(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138736
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】端子収容済みコネクタ、コネクタ付きワイヤハーネス、端子収容済みコネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20241002BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01R13/52 301F
H01R43/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049384
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】澤田 由香
(72)【発明者】
【氏名】河中 裕文
(72)【発明者】
【氏名】秋山 輝
(72)【発明者】
【氏名】外池 翔
【テーマコード(参考)】
5E051
5E087
【Fターム(参考)】
5E051BA06
5E051BB05
5E087EE02
5E087EE11
5E087FF02
5E087FF06
5E087FF13
5E087JJ05
5E087LL14
5E087MM05
5E087RR06
5E087RR12
5E087RR23
5E087RR29
(57)【要約】
【課題】 使用することが可能な樹脂の自由度が高く、高い止水性を確保することが可能な端子収容済みコネクタ等を提供する。
【解決手段】 コネクタハウジング25は、端子5が収容される収容部材27と、収容部材27を覆う蓋部材29とを有する。収容部材27の上方に蓋部材29を配置して閉じることで、端子5が収容可能な端子収容部23の空間が形成される。端子5は、圧着部17において被覆導線11と接続される。端子収容部23の内部において、圧着部17の少なくとも上面を覆うように樹脂19で被覆される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングの端子収容部に、少なくとも1つ以上の端子が収容された端子収容済みコネクタであって、
前記コネクタハウジングは、前記端子が収容される収容部材と、前記収容部材を覆う蓋部材とを有し、前記収容部材に前記蓋部材を配置することで、前記端子収容部が形成され、
前記端子は、端子本体と圧着部とを有し、前記端子は、前記圧着部で被覆導線と接続され、
前記圧着部の少なくとも上面を覆うように樹脂で被覆されることを特徴とする端子収容済みコネクタ。
【請求項2】
複数の前記収容部材が積層されて配置され、最上段の前記収容部材の上方に前記蓋部材が配置され、下段側の前記収容部材の上方において、上段側の前記収容部材の下面が前記蓋部材を兼ねることを特徴とする請求項1記載の端子収容済みコネクタ。
【請求項3】
前記端子収容部が複数列に配置され、複数の前記収容部材が併設され、前記蓋部材が一括して複数の前記収容部材の上方に配置されることを特徴とする請求項1記載の端子収容済みコネクタ。
【請求項4】
前記収容部材又は前記蓋部材の内側面には、前記樹脂の流れ止め突起が設けられることを特徴とする請求項1記載の端子収容済みコネクタ。
【請求項5】
前記樹脂の硬化前の粘度が、0.1Pa・s以上1700Pa・s以下であることを特徴とする請求項1記載の端子収容済みコネクタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の端子収容済みコネクタを用いたコネクタ付きワイヤハーネスであって、前記コネクタハウジングは、複数の前記端子収容部を有し、前記端子収容部に、前記被覆導線と接続された複数の前記端子が収容されることを特徴とするコネクタ付きワイヤハーネス。
【請求項7】
端子収容済みコネクタの製造方法であって、
コネクタハウジングは、端子が収容される収容部材と、前記収容部材を覆う蓋部材とを有し、前記収容部材に前記蓋部材を配置することで、端子収容部が形成され、
端子本体と圧着部とを有する端子に対して、前記圧着部で被覆導線を接続する工程と、
前記収容部材に前記端子を配置する工程と、
前記圧着部の少なくとも上面側を含む周方向の一部に樹脂を塗布する工程と、
前記樹脂が硬化する前に、前記蓋部材を前記収容部材の上方に配置する工程と、
前記樹脂を硬化させる工程と、
を具備することを特徴とする端子収容済みコネクタの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂の硬化前の粘度が、0.1Pa・s以上1700Pa・s以下であることを特徴とする請求項7記載の端子収容済みコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両や航空機等の移動体、産業用ロボット、OA機器、家電製品等の電気配線体に用いられる端子付き電線の端子が挿入された端子収容済みコネクタ、コネクタ付きワイヤハーネス及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、OA機器、家電製品等の分野では、電力線や信号線として、電気導電性に優れた銅系材料からなる電線が使用されている。特に、自動車分野においては、車両の高性能化、高機能化が急速に進められており、車載される各種電気機器や制御機器が増加している。したがって、これに伴い、使用される端子付き電線も増加する傾向にある。
【0003】
このような端子付き電線は、コネクタに挿入されて用いられる場合がある。コネクタには、複数の端子収容部が形成されており、それらの端子収容部に端子付き電線の端子が挿入されて固定される。このようにすることで、複数の端子付き電線を一度に接続することができる。
【0004】
一方、環境問題が注目される中、自動車の軽量化が要求されている。したがって、ワイヤハーネスの使用量増加に伴う重量増加が問題となる。このため、従来使用されている銅線に代えて、軽量なアルミニウム電線が注目されている。
【0005】
ここで、このような電線同士を接続する際や機器類等の接続部においては、接続用端子が用いられる。しかし、アルミニウム電線を用いた端子付き電線であっても、接続部の信頼性等のため、端子部には、電気特性に優れる銅が使用される場合がある。このような場合には、アルミニウム電線と銅製の端子とが接合されて使用される。
【0006】
しかし、異種金属を接触させると、標準電極電位の違いから、いわゆる電食が発生する恐れがある。特に、アルミニウムと銅との標準電極電位差は大きいため、接触部への水の飛散や結露等の影響により、電気的に卑であるアルミニウム側の腐食が進行する。このため、接続部における電線と端子との接続状態が不安定となり、接触抵抗の増加や線径の減少による電気抵抗の増大、更には断線が生じて電装部品の誤動作、機能停止に至る恐れがある。
【0007】
このため、その対策として特許文献1には、端子接続部の金属の腐食を防ぐために、端子接続部に変成シリコーン樹脂を塗布し、この樹脂を硬化させることによって、端子接続部への電解液の浸入を防ぐ方法が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、ハウジングの端子収容室内に挿入した電線外周面と端子収容室の内周面の隙間に、シール材である暗部硬化性の紫外線硬化樹脂を注入する方法が提案されている。特許文献2では、端子収容室の電線挿入開口で外部に露出する紫外線硬化樹脂を紫外線で照射するだけで、端子収容室内の紫外線が照射できない部位の紫外線硬化樹脂も硬化して、ハウジングの端子収容室内への浸水を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-25931号公報
