IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-ウエーハの加工方法 図1
  • 特開-ウエーハの加工方法 図2
  • 特開-ウエーハの加工方法 図3
  • 特開-ウエーハの加工方法 図4
  • 特開-ウエーハの加工方法 図5
  • 特開-ウエーハの加工方法 図6
  • 特開-ウエーハの加工方法 図7
  • 特開-ウエーハの加工方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138636
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241002BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241002BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20241002BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
H01L21/304 631
B23K26/53
G01B11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049225
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【テーマコード(参考)】
2F065
4E168
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
2F065AA24
2F065CC19
2F065JJ01
2F065JJ09
2F065MM03
2F065MM04
2F065PP22
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB07
4E168CB22
4E168DA02
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
5F057AA05
5F057AA20
5F057AA21
5F057BB03
5F057CA14
5F057CA32
5F057CA36
5F057DA11
5F057DA22
5F057DA31
5F057DA38
5F057FA13
5F057FA36
5F057FA37
5F057FA46
5F057GA27
5F057GB02
5F057GB31
5F063AA01
5F063AA05
5F063AA15
5F063CB03
5F063CB07
5F063CB23
5F063CB29
5F063DD25
5F063DD64
5F063DD68
5F063DE03
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE35
5F063EE21
5F063EE78
5F063EE86
5F063FF13
5F063FF35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウエーハの分割予定ラインに沿って適正な改質層を形成して、ウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】方法は、ウエーハ10の表面に保護テープT1を配設する工程と、保護テープ側をチャックテーブル35の保持面に保持し、ウエーハの裏面10bを露出する工程と、凹凸検出手段7によりウエーハの裏面の凹凸を検出する工程と、を実施し、さらに、検出した凹凸高さZ1が許容範囲であれば、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応するウエーハの内部に位置付けて照射し改質層形成する工程を実施し、検出された凹凸が高さが許容範囲を外れていれば、チャックテーブルからウエーハを取り出してチャックテーブルの保持面とウエーハに配設された保護テープとを洗浄し異物を取り除く工程と、異物除去の後、再びウエーハを保持し、凹凸を検出する工程と、を実施する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面を有するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護テープを配設する保護テープ配設工程と、
保護テープ側をチャックテーブルの保持面に保持し、ウエーハの裏面を露出するウエーハ保持工程と、
ウエーハの裏面の凹凸を検出する凹凸検出工程と、を含み、
該凹凸検出工程によって検出される凹凸が許容範囲であれば、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応するウエーハの内部に位置付けて照射し改質層を形成する改質層形成工程を実施し、
該凹凸検出工程によって検出される凹凸が許容範囲を外れていれば、該チャックテーブルからウエーハを取り出して該チャックテーブルの保持面とウエーハに配設された保護テープとを洗浄し異物を取り除く異物除去工程を実施し、
該異物除去工程の後、再びウエーハ保持工程及び凹凸検出工程を実施するウエーハの加工方法。
【請求項2】
