(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138485
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112353
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2020565656の分割
【原出願日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019002235
(32)【優先日】2019-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】井田 真高
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 琢己
(72)【発明者】
【氏名】松橋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 暢章
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非加算性感光材料を使用した場合でも、転写パターンの線幅や厚さの変化を防止する。
【解決手段】露光装置は、基板を保持するステージと、第1および第2レンズエレメントを含むフライアイレンズと、第1レンズエレメントを遮光する第1遮光部と、第2レンズエレメントを遮光する第2遮光部と、基板の照射領域を設定する絞りと、遮光量が変化するように第1および第2遮光部を所定方向に移動させる制御系と、を含み、入射面において第1および第2レンズエレメントのそれぞれは、絞りに対応する第1領域と、絞りの開口に対応する第2領域と、を含み、フライアイレンズの光軸方向において、第1遮光部の所定方向における端が第1レンズエレメントの第1領域と重なり第2領域と重ならず、かつ、第2遮光部の所定方向における端が第2レンズエレメントの第2領域と重なる状態で、制御系は、第1および第2遮光部を移動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するステージと、
第1レンズエレメントと第2レンズエレメントと、を含み、照明光が入射する入射面が前記基板と共役な位置に位置するフライアイレンズと、
前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記第1レンズエレメントの少なくとも一部を遮光する第1遮光部と、
前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記第2レンズエレメントの少なくとも一部を遮光する第2遮光部と、
前記フライアイレンズと前記基板の間の光路上であって前記基板と共役な位置に位置し、前記照明光による前記基板の照射領域を設定する絞りと、
前記第1遮光部による前記第1レンズエレメントの遮光量および前記第2遮光部による前記第2レンズエレメントの遮光量が変化するように、前記第1遮光部および前記第2遮光部を所定方向に移動させる制御系と、を含み、
前記入射面において前記第1レンズエレメントおよび前記第2レンズエレメントのそれぞれは、前記絞りに対応する第1領域と、前記絞りの開口に対応する第2領域と、を含み、
前記フライアイレンズの光軸方向において、前記第1遮光部の前記所定方向における端が前記第1レンズエレメントの前記第1領域と重なり前記第2領域と重ならず、かつ、前記第2遮光部の前記所定方向における端が前記第2レンズエレメントの前記第2領域と重なる状態で、前記制御系は、前記第1遮光部および前記第2遮光部を前記所定方向に移動させる、露光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の露光装置において、
前記第1遮光部および前記第2遮光部は、前記フライアイレンズの前記入射面の近傍に設けられ、
前記フライアイレンズは、第1方向に配列されている複数の前記第1レンズエレメントを含む第1レンズブロックと、前記第1方向に配列されている複数の前記第2レンズエレメントを含み、前記第1方向と交差する第2方向に前記第1レンズブロックと並んだ第2レンズブロックと、を含み、
前記第1遮光部および前記第2遮光部が前記所定方向に移動するのにともない、前記光軸方向において、前記第1遮光部と重なる前記第1レンズエレメントの数および前記第2遮光部と重なる前記第2レンズエレメントの数が増加するように、前記第1遮光部および前記第2遮光部のそれぞれは前記所定方向に延びている、露光装置。
【請求項3】
請求項2に記載の露光装置であって、
前記絞りを含む投影光学系を含み、
前記ステージは、前記基板において走査方向に延びるオーバーラップ部が前記投影光学系を介した光で複数回照射されるように、前記投影光学系に対して前記基板を前記走査方向および前記走査方向と交差する非走査方向に移動させ、
前記第1遮光部および前記第2遮光部は、前記オーバーラップ部の前記非走査方向の幅、前記入射面と前記基板との横倍率、および、前記入射面における前記照明光の開口数に応じて定まる所定距離、前記入射面から前記光軸方向に離れた位置に設けられる、露光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の露光装置において、
前記第1遮光部および前記第2遮光部は、前記入射面、または、前記入射面より光源側にある前記入射面と共役な共役位置、または、前記共役位置から所定距離離れた位置に設けられている、露光装置。
【請求項5】
請求項4に記載の露光装置において、
前記制御系は、前記第1遮光部および前記第2遮光部を、前記所定方向に独立して移動させる、露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の露光装置であって、
前記絞りを含む投影光学系を含み、
