(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138016
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、システム、プログラム、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240927BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240927BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G06F3/12 336
G06F3/12 304
G06F3/12 331
H04N1/00 127B
B41J29/38 401
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114407
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2022184078の分割
【原出願日】2015-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2014130950
(32)【優先日】2014-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛
(57)【要約】
【課題】複数のネットワークに接続可能な機器へ要求を送信する際に、ユーザにネットワークを指定させずに機器へ要求を送信することを可能とする情報処理装置を提供すること。
【解決手段】情報処理装置を、第1のネットワークを介して機器と接続するための第1の通信情報と第1のネットワークとは異なる第2のネットワークを介して機器と接続するための第2の通信情報を取得する取得手段12と、取得された第1の通信情報に基づく第1のネットワークを介して機器に処理を要求することが可能かを判断する判断手段13と、第1のネットワークを介して処理を要求できないと判断された機器に対して、第2の通信情報に基づく第2のネットワークを介して接続する接続手段15と、第1のネットワークを介して処理を要求することが可能であると判断された機器、または接続手段によって接続された機器に処理を要求する要求手段と、として機能させるための技術を提供する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のネットワークおよび前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークを介して通信可能な機器に対し、前記第1および第2のネットワークのうちのいずれか一のネットワークを介して所定の処理を要求する情報処理装置であって、
前記第1のネットワークを介して前記機器と接続するための第1の通信情報と、前記第2のネットワークを介して前記機器と接続するための第2の通信情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記第1の通信情報を用いて、前記情報処理装置が接続しているネットワークを介して前記機器から情報の取得を試み、前記情報を受信したか否かの判断と、前記情報を受信した場合は、前記情報に基づいて特定の機器であるか否か、を判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記情報を受信し、かつ、前記特定の機器であると判断された場合、前記第1の通信情報に基づいて、前記第1のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断され、かつ、前記特定の機器であると判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求する要求手段と、を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記第1のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求しない場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器との通信を試み、前記機器との通信が可能か否かを判断し、
前記要求手段は、前記判断手段によって、前記機器との通信が可能であると判断された場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記第1の通信情報又は第2の通信情報に含まれる前記機器を一意に識別する機器情報が、受信した前記情報に含まれているかを判断し、
前記機器情報が受信した前記情報に含まれていると判断された場合、前記情報の取得に用いた通信情報に基づき該通信情報に対応するネットワークを介した前記機器との通信を行うと選択する、請求項1又は2のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記所定の処理は、画像処理を少なくとも含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記情報は、機器が有する、MIB(Management Information Base)情報、WebAPI(Web Application Programming Interface)を介して取得された情報、又は、MAC(Media Access Control)アドレスのいずれか1つを少なくとも含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記第1のネットワークを介して前記機器と接続するための第1の通信情報であって、前記情報処理装置にすでに記憶されている情報を含まない前記第1の通信情報と、前記第2のネットワークを介して前記機器と接続するために必要な第2の通信情報を取得する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記取得手段は、前記機器から近距離無線通信を介して、前記機器と通信を行うための複数のネットワークのそれぞれに対応する複数の通信情報を取得する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
第1のネットワークおよび前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークを介して通信可能な機器に対し、前記第1および第2のネットワークのうちのいずれか一のネットワークを介して所定の処理を要求する情報処理装置を、
前記第1のネットワークを介して前記機器と接続するための第1の通信情報と、前記第2のネットワークを介して前記機器と接続するための第2の通信情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記第1の通信情報を用いて、前記情報処理装置が接続しているネットワークを介して前記機器から情報の取得を試み、前記情報を受信したか否かの判断と、前記情報を受信した場合は、前記情報に基づいて、特定の機器であるか否か、を判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記情報を受信し、かつ、前記特定の機器であると判断された場合、前記第1の通信情報に基づいて、前記第1のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断され、かつ、前記特定の機器であると判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求する要求手段、として機能させるプログラムと、
前記情報処理装置から要求された前記所定の処理を実行する前記機器と、を有するシステム。
【請求項9】
第1のネットワークおよび前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークを介して通信可能な機器に対し、前記第1および第2のネットワークのうちのいずれか一のネットワークを介して所定の処理を要求する情報処理装置を、
前記第1のネットワークを介して前記機器と接続するための第1の通信情報と、前記第2のネットワークを介して前記機器と接続するための第2の通信情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記第1の通信情報を用いて、前記情報処理装置が接続しているネットワークを介して前記機器から情報の取得を試み、前記情報を受信したか否かの判断と、前記情報を受信した場合は、前記情報に基づいて、特定の機器であるか否か、を判断する判断手段と、
前記判断手段によって、前記情報を受信し、かつ、前記特定の機器であると判断された場合、前記第1の通信情報に基づいて、前記第1のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断され、かつ、前記特定の機器であると判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求する要求手段、
として機能させるプログラム。
【請求項10】
第1のネットワークおよび前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークを介して通信可能な機器に対し、前記第1および第2のネットワークのうちのいずれか一のネットワークを介して所定の処理を要求する情報処理装置が行う情報処理方法であって、
取得手段が、前記第1のネットワークを介して前記機器と接続するための第1の通信情報と、前記第2のネットワークを介して前記機器と接続するための第2の通信情報を取得するステップと、
前記取得手段によって取得された前記第1の通信情報を用いて、前記情報処理装置が接続しているネットワークを介して前記機器から情報の取得を試み、判断手段が、前記情報を受信したか否かの判断と、前記情報を受信した場合は、前記情報に基づいて、特定の機器であるか否か、を判断するステップと、