該凹凸検出工程において、分割予定ラインに対応するウエーハの裏面の高さをレーザー測長器によって計測し該凹凸を検出する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該改質層形成工程の後、研削装置のチャックテーブルに保護テープ側を保持してウエーハの裏面を研削して薄化すると共に、該改質層に沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割する研削工程を含む請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面を有するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、ウエーハの表面に配設されたテープ側を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハの裏面からウエーハに対して透過性を有する波長を有するレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応するウエーハの内部に位置付けて照射して、分割の起点となる改質層を形成した後、テープを拡張することによりウエーハに外力を付与して、改質層に沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割している(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
または、上記の如くレーザー加工装置によって分割予定ラインに沿って改質層を形成した後、ウエーハの裏面を研削する研削装置のチャックテーブルにテープ側を保持し、ウエーハの裏面を研削することによって、ウエーハを薄化すると共に、改質層に沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割することができる(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-251986号公報
【特許文献2】特開2021-068872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ウエーハの分割予定ラインに沿って改質層を形成する際に、保護テープのチャックテーブルに保持される側の面やチャックテーブルの保持面に異物が付着していると、ウエーハが該異物によってウエーハが部分的に浮き上がり、レーザー光線の集光点が、ウエーハの内部の適正な位置に位置付けられず、改質層が不十分となって、ウエーハを意図した通りに個々のデバイスチップに分割できなかったり、デバイスチップに欠けが生じたりするという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの分割予定ラインに沿って適正な改質層を形成して、ウエーハを個々のデバイスチップに分割することができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面を有するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護テープを配設する保護テープ配設工程と、保護テープ側をチャックテーブルの保持面に保持し、ウエーハの裏面を露出するウエーハ保持工程と、ウエーハの裏面の凹凸を検出する凹凸検出工程と、を含み、該凹凸検出工程によって検出される凹凸が許容範囲であれば、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応するウエーハの内部に位置付けて照射し改質層を形成する改質層形成工程を実施し、該凹凸検出工程によって検出される凹凸が許容範囲を外れていれば、該チャックテーブルからウエーハを取り出して該チャックテーブルの保持面とウエーハに配設された保護テープとを洗浄し異物を取り除く異物除去工程を実施し、該異物除去工程の後、再びウエーハ保持工程及び凹凸検出工程を実施するウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
該凹凸検出工程において、分割予定ラインに対応するウエーハの裏面の高さをレーザー測長器によって計測し凹凸を検出することが好ましい。また、該改質層形成工程の後、研削装置のチャックテーブルに保護テープ側を保持してウエーハの裏面を研削して薄化すると共に、該改質層に沿ってウエーハを個々のデバイスチップに分割する研削工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面を有するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護テープを配設する保護テープ配設工程と、保護テープ側をチャックテーブルの保持面に保持し、ウエーハの裏面を露出するウエーハ保持工程と、ウエーハの裏面の凹凸を検出する凹凸検出工程と、を含み、該凹凸検出工程によって検出される凹凸が許容範囲であれば、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインに対応するウエーハの内部に位置付けて照射し改質層を形成する改質層形成工程を実施し、該凹凸検出工程によって検出される凹凸が許容範囲を外れていれば、該チャックテーブルからウエーハを取り出して該チャックテーブルの保持面とウエーハに配設された保護テープとを洗浄し異物を取り除く異物除去工程を実施し、該異物除去工程の後、再びウエーハ保持工程及び凹凸検出工程を実施することから、ウエーハの裏面が適正な状態で改質層形成工程が実施され、改質層が不十分となって、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する際に適正に分割できなかったり、デバイスチップに欠けが生じたりするという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】レーザー加工装置の全体斜視図である。
