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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138229
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20241001BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/66 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/48
H01M10/052
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024049759
(22)【出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】10-2023-0039378
(32)【優先日】2023-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0072376
(32)【優先日】2023-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 寅赫
(72)【発明者】
【氏名】李 智恩
(72)【発明者】
【氏名】朴 泰鉉
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲スン▼任
(72)【発明者】
【氏名】沈 揆恩
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE07
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL11
5H029AM12
5H029BJ12
5H029DJ07
5H029DJ13
5H029EJ07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ13
5H029HJ19
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB11
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050FA13
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】全固体二次電池を提供する。
【解決手段】正極層;負極層;及び正極層と負極層の間に配置される固体電解質層を含み、正極層が正極集電体;及び正極活物質層を含み、固体電解質層が硫化物系固体電解質を含み、負極層が負極集電体;第1負極活物質層;及び負極集電体と第1負極活物質層との間に配置される第1保護層を含み、第1負極活物質層が炭素系材料マトリックス、及び炭素系材料マトリックス内に配置された金属系負極活物質を含み、炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、第1保護層が第2炭素系ナノ構造体を含む、全固体二次電池が提示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、及び前記正極層と前記負極層との間の固体電解質層を含み、
前記正極層が正極集電体及び正極活物質層を含み、前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含み、
前記負極層が負極集電体、第1負極活物質層、及び前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に配置される第1保護層を含み、
前記第1負極活物質層が炭素系材料マトリックス及び前記炭素系材料マトリックス内の金属系負極活物質を含み、
前記炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、前記第1保護層が第2炭素系ナノ構造体を含む、全固体二次電池。
【請求項2】
前記第1炭素系ナノ構造体が2次元炭素系ナノ構造体を含み、
前記2次元炭素系ナノ構造体がグラフェン、グラフェン酸化物(graphene oxide)、還元されたグラフェン酸化物(reduced graphene oxide)またはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項3】
前記炭素系材料マトリックスが前記負極集電体の表面に対して一定方向に整列される(arranged)第1炭素系ナノ構造体を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記炭素系材料マトリックスが不規則に整列される第1炭素系ナノ構造体を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記炭素系材料マトリックスが結晶質炭素(crystallline carbon)、非晶質炭素(amorphous carbon)またはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記炭素系材料マトリックスが気孔をさらに含み、前記炭素系材料マトリックスがリチウムホスト(lithium host)である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記金属系負極活物質が、
コア、及び前記前記コアの表面に沿って配置されるシェルを含み、
前記コアがリチウムと合金または化合物を形成する金属を含み、前記シェルが炭素系材料を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記金属が金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、またはそれらの組合わせから選択された合金形成元素を含む、請求項7に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記シェルが第3炭素系ナノ構造体を含むか、または前記シェルが非晶質炭素(amorphous carbon)を含む、請求項7に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記金属系負極活物質が粒子状を有し、コアの粒径が10nm~500nmであり、前記シェルの厚さが50nm以下である、請求項7に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記金属系負極活物質の含量が、前記炭素系材料マトリックス100重量部に対して10重量部以下である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
前記第1負極活物質層の厚さが20μm以下であり、前記第1負極活物質層ではバインダが不在(free)であり、
前記第1負極活物質層の充電容量C1と前記正極活物質層の充電容量C2との比(ratio)C1/C2が0.001~0.45であり、
前記第1負極活物質層の厚さが前記第1保護層の厚さよりもさらに大きく、
前記負極層に対するラマンスペクトルで非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(I)のピーク強度の比率(I/I)が0.01~5である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記第2炭素系ナノ構造体が2次元炭素系ナノ構造体を含み、
前記2次元炭素系ナノ構造体がグラフェン、グラフェン酸化物(graphene oxide)、還元されたグラフェン酸化物(reduced graphene oxide)またはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
前記第1保護層が前記負極集電体表面に対して一定方向に整列される(arranged)第2炭素系ナノ構造体を含み、
前記第2炭素系ナノ構造体が負極集電体表面に対して平行な方向に整列されるか、または前記負極集電体表面から突出する方向に整列されて、
前記第2炭素系ナノ構造体が前記第1保護層の厚さ方向に沿って積層され、前記第2炭素系ナノ構造体が100層以下に積層される、請求項13に記載の全固体二次電池。
【請求項15】
前記第1保護層が前記負極集電体上に直接配置され、前記第1保護層が硫化物系固体電解質に対して不活性(inert)であり、
前記第1保護層の厚さが2μm以下であり、前記第1保護層ではバインダが不在(free)である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項16】
前記固体電解質層と前記負極集電体との間に第2負極活物質層をさらに含み、
前記第2負極活物質層が前記第1負極活物質層と前記第1保護層との間、及び前記第1負極活物質層と前記固体電解質層との間の1つ以上に配置され、
前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項17】
前記負極集電体がインジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)またはそれらの合金を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項18】
前記正極集電体及び負極集電体のうち1つ以上がベースフィルム及び前記ベースフィルムの一面または両面上に金属層を含み、
前記ベースフィルムが高分子を含み、前記高分子がポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)またはそれらの組合わせを含み、
前記金属層がインジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項19】
前記正極層の一側面上に配置された不活性部材(inactive member)をさらに含み、
前記不活性部材が、前記正極層の側面に沿って前記正極層を取り囲み、
前記不活性部材が、前記固体電解質層上で前記不活性部材の位置を決定するように構成された位置決め部を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項20】
前記正極活物質層が正極活物質を含み、
前記正極活物質が酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質またはそれらの組合わせを含み、
前記酸化物系正極活物質がリチウム遷移金属酸化物、金属酸化物またはそれらの組合わせを含み、前記リチウム遷移金属酸化物がリチウムコバルト酸化物(Lithium cobalt oxide)、リチウムニッケル酸化物(Lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(Lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(Lithium nickel cobalt aluminium oxide)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(Lithium nickel cobalt mangense oxide)、リチウムマンガン酸化物(Lithium Manganate)、リチウム鉄リン酸化物(Lithium iron phosphate)、またはそれらの組合わせを含み、前記金属酸化物が酸化鉄(iron oxide)、酸化バナジウム(vanadium oxide)またはそれらの組合わせを含み、
前記硫化物系正極活物質が硫化ニッケル(nickel sulfide)、硫化銅(copper sulfide)、LiS、LiS含有複合体またはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、増加したエネルギー密度と安全性とを提供する電池の開発が活発である。リチウム電池は、情報機器、通信機器、自動車などで使用される。自動車は、生命と係わっているので、安全性が重要である。
【0003】
液体電解質を含むリチウム電池は、可燃性有機溶媒を含む。液体電解質を含むリチウム電池は、短絡時に過熱及び火災の可能性が高い。
【0004】
固体電解質は、液体電解質に比べて短絡時に減少した過熱及び火事の可能性を有する。固体電解質を含むリチウム電池は、液体電解質を含むリチウム電池に比べて向上した安全性を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
硫化物系固体電解質は、負極集電体と反応して副反応を起こしやすい。例えば、充放電過程で硫化物系固体電解質は、銅集電体と接触する場合、硫化物系固体電解質と銅集電体との副反応がリチウム電池の寿命を低下させうる。したがって、硫化物系固体電解質と負極集電体との接触を遮断する方法が要求される。
【0006】
固体電解質層と負極集電体との間に湿式に配置される負極活物質層は、均一な厚さを形成し難い。負極活物質層の厚さ偏差によって負極活物質層と負極集電体との間に不均一なリチウム析出及びリチウムデンドライトの成長などが惹起されうる。このような不均一なリチウム析出及び/またはリチウムデンドライトの成長によってリチウム電池の短絡が発生しうる。負極活物質層の厚さ偏差を減少させる方法が要求される。
【0007】
固体電解質層と負極集電体との間に湿式配置される負極活物質層は、乾燥過程において負極活物質層内で負極活物質の凝集が形成されやすい。凝集された負極活物質によって負極活物質層内に不均一な電流密度が形成されうる。不均一な電流密度によって負極活物質層と負極集電体との間に不均一なリチウム析出及び/またはリチウムデンドライトの成長が惹起されうる。このような不均一なリチウム析出及び/またはリチウムデンドライトの成長によってリチウム電池の短絡が発生しうる。負極活物質層内で負極活物質の凝集を抑制する方法が要求される。
【0008】
一側面は、新たな構造の全固体二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面によって、正極層;負極層;及び前記正極層と前記負極層の間に配置される固体電解質層を含み、前記正極層が正極集電体;及び正極活物質層を含み、前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含み、前記負極層が負極集電体;第1負極活物質層;及び前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に配置される第1保護層を含み、前記第1負極活物質層が炭素系材料マトリックス及び前記炭素系材料マトリックス内に配置された金属系負極活物質を含み、前記炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、前記第1保護層が第2炭素系ナノ構造体を含む、全固体二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0010】
一側面による新たな構造を有する全固体二次電池によれば、負極活物質層厚さの均一性が向上し、負極活物質の凝集が抑制されることにより、短絡が抑制されてサイクル特性が向上した全固体二次電池を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】例示的な具現例による全固体二次電池の断面図である。
図2】例示的な具現例によるバイセル(bi-cell)全固体二次電池の断面図である。
図3】例示的な具現例による全固体二次電池の断面図である。
図4】例示的な具現例による全固体二次電池の断面図である。
図5】例示的な具現例によるバイセル(bi-cell)全固体二次電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多様な具現例が添付図面に図示された。しかし、本創意的思想は、様々な他の形態に具体化され、本明細書に説明された具現例に限定されると解釈されてはならない。むしろ、それらの実施例は、本開示が徹底的であって完全になされるように提供され、当該技術分野で通常の知識を有する者に本創意的思想の範囲を十分に伝達するであろう。同じ図面符号は、同じ構成要素を指称する。
【0013】
ある構成要素が他の構成要素の「上に」あると言及されるとき、他の構成要素の直上に位置するか、その間に他の構成要素が介在される可能性があるということを理解するであろう。対照的に、構成要素が他の構成要素の「直接上に」あると言及されるとき、その間に構成要素が介在されない。
【0014】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書で多様な構成要素、成分、領域、層及び/または区域を説明するために使用されうるが、それらの構成要素、成分、領域、層及び/または区域は、それらの用語によって制限されてならない。それらの用語は、1つの構成要素、成分、領域、層または区域を他の要素、成分、領域、層または区域と区別するために使用される。したがって、以下で説明される第1構成要素、成分、領域、層または区域は、本明細書の教示を外れずに、第2構成要素、成分、領域、層または区域と指称されうる。
【0015】
本明細書で使用された用語は、特定の具現例のみを説明するためのものであり、本創意的思想を制限しようとするものではない。本願で使用された単数形態は、内容が明確に異なって指示しない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形態を含む。「少なくとも1つ」は、単数に制限すると解釈されてはならない。本明細書で使用されたように、「及び/または」の用語は、リスト項目のうち、1以上の任意の全ての組合わせを含む。詳細な説明で使用された「含む」及び/または「有する」の用語は、明示された特徴、領域、整数、段階、動作、構成要素及び/または成分の存在を特定し、1つ以上の他の特徴、領域、整数、段階、動作、構成要素、成分及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0016】
「下」、「下側」、「下部」、「上」、「上側」、「上部」のような空間的に相対的な用語は、1つの構成要素、または特徴の他の構成要素、または特徴に係わる関係を容易に記述するために、ここで使用されうる。空間的に相対的な用語は、図面に図示された方向に、使用または作動時に装置の互いに異なる方向をさらに含むように意図されていると理解されるであろう。例えば、図面の装置が逆さまにされれば、他の構成要素または特徴の「下」または「下部」と記述された構成要素は、他の構成要素または特徴の「上」に配向される。したがって、例示的な用語「下部」は、上下方向をいずれも包括する。前記装置は、他の方向に配置され(90°回転されるか、他の方向に回転される)、本明細書で使用される空間的に相対的な用語は、それによって解釈されうる。
【0017】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の通常の知識を有する者によって一般的に理解されるところと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されたような用語は、関連技術及び本開示内容の文脈内のその意味と一致する意味を有すると解釈されねばならず、理想化されるか、過度に形式的な意味として解釈されてはならないということも理解されるであろう。
【0018】
