(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137958
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】自己接着性ルーフィングシート
(51)【国際特許分類】
E04D 5/06 20060101AFI20240927BHJP
E04D 5/10 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E04D5/06 B
E04D5/06 F
E04D5/10 E
B32B27/30 101
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024104405
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2019149051の分割
【原出願日】2019-08-15
(31)【優先権主張番号】201810937429.1
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ハウフェ
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート カール
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ チン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ イーチョー
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、水の浸透に対してルーフ基材を封止するために使用することができる自己接着性ルーフィングシートを提供することである。
【解決手段】 本発明は、防水層(2)と、接着剤層(3)と、場合により剥離ライナー(4)とを含むルーフィングシート(1)に関し、この場合に、接着剤層(3)はアクリル感圧接着剤層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.第1及び第2の主表面を有するポリ塩化ビニル系防水層(2)と、
ii.前記防水層(2)の前記第2の主表面の少なくとも一部に被覆されて、これを覆う接着剤層(3)と、
iii.場合により、剥離ライナー(4)と、
を含む自己接着性ルーフィングシート(1)であって、前記接着層がアクリル感圧接着剤であることを特徴とする、自己接着性ルーフィングシート(1)。
【請求項2】
前記接着剤層(3)は、前記防水層(2)の前記第2の主表面の実質的に全領域を覆うことを特徴とする、請求項1に記載のルーフィングシート。
【請求項3】
前記接着剤層(3)は、前記接着剤層の総重量に基づいて、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1つのアクリルポリマーを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のルーフィングシート。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーは、0℃未満、好ましくは-20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とし、これが1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して動的機械分析(DMA)によって決定される、請求項3に記載のルーフィングシート。
【請求項5】
前記接着剤層(3)は、25~500μm、好ましくは50~250μmの厚みを有することを特徴とし、これがDIN EN 1849-2規格に定義される測定方法を使用することによって決定される、請求項1~4のいずれか一項に記載のルーフィングシート。
【請求項6】
前記防水層(2)は、全ての割合が前記防水層(2)の全重量に基づいて、
a)25~65重量%のポリ塩化ビニル樹脂と、
b)15~50重量%の少なくとも1つの可塑剤と、
c)0~30重量%の少なくとも1つの不活性無機フィラーと、
を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のルーフィングシート。
【請求項7】
前記防水層の組成物が、-20℃未満、好ましくは-25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とし、これが1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して動的機械分析(DMA)によって決定される、請求項6に記載のルーフィングシート。
【請求項8】
前記少なくとも一つの可塑剤が、直鎖状及び分岐状フタレート、トリメリテート可塑剤、アジピン酸ポリエステル、並びに生化学的可塑剤からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6又は7に記載のルーフィングシート。
【請求項9】
前記少なくとも1つの不活性無機フィラーが、砂、グラファイト、炭酸カルシウム、粘土、膨張粘土、珪藻土、軽石、雲母、カオリン、タルク、ドロマイト、ゾノトライト、パーライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、バライト、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ、エーロゲル、ガラスビーズ、中空ガラス球、セラミック球、ボーキサイト、粉砕コンクリート、及びゼオライトからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載のルーフィングシート。
【請求項10】
前記防水層(2)は、0.5~5.0mm、好ましくは1.0~2.5mmの厚さを有することを特徴とし、これがDIN EN 1849-2規格に定義される測定方法を用いて決定される、請求項1~9のいずれか一項に記載のルーフィングシート。
【請求項11】
前記防水層(2)に完全に埋め込まれる繊維材料の層(5)を更に含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のルーフィングシート。
【請求項12】
前記繊維材料の層(5)は、15~150g/m2、好ましくは25~100g/m2の単位面積当たりの質量を有する不織布であることを特徴とする、請求項11に記載のルーフィングシート。
【請求項13】
前記不織布は、無機繊維、好ましくはガラス繊維を含むことを特徴とする、請求項12に記載のルーフィングシート。
