(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138742
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20241002BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20241002BHJP
【FI】
G01S7/02 216
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049396
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆介
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕次郎
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD05
5J070AD10
5J070AF03
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK22
(57)【要約】
【課題】地表面に対して平行な方向及びその方向に直交する方向の少なくとも1つの方向におけるアンビギュイティの発生を抑えるとともに分解能を高めつつ、効率的に角度処理を行うことができるレーダ装置を提供すること。
【解決手段】レーダ装置1は、直列に給電されるアレーアンテナである複数の送信アンテナ31及び同数の受信アンテナ32等を備え、複数の送信側実在アレー系列310及び複数の受信側実在アレー系列320は、アレーアンテナの給電方向Y2及び給電直交方向X2とは異なる方向に略直線状に配列され、複数の送信側実在アレー系列310と複数の受信側実在アレー系列320との配列とは、地表面Gに対して略平行な平行方向X1又は地表面直交方向Y1の何れかの方向に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置され、仮想アレー系列34は、平行方向X1と地表面直交方向Y1に格子状に千鳥配列で並ぶように配列される。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送受信するとともに受信信号を処理することで、点群を取得し、物標を検出するレーダ装置であって、
直列に給電されるアレーアンテナである複数の送信アンテナと、
直列に給電されるアレーアンテナであり、前記複数の前記送信アンテナと同数の受信アンテナと、
取得した受信信号に基づいて距離毎に角度処理を行う処理部と、を備え、
複数の前記送信アンテナそれぞれの位相中心である複数の送信側実在アレー系列は、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナが配置される信号の送受信面において、前記アレーアンテナの給電方向と該給電方向に対して直交する第1直交方向とは異なる方向に略直線状に配列され、
複数の前記受信アンテナそれぞれの位相中心である複数の受信側実在アレー系列は、前記送受信面において、前記給電方向と前記第1直交方向とは異なる方向に略直線状に配列され、
複数の前記送信側実在アレー系列によって形成される配列と複数の前記受信側実在アレー系列によって形成される配列とは、地表面に対して略平行な平行方向と前記平行方向に対して直交する第2直交方向の何れかの方向に延びる仮想線を中心に略対称となるように配置され、
複数の送信側実在アレー系列と、複数の受信側実在アレー系列と、に基づいて複数の仮想アレー系列が形成され、
全ての前記仮想アレー系列は、前記送受信面において、互いに間隔を空け、前記平行方向と前記第2直交方向に格子状に千鳥配列で並ぶように配列され、
前記処理部は、前記平行方向及び前記第2直交方向のうちの何れか一方の方向において少なくとも最も多くの前記仮想アレー系列が並ぶ配列に対して角度処理を行い、その角度処理の結果を用いて他方の方向における角度処理を実行するレーダ装置。
【請求項2】
複数の前記送信側実在アレー系列が並ぶ方向は、複数の前記受信側実在アレー系列が並ぶ方向と直交しない請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
互いに最も離れた位置に配置される前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の領域には、前記送信アンテナ用と前記受信アンテナ用のチャンネルを有するICの少なくとも一部又は該ICのフットプリントが含まれる請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記給電方向において隣接する前記仮想アレー系列同士の間隔は、前記第1直交方向において隣接する前記仮想アレー系列同士の間隔よりも大きい請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記処理部による前記仮想アレー系列を用いた角度処理では、グレーティングローブが前記平行方向と異なる方向に発生する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
複数の前記送信側実在アレー系列によって形成される配列において隣接する前記送信側実在アレー系列同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なり、
複数の前記受信側実在アレー系列によって形成される配列において隣接する前記受信側実在アレー系列同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なる請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記処理部は、角度処理で発生する最も高いピークと該ピークに対するグレーティングローブの方向との関係性を記憶する記憶部と、
前記記憶部によって記憶された前記関係性に基づいて前記グレーティングローブが存在する方向を推定する推定部と、を有し、
推定した前記方向におけるピークを前記グレーティングローブと判定し、削除する請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記処理部は、少なくとも地表面との距離を含む地表面情報を記憶する記憶部を有し、
グレーティングローブにて発生する角度アンビギュイティに対して、前記地表面情報に基づいて、距離毎に真の角度を判断する請求項1~7のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記仮想アレー系列を用いた角度処理において、窓関数を適用しない請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項10】
複数の前記送信アンテナと複数の前記受信アンテナとが対向する側の領域に配置される給電線と、複数の前記送信アンテナ及び複数の前記受信アンテナの前記給電線が配置される領域とは反対側の領域に配置される基板の切り欠き、ネジ、又はレドム側面の少なくともいずれか1つと、をさらに備える請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項11】
複数の前記送信アンテナそれぞれは、そのアレーアンテナの給電線路が前記給電方向に対して同じ方向に傾いて延び、
複数の前記受信アンテナそれぞれは、そのアレーアンテナの給電線路が前記給電方向に対して同じ方向に傾いて延びる請求項1に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路上走行を行う一般自動車以外のモビリティにおいても、安全運転支援、自動運転化の重要性が高まっている。例えば、採掘現場における特殊車両、工事や工場内の運搬のための作業車、農場で使用される農業機械等の様々なモビリティの高度化が進んでいる。また、モビリティではなくインフラ側の高度化として、例えば交通流の測定や河川の流速等の計測等の用途でも実装が増えつつある。これらに対応すべく様々な形態のセンサが検討されており、レーダセンサもその一つである。
【0003】
例えば特許文献1には、自動車用のMIMO(multiple-input and multiple-output)レーダセンサとして、基板中央領域にMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuits、モノリシックマイクロ波集積回路)などの部品とその周辺全周を囲むようにアンテナが配置されるレーダ装置が記載されている。特許文献2には、大型化を抑制するレーダセンサとして、規定される4象限に受信アンテナを配置し、鉛直方向と水平方向に仮想アンテナを構成するレーダ装置が記載されている。特許文献3には、二次元方向を低い処理負荷で検出するレーダとして、2軸のアレーアンテナに加え、3軸目の仮想アレーアンテナを形成する技術が記載されている。特許文献4には、自動車用途ではなく、河川、工業、農業用水路、溜め池、水際から離隔した位置から水面における水面水位と水面流速を計測するレーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-524030号公報
【特許文献2】特開2020-020720号公報
【特許文献3】特開2021-018097号公報
【特許文献4】特開2015-111097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、アレーアンテナの給電方向、長手方向にアレー配列が配置されることで、その方向での大型化やアンビギュイティが起りうる。また、略長方形からなるMIMOアンテナのアレー配置の対角方向が地表面に対して平行な方向又はその方向に直交する方向ではなく、それらの方向にアレー配置の最大開口を形成できず、例えば地表面に対して平行な方向等の角度分解能を向上させる余地がある。特許文献2では、受信アンテナのレイアウトが直線的ではないため、IC(Integrated Circuit)との給電線路の引き回しにて、一部給電線路が長くなり、損失が大きくなる箇所が発生しうる。また、2方向における1次元角度検知であるため、複数のターゲットに対して各々の情報のマッチングが困難である。特許文献3では、仮想的に新たに設けるアンテナは3軸目方向のみ、角度検出もその方向のみである。また特許文献3では、信頼度確保のため、実在アンテナのアレー配置方向による角度検知の後、仮想アンテナでの角度検知を実行しており角度処理が重複している。特許文献4では、自動車以外の用途として河川等での計測の検討を示しているが、レーダ構成の詳細としてアンテナに関する好適な配置等の事例は開示されていない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、地表面に対して平行な方向及びその方向に直交する方向の少なくとも1つの方向におけるアンビギュイティの発生を抑えるとともに分解能を高めつつ、効率的に角度処理を行うことができるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)レーダ装置は、信号を送受信するとともに受信信号を処理することで、点群を取得し、物標を検出するレーダ装置であって、直列に給電されるアレーアンテナである複数の送信アンテナと、直列に給電されるアレーアンテナであり、前記複数の前記送信アンテナと同数の受信アンテナと、取得した前記受信信号に基づいて距離毎に角度処理を行う処理部と、を備え、複数の前記送信アンテナそれぞれの位相中心である複数の送信側実在アレー系列は、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナが配置される信号の送受信面において、前記アレーアンテナの給電方向と該給電方向に対して直交する第1直交方向とは異なる方向に略直線状に配列され、複数の前記受信アンテナそれぞれの位相中心である複数の受信側実在アレー系列は、前記送受信面において、前記給電方向と前記第1直交方向とは異なる方向に略直線状に配列され、複数の前記送信側実在アレー系列によって形成される配列と複数の前記受信側実在アレー系列によって形成される配列とは、地表面に対して略平行な平行方向と前記平行方向に対して直交する第2直交方向の何れかの方向に延びる仮想線を中心に略対称となるように配置され、複数の送信側実在アレー系列と、複数の受信側実在アレー系列と、に基づいて複数の仮想アレー系列が形成され、全ての前記仮想アレー系列は、前記送受信面において、互いに間隔を空け、前記平行方向と前記第2直交方向に格子状に千鳥配列で並ぶように配列され、前記処理部は、前記平行方向及び前記第2直交方向のうちの何れか一方の方向において少なくとも最も多くの前記仮想アレー系列が並ぶ配列に対して角度処理を行い、その角度処理の結果を用いて他方の方向における角度処理を実行するレーダ装置。