例示的な具現例が、理想化された具現例の概略図である断面図を参照して、本明細書で説明される。このように、例えば、製造技術及び/または許容誤差のような結果として図示の形状からの変形が予想されねばならない。したがって、本明細書に記述された実施例は、本明細書に図示されたような領域の特定形状に制限されると解釈されてならず、例えば、製造から惹起される形状の偏差を含まなければならない。例えば、扁平状に図示されるか、記述された領域は、典型的に粗く、及び/または非線形特徴を有しうる。さらに、鋭く図示された角は丸くもある。したがって、図面に図示された領域は、本質的に概略的であり、その形状は、領域の正確な形状を図示するためではなく、本請求項の範囲を制限しようとするものではない。
【0019】
「族」は、国際純正・応用化学連合(「IUPAC」)1-18族の族分類システムによる元素周期律表のグループを意味する。
【0020】
本開示において「粒径」は、粒子が球形である場合、平均直径を示し、粒子が非球状である場合には、平均長軸長を示す。粒径は、粒子サイズ分析器(particle size analyzer(PSA))を用いて測定する。「粒径」は、例えば、平均粒径である。「平均粒径」は、例えば、メジアン粒径であるD50である。
【0021】
D50は、レーザー回折法で測定される粒子サイズ分布において小さな粒子サイズを有する粒子側から計算して50%累積体積に該当する粒子の大きさである。
【0022】
D90は、レーザー回折法で測定される粒子サイズ分布で小さな粒子サイズを有する粒子側から計算して90%累積体積に該当する粒子の大きさである。
【0023】
D10は、レーザー回折法で測定される粒子サイズ分布で小さな粒子サイズを有する粒子側から計算して10%累積体積に該当する粒子の大きさである。
【0024】
一方、本開示において「粒径」は、全固体二次電池断面の走査電子顕微鏡及び/または透過電子顕微鏡イメージからマニュアルによってまたはソフトウェアによって測定され、前記イメージに示される複数の粒子の粒径の算術平均値である。
【0025】
本開示において「金属」は、元素状態またはイオン状態で、金属と、ケイ素及びゲルマニウムのような半金属(metalloid)とをいずれも含む。
【0026】
本開示において「合金」は、2以上の金属の混合物を意味する。
【0027】
本開示において「電極活物質」は、リチウム化及び脱リチウムを経る電極材料を意味する。
【0028】
本開示において「正極活物質」は、リチウム化及び脱リチウムを経る正極材料を意味する。
【0029】
本開示において「負極活物質」は、リチウム化及び脱リチウムを経る負極材料を意味する。
【0030】
本開示において「リチウム化」及び「リチウム化する」とは、リチウムを電極活物質に付け加える過程を意味する。
【0031】
本開示において「脱リチウム」及び「脱リチウム化する」とは、電極活物質からリチウムを除去する過程を意味する。
【0032】
本開示において「充電」及び「充電する」とは、電池に電気化学的エネルギーを提供する過程を意味する。
【0033】
本開示において「放電」及び「放電する」とは、電池から電気化学的エネルギーを除去する過程を意味する。
【0034】
本開示において「正極」及び「カソード」は、放電過程の間に電気化学的還元及びリチウム化が起こる電極を意味する。
【0035】
本開示において「負極」及び「アノード」は、放電過程の間に電気化学的酸化及び脱リチウムが起こる電極を意味する。
【0036】
特定の具現例が記述されたが、現在予想されないか、予想することができない代替物、修正、変形、改善及び実質的な均等物が出願人または当業者に発生しうる。したがって、出願された特許請求の範囲及び修正される可能性のあるものは、そのような代替物、修正、変形、改善及び実質的な均等物をいずれも含むということを意図する。
【0037】
以下、例示的な具現例による全固体二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0038】
[全固体二次電池]
一具現例による全固体二次電池は、正極層;負極層;及び前記正極層と前記負極層との間に配置される固体電解質層を含み、前記正極層が正極集電体;及び正極活物質層を含み、前記固体電解質層が硫化物系固体電解質を含み、前記負極層が負極集電体;第1負極活物質層;及び前記負極集電体と前記第1負極活物質層の間に配置される第1保護層を含み、前記第1負極活物質層が炭素系材料マトリックス及び前記炭素系材料マトリックス内に配置された金属系負極活物質を含み、前記炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、前記第1保護層が第2炭素系ナノ構造体を含む。
【0039】
第1負極活物質層が乾式で配置される炭素系ナノ構造体を含むことにより、湿式負極活物質層で発生する負極活物質層の厚さ不均一、負極活物質の凝集などの欠陥を防止するこができる。全固体二次電池がそのような第1負極活物質層を含むことにより、充放電過程で不均一なリチウム析出及び/またはリチウムデンドライトの成長が抑制される。結果として、全固体二次電池の短絡が抑制され、寿命特性が向上する。全固体二次電池が第1保護層を含むことにより、硫化物系固体電解質と負極集電体との接触による副反応が抑制される。結果として、電極反応の可逆性が向上し、全固体二次電池の寿命特性が向上する。
【0040】
図1ないし図5を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10;負極層20;及び正極層10と負極層20との間に配置される固体電解質層30を含み、正極層10が正極集電体11;及び正極活物質層12を含み、固体電解質層30が硫化物系固体電解質を含み、負極層20が負極集電体21;第1負極活物質層22;及び負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第1保護層23を含み、第1負極活物質層22が炭素系材料マトリックス及び前記炭素系材料マトリックス内に配置された金属系負極活物質を含み、前記炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、第1保護層23が第2炭素系ナノ構造体を含む。
【0041】
[負極層]
[負極層:炭素系材料マトリックス]
図1ないし図5を参照すれば、負極層20,20a,20bは、負極集電体21;第1負極活物質層22,22a,22b;及び負極集電体21,21a,21bと第1負極活物質層22との間に配置される第1保護層23、23a、23bを含む。第1負極活物質層22は、炭素系材料マトリックス及び前記炭素系材料マトリックス内に配置された金属系負極活物質を含む。
【0042】
第1負極活物質層22は、炭素系材料マトリックスを含む。炭素系材料マトリックスは、第1炭素系ナノ構造体を含む。炭素系ナノ構造体は、ナノサイズのディメンションを有し、炭素系材料からなる構造体である。炭素系ナノ構造体は、例えば、1次元炭素系ナノ構造体、2次元炭素系ナノ構造体、3次元炭素系ナノ構造体またはそれらの組合わせを含みうる。1次元炭素系ナノ構造体は、例えば、炭素ナノロッド、ナノファイバ、炭素ナノチューブまたはそれらの組合わせを含みうる。2次元炭素系ナノ構造体は、例えば、炭素ナノシート、炭素ナノベルト、炭素ナノフレーク、グラフェン(graphene)、グラフェン酸化物(graphene oxide, GO)、還元されたグラフェン酸化物(reduced graphene oxide, rGO)またはそれらの組合わせを含みうる。3次元炭素系ナノ構造体は、複数の1次元炭素系ナノ構造体及び/または2次元炭素系ナノ構造体が連結されるか、積層された構造でもある。第1炭素系ナノ構造体は、例えば、2次元炭素系ナノ構造体を含みうる。第1炭素系ナノ構造体は、例えば、グラフェン(graphene)、グラフェン酸化物(graphene oxide, GO)、還元されたグラフェン酸化物(reduced graphene oxide, rGO)またはそれらの組合わせを含みうる。
【0043】
炭素系材料マトリックスは、例えば、一定方向に整列(arranged)された第1炭素系ナノ構造体を含みうる。第1炭素系ナノ構造体は、例えば、グラフェンを含みうる。炭素系材料マトリックスは一定方向に整列(arranged)されたグラフェンを含みうる。炭素系材料マトリックスは、例えば、負極集電体21の表面に対して平行な方向に整列された第1炭素系ナノ構造体を含みうる。炭素系材料マトリックスは、例えば、グラフェンを含みうる。炭素系材料マトリックスは負極集電体21の表面に対して平行な方向に整列されたグラフェンを含みうる。グラフェンは、例えば、負極集電体21の表面に対して-30°~30°、-20°~20°、-10°~10°、または-5°~5°角度をなして整列されうる。炭素系材料マトリックス内で第1炭素系ナノ構造体が負極集電体21の表面に平行な方向に整列されることにより、第1負極活物質層22を介したリチウムデンドライトの成長をさらに効果的に抑制しうる。また、炭素系材料マトリックス内で第1炭素系ナノ構造体が第1負極活物質層22の厚さ方向に沿って積層された構造を有する。炭素系材料マトリックス内で複数の第1炭素系ナノ構造体が第1負極活物質層22の厚さ方向に沿って積層されうる。炭素系材料マトリックスは、例えば、第1負極活物質層22の厚さ方向に沿って積層された複数の第1炭素系ナノ構造体層(layer)を含みうる。炭素系材料マトリックス内で第1炭素系ナノ構造体が第1負極活物質層22の厚さ方向に沿って積層されることにより、第1負極活物質層22の構造的緻密性及び構造的安定性がさらに向上しうる。
【0044】
炭素系材料マトリックスは、例えば、不規則に(irregular)配置され、整列されていない第1炭素系ナノ構造体を含みうる。第1炭素系ナノ構造体は、例えば、グラフェンを含み、炭素系材料マトリックスは不規則に配置されて整列されていないグラフェンを含みうる。炭素系材料マトリックスは、例えば、負極集電体21の表面に対して不規則的に及び/またはランダムに配置される第1炭素系ナノ構造体を含みうる。炭素系材料マトリックスは、例えば、グラフェンを含み、炭素系材料マトリックスは、負極集電体21の表面に対して不規則的に、及び/またはランダムに配置されるグラフェンを含みうる。炭素系材料マトリックス内で第1炭素系ナノ構造体が負極集電体21の表面に対して不規則的に及び/またはランダムに配置されることにより、第1負極活物質層22を介したリチウムイオンの伝達経路及び/または電子伝達経路が多様になる。したがって、炭素系材料マトリックスを含む全固体二次電池の内部抵抗がさらに減少しうる。
【0045】
炭素系材料マトリックスは、例えば、結晶質炭素(crystalline carbon)、非晶質炭素(amorphous carbon)またはそれらの組合わせを含みうる。炭素系材料マトリックスは、第1炭素系ナノ構造体を含み、第1炭素系ナノ構造体が、例えば、結晶質炭素(crystalline carbon)ナノ構造体、非晶質炭素(amorphous carbon)ナノ構造体またはそれらの組合わせを含みうる。結晶質炭素ナノ構造体からなる炭素系材料マトリックスは、高い結晶性を有する。非晶質炭素ナノ構造体からなる炭素系材料マトリックスは、低い結晶性を有する。炭素系材料マトリックスが、例えば、一定方向に整列された第1炭素系ナノ構造体を含むことにより、炭素系材料マトリックスが高い結晶性(crystallinity)を有する。炭素系材料マトリックス内で一定方向に整列された第1炭素系ナノ構造体の含量が増加することにより、第1負極活物質層22の結晶性が増加しうる。炭素系材料マトリックスが、例えば、不規則に配置される第1炭素系ナノ構造体を含むことにより、炭素系材料マトリックスが低い結晶性(crystallinity)を有する。炭素系材料マトリックス内で不規則に配置される第1炭素系ナノ構造体の含量が増加することにより、第1負極活物質層22の結晶性が低くなる。炭素系材料マトリックスの結晶性は、例えば、ラマンスペクトル、XRDスペクトル、高解像度透過電子顕微鏡などによって決定されうる。
【0046】
炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、第1炭素系ナノ構造体は、例えば、ドープ剤でドーピングされうる。ドープ剤は、n型ドープ剤、p型ドープ剤またはそれらの組合わせを含みうる。n型ドープ剤は、例えば、炭素に比べてさらに多くの電子を有することにより、炭素系材料に電子を導入するドープ剤である。p型ドープ剤は、炭素に比べてさらに少ない電子を有することにより、炭素系材料に正孔(hole)を導入するドープ剤である。第1炭素系ナノ構造体は、例えば、ドープ剤でドーピングされたグラフェンを含みうる。ドーピングされたグラフェンは、例えば、n型ドープ剤、p型ドープ剤またはそれらの組合わせを含みうる。ドープ剤は、例えば、窒素(N)、リン(P)、ホウ素(B)、硫黄(S)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、またはそれらの組合わせを含みうる。窒素(N)、リン(P)は、例えば、n型ドープ剤である。ガリウム(Ga)は、例えば、p型ドープ剤である。ドーピングされた第1炭素系ナノ構造体が含むドープ剤の含量は、例えば、3at%以下、2at%以下、1at%以下または0.5at%以下でもある。第1炭素系ナノ構造体がドープ剤でドーピングされることにより、第1炭素系ナノ構造体の伝導度がさらに増加しうる。炭素系材料マトリックスがドーピングされた第1炭素系ナノ構造体を含むことにより、第1負極活物質層22の内部抵抗が減少し、第1負極活物質層22と固体電解質層30との間の界面抵抗がさらに減少しうる。結果として、全固体二次電池の内部抵抗が減少し、高率特性がさらに向上しうる。
【0047】
炭素系材料マトリックスは、バインダを含まない。炭素系材料マトリックスがバインダを含まないことから、第1負極活物質層22の内部抵抗が減少し、イオン伝導度及び/または電子伝導度が向上しうる。結果として、全固体二次電池の高率特性などのサイクル特性が向上しうる。
【0048】
炭素系材料マトリックスは、例えば、炭素系材料マトリックス内に配置される気孔をさらに含みうる。炭素系材料マトリックスが複数の第1炭素系ナノ構造体を含み、複数の第1炭素系ナノ構造体が不規則に配置されることにより、炭素系材料マトリックス内に複数の第1炭素系ナノ構造体によって定義される気孔(pore)が形成されうる。炭素系材料マトリックスが、例えば、一定方向に整列された第1炭素系ナノ構造体を含むことにより、低い空隙率(porosity)を有する。炭素系材料マトリックス内で一定方向に整列された第1炭素系ナノ構造体の含量が増加することにより、炭素系材料マトリックスが含む気孔(pore)の含量が減少しうる。したがって、第1負極活物質層22が減少した空隙率を有しうる。炭素系材料マトリックスが、例えば、不規則に配置される第1炭素系ナノ構造体を含むことにより、炭素系材料マトリックスの空隙率(porosity)が増加しうる。炭素系材料マトリックス内で不規則に配置される第1炭素系ナノ構造体の含量が増加することにより、炭素系材料マトリックスが含む気孔(pore)の含量が増加しうる。したがって、第1負極活物質層22が増加した空隙率を有する。炭素系材料マトリックスの気孔率は、例えば、ガス吸着法で測定されうる。
【0049】
炭素系材料マトリックスは、例えば、リチウムホスト(lithium host)でもある。炭素系材料マトリックスは、例えば、電気化学的不活性リチウムホスト(electrochemically inert lithium host)でもある。電気化学的不活性リチウムホストは、リチウムと反応して化合物を形成せず、電子伝達のための伝導体及び/または析出されたリチウムを収容するための受容体として作用するリチウムホストである。炭素系材料マトリックスが電気化学的不活性リチウムホストとして作用することにより、第1負極活物質層22の充放電時の体積変化及び/または物性変化による全固体二次電池1の劣化をさらに効果的に防止しうる。したがって、炭素系材料マトリックスが電気化学的不活性リチウムホストとして作用することにより、第1負極活物質層22での電子伝達及び/またはリチウム析出がさらに効果的に遂行されうる。一方、炭素系材料マトリックスは、例えば、電気化学的活性リチウムホスト(electrochemically active lithium host)でもある。電気化学的活性リチウムホストは、リチウムと反応して化合物を形成するリチウムホストである。炭素系材料マトリックスが電気化学的活性リチウムホストとして作用することにより、第1負極活物質層22での不均一なリチウム析出がさらに効果的に防止されて全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。したがって、炭素系材料マトリックスが電気化学的活性リチウムホストとして作用することにより、第1負極活物質層22で均一なリチウム析出が遂行されうる。炭素系材料マトリックスが気孔をさらに含むことにより、前記気孔内にリチウム金属が析出されうる。
【0050】
[負極層:負極活物質]
図1ないし図5を参照すれば、負極層20が負極集電体21;及び前記負極集電体上に配置された第1負極活物質層22を含む。第1負極活物質層22は、炭素系材料マトリックス内に配置される金属系負極活物質を含む。
【0051】
金属系負極活物質は、リチウムと合金または化合物を形成する負極活物質である。金属系負極活物質は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上の合金形成元素を含むが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金または化合物を形成する金属系負極活物質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属系負極活物質ではない。金属系負極活物質は、例えば、金属酸化物を含まない。金属系負極活物質は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成することができる金属を含み、そのような金属の酸化物を含まない。金属系負極活物質は、例えば、銀(Ag)を含むが、銀(Ag)の酸化物(例:AgO)は含まない。
【0052】
金属系負極活物質は、例えば、コア/シェル構造を有する複合負極活物質でもある。金属系負極活物質は、例えば、コア;及び前記コアの表面に沿って配置されるシェルを含みうる。シェルは、コアの表面の一部または全部を被覆することができる。コアは、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属を含みうる。リチウムと合金または化合物を形成する金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上の合金形成元素を含みうる。シェルは、例えば、炭素系材料を含みうる。シェルは、例えば、第3炭素系ナノ構造体を含みうる。第3炭素系ナノ構造体は、例えば、第1炭素系ナノ構造体のような炭素系ナノ構造体でもある。第3炭素系ナノ構造体は、例えば、グラフェン、グラフェン酸化物(graphene oxide)、還元されたグラフェン酸化物(reduced graphene oxide)またはそれらの組合わせを含みうる。第3炭素系ナノ構造体は、炭素系材料マトリックスが含む第1炭素系ナノ構造体と組成、厚さ、位置、結晶性などの物性のうち1つ以上で区別されうる。第3炭素系ナノ構造体は、例えば、金属系負極活物質のシェルを構成し、炭素系材料マトリックスと区別されうる。金属系負極活物質は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属を含む金属コア;及び前記コア上に配置される第3炭素系ナノ構造体を含むシェルの構造を有する。金属系負極活物質は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属を含む金属コア;及び前記コア上に配置されるグラフェンを含むシェルの構造を有する。シェルは、例えば、非晶質炭素(amorphous carbon)を含みうる。シェルが非晶質炭素を含むことにより、コアと炭素系材料マトリックスとのイオン伝達及び/または電子伝達がさらに容易に遂行されうる。シェルは、例えば、コア上に配置される非晶質炭素コーティング層でもある。金属系負極活物質は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属を含む金属コア;及び前記コア上に配置される非晶質炭素含有シェルの構造を有する。金属系負極活物質は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属を含む金属コア;及び前記コア上に配置される非晶質炭素コーティング層の構造を有する。
