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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138743
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】分析装置、判定方法、及び予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/01 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G01N21/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049397
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】足立 作一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀川 大空
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌史
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE11
2G059FF04
2G059GG02
2G059HH01
2G059HH02
2G059MM05
2G059NN05
(57)【要約】
【課題】LED光源の点灯から光量が安定するまでの時間を用いて、LED光源の状態の判定やLED光源の交換時期の予測を行う。
【解決手段】自動分析装置は、分析対象の反応溶液107を収容する反応セル108と、反応セル108内の液体に光を照射するLED光源301と、反応溶液107にLED光源301からの光が照射されることにより液体から放射される光を検出する検出器アレイ3022と、LED光源301を点灯した後、LED光源301からの光の光量が安定するまでに要する時間tを用いてLED光源301の状態を判定するデータ処理部203と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象の液体を収容する容器と、
前記容器内の前記液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、
前記液体に前記LED光源からの光が照射されることにより前記液体から放射される光を検出する光検出器と、
前記LED光源を点灯した後、前記LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間を用いて前記LED光源の状態を判定するデータ処理部と、を備える
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記データ処理部は、
前記時間と前記LED光源の通電時間との相関に基づいて前記LED光源の交換時期を予測する
ことを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記データ処理部は、
前記LED光源の通電時間ごとに前記時間を測定し、
前記LED光源の通電時間ごとの前記時間から近似直線を導出し、
前記近似直線と前記時間の予め定めた上限値とに基づいて前記LED光源の交換時期を予測する
ことを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記時間は、前記LED光源を点灯した後、単位時間あたりの光量変動量が前記LED光源を点灯してから所定時間の経過後の光量を基準とした範囲に収まるまでの時間である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項5】
前記所定時間は、前記分析装置を起動してから前記分析装置が測定可能な状態になるまでのウォームアップ時間より短い
ことを特徴とする請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
前記時間は、前記LED光源を点灯した後、単位時間あたりの光量変動量が閾値以下に到達するまでの時間である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項7】
前記光検出器は、複数の波長の光の光量を測定可能であって、
前記時間の測定に用いる波長は、前記複数の波長のうちの前記液体の分析に使用される波長に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項8】
前記光検出器は、複数の波長の光の光量を測定可能であって、
前記時間の測定に用いる波長は、前記LED光源の発光チップの波長に最も近い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分析装置。
【請求項9】
前記データ処理部は、判定した前記LED光源の状態を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項10】
分析対象の液体を収容する容器と、
前記容器内の前記液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、
前記液体に前記LED光源からの光が照射されることにより前記液体から放射される光を検出する光検出器と、
前記LED光源を点灯した後、前記LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間と前記LED光源の通電時間との相関に基づいて前記LED光源の交換時期を予測するデータ処理部と、を備える
ことを特徴とする分析装置。
【請求項11】