図2】保護テープ配設工程の実施態様を示す斜視図である。
図3】ウエーハ保持工程の実施態様を示す斜視図である。
図4】凹凸検出工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】(a)異物除去工程において、チャックテーブルに熱圧着シートを圧着する態様を示す斜視図、(b)熱圧着シートをチャックテーブルから剥離する態様を示す斜視図である。
図6】ウエーハに配設された保護テープから異物を除去する態様を示す斜視図である。
図7】(a)改質層形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す改質層形成工程におけるウエーハの一部拡大断面図である。
図8】研削工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のウエーハの加工方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のウエーハの加工方法を実施するのに好適なレーザー加工装置1の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置1は、基台2上に配置され、被加工物であるウエーハ10(図2を参照)を保持する保持手段3と、保持手段3を図中X軸方向、及びY軸方向に移動させる送り手段4と、基台2の送り手段4の側方に立設される垂直壁部5a及び該垂直壁部5aの上端部から水平方向に延びる水平壁部5bからなる枠体5と、保持手段3に保持されるウエーハ10を撮像しアライメントを実行するアライメント手段6と、ウエーハ10の裏面10bの凹凸を検出する凹凸検出手段7と、ウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段8と、表示手段9と、制御手段20と、を備えている。
【0014】
枠体5の水平壁部5bの内部には、上記のレーザー光線照射手段8を構成する光学系が収容されている。水平壁部5bの先端部下面側には、該レーザー光線照射手段8の光学系の一部を構成し、保持手段3に保持されるウエーハ10にレーザー光線を集光して照射する集光器81が配設されている。アライメント手段6及び凹凸検出手段7は、前記の集光器81に対して図中矢印Xで示すX軸方向で隣接する位置に配設されている。
【0015】
保持手段3は、図1に示すように、X軸方向において移動自在に基台2に搭載された矩形状のX軸方向可動板31と、Y軸方向において移動自在にX軸方向可動板31に搭載された矩形状のY軸方向可動板32と、Y軸方向可動板32の上面に固定された円筒状の支柱33と、支柱33の上端に固定された矩形状のカバー板34とを含む。カバー板34にはカバー板34に形成された長穴を通って上方に延びるチャックテーブル35が配設されている。チャックテーブル35は、支柱33内に収容された図示しない回転駆動手段により回転可能に構成される。チャックテーブル35の上面には、通気性を有する多孔質材料から形成され実質上水平に延在する円形状の吸着チャックが配設されて保持面35aを構成している。保持面35aは、支柱33を通る流路によって図示を省略する吸引手段に接続されている。
【0016】
送り手段4は、X軸送り手段41と、Y軸送り手段42と、を含んでいる。X軸送り手段41は、モータ43の回転運動を、ボールねじ44を介して直線運動に変換してX軸方向可動板31に伝達し、基台2上にX軸方向に沿って配設された一対の案内レール2a、2aに沿ってX軸方向可動板31をX軸方向において進退させる。Y軸送り手段42は、モータ46の回転運動を、ボールねじ45を介して直線運動に変換し、Y軸方向可動板32に伝達し、X軸方向可動板31上においてY軸方向に沿って配設された一対の案内レール31a、31aに沿ってY軸方向可動板32をY軸方向において進退させる。
【0017】
アライメント手段6は、可視光線によりチャックテーブル35に保持される被加工物を撮像する通常の撮像素子(CCD)と、被加工物に赤外線を照射する赤外線照射手段と、該赤外線照射手段により照射された赤外線を捕らえる光学系と、光学系が捕らえた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)とを含んでいる(いずれも図示は省略する)。
【0018】
凹凸検出手段7は、例えば、一般的に知られたレーザー測長器で構成される。レーザー測長器は、例えば、所定の基本周波数で振幅変調したレーザー光線を被測定物に照射することにより、測定物までの距離、すなわち凹凸を検出することができる。なお、凹凸検出手段7は、上記したレーザー測長器に限定されず、周知の計測装置を採用することができる。
【0019】
制御手段20は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略する)。制御手段20には、レーザー加工装置1の各作動部、アライメント手段6、凹凸検出手段7、及び表示手段9が接続されている。凹凸検出手段7によって計測される被測定物の表面の高さが表示手段9に表示されて、該凹凸を検出した位置のXY座標と共に制御手段20に記憶される。
【0020】