【0053】
金属系負極活物質は、例えば、粒子状を有する。粒子状を有する金属系負極活物質の粒径は、例えば、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、0.5μm以下または100nm以下である。粒子状を有する金属系負極活物質の粒径は、例えば、1nm~2μm、1nm~1.5μm、5nm~1μm、10nm~500nm、10nm~400nm、10nm~200nm、または10nm~100nmである。金属系負極活物質がそのような範囲の粒径を有することにより、充放電時に、リチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易でもある。金属系負極活物質は、金属系負極活物質前駆体の還元生成物でもある。金属系負極活物質は、金属イオンの還元生成物でもある。金属系負極活物質が金属イオンの還元生成物なので、互いに凝集されず、炭素系材料マトリックス内に均一に分散されて分布されうる。金属系負極活物質の粒径は、例えば、第1負極活物質層22の断面の電子顕微鏡イメージからソフトウェア方式で、またはマニュアル方式で分析して得られる金属系負極活物質粒径の算術平均値である。金属系負極活物質粒子がコア;及びコアの表面に沿って配置されるシェルを含みうる。コアの粒径は、例えば、1nm~1μm、10nm~500nm、10nm~400nm、10nm~300nm、10nm~200nm、または、10nm~100nmである。シェルの厚さは、例えば、100nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下または10nm以下である。シェルの厚さは、例えば、1nm~100nm、1nm~50nm、1nm~40nm、1nm~30nm、1nm~20nm、または、1nm~10nmである。コアとシェルがそのような範囲の粒径及び厚さをそれぞれ有することにより、金属系負極活物質粒子を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0054】
金属系負極活物質の含量は、炭素系材料マトリックス100重量部に対して10重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、または、2重量部以下でもある。金属系負極活物質の含量は、炭素系材料マトリックス100重量部に対して0.1~10重量部、0.5~5重量部、0.5~3重量部、または0.5~2重量部でもある。金属系負極活物質がそのような範囲の含量を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。金属系負極活物質と炭素系材料の単純ブレンドを含む従来の第1負極活物質層22に比べて、図1ないし図5の全固体二次電池1に採用される第1負極活物質層22は、減少した金属系負極活物質の含量を有する。第1負極活物質層22が乾式(dry method)によって炭素系材料マトリックス内に分散されて配置される金属系負極活物質を含むことにより、相対的に低い金属系負極活物質含量で優秀なサイクル特性を有する全固体二次電池1を提供することができる。
【0055】
炭素系材料マトリックスは、炭素系材料マトリックス内に配置される炭素系負極活物質をさらに含みうる。炭素系負極活物質は、例えば、非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(carbon black)(CB)、アセチレンブラック(acetylene black)(AB)、ファーネスブラック(furnace black)(FB)、ケッチェンブラック(ketjen black)(KB)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で非晶質炭素として分類されるものであれば、いずれも使用可能である。非晶質炭素は、結晶性を有さないか、結晶性が非常に低い炭素であって、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。炭素系負極活物質は、省略可能である。
【0056】
[負極層:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層12の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、20μm以下、10μm以下、7μm以下または5μm以下である。第1負極活物質層22の厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、2μm~7μmまたは2μm~5μmである。第1負極活物質層22の厚さが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の厚さが過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22により全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0057】
第1負極活物質層22の厚さが減少すれば、例えば、第1負極活物質層22の充電容量も減少する。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、0.1%~5%、または0.1%~2%である。第1負極活物質層22の充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22の厚さが非常に薄くなるので、繰り返される充放電過程で第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させて、全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22により全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量C1と正極活物質層12の充電容量C2との比(ratio)C1/C2は、例えば、0.001~0.45、0.001~0.4、0.001~0.3、0.001~0.25、0.001~0.2、0.001~0.1、0.001~0.05または0.001~0.02である。正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に正極活物質層12のうち正極活物質の質量を乗算して得られる。多くの種類の正極活物質が使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も同様の方法で計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に第1負極活物質層22のうち負極活物質の質量を乗算して得られる。様々な負極活物質が使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、その値の総和が第1負極活物質層22の容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を用いて推定された容量である。全固体半電池(half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。一方、正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0058】
第1負極活物質層22ではバインダが不在(free)でもある。第1負極活物質層22が乾式(dry method)によって形成されることにより、第1負極活物質層22にバインダが含まれない。第1負極活物質層22がバインダを含まないことにより、第1負極活物質層22の電子伝導度及び/またはイオン伝導度が向上し、内部抵抗が減少しうる。したがって、そのような第1負極活物質層22を含む全固体二次電池1の高率特性のようなサイクル特性が向上しうる。第1負極活物質層は、CVD、PVDのような乾式で製造されうる。第1負極活物質層の製造に使用される乾式方法は、特に限定されず、当該技術分野でバインダなしに使用する乾式方法であれば、いずれも使用可能である。
【0059】
第1負極活物質層22の厚さは、第1保護層23、23a、23bの厚さに比べて、さらに大きくもなる。第1負極活物質層22の厚さは、第1保護層23、23a、23bの厚さの150%以上、200%以上、300%以上または500%以上でもある。第1負極活物質層22がそのような範囲の厚さを有することにより、第1保護層23、23a、23bの厚さが相対的に減少するので、全固体二次電池のエネルギー密度がさらに向上しうる。
【0060】
負極層20に対するラマンスペクトルにおいて、非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(I)のピーク強度の比率(I/I)は、例えば、20以下、15以下、10以下、5以下、3以下、2以下、1以下、0.8以下または0.5以下でもある。
【0061】
負極層20に対するラマンスペクトルにおいて、非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(I)のピーク強度の比率(I/I)は、例えば、0超過、0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.3以上、0.5以上または、1以上でもある。
【0062】
負極層20に対するラマンスペクトルにおいて、非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(IG)のピーク強度との比率(I/I)は、例えば、0超過20以下、0超過15以下、0超過10以下、0.01~10、0.01~5、0.1~5、0.1~3または0.1~1でもある。負極層20に対するラマンスペクトルにおいて、非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(I)のピーク強度の比率(I/I)は、例えば、0.1~10、0.5~5、1~3または1~2でもある。負極層20に対するラマンスペクトルにおいて、非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(I)のピーク強度の比率(I/I)は、例えば、0.5~10、1~5、2~5、または3~5でもある。ラマンスペクトルは、負極層20の第1負極活物質層22及び第1保護層23に関するものである。負極層20がそのような範囲のピーク強度比を有することにより、固体電解質による負極集電体21の劣化をさらに効果的に防止しうる。負極層20の強度比が過度に増加すれば、固体電解質による負極集電体21の劣化を効果的に防止し難い。ニッケル負極集電体21を含む負極層20は、銅負極集電体21を含む負極層20に比べて、上述した強度比が相対的にさらに低くなる。
【0063】
負極層20に対する窒素ガス吸着法(multi-point BET)を使用して得られる気孔率は、例えば、30%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.8%以下または0.5%以下でもある。
【0064】
負極層20に対する窒素ガス吸着法(multi-point BET)を使用して得られる気孔率は、例えば、0%超過、0.1%以上または0.5%以上でもある。
【0065】
負極層20に対する窒素ガス吸着法(multi-point BET)を使用して得られる気孔率は、例えば、0超過30%以下、0超過20%以下、0.01~10%、0.1~5%、0.5~5%または1~5%でもある。負極層20に対する窒素ガス吸着法(multi-point BET)を使用して得られる気孔率は、例えば、0.1~20%、1~10%、5~10%でもある。負極層20に対する窒素ガス吸着法(multi-point BET)を使用して得られる気孔率は、例えば、1~20%、5~20%、または、10~20%でもある。負極層20がそのような範囲の気孔率を有することにより、固体電解質による負極集電体21の劣化をより効果的に防止しうる。負極層20の気孔率が過度に増加すれば、固体電解質による負極集電体21の劣化を効果的に防止し難い。
【0066】
[負極層:第1保護層]
図1ないし図5を参照すれば、負極層20は、負極集電体21;第1負極活物質層22;及び負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第1保護層23、23a、23bを含む。
【0067】
第1保護層23、23a、23bは、例えば、炭素系材料を含む伝導性コーティング層である。第1保護層23、23a、23bを伝導性コーティング層として使用することによって、第1保護層23、23a、23bの追加にもかかわらず、全固体二次電池の内部抵抗の増加を抑制しうる。第1保護層23a、23a、23bは、例えば、第2炭素系ナノ構造体を含む。炭素系ナノ構造体は、ナノサイズのディメンションを有し、炭素系材料からなる構造体である。炭素系ナノ構造体は、例えば、1次元炭素系ナノ構造体、2次元炭素系ナノ構造体、3次元炭素系ナノ構造体またはそれらの組合わせを含みうる。第2炭素系ナノ構造体は、例えば、2次元炭素系ナノ構造体を含みうる。第2炭素系ナノ構造体は、例えば、グラフェン(graphene)、グラフェン酸化物(graphene oxide, GO)、還元されたグラフェン酸化物(reduced graphene oxide, rGO)またはそれらの組合わせを含みうる。第2炭素系ナノ構造体は、上述した第1炭素系ナノ構造体のうちから選択されうる。第2炭素系ナノ構造体は、ドープ剤でドーピングされうる。ドープ剤でドーピングされた第2炭素系ナノ構造体は、ドープ剤でドーピングされた第1炭素系ナノ構造体のうちから選択されうる。
【0068】
第1保護層23、23a、23bは、例えば、負極集電体21の表面に対して一定方向に整列(arranged)された第2炭素系ナノ構造体を含みうる。第2炭素系ナノ構造体は、例えば、グラフェンを含みうる。第1保護層23、23a、23bは負極集電体21表面に対して一定方向に整列(arranged)されたグラフェンを含みうる。
【0069】
第1保護層23、23a、23bは、例えば、負極集電体21表面に対して平行な方向に整列された第2炭素系ナノ構造体を含みうる。第2炭素系ナノ構造体は負極集電体21表面に対して平行な方向に整列されうる。第1保護層23、23a、23bは、例えば、グラフェンを含みうる。第1保護層23、23a、23bは負極集電体21表面に対して平行な方向に整列されたグラフェンを含みうる。グラフェンは、例えば、負極集電体21表面に対して-30°~30°、-20°~20°、-10°~10°、または-5°~5゜の角度をなして整列されうる。第1保護層23、23a、23bにおいて第2炭素系ナノ構造体が負極集電体21の表面に平行な方向に整列されることにより、固体電解質と負極集電体21との接触をさらに効果的に抑制しうる。
【0070】
第1保護層23、23a、23bは、例えば、負極集電体21の表面から突出する方向に整列された第2炭素系ナノ構造体を含みうる。第2炭素系ナノ構造体は負極集電体21表面から突出する方向に整列されうる。第1保護層23、23a、23bは、例えば、グラフェンを含みうる。第1保護層23、23a、23bは負極集電体21表面から突出する方向に整列されたグラフェンを含みうる。第2炭素系ナノ構造体は、例えば、負極集電体21表面に対して45°~135°、50°~130°、60°~120°、70°~110°、または80°~100°角度をなして整列されうる。第2炭素系ナノ構造体は、例えば、負極集電体21表面に対して垂直に整列されうる。第1保護層23、23a、23bにおいて第2炭素系ナノ構造体が負極集電体21の表面から突出する方向に整列されることにより、第1負極活物質層22と負極集電体21との間で電子伝達がさらに容易に遂行されうる。結果として、全固体二次電池1の内部抵抗の増加がさらに効果的に抑制されうる。
【0071】
第1保護層23、23a、23bは、第2炭素系ナノ構造体が第1保護層23、23a、23bの厚さ方向に沿って積層された構造を有する。第1保護層23、23a、23b内で複数の第2炭素系ナノ構造体が第1保護層23、23a、23bの厚さ方向に沿って積層されうる。第1保護層23、23a、23bは、例えば、第1保護層23、23a、23bの厚さ方向に沿って積層された複数の第2炭素系ナノ構造体層(layer)を含みうる。第1保護層23、23a、23b内で第2炭素系ナノ構造体が負極集電体21の厚さ方向に沿って積層されることにより、第1保護層23、23a、23bの構造的緻密性及び構造的安定性がさらに向上しうる。第2炭素系ナノ構造体は、第1保護層23、23a、23b内で、例えば、2000層以下、1500層以下、1000層以下、500層以下、100層以下、70層以下、50層以下、または30層以下に積層されうる。第2炭素系ナノ構造体は、第1保護層23、23a、23b内で、例えば、1層~100層、5層~70層、10層~50層、20層~30層に積層されうる。第2炭素系ナノ構造体は、第1保護層23、23a、23b内で、例えば、1層~2000層、10層~1000層、100層~1000層、100層~500層または100層~300層に積層されうる。第2炭素系ナノ構造体は、第1保護層23、23a、23b内で、例えば、1層~2000層、10層~2000層、100層~2000層、500層~2000層または1000層~2000層に積層されうる。第2炭素系ナノ構造体がそのような範囲の層数を有することにより、第1保護層23、23a、23bの構造的安定性がさらに向上しうる。
【0072】
第1保護層23、23a、23bは負極集電体21の一面上に直接配置されうる。第1保護層23、23a、23bは、固体電解質、特に硫化物系固体電解質に対して不活性(inert)でもある。第1保護層23、23a、23bが負極集電体21の一面上に直接配置されることにより、負極集電体21と硫化物系固体電解質との接触を遮断して負極集電体21の腐食のような負極集電体21の劣化をさらに効果的に防止しうる。
【0073】
第1保護層23、23a、23bは、例えば、固体電解質層に対向する(facing)負極集電体21の一面上に配置されうる。第1保護層23、23a、23bは、負極集電体21の前記一面に対向する(opposing)負極集電体21の他面にも配置され、前記一面と他面との間の負極集電体21の側面にも配置されうる。第1保護層23、23a、23bが負極集電体21の一部または全部を被覆することにより、硫化物系固体電解質による劣化をさらに効果的に防止しうる。したがって、第1保護層23、23a、23bを含む全固体二次電池1の寿命特性が向上しうる。
【0074】