前記ステージは、前記基板において走査方向に延びるオーバーラップ部が前記投影光学系を介した光で複数回照射されるように、前記投影光学系に対して前記基板を前記走査方向および前記走査方向と交差する非走査方向に移動させ、
前記第1遮光部および前記第2遮光部は、前記オーバーラップ部の前記非走査方向の幅、前記入射面と前記基板との横倍率、および、前記入射面における前記照明光の開口数に応じて定まる所定距離、前記入射面から前記光軸方向に離れた位置に設けられる、露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の露光装置において、
前記フライアイレンズにおいて、前記光軸方向と交差する第1方向に配列されている複数のレンズエレメントを含むレンズブロックが、前記光軸方向および前記第1方向と交差する第2方向に複数配列され、
遮光部材は、少なくとも1つの前記レンズブロックの前記第1方向の一方の側に配置されている1つ以上のレンズエレメントの、前記オーバーラップ部以外の非オーバーラップ部と共役な部分の少なくとも一部を遮光する、露光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の露光装置において、
前記遮光部材は、複数の前記レンズブロックのうちのm個(mは2以上の自然数)のレンズブロックのそれぞれに対応して、m個配置される、露光装置。
【請求項9】
請求項8に記載の露光装置において、
前記m個の前記遮光部材の前記第1方向の前記一方の側の反対側である他方の側の端部は、前記レンズブロック内の前記レンズエレメントの前記第1方向の配列の周期をPとして、前記第1方向にそれぞれP/mだけ異なる位置に設定されている、露光装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載の露光装置において、
前記投影光学系および前記フライアイレンズを含む照明光学系を複数並列して備え、
一度の走査露光により複数の前記投影光学系による走査露光視野を前記非走査方向に複数個オーバーラップさせて前記基板を露光する、露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスク上のパターン原版を大型基板に露光転写するための装置として、マスクおよび基板を、投影光学系に対して相対走査して露光を行なうスキャン型露光装置が知られている。スキャン露光により、露光視野はスキャン方向(走査方向)に拡大されるが、さらにスキャン方向と交差する方向(非スキャン方向)にも露光視野を拡大するために、複数回のスキャン露光を、その露光領域を非スキャン方向にオーバーラップさせて行う露光装置も知られている。
さらに、複数の投影光学系を非スキャン方向に並列的に備え、複数の投影光学系が露光する露光視野の一部をオーバーラップさせつつ露光を行うことで、一回の走査により基板上に電子回路を露光転写する方法も知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2016-54230号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、露光装置は、基板を保持するステージと、第1レンズエレメントと第2レンズエレメントと、を含み、照明光が入射する入射面が前記基板と共役な位置に位置するフライアイレンズと、前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記第1レンズエレメントの少なくとも一部を遮光する第1遮光部と、前記フライアイレンズの前記入射面側に位置し、前記第2レンズエレメントの少なくとも一部を遮光する第2遮光部と、前記フライアイレンズと前記基板の間の光路上であって前記基板と共役な位置に位置し、前記照明光による前記基板の照射領域を設定する絞りと、前記第1遮光部による前記第1レンズエレメントの遮光量および前記第2遮光部による前記第2レンズエレメントの遮光量が変化するように、前記第1遮光部および前記第2遮光部を所定方向に移動させる制御系と、を含み、前記入射面において前記第1レンズエレメントおよび前記第2レンズエレメントのそれぞれは、前記絞りに対応する第1領域と、前記絞りの開口に対応する第2領域と、を含み、前記フライアイレンズの光軸方向において、前記第1遮光部の前記所定方向における端が前記第1レンズエレメントの前記第1領域と重なり前記第2領域と重ならず、かつ、前記第2遮光部の前記所定方向における端が前記第2レンズエレメントの前記第2領域と重なる状態で、前記制御系は、前記第1遮光部および前記第2遮光部を前記所定方向に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1実施形態の露光装置の構成を示す側面図。
【
図2】第1実施形態の露光装置の一部分を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態の露光装置のフライアイレンズからマスクまでを拡大して示した斜視図。
【
図4】第1実施形態の露光装置のマスク上の視野と基板上の視野との関係を表す図。
図4(a1)、
図4(a2)および
図4(a3)は、それぞれ
図1中の投影光学系19cにおけるマスク上の視野、投影光学系内の視野絞り、基板上の視野を示す図、
図4(b1)、
図4(b2)および
図4(b3)は、それぞれ
図1中の投影光学系19bにおけるマスク上の視野、投影光学系内の視野絞り、基板上の視野を示す図。
【
図5】第1実施形態の露光装置が基板に対して走査露光する際に、基板上に照射される露光エネルギー、および感光材料における実効感光量の一例を示す図。
図5(a)は各投影光学系の基板上の露光視野を示す図、
図5(b)は基板22上に形成される露光領域を示す図、
図5(c)は基板上に照射される積算露光量の一例を示す図、
図5(d)は感光材料における実効感光量の一例を示す図。
【
図6】第1実施形態の露光装置のフライアイレンズ、遮光部材および遮光部材保持部を、光源側から見た図。
【
