(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138899
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C01G 45/12 20060101AFI20241002BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241002BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241002BHJP
【FI】
C01G45/12
H01M4/505
H01M4/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049616
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直人
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諄
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA02
5H050AA10
5H050BA17
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
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5H050CB11
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA16
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】 高温における充放電特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウムと高温における充放電特性に優れるリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】 第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有するスピネル型マンガン酸リチウム、及びその製造方法、並びにその用途。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有するスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項2】
第6族のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つがNa2WO4及びNa2MoO4の少なくとも1つである請求項1に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項3】
化学式Li1+XMn2-X-YMYO4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはMg又はAlである。)で表される請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項4】
無機リン化合物を含有し、無機リン化合物の含有量Zが0<X≦5.0質量%である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項5】
二次粒子の平均粒子径が3μm以上20μm以下である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項6】
一次粒子の平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項7】
XRD測定による(400)面の半値幅が0.005以上0.1以下である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項8】
SO4の含有量が0.8質量%以下である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項9】
ホウ素の含有量が2,000wtppm以下である請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
【請求項10】
マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム源及びマグネシウム源の少なくとも1つを含む金属源を含む組成物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物に第6族のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる工程と、を有する請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項11】
焼成後、水洗によりホウ素を100wtppm以上1,500wtppm以下まで除去する請求項10に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含む電極。
【請求項13】
請求項12に記載の電極を正極に有するリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法並びにその用途に関するものであり、より詳しくは、第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有するスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法、並びにこれを電極に用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は他の蓄電池に比べてエネルギー密度が高いことから、携帯端末用の蓄電池として幅広く使用されている。また、最近では、定置用や車載用といった大型で大容量と高出力が必要とされる用途への適用等、更なる高性能化を目指した研究が進められている。
【0003】
現在のリチウムイオン二次電池の正極材料には、携帯電話等の民生用小型電池には主にコバルト系材料(LiCoO2)が使用されており、また、定置用や車載用にはニッケル系材料(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)やニッケル-コバルト-マンガン三元系材料(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2等)が主に使用されている。しかし、コバルト原料やニッケル原料が資源的に多くなく高価であり、また、出力特性があまり高くない。
【0004】
一方、マンガン系材料の一つであるスピネル型マンガン酸リチウムは、原料のマンガンが資源的に豊富で安価であり、また、出力特性と安全性に優れることから、大型電池や高出力を必要とする用途に適した材料の一つである。
【0005】
しかしながら、スピネル型マンガン酸リチウムは高温安定性、すなわち、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性や保存特性に問題があり、この課題の解決が望まれていた。例えば、特許文献1では、リチウムタングステン複合酸化物粒子物を含有したスピネル型マンガン酸リチウム、特許文献2では、無機リン化合物を含有したスピネル型マンガン酸リチウムが提案されているが、高温における充放電特性や保存特性、及び、材料コストに改善の余地を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-87470号公報