【特許文献2】特開2014-207106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように、アルミニウム電線を使用した端子付き絶縁電線の防食は、端子接続部のアルミニウム露出部を電解液から守ることが重要であり、特許文献1、2においては、アルミニウム製の電線と銅製の端子との接続部に対する樹脂の被覆に欠陥が生じることは許されない。
【0011】
しかし、特許文献1の場合、アルミニウム露出部に滴下、塗布、押出によって変成シリコーン樹脂を付着する手法をとっているが、変成シリコーン樹脂は樹脂材料の中でも粘度が高い傾向にあり、必要な箇所全てに樹脂を行き渡らせるのは困難である。特に、オープンバレル端子の側面開口部のアルミニウム露出部を被覆することは難しい。
【0012】
また、例えばディスペンサ等で樹脂を塗布する場合には、複雑にノズルを動かし必要な箇所に確実に樹脂を塗布する必要があるが、塗布時間が延びるといった弊害がある。特に、電線経が大きくなるほどこの影響が大きくなる。また、加熱により樹脂の粘度を下げて、所望の箇所へ行き渡らせる手法も提案されているが、設備費が高価になり、硬化方式によっては硬化速度が加速しすぎることで不良や設備に対し悪影響を及ぼす可能性がある。その他、経時硬化する硬化性樹脂の場合は、塗布直後で未硬化状態において剥離しないよう指触乾燥まで物と接触を避ける保管が必要となるなど管理が煩雑になる。
【0013】
また、特許文献2の場合、注入時の空隙を避けるため、低粘度の樹脂を使用する必要があり、高粘度の樹脂および接着剤は使用することができない。また、端子収容室に端子付き絶縁電線を挿入した後にシール材を注入するため、アルミニウム電線の露出部を確実に被覆できているか目視確認を行うことできない。このため、例えば端子収容室の開口部に僅かな隙間が生じた場合や、アルミニウム電線の被覆が不十分な箇所があった場合には腐食は免れない。
【0014】
また、端子収容室にシール材を注入する手法であるため、特許文献1のような塗布方法に比べて時間を要する。また、注入後に硬化工程が必要になるため、製造時間が非常に長くなる。また暗部硬化性の紫外線硬化樹脂は反応速度が速いため、慎重な取り回しが要求され、ハンドリング性が悪い。また長寿命のラジカル種を用いる暗部硬化性の紫外線硬化樹脂の場合は、硬化時間が長くなり生産性が低下する。
【0015】
以上のように、塗布する樹脂の粘度が高すぎても低すぎても製造性が悪く、所望の部位を確実に樹脂で被覆して防水性を高めるのは困難である。このため、使用するこができる樹脂の粘度の制約が大きく、使用可能な樹脂が限られるという問題がある。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、使用することが可能な樹脂の自由度が高く、高い止水性を確保することが可能な端子収容済みコネクタ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した目的を達するために第1の発明は、コネクタハウジングの端子収容部に、少なくとも1つ以上の端子が収容された端子収容済みコネクタであって、前記コネクタハウジングは、前記端子が収容される収容部材と、前記収容部材を覆う蓋部材とを有し、前記収容部材に前記蓋部材を配置することで、前記端子収容部が形成され、記端子は、端子本体と圧着部とを有し、前記端子は、前記圧着部で被覆導線と接続され、前記圧着部の少なくとも上面を覆うように樹脂で被覆されることを特徴とする端子収容済みコネクタである。
【0018】
複数の前記収容部材が積層されて配置され、最上段の前記収容部材の上方に前記蓋部材が配置され、下段側の前記収容部材の上方において、上段側の前記収容部材の下面が前記蓋部材を兼ねてもよい。
【0019】
前記端子収容部が複数列に配置され、複数の前記収容部材が併設され、前記蓋部材が一括して複数の前記収容部材の上方に配置されてもよい。
【0020】
前記収容部材又は前記蓋部材の内側面には、前記樹脂の流れ止め突起が設けられてもよい。
【0021】
前記樹脂の硬化前の粘性が、0.1Pa・s以上1700Pa・s以下であることが望ましい。
【0022】
第1の発明によれば、端子付き電線の端子が収容されたコネクタハウジングの端子収容部に対し、少なくとも端子と電線との接続部を覆うように樹脂が充填されているため、樹脂によって端子接続部への水の浸入を抑制することができる。
【0023】
この際、コネクタハウジングが、端子が収容される収容部材と収容部材を覆う蓋部材とに分割されているため、樹脂を塗布した端子を収容部材に収容した後に蓋部材で覆うことができる。すなわち、収容部材に樹脂が塗布された端子が収容された状態から、最後に蓋部材で樹脂等を覆うことができ、蓋部材を閉じる前の樹脂の状態や塗布位置を確認することができる。このため、樹脂の塗布不足や不良を検出することができる。
【0024】
また、端子収容部を複数段に配置する場合において、最上段の収容部材の上方には蓋部材を配置するが、下段側の収容部材の上方は、その一つ上段側の収容部材の下面を蓋部材として使用することで、部品点数を減らすことができる。
【0025】
また、収容部材を複数列に配置して、複数の収容部材が併設される場合において、一つの蓋部材で一括して複数の収容部材の上方に配置することで、部品点数を削減し、蓋部材によって複数の収容部材同士を連結することができる。
【0026】
また、収容部材又は蓋部材の内側面に、樹脂の流れ止め突起を設けることで、樹脂が硬化するまでの間における樹脂の流出を抑制することができる。
【0027】
また、従来のように、樹脂を端子収容部に注入する必要がなく、端子収容部の内部おいて端子への樹脂の塗布位置を確実に確認することができるため、使用する樹脂の粘度の制約が小さく、適用可能な樹脂の自由度が高い。このため、樹脂の硬化前の粘性として、0.1Pa・s以上1700Pa・s以下の広範囲のものを使用することができる。
【0028】
第2の発明は、第1の発明にかかる端子収容済みコネクタを用いたコネクタ付きワイヤハーネスであって、前記コネクタハウジングは、複数の前記端子収容部を有し、前記端子収容部に、前記被覆導線と接続された複数の前記端子が収容されることを特徴とするコネクタ付きワイヤハーネスである。
【0029】
第2の発明によれば、複数の端子付き電線を有し、製造性が良好であり、止水性に優れたコネクタ付きワイヤハーネスを得ることができる。
【0030】
第3の発明は、端子収容済みコネクタの製造方法であって、ネクタハウジングは、端子が収容される収容部材と、前記収容部材を覆う蓋部材とを有し、前記収容部材に前記蓋部材を配置することで、端子収容部が形成され、端子本体と圧着部とを有する端子に対して、前記圧着部で被覆導線を接続する工程と、前記収容部材に前記端子を配置する工程と、前記圧着部の少なくとも上面側を含む周方向の一部に樹脂を塗布する工程と、前記樹脂が硬化する前に、前記蓋部材を前記収容部材の上方に配置する工程と、前記樹脂を硬化させる工程と、を具備することを特徴とする端子収容済みコネクタの製造方法である。
【0031】
前記樹脂の硬化前の粘性が、0.1Pa・s以上1700Pa・s以下であることが望ましい。
【0032】
第3の発明によれば、ハウジングの端子収容部に端子を収容する前又は収容後であって、蓋部材を閉じる前に樹脂を塗布するため、樹脂が完全に所望の範囲に塗布されたか否かを容易に把握することができる。また、例えば樹脂を塗布した後に、従来のコネクタハウジングのように後方から端子を挿入する場合と比較して、挿入時における樹脂のずれや剥離がなく、端子収容部に収容された状態での樹脂の塗布状態のまま硬化させることができる。
【0033】