【請求項14】
剥離ライナー(4)を更に含み、これが前記防水層(2)の前記第2の主表面とは反対側を向く前記接着剤層(3)の外側主表面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のルーフィングシート。
【請求項15】
ルーフ基材(6)及び前記接着剤層(3)を介して前記ルーフ基材(6)の表面に直接接着された、請求項1~14のいずれか一項に記載のルーフィングシート(1)を含む完全に接着されたルーフシステム。
【請求項16】
前記ルーフ基材(6)は、断熱板、カバー板、及び既存のルーフィングシートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の完全に接着されたルーフシステム。
【請求項17】
前記防水層(2)の前記第2の主表面の全領域の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%は、前記接着剤層(3)を介して前記ルーフ基材(6)の表面に結合されることを特徴とする、請求項15又は16に記載の完全に接着されたルーフシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己接着性ルーフィングシート(self-adhering roofing membrane)を使用することによる地上建築物の防水の分野に関する。特に、本発明は、完全に接着されたルーフシステム(fully-adhered roof system)を提供するために使用することができる自己接着性ルーフィングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
建設の分野では、多くの場合に、膜、パネル、又はシートと呼ばれるポリマーシートが、地下室、トンネル、及び平らで傾斜の小さい屋根などの地下及び地上の建築物を浸透水から保護するために使用されている。防水膜が、例えば、建物の沈下、荷重のたわみ、又はコンクリートの収縮のためにコンクリート構造物で成長する亀裂を通して水の浸入を防ぐために利用される。平らで傾斜の小さい屋根構造物の防水に使用されるルーフィングシートは、典型的には単層又は多層膜システムとして提供される。単層システムでは、屋根用基材は、単一の防水層からなるルーフィングシートを用いて覆われる。この場合、防水層は、典型的にはルーフィングシートの機械的安定性を高めるための補強層を含む。多層膜系では、類似又は異なる組成を有する複数の防水層を含むルーフィングシートが使用される。単層膜は、多層膜と比較して製造費用が低いという利点を有するが、これらはまた、鋭い物体の穿刺によって引き起こされる機械的損傷に対する耐性が低い。
【0003】
ルーフィングシートに一般的に使用される材料は、プラスチック、特に可塑化ポリ塩化ビニル(p-PVC)などの熱可塑性樹脂、熱可塑性オレフィン(TPE-O、TPO)、及びエチレン-プロピレンジエンモノマー(EPDM)などのエラストマーを含む。ルーフィングシートは、典型的には、ロールの形態で建設現場に運ばれ、設置場所に移送され、ロールが広げられ、防水されるべき基材に接着される。ルーフィングシートが接着される基材は、様々な材料から構成されることができる。基材は、例えば、コンクリート、金属、又はウッドデッキであり得、或いは断熱板又は回収板及び/又は既存の膜を含み得る。
【0004】
ルーフィングシートは、高い風荷重のためにそれに加えられる剪断力に抵抗するのに十分な機械的強度を提供するためにルーフ基材にしっかりと固定されなければならない。ルーフシステムは、ルーフィングシートをルーフ基材に固定するために使用される手段に応じて、典型的には2つのカテゴリーに分けられる。機械的に取り付けられたルーフシステムでは、ルーフィングシートは、ネジ及び/又はかかりの付いたプレートを使用することによってルーフ基材に固定される。機械的固定は、高強度の結合を可能にするが、これは、機械的固定具が膜を表面に固定する位置においてのみルーフ基材への直接の取付けをもたらし、これは機械的に取り付けられた膜をばたつきやすくする。完全に接着されたルーフシステムでは、膜は、典型的には接着剤組成物を使用することによって間接的にルーフ基材に接着される。
【0005】
ルーフィングシートは、接触結合を含み自己接着性膜を使用するいくつかの技術を使用することによってルーフ基材に接着剤で接着することができる。接触結合では、ルーフ基材の膜と表面の両方を最初に溶媒又は水系の接触接着剤で被覆し、その後、膜を基材の表面と接触させる。接触接着剤の揮発性成分を「フラッシュオフ」して、膜を基材と接触させる前に部分的に乾燥した接着剤フィルムを得る。また、完全に接着されたルーフシステムは、膜の外面の1つに被覆された接着剤組成物の予め塗布された層を有する自己接着性ルーフィングシートを使用することによって調製することができる。典型的には、予め塗布された接着剤層は、剥離ライナーで覆われて、時期尚早の望ましくない接着を防止し、接着剤層を、湿気、汚れ、及び他の環境要因から保護する。使用時に、剥離ライナーは除去され、ルーフィングシートは更なる接着剤を使用することなしに基材に固定される。剥離ライナーで覆われた予め塗布された接着剤層を有するルーフィングシートは、「剥がして貼る(peel and stick)膜」としても知られている。
【0006】
ルーフ基材の表面に連続的な防水シールを形成するために、隣接するルーフィングシートの端部を重ね合わせて封止可能な接合部を形成する。次いで、これらの接合部は、重なり合う端部の底面を別の重なり合う端部の上面に結合することによって、又は両方の重なり合う端部の上面間のギャップを埋める封止テープを使用することによって封止され得る。隣接する膜の重なり合う表面の結合に使用される技術の選択は、膜の種類に依存する。熱可塑性又は非架橋エラストマー材料からなる膜の場合、隣接する膜の重なり合う部分を熱溶着によって互いに結合することができる。自己接着性膜の場合、熱溶接による重なり合う端部の接合を可能にするために、膜の縦方向の端部付近の領域は、典型的には接着剤を含まないままにされる。また、隣接する膜の重なり合う部分は、接着剤を使用することによって互いに接着され得る。
【0007】