図7】第1実施形態の露光装置が基板に対して走査露光する際に、基板上に照射される露光エネルギー、および感光材料における実効感光量の一例を示す図。
図7(a)は各投影光学系の基板上の露光視野を示す図、
図7(b)は基板上に照射される積算露光量の一例を示す図、
図7(c)は感光材料における実効感光量の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(露光装置の第1実施形態)
図1は、第1実施形態の露光装置100を示す側面図である。後述するように露光装置100は、5本の投影光学系19a~19eを備えているが、
図1には、そのうちの2本である投影光学系19a、19bのみが示されている。
投影光学系19a~19eは、投影倍率(横倍率)が+1倍の正立正像を形成する光学系であり、マスク15に描画されているパターンを、基板22の上面に形成されている感光材料に露光転写する。
【0007】
基板22は、不図示の基板ホルダーを介して基板ステージ27により保持される。基板ステージ27は、不図示のリニアモータ等により、基板ステージ定盤28上をX方向に走査するとともに、Y方向に移動可能となっている。基板ステージ27のX方向の位置は、基板ステージ27に取り付けられている移動鏡24の位置を介してレーザー干渉計25により計測される。同様に基板ステージ27のY方向の位置も、不図示のレーザー干渉計により計測される。
位置検出光学系23は、基板22上に形成されているアライメントマーク等の既存のパターンの位置を検出する。
【0008】
マスク15は、マスクステージ16により保持される。マスクステージ16は、不図示のリニアモータ等により、マスクステージ定盤17上をX方向に走査するとともに、Y方向に移動可能となっている。マスクステージ16のX方向の位置は、マスクステージ16に取り付けられている移動鏡13の位置を介してレーザー干渉計14により計測される。同様にマスクステージ16のY方向の位置も、不図示のレーザー干渉計により計測される。
【0009】
不図示の制御系は、レーザー干渉計14,25等の計測値に基づいて、不図示のリニアモータ等を制御して、マスクステージ16および基板ステージ27のXY位置を制御する。不図示の制御系は、基板22へのマスクパターンの露光に際しては、マスク15と基板22とを、投影光学系19a~19eによる結像関係を保ったまま、投影光学系19a~19eに対して相対的に、X方向に略同一速度で走査させる。
本明細書では、露光に際して、基板22が走査される方向(X方向)を「走査方向」および「スキャン方向」とも呼ぶ。また、基板22の面内に含まれる方向であってX方向と直交する方向(Y方向)を「非走査方向」および「非スキャン方向」とも呼ぶ。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。
なお、
図1および以下の各図に矢印で示したX方向、Y方向、およびZ方向は、その矢印の指し示す方向を+方向とする。
【0010】
図2は、第1実施形態の露光装置100の照明光学系ILa~ILeの下流部から基板22までの部分を示す斜視図である。以下、
図2も参照して説明を続ける。
図2に示したとおり、5つの投影光学系19a~19eのうち、3つの投影光学系19a、19c、19e(以下、総称してまたは個々に「第1列の投影光学系19F」とも呼ぶ)は、Y方向に並んで配置されている。そして、2つの投影光学系19b、19d(以下、総称してまたは個々に「第2列の投影光学系19R」とも呼ぶ)は、Y方向に並んで、第1列の投影光学系19Fよりも+X側に配置されている。
第1列の投影光学系19Fの各投影光学系は、その光軸がY方向に所定の間隔で離れて配置される。第2列の投影光学系19Rの各光学系も第1列の投影光学系19Fと同様に配置される。また、投影光学系19bは、その光軸のY方向の位置が、投影光学系19aと投影光学系19cのそれぞれの光軸を結んだ直線の略中心と一致するように、配置される。また、投影光学系19dも、投影光学系19bと同様に、配置される。
【0011】
第1実施形態の露光装置100は、各投影光学系19a~19eのそれぞれに対応して、複数の照明光学系ILa~ILeを備えている。一例として、
図1に示されるように、投影光学系19aに対応する照明光学系ILaは、光軸IXaに沿って、インプットレンズ8a、フライアイレンズ11aおよびコンデンサーレンズ12aを備えている。他の照明光学系ILb~ILeも同様に、インプットレンズ8b~8e、フライアイレンズ11b~11e、およびコンデンサーレンズ12b~12eを含んでいる。なお、上述のように
図2には、各照明光学系ILa~ILeのうち、フライアイレンズ11a~11e、およびコンデンサーレンズ12a~12eのみが示されている。
なお、側面図である
図1には、投影光学系19c~19eは、投影光学系19aまたは19bとX方向の位置が重なるため示していない。同様に、照明光学系ILc~ILeも、照明光学系ILaまたはILbとX方向の位置が重なるため示していない。
【0012】
ランプ等の光源1から供給される照明光は、楕円ミラー2、折り曲げミラー3、リレーレンズ4、折り曲げミラー5、リレーレンズ6、光ファイバー7等の導光光学系を介して、各照明光学系ILa~ILeに供給される。光ファイバー7は、1つの入射側71に入射した照明光を略均等に分岐して、5つの射出側72a~72eに射出する。光ファイバー7の5つの射出側72a~72eのそれぞれから射出された照明光は、各照明光学系ILa~ILeの中のインプットレンズ8a~8eに入射する。そして、照明光は、さらにフライアイレンズ11a~11e、およびコンデンサーレンズ12a~12eを経て、マスク15上の各照明領域MIa~MIeに照射される。
【0013】
図3は、一例として、照明光学系ILcに含まれるフライアイレンズ11c、およびコンデンサーレンズ12cと、マスク15上の照明領域MIcを拡大して示した斜視図である。