また、樹脂として、硬化前の粘度を0.1Pa・s以上1700Pa・s以下の範囲の広範囲のものを適用することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、使用することが可能な樹脂の自由度が高く、高い止水性を確保することが可能な端子収容済みコネクタ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】(a)は、端子収容済みコネクタ20を示す斜視図、(b)は蓋部材29を開いた状態の端子収容済みコネクタ20を示す斜視図。
【
図3】(a)は、端子付き電線1をコネクタハウジング25に収容した状態を示す断面図、(b)は、樹脂19を塗布した状態を示す断面図、(c)は蓋部材29を閉じた状態の断面図。
【
図6】(a)、(b)は、コネクタハウジング25bの使用方法を示す断面図。
【
図7】(a)、(b)は、コネクタハウジング25cの使用方法を示す断面図。
【
図8】(a)、(b)は、コネクタハウジング25dの使用方法を示す断面図。
【
図9】(a)、(b)は、コネクタハウジング25eの使用方法を示す断面図。
【
図10】(a)、(b)は、コネクタハウジング25fの使用方法を示す断面図。
【
図11】コネクタハウジング25gの使用状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は、端子収容済みコネクタ20(コネクタ付きワイヤハーネス)を示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)に対して、蓋部材29を外した状態を示す図である。端子収容済みコネクタ20は、コネクタハウジング25と端子付き電線1等から構成される。コネクタハウジング25には、複数の端子収容部23が設けられる。コネクタハウジング25に設けられた端子収容部23には、端子付き電線1の端子5が収容される。
【0037】
コネクタハウジング25は、端子5が収容される収容部材27と、収容部材27を覆う蓋部材29とを有する。収容部材27の上方に蓋部材29を配置して閉じることで、端子5が収容可能な端子収容部23の空間が形成される。すなわち、収容部材27は、複数の端子付き電線1を配置した際に、それぞれの端子収容部23を仕切る壁部が設けられ、それぞれの壁部間において、上方が開口した略コの字状の空間を有し、平板状の蓋部材29によって開口部を塞ぐことで、全周が閉じられた端子収容部23を形成することができる。蓋部材29と収容部材27の固定は、接着剤による接着や係合構造による係合など特に限定されない。
【0038】
なお、コネクタハウジング25の形態や、端子収容部23の個数及び配置は図示した例には限られない。例えば、端子収容部23は、複数段に形成されていてもよく、蓋部材29は、収容部材27の上下両面側から配置可能であってもよい。また、複数の端子収容部23がある場合において、全ての端子収容部23に端子付き電線1が配置されていなくてもよく、一部に空きがあってもよい。
【0039】
このように、端子収容済みコネクタ20は、コネクタハウジング25の端子収容部23に対して、少なくとも1つ以上の端子5が挿入されていればよい。なお、端子収容済みコネクタ20において、コネクタハウジング25が複数の端子収容部23を有する場合に、複数の端子収容部23に、被覆導線11と接続された複数の端子5が収容され、被覆導線11が束ねられたものをコネクタ付きワイヤハーネスとする。
【0040】
図2は、コネクタハウジング25に収容される前の端子付き電線1を示す斜視図である。端子付き電線1は、端子5と被覆導線11とが接続されて構成される。
【0041】
被覆導線11は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金製である導線13と、導線13を被覆する被覆部15からなる。すなわち、被覆導線11は、被覆部15と、その先端から露出する導線13とを具備する。導線13は、例えば、複数の素線が撚り合わせられた撚り線である。
【0042】
端子5は、例えばオープンバレル型であり、例えば銅または銅合金製である。端子5には被覆導線11が接続される。端子5は、端子本体3と圧着部17とがトランジション部4を介して連結されて構成される。圧着部17と端子本体3の間に位置するトランジション部4は、上方が開口する。
【0043】
端子本体3は、所定の形状の板状素材を、断面が矩形の筒体に形成したものである。端子本体3は、内部に、板状素材を矩形の筒体内に折り込んで形成される弾性接触片を有する。端子本体3は、前端部から雄型端子などが挿入されて接続される。なお、以下の説明では、端子本体3が、雄型端子等の挿入タブ(図示省略)の挿入を許容する雌型端子である例を示すが、本発明において、この端子本体3の細部の形状は特に限定されない。例えば、雌型の端子本体3に代えて例えば雄型端子の挿入タブを設けてもよい。
【0044】
圧着部17は、被覆導線11と圧着される部位であり、圧着前においては、端子5の長手方向に垂直な断面形状が略U字状のバレル形状を有する。端子5の圧着部17は、被覆導線11の先端側に被覆部15から露出する導線13を圧着する導線圧着部7と、被覆導線11の被覆部15を圧着する被覆圧着部9と、導線圧着部7と被覆圧着部9の間のバレル間部8からなる。すなわち、端子5は、圧着部17において被覆導線11と接続される。
【0045】
被覆導線11の先端は、被覆部15が剥離され、内部の導線13が露出する。前述したように、被覆導線11の被覆部15は、端子5の被覆圧着部9によって圧着され、被覆部15が剥離されて露出する導線13は、導線圧着部7により圧着される。すなわち、導線圧着部7において、導線13と端子5とが電気的に接続される。なお、被覆部15の端面は、被覆圧着部9と導線圧着部7の間のバレル間部8に位置する。
【0046】
導線圧着部7の内面の一部には、幅方向(長手方向に垂直な方向)に、図示を省略したセレーションが設けられる。このようにセレーションを形成することで、導線13を圧着した際に、導線13の表面の酸化膜を破壊しやすく、また、導線13との接触面積を増加させることができる。
【0047】
次に、端子収容済みコネクタ20の製造方法について説明する。前述したように、まず、端子本体3と圧着部17とを有する端子5に対して、圧着部17で被覆導線11を接続する(
図2参照)。次に、
図3(a)に示すように、得られた端子付き電線1の端子5を収容部材27の端子収容部23に対応する部位に配置する。
【0048】
次に、端子付き電線1の圧着部17の少なくとも上面側を含む周方向の一部に樹脂を塗布する。例えば、収容部材27の上方から、圧着部17の上面と側面の一部を覆うように樹脂を塗布する。なお、樹脂の塗布方法は特に限定されない。
【0049】
図3(b)は樹脂19を塗布した状態の断面図である。樹脂19は、少なくとも導線13が露出する部位(バレル間部8とトランジション部4側を含む、導線13の露出部)の全体を覆うように塗布される。
【0050】
なお、樹脂19の種類としては特に限定されないが、シリコーン樹脂や変成シリコーン樹脂を適用可能であり、変成シリコーン樹脂が特に望ましい。変成シリコーン樹脂は、ある程度の粘性を有し、樹脂19を塗布して、直ちに樹脂19が流出することが無い。また、収容部材27に端子5を配置してから、開口部より樹脂19を塗布するため、樹脂19は多少粘度が高くても塗布が容易であり、また、多少粘度が低くても、その後直ちに硬化させることができるため、樹脂19の粘度の適用葉には広い。
【0051】
例えば、樹脂19の硬化前の粘度は、0.1Pa・s以上1700Pa・s以下のものを適用可能である。なお、より好ましくは1Pa・s以上、850Pa・s以下、さらに好ましくは10Pa・s以上、300Pa・s以下、最も好ましくは20Pa・s以上、100Pa・s以下である。
【0052】