【0008】
(2)(1)に記載のレーダ装置において、複数の前記送信側実在アレー系列が並ぶ方向は、複数の前記受信側実在アレー系列が並ぶ方向と直交しない。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載のレーダ装置において、互いに最も離れた位置に配置される前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の領域には、前記送信アンテナ用と前記受信アンテナ用のチャンネルを有するICの少なくとも一部又は該ICのフットプリントが含まれる。
【0010】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、前記給電方向において隣接する前記仮想アレー系列同士の間隔は、前記第1直交方向において隣接する前記仮想アレー系列同士の間隔よりも大きい。
【0011】
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、前記処理部による前記仮想アレー系列を用いた角度処理では、グレーティングローブが前記平行方向と異なる方向に発生する。
【0012】
(6)(1)~(5)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、複数の前記送信側実在アレー系列によって形成される配列において隣接する前記送信側実在アレー系列同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なり、複数の前記受信側実在アレー系列によって形成される配列において隣接する前記受信側実在アレー系列同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なる。
【0013】
(7)(1)~(6)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、前記処理部は、角度処理で発生する最も高いピークと該ピークに対するグレーティングローブの方向との関係性を記憶する記憶部と、前記記憶部によって記憶された前記関係性に基づいて前記グレーティングローブが存在する方向を推定する推定部と、を有し、推定した前記方向におけるピークを前記グレーティングローブと判定し、削除する。
【0014】
(8)(1)~(7)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、前記処理部は、少なくとも地表面との距離を含む地表面情報を記憶する記憶部を有し、グレーティングローブにて発生する角度アンビギュイティに対して、前記地表面情報に基づいて、距離毎に真の角度を判断する。
【0015】
(9)(1)~(8)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、前記処理部は、前記仮想アレー系列を用いた角度処理において、窓関数を適用しない。
【0016】
(10)(1)~(9)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、複数の前記送信アンテナと複数の前記受信アンテナとが対向する側の領域に配置される給電線と、複数の前記送信アンテナ及び複数の前記受信アンテナの前記給電線が配置される領域とは反対側の領域に配置される基板の切り欠き、ネジ、又はレドム側面の少なくともいずれか1つと、をさらに備える。
【0017】
(11)(1)~(10)のいずれか1つに記載のレーダ装置において、複数の前記送信アンテナそれぞれは、そのアレーアンテナの給電線路が前記給電方向に対して同じ方向に傾いて延び、複数の前記受信アンテナそれぞれは、そのアレーアンテナの給電線路が前記給電方向に対して同じ方向に傾いて延びる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、地表面に対して平行な方向及びその方向に直交する方向の少なくとも1つの方向におけるアンビギュイティの発生を抑えるとともに分解能を高めつつ、効率的に角度処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係るレーダ装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図2A】走行する車両に搭載されたレーダ装置を示す模式図である。
【
図2B】
図2Aに示すレーダ装置から見た地表面上の水平方向における異なる位置に存在する2つの物標を示す模式図である。
【
図2C】
図2Aに示すレーダ装置から見た地表面に対して鉛直方向における異なる位置に存在する2つの物標を示す模式図である。
【
図2D】
図2Aに示すレーダ装置から見た地表面から斜め方向における異なる位置に存在する2つの物標を示す模式図である。
【
図3A】検出対象物の上方に固定設置されたレーダ装置を示す模式図である。
【
図3B】
図3Aに示すレーダ装置が水平方向を走査する様子を示す模式図である。
【
図3C】
図3Aに示すレーダ装置から見た地表面に対して鉛直方向を走査する様子を示す模式図である。
【
図3D】
図3Aに示すレーダ装置から見た地表面から斜め方向を走査する様子を示す模式図である。
【
図4A】第1実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の構成を示す模式図である。
【
図4B】第1実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の各受信アンテナ及び送信アンテナの位相中心を示す模式図である。
【
図4C】第1実施形態に係るレーダ装置の仮想アレー系列の分布を示す模式図である。
【
図5A】1次元での角度処理を実施して得られる水平方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図5B】2次元FFTでの角度処理を実施して得られた仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図6A】地表面に対して平行な平行方向及び該平行方向に直交する地表面直交方向に並列される仮想アレー系列の分布を示す模式図である。
【
図6B】
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【
図6C】
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図6D】
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図7A】
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して窓関数を適用して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【
図7B】
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して窓関数を適用して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図7C】図dAに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して窓関数を適用して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図8A】第1実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【
図8B】第1実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図8C】第1実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図9A】第2実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の構成を示す模式図である。
【
図9B】第2実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の各受信アンテナ及び送信アンテナの位相相中心を示す模式図である。
【
図9C】第2実施形態に係るレーダ装置の仮想アレー系列の分布を示す模式図である。
【
図10A】第2実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【
図10B】第2実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける地方向のスペクトラムを示すグラフである。
【
図11】第2実施形態に係るレーダ装置と地表面の位置関係と、
図10Aのスペクトラムを示す画像における地表面の位置とを示す模式図である。
【
図12A】
図6Aに示す仮想アレー系列の分布よりも平行方向における仮想アレー間の間隔が大きいアンテナの仮想アレー系列の分布を示す模式図である。
【
図12B】
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【
図13A】第3実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の構成を示す模式図である。
【
図13B】第3実施形態に係るレーダ装置の仮想アレー系列の分布を示す模式図である。
【
図13C】第3実施形態に係るレーダ装置と地表面の位置関係と、第3実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像における地表面の位置とを示す模式図である。
【
図14A】第4実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の構成を示す模式図である。
【
図14B】第4実施形態に係るレーダ装置の仮想アレー系列の分布を示す模式図である。
【
図14C】第4実施形態に係るレーダ装置で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【
図14D】
図14Cのスペクトラムを示す画像において検出対象から除外されるピークを示す図である。
【
図15】第5実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部のアンテナ素子の配置を示す模式図である。
【
図16】第6実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部の配列を示す模式図である。
【
図17】第7実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部とICとの位置関係を示す模式図である。
【
図18】第8実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部とICとの位置関係を示す模式図である。