可塑化ポリ塩化ビニル(p-PVC)に基づく最先端の自己接着性ルーフィングシートは、典型的には、防水層から接着剤層への可塑剤の移動を防ぐために防水層と接着剤層の間に移動障壁を含む。移動障壁の存在は、ルーフィングシートの製造費用を増大させる。更に、完全に接着されたルーフシステムの場合、隣接する膜の重なり合う端部の間の継ぎ目は、典型的には依然として熱溶着又は特別な封止テープを使用することによって封止され、その両方は設置時間及び最終的に設置費用を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、最先端の自己接着性ルーフィングシートと比較してより低い費用で製造することができ、設置時間及び費用を低減した完全に接着されたルーフシステムを提供することを可能にする自己接着性ルーフィングシートが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、水の浸透に対してルーフ基材を封止するために使用することができる自己接着性ルーフィングシートを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、完全に接着されたルーフシステムを提供するために使用することができ、隣接するルーフィングシートの重なり合う端部の間の継ぎ目が互いに接着結合される自己接着性ルーフィングシートを提供することである。
【0011】
本発明の主題は、請求項1に記載のルーフィングシートである。
【0012】
驚くべきことに、ポリ塩化ビニル系防水層とその表面に被覆されたアクリル感圧接着剤層とを含むルーフィングシートが、ルーフィングシートが防水層と接着剤層の間に移動障壁を含まない場合、最先端の自己接着性ポリ塩化ビニル系ルーフィングシートの問題を解決又は少なくとも軽減することができることが判明した。
【0013】
本発明のルーフィングシートの利点の1つは、それが最先端の解決法と比較して、より低い製造及び設置費用で完全に接着されたルーフシステムを提供することを可能にすることである。
【0014】
本発明のルーフィングシートの別の利点は、隣接するルーフィングシートの重なり合う端部の間の継ぎ目が、ルーフィングシートのルーフ基材の表面への結合に使用されるのと同じ接着剤を使用して互いに接着結合される、完全に接着されたルーフシステムを提供できることである。
【0015】
本発明の他の態様は、他の独立請求項に示されている。本発明の好ましい態様は、従属請求項に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】防水層(2)と、接着剤層(3)と、接着剤層(3)の外側主表面を覆う剥離ライナー(4)とを含むルーフィングシート(1)の断面を示す。
【
図2】防水層(2)と、接着剤層(3)と、接着剤層(3)の外側主表面を覆う剥離ライナー(4)とを含むルーフィングシート(1)、及び防水層(2)に完全に埋め込まれる繊維材料の層(5)の断面を示す。
【
図3】ルーフ基材(6)、及び防水層(2)と、接着剤シーラント層(3)と、完全に防水層(2)に埋め込まれている繊維材料の層(5)とを含むルーフィングシート(1)を含み、この場合に、ルーフィングシートは、接着剤層(3)を介してルーフ基材(6)の表面に直接結合されている、完全に接着されたルーフシステムの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の主題は、
i.第1及び第2の主表面を有するポリ塩化ビニル系防水層(2)と、
ii.防水層(2)の第2の主表面の少なくとも一部に被覆されてこれを覆う接着剤層(3)と、
iii.場合により、剥離ライナー(4)と、を含む自己接着性ルーフィングシート(1)であり、この場合に、接着層はアクリル感圧接着剤層である。
【0018】
「ポリ」で始まる物質名は、分子毎に、これらの名前に存在する2つ以上の官能基を正式に含む物質を表す。例えば、ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物を指す。ポリエーテルは、少なくとも2つのエーテル基を有する化合物を指す。
【0019】
「ポリマー」という用語は、高分子が、重合度、分子量、及び鎖長に関して異なる、重反応(重合、重付加、重縮合)によって生成された化学的に均一な高分子の集合体を表す。また、この用語は、重反応から生じる前述の高分子集合体の誘導体、即ち、例えば、所定の高分子中の官能基の、付加又は置換などの反応によって得られ、化学的に均一又は化学的に不均一であり得る化合物を含む。
【0020】
「(メタ)アクリル」という用語は、メタクリルとアクリルの両方を表す。従って、(メタ)アクリロイルは、メタアクリロイル又はアクリロイルを表す。(メタ)アクリロイル基は(メタ)アクリル基とも知られる。(メタ)アクリル化合物は、モノ-、ジ-、トリ-等の官能性(メタ)アクリル化合物などの1つ以上の(メタ)アクリル基を有することができる。
【0021】
「分子量」という用語は、「部位」とも呼ばれる、分子又は分子の一部のモル質量(g/モル)を指す。「平均分子量」という用語は、分子又は部位のオリゴマー又はポリマー混合物の数平均分子量(Mn)を指す。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより決定することができる。
【0022】
「軟化点」という用語は、化合物がゴム状状態で軟化する温度、又は化合物内の結晶部分が溶融する温度を指す。軟化点は、DIN EN 1238規格に従って行われる環球法測定によって決定することができる。
【0023】
「融点」という用語は、2℃/分の加熱速度を用いてISO 11357規格に定義される方法を用いることによって示差走査熱量測定(DSC)によって決定される結晶融点(Tm)を指す。測定は、Mettler Toledo DSC3+装置を用いて実施することができ、Tm値は、DSCソフトウェアの助けを借りて、測定されたDSC曲線から決定することができる。
【0024】
「ガラス転移温度」(Tg)という用語は、その温度を超えるとポリマー成分が柔らかく柔軟になり、その温度より下では硬くガラス状になる温度を指す。ガラス転移温度は、1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して、測定された損失弾性率(G’’)曲線のピークとして動的機械分析(DMA)によって決定されることが好ましい。
【0025】
組成物における「少なくとも1つの成分Xの量又は含有量」、例えば「少なくとも1つの熱可塑性ポリマーの量」は、組成物に含まれる全ての熱可塑性ポリマーの個々の量の合計を指す。更に、組成物が20重量%の少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む場合、組成物に含まれる全ての熱可塑性ポリマーの量の合計は20重量%に等しい。
【0026】
「室温」という用語は、23℃の温度を表す。
【0027】