前記データ処理部は、
前記LED光源の通電時間ごとに前記時間を測定し、
前記LED光源の通電時間ごとの前記時間から近似直線を導出し、
前記近似直線と前記時間の予め定めた上限値とに基づいて前記LED光源の交換時期を予測する
ことを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記時間は、前記LED光源を点灯した後、単位時間あたりの光量変動量が前記LED光源を点灯してから所定時間の経過後の光量を基準とした範囲に収まるまでの時間である
ことを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項13】
前記所定時間は、前記分析装置を起動してから前記分析装置が測定可能な状態になるまでのウォームアップ時間より短い
ことを特徴とする請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記時間は、前記LED光源を点灯した後、単位時間あたりの光量変動量が閾値以下に到達するまでの時間である
ことを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項15】
前記光検出器は、複数の波長の光の光量を測定可能であって、
前記時間の測定に用いる波長は、前記複数の波長のうちの前記液体の分析に使用される波長に基づいて決定される
ことを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項16】
前記光検出器は、複数の波長の光の光量を測定可能であって、
前記時間の測定に用いる波長は、前記LED光源の発光チップの波長に最も近い
ことを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項17】
前記データ処理部は、予測した前記LED光源の交換時期を出力する
ことを特徴とする請求項10に記載の分析装置。
【請求項18】
分析対象の液体を収容する容器と、前記容器内の前記液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、前記液体に前記LED光源からの光が照射されることにより前記液体から放射される光を検出する光検出器と、を備える分析装置の前記LED光源の状態を判定する判定方法であって、
前記LED光源を点灯すること、
前記LED光源を点灯した後、前記LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間を測定すること、及び
測定した前記時間を用いて前記LED光源の状態を判定すること、を有する
ことを特徴とする判定方法。
【請求項19】
分析対象の液体を収容する容器と、前記容器内の前記液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、前記液体に前記LED光源からの光が照射されることにより前記液体から放射される光を検出する光検出器と、を備える分析装置の前記LED光源の交換時期を予測する予測方法であって、
前記LED光源を点灯すること、
前記LED光源を点灯した後、前記LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間を測定すること、及び
測定した前記時間と前記LED光源の通電時間との相関に基づいて前記LED光源の交換時期を予測すること、を有する
ことを特徴とする予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析対象に光を照射するLED光源を備える分析装置、LED光源の状態を判定する判定方法、及びLED光源の交換時期を予測する予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液や尿等の生体試料に含まれる、タンパク質、糖、脂質、酵素、ホルモン、無機イオン、疾患マーカー等の成分量を分析する分析装置がある。分析装置においては、液体収容用の容器に対して検体と試薬とを分注し、吸光・蛍光・発光等の光学特性の変化に基づいて検査項目を分析するのが一般的である。分析装置の吸光分析においては、光源からの光を試料又は試料と試薬とが混合した反応溶液に照射し、試料又は反応溶液を通過した単一または複数の測定波長の透過光量を受光素子によって測定して吸光度を算出する。そして、算出した吸光度と濃度との関係から成分量が求められる。
【0003】
吸光分析の光源は、多数の検査項目に対応するために発光スペクトルが広く、且つ高精度の吸光度計測をするために測定波長において一定以上の光量を安定して得られるものが望ましい。そのため、従来、キセノンランプやハロゲンランプ等が用いられてきた。
【0004】
光源の交換頻度低減のため、近年では、吸光分析の光源として、長寿命が期待される発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下LED)が検討されている。しかし、キセノンランプやハロゲンランプ等と同様に、LEDを吸光分析の光源として採用した場合でも、長時間使用していると、発光チップ、蛍光体、樹脂等の材料が経年変化して、次第に光量が低下する。そのため、LED光源を採用した場合にも、LED光源に適した状態の判定方法や交換時期の予測方法が必要とされる。
【0005】
一般に、照明器具等に使用されるLED光源の交換時期の予測については、LED光源の光量が初期光量の閾値(例えば70%)以下となったときに交換時期とすることがある。また、特許文献1には、「LEDの点灯中その点灯時間を積算し、積算点灯時間が予め設定されている寿命時間に到達したときに、当該LEDの寿命到達を通知する」技術が開示されている。また、特許文献2には、「LEDの順電圧-順電流特性に基づいて、LEDの劣化具合を判断するLED劣化測定装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-39836号公報