【
図19】第9実施形態に係るレーダ装置のアンテナ部と給電線とレドム等の位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るレーダ装置1は、電磁波を送受信により周囲の物体を点群として取得する。
図1は、レーダ装置1の構成例を示す図である。また、以下で示すレーダ構成は一例であってこれに限るものではない。
【0022】
レーダ装置1は、局部発振部10と、変調部20と、アンテナ部30と、復調部40と、ADコンバータ50と、処理部60と、を備える。これらのいくつかがIC(Integrated Circuits)内部に一体的にくみこまれていても良い。
【0023】
局部発振部10は、所定の周波数の信号を生成して変調部20に供給する。
【0024】
変調部20は、局部発振部10から供給される所定の周波数の局発信号を変調してアンテナ部30に供給する。なお、周波数変調等の他の方式として、パルス変調や位相変調や多値変調等様々な変調を行うようにしてもよい。
【0025】
アンテナ部30は、電磁波を送信する複数の送信アンテナ31と、複数の送信アンテナ31が送信した電磁波の物体70による反射波を受信する複数の受信アンテナ32によって構成される。アンテナ部30は、変調部20から供給される周波数変調信号を電磁波としての周囲に向けて送信するとともに、周囲の物体70によって反射された反射信号を捕捉し、電気信号に変換する。アンテナ部30の構成の詳細については後述する。
【0026】
アンテナ部30からの電気信号は、増幅部(図示省略)によって電力が増幅され、復調部に供給される。復調部40は、増幅部から供給される電気信号を局部発振部10から供給される局発信号を用いて復調し、ADコンバータ50に供給する。
【0027】
ADコンバータ50は、復調部40から供給される電気信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して処理部60に供給する。
【0028】
処理部60は、ADコンバータ50から供給されるデジタル信号となった受信信号を内部処理することで点群を取得し、物標を検出する。処理部60は、内部処理として距離処理、速度処理、角度処理を実行し、位置情報が特定された点群を取得する。また処理部60は、距離や角度等の位置情報が特定された点群を物標化する処理を実行する。
【0029】
処理部60によって実行される距離処理は、送信波と反射波の周波数差から物体70までの距離に相当する距離データを複数の測定期間それぞれにおいて求める処理である。速度処理は、複数の測定期間それぞれで繰り返し求めた複数の距離データを処理することで物体70の速度に相当する情報を求める処理である。この処理によってデジタル信号は、レーダ装置1からの距離と相対速度が特定されたいわゆるレンジドップラと言われる信号となる。即ち、デジタル信号となった受信信号は、後に距離処理によって距離毎信号となる。そして繰り返し取得した複数の距離毎信号は、速度処理によって距離速度毎信号となる。これらの処理により、各距離、各相対速度における信号の取得が可能であり、異なる距離、速度における信号は独立に認識できるため、この成分での分離検出は通常可能である。一方で、同一距離・速度においては、信号分離が困難である。これに対して角度軸での分離検出する角度処理が必要となる。処理部60が実施する角度処理の詳細については後述する。
【0030】
ここで、本発明のレーダ装置1の適用事例に関して
図2A~
図2Dを参照しながら説明する。
図2Aは、走行するモビリティに搭載されたレーダ装置1を示す模式図である。矢印Dは車両の走行方向を示している。
図2Bは、
図2Aに示すレーダ装置1の地表面G上において異なる位置に存在する2つの物体71、72を示す模式図である。
図2Cは、
図2Aに示すレーダ装置1から見た地表面直交方向Y1における異なる位置に存在する2つの物体71、72を示す模式図である。
図2Dは、
図2Aに示すレーダ装置1から見た地表面Gから斜め方向における異なる位置に存在する2つの物体71、72を示す模式図である。なお、本明細書では、平行方向X1は、レーダ装置1にあってアンテナ部30が配置される送受信面33において地表面Gに対して平行な方向であり、地表面直交方向(第2直交方向)Y1は、送受信面33において平行方向X1に直交する方向である。また、本明細書において地表面Gとは、地面や路面だけでなく建物の床面や水面など、計測において鉛直下側の境界をさすものとする。
【0031】
本発明のレーダ装置1は、地表面Gに対して平行となる平行方向X1と、レーダ装置1の送信アンテナ31及び受信アンテナ32が配置される送受信面33において該平行方向X1に直交する地表面直交方向Y1、即ち地表面Gに直交する方向又はそれに近い方向で性能の最大化を目指すものである。
【0032】
本発明のレーダ装置1の適用事例として、自動車や建設機械や農業機械や小型モビリティ等、自走するモビリティへの設置により、衝突防止のための周辺障害物の検知や自己位置推定や地図作成のための周辺状況把握等がある。この場合、モビリティが常に地表面G上を自走することが前提となり、検出対象は基本的には地表面G上に存在し、何らか飛翔しない限りは、地表面Gから接続される形にて物体70が存在する。また物体70は重力に逆らいつつ形態を保持すべく、鉛直方向すなわち地表面Gから直交する直交方向に構造をとることが多い。その構造において地表面Gで単独で検出対象が存在することは少なく、複数の物体70が存在する。このため、
図2Bに示すように地表面Gに平行となる平行方向X1においてこれら複数の物体71、72を分離して検出する必要がある。
【0033】
また、用途によっては地表面Gから鉛直方向にて、周辺に対して一部分突出した物体70の把握や、高さそのものの情報の把握が必要である場合もある。この際には、
図2Cに示すように、地表面Gに平行な平行方向X1と地表面直交方向Y1にても物体71、72を分離して検出する必要がある。一方で、地表面Gから重力に逆らい物体70が存在する限り、
図2Dに示すように、地表面Gから斜め方向に延伸する形にて物体70が存在するケースは少ない。例えば道路交通における信号機やポール、また建物や壁などの人工物体は、通常地表面Gに対して鉛直に設置されている。植生なども一部斜めの構造はあるものの、樹木、多くの植物の茎等も通常地表面Gに対して鉛直へ延伸している。このため、地表面Gから斜めの方向に物体71,72を分離して検出する必要性は、地表面Gに対して平行な平行方向X1と地表面直交方向Y1に比較して低いといえる。
【0034】
本発明のレーダ装置1の別の適用事例に関して
図3A~
図3Dを参照しながら説明する。
図3Aは、検出対象物の上方に固定設置されたレーダ装置1を示す模式図である。
図3Bは、
図3Aに示すレーダ装置1が地表面G及びその上方の平行方向X1に角度を検出する様子を示す模式図である。
図3Cは、
図3Aに示すレーダ装置1が地表面Gから地表面直交方向Y1に角度を検出する様子を示す模式図である。
図3Dは、
図3Aに示すレーダ装置1から見た地表面Gから斜め方向に角度を検出する様子を示す模式図である。なお、
図3B~
図3Dにおいて矢印Fは交通流又は水流を含むなんらかの観測対象物の流れを示している。
【0035】
本発明のレーダ装置1の別の適用事例として、
図3Aに示すように固定的に設置して流量を観測することがある。流量の観測対象物は、交通流であったり、水流であったり様々である。この場合において、交通流や水流そのものは、距離や速度で分離することが可能であるものの、特に
図3Bに示すように地表面Gに平行となる平行方向X1にて、同一距離速度となりその情報では分離することが困難となる場合がある。この場合、観測対象物を角度で分離して検出する必要がある。また交通流や水流のなかで、異なる高さの検出が必要な場合、
図3Cに示すように地表面直交方向Y1にて分離して検出する必要がある。レーダ装置1をモビリティに設置した場合と同様、
図3Dに示すように斜めに延伸した物体70をその方向にて分離して検出する必要性は低いといえる。
【0036】
こういった中、本発明では分解性能に限界があるセンサにおいて、上記適用事例のように比較的不要な方向において分離性能を高めず、必要な方向において分離性能を高めることで、実際の適用に好適となるセンサの提供を行う。すなわち、地表面Gに平行な平行方向X1と該平行方向X1に直交する地表面直交方向Y1に対して分離性能を高める。
【0037】
次に、本実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30の詳細な構成について
図4A~
図4Cを参照しながら説明する。
図4Aは、本実施形態のレーダ装置1のアンテナ部30の構成を示す模式図である。
図4Bは、本実施形態のレーダ装置1のアンテナ部30の各送信アンテナ31及び各受信アンテナ32の位相中心を示す模式図である。
図4Cは、本実施形態のレーダ装置1の仮想アレー系列34の分布を示す模式図である。
【0038】
レーダ装置1のアンテナ部30は、複数の送信アンテナ31と、複数の受信アンテナ32を有する。レーダ装置1のアンテナ部30が備える送信アンテナ31の数と受信アンテナ32の数は同数である。レーダ装置1では、送受同数のチャンネルを有し、チャンネル毎にアレー系列をなす。本実施形態のレーダ装置1は、
図4Aに示すように4つの送信アンテナ31と4つの受信アンテナ32を備える。
【0039】
送信アンテナ31は、複数のアンテナ素子311で構成され、直列に給電されるアレーアンテナである。各送信アンテナ31の複数のアンテナ素子311は、直線状にアレーアンテナの給電方向(以下、単に給電方向という)Y2に平行に並列される。即ち、送信アンテナ31の長手方向は給電方向Y2と等しい。また本実施形態では、給電方向Y2は地表面Gに平行な平行方向X1に対して直交する。
【0040】
複数(4つ)の送信アンテナ31それぞれの位相中心である複数(4つ)の送信側実在アレー系列310は、互いに間隔を空けて略直線に配列(並列)される。
図4A及び
図4Bに示すように、4つの送信側実在アレー系列310は、給電方向Y2と該給電方向Y2に対して直交する給電直交方向(第1直交方向)X2とは異なる方向D1に配列される。本実施形態では、隣接する送信側実在アレー系列310同士の間隔は略等しい。
【0041】
受信アンテナ32は、複数のアンテナ素子321で構成され、直列に給電されるアレーアンテナである。各受信アンテナ32の複数のアンテナ素子321は、直線状にアレーアンテナの給電方向Y2に平行に並列される。即ち、受信アンテナ32の長手方向は給電方向Y2と等しい。なお、アンテナ部30の全ての送信アンテナ31及び受信アンテナ32の給電方向Y2は略同じ方向である。
【0042】
複数(4つ)の受信アンテナ32それぞれの位相中心である複数(4つ)の受信側実在アレー系列320は、互いに間隔を空けて略直線に配列(並列)される。
図4A及び
図4Bに示すように、4つの受信側実在アレー系列320は、給電方向Y2と、送受信面33において該給電方向Y2に対して直交する給電直交方向X2とは異なる方向D2に配列される。本実施形態では、隣接する受信側実在アレー系列320間の間隔は略等しい。なお、本明細書では、送信側実在アレー系列310及び受信側実在アレー系列320を区別することなく説明する際は、実在アレー系列300と称する。
【0043】
図4A及び
図4Bに示すように、複数(4つ)の送信側実在アレー系列310によって形成される配列と複数(4つ)の受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、平行方向X1又は地表面直交方向Y1の何れかの方向に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置される。本実施形態では、送信側実在アレー系列310によって形成される配列と受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、地表面直交方向Y1に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置される。