【特許文献2】特許第5556983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性及び保存特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウムを提供するものであり、さらには、スピネル型マンガン酸リチウムを正極に用いるリチウムイオン二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、スピネル型マンガン酸リチウムについて検討を重ねた結果、以下を要旨とする本発明が上記課題を達成しうることを見出し。本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は特許請求の範囲のとおりであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有するスピネル型マンガン酸リチウム。
[2]第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つがNa2WO4及びNa2MoO4の少なくとも1つである上記[1]に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[3]化学式Li1+XMn2-X-YMYO4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはMg又はAlである。)で表される上記[1]又は[2]に記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[4]無機リン化合物を含有し、無機リン化合物の含有量Zが0<X≦5.0質量%である上記[1]~[3]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[5]二次粒子の平均粒子径が3μm以上20μm以下である上記[1]~[4]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[6]一次粒子の平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下である上記[1]~[5]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[7]XRD測定による(400)面の半値幅が0.005以上0.1以下である上記[1]~[6]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[8]SO4の含有量が0.8質量%以下である上記[1]~[7]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[9]ホウ素の含有量が2,000wtppm以下である上記[1]~[8]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウム。
[10]マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム源及びマグネシウム源の少なくとも1つを含む金属源を含む組成物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物に第6族のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる工程と、を有する上記[1]~[9]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
[11]焼成後、水洗によりホウ素を100wtppm以上1,500wtppm以下まで除去する上記[10]に記載のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法。
[12]上記[1]~[9]のいずれかひとつに記載のスピネル型マンガン酸リチウムを含む電極。
[13]上記[12]に記載の電極を正極に有するリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、二次電池の電極として使用した際に、高温における電池特性、特にカーボン対極充放電特性及び保存特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウム及びその製造方法を提供することが可能になり。さらには、該スピネル型マンガン酸リチウムを用いた電極、またはリチウムイオン二次電池を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について、一実施形態を示して詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有する。第6族元素(クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W))のナトリウム(Na)塩、カリウム(K)塩及びアンモニウム(NH4)塩の少なくとも1つとしては、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)、タングステン酸カリウム(K2WO4)、タングステン酸アンモニウム((NH4)2WO4)、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4)、モリブデン酸カリウム(K2MoO4)、モリブデン酸アンモニウム((NH4)2MoO4)、クロム酸ナトリウム(Na2CrO4)、クロム酸カリウム(K2CrO4)、クロム酸アンモニウム((NH4)2CrO4)等が例示されるが、これらのうちで、安価であることと、高温時におけるガス発生がないため、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4)及びモリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4)の少なくとも1つが好ましい。
【0012】
第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つがスピネル型マンガン酸リチウムに含有されることにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に優れた電池性能を示し、特に高温において優れた充放電特性及び保存特性を得ることが可能となる。
【0013】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムに含有される第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つは、スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の表面又は内部に粒子状又は皮膜状に存在する。第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つの平均粒子径は0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。平均粒子径はレーザー回折・散乱法または電子顕微鏡観察で求めることができる。
【0014】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、化学式Li1+XMn2-X-YMYO4(式中、0.02≦X≦0.20、0.05≦Y≦0.30であり、MはMg又はAlである。)で表されることが好ましい。
【0015】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、無機リン化合物を含有しなくてもよいが、無機リン化合物を含有し、無機リン化合物の含有量Zが0<Z≦5.0質量%で表される組成であることが好ましい。これにより、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムをリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に、高温において優れた充放電特性及び保存特性が得るとともに、十分な充放電容量を得ることが可能となる。無機リン化合物としては、リン酸塩であることが好ましく、例えば、Li3PO4、LiPO3等のリチウムのリン酸塩、Na3PO4、NaH2PO4、Na2HPO4等のナトリウムのリン酸塩、K3PO4、KH2PO4、K2HPO4等のカリウムのリン酸塩等が挙げられる。好ましくはLi3PO4、LiPO3であり、より好ましくはLi3PO4である。スピネル型マンガン酸リチウムのX、Y、Zは組成分析から求めることができる。その方法としては、例えば、誘導結合プラズマ発光分析、原子吸光分析等が例示される。