フライアイレンズ11cは、照明領域MIcと相似形の、Y方向に長い長方形の断面形状(XY面内の形状)を有するレンズエレメント110が、X方向およびY方向に複数個配列されて形成されている。各レンズエレメント110の入射面(
図3中の上方の面、すなわち+Z側の面)は、各レンズエレメント110およびコンデンサーレンズ12cからなる光学系により、マスク15上の照明領域MIcに対する共役面となっている。従って、基板22上の露光視野PIcに対する共役面でもある。それぞれのレンズエレメント110の入射面に照射される照明光は、マスク15上の照明領域MIcに重畳して照射される。これにより、照明領域MIc内の照明光の照度が略均一化される。
【0014】
照明光学系ILcを除く他の照明光学系ILa~ILeの構成も、
図3に示した構成と同様である。
フライアイレンズ11a~11eは、それぞれの照明領域MIa~照明領域MIeに照明光を重畳して照射するオプチカルインテグレーターの一例である。
【0015】
投影光学系19a~19eのそれぞれは、正立正像の像を形成するために、例えば2回結像型の光学系により構成される。この場合、各投影光学系19a~19eの上半分を構成する光学系により、各投影光学系19a~19eの光軸PXa~PXeの方向(Z方向)の中間付近にある中間像面20に、マスク15のパターンの中間像が形成される。中間像は、各投影光学系19a~19eの下半分を構成する光学系により再度結像され、基板22上に、マスク15のパターンの像が形成される。
【0016】
中間像面20は基板22と共役であるため、各投影光学系19a~19e内の中間像面20にそれぞれ視野絞り21a~21eを配置することにより、基板22上の各投影光学系19a~19eによる露光視野PIa~PIeを規定することができる。
【0017】
図4は、マスク15上の照明領域MIa~MIeと、視野絞り21a~21eと、露光視野PIa~PIeとの関係を示す図である。
図4(a1)は、投影光学系19cに対応するマスク15上の照明領域MIcを示す図であり、照明領域MIcは、フライアイレンズ11cのレンズエレメント110の断面形状と相似な長方形となっている。
【0018】
図4(a2)は、投影光学系19c内の視野絞り21cと、そこに照射される照明光MIc2を示す図である。視野絞り21cには、マスク15上の照明領域MIcの中間像である破線で示した照明光MIc2が照射される。照明光MIc2のうち、視野絞り21cの遮光部(斜線で示した部分)に照射された照明光は視野絞り21cにより遮光される。
一方、視野絞り21cの開口部21coを透過した照明光は、投影光学系19cの下半分を構成する光学系により基板22上で再度結像し、基板22上に露光視野PIcを形成する。
【0019】
図4(a3)は、基板22上の露光視野PIcを示す図である。
一例として、投影光学系19c~19eが全屈折光学系から成るとき、中間像である照明光MIC2は照明領域MIcに対する倒立正像(像のX方向およびY方向が共に反転し、鏡像ではない像)であり、露光視野PIcは視野絞り21cに対する倒立正像となる。従って、
図4(a2)および
図4(a3)に示したとおり、視野絞り21cの開口部21coの形状と、露光視野PIcの形状は、相互にZ軸回りに180度回転したものと一致する。
【0020】
露光視野PIcは、一例として、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が+X側に、長辺が-X側にある台形である。ここで、露光視野PIcのうち、+X側の短辺の全てと-X側の長辺の一部で囲まれた長方形の領域を、中心領域PIccと呼ぶ。一方、露光視野PIcのうち、中心領域PIccに含まれない+Y方向の端部を左端領域PIclと呼び、露光視野PIcのうち、中心領域PIccに含まれない-Y方向の端部を右端領域PIcrと呼ぶ。
中心領域PIccのY方向の長さ(幅)を幅Wsと呼び、左端領域PIclおよび右端領域PIcrのY方向の長さ(幅)は等しく、これを幅Woと呼ぶ。
【0021】
一方、
図4(b1)~
図4(b3)は、それぞれ投影光学系19bに対応する、マスク15上の照明領域MIbと、視野絞り21bと、露光視野PIbとを示す図である。
図4(b2)に示すとおり、投影光学系19bにおいては、視野絞り21bの開口部21boの形状は、投影光学系19cの視野絞り21cの開口部21coの形状をX方向に反転した形状となっている。その結果、
図4(b3)に示すとおり、投影光学系19bの露光視野PIbの形状は、投影光学系19cの露光視野PIcの形状をX方向に反転した形状となっている。
【0022】
上述の露光視野PIcと同様に、露光視野PIbについても、-X側の短辺の全てと+X側の長辺の一部で囲まれた長方形の領域を、中心領域PIbcと呼ぶ。露光視野PIbのうち、中心領域PIbcに含まれない+Y方向の端部を左端領域PIblと呼び、露光視野PIbのうち、中心領域PIbcに含まれない-Y方向の端部を右端領域PIcrと呼ぶ。
【0023】
図5(a)は、基板22上での、5つの投影光学系19a~19eの各露光視野PIa~PIeを示す図である。第1列の投影光学系19Fである投影光学系19a、19eの露光視野PIa、PIeは、上述した投影光学系19cの露光視野PIcと同様に、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が+X側に、長辺が-X側にある台形である。一方、第2列の投影光学系19Rである投影光学系19dの露光視野PIdは、上述した投影光学系19bの露光視野PIbと同様に、Y方向に平行な2辺のうちの短辺が-X側に、長辺が+X側にある台形である。
【0024】