【特許文献2】特開2015-32793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の光源の状態判定や交換時期予測と同様に、LED光源の光量が初期光量の閾値(例えば70%)以下となったときを劣化状態や交換時期とした場合、LED光源の個体差によって初期光量がばらつくことがある。光量が初期光量の閾値以下になったとしても、初期光量のばらつきにより、分析装置の分析性能を維持するための光量が十分であるにも関わらず、交換が発生する可能性がある。また、LED光源の点灯時間が予め設定されている寿命時間に到達したときを劣化状態や交換時期とした場合、LED光源の個体差や使用環境条件等により、分析装置の分析性能を維持するための光量が十分あるにも関わらず、交換が発生する可能性がある。このように、従来の状態判定や交換時期予測では、LED光源の個体差や使用環境条件などによってLED光源の個体毎に状態が異なるにも関わらず、LED光源の状態や交換予測時期をLED光源毎に判定することができなかった。また、特許文献2のように、順電圧-順電流特性を利用するには、LED光源に印加される電流及び電圧をモニターするための新たな測定システムが必要となってしまう。
【0008】
そこで、本開示は、LED光源の点灯から光量が安定するまでの時間を用いて、LED光源の状態の判定やLED光源の交換時期の予測を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の分析装置は、分析対象の液体を収容する容器と、容器内の液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、液体にLED光源からの光が照射されることにより液体から放射される光を検出する光検出器と、LED光源を点灯した後、LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間を用いてLED光源の状態を判定するデータ処理部と、を備える。
【0010】
また、本開示の分析装置は、分析対象の液体を収容する容器と、容器内の液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、液体にLED光源からの光が照射されることにより液体から放射される光を検出する光検出器と、LED光源を点灯した後、LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間とLED光源の通電時間との相関に基づいてLED光源の交換時期を予測するデータ処理部と、を備える。
【0011】
また、本開示の判定方法は、分析対象の液体を収容する容器と、容器内の液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、液体にLED光源からの光が照射されることにより液体から放射される光を検出する光検出器と、を備える分析装置のLED光源の状態を判定する判定方法であって、LED光源を点灯すること、LED光源を点灯した後、LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間を測定すること、及び測定した時間を用いてLED光源の状態を判定すること、を有する。
【0012】
また、本開示の予測方法は、分析対象の液体を収容する容器と、容器内の液体に光を照射するLED(Light-Emitting Diode)光源と、液体にLED光源からの光が照射されることにより液体から放射される光を検出する光検出器と、を備える分析装置のLED光源の交換時期を予測する予測方法であって、LED光源を点灯すること、LED光源を点灯した後、LED光源からの光の光量が安定するまでに要する時間を測定すること、及び測定した時間とLED光源の通電時間との相関に基づいてLED光源の交換時期を予測すること、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、LED光源の点灯から光量が安定するまでの時間を用いて、LED光源の状態の判定やLED光源の交換時期の予測を行うことができる。上述した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明にて明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自動分析装置100の全体構成例を示す模式図である。
図2】データ処理部203のハードウェアブロック図である。
図3】履歴データ2033aの内容を示した図である。
図4】自動分析装置100の吸光度の測定を行う吸光度測定部113の構成例を示す図である。
図5】自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。
図6】状態判定処理の詳細を示したフローチャートである。
図7】交換時期予測処理の詳細を示したフローチャートである。
図8】通電時間が0時間と10,000時間の白色LEDの点灯直後の光量変動の結果を示す図である。
図9】LEDの通電時間とLED点灯から光量安定までの時間との相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。
【0017】
(自動分析装置100)
