(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138893
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール系樹脂、およびその製造方法、ならびにポリビニルエステル系重合体、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 216/06 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
C08F216/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049610
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】兼田 顕治
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 梨沙
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02S
4J100AD02P
4J100AG02Q
4J100AG04Q
4J100AJ01R
4J100AK12R
4J100AL74R
4J100CA21
4J100DA01
4J100DA25
4J100DA32
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA58
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重合工程において残存する共重合モノマーが非常に少なく生産性に優れ、かつガスバリア性や成形性に優れるポリビニルアルコール系樹脂およびその製造法、その原料となるポリビニルエステル系樹脂およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造単位を有することを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂。
(上記式(2)中、R
1は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造単位を有することを
特徴とするポリビニルアルコール系樹脂。
【化1】
【化2】
(上記式(2)中、R
1は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である
。)
【請求項2】
上記一般式(1)および/または上記一般式(2)で表される構造単位を、樹脂中のモ
ノマー構造単位の総量に対し、0.1~30モル%含有することを特徴とする請求項1記
載のポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項3】
けん化度が80~99.9モル%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリビニ
ルアルコール系樹脂。
【請求項4】
平均重合度が200~5,000であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルア
ルコール系樹脂。
【請求項5】
上記一般式(2)で表される構造単位を有することを特徴とするポリビニルエステル系
重合体。
【請求項6】
上記一般式(2)で表される構造単位を、重合体中のモノマー構造単位の総量に対し、
0.1~30モル%含有することを特徴とする請求項5記載のポリビニルエステル系重合
体。
【請求項7】
上記一般式(1)および/または上記一般式(2)で表される構造単位を有する請求項
1記載のポリビニルアルコール系樹脂の製造方法であって、上記一般式(2)で表される
構造単位を有するポリビニルエステル系重合体をけん化する工程を有することを特徴とす
るポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
【請求項8】
上記一般式(2)で表される構造単位を有する請求項5記載のポリビニルエステル系重
合体の製造方法であって、ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で表される化合
物とをラジカル重合する工程を有することを特徴とするポリビニルエステル系重合体の製
造方法。
【化3】
(上記式(3)中、R
2は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である
。)
【請求項9】
ビニルエステル系モノマーと上記一般式(3)で表される化合物とをラジカル重合する
工程において、上記一般式(3)で表される化合物を含む溶液を連続的に滴下させること
を特徴とする請求項8記載のポリビニルエステル系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂、およびその製造方法、ならびにポリビニルエ
ステル系重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルエステル系重合体は、従来、ポリビニルアルコール系樹脂の原料等として広
く使用されている。ポリビニルアルコール樹脂はポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステ
ル系重合体をけん化することで得られる結晶性の水溶性高分子材料であり、その優れた水
溶性や皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性等)を利用して、乳化剤、懸
濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルム等に使用
されている。
【0003】
また、空気中の酸素等により食品や薬品等が変質あるいは腐敗するのを防ぐために、そ
の包装材料にはガスバリア性(特には酸素バリア性)が要求されているところ、このよう
な包装材料としても、ガスバリア性、透明性、保香性等に優れたポリビニルアルコール樹
脂が用いられている。
【0004】
一方で、ポリビニルアルコール樹脂は融点が高く成形性が悪いこと、高湿度下では水分
子によって結晶性が低下し、ガスバリア性も低下することが知られている。このため、ポ
リビニルアルコール樹脂を変性することで融点を低下させて成形性を向上させる方法やガ
スバリア性を向上させる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、ポリビニルア