第1保護層23、23a、23bの厚さは、例えば、5μm以下、3μm以下、2μm以下、1.5μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、または、100nm以下でもある。第1保護層23、23a、23bの厚さは、例えば、グラフェン単一層厚さ以上、1nm以上、10nm以上、20nm以上、50nmまたは100nm以上でもある。第1保護層23、23a、23bの厚さは、例えば、グラフェン単一層厚さ~2μm、10nm~1.5μm、50nm~1μm、100nm~900nm、200nm~800nmまたは300nm~700nmでもある。第1保護層23、23a、23bの厚さは、例えば、グラフェン単一層厚さ~2μm、1nm~1.5μm、5nm~1μm、10nm~500nm、20nm~300nmまたは20nm~100nmでもある。第1保護層23、23a、23bが過度に厚ければ、全固体二次電池の内部抵抗が増加してエネルギー密度が低下しうる。第1保護層23、23a、23bの厚さが過度に薄ければ、負極集電体21と固体電解質の副反応を効果的に遮断し難い。
【0075】
第1保護層23、23a、23bではバインダが不在(free)でもある。第1保護層23、23a、23bが乾式(dry method)によって形成されることにより、第1保護層23、23a、23bにバインダが含まれない。第1保護層23、23a、23bがバインダを含まないことにより、第1保護層23、23a、23bの電子伝導度が向上し、内部抵抗が減少しうる。したがって、そのような第1保護層23、23a、23bを含む全固体二次電池1の高率特性のようなサイクル特性が向上しうる。第1保護層23、23a、23bは、CVD、PVDのような乾式で製造されうる。第1保護層23、23a、23bの製造に使用される乾式方法は、特に限定されず、当該技術分野でバインダなしに使用する乾式方法であれば、いずれも使用可能である。第1保護層23、23a、23bは、例えば、第2炭素系ナノ構造体からなり、バインダを含まない。第1保護層23、23a、23bは、例えば、グラフェンからなり、バインダを含まない。
【0076】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料からなる。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で電極集電体として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。負極集電体21は、上述した金属のうち1種で構成されるか、2種以上の金属の合金、または被覆材料からなりうる。負極集電体21は、例えば、板状または箔状(foil)である。
【0077】
負極集電体21は、図面に図示されていないが、例えば、ベースフィルム及び前記ベースフィルムの一面または両面上に配置される金属層を含みうる。ベースフィルムは、例えば、高分子を含みうる。高分子は、例えば、熱可塑性高分子でもある。高分子は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)またはそれらの組合わせを含みうる。ベースフィルムが熱可塑性高分子を含むことにより、短絡発生時にベースフィルムが溶融されて急激な電流増加を抑制することができる。ベースフィルムは、例えば、絶縁体でもある。金属層は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金を含みうる。特に、金属層は、例えば、銅(Cu)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)またはそれらの合金を含みうる。金属層が電気化学的ヒューズ(electrochemical fuse)と作用して過電流時に切断して短絡防止機能を遂行しうる。金属層の厚さを調節して限界電流及び最大電流を調節しうる。金属層は、ベースフィルム上に電着されるか、(plated)、蒸着(deposited)されうる。金属層の厚さが薄くなれば、負極集電体21の限界電流及び/または最大電流が減少するので、短絡時のリチウム電池の安定性が向上しうる。金属層上に外部との連結のためにリードタブが追加されうる。リードタブは超音波溶接(ultrasonic welding)、レーザー溶接(laser welding)、スポット溶接(spot welding)などによって金属層または金属層/ベースフィルム積層体に溶接されうる。溶接時にベースフィルム及び/または金属層がとけながら金属層がリードタブに電気的に連結されうる。金属層とリードタブの溶接をさらに堅固にするために、金属層とリードタブとの間に金属片(metal chip)が追加されうる。金属片は、金属層の金属と同じ材料の薄片でもある。金属片は、例えば、金属箔、金属メッシュなどでもある。金属片は、例えば、銅箔、ニッケル箔などでもある。金属層上に金属片を配置した後、リードタブと溶接することにより、リードタブが金属片/金属層積層体または金属片/金属層/ベースフィルム積層体に溶接されうる。溶接時にベースフィルム、金属層及び/または金属片が溶けつつ、金属層または金属層/金属片積層体がリードタブに電気的に連結されうる。金属層上の一部に金属片(metal chip)及び/またはリードタブが追加されうる。ベースフィルムの厚さは、例えば、1~50μm、1.5~50μm、1.5~40μm、または1~30μmでもある。ベースフィルムがそのような範囲の厚さを有することにより、電極組立体の重さをさらに効果的に減少させうる。ベースフィルムの融点は、例えば、100~300℃、100~250℃以下、または100~200℃でもある。ベースフィルムがそのような範囲の融点を有することにより、リードタブを溶接する過程でベースフィルムが溶融されてリードタブに容易に結合されうる。ベースフィルムと金属層の接着力向上のために、ベースフィルム上にコロナ処理のような表面処理が遂行されうる。金属層の厚さは、例えば、0.01~3μm、0.1~3μm、0.1~2μmまたは0.1~1μmでもある。金属層がそのような範囲の厚さを有することにより、伝導性を保持しつつ、電極組立体の安定性を確保しうる。金属片の厚さは、例えば、2~10μm、2~7μm、または4~6μmでもある。金属片がそのような範囲の厚さを有することにより、金属層とリードタブとの連結がさらに容易に遂行されうる。負極集電体21がそのような構造を有することにより、負極の重さを減少させ、結果として全固体二次電池のエネルギー密度を向上させうる。
【0078】
負極集電体21は、例えば、負極集電体21上にリチウムと合金を形成する元素を含む薄膜(thin film)をさらに含みうる。薄膜は、負極集電体21と前記第1負極活物質層22との間に配置される。薄膜は、例えば、リチウムと合金を形成する元素を含む。リチウムと合金を形成する元素は、例えば、金、銀、亜鉛、錫、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビスマスなどであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金を形成する元素であれば、いずれも使用可能である。薄膜は、それら金属のうち1つで構成されるか、様々な金属の合金で構成される。薄膜が負極集電体21上に配置されることにより、例えば、薄膜と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。薄膜は、例えば、第1保護層23と第1負極活物質層22との間に配置されるか、第1保護層23と負極集電体21との間に配置されうる。
【0079】
薄膜の厚さは、例えば、1nm~800nm、10nm~500nmまたは50nm~100nmである。薄膜の厚さが1nm未満になる場合、薄膜による機能が発揮され難い。薄膜の厚さが過度に厚ければ、薄膜自体がリチウムを非可逆的に吸蔵することにより、負極層20で析出されるリチウムの含量が減少しうる。結果として、全固体二次電池1の実質的なエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下しうる。薄膜は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって負極集電体21上に配置されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で薄膜を形成する方法であれば、いずれも使用可能である。
【0080】
[負極層:第2負極活物質層]
図面に図示されていないが、全固体二次電池1は、充電により、例えば、固体電解質層30と負極集電体21との間に配置される第2負極活物質層をさらに含む。第2負極活物質層は、例えば、第1負極活物質層22と第1保護層23、23a、23bの間、及び第1負極活物質層22と固体電解質層30との間のうち1つ以上に配置されうる。全固体二次電池1は、例えば、第1負極活物質層22と第1保護層23、23a、23bとの間に配置される第2負極活物質層をさらに含む。全固体二次電池1は、例えば、第1負極活物質層22と固体電解質層30との間に配置される第2負極活物質層をさらに含む。第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池1の充電過程で第1負極活物質層22と第1保護層23、23a、23bとの間に析出される。
【0081】
第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。したがって、第2負極活物質層は、リチウムを含む金属層なので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されず、当該技術分野においてリチウム合金として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。第2負極活物質層は、そのような合金のうちの1つまたはリチウムからなるか、様々な合金からなる。第2負極活物質層は、例えば、析出層(plated layer)である。
【0082】
第2負極活物質層の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm~200μm、1μm~150μm、1μm~100μm、または1μm~50μmである。第2負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、第2負極活物質層によるリチウム貯蔵庫(reservoir)の役割を遂行し難い。第2負極活物質層の厚さが過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増加し、サイクル特性がむしろ低下する恐れがある。第2負極活物質層は、例えば、そのような範囲の厚さを有する金属箔でもある。
【0083】
全固体二次電池1において、第2負極活物質層は、例えば、全固体二次電池1の組み立ての前に負極集電体21と固体電解質層30との間に配置されるか、全固体二次電池1の組み立て後に充電によって負極集電体21と固体電解質層30との間に析出される。全固体二次電池1の組み立ての前に負極集電体21と固体電解質層30との間に第2負極活物質層が配置される全固体二次電池1において、第2負極活物質層がリチウムを含む金属層なので、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。例えば、全固体二次電池1の組み立ての前に負極集電体21と固体電解質層30との間にリチウムホイルが配置される。これにより、第2負極活物質層を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。充電によって第2負極活物質層が析出される全固体二次電池1では、全固体二次電池1の組み立て時に第2負極活物質層を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超過して充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超過して充電すれば、例えば、第1負極活物質層22の前面及び/または背面、すなわち、第1負極活物質層22と第1保護層23、23a、23bとの間、及び/または第1負極活物質層22と固体電解質層30との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムによって第2負極活物質層に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)からなる金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質がリチウムと合金または化合物を形成する物質を含むことにより得られる。放電時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層、すなわち、金属層のリチウムがイオン化されて正極層10方向に移動する。したがって、全固体二次電池1においてリチウムを負極活物質として使用可能である。また、第1負極活物質層22が固体電解質層30と第2負極活物質層との間に配置される場合、第1負極活物質層22が第2負極活物質層を被覆するので、第2負極活物質層、すなわち、金属層の保護層の役割をすると共に、リチウムデンドライト(dendrite)の析出成長を抑制する役割を遂行する。したがって、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組み立て後に充電によって第2負極活物質層が配置される場合、負極集電体21と固体電解質層30との間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含まないLi-不在(free)領域である。
【0084】
[固体電解質層]
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
図1ないし図5を参照すれば、固体電解質層30は、正極層10及び負極層20の間に配置される。固体電解質層30は、硫化物系固体電解質を含む。
【0085】
固体電解質層30が含む硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P-LiO,LiS-P-LiO-LiI,LiS-SiS,LiS-SiS-LiI,LiS-SiS-LiBr,LiS-SiS-LiCl,LiS-SiS-B-LiI,LiS-SiS-P-LiI,LiS-B,LiS-P-Z(m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち1つ)、LiS-GeS,LiS-SiS-LiPO,LiS-SiS-LiMO(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち1つ)、LiPS,Li11,Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である。硫化物系固体電解質は、例えば、LiS、Pなどの出発原料を溶融急冷法や機械的ミーリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を遂行することができる。固体電解質は、非晶質、結晶質、あるいはそれらが混合された状態でもある。また、固体電解質は、例えば、上述した硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含んでもよい。例えば、固体電解質は、LiS-Pを含む材料でもある。固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料としてLiS-Pを含むものを用いる場合、LiSとPの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50~90:10程度の範囲である。硫化物系固体電解質は、例えば、下記化学式Aで表示されるアルジロダイト型(Argyrodite type)固体電解質を含む:
<化A>
Li 12-n-xn+2- 6-x
前記式において、Aは、P、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、NbまたはTaであり、Xは、S、SeまたはTeであり、Yは、Cl、Br、I、F、CN、OCN、SCN、または、Nであり、1≦n≦5,0≦x≦2である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)の化合物でもある。硫化物系固体電解質は、例えば、LiPSCl,LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)化合物でもある。アルジロダイト型(Argyrodite-type)の固体電解質の密度が1.5~2.0g/ccでもある。アルジロダイト型(Argyrodite-type)の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が減少し、Liによる固体電解質層の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0086】
硫化物系固体電解質の弾性係数は、例えば、40GPa以下でもある。硫化物系固体電解質の弾性係数は、例えば、5GPa~40GPa、10GPa~40GPa、または15GPa~30GPaでもある。
【0087】
固体電解質層30が含む硫化物系固体電解質粒子の平均粒径は、例えば、1μm~50μm、3μm~30μm、3μm~20μmでもある。硫化物系固体電解質粒子がそのような範囲の平均粒径を有することにより、全固体二次電池のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0088】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダをさらに含みうる。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などであるが、それらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12が含むバインダのうちから選択されうる。バインダは、省略可能である。
【0089】
固体電解質層が含むバインダは、例えば、伝導性バインダ及び/または非伝導性バインダを含みうる。伝導性バインダは、例えば、イオン伝導性バインダ、及び/または電子伝導性バインダである。イオン伝導性及び電子伝導性をいずれも有するバインダは、イオン伝導性バインダにも属し、電子伝導性バインダにも属する。伝導性バインダについては、当技術分野で使用されるすべての導電性バインダーを使用することができる 。
【0090】
固体電解質層30が含むバインダは、例えば、第1バインダを含みうる。第1バインダは、例えば、乾燥バインダ(dry binder)である。乾燥バインダは、例えば、溶媒に含浸、溶解、あるいは分散されていないバインダである。乾燥バインダは、例えば、溶媒を含むか、溶媒と接触しないバインダである。
【0091】
第1バインダは、例えば、繊維化(fibrillized)バインダである。繊維化バインダは、固体電解質層が含む複数の硫化物系固体電解質粒子と無機粒子を支持し、それらを互いに結着する繊維状のマトリックスの役割を行う。繊維化バインダは、例えば、電極断面に対する走査電子顕微鏡イメージとして繊維状を有することを確認することができる。繊維化バインダは、例えば、10以上、20以上、50以上、または100以上の縦横比(aspect ratio)を有する。第1バインダは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン-ヘキサプロピレン(PVDF-HFP)共重合体などであるが、必ずしもそれらに限定されず、乾式組成物の製造に使用される繊維化バインダであれば、いずれも使用可能である。第1バインダは、特にフッ素系バインダを含みうる。フッ素系バインダは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。繊維化バインダーのアスペクト比、すなわち繊維化バインダーの直径と長さの比は、例えばSEM画像から決定することができる。