【0044】
また本実施形態では、送信側実在アレー系列310によって形成される配列と受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、地表面G側に近づくにつれて互いに離れるように配置される。即ち、各送信アンテナ31の地表面G側の端部と各受信アンテナ32の地表面G側の端部との間には、比較的広い領域が形成される。この領域には、後述するIC37等を配置してもよい。
【0045】
また本実施形態では、各送信側実在アレー系列310が何れか1つの受信側実在アレー系列320と給電直交方向X2において対向するように配置される。また
図4Bに示すように、複数の送信側実在アレー系列が配列する方向D1は、複数の受信側実在アレー系列が配列する方向D2と直交しない。
【0046】
また、アンテナ部30において送信側実在アレー系列310と受信側実在アレー系列320とを掛け合わせてできる系列を仮想アレー系列と称する。本実施形態のレーダ装置1では、
図4Cに示すように、複数(4つ)の送信側実在アレー系列310と複数(4つ)の受信側実在アレー系列320とに基づいて複数(16個)の仮想アレー系列34が形成される。これは、複数の送信アンテナ31と複数の受信アンテナ32の組み合わせた系列にて、等価的に位相中心が分布すると示すものである。
【0047】
全ての仮想アレー系列34は、
図4Cに示すように、互いに間隔を空け、地表面Gに対して平行な平行方向X1と該平行方向X1に対して直交する地表面直交方向Y1に格子状に千鳥配列で並ぶように配列される。仮想アレー系列の分布は、送受信面33において全体として菱形状の分布とさせることができる。仮想アレー系列の菱形状の分布の対角線2方向のうち、一方の方向が地表面Gと平行な平行方向X1となり、もう一方の方向が平行方向X1に直交する地表面直交方向Y1となる。仮想アレー系列34の分布は、この対角線方向2方向の格子状の配置となり、その格子は各々の方向にて所定の最小単位にて構成される。この最小単位は、実在アレー系列によって決定されている。本明細書において、最小単位とは、仮想アレー系列34が存在する位置の平行方向X1における最小の間隔(以下、最小単位G1という)又は仮想アレー系列34が存在する位置の地表面直交方向Y1における最小の間隔(以下、最小単位G2という)である。
【0048】
また本実施形態では、全ての仮想アレー系列34は、平行方向X1及び地表面直交方向Y1ごとに所定の最小単位の整数倍で示される場所に配置される。即ち、全ての仮想アレー系列34は、平行方向X1及び地表面直交方向Y1において互いに所定の間隔の整数倍の間隔を空けて配置される。例えば
図4Cにおいて最も紙面左側に位置する仮想アレー系列34を基準とすると、この基準となる仮想アレー系列34と平行方向X1の同じ列に並ぶ他の3つの仮想アレー系列34は、最小単位G1の2倍で示される場所と4倍で示される場所と6倍で示される場所に配置されることになる。また例えば
図4Cにおいて最も紙面上側に位置する仮想アレー系列34を基準とすると、この基準とされた仮想アレー系列34と地表面直交方向Y1の同じ列に並ぶ他の3つの仮想アレー系列34は、最小単位G2の2倍で示される場所と4倍で示される場所と6倍で示される場所に配置されることになる。本実施形態では、平行方向X1において隣接する仮想アレー系列34同士の間隔と地表面直交方向Y1において隣接する仮想アレー系列34同士の間隔は同等である。
【0049】
隣接する仮想アレー系列34の間には、空隙35が形成される。
図4Cに示すように、平行方向X1において隣接する仮想アレー系列34間の空隙35の地表面直交方向Y1における両隣には、仮想アレー系列34が存在する。即ち、アンテナ部30における仮想アレー系列34の配置は、平行方向X1及び地表面直交方向Y1のそれぞれの方向で少なくとも空隙35を有する。そして、平行方向X1又は地表面直交方向Y1の何れか一方の方向における仮想アレー系列34がもう一方の方向における空隙35を埋める構成である。
【0050】
次に、レーダ装置1の処理部60による角度処理について
図4C、
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。
図5Aは、1次元での角度処理を実施して得られる水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図5Bは、2次元FFT(Fast Fourier Transform)での角度処理を実施して得られる2次元角度ピークを含む水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図5Aにおける各線種は
図4Cに示す仮想アレー系列34の平行方向X1で形成され系列各々によるもの、ビーム幅が最も狭いものが最も長い系列(ここでは4)、ビーム幅が最も広いものが、短い系列(ここでは2)に相当する。仮想アレー系列34にて、角度処理のために形成される平行方向X1又は地表直交方向Y1の系列では、送信側実在アレー系列310と受信側実在アレー系列320の両方で異なる位相中心が選択されていることを特徴とする。例えばX1方向の最も長い系列では、送信側の左から1番目と受信側の左から1番目の掛け合わせ、送信側の2番目と送信側の2番目の掛け合わせ、といったように、送信と受信を掛け合わせて形成された系列の信号の各々は、送信側と受信側のどちらの位相中心も異なっており、どちらかを固定的に適用しないことを特徴とする。
【0051】
図4Cに示すように、平行方向X1又は地表面直交方向Y1に並ぶ仮想アレー系列34の最長の配列(以下、最長系列という)に着目すると、最小単位で形成される格子において空隙35を有している。具体的には、4つの仮想アレー系列34が並ぶ平行方向X1の列では、最も紙面左側に位置する仮想アレー系列34を基準とすると、
図4Cに示すように、最小単位G1の1倍、3倍、5倍で示される場所に空隙35が配置される。また4つの仮想アレー系列34が並ぶ地表面直交方向Y1の列では、最も紙面上側に位置する仮想アレー系列34を基準とすると、
図4Cに示すように、最小単位G2の1倍、3倍、5倍で示される場所に空隙35が配置される。この構成により、限られた仮想アレー系列34の数にて平行方向X1及び地表面直交方向Y1におけるトータルの開口を大きくしており、この系列での分解能を高くすることができる。例えば、仮に方位20deg方向に対象物がある状況にて、この仮想アレー系列34の平行方向X1の1列においてFFT等の角度処理を実施した場合、スペクトラムを絞ることができ、高い角度分解能を得ることができる。その一方で、
図5Aに示すようにメインローブに対して、グレーティングローブの発生も確認される。隣接する仮想アレー系列34間の間隔がλ/2以上となる場合に、このような事象があるのは当然のことであり、空隙35を有して仮想アレー系列34間の間隔を大きくしている限りグレーティングローブ発生はやむをえない。またこの平行方向X1の1列だけでなく他の列においても同様に、単独の1列のみの角度処理だけであれば、空隙35の存在によりグレーティングローブが発生する。これに対して、
図5Bに示すように、仮想アレー系列34の複数の配列に対して2次元での角度処理を実施することで、この方向においてグレーティングローブを解消することが可能となる。
【0052】
本実施形態の処理部60は、例えば平行方向X1及び地表面直交方向Y1のうちの何れか一方の方向において最も多くの仮想アレー系列34が並ぶ配列を少なくとも含む複数の配列に対して角度処理を行い、その角度処理の結果を用いて他方の方向における角度処理を実行する。即ち、処理部60は、仮想アレー系列34の平行方向X1及び地表面直交方向Y1のうち、最初に何れか一方の方向における最長の配列を含む複数の配列にて1段階目の角度処理を実施し複数の角度スペクトラムを取得する。そして処理部60は、次にその直交する方向の複数の配列において1段階目で取得した複数の角度スペクトラム結果を用い、各々の角度ごとにおいて、2段階目の角度処理を実施し、各々の角度ごとの直交する方向の角度スペクトラムを新たに取得する。ここでは2段階の角度処理をシリーズに行っており、その結果、水平角、仰俯角の2次元における角度処理結果を得ることができる。この角度処理により得られた2次元角度ピークを、そのピークを含む1次元スペクトラムとしたもの、即ち仰俯角におけるピークが存在する水平角方向の1次元スペクトラムが
図5Bである。この結果、菱形状の仮想アレー系列34の対角線方向における角度特性において、グレーティングローブを排除できている。これは単独な1系列のみであれば空隙35が存在するものを、特定方向に対して複数の系列をもって空隙35を埋め、角度処理として合成することで補完することができ、結果として特定の方向にてメインローブのみの特性を得ることが可能となる。即ち、本実施形態では、例えば平行方向X1において隣接する仮想アレー系列34間には空隙35が存在するものの、その空隙35の地表面直交方向Y1における両隣には仮想アレー系列34が存在する。この仮想アレー系列34の分布により、空隙35の地表面直交方向Y1における空間が埋められる。この結果、
図5Bに示すように、地表面Gに平行な平行方向X1におけるグレーティングローブの発生を防止し、メインローブのみの特性を得ることができる。
【0053】
さらに本実施形態について、
図6A~
図6D、
図7A~
図7Cを参照しながら通常の技術と対比しつつ詳細に述べる。
図6Aは、平行方向X1及び地表面直交方向Y1に並列される仮想アレー系列34aの分布を示す模式図である。
図6Bは、
図6Aに示す仮想アレー系列34aを形成するレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
図6Cは、
図6Aに示す仮想アレー系列34aを形成するレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図6Dは、
図6Aに示す仮想アレー系列34aを形成するレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図7Aは、
図6Aに示す仮想アレー系列34aを形成するレーダ装置1で取得した信号に対して窓関数を適用して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
図7Bは、
図6Aに示す仮想アレー系列34aを形成するレーダ装置1で取得した信号に対して窓関数を適用して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図7Cは、
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置1で取得した信号に対して窓関数を適用して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。
【0054】
図6Aに示すように、アレー系列の配置が2次元上の長方形ないし平行四辺形状の分布で、複数の系列に対して角度処理を行う方向はこの仮想アレー系列34の分布の対角線方向ではない。また、2方向に対して単独に1次元角度処理を実施する方法は先行技術などでも提案されているが、複数の対象を含むいわゆるマルチターゲットへの対応は本質的には難しい。これに対して、本実施形態ではマルチターゲットに対応すべく、複数のアレー系列34において一方向での角度処理を実施しそれら複数のアレー系列34の配列の結果をもう一方の方向の角度処理に適用する2次元での角度処理であるため、マルチターゲットへの対応が可能となっている。
【0055】
図6Bは、仮に
