(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138121
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】チョコレート用油脂組成物及びチョコレート
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20240927BHJP
A23G 1/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A23D9/00 500
A23G1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024122031
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2022125911の分割
【原出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金丸 稚子
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 明
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 まどか
(57)【要約】
【課題】
良好な固化性及び口どけを有する共に、ブルームが発生し難いチョコレート及び該チョコレートを製造するためのチョコレート用油脂組成物を提供することにある。
【解決手段】
下記の条件(a)から(e)を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を25~55質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を30~60質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5~30質量%含有する。
(d)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量に対する飽和脂肪酸の含有量の質量比が4.0~7.0である。
(e)構成する脂肪酸残基の総炭素数が40~48のトリグリセリドを50~75質量%含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(a)から(e)を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を25~55質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を30~60質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5~30質量%含有する。
(d)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量に対する飽和脂肪酸の含有量の質量比が4.0~7.0である。
(e)構成する脂肪酸残基の総炭素数が40~48のトリグリセリドを50~75質量%含有する。
【請求項2】
下記の条件(f)を満たす請求項1に記載のチョコレート用油脂組成物。
(f)構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量に対するパルミチン酸の含有量の質量比が1.5~2.2である。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のチョコレート用油脂組成物を含有するチョコレート。
【請求項4】
チョコレートに含まれる油脂中に、前記チョコレート用油脂組成物を70質量%以上含有する請求項3に記載のチョコレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョコレート及び該チョコレートを製造するためのチョコレート用油脂組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
チョコレートは、油脂を骨格とした菓子であり、その油脂には通常カカオ豆由来のココアバターが使用される。ココアバターは価格が高いため、チョコレートを製造するための油脂には、植物油脂から製造されたココアバター代用脂が使用されることも多い。ココアバター代用脂は、ハードバターとも呼ばれており、ハードバターは、通常、テンパリング型ハードバターとノンテンパリング型ハードバターに分類される。
【0003】
テンパリング型ハードバターは、ココアバターと同様の対称型トリグリセリド(トリアシルグリセロール)を多く含む油脂から作られていることから、テンパリング型ハードバターの化学的組成、物理的性質はコアバターと類似している。そのため、テンパリング型ハードバターは、ココアバターとの相溶性が良く、ココアバターと自由に配合することができる。しかしながら、テンパリング型ハードバターは、ココアバターと同様に、チョコレートの製造時にテンパリング作業が必要である。
【0004】
一方、ノンテンパリング型ハードバターは、ココアバターと化学的組成が全く異なるが、ココアバターと融解挙動が類似する油脂から作られている。ノンテンパリング型ハードバターは、ココアバターと比べて価格が安価であり、チョコレート製造時に煩雑なテンパリング作業が不要で作業性も良いことから、チョコレート用油脂として広く使用されている。また、ノンテンパリング型ハードバターは、原料油脂によって、ラウリン酸型ハードバターと非ラウリン酸型ハードバターに分類される。
【0005】
非ラウリン酸型ハードバターとしては、パームオレイン、大豆油等の液状油の部分水素添加油や、該部分水素添加油を分別して得られる高融点部又は中融点部が使用されている。非ラウリン酸型ハードバターは、ココアバターとの相溶性がラウリン酸型よりは良いことから、ココアバターをラウリン酸型ハードバターよりも多く配合することができる。しかしながら、非ラウリン酸型ハードバターの融解性状は、ラウリン酸型ハードバターと比較してややシャープさに欠けることから、非ラウリン酸型ハードバターを使用したチョコレートは、シャープな口どけが得られない場合があった。