ルコール樹脂に脂環式骨格を導入することでガラス転移点(Tg)を上昇させて、高湿度
下でのバリア性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の2-ノルボルネンなどのモノマーをラジカル共重合
でポリビニルアルコール樹脂に導入する場合、重合中に2-ノルボルネンへの連鎖移動反
応が非常に起こりやすいため、変性率や重合度のコントロールが難しいという問題があっ
た。変性率が低いと融点低下が小さく、成形性を改善することが困難である。さらには2
-ノルボルネンなどのオレフィン類は酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマーとの共
重合性が悪く、重合終了時に2-ノルボルネンが残存しやすく生産性の面でも課題があっ
た。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、重合工程において残存する共重合モノ
マーが非常に少なく生産性に優れ、かつガスバリア性や成形性に優れるポリビニルアルコ
ール系樹脂およびその製造方法、その原料となるポリビニルエステル系樹脂およびその製
造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに本発明者等は、一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位
をポリビニルアルコール樹脂に導入することで高湿度下のガスバリア性と成形性を改善す
ることができること、ならびに共重合モノマーとして一般式(3)の構造の化合物を用い
ることでポリビニルアルコール樹脂を一般式(1)および/または一般式(2)の構造で
変性することが可能であり、さらに重合終了時に共重合モノマーの残存量が少ないことを
見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明は、以下の[1]~[6]を、その要旨とする。
[1]下記一般式(1)および/または下記一般式(2)で表される構造単位を有するこ
とを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂。
【0010】
【0011】
【0012】
(上記式(2)中、R1は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である
。)
[2]上記一般式(1)および/または上記一般式(2)で表される構造単位を、樹脂中
のモノマー構造単位の総量に対し、0.1~30モル%含有することを特徴とする[1]
に記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[3]けん化度が80~99.9モル%以下であることを特徴とする[1]または[2]
に記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[4]平均重合度が200~5,000であることを特徴とする[1]~[3]いずれか
に記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[5]上記一般式(2)で表される構造単位を有することを特徴とするポリビニルエステ
ル系重合体。
[6]上記一般式(2)で表される構造単位を、重合体中のモノマー構造単位の総量に対
し、0.1~30モル%含有することを特徴とする[5]に記載のポリビニルエステル系
重合体。
[7]上記一般式(1)および/または上記一般式(2)で表される構造単位を有する請
求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂の製造方法であって、上記一般式(2)で表さ
れる構造単位を有するポリビニルエステル系重合体をけん化する工程を有することを特徴
とするポリビニルアルコール系樹脂の製造方法。
[8]上記一般式(2)で表される構造単位を有する[5]または[6]に記載のポリビ
ニルエステル系重合体の製造方法であって、ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3
)で表される化合物とをラジカル重合する工程を有することを特徴とするポリビニルエス
テル系重合体の製造方法。
【0013】
【0014】
(上記式(3)中、R2は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である
。)
[1]ビニルエステル系モノマーと上記一般式(3)で表される化合物とをラジカル重合
する工程において、上記一般式(3)で表される化合物を含む溶液を連続的に滴下させる
ことを特徴とする[8]に記載のポリビニルエステル系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂は高湿度下でのガスバリア性が高く、食品や薬品
等の包装材料のガスバリア層として好適に使用することができる。また、本発明のポリビ
ニルアルコール系樹脂は融点が低く、成形性に優れる。
また、モノマーとして一般式(3)の構造の化合物を用いることでポリビニルアルコー
ル樹脂を一般式(1)および/または一般式(2)の構造で変性することが可能であり、
さらに重合終了時に共重合モノマーの残存量が少ないために生産性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明のポリビニルアルコール系樹脂(以下
、「PVA系樹脂」と記載することがある。)は、ポリビニルアルコール系樹脂中に、ビ
ニルアルコール構造単位、下記一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造
単位を有することを特徴とする。以下、本発明の各構成要素について説明する。
【0017】
〔ビニルアルコール構造単位〕
本発明のPVA系樹脂は、ビニルアルコール構造単位を少なくとも有する。ビニルアル
コール構造単位は、ビニルエステル系モノマーに由来した構造単位をけん化することで得
ることができる。ビニルエステル系モノマーとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピ
オン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カ
プリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチッ
ク酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて中でも酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0018】
ポリビニルアルコール系樹脂におけるビニルアルコール単位の含有率は特に限定されな
いが、全構造単位を100モル%として、好ましくは40モル%以上99.9モル%未満
であり、より好ましくは50モル%以上99モル%以下、さらに好ましくは60モル%以
上98モル%以下である。含有率が40モル%未満であると、ガスバリア性が不十分とな
る場合がある。
【0019】
〔一般式(1)で表される構造単位〕
下記一般式(1)で表される構造単位は、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸また
はその塩または2-(アリルオキシメチル)アクリル酸エステルに由来した構造単位と、
ビニルアルコールまたはビニルエステル系モノマーに由来した構造単位がラクトン化して
得られる構造単位である。2-(アリルオキシメチル)アクリル酸の塩としてはナトリウ
ム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。2-(
アリルオキシメチル)アクリル酸エステルとしては、2-(アリルオキシメチル)アクリ
ル酸メチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸エチル、2-(アリルオキシメチル
)アクリル酸n-プロピル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸i-プロピル、2-
(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸
i-ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸t-ブチル、2-(アリルオキシメ
チル)アクリル酸n-ペンチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ヘキシル、
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられるが、経済的に見て
中でも2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0020】
【0021】
〔一般式(2)で表される構造単位〕
下記一般式(2)で表される構造単位中のR1は、金属原子、水素原子または炭素数1
~6のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好まし
くはメチル基である。
一般式(2)で表される構造単位は、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸またはそ
の塩または2-(アリルオキシメチル)アクリル酸エステルに由来した構造単位である。
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸の塩としてはナトリウム塩、リチウム塩、カリウ
ム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。2-(アリルオキシメチル)アク
リル酸エステルとしては、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、2-(アリル
オキシメチル)アクリル酸エチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-プロピル
、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸i-プロピル、2-(アリルオキシメチル)ア
クリル酸n-ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸i-ブチル、2-(アリル
オキシメチル)アクリル酸t-ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ペン
チル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ヘキシル、2-(アリルオキシメチル
)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられるが、経済的に見て中でも2-(アリルオキシ
メチル)アクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0022】
【0023】
(上記式(2)中、R1は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である
。)
【0024】
本発明のPVA系樹脂は、上記一般式(1)および/または上記一般式(2)で表され
る構造単位を、樹脂中のモノマー構造単位の総量に対し、0.1~30モル%含有するこ
とが好ましく、特に好ましくは0.5~20モル%、更に好ましくは1~10モル%であ
る。
かかる含有量が上記特定の範囲内にあるとガスバリア性が良好かつ生産性に優れる傾向
があり好ましい。また、上記一般式(1)で表される構造単位と上記一般式(2)で表さ
れる構造単位の存在比率は上記一般式(1)で表される構造単位が多い方が好ましい。
【0025】
〔エチレン構造単位〕
本発明のPVA系樹脂は、特にエチレンを共重合させると、共重合体の結晶性が下がり
、融点が低くなることによって、溶融成形が容易となるため好ましい。樹脂中のモノマー
構造単位の総量に対するエチレン構造単位の割合は、通常1~70モル%、好ましくは1
0~60モル%、特に好ましくは25~50モル%である。
【0026】
[その他構造単位]
また、本発明のPVA系樹脂は、発明の趣旨を損なわない範囲で、通常10モル%以下
にてエチレン以外の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを共重合させてもよい。
かかるモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類;ア
クリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水
)イタコン酸等の不飽和酸類、その塩または炭素数1~18のモノもしくはジアルキルエ