レーザー加工装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、このレーザー加工装置1を使用して実施される本発明に基づき構成されたウエーハの加工方法について、以下に説明する。
【0021】
本実施形態のウエーハの加工方法が施される被加工物は、例えば、図2に示すウエーハ10である。ウエーハ10は、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたシリコン(Si)のウエーハである。このウエーハ10を用意したならば、図2に示すように、ウエーハ10の表面10aに保護テープT1を貼着し配設する保護テープ配設工程を実施する。
【0022】
次いで、上記したウエーハ10を、レーザー加工装置1に搬送し、図3に示すように、表裏を反転して保護テープT1側を下方に、ウエーハ10の裏面10bを上方に向け、チャックテーブル35の保持面35aに載置して、図示を省略する吸引手段を作動して吸引保持し、ウエーハ10の裏面10bを上方に露出するウエーハ保持工程を実施する。
【0023】
上記したウエーハ保持工程を実施したならば、送り手段4を作動して、ウエーハ10をアライメント手段6の下方に位置付ける。そして、アライメント手段6を作動し、ウエーハ10の裏面10bから赤外線を照射して表面10aに形成された分割予定ライン14を撮像し、撮像した画像情報に基づいて分割予定ライン14の位置を検出するアライメントを実施する。該アライメントによって検出された分割予定ライン14の位置情報に基づいて、チャックテーブル35を回転して所定方向に形成された分割予定ライン14をX軸方向に整合させ、送り手段4を作動して、図4に示すように、分割予定ライン14の上方に凹凸検出手段7を位置付ける。
【0024】
分割予定ライン14の上方に凹凸検出手段7を位置付けたならば、凹凸検出手段7を作動すると共に送り手段4を作動して、チャックテーブル35を、X軸方向、Y軸方向、及び矢印R1で示す回転方向に適宜移動しながら、凹凸検出手段7を構成するレーザー測長器のレーザー光線LB1を照射して、ウエーハ10の分割予定ライン14に対応する裏面10bの位置の凹凸を検出する。図4に示すように、凹凸検出手段7は、制御手段20に接続されており、該凹凸を検出した破線100で示す分割予定ライン14の高さを表示手段9に表示すると共にその位置のXY座標を記憶する。図4に示す表示手段9から理解されるように、ウエーハ10の裏面10bが平坦である場合は、実線H0のように表示され、ウエーハ10の裏面10bが凸となっている場合は、破線H1のように表示される。
【0025】
ここで、凹凸検出手段7によって検出された凹凸に関し、ウエーハ10の裏面10bの凹凸が許容範囲に収まっているか、許容範囲を外れているかを判定する。より具体的には、図4の表示手段9において、実線H0によって示されるウエーハ10の裏面10bの基準の高さに対し、破線H1によって示された凸となっている箇所の高さZ1が、許容範囲として規定された判定基準(例えば10μm)未満であれば、許容範囲に収まっていると判定し、該判定基準以上であれば許容範囲を外れていると判定する。以上により凹凸検出工程が完了する。なお、該判定基準は、ウエーハ10の厚みや、後述する改質層形成工程において改質層が形成される深さ位置等に応じて適宜設定されるものであり、前記した10μmに限定されない。
【0026】
上記した凹凸検出工程において破線H1で示された凸の高さZ1が、許容範囲であると判定された場合は、後述する改質層形成工程を実施する。これに対し、該凸の高さZ1が許容範囲を外れていると判定された場合は、保護テープT1のチャックテーブル35に保持される側の面、チャックテーブル35の保持面35aの少なくともいずれかに異物が付着していると判断し、以下に説明する異物除去工程を実施する。
【0027】
図5、6を参照しながら、異物除去工程について説明する。異物除去工程を実施するに際し、まず、チャックテーブル35からウエーハ10を取り出す。次いで、図5(a)に示すように、チャックテーブル35の保持面35aに対し、少なくとも保持面35aよりも大きい寸法の異物除去シートT2を載置する。異物除去シートT2は、保持面35aに載置される側の面に粘着力を有するシートであるが、例えば、保持面35a載置される面に別途の粘着層(糊層)が形成されておらず、溶融温度近傍まで加熱することで軟化すると共に粘着力を発揮する熱圧着シートが採用される。熱圧着シートとしては、例えば、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートから選択される。熱圧着シートTとして用いることができるポリオレフィン系シートは、例えば、ポリエチレン(PE)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートを挙げることができる。また、熱圧着シートTとして用いることができるポリエステル系シートは、例えば、ポリエチレンテレフタレートシート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)シートを挙げることができる。なお、本実施形態では、熱圧着シートTとして、ポリエチレンシートが選択されたものとして説明する。
【0028】