【0016】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、二次粒子の平均粒子径が3μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上12μm以下がより好ましく、5μm以上10μm以下がさらに好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に、スピネル型マンガン酸リチウム粒子内のリチウム拡散距離がより小さくなり、より優れた出力特性を得ることが可能になるとともに、正極合剤の充填性をより高くすることが可能となる。
【0017】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、一次粒子の平均粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に高温において優れた充放電特性を得るとともに、優れた出力特性を得ることが可能となる。
【0018】
ここで、「二次粒子」とはスピネル型マンガン酸リチウムの一次粒子同士が凝集して焼結した粒子であり、「一次粒子」とは独立した結晶粒子である。本実施形態における二次粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置(商品名:MT3000II、MicrotracBEL製)によって測定されるD50径である。二次粒子の平均粒子径はレーザー回折・散乱法によって測定される。
【0019】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定による(400)面の半値幅が0.005以上0.1以下であることが好ましく、0.005以上0.06以下であることがより好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に、結晶性を高くしてマンガンの溶出を抑制するとともに、充放電に伴う結晶構造変化を抑制し、高温において優れた充放電特性及び保存特性を得ることが可能となる。半値幅の測定方法は、実施例の<XRDによる半値幅の測定>により行い、測定装置の誤差を補正するため、予め標準物質の測定を行った後、スピネル型マンガン酸リチウムの半値幅から標準物質の半値幅を差し引いて算出した。
【0020】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、SO4の含有量が0.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた保存特性及び充放電特性を得ることができる。SO4の含有量(質量%)は、スピネル型マンガン酸リチウムの質量に対する、スピネル型マンガン酸リチウムに含まれるS元素をSO4換算した質量の割合(質量%)である。すなわち、SO4の含有量は、ICP測定で求めたS元素の濃度(質量%)に、SO4/S(原子量比)をかけてSO4換算することで求めることができる。
【0021】
含有されるSO4の状態としては限定されるものではなく、例えば、硫酸イオン及びSO4基を含む化合物の少なくとも1つが挙げられ、具体的には、Li2SO4、Na2SO4等が例示できる。
【0022】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、ホウ素の含有量が2,000wtppm以下であることが好ましく、500wtppm以下であることがより好ましく、300wtppm以下であることがさらに好ましい。これにより、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際の充放電容量をより大きくするとともに、高温においてより優れた充放電特性及び保存特性を得ることができる。ホウ素の含有量は、0wtppm以上であればよく、すなわち本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムに含まれていなくともよい。ホウ素の含有量は、ICP測定によって求めることができる。
【0023】
含有されるホウ素の状態としては限定されるものではなく、例えば、ホウ素金属、ホウ素を含む化合物及びホウ素イオンからなる群より選ばれる少なくとも1つが挙げられ、具体的には、B2O3、Li2B4O7等が例示できる。ホウ素の含有量は、スピネル型マンガン酸リチウムに含有されるマンガンに対する含有量である。
【0024】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、BET比表面積が0.2m2/g以上2.0m2/g以下であることが好ましく、0.3m2/g以上1.5m2/g以下であることがより好ましい。これにより、高温における充放電特性、特にカーボン対極充放電特性に優れるとともに出力特性に優れるスピネル型マンガン酸リチウムを得ることが可能となる。
【0025】
次に、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムの製造方法について説明する。
【0026】
本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムは、マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1つを含む金属源を混合して混合物を得る混合工程と、該混合物を750℃以上970℃以下で焼成して焼成物を得る焼成工程と、該焼成物に第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる工程、によって製造することができる。なお、無機リン化合物を含むスピネル型マンガン酸リチウムを製造する場合は、混合工程では、上記したマンガン源、リチウム源及び金属源のほかに、無機リン化合物も混合して混合物を得ることができる。以下に同じである。
【0027】
混合工程では、マンガン源、リチウム源、並びに、アルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1つを含む金属源を混合して混合物を得る。マンガン源、リチウム源、並びにアルミニウム及びマグネシウムの少なくとも1つを含む金属源が均一に混合されれば、混合方法は湿式混合又は乾式混合のいずれであってもよい。より均一な混合粉末が得られるため、混合方法は湿式混合であることが好ましい。
【0028】
マンガン源は特に限定されるものではなく、例えば、MnO2、Mn3O4、Mn2O3のほか、酢酸マンガンのような有機酸塩等が挙げられる。
【0029】
リチウム源は特に限定されるものではなく、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、シュウ酸リチウムのようなリチウム塩等が挙げられる。
【0030】
金属源は、アルミニウム源及びマグネシウム源の少なくとも1つを含む。
【0031】
アルミニウム源としては、例えば、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の少なくとも1つが挙げられる。
【0032】
マグネシウム源としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の少なくとも1つが挙げられる。
【0033】