図1を用いて、本実施の形態の自動分析装置100の概要を説明する。図1の自動分析装置100は、サンプルディスク103、試薬ディスク106、及び反応ディスク109の3種類のディスクと、これらのディスク間でサンプルや試薬を移動させる分注機構と、これらを制御する制御部201と、を備える。また、自動分析装置100は、分析対象の液体(反応溶液)の吸光度を測定する光量測定回路202と、光量測定回路202によって測定された測定データを処理するデータ処理部203と、データ処理部203とのインタフェースである入力部204及び出力部205と、を備える。また、分注機構は、サンプル分注機構110、及び試薬分注機構111を含む。
【0018】
データ処理部203は、光量測定回路202によって測定された測定データを記憶したり、記憶した測定データを解析したりする。解析結果は、例えば、出力部205に出力される。データ処理部203の詳細は、後述する。
【0019】
入力部204及び出力部205は、データ処理部203との間でデータを入出力する。入力部204は、キーボード、タッチパネル、及びテンキーなどの情報入力装置である。出力部205は、自動分析装置100の解析結果を出力するための情報出力装置であり、例えば、ディスプレイなどである。
【0020】
サンプルディスク103の円周上には、サンプル101の収容容器である複数のサンプルカップ102が配置される。サンプル101は、例えば血液である。試薬ディスク106の円周上には、試薬104の収容容器である複数の試薬ボトル105が配置される。反応ディスク109の円周上には、サンプル101と試薬104とを混合させた分析対象の反応溶液107を収容する容器である複数の反応セル108が配置される。
【0021】
サンプル分注機構110は、サンプルカップ102から反応セル108にサンプル101を一定量移動させる際に使用する機構である。サンプル分注機構110は、例えば溶液を吐出または吸引するノズルと、ノズルを所定位置に位置決め及び搬送するロボット、溶液をノズルから吐出またはノズルに吸引するポンプ、及びノズルとポンプとを繋ぐ流路で構成される。
【0022】
試薬分注機構111は、試薬ボトル105から反応セル108に試薬104を一定量移動させる際に使用する機構である。試薬分注機構111も、例えば溶液を吐出または吸引するノズルと、ノズルを所定位置に位置決め及び搬送するロボット、溶液をノズルから吐出またはノズルに吸引するポンプ、及びノズルとポンプとを繋ぐ流路で構成される。
【0023】
溶液攪拌部112は、反応セル108内で、サンプル101と試薬104とを攪拌し混合させる機構部である。洗浄部114は、分析処理が終了した反応セル108から反応溶液107を排出し、その後、反応セル108を洗浄する機構部である。洗浄終了後の反応セル108には、再び、サンプル分注機構110から次のサンプル101が分注され、試薬分注機構111から新しい試薬104が分注されて、別の反応処理に使用される。
【0024】
反応ディスク109において、反応セル108は、温度及び流量が制御された恒温槽内の恒温流体115に浸漬されている。このため、反応セル108及びその中の反応溶液107は、反応ディスク109による移動中も、制御部201によってその温度は一定温度に保たれる。恒温流体115には、例えば水や空気が使用される。
【0025】
反応ディスク109の円周上の一部に、自動分析装置100において吸光分析を行う吸光度測定部113が配置される。
【0026】
(データ処理部203)
図2は、データ処理部203のハードウェアブロック図である。データ処理部203は、プロセッサ2031、主記憶部2032、補助記憶部2033、及び入出力I/F2034を有する。プロセッサ2031は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASICなどである。主記憶部2032は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などであって、プロセッサ2031の作業領域として使用される。補助記憶部2033は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はそれらの組み合わせ等であって、各種プログラム及び各種データを記憶する。入出力I/F2034は、データ処理部203とデータ処理部203の周辺機器(例えば、制御部201、光量測定回路202、入力部204、出力部205)とを通信可能に接続するインタフェースである。
【0027】
本実施の形態の補助記憶部2033は、履歴データ2033a、状態判定プログラム2033b、及び交換時期予測プログラム2033cを記憶する。状態判定プログラム2033bは、LED光源301(図4参照)からの光の光量が安定するまでに要する時間t(以下、適宜「光量安定までの時間t」と呼ぶ)を用いてLED光源301の状態を判定するプログラムである。プロセッサ2031は、状態判定プログラム2033bを実行することにより、LED光源301からの光の光量が安定するまでに要する時間tを用いてLED光源301の状態を判定し、判定結果を出力する。また、交換時期予測プログラム2033cは、光量安定までの時間tと、LED光源301の通電時間Tとの相関に基づいて、LED光源301の交換時期を予測するプログラムである。プロセッサ2031は、交換時期予測プログラム2033cを実行することにより、LED光源301からの光の光量が安定するまでに要する時間tを用いてLED光源301の交換時期を予測し、予測結果を出力する。
【0028】
また、補助記憶部2033は、光量測定回路202によって測定された測定データ、測定データの分析を行う分析プログラム、分析プログラムによって分析された分析結果、などを記憶してもよい。
【0029】
(履歴データ2033a)