また、非ラウリン酸型ハードバターには、部分水素添加時に発生するトランス脂肪酸を多量に含有することから、トランス酸型ハードバターとも呼ばれている。多量のトランス脂肪酸を含有する非ラウリン酸型ハードバターは、トランス脂肪酸の健康への悪影響が認識されるようになって以来、使用が敬遠されている。このような背景から、トランス脂肪酸含有量が低減された非ラウリン酸型ハードバターの開発が進んでいる。しかしながら、トランス脂肪酸含有量が低減された非ラウリン酸型ハードバターは、固化速度が遅くなることがあり、トランス脂肪酸含有量が低減された非ラウリン酸型ハードバターを使用したチョコレートは、固化性の面で問題となることがあった。
【0006】
ラウリン酸型ハードバターとしては、パーム核ステアリンの極度硬化油等のラウリン系油脂の加工油脂が使用されている。ラウリン酸型ハードバターは、融解性状が極めてシャープであることから、ラウリン酸型ハードバターを使用したチョコレートは、シャープな口どけとなる。ラウリン酸型ハードバターを使用したチョコレートとしては、例えば、特許文献1~6のチョコレート等が提案されている。
一方、ラウリン酸型ハードバターは、ココアバターとの相溶性が極端に悪いことから、ラウリン酸型ハードバターを使用したチョコレートは、ココアバターを含むカカオマスの配合量を極力少なくしなければならず、カカオ風味に乏しいものであった。また、ラウリン酸型ハードバターを使用したチョコレートは、ココアバターとの相溶性が極端に悪いことから、ブルームが発生しやすいという問題もあった。
ラウリン酸型ハードバターのココアバターとの相溶性を改善するために、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂が、新たなラウリン酸型ハードバターとして開発されている。しかしながら、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂を使用したチョコレートは、ココアバターとの相溶性が改善し、ブルームが発生しにくくなるが、ラウリン酸型ハードバターの特徴である口どけが悪化したり、固化速度が遅くなり、固化性の面で問題となることがあった。
【0007】
以上のような背景から、良好な口どけ及び固化性を有すると共に、ブルームが発生し難いチョコレートを提供することが可能なチョコレート用油脂組成物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-108624号公報
【特許文献2】特開平11-318339号公報
【特許文献3】特開2000-226598号公報
【特許文献4】特開2003-299442号公報
【特許文献5】特開2008-271885号公報
【特許文献6】特開2009-17821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、良好な口どけ及び固化性を有すると共に、ブルームが発生し難いチョコレート及び該チョコレートを製造するためのチョコレート用油脂組成物を提供することにある。
口どけ
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、油脂組成物中に特定のトリグリセリド及び特定の脂肪酸を特定量含有させることにより、本課題が解決できることが見いだされた。これにより、本発明が完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の条件(a)から(e)を満たすチョコレート用油脂組成物。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を25~55質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を30~60質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5~30質量%含有する。
(d)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量に対する飽和脂肪酸の含有量の質量比が4.0~7.0である。
(e)構成する脂肪酸残基の総炭素数が40~48のトリグリセリドを50~75質量%含有する。
本発明の第2の発明は、下記の条件(f)を満たす第1の発明に記載のチョコレート用油脂組成物である。
(f)構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量に対するパルミチン酸の含有量の質量比が1.5~2.2である。
本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載のチョコレート用油脂組成物を含有するチョコレートである。
本発明の第4の発明は、チョコレートに含まれる油脂中に、前記チョコレート用油脂組成物を70質量%以上含有する第3の発明に記載のチョコレートである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、良好な口どけ及び固化性を有すると共に、ブルームが発生し難いチョコレート及び該チョコレートを製造するためのチョコレート用油脂組成物を提供することができる。
口どけ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、下記の条件(a)から(e)を満たす油脂組成物である。
(a)構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を25~55質量%含有する。
(b)構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を30~60質量%含有する。
(c)構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5~30質量%含有する。
(d)構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量に対する飽和脂肪酸の含有量の質量比が4.0~7.0である。
(e)構成する脂肪酸残基の総炭素数が40~48のトリグリセリドを50~75質量%含有する。
【0014】