ポリ塩化ビニル系防水層は、第1及び第2の主表面、即ち上面及び下面を有するシート状要素であることが好ましい。本明細書において「シート状要素」という用語は、要素の厚さの少なくとも25倍、好ましくは少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも150倍大きい長さ及び幅を有する要素を指す。
【0028】
接着剤層は、防水層の第2の主表面に被覆される。好ましくは、防水層と接着剤層は、これらの対向表面に渡り互いに直接接続される。「直接接続される」という表現は、本発明の文脈において、層間に更なる層又は物質が存在しないこと、及び層の対向する表面が互いに直接結合される又は互いに接着することを意味すると理解される。2つの層の間の移行領域では、層の材料は、互いに混合して存在することもできる。言い換えれば、防水層と接着剤層の間に移動障壁がない。
【0029】
好ましくは、接着剤層は、防水層の第2の主表面の領域の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、最も好ましくは少なくとも75%を覆う。1つ以上の実施形態によれば、接着剤層及び防水層は、実質的に同じ幅及び長さを有し、及び/又は接着剤層は、防水層の第2の主表面の実質的に全領域を覆う。「実質的に全領域」という用語は、防水層の第2の主表面の領域の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも92%、最も好ましくは少なくとも95%を意味すると理解される。更にまた、例えば製造技術上の理由から、縦方向端部付近の防水層の第2の主表面上の幅1~2mmを有する狭いセグメントは、接着剤層を含まないままにしておくことが好ましくあり得る。
【0030】
接着剤層はアクリル感圧接着剤層である。本開示において、「感圧接着剤(PSA)」という用語は、わずかな圧力を加えるとほとんどの基材に瞬間的に接着し、永久的に粘着性のままである接着剤組成物を表す。「アクリル接着剤」という用語は、本開示において、1つ以上のアクリルポリマーを主ポリマー成分として含む接着剤組成物を表す。
【0031】
好ましくは、アクリル感圧接着剤は、水系アクリル分散感圧接着剤又は溶媒系アクリル感圧接着剤である。
【0032】
「水系アクリル分散接着剤」という用語は、本開示において、水性分散液又は水性コロイド懸濁液に配合されている1つ以上のアクリルポリマーを含む接着剤組成物を表す。「水系分散接着剤」という用語は、主な連続(キャリア)相として水を含む分散接着剤を表す。
【0033】
「溶媒系アクリル接着剤」という用語は、本開示において、溶媒と、実質的に完全に溶媒に溶解している1つ以上のアクリルポリマーとを含む接着剤組成物を指す。典型的には、溶媒は、接着剤組成物の総重量の少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%を含む。溶媒系アクリル接着剤に適した溶媒には、例えば、アルコール、脂肪族及び芳香族炭化水素、ケトン、エステル、及びこれらの混合物が含まれる。単一の溶媒のみ、又は2つ以上の溶媒の混合物を使用することが可能である。適切な溶媒系アクリル接着剤は、接着剤組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満の水を含むものなどの実質的に水を含まない。
【0034】
「アクリルポリマー」という用語は、本開示において、アクリルモノマーと1つ以上の更なるアクリルモノマー及び/又は1つ以上の他のエチレン性不飽和モノマーとのホモポリマー、コポリマー、及び高級インターポリマーを表す。「アクリルモノマー」という用語は、本開示において、分子に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを指す。アクリルモノマーの例としては、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、又はこれらの誘導体、例えば、(メタ)アクリル酸のアミド又は(メタ)アクリル酸のニトリル、並びにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び水酸基含有(メタ)アクリレートなどの官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、アクリルポリマーは、主なモノマー成分としてアクリルモノマーを含み、即ち、アクリルポリマーは、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%のアクリルモノマーを含む。
【0035】
特に適切なアクリルポリマーは、主なモノマー成分として、アルキル(メタ)アクリレート、好ましくは1~24の炭素原子を含むアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを含む。アクリルポリマーに、好ましくは25重量%を超える、好ましくは35重量%を超えるこれらの種類のアクリルモノマーが存在する。特に適切なアルキル(メタ)アクリレートの例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、-オクチルアクリレート、n-オクチルメタクリレート、n-ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、及びこれらの分岐異性体、例えば、イソブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、及び又シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、又は3,5-ジメチルアダマンチルアクリレートが挙げられる。
【0036】
アルキル(メタ)アクリレートと共に使用される適切なコモノマーとしては、特に、ヒドロキシル基及びヒドロキシアルキル基含有アクリルモノマーが挙げられる。適切なヒドロキシル基及びヒドロキシアルキル基含有アクリルモノマーの例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートが挙げられる。更に、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、及びN-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドが適切である。ヒドロキシル基及びヒドロキシアルキル基含有アクリルモノマーは、アクリルポリマーの合成に使用されるモノマーの総量に基づいて、好ましくは0.01~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%の範囲で使用される。