図3は、履歴データ2033aの内容を示した図である。履歴データ2033aには、LED光源301の通電時間Tと、当該通電時間Tのときに測定した時間であってLED光源301からの光の光量が安定するまでに要する時間tと、が対応付けて記憶される。図3の例では、1000時間毎に光量安定までの時間tを測定しているが、光量安定までの時間tの測定間隔は、1000時間に限定されず、1000時間より短くてもよいし、1000時間より長くてもよい。また、図3の例では、等間隔で光量安定までの時間tを測定しているが、光量安定までの時間tの測定間隔は等間隔でなくても構わない。また、LED光源301の通電時間Tの代りに又はLED光源301の通電時間Tに加えて、自動分析装置100の稼働時間を用いてもよい。
【0030】
新規に光量安定までの時間tが測定されると、履歴データ2033aの新規レコードに通電時間Tとともに測定した光量安定までの時間tが対応付けて記憶される。
【0031】
(吸光度測定部113)
図4は、自動分析装置100の吸光度の測定を行う吸光度測定部113の構成例を示す図である。本実施の形態の自動分析装置100では、吸光度測定の光源部にLED(Light-Emitting Diode)光源301が使用される。LED光源301から発生した照射光は、光軸401に沿って出射され、集光レンズ403により集光されて反応セル108内の反応溶液107に照射される。このとき、光の照射面内の光量分布を均一にするために光源側スリット402を配置し、LED光源301からの出射光の幅を制限することがある。
【0032】
反応セル108の中の反応溶液107を透過した光は、分光器302中の回折格子3021で分光され、多数の受光器を備える検出器アレイ3022で受光される。検出器アレイ3022は、光検出器の一例である。このとき、反応溶液107を透過していない光はノイズになるため、そうした迷光が分光器302に入るのを防ぐために分光器側スリット404を配置することがある。本実施の形態では、検出器アレイ3022は、反応溶液107を透過した光を検出するが、検出器アレイ3022(光検出器)は、反応溶液107から放射した光(例えば、吸光・蛍光・発光等の光学特性)を検出すればよい。
【0033】
検出器アレイ3022は、複数の測定波長を受光する。検出器アレイ3022によって受光された光は、電気信号(受光信号)に変換され、光量測定回路202を介して、測定データとしてデータ処理部203の補助記憶部2033に記憶される。
【0034】
一方で、吸光度測定部113は、LED光源301からの光の光量が安定するまでに要する光量安定までの時間tを測定する際にも利用される。光量安定までの時間tを測定する際には、光軸401上には反応セル108が設置されない、又は反応溶液107が収容されない反応セル108が設置される。LED光源301から発生した照射光は、光軸401に沿って出射され、集光レンズ403により集光される。集光された光は、回折格子3021で分光され、検出器アレイ3022で受光される。検出器アレイ3022によって受光された光は、電気信号(受光信号)に変換され、光量測定回路202を介して、履歴データ2033aとしてデータ処理部203の補助記憶部2033に記憶される。
【0035】
(制御部201による自動分析装置100の制御例)
サンプル101に含まれるタンパク質、糖、脂質等の成分量の算出では、一例として次の手順により行われる。まず、制御部201は、洗浄部114に指示し、反応セル108を洗浄する。次に、制御部201は、サンプル分注機構110に指示し、サンプルカップ102内のサンプル101を反応セル108に一定量分注する。次に、制御部201は、試薬分注機構111に指示し、試薬ボトル105内の試薬104を反応セル108に一定量分注する。
【0036】
各溶液の分注時、制御部201は、各ディスクの駆動部に指示し、サンプルディスク103、試薬ディスク106、及び反応ディスク109を回転駆動する。この際、サンプルカップ102、試薬ボトル105、及び反応セル108は、それぞれに対応する分注機構の駆動タイミングに応じ、所定の分注位置に位置決めされる。
【0037】
続いて、制御部201は、溶液攪拌部112に指示し、反応セル108内に分注されたサンプル101と試薬104とを攪拌し、反応溶液107を生成する。反応ディスク109の回転により、反応溶液107を収容する反応セル108は、吸光度測定部113が配置された測定位置を通過する。測定位置を通過するたび、反応溶液107からの透過光量が吸光度測定部113を介して測定される。測定データは、補助記憶部2033に順次出力され、反応過程データとして蓄積される。
【0038】
この反応過程データの蓄積の間、必要であれば、別の試薬104を試薬分注機構111により反応セル108に追加で分注し、溶液攪拌部112により攪拌し、さらに一定時間測定する。これにより、一定の時間間隔で取得された反応過程データが、補助記憶部2033に格納される。
【0039】
(自動分析装置100の動作フロー)
図5は、自動分析装置100の動作を示したフローチャートである。自動分析装置100は、電源がONされると(S501)、ウォームアップ処理を開始する(S502)。ウォームアップ処理は、各種ソフトウェアの起動、及び分析前の各部の動作チェックを含む。このウォームアップ処理に要する時間をウォームアップ時間と呼ぶ。
【0040】
また、自動分析装置100は、ウォームアップ処理中にLED光源301をONする(S503)。LED光源301から照射される光の光量は、LED光源301をONしてから安定するまで時間を要する。少なくともウォームアップ処理が完了するまでは、LED光源301からの光は、吸光分析には使用されない。光量安定までの時間tは、LED光源301の立ち上がり特性に起因し、LED光源301に使用されるLED毎に異なる。本実施の形態では、このLED光源301の立ち上がり特性に着目し、LED光源301の状態やLED光源301の交換時期予測に、LED光源301の立ち上がり特性に起因する光量安定までの時間tを用いる。