本発明でチョコレートとは、「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会)乃至法規上の規定により限定されるものではなく、油脂、糖質を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー等)、乳製品、香料、乳化剤等を加え、チョコレート製造の工程(混合工程、微粒化工程、精練工程、調温工程、成形工程、冷却工程等の全部乃至一部)を経て製造され、油脂が連続相をなし、実質的に水を含まない(水分が好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。)食品のことである。また、本発明でチョコレートは、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレートのいずれであってもよい。
【0015】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数14以下の飽和脂肪酸を25~55質量%含有し、好ましくは27~53質量%含有し、より好ましくは30~50質量%含有する(条件(a))。以下、炭素数14以下の飽和脂肪酸は、C14以下SFAと記載することがある。
【0016】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数16~18の飽和脂肪酸を30~60質量%含有し、好ましくは32~58質量%含有し、より好ましくは35~55質量%含有する(条件(b))。以下、炭素数16~18の飽和脂肪酸は、C16~18SFAと記載することがある。
【0017】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、不飽和脂肪酸を5~30質量%含有し、好ましくは7~27質量%含有し、より好ましくは10~23質量%含有する(条件(c))。以下、不飽和脂肪酸は、USFAと記載することがある。
【0018】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量(質量%)に対する飽和脂肪酸の含有量(質量%)の質量比が、好ましくは4.0~7.0であり、より好ましくは4.1~6.0であり、さらに好ましくは4.2~5.5であり、最も好ましくは4.3~5.5である(条件(d))。以下、不飽和脂肪酸の含有量に対する飽和脂肪酸の含有量の質量比は、SFA/USFAと記載することがある。
【0019】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成する脂肪酸残基の総炭素数が40~48のトリグリセリドを50~75質量%含有し、好ましくは52~70質量%含有し、より好ましくは55~65質量%含有する(条件(e))。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が40~48のトリグリセリドは、C40~48TGと記載することがある。
【0020】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物が、上記条件(a)から(e)を満たすと、良好な口どけ及び固化性を有すると共に、ブルームが発生し難いチョコレートが得られる。
【0021】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量(質量%)に対するパルミチン酸の含有量(質量%)の質量比が、好ましくは1.5~2.2であり、より好ましくは1.6~2.1であり、さらに好ましくは1.7~2.1である(条件(f))。以下、ステアリン酸の含有量に対するパルミチン酸の含有量の質量比は、P/Stと記載することがある。また、ステアリン酸はSt、パルミチン酸はPと記載することがある。
【0022】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数10以下の飽和脂肪酸を好ましくは10質量%以下含有し、より好ましくは8質量%以下含有し、さらに好ましくは5質量%以下含有する。以下、炭素数10以下の飽和脂肪酸は、C10以下SFAと記載することがある。
【0023】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量(質量%)に対するラウリン酸の含有量(質量%)の質量比が、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.2~2.7であり、さらに好ましくは1.2~2.5である。以下、構成脂肪酸中のステアリン酸の含有量に対するラウリン酸の含有量の質量比は、La/Stと記載することがある。また、ラウリン酸はLaと記載することがある。
【0024】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、炭素数20~22の飽和脂肪酸を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。以下、炭素数20~22の飽和脂肪酸は、C20~22SFAと記載することがある。
【0025】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、飽和脂肪酸を好ましくは70~95質量%含有し、より好ましくは73~93質量%含有し、さらに好ましくは76~90質量%含有する。
【0026】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成脂肪酸として、トランス脂肪酸を好ましくは5質量%以下含有し、より好ましくは3質量%以下含有し、さらに好ましくは1質量%以下含有する。以下、トランス脂肪酸は、TFAと記載することがある。
【0027】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成する脂肪酸残基の総炭素数が34~38のトリグリセリドを好ましくは5~23質量%含有し、より好ましくは9~22質量%含有し、さらに好ましくは11~22質量%含有する。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が34~38のトリグリセリドは、C34~38TGと記載することがある。
【0028】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、構成する脂肪酸残基の総炭素数が58以上のトリグリセリドを好ましくは1質量%未満含有し、より好ましくは0.5質量%未満含有し、さらに好ましくは0.05質量%未満含有する。以下、構成する脂肪酸残基の総炭素数が58以上のトリグリセリドは、C58以上TGと記載することがある。