【0037】
アクリルポリマーのための他の適切なコモノマーとしては、ビニル化合物、特にビニルエステル、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、官能基を有するエチレン性不飽和炭化水素、及びエチレン性不飽和炭化水素のニトリルが挙げられる。適切なビニル化合物の例としては、例えば、無水マレイン酸、スチレン、スチレン化合物、β-アクリロイルオキシプロピオン酸、ビニル酢酸、フマル酸、クロトン酸、アコニット酸、トリクロロアクリル酸、イタコン酸、及び酢酸ビニルが挙げられる。
【0038】
1つ以上の実施形態によれば、接着剤層は、接着剤層の総重量に基づいて、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の少なくとも1つのアクリルポリマーを含む。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つのアクリルポリマーは、1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して動的機械分析(DMA)によって決定される、0℃未満、好ましくは-20℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0040】
好ましくは、少なくとも1つのアクリレートポリマーは、50,000~1,000,000g/モル、特に100,000~750,000g/モル、より好ましくは150,000~100,000g/モルの範囲の平均分子量(Mn)を有する。
【0041】
少なくとも1つのアクリルポリマーに加えて、接着剤層は、例えば、粘着付与樹脂、ワックス、及び可塑剤、並びに、例えば、紫外線光吸収剤、紫外線及び熱安定剤、蛍光増白剤、顔料、染料、及び乾燥剤などの1つ以上の添加剤を含む1つ以上の更なる成分を含み得る。好ましくは、更なる成分及び添加剤の量は、接着剤層の総重量に基づいて、15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下である。
【0042】
接着剤層の好ましい厚さは、接着剤の詳細な組成に依存する。1つ以上の実施形態によれば、接着剤層は、DIN EN 1849-2規格に定義される測定方法を使用することによって決定される、25~500μm、好ましくは50~250μm、より好ましくは75~200μmの厚さを有する。好ましくは、防水層の第2の主表面は、連続接着剤層で被覆される。「連続層」という用語は、本開示において、接着剤で被覆された単一の領域からなる層を指し、一方「不連続層」は、接着剤で被覆されたいくつかの孤立領域からなると考えられる。
【0043】
防水層の詳細な組成は特に限定されない。しかしながら、防水層の組成は、ルーフィングシートが、完全に接着されたルーフシステムを提供するために使用されるルーフィングシートについての一般要件、特にDIN 20000-201:2015-08規格に定義される一般要件を満たすように選択されるべきである。
【0044】
例えば、防水層の組成は、ルーフィングシートが、200~1500のmmの範囲のEN 12691:2005規格に従って測定される耐衝撃性、及び/又はDIN ISO 527-3規格に従って23℃の温度で測定される少なくとも5MPaの縦方向及び横方向の引張り強度、及び/又はDIN ISO 527-3規格に従って23℃の温度で測定される少なくとも300%の縦方向及び横方向の破断伸び、及び/又はEN 1928 B規格に従って測定される0.6バーの24時間の耐水性、及び/又はEN 12310-2規格に従って測定される少なくとも100Nの最大引き裂き強度を示すように選択されることが好ましくあり得る。
【0045】
1つ以上の実施形態によれば、防水層は、全ての割合は防水層の総重量に基づいて、
a)25~65重量%、好ましくは30~60重量%のポリ塩化ビニル樹脂と、
b)15~50重量%、好ましくは20~40重量%の少なくとも1つの可塑剤と、
c)0~30重量%、好ましくは0~20重量%の少なくとも1つの不活性無機フィラーと、
を含む。
【0046】
好ましくは、ポリ塩化ビニル樹脂は、ISO 1628-2-1998規格に記載される方法を用いて決定される、50~85、より好ましくは65~75の範囲のK値を有する。K値は、PVC樹脂の重合グレードの尺度であり、30℃でシクロヘキサノンに溶解した未使用樹脂としてのPVCホモポリマーの粘度値から決定される。
【0047】
好ましくは、防水層の組成は、1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して動的機械分析(DMA)により決定される、-20℃未満、より好ましくは-25℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0048】
本発明において、少なくとも1つの可塑剤の種類は特に限定されない。PVC樹脂のための適切な可塑剤としては、これらに限定されないが、例えば、ジ-イソノニルフタレート(DINP)、ジ-ノニルフタレート(L9P)、ジアリルフタレート(DAP)、ジ-2-エチルヘキシル-フタレート(DEHP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、及び混合された直鎖状フタレート(911P)などの直鎖状又は分岐状フタレートが挙げられる。他の適切な可塑剤としては、トリメリテート可塑剤、アジピン酸ポリエステル、及び生化学的可塑剤などのフタレート非含有可塑剤が挙げられる。生化学的可塑剤の例としては、エポキシ化植物油、例えば、エポキシ化大豆油及びエポキシ化亜麻仁油、並びに植物由来のアセチル化ワックス及び油、例えばアセチル化ヒマシワックス及びアセチル化ヒマシ油が挙げられる。
【0049】
防水層に使用される特に適切なフタレートを含まない可塑剤としては、安息香酸のアルキルエステル、脂肪族ジカルボン酸のジアルキルエステル、脂肪族ジカルボン酸のポリエステル又は脂肪族ジ-、トリ-及びテトロールのポリエステルが挙げられ、その末端基は、未エステル化又は一官能性試薬でエステル化されており、クエン酸のトリアルキルエステル、クエン酸のアセチル化トリアルキルエステル、グリセリンエステル、モノ-、ジ-、トリ-、又はポリアルキレングリコールの安息香酸ジエステル、トリメチロールプロパンエステル、シクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステル、テレフタル酸のジアルキルエステル、トリメリット酸のトリアルキルエステル、リン酸のトリアリールエステル、リン酸のジアリールアルキルエステル、リン酸のトリアルキルエステル、及びアルカンスルホン酸のアリールエステルが挙げられる。