【0041】
吸光度測定部113は、LED光源301の光量を測定し、データ処理部203は、測定した光量に基づいて光量安定までの時間tを算出する(S504)。
【0042】
データ処理部203は、算出した光量安定までの時間tとLED光源301の通電時間Tとを対応付けて履歴データ2033aに記憶する(S505)。LED光源301の通電時間Tは、例えば、データ処理部203の補助記憶部2033に記憶されている。データ処理部203は、補助記憶部2033に記憶されたLED光源301の通電時間Tを取得し、算出した光量安定までの時間tと取得したLED光源301の通電時間Tとを対応付けて履歴データ2033aに記憶する。
【0043】
そして、データ処理部203は、LED光源301の状態を判定する状態判定処理を実行する(S506)。状態判定処理の詳細は、後述する。
【0044】
また、データ処理部203は、LED光源301の交換時期を予測する交換時期予測処理を実行する(S507)。交換時期予測の詳細は、後述する。
【0045】
なお、本実施の形態の自動分析装置100は、状態判定処理(S506)及び交換時期予測処理(S507)の両方を実行するが、状態判定処理(S506)又は交換時期予測処理(S507)のいずれか一方のみを実行してもよい。
【0046】
ウォームアップ処理が完了し、自動分析装置100による分析が可能な状態になると、自動分析装置100は、LED光源301からの光を反応溶液107に照射し、反応セル108内の反応溶液107の吸光度を測定する吸光分析を開始する(S508)。
【0047】
(LED光源301の状態判定方法)
図6は、状態判定処理の詳細を示したフローチャートである。例えば、データ処理部203のプロセッサ2031は、補助記憶部2033に記憶される状態判定プログラム2033bを実行することにより、図6のフローチャートの各ステップを実行する。
【0048】
データ処理部203は、S504で算出した光量安定までの時間tと基準値とを比較する(S601)。基準値は、例えば、データ処理部203の補助記憶部2033に予め記憶されている。
【0049】
データ処理部203は、S601の比較結果に従って、光量安定までの時間tが基準値以下かどうかを判定する(S602)。
【0050】
光量安定までの時間tが基準値以下であると判定した場合(S602:Yes)、データ処理部203は、LED光源301の状態を特定する(S603)。例えば、データ処理部203は、光量安定までの時間tと基準値との差分の大きさに基づいて、LED光源301の状態を特定してもよいし、光量安定までの時間tに基づいて、LED光源301の状態を特定してもよい。LED光源301の状態は、例えば、LED光源301の劣化度合いを示す劣化状態、LED光源301の使用程度を示す使用状態などである。
【0051】
データ処理部203は、特定したLED光源301の状態を出力部205(ディスプレイ)に出力(表示)する(S604)。
【0052】
一方で、光量安定までの時間tが基準値より大きいと判定した場合(S602:No)、データ処理部203は、警告を出力部205(ディスプレイ)に出力(表示)する(S605)。例えば、データ処理部203は、LED光源301の交換を促す警告、LED光源301の交換時期が到来したことを示す警告などを出力部205(ディスプレイ)に表示してもよい。また、データ処理部203は、LED光源301の状態を出力する出力部205(ランプやスピーカ)から、LED光源301の交換を促す光や音、LED光源301の交換時期が到来したことを示す光や音などを出力してもよい。
【0053】
図6の例では、警告を出力した(S605)後に、S508の吸光分析の実施が可能であるが、警告を出力した場合にS508の吸光分析の実施を禁止してもよい。また、警告を出力した上で実施された吸光分析の分析結果を、警告なしで実施された吸光分析の分析結果と区別して管理してもよい。
【0054】
(LED光源301の交換時期予測方法)
図7は、交換時期予測処理の詳細を示したフローチャートである。例えば、データ処理部203のプロセッサは、補助記憶部2033に記憶される交換時期予測プログラム2033cを実行することにより、図7のフローチャートの各ステップを実行する。
【0055】
まず、データ処理部203は、補助記憶部2033の履歴データ2033aを参照する(S701)。
【0056】
データ処理部203は、履歴データ2033aからLED光源301の通電時間Tごとの光量安定までの時間tを取得し、取得したLED光源301の通電時間Tごとの光量安定までの時間tを用いて近似直線を導出する(S702)。この近似直線は、最小二乗法などを用いて導出される。なお、図7の例では、線形近似を行ったが、指数近似、対数近似、多項式近似、累乗近似、又は移動平均近似を行ってもよい。
【0057】
データ処理部203は、導出した近似直線からLED光源301の交換時期を予測する(S703)。例えば、データ処理部203は、近似直線が光量安定までの時間tの上限値に到達するまでの通電時間Tを算出し、算出した通電時間Tを交換時期とする。
【0058】
そして、データ処理部203は、交換時期を出力部205(ディスプレイ)に出力(表示)する(S704)。例えば、データ処理部203は、交換時期として、LED光源301を交換するまでの残りの通電時間や残りの自動分析装置100の稼働時間、LED光源301の交換を推奨する交換日時などを出力部205(ディスプレイ)に出力(表示)する。
