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特開2024-138863異物露出装置、異物露出方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138863
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】異物露出装置、異物露出方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/445 20180101AFI20241002BHJP
【FI】
G06F9/445 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049577
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】517051371
【氏名又は名称】株式会社Rist
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 書志
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ ラ ブア
(72)【発明者】
【氏名】原山 和之
(72)【発明者】
【氏名】布藤 智康
(72)【発明者】
【氏名】松田 茉莉
(72)【発明者】
【氏名】金子 悠希
(72)【発明者】
【氏名】松岡 睦美
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376AC12
(57)【要約】
【課題】粉体に含まれる異物を、より的確に露出させることが可能な異物露出装置を提供する。
【解決手段】異物露出装置10は、記憶部51と、判定部531と、学習部532と、駆動制御部534と、を備える。記憶部51には、アクチュエータ30を動作させるための動作プログラムが複数記憶されている。判定部531は、撮像装置40の画像データに基づいて、容器内の粉体の状態、及び粉体からの異物の露出状態を判定する。学習部532は、粉体の状態と、異物の露出状態と、動作プログラムとの関係を機械学習することにより学習モデル511を構築する。駆動制御部534は、学習モデル511から導出される今回の動作プログラムを用いてアクチュエータ30を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体が封入された容器を動かすことにより、前記粉体に含まれる異物を露出させる異物露出装置であって、
前記容器を動かすアクチュエータと、
前記容器を撮像して画像データを生成する撮像部と、
前記アクチュエータを動作させるための動作プログラムが複数記憶される記憶部と、
前記画像データに基づいて、前記容器内の前記粉体の状態、及び前記粉体からの前記異物の露出状態を判定する判定部と、
前記粉体の状態と、前記異物の露出状態と、前記動作プログラムとの関係を機械学習することにより学習モデルを構築する学習部と、
前記学習モデルに前記粉体の状態を入力することにより、前記複数の動作プログラムから今回の動作プログラムを導出する動作導出部と、
前記今回の動作プログラムを用いて前記アクチュエータを制御する駆動制御部と、を備える
異物露出装置。
【請求項2】
前記学習部は、前記粉体の状態と、前記異物の露出状態と、複数の前記動作プログラムの組み合わせとの関係を機械学習することにより前記学習モデルを構築する
請求項1に記載の異物露出装置。
【請求項3】
前記学習部は、深層強化学習を用いて前記学習モデルを構築する
請求項1に記載の異物露出装置。
【請求項4】
前記動作プログラムには、検査作業員の実際の動作に対応した動作を前記アクチュエータに実行させることが可能な動作プログラムが含まれている
請求項1に記載の異物露出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記異物の露出状態として、前記粉体から前記異物が前記撮像部により撮像可能な状態で露出しているか否かを判定する
請求項1に記載の異物露出装置。
【請求項6】
前記粉体は、医薬品である
請求項1に記載の異物露出装置。
【請求項7】
粉体が封入された容器をアクチュエータにより動かすことで、前記粉体に含まれる異物を露出させる異物露出方法であって、
容器を撮像部により撮像することにより画像データを生成し、
前記画像データに基づいて、前記容器内の前記粉体の状態、及び前記粉体からの前記異物の露出状態を判定し、
前記粉体の状態と、前記異物の露出状態と、前記アクチュエータの動作プログラムとの関係を機械学習することにより学習モデルを構築し、
前記学習モデルに前記粉体の状態を入力することにより、前記複数の動作プログラムから今回の動作プログラムを導出し、
前記今回の動作プログラムを用いてアクチュエータを駆動させる
異物露出方法。
【請求項8】
前記粉体は、医薬品であり、
当該異物露出方法は、前記医薬品に含まれている異物を検査するための異物検査方法に用いられる