また、外力や熱膨張の影響を受けにくいようにするためは、硬化後の樹脂19の弾性率が0.5MPa以上、100MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは10MPa以上、60MPa以下である。
【0053】
また、樹脂19としては湿気硬化樹脂や嫌気硬化樹脂などを用いることができる。また、加熱や紫外線照射によって硬化させてもよい。また、樹脂19は、硬化促進剤を含有していても良い。さらに必要に応じて、物性を損なわない範囲で、硬化剤、硬化触媒、無機充填剤、酸化防止剤、金属不活性化剤(銅害防止剤)、紫外線吸収剤、紫外線隠蔽剤、難燃助剤、加工助剤(滑剤、ワックスなど)、カーボンやその他の着色用顔料、可撓性付与材、耐衝撃性付与材、有機充填材、希釈材(溶媒など)、揺変材、各種カップリング材、消泡材、レベリング材などが混合されていても良い。防食を目的としているため、防錆剤を添加するのが好ましい。
【0054】
また、樹脂19には、粘着付与剤が混合されていても良い。粘着付与剤としては、ロジン系、テルペン系、テルペンフェノール系、フェノール系、クロマンインデン系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。石油樹脂には、脂肪族系、脂環族系、水添、スチレン系、アルキルフェノール系のものなどがある。粘着付与剤としては、これらのうちの1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着付与剤の含有量は、組成物の粘着性を高くできるなどの観点から、1~30質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5~30質量%の範囲内、さらに好ましくは10~25質量%の範囲内である。
【0055】
また、本実施形態では、樹脂19とコネクタハウジング25の材料との組み合わせや、離型剤や硬化阻害剤などの使用により、樹脂19とコネクタハウジング25の構成部品(収容部材27及び蓋部材29)の間のせん断接着力をコントロールしても良い。例えば、端子5が銅製であり、導線13がアルミニウム製であり、被覆部15がポリ塩化ビニルであり、コネクタハウジング25の構成部品がポリブチレンテレフタレートで構成されている場合には、樹脂19として変成シリコーン樹脂などを用いることで、せん断接着力を0.001MPa以下にすることができる。
【0056】
また、樹脂19の種類に応じた硬化阻害剤や離型剤を、あらかじめコネクタハウジング25の構成部品の樹脂接触面に塗布しておくことで、樹脂19とコネクタハウジング25とのせん断接着力をさらに小さくすることができる。例えば、離型剤にはフッ素系やシリコーン系等が挙げられ、樹脂19に変成シリコーン樹脂を使用する場合には、窒素化合物・リン化合物・硫黄化合物等が挙げられる。
【0057】
また、樹脂19として紫外線硬化樹脂を用いる場合、紫外線硬化樹脂は、光重合性(メタ)アクリレートモノマー及び光重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの少なくとも一方からなる重合性化合物を含む紫外線硬化型樹脂を含み、前記重合性化合物は、単官能(メタ)アクリレートモノマー及び2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用してなるか、又は単官能(メタ)アクリレートモノマー及び2官能(メタ)ア
クリレートモノマーの少なくとも一方と、3官能(メタ)アクリレートモノマー及び4官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも一方と、を併用してなるのが好ましい。
【0058】
また、樹脂19として紫外線硬化樹脂を用いる場合、コネクタハウジング25を紫外線透過性の高い材料にすることで、コネクタハウジング25の端子収容部23が蓋部材29等によって覆われていても、紫外線照射により内部の樹脂29を硬化させることが可能である。
【0059】
その場合、コネクタハウジング25の構成部品(例えば蓋部材29)の材料としては、波長10~400nmの紫外線の透過率が50%以上であれば特に限定されない。紫外線透過率が50%以上であると、照射された紫外線は蓋部材29を介して紫外線硬化樹脂に効率よく浸透する。蓋部材29の素材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の透明樹脂、ソーダガラス、強化ガラス、石英ガラス、サファイアガラス等のガラス、を用いることができる。このうち、アクリル樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ソーダガラス、及びサファイアガラスは、紫外線透過率が60%以上であるため好ましい。
【0060】
次に、
図3(c)に示すように、樹脂19が硬化する前に、蓋部材29を収容部材27の上方に配置して固定する。すなわち、収容部材27の開口部を蓋部材29で塞ぎ、端子5の周囲を囲むように端子収容部23を形成する。この状態においては、樹脂19は流動性を有する。このため、蓋部材29を端子5が収容された収容部材27に被せると、樹脂19は、蓋部材29によって端子収容部23の内部に押し広げられる。
【0061】
図4は、端子収容部23の、コネクタ接続方向に対して垂直な断面であって、
図3(c)のA-A線断面図である。前述したように、樹脂19は、少なくとも圧着部17の上面側に塗布される。この状態で蓋部材29を端子5が収容された収容部材27に被せることで、樹脂19が圧着部17の周囲に回り込むようにして広がる。また、樹脂19は、圧着部17に押し付けられるため、樹脂19によって、導線13を確実に被覆することができる。すなわち、端子収容部23の内部において、圧着部17の少なくとも上面を覆うように樹脂19で被覆される。
【0062】
この状態で、樹脂19の全体を硬化させることで、端子収容済みコネクタ20を製造することができる。なお、前述したように、樹脂19の硬化方式は特に限定されないが、室温湿気硬化もしくは嫌気硬化が好ましく、さらに好ましくは湿気硬化が好ましい。
【0063】
ここで、図示したように、端子収容部23の内部において、圧着部17の少なくとも上面が覆われるように樹脂19で被覆される。また、圧着部17の周方向の他の一部と端子収容部23の内面との間には、樹脂19が配置されていない非接着部24が形成される。より詳細には、圧着部17の上面が樹脂19で端子収容部23の内面と接着し、圧着部17の下面は非接着部24となる。例えば、樹脂19は、蓋部材29の全面(端子収容部23の上面)と接触し、収容部材27の内面とは少なくとも一部には接触しない。
【0064】
非接着部24は、端子5を端子収容部23に収容した際に、樹脂19が圧着部17の全周にいきわたらないように、あらかじめ樹脂19の塗布量を調整することで形成することができる。すなわち、端子収容部23の内部の空間体積と収容される圧着部17の体積の差に対して、樹脂19の体積が小さくなるように、樹脂19の塗布量が調整される。
【0065】
なお、図示したように、非接着部24においては端子収容部23の内面と圧着部17との間に隙間が形成されることが望ましいが、必ずしも隙間はなくてもよい。非接着部24において端子収容部23の内面と圧着部17とが樹脂19によって接着されていなければ、圧着部17の下面と端子収容部23とが接触していてもよい。
【0066】