前記判断手段によって、前記情報を受信し、かつ、前記特定の機器であると判断された場合、前記第1の通信情報に基づいて、前記第1のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、
前記情報を受信したと判断され、かつ、前記特定の機器であると判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求するステップと、
を有する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、システム、プログラム、及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
端末を保持するユーザが無線通信により端末を画像形成装置などの他の機器と通信させて機器の機能を利用できれば、有線による接続が不要であるため便利である。しかし、端末が機器と無線通信を行うためには無線通信のためのパラメータが必要である場合が多く、また、無線通信パラメータの機器への設定は必ずしも容易でない。
【0003】
そこで、従来からユーザ設定なしに又はユーザ設定を最小限にして端末に無線通信パラメータを設定する技術が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、同じ機器に対し異なる無線通信パラメータを用いて無線通信装置が接続できるように、ユーザのNFC(Near Field Communication)チップから記憶されている情報を読み取り、該情報に応じてホーム用の無線通信パラメータ又は外出先用の無線通信パラメータを無線通信装置に設定する管理装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された無線通信パラメータの設定方法では、ユーザが複数の無線通信パラメータのうちどちらを選択すべきかを判断しにくいという問題がある。
【0005】
具体的な例を挙げて説明する。例えば、画像形成装置が社員専用の社員用ネットワークと来客者向けのゲスト用ネットワークとに接続されている場合を想定する。この場合、NFCチップにネットワークごとの無線通信パラメータが記憶されていれば、ユーザが携帯する端末がNFCチップから無線通信パラメータを読み取って端末に設定することができる。しかし、一般に来客者を社員用ネットワークに接続させるべきではなく、社員であればゲスト用ネットワークよりも外部から遮蔽されている社員用ネットワークを経由して機器と通信すべきである。すなわち、ユーザは適切なネットワークを介して画像形成装置に接続すべきであるが、無線通信パラメータなどを取得できてもユーザがどの無線通信パラメータを選択すべきか判断することは困難である場合が多い。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、複数のネットワークに接続可能な機器へ要求を送信する際に、ユーザにネットワークを指定させずに機器へ要求を送信することを可能とする情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の実施の形態は、第1のネットワークおよび前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークを介して通信可能な機器に対し、前記第1および第2のネットワークのうちのいずれか一のネットワークを介して所定の処理を要求する情報処理装置であって、前記第1のネットワークを介して前記機器と接続するための第1の通信情報と、前記第2のネットワークを介して前記機器と接続するための第2の通信情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記第1の通信情報を用いて、前記情報処理装置が接続しているネットワークを介して前記機器から情報の取得を試み、前記情報を受信したか否かの判断と、前記情報を受信した場合は、前記情報に基づいて特定の機器であるか否か、を判断する判断手段と、前記判断手段によって、前記情報を受信し、かつ、前記特定の機器であると判断された場合、前記第1の通信情報に基づいて、前記第1のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、前記情報を受信したと判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求し、前記情報を受信したと判断され、かつ、前記特定の機器であると判断されなかった場合、前記第2の通信情報に基づいて、前記第2のネットワークを介して前記機器に対して前記所定の処理を要求する要求手段と、を有する情報処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施の形態によれば、複数のネットワークに接続可能な機器へ要求を送信する際に、ユーザにネットワークを指定させずに機器へ要求を送信することを可能とする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の印刷システムが想定する主なユースケースについて説明する図の一例である。
【
図3】携帯端末の一例のハードウェア構成図である。
【
図4】画像形成装置及び情報媒体の一例のハードウェア構成図である。
【
図5】印刷システムの一例の機能ブロック図である。
【
図8】接続可否判断処理の一例のフローチャートである。
【
図9】携帯端末の表示装置に表示される画面例を示す図である。
【
図10】携帯端末の表示装置に表示される画面例を示す図である。
【
図11】通信情報の別の一例を説明するための図である。
【
図12】
図7にて説明した印刷処理におけるステップS608の接続可否判断処理について説明するフローチャート図の一例である。
【
図13】印刷システムの一例の機能ブロック図である(実施例2)。
【
図14】印刷処理の一例のシーケンスである(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
<本実施形態の印刷システムのユースケース>
まず、
図1を用いて本実施形態の印刷システム1が想定する主なユースケースについて説明する。
図1は本実施形態の印刷システム1が想定する主なユースケースについて説明する図の一例である。画像形成装置20は社内LAN等に相当するネットワークN1に接続されており、ネットワークN1にはアクセスポイント7が接続されている。また、画像形成装置20はP2P(Peer to Peer)にて通信するネットワークN2を介した通信も可能である。
【0012】
・ユースケース1
ユースケース1は来客者9が自分の携帯端末10を用いて印刷などのため画像形成装置20と無線通信するケースである。
図1(a)を用いて説明する。
(1)まず、来客者9は携帯端末10を画像形成装置20が有する近距離無線通信装置301に接近させる。これにより、携帯端末10は、ネットワークN1を介して画像形成装置20と通信するための第1通信情報1100とネットワークN2を介して画像形成装置20と通信するための第2通信情報1300を取得する。
(2)次に、携帯端末10は第1通信情報1100を用いた通信を試みるが、来客者9の携帯端末10は第1通信情報1100では社内LAN(ネットワークN1)に接続できない。
(3)次に、携帯端末10は第2通信情報1300を用いた通信を試みると通信できるため、ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信を開始する。
【0013】
したがって、来客者9の携帯端末10は、社内LANであるネットワークN1を介することなく、画像形成装置20と通信することが可能である。
【0014】
・ユースケース2
ユースケース2は社員8が自分の携帯端末10を用いて印刷などのため、普段は使用しない別部署などの画像形成装置20と無線通信するケースである。
図1(b)を用いて説明する。
(1)まず、社員8は携帯端末10を画像形成装置20が有する近距離無線通信装置301に接近させる。これにより、携帯端末10は、ネットワークN1を介して通信するための第1通信情報1100とネットワークN2を介して通信するための第2通信情報1300を取得する。
(2)次に、携帯端末10は第1通信情報1100を用いた通信を試みるが、そもそも自社の社内LANに接続する権限を有する社員8の携帯端末10にはアクセスポイント7に接続するための無線通信パラメータが設定されている。このため、社内LANに接続でき、第1通信情報1100を用いれば画像形成装置20と通信することが可能である。社員8の携帯端末10はネットワークN1を介して画像形成装置20と通信を開始する。
【0015】
したがって、社員8の携帯端末10は、社内LANであるネットワークN1を介して画像形成装置20と通信することが可能である。また、仮に、社員8の携帯端末10がネットワークN1を介して画像形成装置20と接続できない場合でも、社員8の携帯端末10は、ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信することが可能なので、何らかの理由でネットワークN1を使用できない場合でも臨時的に印刷などが可能である。
【0016】
このように本実施形態の印刷システム1は、ユーザが通信情報を設定する労力を低減すると共に、来客者9や社員8などのユーザがそれぞれ適切なネットワークを自動的に選択することを可能にする。
【0017】
<用語について>
社員…携帯端末10と画像形成装置20のユーザの具体例の1つであり、社内LANに接続する権限を有する(携帯端末10に社内LANに接続するための無線通信パラメータが設定されている)ユーザである。このユーザは社員8と呼ばれていなくてもよく、職員、従業員、スタッフなどどのような呼称でもよい。