投影光学系19a、19d、19eの露光視野PIa、PId、PIeについても、上述の露光視野PIb、PIcと同様に、中心領域PIac、PIdc、PIec、および左端領域PIal、PIdl、PIel、右端領域PIar、PIdr、PIerを定義できる。ただし、-Y方向の端に配置されている露光視野PIaは、視野絞り21aにより、その-Y方向の端部がX方向に平行となるように照明光を遮光するため右端領域PIarは存在しない。また、+Y方向の端に配置されている露光視野PIeは、視野絞り21aにより、その+Y方向の端部がX方向に平行となるように照明光を遮光するため左端領域PIalは存在しない。なお、視野絞り21aと21eとの形状を、視野絞り21cの形状と異ならせるようにしても良いし、別の部材を用いて、露光視野PIaでは右端領域PIarが存在しないよう、照明光を遮光するようにしてもよい。
【0025】
各露光視野PIa~PIeの各中心領域PIac~PIecのY方向の長さはいずれも幅Wsに等しく、左端領域PIal~PIdlおよび右端領域PIbr~PIerの長さは、いずれも幅Woに等しい。そして、露光視野PIa~PIeのうちY方向に隣接する2つの露光視野において、隣接する左端領域PIal~PIdlと右端領域PIbr~PIerのY方向の位置は、一致している。
各露光視野PIa~PIeのこのような形状および位置の設定は、投影光学系19a~19eの配置位置、および視野絞り21a~21eの開口部21ao~21eoの形状および位置を設定することにより行なう。
【0026】
図5(b)は、基板22が基板ステージによりX方向に走査され、
図5(a)に示した露光視野PIa~PIeにより露光された際に、基板22上に形成される露光領域を示す図である。基板22上には、走査露光により各露光視野PIa~PIeにより露光される走査露光視野SIa~SIeが形成される。
図5(b)において、第1列の投影光学系19a、19c、19eが形成する走査露光視野SIa、SIc、SIeは2点鎖線で示し、第2列の投影光学系19b、19dが形成する走査露光視野SIb、SIdは1点鎖線で示している。
【0027】
これらの走査露光視野SIa~SIeは、露光視野PIa~PIeがX方向への走査露光によりX方向に延長されたものである。各走査露光視野SIa~SIeのY方向(非走査方向)の端部は、それぞれ隣接する他の走査露光視野SIa~SIeの非走査方向の端部とオーバーラップしている。たとえば、左端領域PIalによる露光領域と右端領域PIbrによる露光領域とが一致する。他の露光領域においても同様であるため、説明は省略する。
【0028】
図5(c)は、X方向への走査露光により基板22上に露光される積算露光量Eを示すグラフである。グラフの縦軸は積算露光量、横軸はY方向の座標である。
図5(a)に示したとおり、Y方向の各微小区間で各露光視野PIa~PIeをX方向に積算した値は等しく、かつ、フライアイレンズ11の作用等により各露光視野PIa~PIe内の照度は均一であるため、基板22上の積算露光量Eは一定の値E1となる。
すなわち、Y方向のうち、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより露光された部分(以下、「非オーバーラップ部」とも呼ぶ)Sa~Seにおける積算露光量Eと、各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光された部分(以下、「オーバーラップ部」とも呼ぶ)Oa~Odにおける積算露光量Eとは、共に積算露光量Eの値がE1となり等しくなる。
【0029】
電子デバイス等の製造工程で使用されているフォトレジスト等の感光材料では、実効的な感光量(以下、「実効感光量」とも呼ぶ)は積算露光量に比例する。すなわち積算露光量が同一であれば、その露光が時間的に連続して行われた場合であっても、時間的に複数に分割して行われた場合であっても、感光材料の実効感光量は変わらない。
従って、感光材料への実効感光量も一定値となる。
【0030】
しかし、一部の感光材料では、露光が時間的に連続して行われた場合と、時間的に複数に分割して行われた場合では、積算露光量が同一であっても感光材料の実効感光量が変化する。具体的には、露光が時間的に複数に分割して行われた場合には、時間的に連続して行われた場合に比べて、実効感光量が低下する。
【0031】
図5(d)は、このような一部の感光材料(以下、「非加算性感光材料」とも呼ぶ)に対して、
図5(a)に示した露光視野PIa~PIeを用いてX方向に走査露光した場合の、非加算性感光材料の実効感光量EEを示すグラフである。
各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光されたオーバーラップ部Oa~Odは、始めに第1列の投影光学系19a、19c、19eにより露光され、その後第2列の投影光学系19b、19dにより露光されるため、露光が時間的に分割されて行われている。換言すると、オーバーラップ部Oa~Odは、時間的に離散的に露光が行われる。従って、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより時間的に分割されずに露光された非オーバーラップ部Sa~Seの実効感光量EEに対して、オーバーラップ部Oa~Odの実効感光量EEが低下している。具体的には、非オーバーラップ部Sa~Seの実効感光量EEの値がEE1に対して、オーバーラップ部Oa~Odの実効感光量EEの値はEE1よりも小さくなる。
【0032】
この結果、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合には、オーバーラップ部Oa~Odと非オーバーラップ部Sa~Seとで、実効感光量EEが異なることから、転写されたパターンの線幅や厚さが変化してしまうことになる。
【0033】
そこで、第1実施形態の露光装置100では、照明光学系ILa~ILeのそれぞれのフライアイレンズ11a~11eの入射面側、つまりインプットレンズ8a~8eとフライアイレンズ11a~11eとの間の位置、且つフライアイレンズ11a~11eの入射面の近傍に、遮光部材10a~10eを設けている。そして遮光部材10a~10eは、遮光部材保持部9a~9eにより、それぞれの照明光学系ILa~ILeの光軸Ixa~Ixeと略直交する方向であるX方向に移動自在に保持されている。