請求項7に記載の異物露出方法。
【請求項9】
粉体が封入された容器をアクチュエータにより動かすことで、前記粉体に含まれる異物を露出させるためのプログラムであって、
コンピュータに、
容器の画像データに基づいて、前記容器内の前記粉体の状態、及び前記粉体からの前記異物の露出状態を判定させ、
前記粉体の状態と、前記異物の露出状態と、前記アクチュエータの動作プログラムとの関係を機械学習させることにより学習モデルを構築させ、
前記学習モデルに前記粉体の状態を入力することにより、前記複数の動作プログラムから今回の動作プログラムを導出させ、
前記今回の動作プログラムを用いてアクチュエータを駆動させる
プログラム。
【請求項10】
前記粉体は、医薬品であり、
当該プログラムは、前記医薬品に含まれている異物を検査するためのプログラムに用いられる
請求項9に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物露出装置、異物露出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体に含まれる異物を露出させる方法として、下記の特許文献1に記載の方法がある。この異物露出方法では、粉体が封入された透明な容器と、容器を振動させる振動器とを用いる。この異物露出方法では、振動器により容器を振動させて、粉体よりも比重の軽い異物を粉体の表面側に移動させることにより異物を露出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-187646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように容器を振動器により振動させるだけでは、粉体の中に混入している異物が粉体の表面上に移動しない場合がある。したがって、このような異物の露出方法に関しては改良の余地が残されている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉体に含まれる異物を、より的確に露出させることが可能な異物露出装置、異物露出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する異物露出装置は、粉体が封入された容器を動かすことにより、粉体に含まれる異物を露出させる異物露出装置であって、アクチュエータと、撮像部と、記憶部と、判定部と、学習部と、動作導出部と、駆動制御部と、を備える。アクチュエータは、容器を動かす。撮像部は、容器を撮像して画像データを生成する。記憶部には、アクチュエータを動作させるための動作プログラムが複数記憶される。判定部は、画像データに基づいて、容器内の粉体の状態、及び粉体からの異物の露出状態を判定する。学習部は、粉体の状態と、異物の露出状態と、動作プログラムとの関係を機械学習することにより学習モデルを構築する。動作導出部は、学習モデルに粉体の状態を入力することにより、複数の動作プログラムから今回の動作プログラムを導出する。駆動制御部は、今回の動作プログラムを用いてアクチュエータを制御する。
【0006】
上記課題を解決する異物露出方法は、粉体が封入された容器をアクチュエータにより動かすことで、粉体に含まれる異物を露出させる異物露出方法であって、容器を撮像部により撮像することにより画像データを生成し、画像データに基づいて、容器内の粉体の状態、及び粉体からの異物の露出状態を判定し、粉体の状態と、異物の露出状態と、アクチュエータの動作プログラムとの関係を機械学習することにより学習モデルを構築し、学習モデルに粉体の状態を入力することにより、複数の動作プログラムから今回の動作プログラムを導出し、今回の動作プログラムを用いてアクチュエータを駆動させる。
【0007】
上記課題を解決するプログラムは、粉体が封入された容器をアクチュエータにより動かすことで、粉体に含まれる異物を露出させるためのプログラムであって、コンピュータに、容器の画像データに基づいて、容器内の粉体の状態、及び粉体からの異物の露出状態を判定させ、粉体の状態と、異物の露出状態と、アクチュエータの動作プログラムとの関係を機械学習させることにより学習モデルを構築させ、学習モデルに粉体の状態を入力することにより、複数の動作プログラムから今回の動作プログラムを導出させ、今回の動作プログラムを用いてアクチュエータを駆動させる。
【0008】
これらの構成、方法、及びプログラムによれば、異物を露出させることが可能な適切な今回の動作プログラムを学習モデルから導出することができる。そのため、今回の動作プログラムに基づいてアクチュエータが駆動することにより、粉体に含まれる異物を、より的確に露出させることが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異物露出装置、異物露出方法、及びプログラムによれば、粉体に含まれる異物を、より的確に露出させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の異物露出装置の概略構成を示すブロック図。