【0029】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造には、トリグリセリド組成、脂肪酸組成等が前記範囲であれば、特に制限されることなく、通常、チョコレートの製造に使用される油脂を使用することができる。油脂の具体例としては、ココアバター、パーム核油、ヤシ油、パーム油、パーム分別油(パーム中融点部、パームステアリン、パームオレイン等)、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂等や、これらの加工油脂(混合、分別、水素添加、エステル交換のうち、1以上の処理がなされた油脂)等が挙げられる。前記油脂は2種以上組み合せて使用することもできる。
【0030】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造には、好ましくはヨウ素価15~35のラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂、ヨウ素価10以下のラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂、非エステル交換ラウリン系油脂が使用される。
なお、本発明でラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂とは、ランダムエステル交換反応を行うことで得られる油脂であって、ランダムエステル交換反応に供する原料油脂として、ラウリン系油脂を含む油脂のことである。また、本発明でラウリン系油脂とは、油脂を構成する脂肪酸のうちラウリン酸が30質量%以上の油脂のことである。また、本発明で非エステル交換ラウリン系油脂とは、エステル交換反応を行っていないラウリン系油脂のことである。以下、ヨウ素価15~35のラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂は油脂Aとし、ヨウ素価10以下のラウリン系油脂のランダムエステル交換油脂は油脂Bとし、非エステル交換ラウリン系油脂は油脂Cとする。
【0031】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくは油脂Aを65~97質量%、油脂Bを0~37質量%、油脂Cを0~30質量%含有し、より好ましくは油脂Aを70~95質量%、油脂Bを0~30質量%、油脂Cを0~25質量%含有し、さらに好ましくは油脂Aを75~92質量%、油脂Bを0~25質量%、油脂Cを0~20質量%含有する。
【0032】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのランダムエステル交換油脂である。
なお、本発明で非ラウリン系油脂とは、ラウリン系油脂以外の油脂のことである。
また、ラウリン系油脂の具体例は、ヤシ油、パーム核油及びこれらの分別油、エステル交換油脂、硬化油等である。本発明でラウリン系油脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
前記油脂Aの製造に使用されるラウリン系油脂は、好ましくはパーム核油の極度硬化油である。
【0034】
前記油脂Aの製造に使用される非ラウリン系油脂は、好ましくはパーム系油脂である。
なお、本発明でパーム系油脂とは、パーム油及びパーム分別油等のパーム油の加工油脂のことである。また、本発明でパーム分別油のエステル交換油等のパーム分別油の加工油脂もパーム系油脂である。
また、パーム系油脂の具体例は、パーム油、パームオレイン、パームオレインのエステル交換油脂、パームステアリン、パーム中融点部(パームミッドフラクション(PMF))等である。本発明でパーム系油脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記油脂Aの製造に使用されるパーム系油脂は、好ましくはヨウ素価25~60のパーム系油脂であり、より好ましくはヨウ素価27~37のパームステアリン、ヨウ素価40~50のパーム中融点部である。
【0036】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、ヨウ素価が15~35であり、好ましくは18~30であり、さらに好ましくは20~28である。
【0037】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、ラウリン酸を好ましくは15質量%以上30質量%未満含有し、より好ましくは17質量%以上27質量%未満含有し、さらに好ましくは18質量%以上25質量%未満含有する。
【0038】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、パルミチン酸を好ましくは20質量%以上40質量%未満含有し、より好ましくは25質量%以上38質量%未満含有し、さらに好ましくは27質量%以上35質量%未満含有する。
【0039】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として、ステアリン酸を好ましくは5質量%以上25質量%未満含有し、より好ましくは8質量%以上20質量%未満含有し、さらに好ましくは10質量%以上17質量%未満含有する。
【0040】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、ランダムエステル交換反応を行う原料油脂のラウリン系油脂と非ラウリン系油脂との混合比(ラウリン系油脂:非ラウリン系油脂)が好ましくは質量比35:65~65:35であり、より好ましくは質量比40:60~60:40であり、さらに好ましくは質量比45:55~55:45である。
前記油脂Aを製造する時のランダムエステル交換の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行うことができる。
前記油脂Aを製造する時には、必要に応じて水素添加をランダムエステル交換の前後に行うこともできる。水素添加の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行うことができる。