【0034】
図6は、照明光学系ILcに設けられているフライアイレンズ11c、遮光部材10c、および遮光部材保持部9cを、インプットレンズ8c側から見た図である。以下、
図6を参照して、照明光学系ILcに設けられている遮光部材10c、および遮光部材保持部9cについて説明するが、他の照明光学系ILa~ILeに設けられている遮光部材10a~10e、および遮光部材保持部9a~9eについても同様である。
【0035】
フライアイレンズ11cは、断面がY方向に長い長方形であるレンズエレメント110がX方向に複数配列されたレンズブロックが、Y方向に複数配列されている。各レンズエレメント110は、基板22上に形成される露光視野PIcに対して共役面であるので、
図6には、各レンズエレメント110の中に、露光視野PIcに対応する領域(露光視野対応領域)IPIcを破線で示している。露光視野対応領域IPIcのうち、露光視野PIcの中心領域PIccに対応する部分のY方向の幅は幅IWsである。
【0036】
遮光部材10cを構成する2本の遮光部材10c1、10c2が、上記のレンズブロックのうちの2つに対して、それらの-X方向の側に配置されている1つ以上のレンズエレメント110の+Z側の近傍に配置されている。遮光部材10c1、10c2のY方向の幅W1、W2は、上述の幅IWsと略等しい。
【0037】
遮光部材10c1、10c2は、遮光部材保持部9cの一部であるスライダー9c1に保持され、スライダー9c1は遮光部材保持部9cの本体に対して、不図示の制御系によりX方向に移動自在となっている。スライダー9c1と遮光部材保持部9cの本体との相対位置関係は、エンコーダー等により計測される。
遮光部材保持部9cが遮光部材10c1、10c2をX方向に移動させることにより、遮光部材10c1、10c2により一部のレンズエレメント110を遮光することができる。先述のとおり、遮光部材10c1、10c2のY方向の幅W1、W2は、上述の幅IWsと略等しいことから、遮光部材10c1、10c2は、一部のレンズエレメント110から基板22上の露光視野PIcのうちの中心領域PIccに照射される光を遮光することができる。さらに、スライダー9c1を制御することにより、遮光部材10c1、10c2により遮光されるレンズエレメント110の数、および1つのレンズエレメント110内の遮光された部分の比率を変更することができる。これにより、露光視野PIcのうち中心領域PIccの照度を、左端領域PIclおよび右端領域PIcrの照度に対して、略連続して可変に低下させることができる。
【0038】
従って、遮光部材10cは、基板22上の非オーバーラップ部への積算露光量を、オーバーラップ部への積算露光量に対して小さくする、照度変更部材と解釈することができる。
遮光部材10cは、金属製の薄板であっても良く、透明なガラス板上に遮光部材により形成された遮光膜であってもよい。遮光部材10cは、フィルタのように照明光を完全に遮光するものに限られず、一部の照明光のみを遮光、透過させる部材であっても良い。つまり遮光部材10cは、照度を変更するための照度変更部材であればよい。
他の照明光学系ILa~ILeが備える遮光部材10a~10e、および遮光部材保持部9a~9eについても、上述の遮光部材10cおよび遮光部材保持部9cの構造と、同様である。
【0039】
図7は、遮光部材10a~10eを備えた第1実施形態の露光装置100において、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合の結果を説明する図である。
図7(a)は、
図5(a)と同様に、基板22上の各露光視野PIa~PIeを示す。
図7(b)は、
図5(c)と同様に、X方向への走査露光により基板22上に露光される積算露光量Eを示すグラフである。
図7(b)に示した場合においては、遮光部材保持部9a~9eにより遮光部材10a~10eがフライアイレンズ11a~11eの入射面内に挿入されている。従って、各走査露光視野SIa~SIeの1つにより露光された非オーバーラップ部Sa~Seの積算露光量E2は、各走査露光視野SIa~SIeの2つがオーバーラップして露光されたオーバーラップ部Oa~Odの積算露光量E3と比較して少ない。
【0040】
図7(c)は、
図7(b)に示した積算露光量により、上述の非加算性感光材料に生じる実効感光量EEを示すグラフである。時間的に分割されずに露光される非オーバーラップ部Sa~Seの積算露光量E2を、時間的に分割されて露光されるオーバーラップ部Oa~Odの積算露光量E3に比べて低減することにより、非加算性感光材料の特性が相殺され、実効感光量EEをほぼ一定の値EE2とすることができる。
これにより、非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、各走査露光視野SIa~SIeがオーバーラップするオーバーラップ部Oa~Odと、非オーバーラップ部Sa~Se部との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0041】
遮光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置されるので、フライアイレンズ11cの入射面においては、遮光部材10cのXY方向のエッジは、ぼやけて投影される。逆に言えば、遮光部材10cをフライアイレンズ11cの入射面からZ方向にどれだけ離して配置すれば良いかは、基板22上における遮光部材10cのエッジの半影ボケの量を決定するパラメータである、フライアイレンズ11cの入射面と基板22との横倍率、およびフライアイレンズ11cの入射面における照明光の開口数に基づいて、決定することができる。さらに、基板22上のオーバーラップ部Oa~OdのY方向の幅も加味して決定することができる。なお、遮光部材保持部9a~9eは、遮光部材10a~10eのフライアイレンズ11a~11eの入射面に対するZ方向の位置を変更可能、つまりZ方向における遮光部材10a~10eとフライアイレンズ11a~11eとの距離を変更可能な構成を有していても良い。