図2】実施形態の異物露出装置の側面構造を示す側面図。
図3】実施形態の異物露出装置の電気的な構成を示すブロック図。
図4】実施形態の動作データベースに記憶されている動作プログラムの一例を模式的に示す図。
図5】実施形態の異物露出装置の強化学習の概要を模式的に示す図。
図6】実施形態の制御部により実行される処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、異物露出装置、異物露出方法、及びプログラムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
はじめに、図1を参照して異物露出装置の概略構成について説明する。図1に示されるように、異物露出装置10は、容器20と、アクチュエータ30と、撮像装置40と、制御装置50とを備えている。
【0012】
容器20は透明な素材により形成されている。容器20は軸線m10を中心に中空円筒状に形成されている。容器20の内部空間21には粉体60が封入されている。粉体60は例えば粉状の医薬品である。粉体60には異物70が混入している。図1では、粉体60に異物70が混入している場合が例示されているが、粉体60に異物70が混入していない可能性もある。
【0013】
アクチュエータ30は、例えば軸線m10を中心に円柱状又は四角柱状に形成されている。アクチュエータ30は、その先端部32に一対の把持部31a,31bを有している。一対の把持部31a,31bは、先端部32から矢印xで示される方向に延びるように形成されている。矢印xで示される方向は軸線m10に平行な方向である。一対の把持部31a,31bの間には隙間が形成されている。アクチュエータ30は電力の供給に基づいてモータ等を駆動させることにより一対の把持部31a,31bを開閉動作させる。一対の把持部31a,31bの間の隙間に容器20の基端部23を挿入した後、把持部31a,31bが閉動作することにより容器20の基端部23が把持部31a,31bにより把持される。把持部31a,31bにより容器20が把持されることにより、容器20をアクチュエータ30の把持部31a,31b及び先端部32と一体となって動作させることが可能となる。一対の把持部31a,31bが開動作することにより容器20の基端部23の把持が開放される。
【0014】
また、アクチュエータ30は電力の供給に基づいてモータ等を駆動させることにより先端部32を動作させる。図2は、アクチュエータ30の先端部32の正面構造を示したものである。図2に示されるように、アクチュエータ30は、その先端部32を図中に矢印yで示される方向及び矢印zで示される方向に往復動させることが可能である。なお、矢印yで示される方向及び矢印zで示される方向は互いに直交している。また、矢印yで示される方向及び矢印zで示される方向は共に、図1の矢印xで示される方向に直交している。アクチュエータ30は、矢印yで示される方向及び矢印zで示される方向を組み合わせた方向にも往復動させることが可能である。さらに、アクチュエータ30は、軸線m10を中心とする周方向cに先端部32を回転させることも可能である。以下では、矢印yで示される方向の先端部32の往復動を「縦動作」と称し、矢印zで示される方向の先端部32の往復動を「横動作」と称し、軸線m10を中心として回転する動作を「回転動作」と称する。このようなアクチュエータ30の動作により、把持部31a,31bにより把持された容器20を先端部32と一体となって縦動作、横動作、及び回転動作させることができる。なお、アクチュエータ30は縦動作、横動作、及び回転動作を組み合わせることも可能である。
【0015】
図1に示される撮像装置40は、容器20の内部を所定の周期で撮像して画像データを生成する。容器20は透明な素材で形成されているため、画像データには容器20内の状態、例えば容器内の粉体60及び異物70の状態が写っている。本実施形態では、撮像装置40が撮像部に相当する。
【0016】
制御装置50はアクチュエータ30を制御する。制御装置50は、CPUやメモリなどを有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。図3に示されるように、制御装置50は、記憶部51と、操作部52と、制御部53とを有している。
記憶部51は例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。記憶部51にはオペレーティングシステムや各プログラム等が記憶されている、記憶部51には例えば動作データベース510や学習モデル511が記憶されている。
【0017】