このように、樹脂19と端子収容部23とが全周にわたって完全に接着していないため、コネクタハウジング25と端子5との間における力の伝達を抑制することができる。このため、例えば熱膨張係数の差により、温度変化で生じる応力や、コネクタハウジング25から端子5へ伝わる外力(振動)を低減することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、圧着部17の上面に樹脂19を塗布してから蓋部材29を閉じるため、蓋部材29を閉じる前に樹脂19の塗布状態を確認することができる。このため、樹脂19の塗布が不足しているものを検出することができる。また、未硬化状態の樹脂19が塗布された端子5が端子収容部23に収容された状態で蓋部材29を閉じることで、樹脂19が端子収容部23の内壁と圧着部17に押し広げられる。このため、高粘度な樹脂19であっても、導線13の露出部に確実に行き渡らせることができ、特別な設備を使用することなく信頼性が向上し、製造時間も短縮される。
【0068】
また、樹脂19によって、端子5の導線13の露出部が端子収容部23の内壁に接着するため止水性が向上し、高い防食性を得ることができる。
【0069】
また、収容部材27に複数の端子付き電線1を配置した状態で、一括してすべての端子5に樹脂19を塗布することができるため、収容部材27を、端子5の位置決め及び固定部材として利用することができるとともに、樹脂19の塗布時間を削減することができる。
【0070】
なお、収容部材27に端子付き電線1を配置した後に樹脂19を塗布したが、樹脂19を塗布してから、塗布された状態(硬化前)の端子付き電線1を収容部材27に配置して、樹脂19が硬化する前に蓋部材29を被せてもよい。
【0071】
また、樹脂19は、必ずしも硬化して端子5とコネクタハウジング25とを接着するものでなくてもよく、例えば粘着性によって密着するものでもよい。このように接着せずに密着するような粘着剤等を用いることで、組み立てた後に端子収容部23から端子5を抜き取ることもできる。
【0072】
次に、第2の実施形態にかかるコネクタハウジングについて説明する。
図5は、コネクタハウジング25aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一の機能を発揮する構成については、
図1~
図4と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0073】
コネクタハウジング25aは、コネクタハウジング25と略同様の構成であるが、蓋部材29が平板状ではなく、両端が一方の側に折り曲げられたような略コの字状断面を有する。前述したように、収容部材27には、複数の端子付き電線1を配置した際に、それぞれの端子収容部23を仕切る壁部が設けられる。この際、幅方向(コネクタ接続方向に対して垂直な方向)の両側の壁部が、収容部材27側ではなく、蓋部材29側に配置される。
【0074】
すなわち、幅方向の断面において、収容部材27における幅方向の両端の端子収容部23は、上方と側方の二方向に開口し、その他の端子収容部23は、上方の一方が開口する。蓋部材29を被せることで、すべての端子収容部23が、全周が閉鎖した空間となる。
【0075】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、蓋部材29は必ずしも平板状でなくてもよい。また、蓋部材29を平板状とはしないことで、反りなどの蓋部材29の変形を抑制することができる。なお、本実施形態では、両側の壁部を蓋部材29側に配置したが、端子収容部23仕切る壁部の任意の一部又はすべてを蓋部材29側に形成してもよい。また、コネクタハウジング25を上下に二分割して、同一形状の部材を突き合わせてもよい。この場合には、いずれかの部材を収容部材27とし他方の部材を蓋部材29と定義する。
【0076】
次に、第3の実施形態について説明する。
図6(a)は、蓋部材29を開いた状態のコネクタハウジング25bを示す図であり、
図6(b)は、蓋部材29を閉じた状態のコネクタハウジング25bを示す図である。コネクタハウジング25bは、コネクタハウジング25と略同様の構成であるが、蓋部材29と収容部材27とが、ヒンジ31を介して連結される点で異なる。
【0077】
ヒンジ31は、例えば、蓋部材29の先端側(コネクタ同士の接続部側)に配置される。なお、ヒンジ31の開閉方向は図示した例には限られない。また、蓋部材29は、コネクタハウジング25と同様に平板状であってもよく、コネクタハウジング25aと同様に、断面略コの字状であってもよい(以下の他の各実施形態でも同様である)。
【0078】
図6(a)に示すように、収容部材27に対して蓋部材29を開くと、内部の端子収容部23が開口する。このため、容易に端子付き電線1を配置して、樹脂19を塗布することができる。この状態で、
図6(b)に示すように、蓋部材29を閉じて、樹脂19を硬化させることで、端子収容済みコネクタを得ることができる。
【0079】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、蓋部材29と収容部材27とをヒンジ31を介して連結することで、蓋部材29を収容部材27の所定の位置に配置することが容易となる。
【0080】
次に、第4の実施形態について説明する。
図7(a)は、蓋部材29を開いた状態のコネクタハウジング25cを示す図であり、
図7(b)は、蓋部材29を閉じた状態のコネクタハウジング25cを示す図である。コネクタハウジング25cは、コネクタハウジング25等と略同様の構成であるが、蓋部材29が、収容部材27に対してスライド動作可能である点で異なる。
【0081】
蓋部材29は、例えば収容部材27の後方からスライド挿入される。なお、蓋部材29のスライド方向は前方からであってもよく、側方からでもよい。
【0082】
図7(a)に示すように、収容部材27に対して蓋部材29を開くと、内部の端子収容部23の上方が開口する。このため、端子付き電線1を後方から挿入して、上方から樹脂19を塗布することができる。この状態で、
図7(b)に示すように、蓋部材29を閉じて、樹脂19を硬化させることで、端子収容済みコネクタを得ることができる。
【0083】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、蓋部材29を収容部材27に対してスライド動作させることで、蓋部材29を収容部材27の所定の位置に配置することが容易となる。
【0084】
次に、第5の実施形態について説明する。
図8(a)は、各部材を分解した状態のコネクタハウジング25dを示す正面図であり、
図8(b)は、各部材を組み立てた状態のコネクタハウジング25dを示す図である。コネクタハウジング25dは、コネクタハウジング25等と略同様の構成であるが、収容部材27が複数に分割される点で異なる。
【0085】
コネクタハウジング25dは、複数の収容部材27が併設されて、端子収容部23が複数列に配置される。なお、図示した例では、一つの収容部材27には、二つの端子収容部23が形成され、二つの収容部材27が併設される例を示すが、収容部材27や端子収容部23の数は図示した例には限られない。
【0086】
複数の収容部材27を併設した状態で、一つの蓋部材29が一括して複数の収容部材27の上方に配置される。すなわち、蓋部材29は、複数の収容部材27にまたがるように配置されて固定される。
【0087】
第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、複数の収容部材27を用いることで、例えば多数の端子収容部23を有するコネクタハウジング25dであっても、端子付き電線1を配置して樹脂19を塗布する個々の部材を小型化することができる。また、一つの蓋部材29を複数の収容部材27の上方に一括して被せることで、蓋部材29の配置が容易である。
【0088】
次に、第6の実施形態について説明する。
図9(a)は、複数段に分割された収容部材27に端子付き電線1と樹脂19を配置した状態を示す図であり、