【0092】
固体電解質層30が含むバインダは、例えば、第2バインダをさらに含みうる。第2バインダは、例えば、乾燥バインダ(dry binder)である。乾燥バインダに対する説明は、前記第1バインダと同一である。
【0093】
第2バインダは、例えば、非繊維化(non-fibrillized)バインダである。非繊維化バインダは、固体電解質層が含む硫化物系固体電解質粒子と無機粒子を支持し、それらを互いに結着する結着地点(site)の役割を遂行する。非繊維化バインダは、例えば、電極断面に対する走査電子顕微鏡イメージとして繊維状を有さず、粒子状に配置されることを確認することができる。非繊維化バインダは、例えば、5以下、3以下、または2以下の縦横比(aspect ratio)を有する。第2バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレンジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはそれらの共重合体などであるが、必ずしもそれらに限定されず、乾式電極の製造に使用されるバインダであれば、いずれも使用可能である。第2バインダは、特にフッ素系バインダを含みうる。フッ素系バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0094】
固体電解質層30が含むバインダの含量は、固体電解質層全体重量に対して、例えば、1wt%~10wt%、1wt%~5wt%、または1wt%~3wt%である。固体電解質層がそのような含量範囲のバインダを含むことにより、固体電解質層の結着力が向上し、全固体二次電池が高いエネルギー密度を保持することができる。
【0095】
固体電解質層30は、例えば、自立膜(self-standing film)である。固体電解質層は、例えば、支持体なしに膜(film)形態を保持する。したがって、固体電解質層は、別途の自立膜として設けられた後、正極層と負極層との間に配置されうる。固体電解質層において、例えば、残留工程溶媒(residual processing solvent)が不在(free)でもある。例えば、固体電解質層が乾式で製造されるので、意図的に添加される工程溶媒を含まない。例えば、残留工程溶媒(residual processing solvent)を含まない。固体電解質層内に意図せぬ微量の溶媒が残留しうるが、そのような溶媒は、意図的に添加された工程溶媒ではない。したがって、固体電解質層は、硫化物系固体電解質粒子と工程溶媒とを混合した後、乾燥によって工程溶媒の一部または全部を除去して製造された湿式固体電解質層と区別される。
【0096】
[正極層]
[正極層:正極活物質]
図1ないし図5を参照すれば、正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極活物質層12に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質のうちから選択されうる。固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。固体電解質は、省略可能である。
【0097】
正極活物質層12が含む正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)する正極活物質である。正極活物質は、例えば、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質またはそれらの組合わせを含む。酸化物系正極活物質は、例えば、リチウム遷移金属酸化物、金属酸化物またはそれらの組合わせを含む。リチウム遷移金属酸化物は、例えば、リチウムコバルト酸化物(Lithium cobalt oxide)、リチウムニッケル酸化物(Lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(Lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(Lithium nickel cobalt aluminium oxide)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(Lithium nickel cobalt mangense oxide)、リチウムマンガン酸化物(Lithium Manganate)、リチウム鉄リン酸化物(Lithium iron phosphate)、またはそれらの組合わせを含む。金属酸化物は、例えば、酸化鉄(iron oxide)、酸化バナジウム(vanadium oxide)またはそれらの組合わせを含む。
【0098】
硫化物系正極活物質は、例えば、硫化ニッケル(nickel sulfide)、硫化銅(copper sulfide)、LiS、LiS含有複合体またはそれらの組合わせを含む。
【0099】
酸化物系正極活物質は、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができる。酸化物系正極活物質は、例えば、Li1-bB’(前記式において、0.90≦a≦1,及び0≦b≦0.5である);Li1-bB’2-c(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiE2-bB’4-c(前記式において、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoB’α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cCoB’(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cMnB’α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiNi(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である);LiV;LiI’O;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか1つで表現される化合物を含みうる。
【0100】
上述した化合物を表現する化学式において、Aは、ni、Co、Mn、またはそれらの組合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組合わせである。上述した化合物表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、上述した化合物とコーティング層が付加された化合物の混合物の使用も可能である。上述した化合物の表面に付加するコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキサイド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。このようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野に従事する者によく理解されうる内容なので、詳細な説明は省略する。
【0101】
酸化物系正極活物質は、例えば、下記化学式1ないし8で表示されるリチウム遷移金属酸化物を含む:
<化1>
LiNiCo2-b
前記化学式1において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.8≦x<1、0≦y≦0.3、0<z≦0.3、及びx+y+z=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)またはそれらの組合わせであり、
Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせであり、
<化2>
LiNiCoMn
<化3>
LiNiCoAl
前記化学式2ないし3において、0.8≦x≦0.95、0≦y<0.2、0<z≦0.2及びx+y+z=1であり、
<化4>
LiNiCoMnAl
前記化学式4において、0.8≦x≦0.95、0≦y≦0.2、0<z≦0.2、0<w≦0.2、及びx+y+z+w=1であり、
<化5>
LiCo2-b
前記化学式5において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、及びx+y=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)またはそれらの組合わせであり、
Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせであり、
<化6>
LiNiMnM’2-b
前記化学式6において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0<x≦0.3、0.5≦y<1、0<z≦0.3、及びx+y+z=1であり、
M’は、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)またはそれらの組合わせであり、
Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせであり、
<化7>
LiM1M2PO4-b
前記化学式7において、0.90≦a≦1.1、0≦x≦0.9、0≦y≦0.5、0.9<x+y<1.1、0≦b≦2であり、
M1がクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)またはそれらの組合わせであり、
M2が、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはそれらの組合わせであり、XがO、F、S、Pまたはそれらの組合わせであり、
<化8>
LiM3PO
前記化学式8において、0.90≦a≦1.1、0.9≦z≦1.1であり、
M3が、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)またはそれらの組合わせである。
【0102】
酸化物系正極活物質は、被覆層によって覆われてもいる。被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されたものであれば、いずれも使用可能である。被覆層は、例えば、LiO-ZrO(LZO)などである。
【0103】
硫化物系正極活物質は、例えば、LiS含有複合体を含みうる。LiS含有複合体は、例えば、LiSと炭素の複合体、LiSと炭素と固体電解質の複合体、LiSと固体電解質の複合体、LiSと金属カーバイドの複合体、LiSと炭素と金属カーバイドの複合体、LiSと金属ナイトライドの複合体、LiSと炭素と金属ナイトライドの複合体、LiSと金属の複合体、LiSと金属と炭素の複合体またはそれらの組合わせを含む。
【0104】
LiSと炭素の複合体は、炭素を含む。炭素は、例えば、炭素原子を含む材料として当該技術分野で伝導性材料として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。炭素は、例えば、結晶性炭素、非晶質炭素またはそれらの組合わせでもある。炭素は、例えば、炭素前駆体の焼成物でもある。炭素は、例えば、炭素ナノ構造体でもある。炭素ナノ構造体は、例えば、1次元炭素ナノ構造体、2次元炭素ナノ構造体、3次元炭素ナノ構造体またはそれらの組合わせでもある。炭素ナノ構造体は、例えば、炭素ナノチューブ、炭素ナノファイバ、炭素ナノベルト、炭素ナノロッド、グラフェン、グラフェン酸化物(GO)、還元されたグラフェン酸化物(rGO)、グラフェンボール(GB)またはそれらの組合わせでもある。炭素は、例えば、多孔性炭素または非多孔性炭素でもある。多孔性炭素は、例えば、周期的で規則的な2次元または3次元気孔を含みうる。多孔性炭素は、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャネルブラックなどのカーボンブラック;黒鉛;活性炭;またはそれらの組合わせでもある。炭素の形態は、例えば、粒子状、シート状、フレーク状などであるが、それらに限定されず、当該技術分野で炭素として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。LiSと炭素の複合体の製造方法は、乾式方法、湿式方法またはそれらの組合わせでもあるが、それらに限定されず、また、当該技術分野でLiSと炭素の複合体の製造方法は、例えば、ミーリング、熱処理、蒸着などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で使用する方法であれば、いずれも使用可能である。
【0105】
LiSと炭素と固体電解質の複合体は、炭素及び固体電解質を含む。炭素については、上述したLiSと炭素の複合体を参照する。固体電解質は、例えば、当該技術分野でイオン伝導性材料として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質は、例えば、無機固体電解質である。固体電解質は、例えば、結晶質固体電解質、非晶質固体電解質またはそれらの組合わせである。固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、リチウム塩化合物またはそれらの組合わせである。硫化物系固体電解質は、例えば、Li、S及びPを含み、ハロゲン元素を選択的にさらに含みうる。硫化物系固体電解質は、固体電解質層に使用される硫化物系固体電解質のうちから選択されうる。硫化物系固体電解質は、例えば、常温で1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する。硫化物系固体電解質は、例えば、 LiPO-LiSO、LiS-P、LiS-P-LiX(Xは、ハロゲン元素)、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち1つ)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち1つ)、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含みうる。酸化物系固体電解質は、例えば、Li、O及び遷移金属元素を含み、他の元素を選択的にさらに含みうる。酸化物系固体電解質は、例えば、常温で1×10-5 S/cm以上のイオン伝導度を有する固体電解質でもある。酸化物系固体電解質は、固体電解質層に使用される酸化物系固体電解質のうちから選択されうる。リチウム塩化合物は、例えば、無機化合物である。固体電解質は、例えば、リチウム塩化合物を含み、リチウム塩化合物は、例えば、硫黄(S)原子を含まない。リチウム塩化合物は、例えば、リチウムと元素周期律表第13族ないし第17族から選択された1種の元素からなる二元化合物でもある。二元化合物は、例えば、LiF,LiCl,LiBr,LiI,LiH,LiS,LiO,LiSe,LiTe,LiN,LiP,LiAs,LiSb,LiI及びLiBのうちから選択された1つ以上を含みうる。リチウム塩化合物は、例えば、リチウムと元素周期律表第13族ないし第17族から選択された2種の元素からなる三元化合物でもある。三元化合物は、例えば、LiOCl,LiPF,LiBF,LiSbF,LiAsF,LiClO,LiAlO,LiAlCl,LiNO,LiCO,LiBH,LiSO,LiBO,LiPO,LiNCl,LiNCl及びLiBNのうちから選択された1つ以上を含む。リチウム塩化合物は、特にLiF、LiCl、LiBr、及びLiIのうちから選択された1つ以上のリチウムハライド化合物である。固体電解質は、例えば、硫化物系固体電解質とリチウム塩化合物の混合物でもある。例えば、 LiPO-LiSOと二元リチウム塩化合物の混合物、または、LiPO-LiSOと三元リチウム塩化合物の混合物でもある。
【0106】
LiSと固体電解質の複合体は、固体電解質を含む。固体電解質については、上述したLiSと炭素と固体電解質の複合体に使用される固体電解質を参照する。LiSと固体電解質の複合体は、例えば、LiSと LiF,LiCl,LiBr,LiI,LiH,LiS,LiO,LiSe,LiTe,LiN,LiP,LiAs,LiSb,LiI及びLiBのうちから選択された1つ以上のリチウム塩複合体を含む。
【0107】
LiSと金属カーバイドの複合体は、金属カーバイドを含む。金属カーバイドは、例えば、2次元金属カーバイドである。2次元金属カーバイドは、例えば、マキシン(MXene)である。2次元金属カーバイドは、例えば、Mn+1(Mは、遷移金属であり、Tは、末端基であり、Tは、O、OH及び/またはFであり、n=1、2、または3であり、xは、末端基の数)で表現される。2次元金属カーバイドは、例えば、TiCT、(Ti0.5,Nb0.5CT、NbCT、VCT、Ti、(V0.5,Cr0.5、TiCNT、Ta、Nbまたはそれらの組合わせである。2次元金属カーバイドの表面は、O、OH及び/またはFで終結される。
【0108】
LiSと炭素と金属カーバイドの複合体は、炭素と金属カーバイドを含む。炭素については、上述したLiSと炭素の複合体を参照する。金属カーバイドについては、上述したLiSと金属カーバイドの複合体を参照する。
【0109】
LiSと金属ナイトライドの複合体は、金属ナイトライドを含む。金属ナイトライドは、例えば、2次元金属ナイトライドである。2次元金属ナイトライドは、例えば、Mn+1(Mは、遷移金属であり、Tは、末端基であり、Tは、O、OH及び/またはFであり、n=1、2、または3であり、xは、末端基の数)で表現される。2次元金属ナイトライドの表面は、O、OH及び/またはFで終結される。
【0110】
LiSと炭素と金属ナイトライドの複合体は、炭素と金属ナイトライドを含む。炭素については、上述したLiSと炭素の複合体を参照する。金属ナイトライドについては、上述したLiSと金属ナイトライドの複合体を参照する。
【0111】
正極活物質の形状は、例えば、真球、楕円球形などの粒子形状である。正極活物質の粒径は、特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質の含量も特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極層に適用可能な範囲である。正極活物質層12が含む正極活物質の含量は、例えば、正極活物質層12の全体重量の10wt%~99wt%、10wt%~90wt%、10wt%~80wt%、10wt%~70wt%、または、10wt%~50wt%でもある。
【0112】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質をさらに含みうる。正極活物質層12は、酸化物系固体電解質または硫化物系固体電解質を含みうる。
【0113】
正極活物質層12が含む固体電解質は、硫化物系固体電解質でもある。硫化物系固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。
【0114】