【0041】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのランダムエステル交換油脂である。
【0042】
前記油脂Bの製造に使用されるラウリン系油脂は、好ましくはパーム核オレイン、パーム核オレインの極度硬化油である。
【0043】
前記油脂Bの製造に使用される非ラウリン系油脂は、好ましくはパーム系油脂である。
前記油脂Bの製造に使用されるパーム系油脂は、好ましくはヨウ素価25~60のパーム系油脂であり、より好ましくはヨウ素価27~37のパームステアリンである。
【0044】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、ヨウ素価が10以下であり、好ましくは5以下であり、さらに好ましくは1以下である。
【0045】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、ラウリン酸を好ましくは15質量%以上30質量%未満含有し、より好ましくは17質量%以上27質量%未満含有し、さらに好ましくは18質量%以上25質量%未満含有する。
【0046】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、パルミチン酸を好ましくは20質量%以上40質量%未満含有し、より好ましくは25質量%以上38質量%未満含有し、さらに好ましくは27質量%以上35質量%未満含有する。
【0047】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として、ステアリン酸を好ましくは25質量%以上45質量%未満含有し、より好ましくは30質量%以上40質量%未満含有し、さらに好ましくは32質量%以上38質量%未満含有する。
【0048】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、ランダムエステル交換反応を行う原料油脂のラウリン系油脂と非ラウリン系油脂との混合比(ラウリン系油脂:非ラウリン系油脂)が好ましくは質量比35:65~65:35であり、より好ましくは質量比40:60~60:40であり、さらに好ましくは質量比45:55~55:45である。
前記油脂Bを製造する時のランダムエステル交換の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行うことができる。
前記油脂Bを製造する時には、必要に応じて水素添加を行うこともできる。水素添加の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法により行うことができる。
【0049】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cの具体例は、ヤシ油、パーム核油及びこれらの分別油、硬化油等である。前記油脂Cは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される油脂Cは、上昇融点が好ましくは25~50℃であり、より好ましくは30~45℃であり、さらに好ましくは32~43℃である。
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、好ましくはラウリン系油脂の極度硬化油であり、より好ましくはパーム核油の極度硬化油、パーム核ステアリンの極度硬化油である。
【0050】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、固体脂含量(以下、SFCとする。)が、好ましくは10℃で60~90%、20℃で45~80%、30℃で15~55%であり、より好ましくは10℃で65~85%、20℃で48~75%、30℃で20~50%であり、さらに好ましくは10℃で68~80%、20℃で50~70%、30℃で25~48%である。
【0051】
本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物は、好ましくはノンテンパリング型ハードバターであり、より好ましくはノンテンパリング型のラウリン酸型ハードバターである。
【0052】
油脂の脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定することができる。
油脂のトリグリセリド含有量は、AOCS Ce5-86に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定することができる。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
油脂の上昇融点は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に準じて測定することができる。
油脂のSFCは、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定することができる。
【0053】
本発明の実施の形態のチョコレートは、本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物を含有する。
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中に、本発明の実施の形態のチョコレート用油脂組成物を好ましくは70質量%以上含有し、より好ましく75質量%以上含有し、さらに好ましくは80~95質量%含有する。
なお、本発明でチョコレートに含まれる油脂とは、チョコレートに含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分である。例えば、チョコレートがカカオマス、全脂粉乳、油脂aを含む場合、油脂は、カカオマスに含まれるココアバターと、全脂粉乳に含まれる乳脂と、油脂aとの混合油である。すなわち、本発明でチョコレートに含まれる油脂は、チョコレートに配合される油脂の他に、含油原料(カカオマス、ココアパウダー、全脂粉乳等)に含まれる油脂(ココアバター、乳脂等)を含む。
【0054】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはココアバターを含有する。
