まれる化学式3で表される繰り返し単位が不飽和脂肪族官能基を含まず、環状脂肪族官能基を含有して、これを含むエポキシ高分子は、無機フィラーとして使用されたシリカフィラー自体の屈折率と非常に類似した屈折率を有することができ、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0080】
好ましくは、前記高分子に含まれる化学式3で表される繰り返し単位で、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数6のシクロヘキサンであり、Lは直接結合であり、Lは炭素数1~5のアルキレン基(例えば、炭素数1のメチレン基)である。
【0081】
上記化学式3で表される繰り返し単位は、より具体的には、下記化学式3-1で表される繰り返し単位である。
【0082】
【化7】
【0083】
上記化学式3-1中、L~Lに対する内容は、上記化学式3で上述した内容をそのまま含むことができる。
【0084】
前記モールディングフィルムに含まれる高分子に含まれる化学式3で表される繰り返し単位は、上述した一実施形態の化学式1で表されるエポキシ重合体のエポキシ架橋反応により得られ、上記化学式3で表される繰り返し単位で形成された架橋構造により耐熱性および機械的物性を向上させることができる。
【0085】
一方、前記高分子に含まれる化学式4で表される繰り返し単位で、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0086】
好ましくは、前記高分子に含まれる化学式4で表される繰り返し単位で、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数6のシクロヘキサンであり、Lは、炭素数1~5のアルキレン基(例えば、炭素数1のメチレン基)である。
【0087】
このように、前記高分子に含まれる化学式4で表される繰り返し単位が不飽和脂肪族官能基を含まず、環状脂肪族官能基を含有して、これを含むエポキシ高分子は、無機フィラーとして使用されたシリカフィラー自体の屈折率と非常に類似した屈折率を有することができ、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0088】
前記高分子に含まれる化学式4で表される繰り返し単位は、より具体的には、下記化学式4-1で表される繰り返し単位である。
【0089】
【化8】
【0090】
上記化学式4-1中、Lに対する内容は上記化学式4で上述した内容をそのまま含むことができる。
【0091】
前記モールディングフィルムに含まれる高分子に含まれる化学式4で表される繰り返し単位は、上述した一実施形態の化学式1で表されるエポキシ重合体と化学式2で表されるエポキシ化合物とのエポキシ架橋反応により得られ、上記化学式4で表される繰り返し単位で形成された架橋構造により高含量の無機フィラーに対する溶解性が高くなり、視認性を向上させることができる。
【0092】
一方、前記モールディングフィルムに含まれる高分子は、下記化学式5で表される繰り返し単位をさらに含むことができる。
【0093】
【化9】
【0094】
上記化学式5中、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0095】
好ましくは、前記モールディングフィルムに含まれる化学式5で表される繰り返し単位で、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数6のシクロヘキサンであり、Lは、炭素数1~5のアルキレン基(例えば、炭素数1のメチレン基)である。
【0096】
上記化学式5で表される繰り返し単位は、より具体的には、下記化学式5-1で表される繰り返し単位である。
【0097】
【化10】
【0098】
上記化学式5-1中、Lに対する内容は上記化学式5で上述した内容をそのまま含むことができる。
【0099】
前記モールディングフィルムに含まれる高分子が上記化学式3および化学式4で表される繰り返し単位と一緒に上記化学式5で表される繰り返し単位をさらに含む場合、上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位を架橋できる。具体的には、少なくとも2つの化学式4で表される繰り返し単位は、上記化学式5で表される繰り返し単位を介して架橋できる。
【0100】
このように、内部に存在する繰り返し単位間の架橋結合が形成されることによって、前記高分子はより優れた耐熱性、機械的物性を有することができ、熱膨張係数が低く向上した反り特性を実現することができる。
【0101】
より具体的には、上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位が架橋された構造は、下記化学式6で表される。
【0102】
【化11】
【0103】
上記化学式6中、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。前記C~C10、L~Lに関する内容は、上記化学式3~化学式5で上述した内容を全て含むことができる。
【0104】
より具体的には、上記化学式6で表される繰り返し単位は、下記化学式6-1で表される。
【0105】
【化12】
【0106】
上記化学式6-1中、L~Lに関する内容は、上記化学式3~化学式5で上述した内容を全て含むことができる。
【0107】
一方、前記高分子は、前記一実施形態の化学式1で表されるエポキシ重合体と化学式2で表されるエポキシ化合物との反応生成物を含むことができる。上記化学式1で表されるエポキシ重合体および化学式2で表されるエポキシ化合物それぞれに対する内容は、前記一実施形態で上述した内容を全て含む。
【0108】