来客者…携帯端末10と画像形成装置20のユーザの具体例の1つであり、社内LANに接続する権限を有していないユーザである。社員以外のユーザは全て来客者9に含まれる。なお、来客者9もどのように呼ばれていてもよい。
【実施例0018】
<システム構成>
図2を用いて、本実施例に係る印刷システム1のシステム構成について説明する。
図2は、本実施例に係る印刷システムの一例の構成図である。
図2の印刷システム1は、携帯端末10と、1台以上の画像形成装置20とを有する。携帯端末10と画像形成装置20とは、有線又は無線によりネットワークN1及びネットワークN2を介して接続可能なように構成されている。なお、携帯端末10は後述するようにユーザが携帯可能な情報処理装置であるため、携帯端末10と画像形成装置20とは無線によりネットワークN1及びネットワークN2を介して接続可能なように構成されていることが好ましい。接続可能であるとは、接続する機能を備えることをいい、実際に接続できるかどうかは
図7,8などで説明する判断により異なる。
【0019】
また、携帯端末10が来客者9により携帯されるものである場合、携帯端末10はネットワークN1に接続しておらず、オンデマンドでネットワークN2に接続する。また、社員8はネットワークN1へ接続する権限を予め有している。このため、携帯端末10が社員8により携帯されるものである場合、携帯端末10には上記の無線通信パラメータとして例えばSSID及びパスワード(暗号化キー)が設定されているので、ネットワークN1へ接続できる。したがって、社員8が携帯する携帯端末10は画像形成装置20のIPアドレスが分かれば画像形成装置20と通信可能である。
【0020】
なお、以降では、一例として、ネットワークN1は携帯端末10が無線LAN(Local Area Network)を介して画像形成装置20に接続するための社内LANなどのネットワークであり、他方、ネットワークN2はWi-Fi DirectによりP2Pで画像形成装置20と直接接続するためのネットワークであるものとして説明する。ただし、ネットワークN1及びネットワークN2は、これらに限られない。例えば、ネットワークN1は社内LANなどのネットワークの他、WANやインターネットを含んでいてもよいし、一部に携帯電話網を含んでいてもよい。また、ネットワークN2は、例えば、無線LANのアドホックモード、携帯電話網、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)などを介して画像形成装置20と接続するためのネットワークでもよい。すなわち、社内LANなどの社内に進入しないネットワークであればよい。また、ネットワークN2は、ネットワークN1に対し隔離されるなど適切に設定されていれば、例えば、無線LANを介して画像形成装置20に接続するための社内LANであってもよい(例えば、ネットワークアドレスがネットワークN1とは異なるネットワーク)。
【0021】
また、画像形成装置20の筐体には、情報媒体30が貼り付けられており、携帯端末10と情報媒体30とが近距離無線通信を介して通信可能なように構成されている。
【0022】
携帯端末10は、ユーザが操作するスマートフォンなどの携帯可能な情報処理装置である。携帯端末10は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPC、ノートPCなどでもよい。携帯端末10には、画像形成装置20に機能の提供(例えば印刷対象データに印刷指示を行う、原稿をスキャンさせる、FAX送信させる、コピーさせるなど)を要求することができるアプリケーションが搭載(インストール)されており、携帯端末10は、印刷指示に係る印刷対象データを含む印刷ジョブ、スキャンジョブ、FAX送信ジョブ、及び、コピージョブなどを生成し、画像形成装置20に送信する。
【0023】
また、携帯端末10は、後述するようにNFCチップなどの近距離無線通信装置を備えている。ユーザは、携帯端末10を画像形成装置20の筐体の所定の位置に貼り付けられている情報媒体30にかざすことにより画像形成装置20と通信を行うためのIPアドレスなどを含む複数の通信情報を取得する。そして、携帯端末10は、取得した通信情報に基づき生成した印刷ジョブを画像形成装置20に送信することで、この画像形成装置20において印刷ジョブを実行させ、印刷対象データの印刷を行うことができる。
【0024】
なお、アプリケーションは、画像形成装置20と通信して画像形成装置20にジョブの実行を要求するブラウザ、文書作成ソフト、ビューワなどのソフトウェアでもよい。
【0025】
画像形成装置20は、携帯端末10から印刷ジョブなどを受け取り、印刷対象データの印刷を行うプリンタなどの機器である。なお、画像形成装置20は、プリント機能の他、コピー機能、スキャナ機能、FAX機能など複数の機能を有するMFPなどの複合機でもよい。
【0026】
また、画像形成装置20は、例えば、スキャナ装置、ファクシミリ装置、画像投影装置(プロジェクタ)、背面投影装置、HUD(Head Up Display)装置、電子黒板、デジタルサイネージなどの出力装置、又は、スピーカ装置などの音響出力装置であってもよい。したがって、本実施例では、情報処理システムの一例として印刷システム1である場合について説明するが、これに限られず、例えば、画像形成装置20の代わりに画像出力装置を用いた画像出力システムや画像形成装置20の代わりにスピーカ装置を用いた音響出力システムなどであってもよい。すなわち、本実施例は、各種のジョブ、画像や画像に変換しうるデータを生成する携帯端末10と、携帯端末10から受け取った各種のジョブ、画像や画像に変換しうるデータを出力する機器(本実施例では画像形成装置20)とを用いた各種システムに適用することができる。また、データの出力を伴わず、単に携帯端末10と機器とが無線通信すれだけでもよい。
【0027】
情報媒体30は、画像形成装置20の筐体の所定の位置に貼り付けられた、NFCチップなどの近距離無線通信装置である。すなわち、情報媒体30は、NFCタグなどである。情報媒体30には、この情報媒体30が貼り付けられている画像形成装置20のIPアドレスなどを含む通信情報が記憶されている。より具体的には、情報媒体30には、携帯端末10がネットワークN1を介して画像形成装置20と通信するための通信情報と、ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信するための通信情報とが記憶されている。すなわち、情報媒体30には、携帯端末10と画像形成装置20とが接続可能なネットワークの数に応じた通信情報が記憶されている。
【0028】
携帯端末10は、近距離無線通信を介して、情報媒体30に記憶されているこれらの通信情報を取得することができる。そして、上述したように、携帯端末10は、情報媒体30から取得した通信情報に基づき、画像形成装置20に対して印刷ジョブを送信することで、この画像形成装置20において印刷ジョブを実行することができる。
【0029】
通信情報を記憶しておき携帯端末10に送信するのはNFCタグのような情報媒体30に限られない。例えば、画像形成装置が通信情報を記憶していれば、Bluetoothや赤外線等、予めアドレス等を必要とせずに携帯端末10と直接通信できる他の通信方法を使用して携帯端末10に通信情報を送信してもよい。なお、この場合、携帯端末10にも対応する機能(Bluetoothや赤外線)が必要である。
【0030】
なお、上記で説明した印刷システム1では、携帯端末10と画像形成装置20とは、ネットワークN1及びネットワークN2の2個のネットワークを介して接続可能なように構成されているが、接続可能なネットワークの個数は1以上の任意の個数(3つ以上)でもよい。
【0031】
また、上記で説明した印刷システム1は、例えば、携帯端末10から送信された印刷ジョブを蓄積する印刷サーバなどを有する構成であってもよい。さらに、印刷システム1は、携帯端末10を1台以上の任意の台数有する構成であってもよい。
【0032】
<ハードウェア構成>
≪携帯端末≫
本実施例に係る携帯端末10は、例えば
図3に示すようなハードウェア構成により実現される。
図3は、本実施例に係る携帯端末の一例のハードウェア構成図である。
図3に示す携帯端末10は、入力装置101、表示装置102、外部I/F103、RAM(Random Access Memory)104、ROM(Read Only Memory)105、CPU(Central Processing Unit)106、通信I/F107、SSD(Solid State Drive)108、及び近距離無線通信装置109などを備え、それぞれがバスBで相互に接続されている。
【0033】
入力装置101は、例えば、タッチパネルであり、携帯端末10に各操作信号を入力するのに用いられる。なお、入力装置101は、キーボードやマウスなどであってもよい。表示装置102は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)などであり、携帯端末10による処理結果を表示する。
【0034】
外部I/F103は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、記録媒体103aなどがある。記録媒体103aには、実施例を実現するプログラムを格納することができる。携帯端末10は外部I/F103を介して、記録媒体103aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0035】
記録媒体103aは、例えば、SDメモリカード(SD Memory card)などの記録媒体である。記録媒体103aは、USBメモリ(Universal Serial Bus memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、CD(Compact Disk)、フレキシブルディスクなどの記録媒体であってもよい。