【0050】
1つ以上の実施態様によれば、少なくとも一つの可塑剤は、フタレート、トリメリテート可塑剤、アジピン酸ポリエステル、及び生化学的可塑剤からなる群から選択される。
【0051】
本明細書において、「不活性無機フィラー」という用語は、鉱物バインダーとは異なり、水と反応しない、即ち水の存在下で水和反応を受けない無機フィラーを表す。好ましくは、少なくとも1つの不活性無機フィラーは、砂、グラファイト、炭酸カルシウム、粘土、膨張粘土、珪藻土、軽石、雲母、カオリン、タルク、ドロマイト、ゾノトライト、パーライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、バライト、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ、エーロゲル、ガラスビーズ、中空ガラス球、セラミック球、ボーキサイト、粉砕コンクリート、及びゼオライトからなる群から選択される。
【0052】
本明細書では、「砂」という用語は、機械的及び化学的分解の間に元の粒子構造から分離してその堆積点に移った、丸い又は角のある小さな粒子の緩い集塊(緩い堆積物)である鉱物砕屑堆積物(砕屑岩)を指し、前述の堆積物は、50重量%超、特に75重量%超、特に好ましくは85重量%超のSiO2含有量を有する。本明細書では、不活性無機フィラーとしての「炭酸カルシウム」という用語は、粉砕及び/又は沈殿によって、チョーク、石灰石、又は大理石から生成された砕屑充填剤を指す。
【0053】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1つの無機フィラーは、防水層の総重量に基づいて、5~30重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~30重量%の量で防水層に存在する。
【0054】
防水層は、1つ以上の添加剤、例えば、紫外線及び熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、二酸化チタン及びカーボンブラックなどの顔料、艶消剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤、殺生物剤、及び潤滑剤、スリップ剤、粘着防止剤、及びデネスト助剤(denest aid)などの加工助剤を更に含むことができる。
【0055】
防水層の厚さは特に限定されない。1つ以上の実施形態によれば、防水層は、DIN EN 1849-2規格に定義される測定方法を使用することによって決定される、0.25~5.0mm、好ましくは0.5~4.5mm、より好ましくは1.0~3.0mm、最も好ましくは1.0~2.5mmの厚さを有する。
【0056】
1つ以上の実施形態によれば、ルーフィングシートは、防水層に完全に埋め込まれる繊維材料の層を更に含む。「完全に埋め込まれる」という表現は、繊維材料層の層が、防水層のマトリックスによって完全に覆われていることを意味する。繊維材料の層は、ルーフィングシートが様々な環境条件、特に大きな温度変動にさらされるとき、防水層の機械的安定性を確実にするために使用されることができる。
【0057】
本明細書において、「繊維材料」という用語は、例えば、有機、無機又は合成有機材料を含む又はこれらからなる繊維からなる材料を表す。有機繊維の例としては、例えば、セルロース繊維、綿繊維、及びタンパク質繊維が挙げられる。特に適切な合成有機材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン及び/又はプロピレンのホモポリマー及びコポリマー、ビスコース、ナイロン、並びにポリアミドが挙げられる。また、無機繊維からなる繊維材料は、特にガラス繊維、アラミド繊維、ウォラストナイト繊維、及び炭素繊維などの金属繊維又は鉱物繊維からなるものに適している。また、例えば、シランで表面処理された無機繊維が適切であり得る。繊維材料は、短繊維、長繊維、紡糸繊維(糸条)、又はフィラメントを含み得る。繊維は、整列された繊維又は延伸された繊維であり得る。また、繊維材料が、形状及び組成の両方の観点から、異なる種類の繊維からなることが有利であり得る。
【0058】
好ましくは、繊維材料の層は、不織布、織布、及び不織スクリムからなる群から選択される。
【0059】
本明細書では、「不織布」という用語は、化学的、機械的、又は熱的結合手段を用いて互いに結合され、織られても編まれてもいない繊維からなる材料を表す。不織布は、例えば、カーディング法又はニードルパンチプロセスを使用することによって作製することができ、この場合に、繊維を機械的に絡み合わせて不織布を得る。化学結合では、接着剤材料などの化学バインダーを使用して、繊維を不織布にまとめる。
【0060】
本明細書では、「不織スクリム」という用語は、互いの上に敷設され互いに化学的に結合される糸条からなるウェブ状の不織製品を表す。不織スクリム用の典型的な材料としては、金属、ガラス繊維、及びプラスチック、特にポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0061】
1つ以上の実施形態によれば、繊維材料の層は、不織布、好ましくは不織布、より好ましくは250g/m2以下、好ましくは200g/m2以下の単位重量当たりの質量を有する不織布である。1つ以上の実施形態によれば、繊維材料の層は、15~150g/m2、好ましくは20~125g/m2、より好ましくは25~100g/m2、最も好ましくは30~85g/m2の単位重量当たりの質量を有する不織布である。
【0062】
好ましくは、繊維材料の層の不織布は、合成有機及び/又は無機繊維を含む。不織布に特に適した合成有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、及びポリアミド繊維が挙げられる。不織布に特に適した無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、ウォラストナイト繊維、及び炭素繊維が挙げられる。
【0063】
1つ以上の実施形態によれば、繊維材料の層の不織布は、好ましくは、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、及びポリアミド繊維からなる群から選択される合成有機繊維を主繊維成分として有する。1つ以上の更なる実施形態によれば、繊維材料の層の不織布は、好ましくは、ガラス繊維、アラミド繊維、ウォラストナイト繊維、及び炭素繊維、より好ましくはガラス繊維からなる群から選択される無機繊維を主繊維成分として有する。