【0042】
一例として、オーバーラップ部Oa~OdのY方向の幅をDW、フライアイレンズ11cの入射面に対する基板22の横倍率をβ、フライアイレンズ11cの入射面における照明光の開口数をNAとするとき、遮光部材10cの、フライアイレンズ11cの入射面からのZ方向の距離Dは、
0 ≦ D ≦ 1.2×DW/(β・NA) ・・・(1)
とするのが良い。
距離Dが式(1)を満たす場合、遮光部材10cのエッジによる基板22上の露光量変化(露光量ムラ)の影響をさらに低減することができ、かつ、オーバーラップ部Oa~Odの積算露光量が必要以上に低下することを防止できる。
【0043】
なお、時間的に分割して行う露光に対する非加算性感光材料の実効感光量と積算露光量との関係は、それぞれの非加算性感光材料により異なる。従って、特定の非加算性感光材料に対して実際の露光を行う前に、例えば、遮光部材10cの挿入量(X方向の位置)を異なる数段階に設定した複数の条件でテスト露光、つまり遮光部材10cにより遮光するレンズエレメント110の数を変更してテスト露光を行い、その結果から最適な挿入量を決定すると良い。
また、遮光部材10cの挿入量の決定に際しては、基板ステージ27上に設けた照度センサ26を使用して、露光視野PIc内の中心領域PIccの照度を計測しながら行うと良い。
【0044】
なお、
図6に示した遮光部材10cを構成する2本の遮光部材10c1、10c2のそれぞれの+X方向の端部は、それぞれフライアイレンズ11cのレンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXの半分だけずれている。上述のとおり、各レンズエレメント110中には、露光視野PIcに対応する露光視野対応領域IPIcが存在するが、露光視野対応領域IPIcは、レンズエレメント110のX方向の全面に渡って広がっているわけではない。すなわち、レンズエレメント110のX方向の両端部は、基板22上の露光視野PIcとは対応せず、投影光学系19c内の視野絞り21c上に投影され、視野絞り21cにより遮光される部分である。
【0045】
従って、遮光部材10c1、10c2の+X方向の端部が、レンズエレメント110のX方向の両端部の近傍にある場合には、遮光部材10c1、10c2をX方向に移動しても、基板22上の積算露光量を変更することができない。
そこで、第1実施形態においては、2本の遮光部材10c1、10c2のそれぞれの+X方向の端部を、レンズエレメント110のX方向の配列のピッチPXの半分だけずらしている。
【0046】
このような配置により、2本の遮光部材10c1、10c2のうちの一方の+X方向端部が、レンズエレメント110のX方向の両端部の近傍にある場合には、他方の+X方向端部はレンズエレメント110のX方向の中心の近傍に配置される。よって、2本の遮光部材10c1、10c2をともにX方向に移動することにより、常に基板22上の積算露光量を変更することができる。なお、2本の遮光部材10c1、10c2のX方向の長さを等しくしてもよい。この場合、遮光部材10c1と10c2とをそれぞれX方向に独立して移動させられる構成とすることが好ましい。これにより、レンズエレメント110ごとに遮光量を異ならせることができる。
【0047】
なお、遮光部材10c1、10c2は上述の2本に限られるわけではなく3本以上であって、それぞれが異なるレンズブロックに配置されていてもよい。この場合にも、遮光部材の本数がm本(mは2以上の自然数)であれば、各遮光部材の+X方向の端部は、ピッチPXに対して、PX/mだけずれて設定されていることが好ましい。
【0048】
なお、遮光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面からZ方向に所定距離だけ離れた位置に配置されるとしたが、これに限定されない。遮光部材10cは、フライアイレンズ11cの入射面、つまり基板の共役面となる位置に設けられても良い。この場合、遮光部材10cは、Y方向の形状(幅)がX方向の位置に応じて変化するもの、または場所に応じて透過率が変わるフィルタのように、Y方向の位置に応じて照明光の遮光率が連続的に変化するものであると良い。遮光部材10cが照明光を完全に遮光するものであると、オーバーラップ部Oa~Odの積算露光量の、非オーバーラップ部Sa~Se部の積算露光量に対する比率が、不連続的に変化してしまう恐れがあり、それを防ぐことができる。
【0049】
(変形例)
以上の第1の実施形態においては、5つの投影光学系19a~19eを有するものとしたが、投影光学系の本数は5つに限られるわけではなく、3つや8つなど、いくつであってもよい。
また、以上の第1の実施形態においては、複数の投影光学系19a~19eを有し、1度のX方向の走査により、各投影光学系が形成する複数の露光視野SIa~SIeが相互にY方向にオーバーラップするとしている。
しかし、投影光学系は1つであり、基板22のX方向への走査露光を、基板22およびマスク15をY方向に移動させつつ複数回行い、各走査露光により形成される複数の露光視野を相互にY方向にオーバーラップさせてもよい。この場合にも、1つの投影光学系に対応する照明光学系は、上述の照明光学系ILa~ILeと同様の構成を備えることが望ましい。
なお、上述の第1実施形態のように複数の投影光学系19a~19eを有する装置は、一度の走査露光で基板22上の、より多くの面積を露光することができ、処理能力に優れている。
【0050】
以上の第1の実施形態においては、複数の投影光学系19a~19eは全屈折光学系から成るとしたが、これに限らず、反射屈折光学系や全反射光学系を採用することもできる。
また、以上の第1の実施形態においては、露光視野PIa~PIeの形状は台形であるとしたが、これは台形に限られるものではなく、例えば、その上記中心部分に相当する部分の形状が円弧であり、円弧の両端に三角形の右端領域および左端領域を備える視野であってもよい。