【0036】
RAM104は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM105は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM105には、携帯端末10の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、OS設定、及びネットワーク設定などのプログラムやデータが格納されている。
【0037】
CPU106は、ROM105やSSD108などの記憶装置からプログラムやデータをRAM104上に読み出し、処理を実行することで、携帯端末10全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0038】
通信I/F107は、ネットワークN1及びネットワークN2を介した通信を行うためのインタフェースである。例えば、通信I/F107は、携帯端末10を無線LANを介して社内LAN等に接続するためのインタフェースである。また、通信I/F107は、Wi-Fi Directを介して画像形成装置20と接続するためのインタフェースである。これにより、携帯端末10は通信I/F107を介してデータ通信を行うことができる。なお、通信I/F107は、携帯電話網やインターネット等に接続するためのインタフェースであってもよい。
【0039】
SSD108は、プログラム108aやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラム108aやデータには、例えば携帯端末10全体を制御する基本ソフトウェアであるOS(Operating System)や、OS上において各種機能を提供するアプリケーションソフトウェア(以下、単にアプリケーションという)などがある。SSD108は格納しているプログラムやデータを所定のファイルシステム及び/又はDB(データベース)により管理している。なお、携帯端末10は、SSD108の代わりに又はSSD108と併せて、HDD(Hard Disk Drive)等を備えていてもよい。
【0040】
近距離無線通信装置109は、例えば、NFCチップなどである。これにより、携帯端末10は、近距離無線通信装置109を介してデータ通信を行うことができる。
【0041】
本実施例に係る携帯端末10は、上記したハードウェア構成により後述するような各種処理を実現できる。
【0042】
<<画像形成装置及び情報媒体>>
本実施例に係る画像形成装置20及び情報媒体30は、例えば
図4に示すようなハードウェア構成により実現される。
図4は、本実施例に係る画像形成装置及び情報媒体の一例のハードウェア構成図である。
図4に示す画像形成装置20は、コントローラ201、操作パネル202、外部I/F203、通信I/F204、及びプリンタ205などを有している。また、画像形成装置20の外部(筐体)には、情報媒体30を実現する構成として近距離無線通信装置301が貼り付けられている。
【0043】
コントローラ201はCPU211、RAM212、ROM213と、NVRAM214、HDD215を有する。ROM213は、各種プログラムやデータが格納されている。RAM212はプログラムやデータを一時保持する。NVRAM214は、例えば設定情報等が格納されている。また、HDD215は各種のプログラム215aやデータが格納されている。
【0044】
CPU211は、ROM213やNVRAM214、HDD215などからプログラム215aやデータ、設定情報等をRAM212上に読み出し、処理を実行することで、画像形成装置20全体の制御や機能を実現する。
【0045】
操作パネル202はユーザからの入力を受け付ける入力部と、表示を行う表示部とを備えている。外部I/F203は外部装置とのインタフェースである。外部装置には、記録媒体203a等がある。これにより、画像形成装置20は外部I/F203を介して記録媒体203aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。記録媒体203aには、フレキシブルディスク、CD、DVD、SDメモリカード、USBメモリなどがある。
【0046】
通信I/F204は、ネットワークN1及びネットワークN2を介した通信を行うためのインタフェースである。これにより、画像形成装置20は通信I/F204を介してデータ通信を行うことができる。プリンタ205は、印刷対象データを印刷して出力するための印刷装置である。
【0047】
近距離無線通信装置301は、例えば、NFCチップなどである。情報媒体30は、近距離無線通信装置301の不揮発性メモリに構築されている。近距離無線通信装置301は携帯端末10の近距離無線通信装置109の接近を検出すると、近距離無線通信装置109と通信して情報媒体30の情報を読み出し携帯端末10に情報媒体30の情報を送信することができる。近距離無線通信装置301は、例えば、NFCチップが画像形成装置20の筐体の所定の位置に貼り付けられて構成されているなど、画像形成装置20の外部に構成されている。この場合、NFCチップは、携帯端末10との間で近距離無線通信が容易な位置に貼り付けされることが好ましい。情報媒体30の情報は、リーダ・ライタなどを用いてユーザ側で書き換えることが可能である。
【0048】
なお、近距離無線通信装置301は、画像形成装置20の外部に構成されずに、携帯端末10との間で近距離無線通信が可能な範囲内で、画像形成装置20の内部に構成されていてもよい。また、近距離無線通信装置301は、画像形成装置20と一体である必要はなく、画像形成装置20の近くや画像形成装置20へいたる経路に設置された案内板などに配置されていてもよい。
【0049】
本実施例に係る画像形成装置20及び情報媒体30は、上記したハードウェア構成により後述するような各種処理を実現できる。
【0050】
<ソフトウェア構成>
本実施例に係る印刷システム1は、例えば
図5に示すような機能ブロックにより表すことができる。
図5は、本実施例に係る印刷システムの一例の機能ブロック図である。
【0051】
印刷システム1の携帯端末10は、情報取得部12、接続可否判断部13、UI表示部14、通信部15、及び情報記憶部16などを有する。また、通信部15は、第1通信部151及び第2通信部152などを有する。他方、印刷システム1の画像形成装置20は、プリント機能部21などを有する。画像形成装置20は複数のネットワークN1,N2から処理の要求を受付可能である。
【0052】
情報取得部12は、CPU106、近距離無線通信装置109などにより実現され、近距離無線通信を介して、情報媒体30から画像形成装置20と通信を行うための複数の通信情報を取得する。
【0053】
接続可否判断部13は、CPU106などにより実現され、情報媒体30から取得された複数の通信情報に基づき、画像形成装置20と接続可能な複数のネットワークのうちのいずれのネットワークを介して通信を行うかを選択する。本実施例では、具体的には、情報媒体30から取得された複数の通信情報に基づき、ネットワークN1及びネットワークN2のいずれのネットワークを介して画像形成装置20と通信を行うかを選択する。
【0054】
UI表示部14は、CPU106、表示装置102などにより実現され、UI(ユーザインタフェース)画面の生成及び表示を行う。
【0055】
通信部15は、通信I/F107などにより実現され、画像形成装置20との通信を行う。より具体的には、接続可否判断部13の選択結果に応じて、第1通信部151はネットワークN1を介して画像形成装置20と通信を行い、第2通信部152はネットワークN2を介して画像形成装置20と通信を行う。
【0056】
情報記憶部16は、CPU106、ROM105、及び、SSD108などにより実現され、情報取得部12により取得された通信情報1000を記憶すると共に、記憶されている情報の読み出しを行う。
【0057】
プリント機能部21は、プリンタ205などにより実現され、携帯端末10から実行を要求された印刷ジョブに含まれる印刷対象データを印刷する。なお、画像形成装置20は、プリント機能部21に加えて、読み取った原稿から画像データ(電子データ)を生成するためのスキャン機能部、読み取った原稿を複製するコピー機能部、読み取った原稿又は電子データを電話回線網などを介してFAX送信するFAX機能部などを有していてもよい。
【0058】
情報媒体30は、近距離無線通信装置301により実現され、この情報媒体30が貼り付けられている画像形成装置20と通信を行うための通信情報1000を記憶している。また、情報媒体30は、携帯端末10の情報取得部12からの要求に応じて、近距離無線通信を介して、情報媒体30が記憶している通信情報1000を携帯端末10に送信する。
【0059】
<情報媒体30が記憶している通信情報1000>
情報媒体30が記憶している通信情報1000について
図6を用いて説明する。なお、携帯端末10の情報記憶部16が記憶している通信情報1000も同様の構成である。
図6は、通信情報の一例を説明するための図である。
【0060】
図6に示す通信情報1000は、ネットワークN1を介して画像形成装置20と通信を行うための第1通信情報1100と、ネットワークN2を介した通信の利用可否を示す利用可否情報1200と、ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信を行うための第2通信情報1300とを有している。すなわち、通信情報1000は、第1通信情報1100、第2通信情報1300など複数の通信情報を有している。
【0061】