つまり、前記他の実施形態のモールディングフィルムは、前記一実施形態の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物の塗布、乾燥、および硬化工程により得られる完全硬化フィルムを意味し、モールディングフィルムに含まれる高分子は、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物に含まれているエポキシ重合体とエポキシ化合物とのエポキシ架橋反応により得られる反応生成物を含むことができる。
【0109】
前記塗布段階では、樹脂組成物を塗布するのに使用することができる公知の方法および装置を用いることができ、例えばコンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーターなどを使用することができる。
【0110】
前記乾燥温度は、50℃以上130℃以下、または70℃以上100℃以下であってもよい。前記硬化条件の例は特に限定されず、例えば、140℃以上200℃以下のオーブンで0.5時間以上2時間以下に加熱硬化させることができる。
【0111】
前記モールディングフィルムは、前記モールディングフィルム全体重量を基準にして50重量%以上90重量%以下、または60重量%以上80重量%以下、または70重量%以上90重量%以下の無機フィラーを含むことができる。
【0112】
一方、前記モールディングフィルムの透過率(550nmで測定)は、60%以上90%以下、または70%以上85%以下であってもよい。前記モールディングフィルムは、このような範囲の高い透過率を有することによって、透明性に優れ、半導体パッケージに適用時、視認性を向上させることができる。
【0113】
また、前記モールディングフィルムのモジュラス(25℃で測定)は10.0GPa以上20.0GPa以下、または15.0GPa以上20.0GPa以下であってもよい。前記モールディングフィルムは、このような範囲の高いモジュラスを有することによって、半導体パッケージに適用時、高い機械的物性に基づいて半導体パッケージに対する耐久性を向上させることができる。
【0114】
一方、前記モールディングフィルムに対して、0℃~50℃までの温度範囲で測定された熱膨張係数(CTE)の平均値は1.00ppm/K以上25.00ppm/K以下、または1.00ppm/K以上8.00ppm/K以下であってもよい。前記モールディングフィルムは、このような範囲の低い熱膨張係数を有することによって、半導体パッケージに適用時、半導体基板との熱膨張係数の差が減少して、半導体パッケージの反り特性を減らし、耐久性を向上させることができる。
【0115】
前記モールディングフィルムの厚さは特に限定されず、例えば、0.01μm以上1,000μm以下の範囲内で自由に調節可能である。前記モールディングフィルムの厚さが特定の数値ほど増加または減少する場合、モールディングフィルムから測定される物性も一定の数値ほど変化することができる。本発明でモールディングフィルムの物性測定に使用される厚さは、例えば、95μm以上105μm以下、または98μm以上102μm以下であってもよい。
【0116】
一方、前記モールディングフィルムは、環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックス;および前記環状脂肪族エポキシ樹脂に分散した無機フィラー;を含み、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1以下、または0.01以上0.1以下、または0.05以上0.1以下、または0.06以上0.08以下であってもよい。これにより、前記モールディングフィルムは、最終硬化物の状態で前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率が類似した値を有することによって、光学的性能に優れて高い透過率を実現できる。
【0117】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値とは、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率のうち大きな値から、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率のうち小さい値を引いた差の値を意味する。
【0118】
具体的には、前記モールディングフィルムで前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1以下を満足する場合、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率が類似した値を有することによって、透過率(550nmで測定)が60%以上90%以下、または70%以上85%以下であってもよい。前記モールディングフィルムは、このような範囲の高い透過率を有することによって透明性に優れ、半導体パッケージに適用時、視認性を向上させることができる。
【0119】
反面、前記モールディングフィルムで前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1を超過して増加しすぎる場合、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率が顕著に異なる値を有することによって、透過率(550nmで測定)が60%未満に減少して透明性が減少することによって、半導体パッケージに適用時、視認性不良の問題が発生することがある。
【0120】