上記したように、異物除去シートT2を載置したならば、図5(a)に示すような圧着ローラ51を用意する。圧着ローラ51は、内部に図示を省略する加熱ヒータ及び温度センサを備えている。圧着ローラ51を用意したならば、該加熱ヒータを作動して、圧着ローラ51の表面52を、異物除去シートT2を構成するポリエチレンシートが粘着力を発揮する溶融温度近傍(例えば120℃~140℃)に加熱して、チャックテーブル35の保持面35aに載置された異物除去シートT2に押し当てる。次いで、圧着ローラ35を矢印R2で示す方向に回転し矢印R3で示す方向に移動させて、チャックテーブル35の保持面35aに対し該加熱により粘着力が発揮された異物除去シートT2を圧着する。圧着ローラ51の表面52は、粘着力が発揮された異物除去シートT2を巻き込まないように、フッ素樹脂がコーティングされている。なお、上記した圧着ローラ51のように加熱ヒータを内蔵することに限定されず、別途用意する加熱手段によって異物除去シートT2を必要な温度まで加熱しながら圧着ローラ51によって圧着するようにしてもよい。
【0029】
上記したように、異物除去シートT2をチャックテーブル35の保持面35aに圧着したならば、図5(b)に示すように、異物除去シートT2を矢印R4で示す方向に引っ張って、保持面35aから剥離する。これにより、保持面35aに異物が付着していた場合は、該異物が除去されて保持面35aが洗浄される。
【0030】
上記した実施形態では、異物除去シートT2としてポリエチレンシートを選択した例を示したが、本発明はこれに限定されず、上記したポリプロピレンシート、ポリスチレンシート、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートを選択してもよい。なお、加熱により粘着力が発揮される温度(溶融温度近傍の温度)は、シートそれぞれで異なっており、加熱して圧着する際の目標温度は該溶融温度に応じて適宜調整される。
【0031】
さらに、チャックテーブル35の保持面35aから取り外したウエーハ10を、図6に示すプラズマ装置60(一部のみを示している)に搬送する。図示のプラズマ装置60は、例えば、大気圧プラズマ装置であって、プラスの電極を形成するプラズマ電極64と、該プラズマ電極64と対向しウエーハ10をアースできる電極を形成しウエーハ10を保持することが可能な表面62aを有するテーブル部62とを備えている。プラズマ電極64とテーブル部62との間には、大気が流通するようになっている。プラズマ装置60にウエーハ10を搬送したならば、保護テープT1が貼着された側を上方に向けてテーブル部62の表面62a上に載置する。次いで、上記したプラズマ電極64とテーブル部62に高電圧を掛けることにより、プラズマ電極64の下面64aとテーブル部62の表面62aとの間にプラズマP(プラズマ化した酸素、窒素等)を生成する。このようにプラズマ装置60を作動させることで、ウエーハ10の保護テープT1の表面にプラズマPが作用して、保護テープT1に有機物等の異物が付着している場合は、該異物が破壊されて洗浄される。以上により、異物除去工程が完了する。
【0032】
上記したように、異物除去工程が実施されて、チャックテーブル35の保持面35aと、ウエーハ10に配設された保護テープT1の表面とを洗浄したならば、再びレーザー加工装置1に搬送して、上記したウエーハ保持工程及び凹凸検出工程を実施する。これにより、先に実施された凹凸検出工程において検出された許容範囲を外れるような凹凸が残存しているのか否かを判定し、許容範囲を外れる凹凸が検出されなければ、以下に説明する改質層形成工程を実施する。なお、ウエーハ保持工程及び凹凸検出工程を実施し、許容範囲を外れる凹凸が検出され、上記した異物除去工程を繰り返し実施したのにも関わらず、許容範囲を外れる凹凸が検出され続けた場合は、チャックテーブル35の保持面35aとウエーハ10の保護テープT1の表面について詳細を確認し、必要に応じて交換する。
【0033】
なお、異物除去工程を実施する際の具体的な方法は、上記した実施形態に限定されず、他の方法によって異物を除去してもよい。チャックテーブル35の保持面35aの異物を除去する他の方法としては、例えば、保持面35aの内側から洗浄水を噴出させると共に表面側からブラッシングを施して異物を除去してもよい。また、ウエーハ10に配設された保護テープT1の表面の異物を除去する方法としては、例えば、高圧の洗浄水を保護テープT1の表面に噴射して異物を除去するようにしてもよい。
【0034】
凹凸検出工程を経て改質層形成工程を実施するに際し、凹凸検出工程において検出された分割予定ライン14の位置情報に基づき、図7(a)に示すように、改質層を形成する分割予定ライン14に対応した加工位置にレーザー光線照射手段8の集光器81を位置付ける。そして、図7(a)に加え、図7(b)から理解されるように、ウエーハ10の裏面10bから、ウエーハ10の内部の改質層を形成する所定の深さ位置にウエーハ10に対して透過性を有する波長のレーザー光線LB2の集光点を位置付けて照射すると共に、ウエーハ10をX軸方向に加工送りして、分割予定ライン14に沿って分割の起点となる改質層110を形成する。該改質層110を形成したならば、ウエーハ10をY軸方向に分割予定ライン14の間隔だけ割り出し送りして、Y軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン14を集光器81の直下に位置付ける。そして、上記したのと同様にしてレーザー光線LB2の集光点を、ウエーハ10の分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部に位置付けて照射し、ウエーハ10をX軸方向に加工送りして改質層110を形成する。これらを繰り返すことにより、ウエーハ10をX軸方向、及びY軸方向に加工送りして、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部に沿って改質層110を形成する。