正極活物質層12が含む固体電解質は、酸化物系固体電解質でもある。酸化物系固体電解質は、例えば、 Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0<x<2,0≦y<3),BaTiO,Pb(Zr,Ti)O(PZT),Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(0≦x<1,0≦y<1),PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、SrTiO、SnO、CeO、NaO、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiO、LiPO、LiTi(PO(0<x<2,0<y<3)、LiAlTi(PO(0<x<2,0<y<1,0<z<3)、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2-xSi3-y12(0≦x≦1,0≦y≦1)、LiLaTiO(0<x<2,0<y<3)、LiO、LiOH、LiCO、LiAlO、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO、Li3+xLa12(M=Te、Nb、またはZr;xは、1~10の整数)のうちから選択された1つ以上である。固体電解質は、焼結法などによって作製される。例えば、酸化物系固体電解質は、LiLaZr12(LLZO)及びLi3+xLaZr2-a12(M doped LLZO、M=Ga、W、Nb、Ta、または、Al、xは、1ないし10の整数、0≦a<2)のうちから選択されたガーネット型(Garnet-type)固体電解質である。
【0115】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べて、小径でもある。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質の粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質の粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下でもある。固体電解質の粒径は、例えば、メジアン粒子直径(D50)である。メジアン粒子直径(D50)は、例えば、レーザー回折法で測定される粒子サイズ分布で小さな粒子サイズを有する粒子側から計算して50%累積体積に該当する粒子の大きさである。
【0116】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含みうる。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などであるが、それらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。
【0117】
[正極層:導電材]
正極活物質層12は、導電材を含みうる。導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素繊維、金属粉末などであるが、それらに限定されず、当該技術分野で導電材として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。
【0118】
[正極層:その他添加剤]
正極活物質層12は、上述した正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などの添加剤をさらに含みうる。
【0119】
正極活物質層12が含むフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などには、一般的に全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0120】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金からなる板状体(plate)または箔(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。正極集電体11の厚さは、例えば、1μm~100μm、1μm~50μm、5μm~25μm、または、10μm~20μmである。
【0121】
正極集電体11は、例えば、ベースフィルム及び前記ベースフィルムの一面または両面上に配置される金属層を含みうる。ベースフィルムは、例えば、高分子を含みうる。高分子は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド(PI)またはそれらの組合わせを含みうる。金属層は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金を含みうる。正極集電体11がそのような構造を有することにより、電極の重さを減少させ、結果として、全固体二次電池のエネルギー密度を向上させうる。
【0122】
[正極層:不活性部材]
図3ないし図5を参照すれば、正極層10は、正極集電体11、正極集電体の一面上に配置された正極活物質層12を含み、正極層10の一側面上に配置された不活性部材(inactive member)40、40a、40bをさらに含む。
【0123】
不活性部材40を含むことにより、全固体二次電池1の製造時、及び/または充放電時に、固体電解質層30のクラックを防止し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性が向上する。不活性部材40を含まない全固体二次電池1では、全固体二次電池1の製造時及び/または充放電時に正極10と接触する固体電解質層30に不均一な圧力が加えられることにより、固体電解質層30にクラックが発生し、それによるリチウム金属の成長による短絡の発生可能性が高くなる。
【0124】
不活性部材40は、正極層10の側面に沿って正極層を取り囲んで配置される。不活性部材40は、例えば、正極層10の側面の一部または全部を取り囲み、固体電解質層30と接触する。不活性部材40が正極層10の側面を取り囲んで固体電解質層30と接触することにより、正極10と接触しない固体電解質層30において加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30のクラックを効果的に抑制しうる。不活性部材40は、正極10の側面を取り囲んで、負極20と、具体的には、第1負極活物質層22と分離される。不活性部材40は正極層10の側面を取り囲んで固体電解質層30と接触し、負極20と分離される。したがって、正極層10と第1負極活物質層22との物理的な接触による短絡の発生可能性、またはリチウムの過充電などによる短絡の発生可能性が抑制される。図3を参照すれば、不活性部材40が正極活物質層12の一側面上に配置され、これと共に、正極集電体11の一側面上にも配置されることにより、正極集電体11と負極20の接触による短絡の発生可能性をさらに効果的に抑制する。一方、図4を参照すれば、不活性部材40は、正極活物質層12の一側面上に配置されて固体電解質層30と固体電解質層30に対向する正極集電体11の間に配置される。不活性部材40は正極集電体11の一側面上に配置されない。不活性部材40が正極集電体11と固体電解質層30との間に配置されることにより、正極集電体11と負極20との接触による短絡を効果的に防止することができる。
【0125】
図面に図示されていないが、不活性部材40、40a、40bの一部または全部は、正極層10の側面から離隔されて配置されうる。不活性部材40、40a、40bの一部または全部が正極層10の側面から離隔されて配置されることにより、全固体二次電池1の製造工程がさらに容易になり、全固体二次電池1の製造速度が増加する。不活性部材40、40a、40bの一部または全部が正極層10の側面から離隔されて配置されることにより、充放電時の正極層10の側面方向への体積変化をさらに効果的に収容することにより、全固体二次電池1の寿命特性がさらに向上しうる。不活性部材40、40a、40bと正極層10の側面との距離は、互いに独立して、例えば、0.1μm~10mm、1μm~1mm、1μm~500μm、1μm~100μm、1μm~50μmまたは1μm~10μmである。
【0126】
不活性部材40は、固体電解質層30上で不活性部材40の位置を決定するように構成された位置決め部(図示せず)をさらに含みうる。不活性部材40が位置決め部を含むことにより、固体電解質層30上に不活性部材40を配置する位置の決定が容易になる。結果として、全固体二次電池1の製造速度が増加し、製造容易性が向上しうる。
【0127】
図3ないし図4を参照すれば、不活性部材40は、正極10の一側面から固体電解質層30の末端部まで延びる。不活性部材40が固体電解質層30の末端部まで延びることにより、固体電解質層30の末端部で発生するクラックを抑制しうる。固体電解質層30の末端部は、固体電解質層30の側面と接する最外郭部分である。不活性部材40は、固体電解質層30の側面と接する最外郭部分まで延びる。不活性部材40は、負極層20と、具体的には、第1負極活物質層22と分離される。不活性部材40は、固体電解質層30の末端部まで延びるが、負極層20と接触しない。不活性部材40は、例えば、正極層10の一側面から固体電解質層30の末端部まで延びる空間を充填する。
【0128】
不活性部材40は、例えば、ガスケット(gasket)でもある。不活性部材40としてガスケットが使用されることにより、加圧(press)過程中の圧力差によって発生する固体電解質層30のクラックを効果的に抑制することができる。
【0129】
不活性部材40は、例えば、単層構造を有する。一方、図面に図示されていないが、不活性部材40は、多層構造を有する。多層構造を有する不活性部材40でそれぞれの層は、互いに異なる組成を有する。多層構造を有する不活性部材は、例えば、2層構造、3層構造、4層構造または5層構造を有する。多層構造を有する不活性部材40は、例えば、1層以上の接着層及び1層以上の支持層を含みうる。接着層は、例えば、全固体二次電池1の充放電過程で発生する正極層10の体積変化による正極層10と固体電解質層30との離隔などを効果的に防止し、支持層と他の層との間に結着力を提供することにより、不活性部材40のフィルム強度を向上させる。支持層は、不活性部材40に支持力を提供し、加圧過程または充放電過程で固体電解質層30上に加えられる圧力の不均一性を防止し、製造される全固体二次電池1の形態変形を防止する。
【0130】
図5を参照すれば、全固体二次電池1は、正極10、負極20及びそれらの間に配置される固体電解質層30、30a、30bを含み、正極層10が正極集電体11及び正極集電体11の両面上に配置される第1正極活物質層12a及び第2正極活物質層12bをそれぞれ含み、固体電解質層30が、第1正極活物質層12aと接触する第1固体電解質層30a及び第2正極活物質層12bと接触する第2固体電解質層30bをそれぞれ含み、負極層20が、第1固体電解質層30aと接触する第1負極層20a及び第2固体電解質層30bと接触する第2負極層20bをそれぞれ含み、不活性部材40が、互いに対向する第1固体電解質層30a及び第2固体電解質層30bの間で正極層10の側面を取り囲んで配置される。不活性部材40は、例えば、第1固体電解質層30aと接触する第1不活性部材40a及び第2固体電解質層30bと接触する第2不活性部材40bを含む。したがって、全固体二次電池1がバイセル(bi-cell)構造を有する。全固体二次電池1がそのようなバイセル(bi-cell)構造を有することにより、正極層10を中心に固体電解質層30と負極層20とが互いに対向して対称的に配置されるので、全固体二次電池1の製造時に加えられる圧力による構造変形などがさらに効果的に抑制される。したがって、全固体二次電池1の製造過程及び/または充放電過程で固体電解質層30のクラックが抑制され、それによる全固体二次電池1の短絡が防止され、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。また、複数の正極活物質層12a、12bに対して1つの正極集電体11のみが使用されるので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。
【0131】
図3ないし図5を参照すれば、不活性部材40は、例えば、難燃性不活性部材である。難燃性不活性部材が難燃性を提供することにより、全固体二次電池1の熱暴走及び発火可能性を防止する。結果として、全固体二次電池1の安全性をさらに向上させる。難燃性不活性部材が全固体二次電池1内の残留水分を吸収することにより、全固体二次電池1の劣化を防止して全固体二次電池1の寿命特性が向上する。
【0132】
難燃性不活性部材は、例えば、マトリックス及びフィラーを含む。マトリックスは、例えば、基材及び補強材を含む。マトリックスは、例えば、繊維状基材及び繊維状補強材を含む。マトリックスが基材を含むことにより、マトリックスが弾性を有する。したがって、マトリックスが全固体二次電池1の充放電時の体積変化を効果的に収容して多様な位置に配置されうる。マトリックスが含む基材は、例えば、第1繊維状材料を含む。基材が第1繊維状材料を含むことにより、全固体二次電池1の充放電過程で発生する正極層10の体積変化を効果的に収容し、正極層10の体積変化による不活性部材40の変形を効果的に抑制する。第1繊維状材料は、例えば、縦横比が5以上、20以上、または50以上の材料である。第1繊維状材料は、例えば、縦横比が5~1000、20~1000、または50~1000である材料である。第1繊維状材料は、例えば、絶縁性材料である。第1繊維状材料が絶縁性材料であることによって、全固体二次電池1の充放電過程で発生するリチウムデンドライトなどによる正極層10と負極層20との短絡を効果的に防止することができる。第1繊維状材料は、例えば、パルプ繊維(pulp fiber)、絶縁性高分子繊維、及びイオン伝導性高分子繊維のうちから選択された1つ以上を含む。マトリックスが補強材を含むことにより、マトリックスの強度が向上する。したがって、マトリックスが全固体二次電池1の充放電時の過度な体積変化を防止し、全固体二次電池の変形を防止することができる。マトリックスが含む補強材は、例えば、第2繊維状材料を含む。補強材が第2繊維状材料を含むことにより、マトリックスの強度をさらに均一に増加させうる。第2繊維状材料は、例えば、縦横比が3以上、5以上、または、10以上の材料である。第2繊維状材料は、例えば、縦横比が3~100、5~100、または、10~100である材料である。第2繊維状材料は、例えば、難燃性材料である。第2繊維状材料が難燃性材料であることによって、全固体二次電池1の充放電過程または外部衝撃によって発生する熱暴走による発火を効果的に抑制することができる。第2繊維状材料は、例えば、ガラス繊維(glass fiber)、金属酸化物繊維、セラミックス繊維などである。
【0133】
難燃性不活性部材は、マトリックス以外にフィラーを含む。フィラーは、マトリックス内部に配置されるか、マトリックス表面に配置されるか、内部及び表面にいずれも配置されうる。フィラーは、例えば、無機材料である。難燃性不活性部材が含むフィラーは、例えば、水分吸着剤(moisture getter)、難燃剤(flame retardant)またはリチウム固定化剤(lithium immobilizer)である。水分吸着剤は、例えば、100℃未満の温度で水分を吸着することにより、全固体二次電池1内に残留する水分を除去して全固体二次電池1の劣化を防止する。また、水分吸着剤は、全固体二次電池1の充放電過程または外部衝撃によって発生する熱暴走によって全固体二次電池1の温度が150℃以上に増加すると、吸着した水分を放出して全固体二次電池1の発火を効果的に抑制する。水分吸着剤は、例えば、水分吸着性を有する金属水酸化物である。フィラーが含む金属水酸化物は、例えば、Mg(OH)、Fe(OH)、Sb(OH)、Sn(OH)、TI(OH)、Zr(OH)、Al(OH)またはそれらの組合わせである。難燃剤は、例えば、ホウ酸亜鉛(zinc borate)、モリブデン酸カルシウム亜鉛錯体(calcium molybdate zinc complex)、MoO3、(NHMo、Sb、Sbのうちから選択された1つ以上を含む。リチウム固定化剤は、例えば、リチウム溶融温度である180℃以上で液体リチウムと反応してリチウムを固定化させる化合物でもある。リチウム固定化剤は、例えば、液体リチウムと反応してリチウムを他の不溶性化合物に変化させうる。リチウム固定化剤は、例えば、液体リチウムと反応性を有する金属酸化物である。フィラーが含む金属酸化物は、例えば、TiO、ZrO、HfO、ThOまたはそれらの組合わせである。金属酸化物は、例えば、液体リチウムと反応してLiO及び金属を生成する。反応式は、例えば、4Li+MO->M+2LiOである。液体リチウムが金属酸化物と反応してリチウム酸化物を生成することにより、液体リチウムが固定される。高温で溶融された液体リチウムの正極への漏れ(leakage)が抑制されうる。したがって、全固体二次電池の安全性が向上しうる。
【0134】
難燃性不活性部材が含むフィラーの含量は、例えば、難燃性不活性部材40 100重量部に対して1~80重量部、5~80重量部、10~80重量部、20~80重量部、30~80重量部、40~80重量部、50~80重量部、60~80重量部、または65~80重量部である。
【0135】
難燃性不活性部材は、例えば、バインダをさらに含みうる。バインダは、例えば、硬化性高分子または非硬化性高分子を含みうる。硬化性高分子は、熱及び/または圧力によって硬化される高分子である。硬化性高分子は、例えば、常温で固体である。難燃性不活性部材は、例えば、熱加圧硬化性フィルム及び/またはその硬化生成物を含む。熱加圧硬化性高分子は、例えば、Toray社のTSA-66である。
【0136】
難燃性不活性部材は、上述した基材、補強材、フィラー及びバインダ以外に他の材料をさらに含みうる。難燃性不活性部材は、例えば、紙(paper)、絶縁性高分子、イオン伝導性高分子、絶縁性無機物、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質のうちから選択された1つ以上をさらに含みうる。絶縁性高分子は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのオレフイン系重合体でもある。
【0137】
難燃性不活性部材が含む基材の密度または補強材の密度は、例えば、 正極活物質層22が含む正極活物質の密度の10%~300%、10%~150%、10%~140%、10%~130%、または、10%~120%でもある。
【0138】
不活性部材40は、電気化学的活性を有する物質、例えば、電極活物質(electrode active material)を含まない部材である。電極活物質は、リチウムを吸蔵/放出する物質である。不活性部材40は、電極活物質以外の物質であって、当該技術分野で使用する物質からなる部材である。
【0139】
[全固体二次電池の製造]
(負極層製造)
負極層の製造方法は、例えば、負極集電体を提供する段階;及び第1保護層及び第1負極活物質層を順次に提供する段階を含み、前記第1負極活物質層が炭素系材料マトリックス及び前記炭素系材料マトリックス内に配置された金属系負極活物質を含み、前記炭素系材料マトリックスが第1炭素系ナノ構造体を含み、前記第1保護層が第2炭素系ナノ構造体を含む。
【0140】
負極集電体が提供される。負極集電体に係わる具体的な内容は、上述した負極集電体の部分を参照する。
【0141】