特に、前記モールディングフィルムで環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1以下で類似した値を有するのは、バインダー樹脂として不飽和脂肪族を含まない前記環状脂肪族エポキシ樹脂を使用して、一般的なエポキシ樹脂よりも優れた光学性能を実現できるためである。
【0121】
したがって、前記モールディングフィルムは、環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーとして使用されたシリカフィラー自体の屈折率を類似した水準に合わせるのが容易であり、これによってモールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0122】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率は、1.6以下、または1.4以上1.6以下、または1.5以上1.6以下、または1.5以上1.55以下、または1.51以上1.53以下である。また、前記無機フィラーの屈折率は、1.5以下、または1.3以上1.5以下、または1.4以上1.5以下、または1.42以上1.48以下、または1.44以上1.46以下である。
【0123】
前記モールディングフィルムに含まれる無機フィラーに対する内容は、前記一実施形態の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物で上述した内容を全て含む。
【0124】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、分子構造内の環状脂肪族官能基が含まれている環状脂肪族エポキシ樹脂または前記環状脂肪族エポキシ樹脂の硬化物を含み、前記環状脂肪族エポキシ樹脂に対する内容は、上述したモールディングフィルムに含まれる高分子に対する説明が全て同様に適用される。
【0125】
また、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、上述した一実施形態の半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を、例えばUVのような光照射による光硬化または熱硬化させて形成することができる。
【0126】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスに含まれている前記環状脂肪族エポキシ樹脂は、一般的なエポキシ樹脂とは異なり、不飽和脂肪族官能基が含まれず無機フィラーとして使用されたシリカフィラー自体の屈折率と非常に類似した水準の屈折率を有することができ、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【0127】
したがって、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、上記化学式3で表される繰り返し単位および上記化学式4で表される繰り返し単位を含む環状脂肪族エポキシ樹脂またはその硬化物を含むことができる。また、前記環状脂肪族エポキシ樹脂は、上記化学式5で表される繰り返し単位をさらに含むことができる。また、前記環状脂肪族エポキシ樹脂は、上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位が架橋された構造である上記化学式6で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0128】
上記化学式3、化学式4、化学式5、化学式6に対する内容は、前記モールディングフィルムに含まれる高分子で上述した内容を全て含む。
【0129】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックス;および前記環状脂肪族エポキシ樹脂に分散した無機フィラー;を含み、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1以下であるモールディングフィルムの製法、透過率、モジュラス、熱膨張係数、厚さに対する内容も、上記化学式3で表される繰り返し単位および上記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子;および前記高分子に分散した50重量%以上90重量%以下の無機フィラー;を含むモールディングフィルムで上述した内容と同様である。
【0130】
一方、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、前記一実施形態の化学式1で表されるエポキシ重合体と化学式2で表されるエポキシ化合物との反応生成物を含む環状脂肪族エポキシ樹脂またはその硬化物を含むことができる。上記化学式1で表されるエポキシ重合体および化学式2で表されるエポキシ化合物それぞれに対する内容は、前記一実施形態で上述した内容を全て含む。
【0131】
前記モールディングフィルムは、前記モールディングフィルム全体重量を基準にして50重量%以上90重量%以下、または60重量%以上80重量%以下、または70重量%以上90重量%以下の無機フィラーを含むことができる。
【0132】
3.半導体パッケージ
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記他の実施形態のモールディングフィルムで密封された半導体を含む半導体パッケージが提供され得る。
【0133】
つまり、前記他の実施形態のモールディングフィルムは、半導体を密封するための用途に用いることができ、前記半導体は、回路基板および半導体チップを含むことができる。前記回路基板は、プリント回路基板(PCB:Printed Circuit Boardd)、半導体パッケージ基板またはフレキシブル半導体パッケージ(FPCB)基板などが挙げられる。
【0134】