【0035】
次いで、ウエーハ10を矢印R1で示す方向に90度回転させて、既に改質層110を形成した分割予定ライン14に直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。そして、残りの各分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部に対しても、上記したのと同様にしてレーザー光線LB2の集光点を位置付けて照射して、ウエーハ10の表面10aに形成された全ての分割予定ライン14に対応するウエーハ10の内部に改質層110を形成する。以上により改質層形成工程が完了する。
【0036】
なお、上記の改質層形成工程を実施する際のレーザー加工条件は、例えば以下のように設定される。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :1.2W
加工送り速度 :700mm/秒
【0037】
上記した改質層形成工程を実施したならば、上記した改質層形成工程により形成された改質層110に沿ってウエーハ10を個々のデバイスチップに分割する研削工程を実施する。
【0038】
上記した研削工程を実施するに際し、改質層110が形成されたウエーハ10を、図8に示す研削装置70(一部のみを示している)に搬送する。研削装置70は、研削手段72と、ウエーハ10を吸引保持するチャックテーブル77とを備えている。研削手段72は、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル73と、回転スピンドル73の下端に装着されたホイールマウント74と、ホイールマウント74の下面に取り付けられ下面側に環状に配設される複数の研削砥石76を備えた研削ホイール75とを備えている。
【0039】
研削装置70にウエーハ10を搬送し、保護テープT1側を下方に、裏面10b側を上方に向けて、チャックテーブル77に載置して吸引保持する。次いで、研削手段72の回転スピンドル73を回転して、研削ホイール75を、図8において矢印R5で示す方向に、例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル77を矢印R6で示す方向に、例えば300rpmで回転させる。そして、図示しない研削水供給手段により、研削水をウエーハ10の裏面10b上に供給しつつ、研削砥石76を矢印R7で示す方向に下降してウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール75を、例えば1.0μm/秒の研削送り速度で研削送りする。この際、図示しない接触式又は非接触式の測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10の裏面10bを研削し、該ウエーハ10を所定の厚みとする。これにより、上記した改質層110に沿って分割溝120が形成されて、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割される。
【0040】
本実施形態のウエーハの加工方法には、上記したウエーハ保持工程、凹凸検出工程、異物除去工程が含まれており、ウエーハ10の裏面10bが適正な状態で改質層形成工程が実施されることから、改質層が不十分となってウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割する際に、適正に分割できなかったり、デバイスチップに欠けが生じたりするという問題が解消する。
【0041】
なお、上記した実施形態では、改質層形成工程を実施した後、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割すべく研削装置70にウエーハ10を搬送して、研削工程を実施するようにしたが、改質層形成工程を実施した後、上記したような研削工程を実施することに限定されない。例えば、改質層形成工程を実施した後、ウエーハ10を収容可能な開口部を中央に有する環状のフレームに粘着テープを介してウエーハ10を保持し、該粘着テープを拡張してウエーハ10に外力を付与する外力付与工程を実施し、ウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:レーザー加工装置
2:基台
2a:案内レール
3:保持手段
31:X軸方向可動板
32:Y軸方向可動板
35:チャックテーブル
35a:保持面
4:送り手段
41:X軸送り手段
42:Y軸送り手段
5:枠体
6:アライメント手段
7:凹凸検出手段
8:レーザー光線照射手段
81:集光器
9:表示手段
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:制御手段
51:圧着ローラ
60:プラズマ装置
62:テーブル部
64:プラズマ電極
70:研削装置
72:研削手段
75:研削ホイール
76:研削砥石
77:チャックテーブル
110:改質層
120:分割溝
T1:保護テープ
T2:異物除去シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8