ステル類;アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジ
メチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、アクリル
アミドプロピルジメチルアミン、その塩またはその4級塩等のアクリルアミド類;メタク
リルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタク
リルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸またはその塩、メタクリルアミド
プロピルジメチルアミン、その塩またはその4級塩等のメタクリルアミド類;N-ビニル
ピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類
;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1~18のアル
キルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエ
ーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニ
リデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチル
ジメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル;酢酸2-
メチルアリル;3,4-ジアセトキシ-1-ブテン;ビニルエチレンカーボネート;塩化
アリル;アリルアルコール;2-メチルアリルアルコール;ジメチルアリルアルコール;
3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン;トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチル
プロピル)-アンモニウムクロリド;アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等
が挙げられる。
【0027】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂のけん化度は、通常80モル%以上、好ましくは
90モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。
【0028】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測
定)は、通常200~5000、さらには300~3000、特には500~2200で
あることが好ましい。
【0029】
本発明のポリビニルアルコール系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が通常75~180℃
、好ましくは78~140℃、特に好ましくは82~120℃である。また、エチレンを
共重合させた場合の本発明によるPVA系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が通常60~1
60℃、好ましくは65~130℃、特に好ましくは70~110℃である。かかるガラ
ス転移点(Tg)がより高いほうが、ガスバリア性に優れる傾向がある。なお、ガラス転
移点(Tg)は示差走査熱量計を用いて、2回目の昇温時に測定したとき(セカンド・ラ
ン)の温度である。
【0030】
次に、本発明のポリビニルアルコール系樹脂を製造する方法について説明する。
本発明の一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位を有するポリビ
ニルアルコール系樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般式(2
)で表される構造単位を有するポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造
することが好ましく、更に、かかる一般式(2)で表される構造単位を有するポリビニル
エステル系重合体は、ビニルエステル系モノマーと一般式(3)で表される化合物とをラ
ジカル重合して製造されたものであることが好ましい。
以下、上記製造方法について順に説明する。
【0031】
[一般式(2)で表される構造単位を有するポリビニルエステル系重合体の製造方法(重
合工程)]
まず、下記一般式(3)で表される化合物について説明する。
下記一般式(3)で表される化合物中のR2は、金属原子、水素原子または炭素数1~
6のアルキル基であり、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好ましく
はメチル基である。
下記一般式(3)で表される化合物として具体的には、例えば、2-(アリルオキシメチ
ル)アクリル酸、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸ナトリウム、2-(アリルオキ
シメチル)アクリル酸リチウム、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸カリウム、2-
(アリルオキシメチル)アクリル酸カルシウム、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸
マグネシウム、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、2-(アリルオキシメチ
ル)アクリル酸エチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-プロピル、2-(ア
リルオキシメチル)アクリル酸i-プロピル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n
-ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸i-ブチル、2-(アリルオキシメチ
ル)アクリル酸t-ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ペンチル、2-
(アリルオキシメチル)アクリル酸n-ヘキシル、2-(アリルオキシメチル)アクリル
酸シクロヘキシル等が挙げられ、好ましくは2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチ
ルである。
【0032】