第1保護層及び第1負極活物質層を順次に提供する段階は、例えば、負極集電体上に負極活物質前駆体を提供する段階;及び負極活物質前駆体が提供された負極集電体に炭素供給源気体を含む反応ガスを供給して熱処理する段階を含む。熱処理段階で負極活物質前駆体から負極活物質が形成され、負極集電体と負極活物質との間に気相反応によって第2炭素系ナノ構造体が成長して第1保護層を形成し、負極活物質上に気相反応によって第1炭素系ナノ構造体が成長して第1負極活物質層を形成する。
【0142】
負極集電体上に負極活物質前駆体を提供する段階は、例えば、負極集電体上に、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属を含む前駆体化合物を提供する。負極活物質前駆体は、乾式または湿式で提供されうる。例えば、負極集電体上に負極活物質前駆体が溶解された溶液をコーティングした後、乾燥させて負極集電体上に負極活物質前駆体を配置しうる。リチウムと合金または化合物を形成する金属は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)またはそれらの組合わせを含む。リチウムと合金または化合物を形成する金属を含む前駆体化合物は、例えば、リチウムと合金または化合物を形成する金属の硝酸塩、リチウムと合金または化合物を形成する金属のハロゲン塩、リチウムと合金または化合物を形成する金属の燐酸塩、リチウムと合金または化合物を形成する金属の硫酸塩などであるが、それらに限定されず、当該技術分野で前駆体化合物として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。銀(Ag)を含む前駆体化合物は、例えば、硝酸銀(AgNO)、シルバーアセテート(CHCOOAg)、ジアミン塩化銀(Ag(NHCl)などである。前駆体化合物を溶解させる溶媒は、例えば、水、アルコールなどであるが、それらに限定されない。アルコールは、例えば、メタノール、エタノールなどである。
【0143】
次いで、負極活物質前駆体が提供された負極集電体に炭素供給源気体を含む反応ガスを供給して熱処理する。炭素供給源気体は、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群から選択された1つ以上の不活性気体をさらに含みうる。
【0144】
炭素供給源気体は、下記化学式9で表示される化合物であるか、下記化学式10で表示される化合物であるか、下記化学式11で表示される化合物であるか、または、下記化学式9で表示される化合物と下記化学式10で表示される化合物と下記化学式11で表示される化合物のうちから選択された2以上の混合ガスである。
【0145】
<化9>
2n+2
前記化学式9において、nは、1~20であり、
<化10>

前記化学式10において、nは、2~6であり、
<化11>

前記化学式11において、nは、2~6である。
【0146】
化学式9で表示される化合物、化学式10で表示される化合物及び化学式11で表示される化合物は、例えば、メタン、アセチレン、エチレン、及びプロピレンからなる群から選択された1つ以上である。
【0147】
負極活物質前駆体が提供された負極集電体に炭素供給源気体を含む反応ガスを供給し、熱処理する段階の後に、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなる群から選択された1つ以上の不活性気体を用いた冷却段階をさらに経る。冷却段階は、常温(20-25℃)に調節する段階を言う。
【0148】
負極層の製造方法において気相反応によって炭素系ナノ構造体が成長して第1保護層及び第1負極活物質層を形成する過程は、多様な条件で遂行されうる。
【0149】
第1条件によれば、例えば、負極活物質前駆体が提供された負極集電体が配置された反応器にまずメタンを供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分~4時間で、熱処理温度Tは、500~1100℃範囲である。熱処理温度Tで反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、10分~8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させて負極層を製造する。熱処理温度Tから常温まで冷却する過程にかかる時間は、例えば、10分~5時間である。
【0150】
第2条件によれば、例えば、負極活物質前駆体が提供された負極集電体が配置された反応器にまず水素を供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分~4時間であり、熱処理温度Tは、500~1100℃範囲である。熱処理温度Tで一定反応時間の間、熱処理した後、メタンガスを供給して残余反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、10分~8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させて負極層を製造する。冷却過程で窒素を供給する。熱処理温度Tから常温まで冷却する過程にかかる時間は、例えば、10分~5時間である。
【0151】
第3条件によれば、例えば、負極活物質前駆体が提供された負極集電体が配置された反応器にまず水素を供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分~4時間であり、熱処理温度Tは、500~1100℃範囲である。熱処理温度Tで一定反応時間の間、熱処理した後、メタンと水素との混合ガスを供給し、残余反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、10分~8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させて複合体を製造する。冷却する過程で窒素を供給する。熱処理温度Tから常温まで冷却する過程にかかる時間は、例えば、10分~5時間である。
【0152】
炭素供給源気体は、例えば、メタン;アセチレン;メタンと不活性気体とを含む混合気体;またはアセチレンと不活性気体とを含む混合気体である。
【0153】
炭素供給源気体は、例えば、メタンと窒素との混合気体である。メタンと窒素との混合気体においてメタンと窒素とのモル比は、約1:0.20~1:0.50、約1:0.25~1:0.45、約1:0.30~1:0.40である。炭素供給源気体は、窒素のような不活性気体を含まない。炭素供給源気体は、例えば、アセチレンと窒素との混合気体である。アセチレンと窒素との混合気体においてアセチレンと窒素とのモル比は、約1:0.20~1:0.50、約1:0.25~1:0.45、約1:0.30~1:0.40である。炭素供給源気体は、窒素のような不活性気体を含まない。
【0154】
熱処理圧力は、熱処理温度、気体混合物の組成及び要求される負極層の厚さなどを考慮して選択しうる。熱処理圧力は、流入される気体混合物の量と流出される気体混合物の量を調整して制御しうる。熱処理圧力は、例えば、0.5atm以上、1atm以上、2atm以上、3atm以上、4atm以上、または5atm以上である。
【0155】
熱処理時間は、特に制限されず、熱処理温度、熱処理時の圧力、気体混合物の組成及び要求される負極層の厚さによって適切に調節することができる。例えば、熱処理温度での反応時間は、例えば、10分~100時間、30分~90時間、または50分~40時間である。熱処理時間が増加するほど成長する炭素系ナノ構造体含量が増加し、これにより、製造される負極層の電気化学的物性が向上しうる。但し、そのような傾向は、時間に必ずしも正比例するものではない。例えば、所定時間経過後には、それ以上炭素系ナノ構造体成長が起こらないか、成長率が低くなる。
【0156】
(固体電解質層の製造)
固体電解質層は、乾式または湿式で製造することができる。
【0157】
乾式による固体電解質層の製造方法は、硫化物系固体電解質及びバインダを乾式混合して乾燥混合物を準備する段階;前記乾燥混合物を成形して固体電解質層を準備する段階;及び正極層及び負極層の間に前記固体電解質層を配置する段階を含む。
【0158】
まず、硫化物系固体電解質及びバインダを乾式混合して乾燥混合物を準備する。乾式混合は、工程溶媒を含まない状態で混合することを意味する。乾燥混合物は、工程溶媒が意図的に添加されない混合物を意味する。工程溶媒は、例えば、電極スラリーの製造に使用される溶媒である。バインダは、例えば、乾燥バインダである。乾燥バインダは、工程溶媒を含まないバインダを意味する。工程溶媒は、例えば、水、NMPなどであるが、それらに限定されず、電極スラリーの製造時に使用される工程溶媒であれば、限定されない。乾式混合は、撹拌器を用いて、例えば、25~85℃または65~85℃の温度で遂行されうる。乾式混合は、撹拌器を使用し、例えば、10~10000rpm、または、100~10000rpmの回転速度で遂行されうる。乾式混合は、撹拌器を使用し、例えば、1~200分間遂行されうる。乾式混合は、例えば、1回以上遂行されうる。乾式混合によって繊維化(fibrillated)乾燥バインダを含む乾燥混合物が得られる。撹拌器は、例えば、ミキサー(mixer)またはニーダ(kneader)である。撹拌器は、例えば、チャンバ;チャンバ内部に配置されて回転する1つ以上の回転軸;及び回転軸に回転可能になるように結合され、回転軸の長手方向に配置されるブレードを含む。ブレードは、例えば、リボンブレード、シグマブレード、ジェット(Z)ブレード、分散ブレード、及びスクリューブレードのうちから選択される1つ以上でもある。ブレードを含むことにより、溶媒なしでも電極活物質、乾燥導電材及び乾燥バインダを効果的に混合してドウ(dough)形態の混合物を製造することができる。
【0159】
次いで、乾燥混合物を成形して固体電解質層を準備しうる。製造された乾燥混合物は、例えば、押出装置に投入してシート状に押出されうる。押出時の圧力は、例えば、4MPa~100MPa、または、10MPa~90MPaである。得られた混合物は、シート状でもある。すなわち、得られたシート状の混合物が固体電解質層でもある。押出装置は、例えば、ローラまたは押出機でもある。硫化物系固体電解質及びバインダの種類及び含量は、上述した固体電解質層の部分を参照する。バインダは、省略されうる。例えば、硫化物系固体電解質粒子が加圧によって部分焼結されるので、バインダが省略されうる。
【0160】
湿式による固体電解質層の製造方法は、硫化物系固体電解質、バインダ及び溶媒を混合してスラリーを準備する段階;前記スラリーを成形及び乾燥して固体電解質層を準備する段階;及び正極層及び負極層の間に前記固体電解質層を配置する段階を含む。
【0161】
まず、硫化物系固体電解質、バインダ及び溶媒を混合してスラリーを準備する。硫化物系固体電解質及びバインダは、上述した固体電解質層の部分を参照する。バインダは、乾式方法に使用されるバインダと同一であるか、異なっている。固体電解質層に使用されるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などであるが、それらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。溶媒は、特に限定されず、硫化物系固体電解質と反応せず、バインダを溶解させうるものであれば、いずれも使用可能である。溶媒は、例えば、オクチルアセテートでもある。
【0162】
次いで、前記スラリーを成形及び乾燥して固体電解質層を準備する。スラリーは、例えば、基材上に塗布し、乾燥させた後、基材から分離して固体電解質層を準備することができる。塗布方法及び乾燥条件は、当該技術分野で一般的に使用する方法及び/または条件範囲で遂行されうる。
【0163】
次いで、正極層及び負極層の間に固体電解質層を配置する。固体電解質層は、上述したように、別途の固体電解質層を準備した後、正極層及び/または負極層上に配置されるか、正極層及び/負極層上にスラリーを塗布及び乾燥させて配置しうる。
【0164】
(正極層製造)
正極層は、湿式または乾式で製造することができる。
【0165】
正極層は、例えば、湿式で製造しうる。正極活物質、硫化物系固体電解質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して正極スラリーを準備する。正極スラリーを正極集電体上にコーティングした後、乾燥させて正極層を準備しうる。正極スラリーの製造に使用される溶媒は、特に限定されず、当該技術分野で正極スラリーに使用される溶媒であれば、いずれも使用可能である。正極スラリーに使用される溶媒は、例えば、パラキシレンである。正極集電体、正極活物質、導電材及びバインダの種類及び含量については、上述した正極層の部分を参照する。
【0166】
正極層は、例えば、乾式で製造しうる。まず、正極活物質、硫化物系固体電解質、導電材及びバインダを乾式混合して乾燥混合物を準備する。次いで、乾燥混合物を成形して正極活物質層を準備する。次いで、設けられた正極活物質層を正極集電体の一面または両面上に配置し加圧して正極層を準備する。バインダは、例えば、乾燥バインダである。乾燥混合物を製造する段階及び乾燥混合物を成形する段階での具体的な製造条件及び方法は、上述した固体電解質層の製造方法と実質的に同一である。正極集電体、正極活物質、導電材及びバインダの種類及び含量については、上述した正極層の部分を参照する。
【0167】
(全固体二次電池の製造)
全固体二次電池は、例えば、次のように製造されうる。
【0168】
まず、正極層;負極層;及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を備える電極組立体(electrode assembly)を提供する。
【0169】
負極層上に、負極活物質層が固体電解質層と接触するように固体電解質層を配置して、負極層/固体電解質層積層体を準備する。次いで、正極層の一面または両面上に、前記固体電解質層を正極活物質層に対向するようにそれぞれ配置して、負極層/固体電解質層/正極層の積層体を準備する。正極層周囲に正極層の側面を取り囲む不活性部材であるガスケットを配置する。準備された負極層/固体電解質層/正極層積層体を50~100℃で300~600MPaの圧力で10~60分間加圧(plate press)処理する。このような加圧処理によって固体電解質層が部分焼結されて電池特性が向上する。加圧された積層体を電極組立体として提供する。電極組立体を密封材で密封して全固体二次電池を完成する。
【0170】
以下の実施例及び比較例に基づいて本創意的思想をさらに具体的に説明する。但し、実施例は、本創意的思想を例示するためのものであって、それらのみで本創意的思想の範囲が限定されるものではない。
【0171】
実施例1:メタン1000℃、水平配列グラフェン層(第1保護層)/Ag埋込み水平配列グラフェン層(第1負極活物質層)、モノセル(mono-cell)全固体二次電池
(固体電解質層の製造、乾式)
アジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLiPSCl硫化物系固体電解質(D50=10μm、結晶質)に、固体電解質の98重量部に対して1重量部のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)第1バインダ、及び1重量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)第2バインダをグラインダーミキサー(Grind mixer)に投入し、混合して混合物を準備した。80℃に加熱された乳鉢に準備された混合物を投入した後、撹拌してドウ(dough)を準備した。準備されたドウをローラを通過させてシート状に成形して一定厚さの固体電解質層を準備した。以上の工程によって固体電解質層を製造した。硫化物系固体電解質層の弾性係数は、約15GPa~30GPaであった。
【0172】
(負極層製造)
厚さ20μm Cu箔の一面上に第1保護層であるカーボン層及び第1負極活物質層である負極活物質含有カーボン層を順次に蒸着して負極を準備した。
【0173】
第1保護層及び第1負極活物質層は、下記方法で形成された。
【0174】
Ag前駆体化合物としてのAgNOを、有機溶媒としてのメタノールに溶解させて、Ag前駆体化合物含有組成物を準備した。
【0175】
Ag前駆体化合物含有組成物をCu箔上にコーティングした後、有機溶媒を除去してAg前駆体化合物がコーティングされたCu箔を準備した。
【0176】
Ag前駆体化合物がコーティングされたCu箔をチャンバ内に配置した後、炭化水素ガスとしてのメタンガスと、不活性ガスとしてのアルゴンガスとを混合供給しつつ、1000℃まで昇温させて、Cu箔上に水平配列されたグラフェンを直接成長させた。
【0177】
チャンバ内の温度が400℃以上でAgイオンがAg粒子に還元され、Cu集電体上に水平に配置されるグラフェンが直接成長されて積層されることにより、カーボン層が形成された。Cu集電体とAg粒子との間にカーボン層が形成された。
【0178】
チャンバ内の温度が1000℃でAg粒子からグラフェンが成長して、カーボン層上に水平に配置されるグラフェンを含む炭素系材料マトリックスが形成された。炭素系材料マトリックス内にAg粒子が分散されて埋め込まれた。Ag粒子の表面に沿って非晶質炭素(amorphous carbon)を含むシェルが形成された。Agコア粒子の粒径は、約50nmであった。シェルの厚さは、約10nmであった。
【0179】
第1保護層であるカーボン層の厚さは、約500nmであった。第1負極活物質層であるAg含有カーボン層の厚さは、約3μmであった。
【0180】
製造された負極の断面に対する透過電子顕微鏡(TEM)及び高解像度走査電子顕微鏡(HR-SEM)測定を通じて、第1保護層がCu集電体表面に対して平行な方向に配列されて積層されるグラフェンを含むことを確認した。また、第1負極活物質層がCu集電体表面に対して平行な方向に配列されるグラフェンとAgコアとを含むことを確認した。また、Agコア上に配置された非晶質炭素を含むシェルの存在を確認した。
【0181】
(正極層製造)
正極活物質としてLiO-ZrO(LZO)コーティングされた LiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。LZOコーティングされた正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造した。固体電解質としてアルジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLiPSCl(D50=0.5μm、結晶質)を準備した。バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダを準備した。導電材として炭素ナノ繊維(CNF)を準備した。このような材料を正極活物質:固体電解質:導電材:バインダ=84:11.5:3:1.5の重量比でキシレン(xylene)溶媒と混合したスラリーをシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させて正極シートを製造した。一面にカーボン層がコーティングされたアルミニウム箔からなる正極集電体のカーボン層上に製造された正極シートを配置し、85℃で加温ロールプレス(heated roll press)して正極層を製造した。正極層の全体厚さは、約120μmであった。正極活物質層の厚さは、それぞれ約95μmであり、カーボンコーティングされたアルミニウム箔の厚さは、約25μmであった。
【0182】
(不活性部材)