【0064】
1つ以上の実施形態によれば、ルーフィングシートは、防水層の第2の主表面とは反対側を向く接着剤層の外側主表面の少なくとも一部を覆う剥離ライナーを更に含む。好ましくは、接着剤層及び剥離ライナーは、これらの対向する主表面の少なくとも一部に渡って互いに直接接続されている。剥離ライナーは、時期尚早の望ましくない接着を防止し、接着剤層を湿気、汚れ、及び他の環境要因から保護するために使用することができる。ルーフィングシートがロールの形態で提供される場合、剥離ライナーは、ルーフィングシートの裏側に接着剤が付着することなく巻き出しを容易にすることを可能にする。剥離ライナーは、接着剤層からのライナーの分割剥離を可能にするために複数の部分にスライスされることができる。
【0065】
剥離ライナーに適切な材料としては、クラフト紙、ポリエチレンコート紙、シリコーンコート紙、並びにポリマーフィルム、例えば、シリコーン、シリコーン尿素、ウレタン、ワックス、及び長鎖アルキルアクリレート剥離剤から選択されるポリマー剥離剤で被覆されたポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルフィルムが挙げられる。
【0066】
本発明のルーフィングシートは、単層又は多層ルーフィングシートであり得る。本明細書では、「単層ルーフィングシート」という用語は、単一の防水層を含む膜を表し、一方「複層ルーフィングシート」という用語は、複数の防水層を含む膜を表す。多層ルーフィングシートの場合、防水層は、類似の又は異なる組成を有することができる。
【0067】
単層及び多層膜は当業者に知られており、これらは押し出し成形又は共押し出し成形、カレンダー加工、又はスプレッドコーティングなどの任意の従来の手段によって作製することができる。1つ以上の実施形態によれば、ルーフィングシートは、厳密に1つの防水層を含む単層膜である。
【0068】
1つ以上の更なる実施形態によれば、ルーフィングシートは、少なくとも2つの防水層、好ましくは2つの防水層を含む多層膜である。これらの実施形態において、ルーフィングシートは、第1及び第2の主表面を有する第2の防水層を更に含み、第2のバリア層の第2の主表面は、防水層の第1の主表面の少なくとも一部に直接又は間接的に結合される。
【0069】
1つ以上の実施形態によれば、第2の防水層はポリ塩化ビニル系防水層である。好ましくは、第2の防水層は防水層と実質的に同様の組成を有する。第2の防水層は、第2の防水層に完全に埋め込まれる繊維材料の層を更に含むことができる。しかしながら、第2の防水層は、第2の防水層に完全に埋め込まれる繊維材料の層を含まないことも又可能であり得、又は好ましいことさえあり得る。
【0070】
好ましくは、ルーフィングシートは、EN DIN 1372規格に定義される方法を用いて測定される、少なくとも5N/50mm、より好ましくは少なくとも10N/50mm、最も好ましくは少なくとも15N/50mmのステンレス鋼からの90°剥離抵抗を有する。このような剥離強度は、上記で定義される接着剤層を用いて見出された。
【0071】
本発明のルーフィングシートは、典型的には、建築現場に送られ、ロールから巻き戻されて幅1~5m及び幅の数倍の長さを有するシートを提供するプレハブ膜物品の形態で提供される。しかしながらまた、ルーフィングシートは、例えば2つの隣接する膜間の接合部を封止するために、典型的には1~20cmの幅を有するストリップの形態で使用することができる。更にまた、ルーフィングシートは、既存の接着された防水又はルーフシステムの損傷箇所を修復するために使用される平面体の形態で提供することができる。
【0072】
防水層、接着剤層、繊維材料の層、及び剥離ライナーについての上記の優先事項は、特に明記しない限り、本発明の全ての態様に等しく当てはまる。
【0073】
本発明の別の主題は、接着剤層を介してルーフ基材の表面に直接接着された本発明によるルーフ基材とルーフィングシートとを含む完全に接着されたルーフシステムである。「直接接着」という表現は、接着剤層とルーフ基材の間に更なる層が存在しないことを意味すると理解される。
【0074】
ルーフィングシートが結合されるルーフ基材は、断熱板、カバー板、及び既存のルーフィングシートからなる群から選択されることが好ましい。
【0075】
1つ以上の実施態様によれば、防水層の第2の主表面の領域の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%が、接着剤層を介してルーフ基材の表面に接着される。1つ以上の実施形態によれば、防水層の第2の主表面の実質的に全領域が接着剤層を介してルーフ基材の表面に接着されている。
【0076】
図面の詳細な説明
図1は、防水層(2)と、接着剤層(3)と、接着剤層(3)の外側主表面を覆う剥離ライナー(4)とを含むルーフィングシート(1)の断面を示す。この実施形態では、接着剤層(3)は、防水層(2)の第2の主表面の実質的に全領域を覆い、剥離ライナー(4)は、防水層(2)の第2の主表面とは反対側を向く接着剤層(3)の外側主表面の実質的に全領域を覆う。
【0077】
図2は、
図1に示すルーフィングシートの一実施形態によるルーフィングシート(1)の断面を示す。この実施形態では、ルーフィングシート(1)は、防水層(2)に完全に埋め込まれる繊維材料の層(5)を更に含む。
【0078】
図3は、接着剤層(3)を介してルーフ基材(6)の表面に直接接着されるルーフ基材(6)及びルーフィングシート(1)を含む完全に接着されたルーフシステムの断面を示す。この実施形態では、防水層(2)の第2の主表面の実質的に全領域が、接着剤層(3)を介してルーフ基材(6)の表面に接着される。更に、ルーフィングシート(1)は、防水層(2)に完全に埋め込まれる繊維材料の層(5)を更に含む。
【実施例0079】
ルーフィングシートの調製
本発明によるルーフィングシートを、名目上の厚さ1.5mmを有するPVC膜Sarnafil G410-15(SikaAGから入手可能)を140g/m2の塗布量を用いて水性アクリル分散系感圧接着剤の層で被覆することによって調製した。塗布した接着剤層を、厚さ80μmのシリコーン処理したPE剥離ライナーで覆った。
【0080】
参照用ルーフィングシートを、140g/m2の塗布量を用いてPVC膜Sarnafil G410-15(SikaAGから入手可能)をスチレンブロックコポリマー(SBS/SIS)系ホットメルト感圧接着剤で被覆することによって調製した。塗布した接着剤層を、厚さ80μmのシリコーン処理したPE剥離ライナーで覆った。