【0033】
(上記式(3)中、R2は、金属原子、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である
。)
【0034】
[重合工程]
ビニルエステル系モノマーと上記一般式(3)で表される化合物とのラジカル重合の方
法は、特に制限がなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン
重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
ラジカル重合時のモノマー成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分
割仕込み、連続仕込み等の任意の方法が採用できるが、重合中に生成するポリマーに一般
式(3)で表される化合物が均一に取り込まれるため一般式(3)で表される化合物を含
む溶液を連続的に滴下させることが好ましい。
またエチレンを共重合させる場合には、例えばエチレン加圧重合を採用することができ
る。エチレンの圧力を調整することによって、その導入量を制御することが可能であり、
目的とするエチレン含有量により一概にはいえないが、圧力は通常1~80kg/cm2
から選択される。
【0035】
かかるラジカル重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、プロ
パノール、ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類
等、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられ、工業的には、メタ
ノールが好適に使用される。溶媒の使用量は、目的とする重合度に合わせて、溶媒の連鎖
移動定数を考慮して適宜選択すれば良い。例えば、溶媒がメタノールの時は、溶媒/モノ
マー=0.01~10(質量比)、好ましくは0.05~3(質量比)程度の範囲から選
択される。
かかるラジカル重合で用いられる重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビスイソ
ブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカ
ル重合開始剤、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-ア
ゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等の低温重合用のラジカル重
合開始剤等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、開始剤の種類により異なり一概には決
められず、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸
化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系モノマーに対して0.001~0.2モル%
が好ましく、特には0.01~0.1モル%が好ましい。
【0036】
かかるラジカル重合の反応温度は、使用する溶媒や圧力により20℃~沸点程度とする
ことが好ましい。なお、重合終了まで一定温度で重合する必要はなく、例えばモノマーや
重合開始剤の追加仕込みとともに変更してもよい。
重合時間は、回分式の場合、1~20時間、更には2~12時間が好ましい。連続式の
場合、重合缶内での平均滞留時間は2~10時間、更には2~8時間が好ましい。重合時
間(滞留時間)が短過ぎると、高生産性(高重合率)を達成するための重合制御が難しく
なり、逆に長過ぎると生産性の面で問題があり好ましくない。
必要に応じて、重合禁止剤を添加して重合を停止させてもよい。重合禁止剤としては、
特に限定されず、例えば、ハイドロキノン、アニリン、アントラセン、ニトロベンゼン、
ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ベンゾニトリル、ベンゾフェノン、N,N-ジ
メチルホルムアミド、桂皮アルコール、桂皮酸、ソルビン酸等が挙げられる。重合停止後
は、蒸留を行うことにより、未反応のモノマー等が除去される。
【0037】
本発明のポリビニルエステル系重合体は上記一般式(2)で表される構造単位を、樹脂
中のモノマー構造単位の総量に対し、0.1~30モル%含有することが好ましく、特に
好ましくは0.5~20モル%、更に好ましくは1~10モル%である。かかる含有量が
特定の範囲内にあるとポリビニルエステル系重合体をけん化して得られるポリビニルアル
コール系樹脂のガスバリア性が良好かつ生産性に優れる傾向があり好ましい。
【0038】
[一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位を有するポリビニルアル
コール系樹脂の製造方法(けん化工程)]
本発明の一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位を有するポリビ
ニルアルコール系樹脂は、以下で説明するけん化工程で、上記で得られた一般式(2)で
表される構造単位を有するポリビニルエステル系重合体をけん化することにより製造する
ことが好ましい。
上記で得られた一般式(2)で表される構造単位を有するポリビニルエステル系重合体
を、撹拌機や混錬機等を用いた回分式、またはベルト上やカラム内等での連続式によりけ
ん化する。
けん化は、上記で得られた一般式(2)で表される構造単位を有するポリビニルエステ
ル系重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて
行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert-ブ
タノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重
合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は4~60質量%の範囲から選ばれ
る。
【0039】
けん化に使用される触媒としては、特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチ
ラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒;硫酸、塩酸、硝