より具体的には、前記他の実施形態のモールディングフィルムは、半導体パッケージ基板上に積層され、回路基板上に実装された半導体チップまたは回路基板を密封させることができる。これにより、前記半導体パッケージは、モールディングフィルムによって回路基板や半導体チップが外部に露出することを防止して、高い信頼性を実現することができる。
【発明の効果】
【0135】
本発明によれば、優れた耐熱性および機械的物性を有し、熱膨張係数が低く向上した反り特性を示しながら、視認性が向上した半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、およびこのような半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を用いたモールディングフィルムおよび半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0136】
以下、本発明の具体的な実施形態を通じて本発明の作用および効果をさらに詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は、本発明の例として提示したに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が決まるわけではない。
【実施例0137】
[製造例および比較製造例]エポキシ樹脂の製造
[製造例1]
下記化学式Aで表される固体重合体(重量平均分子量:1874g/mol)と下記化学式Bで表される液状化合物[3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、Celloxide2021P)]を5:4の重量比率で混合してエポキシ樹脂を製造した。
【0138】
【化13】
【0139】
上記化学式A中、Rはブチル基であり、nは15の整数である。
【0140】
【化14】
【0141】
[製造例2]
上記化学式Aで表される固体重合体と上記化学式Bで表される液状化合物[3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、Celloxide2021P)]の重量比率を6:4に変更したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で、エポキシ樹脂を製造した。
【0142】
[比較製造例1]
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、品番「エポトートYDF-8170」、エポキシ当量160)31重量部と(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダイセル化学工業社製、Celloxide2021P)78.6重量部とを混合して、エポキシ樹脂を製造した。
【0143】
[実施例および比較例]
[実施例1]
(1)半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物の製造
バインダー樹脂として前記製造例1で得られたエポキシ樹脂を25重量%、フィラーとしてシリカ(平均粒径5μm)60重量%、熱硬化触媒として2-フェニルイミダゾールを2重量%、レベリング剤3重量%、溶剤としてMEKを10重量%使用して各成分を配合し攪拌した後、3本ロールミル装備で分散させて、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0144】
(2)モールディングフィルム/半導体パッケージの製造
半導体チップが実装された半導体パッケージ基板を一定の形状を有する金型を含むモールディング装置に入れ、前記で得られた半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を前記金型に供給して、175℃で1時間加熱硬化することによって、厚さ100μmのモールディングフィルムを含む半導体パッケージを製造した。
【0145】
一方、前記半導体チップが実装される半導体パッケージ基板は、厚さ0.1mm、銅箔の厚さ12μmのLG化学(株)の銅箔積層板LG-T-500GAを横5cm、縦5cmの基板として切断して、半導体チップを表面に実装させたものを使用した。
【0146】
また、前記モールディングフィルム内には、下記化学式Cおよび化学式Dの繰り返し単位構造が含まれる。
【0147】
【化15】
【0148】
[実施例2]
バインダー樹脂として前記製造例2で得られたエポキシ樹脂を使用したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、モールディングフィルムおよび半導体パッケージを製造した。
【0149】
[実施例3]
バインダー樹脂として前記製造例1で得られたエポキシ樹脂を13重量%、フィラーとしてシリカ(平均粒径5μm)80重量%、熱硬化触媒として2-フェニルイミダゾールを1重量%、レベリング剤1重量%、溶剤としてMEKを5重量%を使用して各成分を配合し攪拌した後、3本ロールミル装備で分散させて半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物を製造し、前記実施例1と同様の方法で、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、モールディングフィルムおよび半導体パッケージを製造した。
【0150】
[実施例4]
バインダー樹脂として前記製造例2で得られたエポキシ樹脂を使用したことを除いては前記実施例3と同様の方法で、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、モールディングフィルムおよび半導体パッケージを製造した。