図9(b)は、組み立てた状態のコネクタハウジング25eを示す図である。コネクタハウジング25eは、コネクタハウジング25等と略同様の構成であるが、複数の収容部材27が複数段に積層される点で異なる。なお、図示した例では、収容部材27が2段に積層される例を示すが、複数段であれば特に積層数は限定されない。
【0089】
前述したように、収容部材27の上方は開口し、蓋部材29が配置される。一方、収容部材27の下面側には、上方の蓋部材29が配置される部位に対応した部位に、厚肉部28が形成される。厚肉部28は、他の部位に対して蓋部材29に対応する厚み分だけ厚みが厚い。
【0090】
図9(a)に示すように、まず、それぞれの収容部材27に対し端子付き電線1を配置して樹脂19を塗布する。この状態で、
図9(b)に示すように、最上段の収容部材27の上方に蓋部材29を配置するとともに、下方の収容部材27の上方には、直接、一つ上方の収容部材27を積層させる。この状態で、樹脂19を硬化させることで、端子収容済みコネクタを得ることができる。
【0091】
このように、複数の収容部材27が複数段に積層して配置される場合において、最上段の収容部材27の上方には、蓋部材29が配置される。一方、下段側の収容部材27の上方には、一つ上段側の収容部材27が直接配置される。すなわち、上段側の収容部材27の下面(厚肉部28)が下段側の収容部材27に対する蓋部材29を兼ねる。
【0092】
第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、複数の収容部材27を積層し、最上段のみに蓋部材29を被せ、他の収容部材27には、蓋部材29を被せずに、厚肉部28を蓋部材として利用することで、部品点数を削減し、組立作業が容易となる。
【0093】
次に、第7の実施形態について説明する。
図10(a)は、蓋部材29を開いた状態のコネクタハウジング25fを示す図であり、
図10(b)は、蓋部材29を閉じた状態のコネクタハウジング25fを示す図である。コネクタハウジング25fは、コネクタハウジング25等と略同様の構成であるが、蓋部材29の先端部に突起33が形成される点で異なる。突起33は、例えば、先端側に行くにつれて長くなるような傾斜を有する。
【0094】
まず、
図10(a)に示すように、収容部材27に対して蓋部材29を開き、内部に端子付き電線1を配置して、樹脂19を塗布する。この状態で、
図10(b)に示すように、蓋部材29を閉じて、樹脂19を硬化させることで、端子収容済みコネクタを得ることができる。
【0095】
ここで、蓋部材29を収容部材27に被せると、突起33は、端子本体3と圧着部17との間のトランジション部4に挿入される(
図2参照)。突起33の形態は、トランジション部4に嵌まるように形成される。すなわち、突起33がトランジション部4に挿入されて、圧着部17側と端子本体3側とを仕切ることができる。
【0096】
図10(b)に示すように、蓋部材29を閉じると、圧着部17側と端子本体3側とが仕切られるため、樹脂19が端子本体3側に流れることを抑制することができる。このように、蓋部材29の内側面に、樹脂19の流れ止め用の突起33を設けることで、より確実に硬化前の樹脂19を所望の範囲に保持することができる。
【0097】
なお、樹脂19の流れ止め用の突起としては、端子5の長手方向への樹脂の流れだけでなく、上下方向の流れ止めを形成してもよい。
図11は、コネクタハウジング25gの軸方向断面図である。収容部材27の内面側には、所定の高さにおいて突起33aが長手方向に沿って設けられる。すなわち、それぞれの端子収容部23の内壁面の所定の高さには、長手方向に沿って互いに対向するように突起33aが形成される。
【0098】
突起33aは、例えば圧着部17の側面と接触可能である。このため、突起33aによって、樹脂19が上方から下方に流れることを抑制することができる。このように、収容部材27の内側面に、樹脂19の流れ止め用の突起33aを設けることで、より確実に硬化前の樹脂19を所望の範囲に保持することができる。なお、突起33、33aは、いずれか一方のみであってもよく、両方を設けてもよい。
【0099】
第7の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、収容部材27又は蓋部材29の内側面に、樹脂の流れ止め用の突起33、33aを設けることで、樹脂19の流れを抑制し、より粘度の低い樹脂にも対応が可能となる。
【0100】
なお、上述した各実施形態では、圧着部17がいわゆるオープンバレルタイプの形態であるが、圧着部の形態は特に限定されない。また、端子5と導線13の材質も、上述した例には限られず、他の金属同士の組み合わせであってもよい。
【実施例0101】
前述したように、コネクタハウジングを分割することで、樹脂の塗布が容易であり、塗布量や塗布位置を容易に把握することができるとともに、樹脂の選択範囲が広がるため、製造条件等の自由度が高く、製造性の向上やコストダウンにつなげることができる。一方、さらに望ましい形態について、以下評価した。以下、より望ましい条件を実施例とし、改善の余地のある条件を比較例として示す。
【0102】
(製造方法A)
端子収容済みコネクタを作製して、各種の評価を行った。製造方法Aでは、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0103】
使用するコネクタハウジングについては詳細を後述するが、コネクタハウジングとしては、収容部材と蓋部材とが分割された(開閉可能な)ものを用いた。端子付き電線を収容部材に配置した後、圧着部の上面に樹脂を厚み約1000μmになるよう塗布した。その後、樹脂が未硬化状態で収容部材に蓋部材を被せ、樹脂と蓋部材とを接触させた。その後、室温25℃、相対湿度70%の大気中で120時間放置することで樹脂を硬化させ、蓋部材と圧着部を接着(あるいは粘着、密着)させた。この時、コネクタハウジングと樹脂の接着面積は、圧着部上面と接着している樹脂の面積と同等程度とした。
【0104】
(製造方法B)
製造方法Bでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。また、収容部材及び蓋部材は、紫外線透過率の比較的高いアクリル樹脂で構成されたものである。
【0105】
コネクタハウジングとしては、収容部材と蓋部材とが分割された(開閉可能な)ものを用いた。端子付き電線を収容部材に配置した後、圧着部の上面に紫外線硬化樹脂を厚み約1000μmになるよう塗布した。その後、樹脂が未硬化状態で収容部材に蓋部材を被せ、樹脂と蓋部材とを接触させた。その後、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、蓋部材と圧着部を接着させた。この時、コネクタハウジングと樹脂の接着面積は、圧着部上面と接着している樹脂の面積と同等程度とした。
【0106】
(製造方法C)
製造方法Cでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0107】
コネクタハウジングとしては、収容部材と蓋部材とが分割された(開閉可能な)ものを用いた。圧着部の上面に樹脂を厚み約1000μmになるよう塗布した後、端子付き電線を収容部材に配置した。その後、樹脂が未硬化状態で収容部材に蓋部材を被せ、樹脂と蓋部材とを接触させた。その後、室温25℃、相対湿度70%の大気中で120時間放置することで樹脂を硬化させ、蓋部材と圧着部を接着(あるいは粘着、密着)させた。この時、コネクタハウジングと樹脂の接着面積は、圧着部上面と接着している樹脂の面積と同等程度とした。
【0108】
(製造方法D)
製造方法Dでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0109】