酸、メタンスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
けん化触媒の使用量については、けん化方法、目標とするけん化度等により適宜選択さ
れるが、アルカリ触媒を使用する場合は、一般式(2)で表される構造単位を有するポリ
ビニルエステル系重合体のモノマー構造単位の総量に対し、通常0.01~5モル%、好
ましくは0.2~1.7モル%が適当である。
【0040】
また、けん化反応の反応温度は、特に限定されないが、10~80℃が好ましく、より
好ましくは20~70℃である。けん化反応は通常0.5~5時間にわたって行なわれる
。これらの条件は所望のけん化度になるよう適宜調節する。
【0041】
けん化終了後、得られたスラリーを公知の方法で固液分離し、酢酸メチルやメタノール
等により洗浄し、必要に応じてストランド化の後にペレット化を行い、乾燥して本発明の
一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位を有するポリビニルアルコ
ール系樹脂が得られる。
またアルカリ触媒を用いた場合、けん化終了後に酢酸などの酸でアルカリ触媒を中和す
ることが好ましい。アルカリを中和することによりラクトン化が進行し、ポリビニルアル
コール系樹脂中の一般式(1)で表される構造単位が増加する。
【0042】
本発明の一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位を有するポリビ
ニルアルコール系樹脂を各種用途に供するには、適した物性を付与する目的等により、異
なる他のPVA系樹脂と混合してもよい。
かかる他のPVA系樹脂としては、けん化度が異なるもの、重合度が異なるもの、変性
基が異なるもの、またその変性度が異なるものなどを挙げることができる。また、変性度
を調節するため等の目的で、未変性PVA系樹脂やエチレン-ビニルアルコール共重合体
を混合しても良い。
【0043】
〔添加剤〕
本発明の一般式(1)および/または一般式(2)で表される構造単位を有するポリビ
ニルアルコール系樹脂を各種用途に供するには、本発明の目的を阻害しない範囲において
、滑剤、無機塩(例えばハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えばエチレングリコール、
グリセロール、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコールなど)、酸素吸収剤、熱安定
剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、
アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填材(例えば無機フィラー等)、他樹脂(例えば
ポリオレフィン、ポリアミド等)等を含有していても良い。
【実施例0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの
実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び
「 %」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
【0045】
<実施例1>
[重合工程]
撹拌機、温度計、還流冷却管、試料投入口を備えた反応器に酢酸ビニル120質量部、
メタノール60質量部、蒸留したAOMA((株)日本触媒製、2-(アリルオキシメチ
ル)アクリル酸メチル)0.109質量部を仕込んだ。反応器を水浴に浸漬して水浴を加
熱して内液が沸騰するまで加熱した。ラジカル開始剤として2,2’-アゾビスイソブチ
ロニトリル0.12質量部を添加し、重合を開始した。重合開始と同時に蒸留したAOM
Aと酢酸ビニルの混合モノマーの滴下を開始した。滴下速度は10.5質量部/hrとし
、混合モノマーはAOMAと酢酸ビニルの重量比で6:94となるようにあらかじめ調製
したものを用いた。1.5時間重合させたのちに加熱を停止して、重合停止剤としてm-
ジニトロベンゼンを0.03質量部とメタノール200質量部を添加して重合を停止した
。このとき重合率は28%であった。得られた溶液から酢酸ビニルモノマーを除去するた
め、減圧下でメタノールと酢酸ビニルを留去した。適宜、粘度が上昇したところでメタノ
ールを添加することで残存する酢酸ビニルを追い出して変性ポリ酢酸ビニルのメタノール
溶液を得た。このメタノール溶液の一部を採取して乾燥させて変性ポリ酢酸ビニル(ポリ
ビニルエステル系重合体)を得た。得られた変性ポリ酢酸ビニルの1H-NMRを測定す
ることで変性率を算出したところ、AOMA変性率は1.6モル%であった。この値は、
重合開始前に仕込んだAOMA量と重合中に滴下したAOMA量を合算した量がポリマー
中にすべて取り込まれたと仮定して計算した変性率(1.6モル%)と一致しており、重
合系内に存在したAOMAがほぼすべて消費されたと言える。
[けん化工程]
続いて変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を濃度8質量%になるまでメタノールで希
釈し、この変性ポリ酢酸ビニルメタノール溶液400質量部(変性ポリ酢酸ビニルとして
32質量部)を上記同様の反応器に仕込んだ。この反応器を水浴に浸漬して内温が65℃
となるように加温した。そこに3.5質量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液を8.
5質量部添加して、けん化反応を開始した。けん化反応が進むとけん化物が析出するが、
そのまま撹拌を継続した。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してから1.5時間
後に析出したけん化物を濾別して、再度反応器に仕込み、そこにメタノールを240質量
部添加して65℃に加温した。そこに3.5質量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液
8.5質量部を添加して2.5時間反応させることで、けん化反応を追い込んだ。その後
、酢酸0.36質量部を添加して中和を行い、メタノールで洗浄しながら吸引ろ過し、け
ん化物を取り出した。このけん化物にメタノール1000質量を加えて65℃で30分間
撹拌することでけん化物を洗浄した。洗浄後のけん化物は吸引ろ過で取り出したのち、真
空乾燥機で50℃で12時間乾燥させ、AOMAで変性されたポリビニルアルコール系樹
脂を得た。
【0046】
<実施例2>