【0059】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態では、LED光源301の光量安定までの時間t(立ち上がり特性)を用いることによって、通電時間とともに経年変化するLED光源301の状態を反映しながら、LED光源301の個体ごとの状態の判定や交換時期を予測することができる。これにより、LED光源301の交換頻度低減による、光源交換に必要なメンテナンスコスト低減やオペレータのルーチン業務以外の作業量負担軽減等が可能となる。また、光量が十分であるにも関わらず稼働時間が一定時間を超えたという理由で廃棄される光源を減らし、環境負荷の低減にも繋がる。
【0060】
また、本実施の形態では、上記した特許文献2と異なり、LED光源301に印加される電流及び電圧をモニターするための新たな測定システムを必要としない。
【0061】
続いて、光源部であるLED光源301の状態判定及び交換時期予測の方法に関して、以下、実施例1、実施例2、実施例3を参照しながら説明する。本開示では、LED光源301の通電時間に応じて、LED点灯から光量が安定するまでの時間に差がある、という知見を利用してLED光源301の状態判定及び交換時期予測を行う。
【0062】
<実施例1>
実施例1では、LEDの通電時間に応じてLED点灯から光量が安定するまでの時間に差がある、という現象を確認する。そこで、光源部(LED光源301)に使用されるLEDの点灯直後の光量変動を分光器(USB2000小型ファイバ光学分光器、オーシャンインサイト社製)にて測定した。ここでは、紫外光を出射する発光チップとその発光チップの上に設置された蛍光体とから広帯域の波長(およそ370nmから800nmまで)の光が出射される白色LEDを使用した。
【0063】
図8は、通電時間が0時間(新品)と10,000時間(1万時間測定に供した)の白色LEDの点灯直後の光量変動の結果を示す図である。横軸はLED点灯からの時間(sec)、縦軸はLED点灯から所定時間(1,800sec(30分後))の経過後の光量を100%とした時の光量変動量(%)である。本実施例では、LED点灯から所定時間の経過後の光量安定時の光量を基準の一例として、LED点灯から30分後の光量を100%としている。ただし、「所定時間」の定義はこの限りではなく、自動分析装置のサイズによっては、小さいものであれば10分程度、大きいものであれば90分程度に定めるとよい。例えば、所定時間は、自動分析装置100を起動してから自動分析装置100が測定可能な状態になるまでのウォームアップ時間より短い。このようにすれば、ウォームアップ時間内にLED光源301の状態判定や交換時期予測を行うことができるので、吸光分析のスループットが低下するのを防止することができる。
【0064】
本実施例では、光量安定までの時間tとして、単位時間あたりの光量変動値が上記した基準とした範囲に収まるまでの時間を算出する。当該範囲は、例えば、上記した基準(LED点灯から30分後の光量)を中心に「±0.1%」とした場合、99.9%~100.1%となる。図8の例では、(a)通電時間が0時間のLEDの第1波長、第2波長、及び第3波長の全てが所定範囲に収まるまでの時間tは、11.97分であった。また、(b)通電時間が10,000時間のLEDの第1波長、第2波長、及び第3波長の全てが所定範囲に収まるまでの時間は、23.57分であった。よって、通電時間が10,000時間のLEDでは、LED点灯から光量安定までの時間tが長くなっている現象が確認された。ここでは、自動分析装置で使用される、白色LEDから出射される3種の波長として、第1波長(376±5nm)、第2波長(415±5nm)、及び第3波長(700±5nm)の結果を示した。しかし、自動分析装置で使用される波長は、測定項目に対応する試薬、光度計に設置されるフォトダイオード(光検出器)等の特性によって様々に変化するものである。そのため、光量安定までの時間tの測定に用いる波長は、反応溶液の分析に使用される波長に基づいて決定される。また、1種の波長だけに着目して光量安定までの時間を見てもよいし、複数の波長にて光量安定までの時間を見てもよい。さらに、白色LEDのように発光チップを備えるLEDでは、その発光チップの波長に近い波長に着目した方がLED素子特性を反映することもある。なお、発光チップ単体からなるLEDや、2種以上のLEDからの出射光を合波する場合等においても、光量安定までの時間tに着目する点は変わらず、適用可能である。
【0065】
図9は、LEDの通電時間TとLED点灯から光量安定までの時間tとの相関を示す図である。上記の知見は、発光チップや蛍光体、樹脂等の経年変化、周辺環境からの熱影響等の要因であるため、通電時間Tに応じた特性変化である。そのため、自動分析装置に搭載したLED光源301について通電時間ごとに光量安定までの時間tを算出した場合、図9に示すように、LEDの通電時間Tと光量安定までの時間tとは線形の相関を示すことになる。図9の点線で示すように、LED点灯から光量安定までの時間tと通電時間Tとの相関関係は、複数の実際のデータから算出される近似直線によって表すことができる。この近似直線から、光量安定までの時間tが上限値を超える通電時間T1を算出し、このT1を交換時期とする。なお、場合によっては近似直線ではなく近似曲線の方が、相関係数が高くなることもあるため、各装置の運用によって相関関係の算出方法は適切に変えることができる。LED素子の初期光量や素子内部の状態には個体差があると考えられる。本実施例では、LED光源301に使用されるLEDごとに、実際のデータからLED点灯から光量安定までの時間tと通電時間Tとの相関関係を導出することで、個体ごとの最適な交換時期を算出でき、LED光源301の交換頻度低減が可能となる。
【0066】