第1通信情報1100は、携帯端末10が画像形成装置20とネットワークN1(例えば無線LANを介して接続される社内LANなど)を介して通信を行うために必要な情報である。第1通信情報1100には、ネットワークN1における画像形成装置20のIPアドレスである第1IPアドレス、ネットワークN1におけるSSL(Secure Sockets Layer)通信の利用有無を示すSSL通信などの情報を含む。第1通信情報1100にはアクセスポイント7から社内LANなどに接続するためのSSIDやパスワードは含まれない。これは、上記のように、ネットワークN1は社員8が接続することが想定されており、社員8の携帯端末10には予めSSIDやパスワードが設定されているためである。換言すると、第1通信情報1100に社内LANなどのSSIDやパスワードが設定されていると、来客者9なども社内LANなどに接続できてしまう。本実施例では社員8の携帯端末10には予めSSIDやパスワードが設定されているという前提を利用して、第1通信情報1100には最小限の情報(IPアドレスがあること)を記憶することで、来客者9を社内LANなどに接続させず、社員8だけを社内LANに接続させることを可能とした。つまり、社内LANに現在接続している状態の携帯端末10のみが第1通信情報1100を用いて画像形成装置20に接続可能である。
【0062】
利用可否情報1200は、接続可否判断部13により画像形成装置20とネットワークN1を介した通信を行うことができないと判断された場合、ネットワークN2を介した通信を行うか否かを示す情報である。例えば、
図6の通信情報1000では、利用可否情報1200は「Yes」と設定されている。したがって、この場合、詳しくは後述するが、接続可否判断部13により画像形成装置20とネットワークN1を介した通信を行うことができないと判定された場合、携帯端末10は、画像形成装置20とネットワークN2を介した通信を試みる処理を行う。他方、利用可否情報1200が「No」と設定されている場合、携帯端末10は、画像形成装置20とネットワークN2を介した通信を行うことはできない。
【0063】
利用可否情報1200は、例えば課金制御に使用される。画像形成装置20の利用料金が印刷枚数などの従量制で課金される場合がある。例えば企業Aに画像形成装置20が配置されている場合、企業Aの社員8が印刷しても、企業Aへの来客者9が印刷しても、利用料金の請求は企業Aに対して行われる。したがって、来客者9が多い場所に設置された画像形成装置20などでは来客者9による印刷を企業Aが一切、許可したくない場合がある。
【0064】
これに対し、例えば市役所や図書館などでは来客者9から印刷したいという要望に応える必要がある。このため、公共性の高い場所には画像形成装置20と共にコインメックが配置され、ユーザが投入した金額の範囲で、来客者9による印刷が許可される。
【0065】
したがって、課金可能な配置場所又は来客者9による印刷数が少ない配置場所などに配置された画像形成装置20では、来客者9による印刷を許可してよい。このように、利用可否情報1200は、来客者9による画像形成装置20の利用の可否そのものを制御できる。
【0066】
なお、第1通信情報1100に対しても、利用可否情報が設定されていてもよい。例えばネットワークN1にセキュリティ上の不都合などがある場合に、社員8がネットワークN1を介して画像形成装置20と通信することを防止できる。
【0067】
第2通信情報1300は、携帯端末10が画像形成装置20とネットワークN2(例えばWi-Fi DirectによるP2P)を介して通信を行うために必要な情報である。第2通信情報1300には、ネットワークN2における画像形成装置20のIPアドレスである第2IPアドレス、ネットワークN2を識別するためのSSID(Service Set Identifier)、ネットワークN2における暗号化方式、パスワード、ネットワークN2を介して通信を行う際の画像形成装置20HTTP(HyperText Transfer Protocol)ポート番号又はHTTPS(HTTP over SSL/TLS)ポート番号などの情報を含む。なお、画像形成装置20がデータを暗号化して通信しない場合、パスワードがなくても通信自体は可能である。
【0068】
上記の第1通信情報1100及び第2通信情報1300に含まれる情報は一例であり、それぞれネットワークN1及びネットワークN2を介した通信を行うために必要な各種の情報が含まれていてよい。また、上記で示した通信情報1000では、第1IPアドレスと第2IPアドレスが異なるが、これらは同一のIPアドレスであってもよい。
【0069】
なお、例えば、携帯端末10と画像形成装置20とがさらにネットワークN3を介して接続可能なように構成されている場合、通信情報1000には、ネットワークN3を介した通信の利用可否を示す利用可否情報と、ネットワークN3を介して画像形成装置20と通信を行うための第3通信情報とを有していてもよい。
【0070】
<処理の詳細>
次に、印刷システム1の処理の詳細について説明する。
【0071】
<<印刷処理>>
まず、本実施例に係る印刷システム1の印刷処理の流れについて説明する。
図7は、本実施例に係る印刷処理の一例のシーケンスである。
【0072】
ステップS601において、ユーザは、UI表示部14を介して、携帯端末10に搭載されたアプリケーションから所望の印刷対象データを選択し、印刷指示を行う。これにより、ユーザが選択した印刷対象データが含まれる印刷ジョブが生成される。
【0073】
ステップS602において、携帯端末10のUI表示部14は、印刷ジョブの実行通知を受け取ると、通信情報1000の取得要求を情報取得部12に対して行う。そして、携帯端末10は、近距離無線通信装置109による近距離無線通信の開始を検出するまで待機状態となる。なお、この間、ユーザに対して画像形成装置20のNFCチップ(情報媒体30)の位置に携帯端末10をかざすように促す画面を、表示装置102に表示させてもよい。
【0074】
ステップS603において、ユーザが携帯端末10を情報媒体30にかざすと、情報取得部12は、情報媒体30との近距離無線通信の開始を検出し、情報媒体30から通信情報1000を取得する。
【0075】
ステップS604において、携帯端末10の情報取得部12は、情報媒体30から通信情報1000を取得した通信情報1000を情報記憶部16に保存する。
【0076】
ステップS605において、携帯端末10の情報記憶部16は、通信情報1000に含まれる複数の通信情報のうちのいずれの通信情報に基づき画像形成装置20と通信を行うかの判断要求を接続可否判断部13に対して送信する。
【0077】
ステップS606において、携帯端末10の接続可否判断部13は、接続可否判断処理を行う。本実施例では、接続可否判断処理では、接続可否判断部13は以下いずれかの結果を生成する。なお、この接続可否判断処理の詳細については後述する。
(1)携帯端末10は、ネットワークN1及びネットワークN2のいずれのネットワークを介しても画像形成装置20と通信することができない(選択結果が通信不可)。
(2)携帯端末10は、ネットワークN1を介して画像形成装置20と通信を行う(選択結果が第1通信部で通信)。
(3)携帯端末10は、ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信を行う(選択結果が第2通信部で通信)。
【0078】
以降の処理では、接続可否判断部13による選択結果が上記(1)の場合、UI表示部14はステップS608の処理を行う。接続可否判断部13による選択結果が上記(2)の場合、通信部15はステップS610の処理を行う。接続可否判断部13による選択結果が上記(3)の場合、通信部15はステップS613の処理を行う。
【0079】
ステップS607において、携帯端末10の接続可否判断部13は、携帯端末10は画像形成装置20と通信を行うことができないことを示す画面(
図10(b)の通信不可画面)の表示要求をUI表示部14に対して送信する。
【0080】
ステップS608において、携帯端末10のUI表示部14は、通信不可画面の表示要求を受け付けると、通知不可画面を生成し、表示装置102に表示させる。これにより、ユーザに対して、このユーザが操作する携帯端末10では所望の画像形成装置20と通信を行うことができないことが通知される。
【0081】
ステップS609において、携帯端末10の接続可否判断部13は、印刷ジョブの実行要求を第1通信部151に対して送信する。
【0082】
ステップS610において、携帯端末10の第1通信部151は、印刷ジョブの実行要求を受け付けると、この印刷ジョブの実行要求を画像形成装置20に対して送信する。すなわち、携帯端末10は、ネットワークN1(例えば無線LANを介して接続される社内LAN)を介して画像形成装置20に印刷ジョブを送信する。
【0083】
ステップS611において、画像形成装置20のプリント機能部21は、携帯端末10から印刷ジョブを受け付けると、この印刷ジョブを実行し、印刷対象データを印刷する。これにより、ユーザは、所望の印刷対象データを画像形成装置20で印刷することができる。
【0084】
ステップS612において、携帯端末10の接続可否判断部13は、印刷ジョブの実行要求を第2通信部152に対して送信する。
【0085】
ステップS613において、携帯端末10の第2通信部152は、印刷ジョブの実行要求を受け付けると、この印刷ジョブの実行要求を画像形成装置20に対して送信する。すなわち、携帯端末10は、ネットワークN2(例えばWi-Fi DirectによるP2P)を介して画像形成装置20に印刷ジョブを送信する。
【0086】
ステップS614において、画像形成装置20のプリント機能部21は、携帯端末10から印刷ジョブを受け付けると、この印刷ジョブを実行し、印刷対象データを印刷する。これにより、ユーザは、所望の印刷対象データを画像形成装置20で印刷することができる。
【0087】