【0151】
[比較例1]
バインダー樹脂として前記比較製造例1で得られたエポキシ樹脂を使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法で、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、モールディングフィルムおよび半導体パッケージを製造した。
【0152】
[比較例2]
バインダー樹脂として前記比較製造例1で得られたエポキシ樹脂を使用したことを除いては前記実施例3と同様の方法で、半導体モールディング用エポキシ樹脂組成物、モールディングフィルムおよび半導体パッケージを製造した。
【0153】
[試験例]
1.耐熱信頼性評価
実施例1~4、比較例1~2で得られた半導体パッケージ試片を146℃、100RH%のPressure Cooker Test Chamber内に14時間放置した後、取り出して表面の水分を除去した。これを288℃のはんだ半田槽上にフィルムのある面を上にして浮かべた。テスト試片が外観的にフィルムの剥離や変形があるかを検査して、耐熱信頼性を評価した。
OK:288、はんだフローティングで破裂しない
NG:288、はんだフローティングで破裂
【0154】
2.モジュラス評価
実施例1~4、比較例1~2で得られた厚さ100μmのモールディングフィルムを横5.3mm、縦17.2~17.9mmに切断して試片を製造した後、TA社のDMAであるQ800を用いて周波数 1hz、振幅 5μm、測定静的応力 0.1Nの条件で、-20℃~300℃まで10℃/分の昇温条件でモジュラスを測定し、常温(25℃)でのモジュラス値を下記表1に記載した。
【0155】
3.透明性評価
実施例1~4、比較例1~2で得られた厚さ100μmのモールディングフィルムを横3cm、縦3cmに切断して試片を製造した後、SHIMADZU社製のUV-3600plus装備を用いて、550nm基準で透過率を測定した。
【0156】
4.反り特性評価
実施例1~4、比較例1~2で得られた厚さ100μmのモールディングフィルムを横4.8mm、縦16mmに切断して試片を製造した後、TA社のQ400EMを用いて、測定静的応力 0.1Nの条件で、-20℃~300℃まで5℃/分の昇温条件で熱膨張係数(CTE)を測定し、0℃~50℃までの温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)の平均値を計算して、下記表1に記載した。
【0157】
前記実験例1~4の測定結果を下記表1に示す。
【0158】
5.屈折率評価
実施例1~4、比較例1~2で得られた厚さ100μmのモールディングフィルムのマトリックスであるエポキシ樹脂とこれに分散したフィラーに対して、Sairon Technology社製のprism couplerを用いて屈折率をそれぞれ測定し、その結果を下記表2に示す。
【0159】
前記実験例5の測定結果を下記表2に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
上記表1に示すように、製造例1または製造例2で合成されたエポキシ樹脂と一緒に60重量%以上80重量%以下のシリカフィラーを含む組成物から得られた実施例1~4のモールディングフィルムは、550nmで72.55%~83.23%の高い透過率を示して、透明性が大きく向上したことが確認できた。
【0162】
反面、比較製造例1で合成されたエポキシ樹脂と一緒に60重量%以上80重量%以下のシリカフィラーを含む組成物から得られた比較例1~2のモールディングフィルムは、550nmで49.13%~59.11%で実施例に比べて顕著に低い透過率を示して、透明性において不良であることが確認できた。
【0163】
このように、前記実施例1~4のモールディングフィルムは、透明性において比較例1~2のモールディングフィルムよりも顕著に向上した特性を示しながらも、比較例に比べて同等の水準以上の高いモジュラスによる優れた機械的物性と共に、低い熱膨張係数に応じた優れた反り特性を有することが確認された。
【0164】
特に、製造例1または製造例2で合成されたエポキシ樹脂と一緒に80重量%のシリカフィラーを含む組成物から得られた実施例3~4のモールディングフィルムは、比較例に比べて顕著に高い17.0GPa~18.5GPaのモジュラスを有し、かつ比較例に比べて顕著に低い4.62ppm/K~5.68ppm/Kの熱膨張係数(CTE)を示して、シリカフィラーの含有量を高めることで効果改善を確認することができた。
【0165】
【表2】
【0166】
上記表2に示すように、実施例1~4のモールディングフィルムは、エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.06~0.08で小さく、前記エポキシ樹脂マトリックスと無機フィラーがほぼ同じ水準の屈折率を有することが確認できた。
【0167】
反面、比較例1~2のモールディングフィルムは、エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.17で実施例に比べて大きく増加して、前記エポキシ樹脂マトリックスと無機フィラーの屈折率が互いに異なることが確認できた。
【0168】
このように、前記実施例1~4のモールディングフィルムは、エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率を類似した水準に合わせて、モールディングフィルム内で均一に高い透過率を実現することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式3で表される繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子;および前記高分子に分散した50重量%以上90重量%以下の無機フィラー;を含み、