【0051】
以上の実施形態においては、各投影光学系19a~19eの光軸PXa~PXe、および各照明光学系ILa~ILeの光軸IXa~IXeは、基本的にはZ方向と平行に設定されているものとしている。ただし、いずれかの光学系の中に折り曲げミラーが採用されている場合には、光軸の向きはZ方向とは並行ではなくなる。
また、いずれかの光学系の中に折り曲げミラーが採用されている場合には、遮光部材10a~10eの移動方向も基板22の走査方向(X方向)とは異なる方向になる。しかし、この場合であっても、遮光部材10a~10eは、折り曲げミラーを含めた基板22とフライアイレンズ11a~11eの共役関係に基づいて基板22の走査方向に光学的に対応する方向に移動自在とすれば良い。
【0052】
また、以上の実施形態においては、各投影光学系19a~19eは、X方向に第1列の投影光学系19Fおよび第2列の投影光学系19Rの2列の光学系が配置されているものとしたが、これは2列に限られるものではなく、X方向に3列以上の光学系が配置されていてもよい。
【0053】
オプチカルインテグレーターとして、上述のフライアイレンズ11に代えて、ロッドインテグレーターを採用することもできる。ロッドインテグレーターを採用した場合には、基板22およびマスク15との共役面は、ロッドインテグレーターの射出側(マスク15の側)になるので、遮光部材10もロッドインテグレーターの射出側の近傍に配置する。そして、ロッドインテグレーターの射出面のX側の一端の近傍を部分的に遮光する構成とする。
【0054】
遮光部材10a~10eを照明光学系ILa~ILe内に配置する代わりに、投影光学系19a~19eの中間像面20近傍に配置してもよい。この場合にも、遮光部材は、中間像面20近傍において、露光視野PIa~PIeの中心領域PIac~PIecに対応する部分を遮光する構成とする。
【0055】
投影光学系19a~19e内に視野絞り21a~21eを配置する代わりに、照明光学系ILa~ILeの内部に中間像面(マスク15に対する共役面)を設け、照明光学系ILa~ILe内の中間像面に基板22上の露光視野PIa~PIeの形状を規定する視野絞り設けてもよい。
【0056】
以上の実施形態においては、投影光学系19a~19eおよび照明光学系ILa~ILeは固定され、基板22が基板ステージ27により移動するものとしたが、代わりに、投影光学系19a~19eおよび照明光学系ILa~ILeが走査ステージ上に設けられ、基板22に対して走査する構成としてもよい。
また、マスク15は、ガラス基板上にパターンが形成されたマスクに限らず、デジタルマルチミラーデバイスや液晶デバイスからなる可変整形マスクであってもよい。
【0057】
上述した第1実施形態および変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(1)第1実施形態または変形例の露光装置は、投影光学系19a~19eと、投影光学系19a~19eに照明光を供給する照明光学系ILa~ILeと、被露光基板22と投影光学系19a~19eとを走査方向に相対走査する走査ステージ(基板ステージ)27と、を備え、投影光学系19a~19eによる走査露光視野SIa~SIeを、非走査方向に複数個オーバーラップさせて前記被露光基板22を露光するとともに、照明光学系ILa~ILeまたは投影光学系19a~19eは、露光において、被露光基板22上でオーバーラップなしで露光される非オーバーラップ部Sa~Seの積算露光量が、被露光基板22上でオーバーラップされて露光されるオーバーラップ部Oa~Odの積算露光量に比べて小さくなるように設定する照度変更部材10a~10eを有している。
この構成により、露光が時間的に複数に分割して行われた場合に時間的に連続して行われた場合に比べて実効感光量が低下する非加算性感光材料を使用してパターンの露光転写を行った場合であっても、各走査露光視野SIa~SIeがオーバーラップするオーバーラップ部Oa~Odと、非オーバーラップ部Sa~Se部との間での、転写されたパターンの線幅や厚さの変化を防止することができる。
【0058】
(2)照明光学系ILa~ILeはオプチカルインテグレーター11a~11eを含み、照度変更部材10a~10eは、オプチカルインテグレーター11a~11eの被露光基板22の共役面の近傍であって、オーバーラップ部Oa~Odの非走査方向の幅Wo、共役面と被露光基板22との横倍率、および共役面における照明光の開口数に応じて定まる所定距離だけ、共役面から照明光学系ILa~ILeの光軸IXa~IXe方向に離れた位置に設けられた遮光部材10a~10eであり、遮光部材10a~10eを、照明光学系ILa~ILeの光軸IXa~IXeと略直交する方向であって走査方向に光学的に対応する第1方向に移動自在に保持する、遮光部材保持部9a~9eを有する。
この構成により、遮光部材10a~10eを第1方向に移動させることにより、オーバーラップ部Oa~Odの積算露光量の、非オーバーラップ部Sa~Se部の積算露光量に対する比率を、ほぼ連続的に変化させつつ低下させることができる。
【0059】
上述では、種々の実施形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0060】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特願2019-002235号(2019年1月9日出願)
【符号の説明】
【0061】
100:露光装置、1:光源、ILa~ILe:照明光学系、10a~10e:遮光部材(照度変更部材)、11a~11e:フライアイレンズ、12a~12e:コンデンサーレンズ、15:マスク、MIa~MIe:照明視野、19a~19e:投影光学系、21a~21e:視野絞り、22:基板、SIa~SIe:走査露光視野、Sa~Se:非オーバーラップ部、Oa~Od:オーバーラップ部