以上のように、本実施例に係る印刷システム1では、携帯端末10は情報媒体30から画像形成装置20と通信を行うための複数の通信情報を取得する。そして、携帯端末10は、これらの複数の通信情報のうちのいずれかの通信情報に基づき、画像形成装置20と通信を行い、印刷を行うことができる。すなわち、携帯端末10は、画像形成装置20と接続される複数のネットワークのうちのいずれかのネットワークを選択し、この選択されたネットワークを介して印刷ジョブを画像形成装置20に送信することで印刷を行うことができる。
【0088】
<<接続可否判断処理>>
次に、
図8~10を用いて、上記で説明した印刷処理におけるステップS608の接続可否判断処理について説明する。接続可否判断処理は、情報取得部12が取得した通信情報1000に含まれる第1通信情報1100と第2通信情報1300のどちらに基づいて画像形成装置20と通信を行うかを選択する処理である。換言すれば、画像形成装置20と接続される複数のネットワークのうちのいずれのネットワークを介して通信を行うかを選択する処理である。
【0089】
図8は、本実施例に係る接続可否判断処理の一例のフローチャートである。
図9、10は携帯端末10の表示装置102に表示されるアプリケーションの画面例を示す図である。以下、
図8の処理の流れを、
図9,10を参照しながら説明する。
【0090】
まず、ユーザはアプリケーションが表示装置102に表示した印刷対象データの一覧などから印刷対象データを選択する。すると、
図9(a)に示すように、携帯端末10の表示装置102には印刷条件画面901が表示される。印刷条件画面901には、印刷対象データ902、画像形成装置20のアイコン903、印刷部数904、カラー/白黒905、及び、用紙サイズ906が表示される。印刷部数904、カラー/白黒905、及び、用紙サイズ906には、アプリケーションに予め設定されている初期の設定値が表示されると共に、ユーザが最後に設定した設定値が保持される。したがって、ユーザは携帯端末10を用いて画像形成装置20に印刷させる場合、設定の変更を最小限にして自分が望む設定値(印刷条件)で印刷することができる。
【0091】
なお、使用方法アドバイス907は、例えばアイコン907aや「MFPにタッチしてプリントスタート」というメッセージ907bを有し、ユーザが携帯端末10を画像形成装置20の近距離無線通信装置301(NFCチップ)の位置にかざすことを促す。かざすことにより、携帯端末10の情報取得部12は情報媒体30から通信情報1000を取得する。通信情報1000の取得により
図8の処理がスタートする。
【0092】
図8のステップS701において、携帯端末10の接続可否判断部13は、通信情報1000に含まれる第1通信情報1100に基づきネットワークN1を介した画像形成装置20との通信を第1通信部151に要求する。そして、第1通信部151は、第1通信情報1100を用いて画像形成装置20との通信を試みる。ここで、携帯端末10は現在接続されているネットワークを優先して通信情報1100に示されるIPアドレスへの接続を試みる。たとえユーザが社員であり、社内LANに接続する情報を携帯端末が保持していたとしても、現在、別のネットワーク(例えばLTE、3G、公衆無線LAN等)に接続している場合、取得した通信情報1100にSSIDなどのネットワークを識別できる情報が入っていないことから、携帯端末10はどのネットワークに接続を切り替えて良いかの判別が出来ない。このため、社内LANに切り替えることなく別のネットワークを介して通信を試みる。第1通信部151は、現在、接続されているネットワークを介して第1通信情報1100に含まれる第1IPアドレスが示す機器(ここでは画像形成装置20)との通信を試みる。したがって、3GやLTEに接続している携帯端末10では、キャリヤの基地局を経由して第1IPアドレスが示す機器との通信が試みられる場合がある。
【0093】
第1通信部151が画像形成装置20との通信を試みている間、携帯端末10の表示装置102には
図9(b)に示す接続中画面911が表示される。接続中画面911では、アイコン912と文字913などにより接続中である旨が表示される。また、接続や印刷ジョブをユーザが中止するためのキャンセルボタン914が表示される。
【0094】
図8に戻りステップS702において、携帯端末10の接続可否判断部13は、第1通信部151による通信結果に基づきネットワークN1を介して画像形成装置20と通信できたか否かを判定する。ネットワークN1を介して画像形成装置20と通信できた場合、ステップS703に進む一方、通信できなかった場合、ステップS704に進む。
【0095】
ここで、接続可否判断部13は、第1通信情報1100を用いて画像形成装置20と通信できたか否かについて、以下のように判定する。説明の便宜のため、ユースケースに分けて説明する。
【0096】
・ユースケース1
携帯端末10はネットワークと何ら接続していなくても、何らかのネットワークに接続されていたとしても、画像形成装置20への接続を試みて、下記の(1)~(3)いずれかの処理を行う。
(1)第1通信部151は、現在接続されているネットワークを介して画像形成装置20のMIB(Management Information Base)情報の取得を試みる。そして、MIB情報の取得ができた場合、画像形成装置20と通信できたと判定する一方、MIB情報の取得ができなかった場合、画像形成装置20と通信できなかったと判定する。MIB情報は標準MIBでも拡張MIBでもよい。標準MIBを取得できれば少なくとも何らかの機器と(画像形成装置20である可能性を含め)データの通信が可能であることが分かり、拡張MIBを取得できれば携帯端末10のアプリケーションが想定する画像形成装置20(アプリケーションは特定のメーカ又は機種の画像形成装置20を想定して作成されている)とデータの通信が可能であることが分かる。なお、さらに、MIB情報が取得できた場合であっても、取得されたMIB情報に含まれる機器情報が通信対象の画像形成装置20の機器情報(これは、例えば情報媒体30から取得される通信情報1000に含まれる)と異なる場合、通信できなかったと判定してもよい。これにより、接続可否判断部13は通信情報1000を読み取った情報媒体30を有する画像形成装置20と通信できたことを確実に判定できる。ここで、機器情報とは、例えば、画像形成装置20の製造固有番号(シリアルナンバー)やMAC(Media Access Control)アドレスなどの画像形成装置を一意に識別する情報である。
(2)第1通信部151は、現在接続されているネットワークを介して画像形成装置20が提供するWebAPI(Web Application Programming Interface)を利用して、機器情報の取得を試みる。WebAPIとは、機器Aと機器Bがネットワークを介して処理を行う際の取り決め(処理の依頼方法やデータの指定方法など)をいう。携帯端末10の情報記憶部16には予めWebAPIが記憶されている。そして、機器情報の取得ができた場合、画像形成装置20と通信できたと判定する。一方、機器情報の取得ができなかった場合、画像形成装置20と通信できなかったと判定する。すなわち、WebAPIが画像形成装置20のメーカに固有でない場合、少なくとも何らかの機器と(画像形成装置20である可能性を含め)データの通信が可能であることが分かる。WebAPIが画像形成装置20のメーカに固有である場合、機器情報を取得できることで携帯端末10のアプリケーションが想定する画像形成装置20とデータの通信が可能であることが分かる。なお、さらに、機器情報が取得できた場合であっても、取得された機器情報が所望の画像形成装置20の機器情報と異なる場合、通信できなかったと判定してもよい。これにより、接続可否判断部13は通信情報1000を読み取った情報媒体30を有する画像形成装置20と通信できたことを確実に判定できる。
(3)第1通信部151は、現在接続されているネットワークを介してARP(Address Resolution Protocol)により画像形成装置20のMACアドレスの取得を試みる。そして、MACアドレスの取得ができた場合、画像形成装置20と通信できたと判定する。一方、MACアドレスの取得ができなかった場合、画像形成装置20と通信できなかったと判定する。MACアドレスが取得できれば情報媒体30に記憶されているIPアドレスの装置(画像形成装置20である可能性を含め)が存在し、情報媒体30を有する画像形成装置20とデータの通信ができたことを高い確度で特定できる。なお、さらに、MACアドレスが取得できた場合であっても、取得されたMACアドレスが画像形成装置20のMACアドレス(情報媒体30から取得されるものとする)と異なる場合、通信できなかったと判定してもよい。これにより、接続可否判断部13は情報媒体30が配置されている画像形成装置20と通信できたことを確実に判定できる。
【0097】
(1)~(3)のいずれかの処理を行った際に通信エラー等があればリトライしてもよく、(1)~(3)のいずれかの判定により通信できないと判定された場合は1回の試みで通信できないと判断してよい。
【0098】
この(1)~(3)のいずれかの処理を行うことで、携帯端末10がどのネットワークにもつながっていないこと、又は、携帯端末10が他の無線LAN(公衆無線LANなど)に接続していることやLTEや3Gに接続している可能性があることを検出できる。これにより、携帯端末10は第1通信情報1100を用いて画像形成装置20とは通信できないと判断できる。
【0099】
また、携帯端末10がどのネットワークにも接続されていない場合、伝送端末10はOS等を介して無線LANに接続していないことを検出したり、これ以外に何のネットワークにも接続をしていないことを検出したりして、第1通信情報1100を用いて画像形成装置20と通信できないと判断してもよい。携帯端末10がLTEや3Gに接続していることを検出した場合も同様に判断できる。
【0100】