無機リン化合物としては、例えば、Li3PO4、H3PO4、LiPO3、Na3PO4、NaH2PO4、Na2HPO4、K3PO4、KH2PO4、K2HPO4、Mg3(PO4)2、MgHPO4、Mg(H2PO4)2、NH4H2PO4、(NH4)2HPO4等の少なくとも1つが挙げられる。
【0034】
混合物は、必要に応じてバインダー、導電助剤、その他の添加物を含んでいてもよい。例えば、融剤としてホウ素化合物を混合することが好ましい。これにより、本実施形態のスピネル型マンガン酸リチウムの一次粒子径を増大させることができる。ホウ素化合物は特に制限はなく、例えば、H3BO3、B2O3、Li2O・nB2O3(nは1以上5以下)等が挙げられる。
【0035】
焼成工程は、混合工程で得られた混合物を焼成することにより、焼成物を得る工程である。焼成温度は、750℃以上970℃以下で行う。焼成温度が750℃未満では、スピネル型マンガン酸リチウムの半値幅が大きくなり、その結果、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際にマンガンの溶出が進行しやすく、充放電特性及び保存特性が低下しやすい。焼成温度が970℃を超えると、スピネル型マンガン酸リチウムの酸素欠損が増加し、その結果、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用した際に充放電特性及び保存特性が低下しやすい。焼成温度は780℃以上950℃以下で行うことが好ましい。焼成時間は、製造コストを下げるため、3時間以上12時間以下であることが好ましい。
【0036】
焼成雰囲気は特に限定されないが、例えば、大気中、又は、高濃度酸素雰囲気中(純粋酸素雰囲気中を含む)、すなわち、酸素含有量が18vol%以上100vol%以下の酸素雰囲気中で行うことが好ましい。
【0037】
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、高温における充放電サイクル特性向上のため、焼成後、水洗を行い、ホウ素を除去することが好ましい。水洗により、ホウ素を100wtppm以上1,500wtppm以下になるまで除去することが好ましい。
【0038】
第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる工程は、焼成工程で得られた焼成物に第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる工程である。焼成物へ第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる方法としては特に限定されないが、例えば、焼成物に第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つの粉末を添加してせん断力を加える乾式法や、第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを溶解した溶液と焼成物を混合した後、乾燥して溶媒を除去する湿式法が挙げられる。
【0039】
焼成物に含有させる第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つとしては、例えば、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム、ポリタングステン酸ナトリウム、メタタングステン酸ナトリウム、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウム、クロム酸ナトリウム、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム等が例示される。これらのなかでは、高温における電池特性を向上させる効果が高く、価格が安いため、タングステン酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウムが好ましい。
【0040】
スピネル型マンガン酸リチウムは、焼成時に二次粒子同士が固結し易いため、目的の粒子径を得るために解砕を行うことが好ましい。解砕方法は、微粉生成をより抑制するため、せん断力による解砕が好ましい。
【0041】
スピネル型マンガン酸リチウムは、正極の厚みを超える粗大粒子を除去するため、篩を通過させることが好ましい。篩の目開きは200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態の第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有したスピネル型マンガン酸リチウムをリチウムイオン二次電池の正極とすることで、従来では得ることができなかった、高温における充放電特性及び保存特性に優れるリチウムイオン二次電池を構成することが可能になる。
【0043】
正極以外のリチウムイオン二次電池の構成としては、特に制限はないが、負極にはLiを吸蔵放出する材料、例えば、炭素系材料、酸化錫系材料、Li4Ti5O12、SiO、Liと合金を形成する材料等が挙げられる。Liと合金を形成する材料としては、例えば、シリコン系材料やアルミニウム系材料等が挙げられる。電解質には、例えば、有機溶媒にLi塩や各種添加剤を溶解した有機電解液や、Liイオン伝導性の固体電解質、これらを組み合わせたもの等が挙げられる。
【実施例0044】
次に、本発明を具体的な実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0045】
<組成分析、SO4含有量、ホウ素含有量、リン酸塩含有量の測定>
実施例および比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウムの組成、SO4含有量、ホウ素含有量、リン酸塩含有量は、スピネル型マンガン酸リチウムを塩酸-過酸化水素混合水溶液に溶解した後、誘電結合プラズマ発光分析装置(商品名:ICP-AES、パーキンエルマージャパン製)で分析した。リン酸塩含有量は、第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有させる工程の前にICP測定で求めたP元素の濃度(質量%)に、Li3PO4/P(原子量比)をかけてLi3PO4換算することで算出した。また、Al含有量は加圧酸分解を行い、上記装置によって分析した。
【0046】
<マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径の測定>
粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)を使用して二次粒子の平均粒子径(D50)を測定した。測定時の分散媒は純水を使用した。
【0047】
<マンガン酸リチウムの一次粒子の平均粒子径の測定>
電界放射型走査電子顕微鏡(商品名:FE-SEM JSM-7600F、日本電子製)によるSEM像から、マンガン酸リチウムの一次粒子の平均粒子径を求めた。
【0048】
<第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つの平均粒子径の測定>
粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)を使用して平均粒子径(D50)を測定した。測定時の分散媒はエタノールを使用し、超音波を5分間照射して分散させた後、測定を行った。
【0049】
<XRDによる半値幅の測定>
実施例および比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウムについて、XRDによる半値幅の測定を粉末XRD測定装置(商品名:Ultima IV、Rigaku製)で行った。計測条件は、以下の通りとした。
【0050】
・ターゲット:Cu
・出力:1.6kW(40mA-40kV)
・フィルタ:Kβフィルター
・発散スリット:1°
・発散縦制限スリット:10mm
・散乱スリット:解放
・受光スリット;解放
・走査モード:連続
・スキャンスピード:4.000°/分