コネクタハウジングとしては一般的な一体構造の物を用いた。コネクタハウジングに、端子を挿入した後、ディスペンサを用いてハウジング端子収容室の開口部(後端)から樹脂を注入した。次に、室温23℃、湿度70%で120時間放置して樹脂を硬化させた。この時、端子収容部の開口部(後端)を観察し、ハウジング端子収容部の内壁全面と端子が、樹脂を介して接着していることを確認した。
【0110】
(製造方法E)
製造方法Eでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。また、収容部材及び蓋部材は、紫外線透過率の比較的高いアクリル樹脂で構成されたものである。
【0111】
コネクタハウジングとしては一般的な一体構造の物を用いた。コネクタハウジングに、端子を挿入した後、ディスペンサを用いてハウジング端子収容室の開口部(後端)から紫外線硬化樹脂を注入した。次に、後端から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた。この時、端子収容部の開口部(後端)を観察し、ハウジング端子収容部の内壁全面と端子が、紫外線硬化樹脂を介して接着していることを確認した。
【0112】
(製造方法F)
製造方法Fでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0113】
コネクタハウジングとしては、収容部材と蓋部材とが分割された(開閉可能な)ものを用いた。収容部材の内部と蓋部材の内面に、樹脂を塗布した後、端子付き電線を収容部材に配置した。その後、樹脂が未硬化状態で収容部材に蓋部材を被せ、樹脂と蓋部材とを接触させた。その後、室温23℃、相対湿度70%の大気中で120時間放置することで樹脂を硬化させ、蓋部材と圧着部を接着(あるいは粘着、密着)させた。
【0114】
(製造方法G)
製造方法Gでも、同様に、複数のアルミニウム素線を撚り合わせた導線を有する被覆電線(長さ400mm)を用いた。導線全体として、断面の直径は1.6mmの円形である。また、被覆電線の被覆層はポリ塩化ビニルで構成されたものである。
【0115】
コネクタハウジングとしては、収容部材と蓋部材とが分割された(開閉可能な)ものを用いた。収容部材の内部と蓋部材の内面に、紫外線硬化樹脂を塗布した後、紫外線を照射して半硬化状態とした。その後、端子付き電線を収容部材に配置し、蓋部材を被せた。
【0116】
(樹脂A)
樹脂Aとしては、セメダイン社製の「EP001K」(商品名)を適用した。「EP001K」は2液型であり、エポキシ樹脂と変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)の硬化触媒(有機スズ化合物)とを含む液A(溶媒不含(固形分濃度100質量%))と、前記変成シリコーン樹脂とエポキシ樹脂硬化剤(変性ポリアミン)とを含む液B(溶媒不含(固形分濃度100質量%))とで構成される。
液A/液B=100/100(質量部比)として混合し、接着に用いた。
【0117】
(樹脂B)
樹脂Bとしては、セメダイン社製「スーパーX No.8008」(商品名)を適用した。「スーパーX No.8008」は1液型であり、多官能(メタ)アクリレート化合物と、変成シリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)と、前記変成シリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0118】
(樹脂C)
樹脂Cとしては、信越シリコーン社製「KE-3495」(商品名)を適用した。「KE-3495」はシリコーン樹脂(室温湿気硬化型シリコーン樹脂)と前記シリコーン樹脂の硬化触媒(ジブチルスズラウリレート)とを含む硬化性樹脂組成物(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0119】
(樹脂D)
樹脂Dとしては、セメダイン社製の「UT100B」(商品名)を適用した。「UT100B」は多官能イソシアネート化合物と多官能ヒドロキシ化合物とを含む1液型のウレタン系接着剤(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0120】
(樹脂E)
樹脂Eとしては、スリーボンド社製の「TB3006D」(商品名)を適用した。「TB3006D」はアクリレートを主成分とした紫外線硬化樹脂(溶媒不含(固形分濃度100質量%))である。
【0121】
(樹脂F)
樹脂Fとしては、セメダイン社製の「EP001K」(商品名)を硬化性樹脂、ヤスハラケミカル社製の「YSポリスターT80」(商品名)を粘着付与剤とし、80/20(質量部比)で混合して適用した。「YSポリスターT80」はテルペンフェノール樹脂であり100℃に加熱し、液状にしてから混合に用いた。
【0122】
(コネクタハウジングA~E)
コネクタハウジングAとしては、
図1に示す形態とした。コネクタハウジングBとしては、
図5に示す形態とした。コネクタハウジングCとしては、
図7に示す形態とした。コネクタハウジングEとしては、
図8に示す形態とした。
【0123】
(振動試験)
一定の歪み(曲率変化量ΔK=0.0056)にて、コネクタハウジングに装着した端子付き電線を100万回振動させた。その後、電気抵抗測定器を用いて、端子付き絶縁電線の端子側と、その反対側の電線末端とを電気的に接続して測定して、試験前後の電気抵抗値をそれぞれ算出した。電気抵抗値変化量は、(試験後の電気抵抗値)―(試験前の電気抵抗値)の計算式より求めた。振動試験後の抵抗上昇値が1.00Ω未満のものを○とし、抵抗上昇値が1.00Ω以上のものを×とした。
【0124】
また、振動試験後の素線断線数をマイクロスコープ観察により確認し、100×(断線した素線数)/(全素線数)の計算式より求められる断線率にて、素線断線の程度を評価した。断線率が10%以下のものを○とし、断線率が10%を超えるものを×とした。
【0125】
(防食性試験)
防食性試験は次の通り実施した。濃度1%の塩化ナトリウム水溶液中に、電源のグラウンドに接続した面積100cm2の銅電極を、水深65cmに浸漬し、電源のプラスに接続した端子収容済みコネクタのサンプルを水深60cmに浸漬し、それぞれ対向するように配置した。その後、12Vを6時間印加し静置した。
【0126】
防食性試験後、マイクロスコープを用いて、圧着部の外観を観察した。この際、圧着部の金属部分に欠損が認められないものを○とし、金属部分に欠損が認められたものを×とした。
【0127】
(冷熱サイクル試験)
作成した端子収容済みコネクタを冷熱サイクル試験機に投入し、125℃で15分間保持し、次いで-40℃で15分間保持した。これを1サイクルとする冷熱サイクルを240サイクル繰り返し、冷熱サイクル試験とした。この冷熱サイクル試験後に、上記「防食性試験」を実施し、防食性試験と同様に外観評価を行った。
【0128】
また、冷熱サイクル試験後に、上記「防食性試験」を実施し、冷熱サイクル試験前と、冷熱サイクル試験及び防食性試験後のサンプルに対し、抵抗測定器を用いて端子収容済みコネクタの端子側と、端子側とは反対側の電線末端とを電気的に接続し、抵抗を測定した。防食性試験後の抵抗値から冷熱サイクル試験前の抵抗値を差し引いた値を抵抗上昇値とし、抵抗上昇値が1.0Ω以下のものを○とし、抵抗上昇値が1.0Ωを超えるものを×とした。
【0129】
(連続耐熱性試験)
製造した端子収容済みコネクタを恒温槽に投入し、125℃で120時間放置し、連続耐熱性試験とした。その後、上記「防食性試験」を実施し、防食性試験と同様に外観評価を行った。
【0130】
また、連続耐熱性試験後に、上記「防食性試験」を実施し、連続耐熱性試験前と、連続耐熱性試験及び防食性試験後のサンプルに対し、抵抗測定器を用いて端子収容済みコネクタの端子側と、端子側とは反対側の電線末端とを電気的に接続し、抵抗を測定した。防食性試験後の抵抗値から連続耐熱性試験前の抵抗値を差し引いた値を抵抗上昇値とし、抵抗上昇値が1.0Ω以下のものを○とし、抵抗上昇値が1.0Ωを超えるものを×とした。