動作データベース510には、アクチュエータ30を動作させるための動作プログラムPaが予め複数記憶されている。図1に示されるような容器20を検査員が手に持って粉体60の表面に異物70を露出させる際には、容器20を回転させる動作や、容器20を所定の方向に揺動させる動作、容器20をタップする動作等、各種の動作を検査員が行う。本実施形態では、粉体60の表面に異物70を露出させるまでに検査員が行った一連の動作を実験的に取得するとともに、取得した一連の動作を複数の種別に分類した上で、複数の種別毎の動作をアクチュエータ30により実現可能なプログラムが動作プログラムPaとして動作データベース510に記憶されている。例えば図4に示されるように、動作プログラムPaには、容器20を縦動作させることが可能な動作プログラムPa1や、容器20を横動作させることが可能な動作プログラムPa2、容器20を回転動作させることが可能な動作プログラムPa3等が含まれている。
【0018】
図3に示される学習モデル511は、容器20内の粉体60の状態に対してアクチュエータ30の動作を導出することが可能な機械学習モデルである。学習モデル511は、撮像装置40により生成された画像データから得ることが可能な粉体60の状態及び異物70の露出状態と、アクチュエータ30が実行した動作プログラムとの関係を制御部53が機械学習することにより構築される。
【0019】
操作部52は、ユーザにより操作されるスイッチやボタン等である。操作部52は、例えばアクチュエータ30の動作を開始する開始スイッチや、アクチュエータ30を停止させる停止スイッチが含まれている。
制御部53は異物露出装置10全体を制御する部分である。制御部53は、記憶部51に記憶されているプログラムをCPUが実行することにより実現される機能的な構成として、画像データ取得部530と、判定部531と、学習部532と、動作導出部533と、駆動制御部534とを有している。
【0020】
画像データ取得部530は、所定の周期で撮像装置40から容器20の画像データを取得する。
判定部531は、画像データ取得部530により取得された画像データに対して所定の画像解析処理を施すことにより容器20内の粉体60の状態及び粉体60からの異物70の露出状態を判定する。
【0021】
判定部531は、粉体60の状態として、例えば図1に示される容器20の先端部22に粉体60が固まっているという状態や、容器20の基端部23に粉体60が固まっているという状態、容器20の全体に粉体60が分布している状態等を判定する。判定部531は、画像データから取得した容器20内の現在の粉体60の状態が、予め定められた複数の状態のうちのいずれに最も近いか否かを判定し、判定された最も近い状態に対応した値を粉体60の状態Saとして出力する。粉体60の状態Saは、予め定められた複数の状態のそれぞれに対応した、離散的な複数の値Sa1,Sa2,・・・のうちのいずれかを取り得る。例えば粉体60の状態Saの値が「Sa1」である場合、画像データから取得できた容器20内の現在の粉体60の状態は、容器20の先端部22に粉体60が固まっているという状態ということになる。
【0022】
また、判定部531は、異物70の露出状態として、粉体60から異物70が露出しているか否かを判定する、より具体的には異物70が撮像装置40により撮像可能な状態で粉体60から露出しているか否かを判定する。これは、目視で確認することが可能な状態で異物70が露出しているか否かを判定することに相当する。判定部531は、判定された異物70の露出状態Sbを出力する。異物の露出状態Sbは、例えば露出していることを示す値Sb1と、露出していないことを示す値Sb2との2値を取り得る。なお、露出状態Sbは、例えば粉体60からの異物70の露出割合等に基づいて離散的な複数の値に設定されてもよい。
【0023】
学習部532は、判定部531により判定された粉体60の状態Sa及び異物70の露出状態Sb、並びにアクチュエータ30を動作させるために用いた動作プログラムPaに基づいて学習モデル511を強化学習により構築する。強化学習としては、例えば深層強化学習を用いることができる。
【0024】
例えば容器20の先端部22に粉体60が固まっている状態でアクチュエータ30が縦動作、横動作、及び回転動作をこの順で行った後に粉体60から異物70が露出しなかったとする。この場合、学習部532は、粉体60の状態Saが「Sa1」であるときに動作プログラムPaを「Pa1→Pa2→Pa3」の順で実行すると異物70の露出状態sbが「Sb2」になるという情報を学習モデル511に学習させる。
【0025】
また、容器20の先端部22に粉体60が固まっている状態でアクチュエータ30が回転動作、横動作、及び縦動作をこの順で行った後に粉体60から異物70が露出したとする。この場合、学習部532は、粉体60の状態Saが「Sa1」であるときに動作プログラムPaを「Pa3→Pa2→Pa1」の順で実行すると異物70の露出状態Sbが「Sb1」になるという情報を学習モデル511に学習させる。
【0026】
学習部532は、アクチュエータ30が動作する都度、アクチュエータ30を動作させるために用いた動作プログラムPaと、粉体60の状態Saと、異物70の露出状態Sbとを学習モデル511に学習させることにより、粉体60の現在の状態から異物70を最短で露出させることが可能な動作プログラムPaを導出する学習モデル511を強化学習により構築する。強化学習は、周知のように、「エージェント」、「環境」、「状態」、及び「報酬」といった要素の協働により行われる。図5に示されるように、本実施形態では、学習部532及び学習モデル511が「エージェント」に相当し、容器20及びアクチュエータ30が「環境」に相当し、粉体60の状態Sa及び動作プログラムPaの履歴が「状態」に相当し、異物70の露出状態Sbが「報酬」に相当する。