図6Aに示す仮想アレー系列を形成するレーダ装置で取得したと仮定した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施したスペクトラムである。なお、ここでは角度処理に際して窓関数を適用していない。ここで、紙面上水平方向に着目した場合、通常仮想アレー系列34aの配置は、特段指向性による角度制限を行っていない場合、グレーティングローブを発生させないようλ/2以下に設計される。その結果、スペクトラムのピークを含め水平方向にて見た1次元スペクトラムは
図6Cのようになる。ここでは
図6Cにおける両側矢印に示すように、メインローブが広がっており分解能が低いことが確認できる。また窓関数を適用していないことから、サイドローブ(
図6Cでは、破線の丸で示している)のレベルがある程度高いことが確認できる。一方ここでは、紙面上下方向に着目した場合、指向性をある程度絞り角度制限を行っている前提にて、アレー系列の配置はλ/2以上に設計している。その結果、スペクトラムのピークを含め上記方向にて見た1次元スペクトラムは
図6Dのようになる。この方向においても、サイドローブ(
図6Dでは、破線の丸で示している)のレベルがある程度高いことは同様である。
【0056】
サイドローブ対策として、仮想アレー系列34aに窓関数を適用することも通常の手段である。これは角度処理の際に、中央部から端部にわたって仮想アレー系列34aの電力勾配を減じ、寄与を減らすものである。窓関数を適用した結果、こちらの例では2次元FFTを実施したスペクトラムは
図7Aのとおりとなり、先程の
図6C、
図6Dに対応するものはそれぞれ
図7B、
図7Cとなる。サイドローブのレベルを低減することでこの角度領域とメインローブの領域での独立性を高めることができ、互いの方向への影響の軽減を図ることができる。その一方で、アレー系列の端部の寄与度を小さくとることで、開口が等価的に小さくなり、ビームが広がることとなる。特にアレー系列間隔をλ/2以下に設計した紙面水平方向における分解能は低い。
【0057】
一方、第1実施形態では前述のとおり、仮想アレー系列34の分布を菱形状にして、平行方向X1又は地表面直交方向Y1の何れか一方の方向において空隙35をもう一方の方向において仮想アレー系列34で埋めることで、グレーティングローブを排除している。
【0058】
図8Aは、レーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
図8Bは、レーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる仰俯角のピークにおける水平角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図8Cは、レーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。なお、
図8Aでは紙面斜め方向にグレーティングローブがみられるが、アレーアンテナの指向性を絞り、検知範囲外とすることで実質上問題とはならない。
【0059】
本実施形態では、
図4Cに示すように平行方向X1(
図4Cでは紙面左右方向)において、仮想アレー系列34の間隔をλ/2以上に設定していることから、平行方向X1における最大開口を大きくとることができる。このため、本実施形態では、
図8Bの両側矢印に示すように、
図7Bに比べて高い分解能を得ることが可能となる。さらに本実施形態では、
図8Bに示すように、窓関数の適用をしないにも関わらず、サイドローブの低減が図れる。これは、菱形状の仮想アレー系列34の分布によって電力分布に平行方向X1において勾配がかかっているためであり、特定方向において性能の最大化を図ることができている。ここでの角度処理方向が地表面Gに対して平行である場合、本案では上記のような適用に好適なレーダを構成する。
【0060】
第1実施形態に係るレーダ装置1によれば、以下の効果が奏される。
【0061】
(1)本実施形態のレーダ装置1は、信号を送受信するとともに受信信号を処理することで、点群を取得し、物標を検出するレーダ装置1であって、直列に給電されるアレーアンテナである複数の送信アンテナ31と、直列に給電されるアレーアンテナであり、複数の送信アンテナ31と同数の受信アンテナ32と、取得した受信信号に基づいて距離毎に角度処理を行う処理部60と、を備え、複数の送信アンテナ31それぞれの位相中心である複数の送信側実在アレー系列310は、送信アンテナ31及び受信アンテナ32が配置される信号の送受信面33において、アレーアンテナの給電方向Y2と該給電方向Y2に対して直交する給電直交方向X2とは異なる方向D1に略直線状に配列され、複数の受信アンテナ32それぞれの位相中心である複数の受信側実在アレー系列320は、送受信面33において、給電方向Y2と給電直交方向X2とは異なる方向D2に略直線状に配列され、複数の送信側実在アレー系列310によって形成される配列と複数の受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、地表面Gに対して略平行な平行方向X1と平行方向X1に対して直交する地表面直交方向Y1の何れかの方向に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置され、複数の送信側実在アレー系列310と、複数の受信側実在アレー系列320と、に基づいて複数の仮想アレー系列34が形成され、全ての仮想アレー系列34は、送受信面33において、互いに間隔を空け、平行方向X1と地表面直交方向Y1に格子状に千鳥配列で並ぶように配列され、処理部60は、平行方向X1及び地表面直交方向Y1のうちの何れか一方の方向において少なくとも最も多くの仮想アレー系列34が並ぶ配列に対して角度処理を行い、その角度処理の結果を用いて他方の方向における角度処理を実行する。これにより、実在アレー系列300がアレーアンテナの給電方向Y2及び給電直交方向X2とは異なる方向D1、D2に略直線上に配置されることで、アンテナの大きさと配置の関係を分け、アンテナの物理的な大きさの影響をうけることなく自由に配置設計ができ、給電方向Y2における大型化やアンビギュイティの発生も回避可能である。また、送受同数のチャンネルを有し、チャンネル毎にアレー系列をなすレーダにおいて、送信側と受信側の実在アレー系列300を地表面Gに対して略対称となるよう配置することで、地表面Gに対して略平行な平行方向X1及びその方向に直交する地表面直交方向Y1に仮想アレー系列34を生成することができるため、分離分析したいこれらの方向における角度結果算出が可能となる。また、この方向にて全ての仮想アレー系列34が各々の方向ごとに所定の最小単位の整数倍で示される場所に配置されることで、角度処理においてこの整数単位での離散的な処理を効率的に実施することができる。また、仮想アレー系列34の1系列にて上記単位にて空隙35を有することで、有限のアレー系列数のトータルの開口を大きくすることができ角度分解能の向上をはかりつつ、他の系列にて空隙を埋める構成とすることで、上記分離分析したい方向にてグレーティングローブの発生を防ぐことができる。また、平行方向X1又は地表面直交方向Y1にて角度処理がなされ、その処理結果を用いてその方向と直交する方向にて角度処理を行うことで、2次元の角度検出が可能であり、マルチターゲットへの対応も可能となる。また、最大仮想アレー系列数に角度処理を行いその情報を用いることで、それ以降の複数系列における角度処理を一部間引くことが可能となり、効率的に処理を行うことができる。よって、地表面Gに対して平行な平行方向X1及びその方向に直交する地表面直交方向Y1の少なくとも1つの方向におけるアンビギュイティの発生を抑えるとともに分解能を高めつつ、効率的に角度処理を行うことができる。
【0062】
(2) また本実施形態に係るレーダ装置1において、複数の送信側実在アレー系列310が並ぶ方向D1は、複数の受信側実在アレー系列320が並ぶ方向D2と直交しない。実在アレー系列300の配置方向において角度処理を行いかつ、2次元で角度処理を行う場合、互いの実在アレー系列300の配置を直交させる必要がある。一方、仮想アレー系列にて角度処理方向の配列を形成する本案では、仮想線Lに対して対称な傾きの配列である限り、実在アレー系列300の配置にかかわらず、どのような構成であっても仮想アレー系列34の配置方向が直交する配置で2次元での角度処理が成立するため、実在アレー系列300を自由に配置することができる。
【0063】
(3) また本実施形態に係るレーダ装置1において、処理部60による仮想アレー系列34を用いた角度処理では、グレーティングローブが平行方向X1と異なる方向に発生する。これにより、グレーティングローブを地表面Gと平行方向X1に発生させることなく、それと異なる方向に発生させることで、少なくとも地表面Gと平行方向X1にはアンビギュイティを発生させることはなく、その方向における角度計測の安定性を確保することができる。
【0064】
(4) また本実施形態に係るレーダ装置1において、処理部60は、仮想アレー系列34を用いた角度処理において、窓関数を適用しない。これにより、窓関数を適用しないので、実在アレー系列300の端部の電力の寄与が小さくなることによる平行方向X1等における分解能の低下を避けることができる。そして仮想アレー系列34の数自体が、地表面Gに対して平行方向X1またそれに直交する地表面直交方向Y1にて勾配を持っているので、窓関数を適用しなくとも電力上の勾配をかけることができることから低サイドローブ特性を実現できる。よって、配置した実在アレー系列300の端部の電力の寄与を小さくさせることなく、最大開口を活用し分解能の最大化を図ることができる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るレーダ装置1について説明する。
図9Aは、第2実施形態のレーダ装置1のアンテナ部30の構成を示す模式図である。
図9Bは、第2実施形態のレーダ装置1の各送信側実在アレー系列310及び各受信側実在アレー系列320の位置を示す模式図である。
図9Cは、第2実施形態のレーダ装置1の仮想アレー系列34の分布を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0066】
第2実施形態のレーダ装置1は、局部発振部10と、変調部20と、アンテナ部30と、復調部40と、ADCコンバータ50と、処理部60と、を備える。本実施形態のレーダ装置1は、アンテナ部30の構成と処理部60が地表面Gに関する地表面情報等を記憶する記憶部を備える点が主に異なる。
【0067】
本実施形態のアンテナ部30は、
図9Aに示すように、4つの送信アンテナ31と4つの受信アンテナ32を有する。本実施形態のアンテナ部30は、送信アンテナ31及び受信アンテナ32の配置が第1実施形態とは主に異なる。具体的には、本実施形態では、給電方向Y2における隣接する実在アレー系列300同士の間隔が第1実施形態よりも広い。即ち、本実施形態の給電方向Y2において隣接する送信側実在アレー系列310同士の間隔が第1実施形態における間隔よりも広い。また本実施形態の給電方向Y2において隣接する受信側実在アレー系列320同士の間隔が第1実施形態における間隔よりも広い。この送信アンテナ31及び受信アンテナ32の配置により、
図9Cに示す分布の仮想アレー系列34が形成される。本実施形態の仮想アレー系列34の分布は、送受信面33において全体として地表面直交方向Y1に長い菱形状の分布となる。また本実施形態の仮想アレー系列34の最小単位G2は、第1実施形態と比べて大きくなっている。
【0068】
ここで、第1実施形態と第2実施形態のレーダ装置1によって取得される信号に対する2次元FFTでの角度処理によって取得されるスペクトラムを比較して説明する。
図10Aは、第2実施形態のレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実行して得られる水平方向のスペクトラムを示す画像である。