重合工程において、滴下速度を10.7質量部/hrとし、滴下に用いた混合モノマー
のAOMAと酢酸ビニルの重量比を8:92とし、重合時間を2時間とした以外は実施例
1と同様に行った。重合停止時の重合率は29%であった。得られた変性ポリ酢酸ビニル
の1H-NMRを測定することで変性率を算出したところ、AOMA変性率は2.7モル
%であった。この値は、重合開始前に仕込んだAOMA量と重合中に滴下したAOMA量
を合算した量がポリマー中にすべて取り込まれたと仮定して計算した変性率(2.7モル
%)と一致しており、重合系内に存在したAOMAがほぼすべて消費されていた。
【0047】
<比較例1>
汎用のポリビニルアルコール樹脂として、ゴーセノールNL-05(三菱ケミカル(株
)製、完全けん化ポリビニルアルコール、重合度:500)を用いた。
【0048】
<比較例2>
[重合工程]
撹拌機、温度計、還流冷却管、試料投入口を備えた反応器に酢酸ビニル100質量部、
ノルボルネン3.38質量部(酢酸ビニルとノルボルネンのモル比として97:3)、メ
タノール20.7質量部を仕込んだ。反応器を水浴に浸漬して水浴を加熱して内液が沸騰
するまで加熱した。ラジカル開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.0
104質量部を添加し、重合を開始した。5時間重合させたのちに加熱を停止して、重合
停止剤としてm-ジニトロベンゼンを0.005質量部とメタノール200質量部を添加
して重合を停止した。このとき重合率は33%であった。得られた溶液から酢酸ビニルモ
ノマーと2-ノルボルネンを除去するため、減圧下でメタノールと酢酸ビニルを留去した
。適宜、粘度が上昇したところでメタノールを添加することで残存する酢酸ビニルを追い
出して変性ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。
[けん化工程]
けん化工程は実施例1と同様の操作を行い、変性ポリビニルアルコールを得た。変性率
は2.1モル%であった。ポリマー中の2-ノルボルネン由来のユニットのモル数は重合
時に仕込んだ2-ノルボルネンのモル数よりも少なく、実施例1や実施例2のAOMAを
用いた場合と比較して重合終了時に2-ノルボルネンが多く残存していることが分かった
。
【0049】
上記実施例1,2および比較例2で得られたポリビニルエステル系重合体、ポリビニル
アルコール系樹脂、比較例1で用いたポリビニルアルコール系樹脂について、下記測定を
行ない、その結果を表1に示した。
【0050】
[測定方法]
<重合率の測定>
アルミカップに反応器内の重合液のサンプルを約1~2g量り取り、140℃の乾燥機
にて30分間乾燥した後、アルミカップに残ったサンプル量から、重合終了時の樹脂分率
を算出した。樹脂分率の測定の結果から反応したモノマーの重量を計算し、仕込みモノマ
ーと滴下したモノマーを合算した重量で割り重合率とした。
【0051】
<ポリ酢酸ビニル中の2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル(AOMA)変性率
の測定>
ポリ酢酸ビニル中のAOMAの含有率(AOMA変性率)は
1H-NMRにより測定し
た。装置はBruker 社製 Ascend 400を用い、測定温度は23℃とした
。溶媒にCDCl
3を、内部標準にテトラメチルシランを用いた。3.3~4.3ppm
のピークがAOMAの構造単位のうちTHF環の酸素原子に隣接するメチレン(CH
2)
2つとエステル基のメチル(CH
3)の計7つ分の水素原子分のピーク(上記構造単位に
中のH
a、
図1における積分値a)であり、4.6ppm~5.3ppmのピークが酢酸
ビニルの構造単位のメチン(CH)のピーク(上記構造単位に中のH
b、
図1における積
分値b)である。
【0052】
【0053】
<2-ノルボルネン変性PVOHの変性率の測定>
特許文献:特開2008-202048に記載の方法に従い、1H-NMRから算出し
た
【0054】
<平均重合度の測定>
平均重合度は、JIS K 6726-1994に準拠して分析を行った。
【0055】
<融点、ガラス転移点(Tg)の測定>
ポリビニルアルコール系樹脂を示差走査熱量計(TA Instrument社製「Q
2000」)を用いて、N2流速50ml/minの条件、変調振幅5℃/min、変調
周期6secとして、-50℃から260℃まで5℃/分で昇温した後、5℃/分で-5
0℃まで冷却して3分保持し、再度-50℃から260℃まで5℃/分で昇温して測定を
実施した。2回目の昇温過程におけるリバーシングヒートフローからガラス転移点を、ト
ータルヒートフローの融解ピークから融点を求めた。
【0056】
<酸素透過度(OTR)の測定>
ポリビニルアルコール系樹脂の10質量%水溶液を調製し、表面がコロナ処理されたポ
リエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)上に、バーコーターを用いて乾燥厚
みが3μmになるように塗工した。塗工したフィルムを乾燥処理(120℃×5分)して
、PETフィルム上にポリビニルアルコール系樹脂のフィルム層を形成した。この2層のフ
ィルムから、ポリビニルアルコール系樹脂のフィルム層を取り出し、取り出したフィルム
層の酸素透過度(OTR)の評価を行った。
酸素透過度(OTR、cc・3μm/m2・day・atm)は、温度23℃、湿度8
0%RHの条件下で、酸素透過度測定装置(MOCON 社製「OX-TRAN」)を用
いて測定した。
【0057】
【0058】
実施例1のポリビニルアルコール系樹脂を用いたフィルムは比較例1及び2のポリビニ
ルアルコール系樹脂を用いた場合と比較してガスバリア性に優れるものであることがわか
る。
実施例2のポリビニルアルコール系樹脂を用いたフィルムは、比較例1のポリビニルア
ルコール系樹脂を用いた場合と比較してガスバリア性に優れるものであり、また比較例2
のポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合と同程度のガスバリア性を有するものである
が、実施例1のポリビニルアルコール系樹脂は比較例1および2のポリビニルアルコール
系樹脂と比べて融点が低く成形性に優れるものであることがわかる。
【0059】
また、実施例1および2のポリビニルアルコール系樹脂製造時においては、比較例2の
ポリビニルアルコール系樹脂製造時に比べて共重合モノマーの残存量が少なく生産性に優
れるものであることが分かる。