【0027】
なお、強化学習の「状態」に用いられる動作プログラムPaの履歴とは、粉体60の現在の状態Saが得られるまでにアクチュエータ30が用いた複数の動作プログラムPa、及びその実行順序である。また、本実施形態の強化学習では、「報酬」として、例えば動作プログラムの実行に対して負の報酬が付与され、動作プログラムを実行した後に異物70が検出された場合に正の報酬が付与されるように構成されている。
【0028】
また、本実施形態の異物露出装置10は、粉体60が所定の状態Sanであるときに所定の動作プログラムPaを実行したとしても次の粉体60の状態San+1が一意に定まることがない、確率論的な状態遷移を行うという特徴を有している。そのため、学習モデル511は、その学習が進んだときに何らかの動作パターンに行き着くということはなく、粉体60の状態Sa及び動作プログラムPaの実行履歴に基づいて、最短で異物70を露出させることが可能な動作プログラムPaを導出できるようなかたちで学習が行われる。
【0029】
動作導出部533は、判定部531により判定された粉体60の現在の状態Saを学習モデル511に入力することにより、複数の動作プログラムPaから今回の動作プログラムを導出する。学習モデル511は、粉体60の現在の状態Sa及び動作プログラムPaの履歴が入力された場合、今回の動作プログラムとして、複数の動作プログラムPaのうち、粉体60の現在の状態Saに対して異物70を最短で露出させることが可能な動作プログラムを導出する。この際に学習モデル511により導出される動作プログラムは、予め設定された複数の動作プログラムPaのうちの一つの動作プログラム、あるいは複数の動作プログラムPaのうちの2つ以上を組み合わせたものである。
【0030】
駆動制御部534は、動作導出部533により導出された今回の動作プログラムを用いてアクチュエータ30を動作させる。
次に、図6を参照して、制御部53により実行される処理の手順について説明する。なお、制御部53は、図6に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0031】
図6に示されるように、制御部53は、まず、ユーザが操作部52に対して開始操作を行ったか否かを判断して(ステップS10)、開始操作を行っていない場合には(ステップS10:NO)、図6に示される処理を終了する。
ユーザが操作部52に対して開始操作を行うと、制御部53はステップS10の処理で肯定的な判断を行って(ステップS10:YES)、ステップS11以降の処理を実行する。具体的には、画像データ取得部530が撮像装置40から容器20の画像データを取得した後(ステップS11)、その画像データを判定部531が解析することにより容器20内の粉体60の状態Saを検出する(ステップS12)。続いて、動作導出部533は、容器20内の粉体60の状態Saを学習モデル511に入力することにより、粉体60の現在の状態Saに対して異物70を最短で露出させることが可能な今回の動作プログラムを導出する(ステップS13)。そして、駆動制御部534は、動作導出部533により導出された今回の動作プログラムを用いてアクチュエータ30を動かす(ステップS14)。これによりアクチュエータ30が今回の動作プログラムに応じた単数又は複数の動作を実行する。
【0032】
今回の動作プログラムに応じた動作をアクチュエータ30が行った後、画像データ取得部530が撮像装置40から容器20の画像データを取得して(ステップS15)、その画像データを判定部531が解析することにより異物70の露出状態Sbを検出する(ステップS16)。続いて、学習部532は、ステップS12の処理で検出された粉体60の状態Saと、動作プログラムPaの履歴と、ステップS16の処理で検出された異物70の露出状態Sbとに基づいて学習モデル511を学習させる(ステップS17)。動作プログラムPaの履歴には、今回の動作プログラムPa(0)、及び今回までに実行された過去の動作プログラムPa(-1),Pa(-2),・・・,Pa(-n)、並びにそれらの実行順序が含まれる。なお、nは所定の正の整数である。
【0033】
続いて、制御部53は、ステップS16の処理で検出された異物70の露出状態Sbに基づいて異物70が露出したか否かを判定して(ステップS18)、異物70が露出していない場合には(ステップS18:NO)、ステップS12の処理に戻る。この場合、判定部531が、ステップS15の処理で得られた画像データを解析することにより容器20内の粉体60の状態Saを検出した後(ステップS12)、ステップS13以降の処理が実行される。したがって、異物70が露出するまではステップS12~S17の処理が繰り返し実行されて、その都度の粉体60の状態Saに応じてアクチュエータ30が動作するとともに、学習モデル511が学習される。