・サンプリング幅:0.04°(2θ/θ)
・積算回数:1回
・測定範囲:10-90°(2θ/θ)
得られたスピネル型マンガン酸リチウムのXRDデータを、粉末X線回折測定装置に付属の解析ソフト(PDXL2)を用いて解析し、2θ=44°付近の(400)面の積分幅を求めた。
【0051】
また、測定装置の誤差を補正するため、予めXRD用標準物質(NIST製α型石英粉末)の測定を行い、スピネル型マンガン酸リチウムの積分幅から標準物質の積分幅を差し引いて半値幅を求めた。
【0052】
<BET比表面積の測定>
試料1.0gをBET比表面積測定用のガラスセルに入れ、窒素気流下で150℃、最低20分間脱水処理を行い、粉体粒子に付着した水分の除去を行った。
【0053】
処理後の試料を、BET測定装置(商品名:Macsorb、MOUNTECH製)で、吸着ガスに窒素30%-ヘリウム70%の混合ガスを使用し、1点法でBET比表面積の測定を行った。
【0054】
<初期容量の測定>
正極は、実施例、比較例で得られたスピネル型マンガン酸リチウム4.7gとアセチレンブラック(商品名:デンカブラック、デンカ製)0.15gと10wt%ポリフッ化ビニリデン/N-メチル-2-ピロリドン溶液1.5g(ポリフッ化ビニリデン0.15g)とN-メチル-2-ピロリドン1.23mL(重量比でスピネル型マンガン酸リチウム:アセチレンブラック:ポリフッ化ビニリデン=94:3:3)を自転公転ミキサー(商品名:AR-310、シンキー製)で混合して正極材スラリーを作製し、得られた正極材スラリーをアルミニウム箔に塗布し、120℃で20分乾燥後、トムソン刃で長さ60mm×幅30mmに打ち抜き、正極合剤の密度が2.5g/cm3となるようにロールプレスを行った。ロールプレスした後、正極塗布部分の上端長さ10mm×幅30mmを剥がし、120℃で5時間真空乾燥を行い、アルミニウムタブをスポット溶接した。塗布量はスピネル型マンガン酸リチウム量が15.0mg/cm2となるようにした。
【0055】
負極は、人造黒鉛4.0gと10wt%ポリフッ化ビニリデン/N-メチル-2-ピロリドン溶液2.1g(ポリフッ化ビニリデン0.21g)とN-メチル-2-ピロリドン3.2mL(重量比で黒鉛:ポリフッ化ビニリデン=95:5)を自転公転ミキサー(商品名:AR-310、シンキー製)で混合して負極材スラリーを作製し、得られた負極材スラリーを銅箔に塗布し、120℃で20分乾燥後、トムソン刃で長さ62mm×幅32mmに打ち抜き、負極合剤の密度が1.5g/cm3となるようにロールプレスを行った。ロールプレスした後、正極塗布部分の上端長さ10mm×幅32mmを剥がし、120℃で5時間真空乾燥を行い、ニッケルタブをスポット溶接した。塗布量は黒鉛の量が5.5mg/cm2となるようにした。
【0056】
正極、負極と、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶媒(体積比1:1)にLiPF6を1mol/dm3とビニレンカーボネートを1wt%溶解した電解液0.24mLと、セパレータ(商品名:リチウムイオン二次電池用セラミックコーティング湿式セパレータSH716E14、Shenzhen Senior Technology Material製)を用いて単層ラミネートセルを作製した。
【0057】
作製した電池を用いて、24℃において、セル電圧4.2Vと3.0Vの間で電流4.5mAで定電流定電圧充電-定電流放電を3サイクル行い、1サイクル目の充電容量を初期容量とし、3サイクル目の放電容量を電池容量とした。
【0058】
<充放電サイクル試験>
<初期容量の測定>で作製した電池を用いて、電池容量を測定し、次に、60℃で、セル電圧が4.2Vと3.0Vの間で、1、10、20、50、100サイクル目は電池容量に対し0.2時間放電率の電流、それ以外のサイクルでは電池容量に対し1時間放電率の電流において定電流定電圧充電-定電流放電を100サイクル行い、100サイクル目と1サイクル目の放電容量の比から充放電サイクル維持率を求めた。なお、定電圧充電の終了条件は、充電電流が定電流充電時の1/20まで減衰した時点とした。
【0059】
実施例1
純水に電解二酸化マンガン1577gと炭酸リチウム369gと水酸化マグネシウム53gとホウ酸2.8g(マンガンに対するホウ素の添加量:500wtppm)とリン酸三リチウム63gを加えて固形分濃度20wt%のスラリーを調製し、粉砕機(商品名:ダイノーミル、シンマルエンタープライズ製)で3時間粉砕した。電解二酸化マンガン、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸及びリン酸三リチウムの混合物の平均粒子径(D50)を粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ、MicrotracBEL製)により測定した結果、0.6μmであった。得られたスラリーをスプレードライヤー(株式会社プリス製)により噴霧圧0.3MPa、供給速度3000g/hr、乾燥温度は入口温度200℃、出口温度120℃で水を蒸発させ、D50が10μmである球状の顆粒乾燥粒子を得た。
【0060】
顆粒乾燥粒子200gを箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら850℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、24時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は850℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。次に純水を加えて1時間撹拌をし、濾過後120℃で乾燥してスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0061】
次に、スピネル型マンガン酸リチウム9.86gと、メノウ乳鉢で粉砕したタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O(キシダ化学製))0.14gをメノウ乳鉢で混合した後、120℃で乾燥してNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0062】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06O4で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0063】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
実施例2
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.96gとしたことと、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を0.04gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0067】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06O4で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0068】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0069】
実施例3
60℃の純水に空気を吹き込みながら、これを攪拌した。当該純水の酸化還元電位が水素電極基準で100mVと一定になるようにしながら、2mol/Lの硫酸マンガン水溶液、及び、20wt%の水酸化ナトリウム水溶液をそれぞれ当該純水中に連続的に添加した後、得られたスラリーをろ過、洗浄、乾燥することにより平均粒子径3.8μmのMn3O4を得た。
【0070】