図10Bは、第2実施形態のレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実行して得られる水平角のピークにおける仰俯角方向のスペクトラムを示すグラフである。
図10Aにおいて縦軸の0deg付近を紙面左右方向に延びる線が地表面Gの位置を示し、長方形の内側はレーダ装置1の検知範囲を示し、実線の丸はメインローブを示し、破線の丸はグレーティングローブを示している。
【0069】
第1実施形態における2次元FFTでの角度処理では、
図8Bに示すように地表面Gと平行となる平行方向X1において高い角度分解能と低サイドローブ特性の両立が図れた。一方で、
図8Cに示すように地表面直交方向Y1においては
図6Dや
図7Cに示すスペクトラムと比べてわずかにビームが広がっている。第2実施形態ではこの地表面直交方向Y1においても分解能の改善を図るものである。
【0070】
図9Aに示すように、第2実施形態の仮想アレー系列34の地表面直交方向Y1における間隔、即ち最小単位G2は第1実施形態に比べて大きい。これにより、地表面直交方向Y1における角度分解能を高めることができる。具体的には、
図10Bに示すように、
図8Cと比較して地表面直交方向Y1においてサイドローブを低減しつつ、分解能を高めることが可能である。一方で、給電方向Y2における実在アレー系列300の間隔を広げたことに伴い、地表面直交方向Y1における仮想アレー系列34の間隔が広がり、
図10A及び
図10Bに示すように、グレーティングローブの発生が確認される。
【0071】
図10Aにおける紙面上下方向、1次元スペクトラムである
図10Bでのグレーティングローブに関しては、アレー給電方向にて指向性を絞り、検知範囲外とすることで実質上問題とはならない。一方指向性の範囲の内側、すなわち検知範囲内でのグレーティングローブの発生があり、こちらに関しては実質上対応が必要となる。本実施形態では、このグレーティングローブを平行方向X1ではない別の方向に発生させていることで、その除去を可能としている。そして、記憶部に記憶される後述する地表面情報等を利用して、取得したスペクトラムのピークのうちメインピークとグレーティングローブとを判別することで、物体の真の角度を特定している。
【0072】
処理部60の記憶部は、地表面Gに関する地表面情報、レーダ装置1の設置位置等に関するレーダ情報等を記憶する。地表面情報は、少なくともレーダ装置1と地表面Gとの距離を含む地表面Gの位置情報である。レーダ情報は、レーダ装置1の地表面Gからの設置高さ、設置角度等の情報である。なお、地表面Gの位置情報は、時系列データにより地表面Gの分布情報を確定させた情報であってもよい。
【0073】
本実施形態の処理部60は、角度処理において地表面情報に基づいてグレーティングローブを排除して点群の真の角度を特定する。
図11は、第2実施形態のレーダ装置1と地表面Gの位置関係と、
図10Aのスペクトラムの画像における地表面Gの位置関係を示している。
【0074】
例えば処理部60は、地表面Gの位置情報とレーダ装置1の設置高さ、設置角度等の情報を用いて、地表面Gが水平であると仮定して、レーダ装置1からの距離毎の地表面Gのレベル(高さ)に対応する角度を想定できる。また地表面Gが水平でない場合であっても、時系列データにより地表面Gの分布情報を確定させている場合、その情報を活用して予めレーダ装置1からの距離毎の地表面Gのレベルに対応する角度を想定できる。例えば
図11に示す例では、レーダ装置1の角度が約-15deg付近が地表面Gのレベルに相当する角度であると想定できる。レーダ装置1では受信信号に基づいて各距離の情報を取得しており、各距離毎に角度処理を実施するが、距離毎により地表面Gに相当する角度や判定条件は異なる。
【0075】
処理部60は、例えば地表面Gのレベルに相当する角度に近いピーク(
図11では実線の丸)を物標として検出し、地表面直交方向Y1において地表面Gのレベルに相当する角度から所定の角度以上異なるピーク(
図11では×が付いたピーク)をグレーティングローブとして判別し、排除してもよい。その際に活用する情報は、地表面Gからの距離としての遠近情報である。
【0076】
本実施形態によれば、
図10Bに示すように、地表面直交方向Y1における分解能を高めるとともに、地表面直交方向Y1において発生するグレーティングローブをより確実に排除できる。
【0077】
ここで、本実施形態とは異なり、仮想アレー系列34の分布を平行方向X1及び地表面直交方向Y1に並列に並べ、全体として長方形ないし平行四辺形状の分布とした場合のグレーティングローブについて説明する。
図12Aは、
図6Aに示すアンテナよりも平行方向X1における仮想アレー系列34a間の間隔が大きい仮想アレー系列34aの分布を示す模式図である。
図12Bは、
図12Aの仮想アレー系列34aを形成するレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
【0078】
図12Bに示すように、仮想アレー系列34aの間隔を広げると分解能が高くなるものの、この間隔がλ/2以上になるとグレーティングローブが角度処理方向において発生する。センサの適用として前述のとおり、本案では地表面Gに対して平行となる方向やその直交する方向における性能の最大化を考えている。ここでの角度処理方向が仮に地表面Gに対して平行である場合、
図12Bではこの方向にてグレーティングローブが発生しアンビギュイティが発生する。通常、仮想アレー系列34aの間隔を大きくすることは、このような適用において向いていない。
【0079】
これに対して、本実施形態では、仮想アレー系列34を菱形状にして、平行方向X1における仮想アレー系列34の空隙35を地表面直交方向Y1の両側に配置される仮想アレー系列34で埋めることで、
図10Aに示すように、グレーティングローブを平行方向X1ではない別の方向に発生させている。これにより、前述のように地表面Gの位置等を考慮して、メインピークとグレーティングピークを判別し、グレーティングピークの除去を可能としている。本実施形態では、これら所定の方向に仮想アレー系列34の間隔を大きくしつつ、課題に対処することで、上述した適用事例等に好適なレーダ装置1を構成する。
【0080】
第1実施形態及び第2実施形態にみられるように、そもそもアレーアンテナの配置や実在アレー系列300を自由に設定することが可能である。仮想アレー系列34で構成される2方向を考えた場合、直列給電するアレーアンテナを前提としているため、基本的にはその給電方向Y2に対して指向性が絞られ、その方向において仮想アレー系列34の間隔が比較的広く、それに直交する仮想アレー系列34の間隔は比較的狭く構成される方が、バランスがよい。その際に設計される構成は実在アレー系列300における送信側で形成される略直線と、受信側で形成される略直線で形成される角度が、直交ではなく鋭角となることが好ましい。これによって、仮想アレー系列34にて角度処理する際に、直列給電する方向において絞った指向性に応じて高分解能化させることが可能となる。
【0081】
第2実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(4)に加えて、以下の効果が奏される。
【0082】
(5) 本実施形態に係るレーダ装置1にあっては、給電方向Y2において隣接する仮想アレー系列34同士の間隔は、給電直交方向X2において隣接する仮想アレー系列34同士の間隔よりも大きい。これにより、仮想アレー系列34がなす各々の方向での最小単位G1、G2が直列で給電されるアレーアンテナの給電方向Y2の方が給電直交方向X2に比べ大きいことで、仮想アレー系列34の数に対しての開口を大きくすることができ、給電方向Y2における分解能を上げることが可能となる。これは直列で給電するアレーアンテナの給電方向Y2におけるビーム幅が、その直交方向に対して比較的狭いことにより、検知範囲を制限することによりグレーティングローブを範囲外とすることで、アンビギュイティの発生なく実現できる。
【0083】
(6) また本実施形態に係るレーダ装置1において、処理部60は、少なくとも地表面との距離を含む地表面情報を記憶する記憶部を有し、グレーティングローブにて発生する角度アンビギュイティに対して、地表面情報に基づいて、距離毎に真の角度を判断する。これにより、グレーティングローブをメインピークから地表面Gに平行な平行方向X1に発生させないため、地表面情報を対象とした場合、メインローブとグレーティングローブに差が発生することで、その区別が可能となる。例えば、記憶した地表面情報をもとに、地表面Gに対する上下条件から明らかに地表面G以下に存在すると検出されたものは除去が可能となる。また或いは地表面Gとの距離に関する情報を用いることで、地表面Gに物体70が存在することを前提して、地表面Gに近い現実的なピークをメインピークとして判別することが可能となる。
【0084】
<第3実施形態>
第3実施形態に係るレーダ装置1について
図13A~
図13Cを参照しながら説明する。
図13Aは、第3実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30の構成を示す模式図である。
図13Bは、第3実施形態に係るレーダ装置1の仮想アレー系列34の配列を示す模式図である。
図13Cは、第3実施形態に係るレーダ装置1と地表面の位置関係と、該レーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像における地表面Gの位置関係を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0085】
本実施形態のレーダ装置1は、アンテナ部30の構成が第1実施形態のレーダ装置1とは主に異なる。本実施形態のレーダ装置1は、アレーアンテナの直列の給電方向Y2で高い角度分解能が得られるアンテナ構成である。
【0086】
本実施形態の送信アンテナ31及び受信アンテナ32の配置は、
図13Aに示すように、第1実施形態又は第2実施形態のアンテナ部30を90deg回転させ、給電方向Y2が地表面Gと平行となる構成である。この場合も
図13Bに示すように、仮想アレー系列34の対角線方向を地表面Gと平行な方向(平行方向X1)とその方向に直交する方向(地表面直交方向Y1)に向けることが可能である。本実施形態の仮想アレー系列34の分布では、
図13Bに示すように、最小単位G1を大きくしているので、平行方向X1で角度分解能の最大化を図ることができる。第1実施形態及び第2実施形態との違いとしては、地表面Gに平行な平行方向X1における角度分解能を最大化しているので、地表自体や、地表面G上における流れの検出が必要なアプリケーションにおいて好適である。交通量や水流など流量の検出をレーダにて実施する場合は、流れる方向にて比較的広い検知角度範囲を設定することが好ましい。本実施形態の送受同数における配置においては、対応するように比較的分解能も低めに設定され、それに直交する方向の分解能が高めに設定されることがバランス上好適である。
【0087】
本実施形態のレーダ装置1を
図13Cのとおり地表面G上に設置した場合、角度処理結果の2次元スペクトラムはここまでの90deg回転したような結果となる。この構成においても、グレーティングローブを地表面Gと平行方向には発生させない。この事例におけるグレーティングローブへの対応として、前述のとおり地表面情報の活用が可能である。レーダでは反射が十分大きい地表面G以下にある物体70の検知はできず、またその特性より必要性もない。前述のとおり、ある距離における地表面Gと想定される角度が推定された場合、その角度以下のピークは必然的に地表面G以下であり、本来の物体70由来の信号と考え難く、除去が可能である。これにより地表面G以下という情報を参照したグレーティングローブの除去が可能である。またこの除去の手法は特に、レーダ装置1の視野中心方向が地表面Gにむけ平行方向ではなく、地表面Gがより視野に多く含まれる構成として、地表面G側に傾いて向いている構成において有効である。