【0131】
(実施例1-1~1-7)
実施例1-1~1-7は、いずれも、コネクタハウジングAを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例1-1~1-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例1-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例1-1と同様の手順で作成した。また、実施例1-5のみ製造方法Bを採用し、その他は製造方法Aを採用した。
【0132】
(実施例2-1~2-7)
実施例2-1~2-7は、いずれも、コネクタハウジングBを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例2-1~2-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例2-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例2-1と同様の手順で作成した。また、実施例2-5のみ製造方法Bを採用し、その他は製造方法Aを採用した。
【0133】
(実施例3-1~3-7)
実施例3-1~3-7は、いずれも、コネクタハウジングCを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例3-1~3-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例3-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例3-1と同様の手順で作成した。また、実施例3-5のみ製造方法Bを採用し、その他は製造方法Aを採用した。
【0134】
(実施例4-1~4-7)
実施例4-1~4-7は、いずれも、コネクタハウジングDを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例4-1~4-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例4-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例4-1と同様の手順で作成した。また、実施例4-5のみ製造方法Bを採用し、その他は製造方法Aを採用した。
【0135】
(実施例5-1~5-7)
実施例5-1~5-7は、いずれも、製造方法C、コネクタハウジングAを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例5-1~5-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例5-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例5-1と同様の手順で作成した。
【0136】
(実施例6-1~6-7)
実施例6-1~6-7は、いずれも、製造方法C、コネクタハウジングBを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例6-1~6-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例6-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例6-1と同様の手順で作成した。
【0137】
(実施例7-1~7-7)
実施例7-1~7-7は、いずれも、製造方法C、コネクタハウジングCを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例7-1~7-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例7-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例7-1と同様の手順で作成した。
【0138】
(実施例8-1~8-7)
実施例8-1~8-7は、いずれも、製造方法C、コネクタハウジングDを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、実施例8-1~8-6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、実施例8-7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、実施例8-1と同様の手順で作成した。
【0139】
(比較例1~7)
比較例1~7は、いずれも、従来のコネクタハウジングを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、比較例1~6は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、比較例7は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、比較例1と同様の手順で作成した。また、比較例5のみ製造方法Eを採用し、その他は製造方法Dを採用した。なお、比較例1~7については、振動試験のみ評価した。
【0140】
(比較例8~14)
比較例8~14は、いずれも、従来のコネクタハウジングを用いて端子収容済みコネクタを作成した。この際、比較例8~13は、それぞれ樹脂A~Fを用いた。また、比較例14は、コネクタハウジングの樹脂接触箇所に対して、予めイチネンケミカルズ製離型剤フッ素系タイプRを塗布してから、比較例8と同様の手順で作成した。また、比較例12のみ製造方法Gを採用し、その他は製造方法Fを採用した。なお、比較例8~14については、防食性試験、冷熱サイクル試験、連続耐熱性試験のみ評価した。結果を表1~表10に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
実施例は、全ての水準において、各評価において良好な結果が得られた。特に、振動試験に関しては、樹脂がコネクタハウジングの一部分とのみ接触(あるいは粘着、接着)することで(すなわち、非接着部が形成されることで)、十分な遊びが確保され、振動による外力を緩和したためと考えられる。また、防食性試験、冷熱サイクル試験、連続耐熱性試験に関しては、圧着部の上面のアルミニウム電線露出部を空隙なく樹脂で覆うことができており、防食性が担保されたと考えられる。
【0152】
一方、比較例1~7では、ハウジングの端子収容部の内壁全周と端子が、樹脂により接着(あるいは粘着、密着)していることで、端子及び端子近傍の絶縁電線に遊びが確保されず、振動による影響を緩和できなかったため、断線率が高くなったと考えられる。また、断線により、電気抵抗値が大きく上昇したと考えられる。このため、外周の少なくとも一部に非接着部を形成することが望ましい。
【0153】
また、比較例8~14では、冷熱サイクル試験、連続耐熱性試験後の防食性が満足しなかった。これは、圧着部の上面のアルミニウム電線露出部が樹脂により空隙なく覆われていないことが原因であり、防食性が担保されていないと判断できる。このため、コネクタハウジングへの樹脂の塗布や注入ではなく、収容部材へ端子付き電線を配置した後又は配置した後であって、蓋部材を閉める前に樹脂を塗布することが望ましい。
【0154】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。