本発明の実施の形態のチョコレートは、チョコレートに含まれる油脂中に、ココアバターを好ましくは20質量%以下含有し、より好ましく17質量%以下含有し、さらに好ましくは15質量%以下含有し、最も好ましくは5~15質量%含有する。
本発明でココアバターは、チョコレートに配合されるココアバターの他に、ココアバターを含有するカカオマスやココアパウダー等のカカオ原料中のココアバターも含む。
【0055】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂を好ましくは25~60質量%含有し、より好ましくは25~50質量%含有し、さらに好ましくは28~45質量%含有する。
【0056】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは糖質を含有する。なお、本発明で糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。糖質の具体例は、糖類、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。また、本発明で、糖類は、単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等)のことである。また、本発明で糖質は、糖質そのものであり、その他の原材料(例えば、粉乳等)に含まれる糖質は含めない。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖、乳糖である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、糖質を好ましくは20~60質量%含有し、より好ましくは23~55質量%含有し、さらに好ましくは25~50質量%含有する。
【0057】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはカカオ成分を含有する。なお、本発明でカカオ成分とは、カカオ豆から得られるカカオ原料のうち、油脂以外の固形分を含むカカオ原料のことである。カカオ成分の具体例は、カカオマス、ココアパウダー等である。
本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用されるカカオ成分は、好ましくはカカオマス、ココアパウダーである。
本発明の実施の形態のチョコレートは、カカオ成分を好ましくは0~35質量%含有し、より好ましくは5~30質量%含有し、さらに好ましくは10~25質量%含有する。
【0058】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは粉乳を含有する。粉乳の具体例は、脱脂粉乳、全脂粉乳等である。本発明の実施の形態のチョコレートの製造に使用される粉乳は、好ましくは脱脂粉乳、全脂粉乳である。
本発明の実施の形態のチョコレートは、粉乳を好ましくは0~30質量%含有し、より好ましくは0~25質量%含有し、さらに好ましくは0~20質量%含有する。
【0059】
本発明の実施の形態のチョコレートは、油脂、糖質、カカオ成分、粉乳以外にも、チョコレートに一般的に配合される原料を使用することができる。具体的には、例えば、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等)、大豆粉、大豆蛋白、果実加工品、野菜加工品、抹茶粉末、コーヒー粉末等の各種粉末、ガム類、澱粉類、酸化防止剤、着色料、香料等を使用することができる。
【0060】
本発明の実施の形態のチョコレートは、従来公知のチョコレートの製造方法で製造することができる。本発明の実施の形態のチョコレートは、例えば、油脂、カカオ成分、糖質、乳製品、乳化剤等を原料として、混合工程、微粒化工程(リファイニング)、精練工程(コンチング)、冷却工程等を経て製造することができる。また、本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくは微粒化工程を経て製造される。
【0061】
本発明の実施の形態のチョコレートは、好ましくはノンテンパリング型のチョコレートである。
【0062】
本発明の実施の形態のチョコレートは、被覆チョコレート、フィリングチョコレート、ソフトチョコレート(チョコレートクリーム)等として利用することができる。
【0063】
本発明の実施の形態のチョコレートは、良好な口どけ及び固化性を有すると共に、ブルームが発生し難い。
【0064】
本発明の実施の形態のチョコレートは、ブルームが発生し難いことから、本発明の実施の形態のチョコレートを使用した商品は、賞味期限の延長が期待できる。そのため、本発明の実施の形態のチョコレートは、フードロス問題の改善にも期待できる。
【0065】
本発明の実施の形態の複合食品は、本発明の実施の形態のチョコレートと食品とからな複合食品である。本発明で、食品は、チョコレート以外の食品のことである。
【0066】
本発明の実施の形態の複合食品の製造に使用される食品の具体例は、例えば、食パン、塩パン、コッペパン、フルーツブレッド、バターロール、フランスパン、ロールパン、菓子パン、スイートドウ、マフィン、ブリオッシュ、フォカッチャベーグル、クロワッサン、デニッシュペーストリー等のパン類、ドーナツ、カステラ、ワッフル、ボーロ、八つ橋、せんべい、かりんとう、スポンジケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ、バウムクーヘン、フルーツケーキ、マドレーヌ、シュトーレン、シュー、エクレア、ミルフィーユ、パイ、タルト、マカロン、ビスケット、クッキー、クラッカー、サブレ、ラングドシャ、蒸しパン、プレッツェル、ウエハース、ポテトチップス、スナック菓子、クレープ、スフレ、乾パン等の菓子類、バナナ、りんご、イチゴ等の果物等である。
【0067】
本発明の実施の形態の複合食品は、従来公知の方法で、チョコレートと食品とを組み合わせることで製造することができる。本発明の実施の形態のチョコレートと食品とを組み合わせる方法は、被覆、注入、巻く、挟む、付着、練り込み等が挙げられる。
【実施例0068】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
〔油脂の脂肪酸の分析方法〕