【0034】
その後、異物70が露出すると、制御部53はステップS18の処理で肯定的な判断を行って(ステップS18:YES)、アクチュエータ30を停止させた後(ステップS19)、図6に示される処理を一旦終了する。
【0035】
以上説明した本実施形態の異物露出装置10、異物露出方法、及びプログラムによれば、以下の作用及び効果を得ることができる。なお、本実施形態の異物露出方法及びプログラムにより得られる作用及び効果は、本実施形態の異物露出装置10により得られる作用及び効果と実質的に同一であるため、以下では本実施形態の異物露出装置10により得られる作用及び効果について代表して説明する。
【0036】
本実施形態の異物露出装置10は、撮像装置40と、記憶部51と、判定部531と、学習部532と、動作導出部533と、駆動制御部534とを備える。撮像装置40は、容器20を撮像して画像データを生成する。記憶部51には、アクチュエータ30を動作させるための動作プログラムPaが複数記憶されている。判定部531は、画像データに基づいて、容器20内の粉体60の状態Sa及び粉体60からの異物70の露出状態Sbを判定する。学習部532は、粉体60の状態Saと、異物70の露出状態Sbと、動作プログラムPaとの関係を機械学習することにより学習モデル511を構築する。動作導出部533は、学習モデル511に粉体60の状態Saを入力することにより複数の動作プログラムPaから今回の動作プログラムを導出する。駆動制御部534は、今回の動作プログラムを用いてアクチュエータ30を制御する。
【0037】
この構成によれば、異物70を露出させることが可能な適切な今回の動作プログラムを学習モデル511から導出することができる。そのため、今回の動作プログラムに基づいてアクチュエータが駆動することにより、粉体60に含まれる異物70を、より的確に露出させることが可能である。また、本実施形態の異物露出装置10を用いれば、検査員の目視に基づくことなく異物を検出することができるため、例えば特許文献1に記載の異物露出方法と比較すると、検査精度、検査効率、及び人的工数を改善することが可能である。
【0038】
さらに、粉体60の特性は、粉体60を構成する化合物の組成、その結晶形、粒度分布により異なり、また、粉体60の状態は、検査環境の湿度、及び粉体60に含まれる水分等の影響を受けて種々に変化するところ、本実施形態の異物露出装置10を用いれば、それらの特性、環境に対応した学習モデル511を構築できるため、より適切に粉体60から異物70を露出させることが可能である。
【0039】
学習部532は、粉体60の状態Saと、異物70の露出状態Sbと、複数の動作プログラムPaの組み合わせとの関係を機械学習することにより学習モデル511を構築する。
検査員が粉体60から異物70を露出させる際には、容器20に対して複数の動作を組み合わせて行うことが多い。上記の構成によれば、このような検査員により行われる複数の動作を実現することが可能であるため、より的確に異物70を露出させることが可能となる。
【0040】
学習部532は、深層強化学習を用いて学習モデル511を構築する。
この構成によれば、より適切な学習モデル511を構築することが可能となる。
【0041】
動作プログラムPaには、検査作業員の実際の動作に対応した動作をアクチュエータ30に実行させることが可能な動作プログラムPa1,Pa2,Pa3,・・・が含まれている。
この構成によれば、検査員により実際に行われる動作をアクチュエータ30により実現することが可能であるため、より的確に異物70を露出させることができる。
【0042】
判定部531は、異物70の露出状態として、粉体60から異物70が撮像装置40により撮像可能な状態で露出しているか否かを判定する。
この構成によれば、より適切に異物70の露出状態Sbを判定することが可能となる。
【0043】
なお、本開示は上記の具体例に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、図1では撮像装置40が一つのみ図示されているが、容器20内の粉体60及び異物70のそれぞれの状態をより確実に検出するために、容器20の周囲に複数の撮像装置40が設けられていてもよい。
【0044】
なお、上記の具体例に当業者が適宜設計変更を加えたものも本開示の特徴を備えている限り本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10:異物露出装置、20:容器、30:アクチュエータ、40:撮像装置(撮像部)、50:制御装置(コンピュータ)、51:記憶部、60:粉体、70:異物、511:学習モデル、531:判定部、532:学習部、533:動作導出部、534:駆動制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6