【0081】
接着剤層で得られた剥離強度を測定する前に、両方のルーフィングシートを80℃の温度で4週間保存した。
【0082】
耐剥離性(強度)
金属表面からの剥離抵抗は、EN DIN 1372規格に定義される方法を用いて測定した。剥離抵抗測定において、試験されたルーフィングシートの試験ストリップは、Zwick引張り試験装置及び100mm/分の一定のクロスビーム速度を使用して90°の剥離角度で剥離された。平均剥離抵抗は、約10cmの長さに渡る剥離中のストリップの幅当たりの平均剥離力[N/50mm]として計算され、従って合計の剥離長の最初と最後の5分の1を計算から除外した。平均剥離抵抗値は、2つの同様のルーフィングシートを用いて得られた測定値の平均として計算された。
【0083】
本発明のルーフィングシートの場合、28N/50mmの平均剥離抵抗が得られ、一方参照用ルーフィングシートは、PVC膜から接着剤層への可塑剤の移動により、完全な接着性の喪失を示した。
本発明のルーフィングシートの場合、28N/50mmの平均剥離抵抗が得られ、一方参照用ルーフィングシートは、PVC膜から接着剤層への可塑剤の移動により、完全な接着性の喪失を示した。
本開示は以下も包含する。
[1]
i.第1及び第2の主表面を有するポリ塩化ビニル系防水層(2)と、
ii.前記防水層(2)の前記第2の主表面の少なくとも一部に被覆されて、これを覆う接着剤層(3)と、
iii.場合により、剥離ライナー(4)と、
を含む自己接着性ルーフィングシート(1)であって、前記接着層がアクリル感圧接着剤であることを特徴とする、自己接着性ルーフィングシート(1)。
[2]
前記接着剤層(3)は、前記防水層(2)の前記第2の主表面の実質的に全領域を覆うことを特徴とする、上記態様1に記載のルーフィングシート。
[3]
前記接着剤層(3)は、前記接着剤層の総重量に基づいて、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%の少なくとも1つのアクリルポリマーを含むことを特徴とする、上記態様1又は2に記載のルーフィングシート。
[4]
前記少なくとも1つのアクリルポリマーは、0℃未満、好ましくは-20℃未満のガラス転移温度(T
g
)を有することを特徴とし、これが1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して動的機械分析(DMA)によって決定される、上記態様3に記載のルーフィングシート。
[5]
前記接着剤層(3)は、25~500μm、好ましくは50~250μmの厚みを有することを特徴とし、これがDIN EN 1849-2規格に定義される測定方法を使用することによって決定される、上記態様1~4のいずれかに記載のルーフィングシート。
[6]
前記防水層(2)は、全ての割合が前記防水層(2)の全重量に基づいて、
a)25~65重量%のポリ塩化ビニル樹脂と、
b)15~50重量%の少なくとも1つの可塑剤と、
c)0~30重量%の少なくとも1つの不活性無機フィラーと、
を含むことを特徴とする、上記態様1~5のいずれかに記載のルーフィングシート。
[7]
前記防水層の組成物が、-20℃未満、好ましくは-25℃未満のガラス転移温度(T
g
)を有することを特徴とし、これが1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを使用して動的機械分析(DMA)によって決定される、上記態様6に記載のルーフィングシート。
[8]
前記少なくとも一つの可塑剤が、直鎖状及び分岐状フタレート、トリメリテート可塑剤、アジピン酸ポリエステル、並びに生化学的可塑剤からなる群から選択されることを特徴とする、上記態様6又は7に記載のルーフィングシート。
[9]
前記少なくとも1つの不活性無機フィラーが、砂、グラファイト、炭酸カルシウム、粘土、膨張粘土、珪藻土、軽石、雲母、カオリン、タルク、ドロマイト、ゾノトライト、パーライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、バライト、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、アルミン酸カルシウム、シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ、エーロゲル、ガラスビーズ、中空ガラス球、セラミック球、ボーキサイト、粉砕コンクリート、及びゼオライトからなる群から選択されることを特徴とする、上記態様6~8のいずれかに記載のルーフィングシート。
[10]
前記防水層(2)は、0.5~5.0mm、好ましくは1.0~2.5mmの厚さを有することを特徴とし、これがDIN EN 1849-2規格に定義される測定方法を用いて決定される、上記態様1~9のいずれかに記載のルーフィングシート。
[11]
前記防水層(2)に完全に埋め込まれる繊維材料の層(5)を更に含むことを特徴とする、上記態様1~10のいずれかに記載のルーフィングシート。
[12]
前記繊維材料の層(5)は、15~150g/m
2
、好ましくは25~100g/m
2
の単位面積当たりの質量を有する不織布であることを特徴とする、上記態様11に記載のルーフィングシート。
[13]
前記不織布は、無機繊維、好ましくはガラス繊維を含むことを特徴とする、上記態様12に記載のルーフィングシート。
[14]
剥離ライナー(4)を更に含み、これが前記防水層(2)の前記第2の主表面とは反対側を向く前記接着剤層(3)の外側主表面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする、上記態様1~13のいずれかに記載のルーフィングシート。
[15]
ルーフ基材(6)及び前記接着剤層(3)を介して前記ルーフ基材(6)の表面に直接接着された、上記態様1~14のいずれかに記載のルーフィングシート(1)を含む完全に接着されたルーフシステム。
[16]
前記ルーフ基材(6)は、断熱板、カバー板、及び既存のルーフィングシートからなる群から選択されることを特徴とする、上記態様15に記載の完全に接着されたルーフシステム。
[17]
前記防水層(2)の前記第2の主表面の全領域の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%は、前記接着剤層(3)を介して前記ルーフ基材(6)の表面に結合されることを特徴とする、上記態様15又は16に記載の完全に接着されたルーフシステム。