油脂の脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定した。
〔油脂のトリグリセリドの分析方法〕
油脂のトリグリセリド含有量は、AOCS Ce5-86に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定した。
〔油脂のヨウ素価の測定方法〕
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
〔油脂の上昇融点の測定方法〕
油脂の上昇融点は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
〔油脂のSFCの測定方法〕
油脂のSFCは、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の2.2.9-2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定した。
【0069】
〔油脂A1の製造〕
パームステアリン(ヨウ素価:32)15質量部とパーム中融点部(ヨウ素価:45)35質量部とパーム核油の極度硬化油(ラウリン酸含有量:48.4質量%)50質量部を混合した。得られた混合油に、ランダムエステル交換反応を行うことにより、油脂A1(ヨウ素価:23、ラウリン酸含有量:23.7質量%、パルミチン酸含有量:30.4質量%、ステアリン酸含有量:13.4質量%)を得た。
エステル交換反応は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。反応は50質量%のクエン酸水溶液を添加して中和することで終了し、その後等量の熱湯で3回洗浄して脱水乾燥し、常法により脱色、脱臭してエステル交換油脂とした。
【0070】
〔油脂B1の製造〕
パーム核オレイン(ラウリン酸含有量:41質量%)50質量部とパームステアリン(ヨウ素価:32)50質量部とを混合した。得られた混合油に、ランダムエステル交換反応を行った後、ヨウ素価が2以下になるまで水素添加を行うことにより、油脂A2(ヨウ素価:1未満、ラウリン酸含有量:20.3質量%、パルミチン酸含有量:33.5質量%、ステアリン酸含有量:34.9質量%)を得た。
エステル交換反応は、油脂A1と同様の方法で行った。
水素添加反応は、ニッケル触媒を用いて160~200℃にて、ヨウ素価が2以下になるまで行った。水素添加反応が終了後、ニッケル触媒をろ過により除去し、脱色、脱臭を行うことで、極度硬化油を得た。
【0071】
〔油脂C1〕
パーム核油の極度硬化油(ラウリン酸含有量:45.7質量%、上昇融点:39.1℃)を油脂C1とした。
〔油脂C2〕
パーム核ステアリンの極度硬化油(ラウリン酸含有量:53.9質量%、上昇融点:35.6℃)を油脂C2とした。
【0072】
〔油脂組成物の製造〕
表1~2に示す配合で融解させた油脂を混合することで、油脂組成物を製造した。
得られた油脂組成物の脂肪酸含有量、トリグリセリド含有量を前述の分析方法に従って測定した。測定結果を表1~2に示した。なお、油脂組成物の配合及び含有量の単位は質量%であり(質量比の単位はなし)、油脂組成物のSFCの単位は%である。
【0073】
【0074】
【0075】
〔チョコレートの製造〕
実施例1~5の油脂組成物、比較例1、2の油脂組成物を使用して表3に示された配合1のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で、テンパリング及びシーディングを行わずに製造した(配合及び含有量の単位は質量%である。)。また、実施例2の油脂組成物を使用して表3に示された配合2のチョコレートを、通常のチョコレートの製造方法(混合、微粒化、精練、冷却)で製造した(配合及び含有量の単位は質量%である。)で、テンパリング及びシーディングを行わずに製造した。得られた全てのチョコレートは、水分含有量が3質量%以下であった。
【0076】
【0077】
〔口どけの評価〕
5g型で成型されたチョコレートを、4名の専門パネルが食し、下記評価基準に従って点数を付けた。4名の専門パネルの平均点を算出し、下記評価基準に従って評価した。評価結果は、平均点の評価が◎、○又は△の場合、良好な口どけを有していると判断した。なお、チョコレートの口どけを評価した専門パネルは、チョコレートの口どけ等の官能評価の訓練を定期的に受けており、チョコレートの口どけ等の官能評価結果に個人差が少ない。
3点:シャープで一体感のある口どけと、良好なフレーバーリリースが感じられる
2点:一体感のある口どけと、良好なフレーバーリリースが感じられる
1点:全体的に口どけが遅い傾向にあるものの、フレーバーリリースは感じられる
0点:トップから口どけが非常に遅く、フレーバーリリースも悪い
<平均点>
◎ :2.5点以上
○ :2.0点以上2.5点未満
△ :1.5点以上2.0点未満
× :1.5点未満
【0078】
〔固化性の評価〕
45℃に調温したチョコレートを、直径9cmのシャーレに16g充填し、シャーレ内へ均一に分散させた後、20℃に調温された部屋で、チョコレートの固化を経時的に観察した。チョコレートの固化性の評価は、固化開始時間と固化終了時間を測定すると共に、下記評価基準に従って総合評価した。なお、固化開始時間は、指でチョコレートを触ったときに、チョコレートの角が立ち始めた時間とし、固化終了時間は、指でチョコレートを触ったときに、チョコレート表面がえぐれなくなった時間とした。総合評価の評価結果は、評価が◎、○又は△の場合、良好な固化性を有していると判断した。
<総合評価の評価基準>
◎:4分00秒以内に固化終了
○:4分00秒以内に固化開始かつ5分00秒以内に固化終了
△:4分30秒以内に固化開始かつ5分30秒以内に固化終了
×:4分30秒以降に固化開始
【0079】
〔ブルームの評価〕
5g型で成型されたチョコレートを、20℃で1か月間保存し、ブルームの発生の有無を目視にて観察した。評価結果は、ブルームが発生していない場合を○、ブルームが発生した場合を×とした。
【0080】
【0081】
【0082】
表4、5から分かるように、実施例のチョコレートは、良好な固化性及び口どけを有する共に、ブルームが発生し難かった。
一方、表5から分かるように、比較例3のチョコレートは、口どけが悪かった。また、比較例4のチョコレートは、固化性が満足できるものではなかった。