前記高分子は、下記化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂を含み、
前記エポキシ重合体100重量部に対して、エポキシ化合物を50重量部以上90重量部以下で含み、
前記無機フィラーはシリカであり、
モールディングフィルムに含まれる高分子に含まれる化学式3で表される繰り返し単位は、前記化学式1で表されるエポキシ重合体のエポキシ架橋反応により得られ、
前記モールディングフィルムに含まれる高分子に含まれる化学式4で表される繰り返し単位は、前記化学式1で表されるエポキシ重合体と化学式2で表されるエポキシ化合物とのエポキシ架橋反応により得られ、
前記エポキシ樹脂100重量部に対して、無機フィラーを230重量部以上620重量部以下で含む、モールディングフィルム:
【化1】
記化学式1中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基であり、nは、1~30の整数であり、C は、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L は、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
【化2】
上記化学式2中、C ~C は、それぞれ独立して、エポキシ基が結合した炭素数3~10のシクロアルカンであり、L は、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
【化3】
上記化学式3~4中、C~Cは、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項2】
前記高分子は、下記化学式5で表される繰り返し単位をさらに含む、請求項に記載のモールディングフィルム:
【化4】
上記化学式5中、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項3】
上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位が架橋される、請求項に記載のモールディングフィルム。
【請求項4】
上記化学式5で表される繰り返し単位を介して化学式4で表される繰り返し単位が架橋される構造は下記化学式6で表される、請求項に記載のモールディングフィルム:
【化5】
上記化学式6中、C~C10は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L~Lは、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項5】
前記モールディングフィルムの透過率(550nmで測定)が60%以上90%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のモールディングフィルム。
【請求項6】
環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックス;および前記環状脂肪族エポキシ樹脂に分散した無機フィラー;を含み、前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスの屈折率と無機フィラーの屈折率との差の絶対値が0.1以下であり、
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスに分散した無機フィラーの含有量は、モールディングフィルム全体重量を基準にして50重量%以上90重量%以下であり、
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、下記化学式1で表されるエポキシ重合体および下記化学式2で表されるエポキシ化合物を含むエポキシ樹脂を含み、
前記エポキシ重合体100重量部に対して、エポキシ化合物を50重量部以上90重量部以下を含み、
前記無機フィラーはシリカであり、
前記エポキシ樹脂100重量部に対して、無機フィラー230重量部以上620重量部以下で含む、環状脂肪族エポキシ樹脂またはその硬化物を含むモールディングフィルム。
【化6】
上記化学式1中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基であり、nは、1~30の整数であり、Cは、炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基であり、
【化7】
上記化学式2中、C~Cは、それぞれ独立して、エポキシ基が結合した炭素数3~10のシクロアルカンであり、Lは、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項7】
前記モールディングフィルムの透過率(550nmで測定)が60%以上90%以下である、請求項に記載のモールディングフィルム。
【請求項8】
前記環状脂肪族エポキシ樹脂マトリックスは、下記化学式3で表される繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位を含む環状脂肪族エポキシ樹脂またはその硬化物を含む、請求項またはに記載のモールディングフィルム:
【化8】
上記化学式3~4中、C ~C は、それぞれ独立して、炭素数3~10のシクロアルカンであり、L ~L は、それぞれ独立して、直接結合または炭素数1~10のアルキレン基である。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のモールディングフィルムで密封される半導体を含む、半導体パッケージ。
【外国語明細書】