さらに、携帯端末10がどのネットワークにも接続されていない場合、現在、携帯端末10は社内LANにも接続していないので、第1通信情報1100を用いた通信できないと判断できるため、(1)~(3)を行わずに第1通信情報1100を用いて画像形成装置20とは通信できないと判断できる。
【0101】
・ユースケース2
まず、社員8の携帯端末10が社内LANに接続した状態であれば第1通信情報1100により画像形成装置20と通信することができる場合が多いと考えられる。
【0102】
一方、上記のように社員であっても社内LANに接続した状態でない場合は、第1通信情報1100を用いて画像形成装置20に接続することができない。また、接続していたLTEや3Gなど社内LANとは別のネットワークを介して通信を試みた場合、以下のような状況がありうる。
(i)偶然接続していたネットワークの第1通信情報が示すIPアドレスに何らかの機器(画像形成装置20の場合もそうでない場合もある)がある。そのため、機器へ接続を行うこと自体は可能だが、接続対象の画像形成装置20と接続しているわけではないので処理の要求を行なっても意味がない。
(ii)偶然接続していたネットワークには第1通信情報1100が示すIPアドレスに何の機器も存在しない。
【0103】
このため、上記(i)や(ii)の状態でなく確実に画像形成装置20と通信していることを確認するため、上記(1)~(3)のいずれかの処理を行う。これにより、接続した機器が処理の要求が可能な画像形成装置20か否か(ネットワークN1を介して画像形成装置20へ接続しているか)の判断を行うことができる。
【0104】
なお、ユースケース2において、携帯端末10が社内LAN(ネットワークN1)に接続している場合でも、社員8の携帯端末10が送信するパケットが画像形成装置20まで到達できない場合がある。このような状況としては、携帯端末10の最寄りのアクセスポイント7から画像形成装置20に至るまでの経路のルータの電源がOFFである場合や、画像形成装置20のIPアドレスが変更されたが情報媒体30に反映されていない場合などが考えられる。
【0105】
これらの場合、接続可否判断部13は(1)~(3)のいずれかの処理を行った際にタイムアウトや通信エラー(例えばHTTPでは400のステータスコードが帰ってくる)などを検出することで、第1通信情報1100により画像形成装置20と通信することができないと判断する。
【0106】
ステップS703において、ネットワークN1を介して画像形成装置20と通信できた場合、携帯端末10の接続可否判断部13は、通信情報1000に含まれる第1通信情報1100に基づきネットワークN1を介して画像形成装置20と通信を行うと判断する。
【0107】
この場合、
図10(a)に示すように、携帯端末10の表示装置102には送信完了画面921が表示される。送信完了画面921は携帯端末10から画像形成装置20への印刷ジョブの送信が完了した旨を表す画面である。送信完了画面921は「送信完了」というメッセージ922と送信が完了したことを示すアイコン923が表示されている。送信完了画面921は一定時間表示された後、自動的に消去され
図9(a)の印刷条件画面901が表示される。なお、ユーザがアイコン923を押下(タッチ)することなどにより
図9(a)の印刷条件画面901が表示されてもよい。
【0108】
図8に戻り、ステップS704において、携帯端末10の接続可否判断部13は、通信情報1000に含まれる利用可否情報1200を参照し、ネットワークN2の利用が可能か否かを判定する。ネットワークN2の利用が可能である場合、ステップS705に進み、ネットワークN2の利用が不可能である場合、ステップS708に進む。
【0109】
これにより、例えば、ネットワークN2がWi-Fi DirectなどのP2Pで携帯端末10と画像形成装置20とを接続可能であっても、P2Pによる接続が許可されているか否かを判定できる。これは上記の課金のような理由の他、一般に、P2Pによる接続は、無線LANを用いた社内LANを介した接続に比べてセキュリティ等が低い傾向があることによるものである。すなわち、社員8の携帯端末10がネットワークN1に接続できない場合、臨時的であっても社員8がP2Pによる接続を行わないようにするためである。このように、ステップS704の判定によりセキュリティを向上させることができる。
【0110】
ステップS705において、携帯端末10の接続可否判断部13は、通信情報1000に含まれる第2通信情報1300に基づきネットワークN2を介した画像形成装置20との通信を第2通信部152に要求する。そして、第2通信部152は、第2通信情報1300に基づきネットワークN2を介して画像形成装置20との通信を試みる。すなわち、第2通信部152は、第2通信情報1300に含まれる第2IPアドレスが示す画像形成装置20との通信を試みる。
【0111】
ステップS706において、携帯端末10の接続可否判断部13は、第2通信部152による通信結果に基づきネットワークN2を介して画像形成装置20と通信できたか否かを判定する。ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信できた場合、ステップS707に進む一方、通信できなかった場合、ステップS708に進む。ステップS706の判定中も引き続き、
図9(b)の接続中画面が表示される。
【0112】
ここで、接続可否判断部13は、第2通信情報1300を用いて画像形成装置20と通信できたか否かについて、以下のように判定する。ステップS706の判定では、ユースケース1、2のいずれのケースも同様に判定される。
【0113】
すなわち、来客者9の携帯端末10及び社員8の携帯端末10は第2通信情報1300を用いてパケットを画像形成装置20との間で送受信できると考えられる。したがって、例えば、ステップS702の判定基準(1)~(3)により判定することが可能になる。
【0114】
なお、希であるが、画像形成装置20の通信I/F204に電源が供給されていなかったり、通信I/F204が通信不良を起こしたため、携帯端末10がネットワークN2を介して画像形成装置20とパケットを送受信できないことも起こりうる。この場合は、接続可否判断部13は画像形成装置20から何ら応答を得られないこと、タイムアウト、又は、通信エラーを検出することなどで、第1通信情報1100により画像形成装置20と通信することができないと判断する。
【0115】
ステップS707において、ネットワークN2を介して画像形成装置20と通信できた場合、携帯端末10の接続可否判断部13は、通信情報1000に含まれる第2通信情報1300に基づきネットワークN2を介して画像形成装置20と通信を行うと判断する。
【0116】
この場合、携帯端末10の表示装置102には
図10(a)の送信完了画面921が表示される。すなわち、ネットワークN1又はネットワークN2の何れを経由して印刷ジョブが送信されても同じ画面が表示されるので、ユーザはネットワークの違いを意識する必要がない。なお、携帯端末10はネットワークN1又はネットワークN2の何れを経由して印刷ジョブが送信されたのか表示装置102に表示してもよい。これにより、社員8としてのユーザはセキュリティが高い社内LANを使用できたかどうかを確認できる。また、来客者9としてのユーザは自分の印刷ジョブがP2Pネットワークを介して送信されたことを把握できる。
【0117】
図8に戻り、ステップS708において、ネットワークN1及びネットワークN2のいずれにおいても画像形成装置20と通信することができない場合、携帯端末10の接続可否判断部13は、画像形成装置20と通信することはできないと判断する。
【0118】
この場合、
図10(b)に示すように、携帯端末10の表示装置102には通信不可画面931が表示される。通信不可画面931では、「機器と接続できません」というメッセージ932とOKボタン933が表示される。ユーザがOKボタン933を押下すると(タッチすると)、表示装置102には
図9(a)の印刷条件画面901が表示される。
【0119】
図8の処理で説明されたように、本実施例の印刷システム1は、複数のネットワークに接続された画像形成装置20に対し、ユーザが第1通信情報1100や第2通信情報1300を設定する労力を低減すると共に、各ユーザがそれぞれ適切なネットワークを自動的に選択することができる。
【0120】
<<通信情報の別の形態について>>
上記のステップS701において、接続可否判断部13は第1通信情報1100を用いて画像形成装置20との通信を試み、ステップS705では第2通信情報1300を用いて画像形成装置20との通信を試みた。すなわち、通信に試行される第1通信情報1100と第2通信情報1300の順番は
図6の通信情報1000に記録されている第1通信情報1100と第2通信情報1300の順番(例えばアドレス順)により固定されていた。
【0121】
しかしながら、接続可否判断部13が通信を試みる順序はこれに限られない。すなわち、ステップS701において第2通信情報1300を用いた通信を試み、ステップS705において第1通信情報1100を用いた通信を試みてもよい。
【0122】
また、複数のネットワークのうちのいずれのネットワークを介して画像形成装置20との通信を試みるかについては、所定の優先度に従って決定してもよい。
【0123】
図11は、通信情報の別の一例を説明するための図である。
図11では、複数のネットワークのうちのネットワークN1の第1通信情報1100が優先度1、ネットワークN2の第2通信情報1300が優先度3、ネットワークN3の第3通信情報1500が優先度2である。通信情報1000にこのように各ネットワーク(各通信情報)の優先度が登録されている場合、接続可否判断部13は第1通信情報1100(ネットワークN1)、第3通信情報1500(ネットワークN3)、第2通信情報1300(ネットワークN2)の順に画像形成装置20との通信を試みる。
【0124】
図12は、