得られたMn3O475.00gと、平均粒子径3μmの炭酸リチウム21.48gと、Mg(OH)2(和光純薬工業製、平均粒子径0.07μm)1.70gと、H3BO3(キシダ化学製)0.60gを、10mmφのジルコニアビーズを用いて乾式ボールミルで混合した後、箱型炉にて空気を5L/minの速度で流通させながら900℃で6時間焼成を行い、600℃まで冷却後、24時間アニールを実施して室温まで冷却した。昇温速度は100℃/hrとし、降温速度は900℃から600℃までは20℃/hr、600℃から室温までは100℃/hrとした。
【0071】
次に、スピネル型マンガン酸リチウム9.86gと、メノウ乳鉢で粉砕したタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O(キシダ化学製))0.14gをメノウ乳鉢で混合した後、120℃で乾燥してNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0072】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06O4であった。
【0073】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0074】
実施例4
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.96gとしたことと、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を0.04gとしたこと以外は実施例3と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0075】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06O4であった。
【0076】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0077】
実施例5
スラリー調製の際に電解二酸化マンガンを3066gとしたことと、炭酸リチウムを725gとしたことと、水酸化マグネシウムの代わりに水酸化アルミニウムを137gとしたことと、ホウ酸を11g(マンガンに対するホウ素の添加量:1,000wtppm)としたこと以外は実施例1と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0078】
次に、スピネル型マンガン酸リチウム9.80gと、メノウ乳鉢で粉砕したタングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O(キシダ化学製))0.20gをメノウ乳鉢で混合した後、120℃で乾燥してNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0079】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0080】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0081】
実施例6
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.70gとしたことと、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を0.30gとしたこと以外は実施例5と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0082】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0083】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0084】
実施例7
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.60gとしたことと、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を0.40gとしたこと以外は実施例5と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0085】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0086】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0087】
実施例8
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.50gとしたことと、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を0.50gとしたこと以外は実施例5と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0088】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0089】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0090】
実施例9
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を予めジェットミルで粉砕したこと以外は実施例5と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0091】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0092】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0093】
実施例10
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2WO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.86gとしたことと、タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を0.14gとしたこと以外は実施例9と同様の方法でNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0094】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0772(Na2WO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0095】
得られたNa2WO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0096】
実施例11
タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)の代わりにモリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0097】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06O4で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0098】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0099】
実施例12