<実施例2>
実施例2では、LEDの通電時間TとLED点灯から光量安定までの時間tとの相関を調査する。紫外光を出射する発光チップとその発光チップの上に設置された蛍光体とから広帯域の波長(およそ370nmから800nmまで)の光が出射される白色LEDの中でも典型的なLEDを使用した。そして、LED光源301に使用されるLEDの点灯直後の光量変動を、分光器(MCPD-9800、大塚電子製)と積分球を用いて測定した。なお、LEDの温度を一定に保つため、ペルチェ素子を利用して、LEDの実装基板を37℃に制御した。
【0067】
表1は、LEDの通電時間Tと、LED点灯から光量安定までの時間tとを示す結果である。LED点灯から一定時間経過後(ここではLED点灯から30分後)の光量安定時の光量を基準(100%)とした時、測定系の分解能を勘案して、光量変動値が100±0.2%に収まるまでの時間を光量安定までの時間t(sec)とした。波長に関しては、一例として、図8の第1波長である376±5nmの光量変動について、光量安定までの時間tを算出した。表1に示すように、LEDの通電時間Tが増加するとともに、光量安定までの時間tが長くなることが確認された。よって、図9に示すように、LEDの通電時間Tと、LED点灯から光量安定までの時間tにおおよそ線形の相関があることが分かる。
【0068】
【表1】
【0069】
<実施例3>
LEDの光量が安定するまでの時間の定義として、単位時間あたりの光量変動量を用いる場合の例を説明する。実施例1と同様にして、紫外光を出射する発光チップとその発光チップの上に設置された蛍光体とから広帯域の波長(およそ370nmから800nmまで)の光が出射される白色LEDを使用した。そして、LED光源301に使用されるLEDの点灯直後の光量変動を分光器(USB2000小型ファイバ光学分光器、オーシャンインサイト社製)にて測定した。
【0070】
表2は、通電時間が0時間と10,000時間の白色LEDの点灯直後の60秒あたりの光量変動量を示す結果である。60秒あたりの光量変動量は、60秒間の光量変動量を1次関数で最小二乗法などを用いてフィッティングした際の単位時間あたりの傾きとして求めたものであり、ここでは一例として図8の第1波長である376±5nmの結果を示している。
【0071】
【表2】
【0072】
ここでの単位時間は、60秒間に限らず定義は問わない。図8で示したLED点灯時の光量変動の傾きを評価していることと同義であり、単位時間あたりの変動量は、LED点灯直後は大きく、次第に小さい値へと収束していく。表2に示すように、点灯直後の60秒あたりの光量変動量のそれぞれでは、通電時間0時間のLEDと比較して、通電時間10,000時間のLEDの数値が大きくなっている。この結果から、通電時間によるLED点灯時の光量安定性に差があるため、この数値を交換時期の基準として用いることができる。自動分析装置100の光源として搭載したLED光源301において、単位時間あたりの光量変動量(傾き)を算出し、その光量変動量が閾値以下に到達するまでの時間を、光量安定までの時間tとして定義する。ここでの閾値は、装置上において分析性能を維持できる光量変動量の上限値をいう。本実施例にて算出されたLED点灯から光量安定までの時間tも、実施例1と同様に、図9に示すように、通電時間Tの相関は、近似直線によって算出することが可能となる。この近似直線から、光量安定までの時間tが予め定められたある一定値を超える通電時間T1を算出し、T1を交換時期と設定できる。また、実施例1で光量安定までの時間が基準値を満たしていても、実施例3で一定時間あたりの光量変動量が基準値を満たしていない場合、吸光分析を中断するというシステムにすることもできる。すなわち、光量安定までの時間の測定値と基準値との比較に加えて、一定時間あたりの光量変動量の測定値と基準値の比較を組み合せることで、吸光分析に求められる分析性能に即した交換時期予測を実現することができる。
【0073】
なお、本開示は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の例は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0074】
上記実施の形態では、ウォームアップ処理中にLED光源301の光量安定までの時間tを算出しLED光源301の状態判定処理や交換時期予測処理を実行したが、状態判定処理や交換時期予測処理を実行するタイミングは、ウォームアップ処理中に限定されない。例えば、メンテナンスモード中に、LED光源301の状態判定処理や交換時期予測処理を実行してもよいし、一定時間経過後または一定検査数実施後にLED光源301の状態判定処理や交換時期予測処理を実行してもよい。
【符号の説明】
【0075】
101:サンプル
102:サンプルカップ
103:サンプルディスク
104:試薬
105:試薬ボトル
106:試薬ディスク
107:反応溶液
108:反応セル
109:反応ディスク
110:サンプル分注機構
111:試薬分注機構
112:溶液攪拌部
113:吸光度測定部
114:洗浄部
115:恒温流体
201:制御部
202:光量測定回路
203:データ処理部
2031:プロセッサ
2032:主記憶部
2033:補助記憶部
2033a:履歴データ
2033b:状態判定プログラム
2033c:交換時期予測プログラム
2034:入出力I/F
204:入力部
205:出力部
301:LED光源
302:分光器
3021:回折格子
3022:検出器アレイ
401:光軸
402:光源側スリット
403:集光レンズ
404:分光器側スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9