図11の通信情報1000が用いられた場合の
図7のステップS608の接続可否判断処理について説明するフローチャート図の一例である。
【0125】
ステップS801において、携帯端末10の接続可否判断部13は、通信情報1000に含まれる第1通信情報1100~第3通信情報1500の優先度を全て読み出して、優先度が高い順に制御用優先度1~Nを付与する。これは、通信情報1000に含まれる第1通信情報1100~第3通信情報の優先度が1から始まっていなかったり、連番でなかったりする場合に対応するためである。ステップS801の処理により、第1通信情報1100~第3通信情報には連番の制御用優先度1~Nが付与される。なお、第1通信情報1100~第3通信情報の2つ以上に同じ優先度が付与されている場合、記憶されている順番(アドレス順)に制御用優先度が付与される。
【0126】
ステップS802において、携帯端末10の接続可否判断部13は、制御変数nに"1"を設定する。すなわち、制御変数nを初期化する。
【0127】
ステップS803において、携帯端末10の接続可否判断部13は、制御用優先度nの通信情報(ここでは第1通信情報1100~第3通信情報のどれか)があるか否かを判断する。制御用優先度nの通信情報がある場合、処理はステップS804に進み、制御用優先度nの通信情報がない場合、処理はステップS809に進む。ステップS809では、第1通信情報1100~第3通信情報1500を用いて通信を試みたが通信できないため、通信不可と判断される。
【0128】
ステップS804において、携帯端末10の接続可否判断部13は、制御用優先度nの利用可否情報1200,1400を参照し、制御用優先度nの通信情報(ここでは第1通信情報1100、第2通信情報1300,第3通信情報1500のどれか)を利用可能か否か判断する。なお、第1通信情報1100のように利用可否情報がない場合は、利用可能であると判断する。または、第1通信情報1100~第3通信情報1500が利用可否情報を備えるように通信情報1000が構成されていてもよい。制御用優先度nの通信情報を利用可能な場合、処理はステップS805に進み、制御用優先度nの通信情報を利用可能でない場合、処理はステップS808に進む。
【0129】
ステップS805において、携帯端末10の接続可否判断部13は制御用優先度nの通信情報を用いた通信を試みる。
【0130】
ステップS806において、携帯端末10の接続可否判断部13は制御用優先度nの通信情報を用いた通信ができたか否かを判断する。通信ができたかどうかの判断の方法はユースケース1,2により生じうる状況が異なるが、アクセスポイント7への接続が可能であるかどうかや、可能である場合には
図8のステップS702、S706の(1)~(3)の判断方法に基づいて判断すればよい。通信できた場合、処理はステップS807に進み、通信できない場合、処理はステップS808に進む。
【0131】
ステップS807において、携帯端末10の接続可否判断部13は、制御用優先度nの通信情報に対応する通信部15で通信すると判断する。
【0132】
ステップS808において、携帯端末10の接続可否判断部13は、制御変数nを1つ大きくする。この後、ステップS803以降の処理が繰り返される。
【0133】
ステップS809において、通信を試みた第1通信情報1100~第3通信情報1500では画像形成装置20と通信することができないので、携帯端末10の接続可否判断部13は、画像形成装置20と通信することはできないと判断する。
【0134】
このように、通信情報1000に優先度が登録されていることで、優先的に使用すべき通信情報を用いてユーザに通信させることができる。
【0135】
このような優先度による制御を行う場合、社内LANに接続するための通信情報の優先度は、P2Pのネットワークに接続するための全ての通信情報よりも高いことが好ましい。これにより、社員8を優先的に社内LANに接続させることができ、来客者9もP2Pネットワークに接続させることができる。ただし、P2Pのネットワークに接続するための通信情報の優先度が、社内LANに接続するための通信情報よりも高い場合でも、社員8と来客者9のいずれもP2Pのネットワークを介して通信することは可能である。
【0136】
また、このような優先度は、例えば、各ネットワークの通信帯域に応じて決定されるようにしてもよい。
【0137】
<<IPアドレスに基づいた接続の試みの優先制御>>
さらに、携帯端末10のIPアドレスと通信情報1000に含まれる画像形成装置20のIPアドレスとに基づいて、複数のネットワークのうちのいずれのネットワークを介して画像形成装置20との通信を試みるかを決定してもよい。例えば、携帯端末10のIPアドレスが「192.160.0.3」、ネットワークN1における画像形成装置20の第1IPアドレスが「192.168.20.1」、ネットワークN2における画像形成装置20の第2IPアドレスが「192.160.0.4」であるとする。この場合、サブネットワークアドレス部「192.160.0.0」が同一であるネットワークN2を介した通信を試みてからネットワークN1を介した通信を試みるように決定してもよい(この場合、ネットワークN2が社員用のネットワークであることが好ましい。)。
【0138】
このようにすることで、画像形成装置20とネットワークN2を介して通信する場合、同一サブネット内における通信になるため、ネットワークトラフィックの増加を防止することができる。
【0139】
<まとめ>
以上のように、本実施例に係る印刷システム1では、携帯端末10は情報媒体30から画像形成装置20と通信を行うための複数の通信情報を取得する。そして、携帯端末10は、これらの複数の通信情報のうちのいずれかの通信情報に基づき、画像形成装置20と通信を行い、印刷を行うことができる。すなわち、携帯端末10は、画像形成装置20と接続される複数のネットワークのうちのいずれかのネットワークを選択し、この選択されたネットワークを介して印刷ジョブを画像形成装置20に送信することで印刷を行うことができる。したがって、ユーザは、複数のネットワークのうちの1のネットワークを介して画像形成装置20と通信を行うことができなかった場合においても、他のネットワークを介して画像形成装置20と通信を行うための通信情報を自身の携帯端末10に改めて設定する必要はない。これにより、印刷システム1のユーザ及び管理の手間が軽減される。
【0140】
なお、情報取得部12は、取得手段の一例である。接続可否判断部13は、選択手段の一例である。通信部15は、通信手段の一例である。
【0141】
本発明は、具体的に開示された上記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
画像形成装置20が画像投影装置(プロジェクタ)などの装置でよいことは実施例1にて説明したが、本実施例では画像形成装置20が画像投影装置(プロジェクタ)である場合について説明する。
本明細書において、同一の符号を付した構成要素については、同様の機能を果たすので、一度説明した構成要素の説明を省略あるいは相違点についてのみ説明する場合がある。
画像投影装置22は、DLP(Digital Right Processing)方式や液晶方式で画像データを変調して、画像をスクリーンや壁などに投影する。画像データはネットワークN1又はN2を経由して携帯端末10から送信される。画像投影部23はDLP方式や液晶方式の投影エンジン、画像データに基づいて投影画像を生成する。
ステップS610において、携帯端末10の第1通信部151は、画像投影の要求を受け付けると、この画像投影の要求を画像投影装置22に対して送信する。すなわち、携帯端末10は、ネットワークN1(例えば無線LANを介して接続される社内LAN)を介して画像投影装置22に画像データを送信する。この画像データは例えば携帯端末10の表示装置102に現在、表示されている画像又はユーザが選択した画像から生成される。
ステップS611において、画像投影装置22の画像投影部23は、携帯端末10から画像投影の要求を受け付けるとこの画像を投影する。これにより、ユーザは、所望の画像を画像投影装置22で投影することができる。
ステップS613において、携帯端末10の第2通信部152は、画像投影の要求を受け付けると、この画像投影の要求を画像投影装置22に対して送信する。すなわち、携帯端末10は、ネットワークN2(例えばWi-Fi DirectによるP2P)を介して画像投影装置22に画像データを送信する。
ステップS614において、画像投影装置22の画像投影部23は、携帯端末10から画像投影の要求を受け付けると、この画像を投影する。これにより、ユーザは、所望の画像を画像投影装置22で投影することができる。
なお、携帯端末10が画像形成装置20に印刷させる場合、携帯端末10は印刷ジョブを画像形成装置20に送信すれば、携帯端末10は印刷完了まで待機すればよい。これに対し、携帯端末10が画像投影装置22に画像を投影させる場合、携帯端末10は複数回、画像を投影させる必要がある。
例えば、携帯端末10が表示装置102に表示している静止画を更新したり(画像を切り替えるほか、拡大・縮小・表示範囲の変更などが含まれる)ユーザが投影する画像を選択し直したりした場合、画像データを送信する。携帯端末10が表示装置102に動画を表示している場合、周期的に画像を取り込んで画像データを作成して送信する。なお、画像データのフォーマットはJPEG、TIFF、GIF、PNGなど、画像投影装置22が対応してればどのようなものでもよい。
また、携帯端末10は画像が含まれるファイルをそのまま送信してもよい。例えば、PDFファイル、MPEGファイルなどを送信できる。この場合、画像投影装置22はファイルを開いて画像に変換してから投影する。
以上説明したように、本実施例の印刷システムは、実施例1の効果に加え、携帯端末10と無線通信する適切なネットワークで通信し、画像データなど必要なデータを送信できる。