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2MoO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.96gとしたことと、Na2MoO4・2H2Oを0.04gとしたこと以外は実施例1と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0100】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06O4で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0101】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0102】
実施例13
タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)の代わりにモリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を用いたこと以外は実施例5と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0103】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0104】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0105】
実施例14
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2MoO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.70gとしたことと、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を0.30gとしたこと以外は実施例13と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0106】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0107】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0108】
実施例15
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2MoO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.60gとしたことと、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を0.40gとしたこと以外は実施例13と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0109】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0110】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0111】
実施例16
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2MoO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.50gとしたことと、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を0.50gとしたこと以外は実施例13と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0112】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0113】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0114】
実施例17
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2MoO4を含有させる際に、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を予めジェットミルで粉砕したこと以外は実施例13と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0115】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0116】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0117】
実施例18
スピネル型マンガン酸リチウムにNa2MoO4を含有させる際に、スピネル型マンガン酸リチウムを9.86gとしたことと、モリブデン酸ナトリウム(Na2MoO4・2H2O)を0.14gとしたこと以外は実施例17と同様の方法でNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0118】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.12-0773(Na2MoO4)の混合相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0119】
得られたNa2MoO4含有スピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。
【0120】
比較例1
タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0121】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)とNo.25-1030(Li3PO4)の混合相であり、組成はLi1.10Mn1.84Mg0.06O4で、リン酸三リチウムの含有量は3.7質量%であった。
【0122】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。表2から、比較例1は、充放電サイクル特性が実施例に対して劣ることが明らかとなった。
【0123】
比較例2
タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を含有させなかったこと以外は、実施例3と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0124】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)単相であり、組成はLi1.08Mn1.86Mg0.06O4であった。
【0125】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。表2から、比較例2は、充放電サイクル特性が実施例に対して劣ることが明らかとなった。
【0126】
比較例3
タングステン酸ナトリウム(Na2WO4・2H2O)を含有させなかったこと以外は、実施例5と同様の方法でスピネル型マンガン酸リチウムを得た。
【0127】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムは、XRD測定から、JCPDSのNo.35-782(LiMn2O4)単相であり、組成はLi1.06Mn1.84Al0.10O4であった。
【0128】
得られたスピネル型マンガン酸リチウムの二次粒子の平均粒子径、一次粒子の平均粒子径、BET比表面積、(400)面半値幅、SO4量、ホウ素(B)量を表1に示し、電池性能を表2に示す。表2から、比較例3は、充放電サイクル特性が実施例に対して劣ることが明らかとなった。
本発明のスピネル型マンガン酸リチウムは、特異的な第6族元素のナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の少なくとも1つを含有するため、高温における充放電特性及び保存特性に優れるリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用することができる。