パルプ繊維(cellulose fiber)、ガラス繊維(glass fiber)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、アクリル系バインダ及び溶媒を混合したスラリーをガスケット形態に成形した後、溶媒を除去して難燃性不活性部材を製造した。
【0183】
パルプ繊維(cellulose fiber)、ガラス繊維(glass fiber)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、アクリル系バインダの重量比は、20:8:70:2であった。不活性部材の厚さは、約120μmであった。製造された難燃性部材を常温で1週間放置してから使用した。
【0184】
不活性部材は、全固体二次電池に適用する前に80℃で5時間真空熱処理して、不活性部材の水分などを除去した。
【0185】
(全固体二次電池の製造)
図3を参照すれば、負極層上に、第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように固体電解質層を配置した。固体電解質層上に難燃性不活性部材を熱加圧で配置して、負極層/固体電解質層/不活性部材の積層体を準備した。
【0186】
正極層の一面上に前記不活性部材を正極活物質層に対向するように配置して、負極層/固体電解質層/正極層電極組立体(electrode assembly)を準備した。不活性部材は、正極層周囲に正極層の側面を取り囲んで固体電解質層と接触するように配置した。不活性部材がガスケットとして使用された。正極層は、固体電解質層の中心部に配置され、ガスケットが正極層を取り囲んで固体電解質層の末端部まで延びて配置された。正極層の面積は、固体電解質層面積の約90%であり、正極層が配置されていない固体電解質層の残り10%の面積全体にガスケットが配置された。
【0187】
準備された負極層/固体電解質層/正極層電極組立体を85℃で500MPaの圧力で30分間平板加圧(plate press)処理した。そのような加圧処理によって固体電解質層が焼結されて電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚さは、約45μmであった。焼結された電極組立体をパウチに入れて密封し、密封された電極組立体を準備した。正極集電体と負極集電体の一部を密封された電極組立体外部に突出させて、正極層端子及び負極層端子として使用した。
【0188】
電極組立体を2枚の加圧板(図示せず)の間に配置し、2枚の加圧板を螺合し、電極組立体の両面に一定圧力を加えて全固体二次電池を製造した。
【0189】
実施例2:メタン850℃、水平配列グラフェン層(第1保護層)/Ag埋込み不規則配列グラフェン層(第1負極活物質層)、モノセル(mono-cell)全固体二次電池
蒸着温度を850℃に変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極及び全固体二次電池を製造した。
【0190】
厚さ20μm Cu箔の一面上に第1保護層であるカーボン層及び第1負極活物質層である負極活物質含有カーボン層を順次に蒸着して、負極を準備した。
【0191】
第1保護層は、Cu箔の表面に対して水平に配列されるグラフェンが多層に積層された構造を有した。
【0192】
第1負極活物質層は、不規則的に配置されるフレーク状のグラフェンからなる炭素系材料マトリックスが配置され、炭素系材料マトリックス内に負極活物質であるAg粒子が分散されて埋め込まれた構造を有した。
【0193】
Ag粒子表面に非晶質炭素(amorphous carbon)を含むシェルがコーティングされた。
【0194】
第1保護層であるカーボン層の厚さは、約500nmであった。第1負極活物質層であるAg含有カーボン層の厚さは、約3μmであった。
【0195】
製造された負極の断面に対する透過電子顕微鏡(TEM)及び高解像度走査電子顕微鏡(HR-SEM)測定を通じて、第1保護層がCu集電体表面に対して平行な方向に配列されて積層されるグラフェンを含むことを確認した。また、第1負極活物質層が不規則的に配置されるグラフェンとAgコアとを含むことを確認した。また、Agコア上に配置された非晶質炭素を含むシェルの存在を確認した。
【0196】
実施例3:アセチレン800℃、突出配列グラフェン層(第1保護層)/Ag埋込み不規則配列グラフェン層(第1負極活物質層)、モノセル(mono-cell)全固体二次電池
蒸着温度を800℃に変更し、炭化水素ガスをアセチレンに変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極及び全固体二次電池を製造した。
【0197】
厚さ20μm Cu箔の一面上に第1保護層であるカーボン層及び第1負極活物質層である負極活物質含有カーボン層を順次に蒸着して、負極を準備した。
【0198】
第1保護層は、Cu箔の表面に対して突出する方向に配列されるグラフェンが多層に積層された構造を有した。
【0199】
第1負極活物質層は、不規則的に配置されるフレーク状のグラフェンからなる炭素系材料マトリックスが配置され、炭素系材料マトリックス内に負極活物質であるAg粒子が分散されて埋め込まれた構造を有した。
【0200】
Ag粒子コア表面に非晶質炭素(amorphous carbon)を含むシェルがコーティングされた。第1負極活物質層は、不規則的に配置されるグラフェンによって炭素系材料マトリックス内部に気孔を含んでいる。
【0201】
第1保護層であるカーボン層の厚さは、約500nmであった。第1負極活物質層であるAg含有カーボン層の厚さは、約3μmであった。
【0202】
製造された負極の断面に対する透過電子顕微鏡(TEM)及び高解像度走査電子顕微鏡(HR-SEM)測定を通じて、第1保護層がCu集電体表面に対して突出する方向に配列されて積層されるグラフェンを含むことを確認した。また、第1負極活物質層が不規則的に配置されるグラフェンとAgコアを含むことを確認した。また、Agコア上に配置された非晶質炭素を含むシェルの存在を確認した。
【0203】
実施例4:アセチレン600℃、突出配列グラフェン層(第1保護層)/Ag埋込み不規則配列グラフェン層(第1負極活物質層)、モノセル(mono-cell)全固体二次電池
熱処理温度を600℃に変更し、炭化水素ガスをアセチレンに変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極及び全固体二次電池を製造した。
【0204】
厚さ20μm Cu箔の一面上に第1保護層であるカーボン層及び第1負極活物質層である負極活物質含有カーボン層が順次に蒸着によってコーティングされた負極集電体を準備した。
【0205】
第1保護層は、Cu箔の表面に対して突出する方向に配列されるグラフェンが多層に積層された構造を有した。
【0206】
第1負極活物質層は、不規則的に配置されるフレーク状のグラフェンからなる炭素系材料マトリックスが配置され、炭素系材料マトリックス内に負極活物質であるAg粒子が分されて埋め込まれた構造を有した。
【0207】
Ag粒子コア表面に非晶質炭素(amorphous carbon)を含むシェルがコーティングされた。第1負極活物質層は、不規則的に配置されるグラフェンによって炭素系材料マトリックス内部に気孔を含んでいる。
【0208】
実施例4の第1負極活物質層の気孔率は、実施例3の第1負極活物質層の気孔率に比べてさらに高かった。
【0209】
第1保護層であるカーボン層の厚さは、約500nmであった。第1負極活物質層であるAg含有カーボン層の厚さは、約3μmであった。
【0210】
製造された負極の断面に対する透過電子顕微鏡(TEM)及び高解像度走査電子顕微鏡(HR-SEM)測定を通じて、第1保護層がCu集電体表面に対して突出する方向に配列されて積層されるグラフェンを含むことを確認した。また、第1負極活物質層が不規則的に配置されるグラフェンとAgコアを含むことを確認した。また、Agコア上に配置された非晶質炭素を含むシェルの存在を確認した。
【0211】
実施例5:バイセル(bi-cell)全固体二次電池
(固体電解質層、負極層及び不活性部材の製造)
実施例1と同じ方法で製造した。
【0212】
(正極層製造)
正極活物質としてLiO-ZrO(LZO)コーティングされたLiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。LZOコーティングされた正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造した。固体電解質としてアルジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLiPSCl(D50=0.5μm、結晶質)を準備した。バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダを準備した。導電材として炭素ナノ繊維(CNF)を準備した。このような材料を正極活物質:固体電解質:導電材:バインダ=84:11.5:3:1.5の重量比でキシレン(xylene)溶媒と混合したスラリーをシート状に成形した後、40℃で8時間真空乾燥させて正極シートを製造した。両面にカーボン層コーティングされたアルミニウム箔からなる正極集電体の両面上に、製造された正極シートをそれぞれ配置し、85℃で加温ロールプレス(heated roll press)して正極層を製造した。正極層の全体厚さは、約220μmであった。正極活物質層の厚さは、それぞれ約96μmであり、カーボンコーティングされたアルミニウム箔の厚さは、約28μmであった。
【0213】
(全固体二次電池の製造)
図4を参照すれば、負極層上に、第1負極活物質層が固体電解質層と接触するように固体電解質層を配置した。固体電解質層上に難燃性不活性部材を熱加圧で配置して、負極層/固体電解質層/不活性部材積層体を2個準備した。
【0214】
正極層の両面上に、前記不活性部材を正極活物質層に対向するようにそれぞれ配置して、負極層/固体電解質層/正極層/固体電解質層/負極層電極組立体(electrode assembly)を準備した。不活性部材は、正極層周囲に正極層の側面を取り囲んで固体電解質層と接触するように配置した。不活性部材はガスケットとして使用された。正極層は、固体電解質層の中心部に配置され、ガスケットが正極層を取り囲んで固体電解質層の末端部まで延びて配置された。正極層の面積は、固体電解質層面積の約90%であり、正極層が配置されていない固体電解質層の残り10%の面積全体にガスケットが配置された。
【0215】
前記準備された電極組立体を使用して、実施例1と同じ方法で全固体二次電池を製造した。
【0216】
比較例1:コーティング層不在(free)負極層
負極層として厚さ20μm Cu箔をそのまま使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極及び全固体二次電池を製造した。
【0217】
比較例2:カーボン層(第1保護層)単独(第1負極活物質層省略)負極層
厚さ20μm Cu箔の一面上に、Ag前駆体化合物の導入なしに、第1保護層であるカーボン層のみ導入されたことを除いては、実施例1と同じ方法で負極及び全固体二次電池を製造した。
【0218】
比較例3:グラフェン湿式コーティング(第1保護層)+Ag-カーボン湿式コーティング(第1負極活物質層)負極層
厚さ20μm Cu箔の一面上に第1保護層及び第1負極活物質層をそれぞれ湿式によって導入したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極及び全固体二次電池を製造した。
【0219】
負極層は、下記方法で製造した。
【0220】
(負極層製造)
厚さ20μm Cu箔の一面上にカーボン層及び第1負極活物質層が湿式コーティングされた負極層を準備した。
【0221】
カーボン層は、グラフェン分散液をCu箔上にコーティングした後、乾燥させて製造した。グラフェン分散液は、グラフェン酸化物(graphene oxide)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダをN-メチルピロリドンに分散させて製造した。
【0222】
負極活物質として一次粒径が30nm程度であるカーボンブラック(CB)及び平均粒径(D50)が約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0223】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子を3:1の重量比で混合した混合粉末4gを容器に入れ、そこにPVDFバインダ(クレハ社の#9300)が7重量%含まれたNMP溶液を4g追加して混合溶液を準備した。次いで、該混合溶液にNMPを少しずつ添加しつつ、混合溶液を撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーを準備された負極層のカーボン層上にバーコータ(bar coater)を用いて塗布し、空気中において80℃で10分間乾燥させた。これにより、得られた積層体を40℃で10時間真空乾燥した。乾燥した積層体をロールプレス(cold roll press)して積層体の第1負極活物質層の表面を平坦化させた。以上の工程によって負極層を作製した。
【0224】
負極層が含む第1負極活物質層の厚さは、約10μmであった。第1保護層であるカーボン層の厚さは、約1μmであった。
【0225】
参考例1:不活性部材不在(free)
正極活物質層周囲に不活性部材を配置していないことを除いては、実施例1と同じ方法で全固体二次電池を製造した。
【0226】
評価例1:結晶性及び気孔率評価
実施例1ないし4で製造された負極層の結晶性を、XRD、Raman及び透過電子顕微鏡を使用して評価した。
【0227】
負極層に対するラマンスペクトルで非晶質炭素に由来する1350cm-1近傍のDバンドピーク強度(I)と結晶性炭素に由来する1580cm-1近傍のGバンドピーク強度(I)の相対的なピーク強度の比率(I/I)から負極層の相対的な結晶性を判断した。ピーク強度の比率(I/I)が高いほど結晶性が低く、ピーク強度の比率(I/I)が低いほど結晶性が高い。測定結果を下記表1に示す。
【0228】
また、負極層に対するXRDスペクトルにおけるピークの強度及び/または半値幅及び負極層に対する高解像度TEMイメージ及びその回折パターンから、相対的な結晶性を判断した。
【0229】
実施例1ないし4で製造された負極層の気孔率を窒素ガス吸着法(multi-point BET)を使用して測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0230】
結晶性及び気孔率は、負極層の第1負極活物質層及び第1保護層に係わるものである。
【0231】
実施例1で製造された負極層の結晶性が相対的に最も高く、実施例4で製造された負極層の結晶性が相対的に最も低かった。
【0232】
実施例1ないし4の全固体二次電池で負極層の結晶性の相対的な順序は、実施例1>実施例2>実施例3>実施例4であった。
【0233】
実施例1で製造された負極層の気孔率が相対的に最も低く、実施例4で製造された負極層の気孔率が相対的に最も高かった。
【0234】
実施例1ないし4の全固体二次電池において負極層の気孔率の相対的な順序は、実施例4>実施例3>実施例2>実施例1であった。
【0235】
【表1】
【0236】
評価例2:充放電試験
実施例1ないし5、比較例1ないし3及び参考例1で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0237】
第1サイクルは、電池電圧が4.2Vになるまで0.1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達すれば、0.05Cカットオフ条件で4.2Vで定電圧充電を実施した。次いで、電池電圧が2.6Vになるまで0.1Cの定電流で放電を実施した。
【0238】
第2サイクル後には、第1サイクルと同じ条件で充電及び放電を1250サイクルまで実施した。短絡発生時点のサイクル数が増加するほど寿命特性が向上することを意味する。測定結果を下記表2に示す。
【0239】
【表2】
【0240】
表2に示されたように、実施例1ないし4の全固体二次電池は、比較例1ないし3の全固体二次電池に比べて向上した寿命特性を提供した。
【0241】
実施例4の全固体二次電池は、実施例1ないし3の全固体二次電池に比べて、第1保護層及び第1負極活物質層の結晶性が相対的に低くなることにより、固体電解質によって負極集電体の劣化が相対的に増加すると判断された。
【0242】
比較例1の全固体二次電池は、第1保護層及び第1負極活物質層をいずれも含まないことにより、実施例1ないし4の全固体二次電池に比べて、寿命特性が非常に劣った。比較例1の全固体二次電池では、第1保護層及び第1負極活物質層が存在しないことにより、負極集電体が固体電解質によって容易に劣化され、リチウムデンドライトの成長が促進されたためであると判断された。
【0243】
比較例2の全固体二次電池は、第1負極活物質層を含まないことにより、実施例1ないし4の全固体二次電池に比べて、寿命特性が相対的に劣った。比較例2の全固体二次電池は、第1負極活物質層が存在しないことにより、リチウムデンドライトの生成及び成長を効果的に抑制することができず、これにより、全固体二次電池が劣化されたためであると判断された。
【0244】
比較例3の全固体二次電池は、湿式グラフェン層及び湿式第1負極活物質層を含むことにより、実施例1ないし4の全固体二次電池に比べて、寿命特性が相対的に劣った。比較例3の全固体二次電池で、湿式グラフェン層及び湿式第1負極活物質層が実施例1ないし4の第1保護層及び第1負極活物質層に比べて、固体電解質による負極集電体の劣化を効果的に防止できなかったためであると判断された。
【0245】
表2に示されていないが、実施例5の全固体二次電池は、実施例1の全固体二次電池に比べて、構造的安定性が向上することにより、寿命特性が相対的に向上した。
【0246】
表2に示されていないが、参考例1の全固体二次電池は、不活性部材ガスケットを含まないことにより、実施例1ないし4の全固体二次電池に比べて寿命特性が劣っていた。
【0247】
実施例1ないし4の全固体二次電池で第1サイクルの充電が完了した後、それらの電池の断面に対するSEMイメージを測定して、固体電解質層と負極集電体との間に第2負極活物質層に該当するリチウム金属析出層が形成されたことを確認した。
【0248】
実施例1ないし4の全固体二次電池において第1保護層(カーボン層)の体積密度の相対的な大きさは、実施例1≒実施例2>実施例3≒実施例4であった。実施例1ないし4の乾式第1保護層の体積密度は、比較例3の湿式第1保護層の体積密度に比べてさらに高かった。
【0249】
前述したように、本実施例に係わる全固体二次電池は、様々な携帯機器や車両などに適用されうる。
【0250】
以上添付された図面を参照して例示的な具現例について詳細に説明したが、本創意的思想は、そのような例に限定されない。本創意的思想が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で各種の変更例または修正例を導出可能であるということは自明であり、それらも本創意的思想の技術的範囲に属するということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0251】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体
22 第1負極活物質層
23 第1保護層
30 固体電解質層
40 不活性部材
図1
図2
図3
図4
図5