【0088】
第3実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(6)の効果が奏される。
【0089】
<第4実施形態>
第4実施形態に係るレーダ装置1について
図14A~
図14Dを参照しながら説明する。
図14Aは、第4実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30の構成を示す模式図である。
図14Bは、第4実施形態に係るレーダ装置1の仮想アレー系列34の分布を示す模式図である。
図14Cは、第4実施形態に係るレーダ装置1で取得した信号に対して2次元FFTでの角度処理を実施して得られるスペクトラムを示す画像である。
図14Dは、
図14Cのスペクトラムを示す画像において検出対象から除外されるピークを示す図である。なお、
図14Cにおいて、実線の円で囲まれる部分はメインローブを示し、破線の円で囲まれる部分はグレーティングローブを示している。また
図14Dにおいて、X印を付した部分は検出対象から除外されるピークを示している。
【0090】
本実施形態のレーダ装置1は、アンテナ部30と処理部60の構成が第2実施形態のレーダ装置1と主に異なる。
【0091】
本実施形態のレーダ装置1のアンテナ部30は、第2実施形態と同様に平行方向X1及び地表面直交方向Y1の両方向において高い角度分解能が得られる構成である。一方で、本実施形態のレーダ装置1は、隣接する送信側実在アレー系列310同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なり、隣接する受信側実在アレー系列320同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なる点が第2実施形態とは異なる。
【0092】
図14Aに示すように、本実施形態では、複数の送信側実在アレー系列310の給電方向Y2における間隔及び複数の受信側実在アレー系列320の給電方向Y2における間隔が一定ではない。また複数の送信側実在アレー系列310及び受信側実在アレー系列320は、略直線状に配列されているものの、完全な直線状に配列されていない。なお、略直線状とは、
図14Aに示すような完全ではない直線も含むものとする。
【0093】
図14Aに示すように、本実施形態では、給電方向Y2において地表面Gに2番目と3番目に近い送信側実在アレー系列310の間隔S2が他の隣接する送信側実在アレー系列310同士の間隔S1の1/2である。給電方向Y2において地表面Gに2番目と3番目に近い受信側実在アレー系列320の間隔S2が他の隣接する受信側実在アレー系列320同士の間隔S1の1/2である。この構成により、
図14Bに示すように、仮想アレー系列34の分布が、第1実施形態や第2実施形態の分布と異なり、格子状に等間隔に配置されておらず給電方向Y2において等間隔ではなくなる。ここでのオフセットさせた間隔を新たな最小単位G2として整数N倍の配置としてとらえることができる。このオフセットであり新たな最小単位G2は当初の最小単位G2(第2実施形態における最小単位G2)の1/Nで表現される。以下
図14A及び
図14Bにおける効果を述べるがこれはN=2の事例となる。
【0094】
図14Bの仮想アレー系列34における2次元スペクトラムは
図14Cのとおりであり、第1実施形態~第3実施形態に係るレーダ装置1での2次元スペクトラムと同様に、地表面Gと平行な平行方向X1にグレーティングローブは発生しておらず、別の方向にグレーティングローブが発生している。この仮想アレー系列34ではこのグレーティングローグの発生方向に対して空隙35を一部埋めることで、発生するグレーティングローブの振幅レベルを低減することが可能となる。メインローブのピークの振幅レベルに対してグレーティングローブのピーク振幅が低いため、2つのローブが同時発生しても区別が可能となる。さらにピーク角度を検出した場合、それからグレーティングローブによるピーク角度を一意的に想定することが可能である。これは、
図14Cに示すように、メインローブとグレーティングローブの各々のピーク角度の対応関係を、処理ないしテーブル内で算出することで実現できる。
【0095】
本実施形態の処理部60は、記憶部と、推定部と、を有する。記憶部は、角度処理で発生する最も高いピークと該ピークに対するグレーティングローブの方向との関係性を記憶する。例えば記憶部は、
図14Cに示すようなメインローブとグレーティングローブの各々のピーク角度の対応関係が示されたテーブル等を記憶する。
【0096】
推定部は、記憶部によって記憶された関係性に基づいてグレーティングローブが存在する方向を推定する。処理部60は、推定部が推定した方向におけるピークをグレーティングローブと判定し、判定したグレーティングローブを角度処理の対象から除外する。例えば
図14Dに示すように、判定したグレーティングローブの角度範囲を除去することで、これによるアンビギュイティやノイズの除去が可能となる。この処理自体は通常のアンテナの構成の範囲においても可能ではあるものの、ピークから推定される除去の対象となる範囲を、ピークに対して地表面Gと平行な平行方向X1又は地表面直交方向Y1以外にて設定できることが有用である。実際のアプリケーションとして適用される状況として、前述のとおり地表面Gに対して平行方向X1又は地表面直交方向Y1に沿って物体70が存在するケースが多く、測定対象自体がそれらの方向に相関が強く、単純にはそれら方向に物体が同時に複数存在する確率が高い。グレーティングローブ除去対象を、同時に存在する確率が比較的低い方向に向けることによって、同時に存在する物体をグレーティングローブとして誤って除去する確率を低くすることが可能となる。なお、ここでの整数はN=2以上であるが小さい値である方が好ましい。その場合オフセットの程度が大きく、有限な実在アレー系列300の数において効果的にグレーティングローブの振幅を低減できる。また新たに設定される最小単位の大きさを必要以上に小さく設定させることなく、角度処理にて適用する格子数を必要以上に増大させることもない。単純にはこの応用例ではN=2が好ましい。また、本例のごとく送信受信ともに配列中央の間隔を等間隔より狭くすることが対称性やグレーティングローブ低減に好ましい。また配置が自由に設定でき、給電方向Y2において間隔設定が可能である。
【0097】
第4実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(6)に加えて、以下の効果が奏される。
【0098】
(7) 本実施形態に係るレーダ装置1は、複数の送信側実在アレー系列310によって形成される配列において隣接する送信側実在アレー系列310同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なり、複数の受信側実在アレー系列320によって形成される配列において隣接する受信側実在アレー系列320同士の間隔のうち少なくとも1つの間隔が異なる。その結果、複数の仮想アレー系列34の平行方向X1又は地表面直交方向Y1における一部の仮想アレー系列34が、所定の最小単位の1/整数のオフセットした構成となり、新たに当初の1/整数となった最小単位の整数倍で示される場所に配置される。ここでいう所定の最小単位とは、隣接する送信側実在アレー系列310同士の間隔が略等しく、かつ隣接する受信側実在アレー系列320同士の間隔が略等しい実在アレー系列300によって形成される仮想アレー系列34における最小単位G1又はG2を意味する。これにより、実在アレー系列300が、一部異なる間隔を有し、オフセットした構成となることで、等間隔であった実在アレー系列300の配置に一部摂動ができる。これによって、地表面Gと平行方向X1及び地表面直交方向Y1以外で発生するグレーティングローブの振幅を低減し、メインローブとの区別が可能となる。さらにオフセット分によって発生した新たな最小単位での構成により、角度処理においてこの整数単位での離散的な処理を効率的に実施することができる。
【0099】
(8) 本実施形態に係るレーダ装置1において、処理部60は、角度処理で発生する最も高いピークと該ピークに対するグレーティングローブの方向との関係性を記憶する記憶部と、記憶部によって記憶された前記関係性に基づいてグレーティングローブが存在する方向を推定する推定部と、を有し、推定した方向におけるピークをグレーティングローブと判定し、削除する。これにより、グレーティングローブはメインローブとともに発生するものの、メインローブ発生角度によってグレーティングローブ発生角度が、処理又はテーブルによって一意的に確定することができるため、ペアリングして除去ないし補正が可能となり、分解能を高めた状態にてアンビギュイティの除去が可能となる。特に、メインローブの振幅とグレーティングローブの振幅に差分を持たせておくことで、いずれかをメインローブと確定した除去が可能となる。
【0100】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態に係るレーダ装置1について
図15を参照しながら説明する。
図15は、第5実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30のアンテナ素子311、321の配置を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0101】
本実施形態のアンテナ部30は、上述した実施形態のアンテナ部30と同様に4つの送信アンテナ31及び4つの受信アンテナ32を備える。各送信アンテナ31及び各受信アンテナ32は、
図15に示すように複数のアンテナ素子311が2列に並び、直列に給電されるアレーアンテナである。なお、
図15では、紙面下側の2つの送信アンテナ31のアンテナ素子311等の構成と2つの受信アンテナ32のアンテナ素子321等の構成を省略している。
【0102】
また、4つの送信側実在アレー系列310によって形成される配列と4つの受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、送受信面33において、地表面直交方向Y1に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置される。なお、アンテナ部30の全ての送信アンテナ31及び受信アンテナ32の給電方向Y2は略同じ方向(
図15では紙面上下方向)である。
【0103】
本実施形態では、各送信アンテナ31は、それぞれのアレーアンテナの給電線路312が給電方向Y2に対して同じ方向に傾いて延びる。また、各受信アンテナ32は、それぞれのアレーアンテナの給電線路322が給電方向Y2に対して同じ方向に傾いて延びる。送信アンテナ31の給電線路312と受信アンテナ32の給電線路322は、いずれも、仮想線Lから見た310の配列の傾き方向に対して、給電方向Y2から反対方向にわずかに傾いて伸びる。
【0104】
第5実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(4)に加えて、以下の効果が奏される。
【0105】
(9) 本実施形態に係るレーダ装置1において、複数の送信アンテナ31それぞれは、そのアレーアンテナの給電線路312が給電方向Y2に対して同じ方向に傾いて延び、複数の受信アンテナ32それぞれは、そのアレーアンテナの給電線路322が給電方向Y2に対して同じ方向に傾いて延びる。本実施形態によれば、アレーアンテナのアンテナ素子311、321及び給電線路312、322を給電方向Y2に平行な方向に並べる場合に比べて、給電直交方向X2における実在アレー系列300同士の間隔S3を小さくすることができる。これにより、地表面Gと平行な平行方向X1又は地表面直交方向Y1の何れかでアンビギュイティの発生を防ぐことができる。また、仮想アレー系列34の配列構成に対して、実在するアレーアンテナの給電方向Y2を実質的に傾かせることで、仮想アレー系列34の直列に給電する方向と略直交方向において、アレー系列間隔を狭くとることが可能となり、この方向でのアンビギュイティの排除が可能となる。これは本実在アレー系列300の配置によって可能となり、送受にて対称に傾かせることで与える指向性への影響を送受において平均化することを可能とし、傾きの影響を軽減することができる。
【0106】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態に係るレーダ装置1について
図16を参照しながら説明する。
図16は、第6実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30の構成を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0107】
本実施形態のアンテナ部30は、上述した実施形態のアンテナ部30と同様に4つの送信アンテナ31及び4つの受信アンテナ32を備える。4つの送信側実在アレー系列310によって形成される配列と4つの受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、地表面直交方向Y1に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置される。
【0108】
上記実施形態では送信側実在アレー系列310と受信側実在アレー系列320とが給電方向Y2において対向するように配置されていたが、本実施形態では送信側実在アレー系列310と受信側実在アレー系列320とが給電方向Y2において対向していない。具体的には、
図16に示すように、給電方向Y2において、地表面Gから最も遠い受信側実在アレー系列320は地表面Gから最も遠い送信側実在アレー系列310と2番目に遠い送信側実在アレー系列310との間に位置し、地表面Gから2番目に遠い受信側実在アレー系列320は地表面Gから2番目に遠い送信側実在アレー系列310と3番目に遠い送信側実在アレー系列310との間に位置し、地表面Gから3番目に遠い受信側実在アレー系列320は地表面Gから3番目に遠い送信側実在アレー系列310と4番目に遠い送信側実在アレー系列310との間に位置し、地表面Gに最も近い受信側実在アレー系列320は地表面Gに最も近い送信側実在アレー系列310と地表面Gとの間に位置する。即ち、4つの受信側実在アレー系列320の配列が4つの送信側実在アレー系列310の配列よりも地表面G側に位置する。
【0109】
本実施形態のレーダ装置1では、4つの送信側実在アレー系列310と4つの受信側実在アレー系列320とに基づいて16つの仮想アレー系列34が形成される。全ての仮想アレー系列34は、上記実施形態と同様に、送受信面33において、互いに間隔を空け、地表面Gに対して平行な平行方向X1と該平行方向X1に対して直交する地表面直交方向Y1に格子状に千鳥配列で並ぶように配列される。
【0110】
第6実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(6)の効果が奏される。
【0111】
<第7実施形態>
次に、第7実施形態に係るレーダ装置1について
図17を参照しながら説明する。
図17は、第7実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30とICとの位置関係を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0112】
本実施形態に係るレーダ装置1は、送信アンテナ31用と受信アンテナ32用のチャンネルを有するIC37及びそのフットプリントを備える点が第2実施形態に係るレーダ装置1と異なる。
【0113】
IC37の少なくとも一部又はそのフットプリントは、送受信面33において送信アンテナ31と受信アンテナ32との間の領域に配置される。具体的には、
図17に示すように、互いに最も離れた位置に配置される送信アンテナ31と受信アンテナ32との間の領域にIC37の少なくとも一部又はそのフットプリントが配置される。本実施形態では、
図17に示すように、IC37の一部及びそのフットプリントが、給電直交方向X2における送受信面33の最も外側に配置される送信アンテナ31及び受信アンテナ32それぞれの地表面G側の端部の間の領域に配置される。またここで、IC37の一部及びそのフットプリントが、最も外側に配置される送信アンテナ31及び受信アンテナ32それぞれに対して、Y2方向にオーバラップする程度近接することが好ましい。
【0114】
IC37と送信アンテナ31及び受信アンテナ32とは、給電線38を介して電気的に接続される。
図17に示すように、給電線38は、IC37と各送信アンテナ31及び各受信アンテナ32の地表面G側の端部それぞれを接続する。
【0115】
<第8実施形態>
次に、第8実施形態に係るレーダ装置1について
図18を参照しながら説明する。
図18は、第8実施形態に係るレーダ装置1のアンテナ部30とIC37との位置関係を示す模式図である。なお、上述した第7実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0116】
本実施形態に係るレーダ装置1は、送信アンテナ31及び受信アンテナ32の配置や向きが第7実施形態とは主に異なる。本実施形態では、各送信アンテナ31の複数のアンテナ素子311及び各受信アンテナ32の複数のアンテナ素子321は、上記実施形態と同様に給電方向Y2に平行に並列される。本実施形態のレーダ装置1の給電方向Y2は、
図18に示すように、第7実施形態と同様に送受信面33において平行方向X1に直交する地表面直交方向Y1と略同じである。
【0117】
一方で、本実施形態では、送信側実在アレー系列310によって形成される配列と受信側実在アレー系列320によって形成される配列とは、
図18に示すように平行方向X1に延びる仮想線Lを中心に略対称となるように配置される。また本実施形態では、送信アンテナ31と受信アンテナ32とは、給電直交方向X2における一側(
図18では紙面右側)から他側(
図18では紙面左側)に向かうにつれて離れるように配置される。また、各送信アンテナ31の端部と各受信アンテナ32の端部とは対向するように配置される。
【0118】
本実施形態では、
図18に示すように、IC37の一部及びそのフットプリントは、互いに最も離れた一の送信アンテナ31の端部と一の受信アンテナ32の端部との間から給電直交方向X2の他側にオーバラップされるように配置される。
【0119】
第7実施形態及び第8実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(4)に加えて、以下の効果が奏される。
【0120】
第7実施形態及び第8実施形態に係るレーダ装置1は、互いに最も離れた位置に配置される前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の領域には、前記送信アンテナ用と前記受信アンテナ用のチャンネルを有するIC37の少なくとも一部又は該IC37のフットプリントが含まれる。これにより、本実施形態によれば、対向する送信アンテナ31と受信アンテナ32との間のスペースにIC37の少なくとも一部やそのフットプリントが配置されるので、省スペース化が図れる。また
図17に示すように、IC37から各送信アンテナ31及び各受信アンテナ32に対しての給電線38の引き回しが容易になる。特に互いに最も離れた送信アンテナ31及び受信アンテナ32に対して無駄な引き回しなく給電線38の配線が可能である。また、送信アンテナ31と受信アンテナ32との間の領域が地表面G側に開かれているので、IC37等の周囲に低周波線路、回路等を効率的に配置することができる。また送信と受信の最も外側のアレー系列のアンテナ端周辺同士から他のアレー系列のアンテナ端周辺領域の間に、送受チャネルを有するIC37の少なくとも一部またはそのフットプリントが含まれることで、送信と受信の間の空きスペースにIC37を設置することができ省スペース化が図れ、特に最も外側のアレー系列に対して無駄な引き回しなく給電線の配線が可能であり、かつアンテナの反対方向領域が開かれているため、低周波線路、回路等を効率的に配置することができる。
【0121】
<第9実施形態>
次に、第9実施形態に係るレーダ装置1について
図19を参照しながら説明する。
図19は、第9実施形態のレーダ装置1のアンテナ部30と給電線38を配置する領域A1とレドム等を配置する領域A2の位置関係を示す模式図である。なお、上述した第2実施形態と同じ構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0122】
本実施形態のレーダ装置1では、複数の送信アンテナ31と複数の受信アンテナ32とが対向する側の領域A1に給電線38が配置され、複数の送信アンテナ31又は複数の受信アンテナ32を挟んで給電線38が配置される領域A1とは反対側の領域A2に基板の切り欠き、ネジ、又はレドムの側面の少なくともいずれか1つが配置される。この構成により、給電線38が配置される領域A1とアレーアンテナを挟んで反対側の外形領域にアレーアンテナが存在しない空き領域を形成することで、モジュールとして必要なねじ等の固定機構をモジュール外形に凸部を設けることなく形成することができ、モジュールとして最大サイズの小型化を図ることができる。またレドム側面が、地表面平行方向とそれに直交する方向とは異なり、アレーアンテナの配置に沿う傾斜を持たせることで、レドム側面による反射の悪影響を地表面平行方向とそれに直交する方向にて低減することが可能となる。
【0123】
第9実施形態に係るレーダ装置1によれば、上記(1)~(6)に加えて、以下の効果が奏される。
【0124】
本実施形態に係るレーダ装置1は、複数の送信アンテナ31と複数の受信アンテナ32とが対向する側の領域A1に配置される給電線38と、複数の送信アンテナ31及び複数の受信アンテナ32の給電線38が配置される領域A1とは反対側の領域A2に配置される基板の切り欠き、ネジ、又はレドム側面の少なくともいずれか1つと、をさらに備える。これにより、アレーアンテナの配置の、給電線38と反対側の外形領域に、アンテナが存在しない空き領域を形成することで、モジュールとして必要なねじ等の固定機構をモジュール外形に凸部を設けることなく形成することができ、モジュールとして最大サイズの小型化を図ることができる。またレドム側面が、地表面Gと平行方向とそれに直交する方向と異なり、アレーアンテナ配置に沿う傾斜を持たせることで、レドム側面による反射の悪影響を地表面G平行方向とそれに直交する方向にて低減することが可能となる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0126】
また
図16に示すように、仮想線Lを中心に略対称とは、実在アレー系列300の各々での並び方において、その並び方が送信側と受信側で対称でありさえすれば、アレーアンテナが設置されている位置自体は特にどこであっても構わない。当然この系列数に制約はないが送信の系列と受信の系列の数が等しい際に対称性や、所定の方向における分解能の最大化を得られることができる。また、例示したアレーアンテナの偏波方向は給電方向Y2と同じ形態であったが、偏波方向は給電方向Y2に限るものではない。
【符号の説明】
【0127】
1 レーダ装置
31 送信アンテナ
32 受信アンテナ
33 送受信面
34 仮想アレー系列
60 処理部
310 送信側実在アレー系列
320 受信側実在アレー系列
X1 平行方向
X2 給電直交方向(第1直交方向)
Y1 地表面直交方向(第2直交方向)
Y2 給電方向