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特開2024-138921真空チャンバ、電子デバイスの製造装置及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138921
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】真空チャンバ、電子デバイスの製造装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20241002BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20241002BHJP
   H10K 71/16 20230101ALI20241002BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L21/68 F
C23C14/56 G
H01L21/68 K
H10K71/16
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049645
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町田 和敏
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG32
3K107GG41
3K107GG54
4K029AA24
4K029BD01
4K029CA01
4K029HA01
4K029KA01
5F131AA03
5F131AA33
5F131AA34
5F131CA18
5F131CA21
5F131DA09
5F131EA02
5F131EA13
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EA27
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB63
5F131FA10
5F131FA17
5F131FA23
5F131FA32
5F131FA33
5F131KA14
5F131KA47
5F131KA49
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
5F131KB54
5F131KB55
(57)【要約】
【課題】コストの低減を可能とする真空チャンバ、電子デバイスの製造装置及び電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】基板Sに形成された第1アライメントマークS1及び第2アライメントマークS2を撮影するカメラ301と、カメラ301により撮影された画像データに基づいて基板Sの位置を調整する調整機構と、第1アライメントマークS1からカメラ301に至る第1光路OP1と、第2アライメントマークS2からカメラ301に至る第2光路OP2とを形成し、かつ、第1光路OP1のうちカメラ301に至る光路の少なくとも一部と、第2光路OP2のうちカメラ301に至る光路の少なくとも一部とが重なるように、第1光路OP1と第2光路OP2を形成する複数の光学部品と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された第1アライメントマーク及び第2アライメントマークを撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像データに基づいて前記基板の位置を調整する調整機構と、
前記第1アライメントマークから前記カメラに至る第1光路と、前記第2アライメントマークから前記カメラに至る第2光路とを形成し、かつ、前記第1光路のうち前記カメラに至る部分を含む光路の少なくとも一部と、前記第2光路のうち前記カメラに至る部分を含む光路の少なくとも一部とが重なるように、前記第1光路と前記第2光路を形成する複数の光学部品と、
を備えることを特徴とする真空チャンバ。
【請求項2】
前記第1光路上かつ前記第2光路上に設けられ、光の一部を透過しつつ光の一部を反射する第1光学部品と、
前記第2光路上に設けられ、前記第2アライメントマークから前記第1光学部品に至る光路を形成するための第2光学部品と、
を備え、
前記第1光学部品から前記カメラに至る領域において、前記第1光路の少なくとも一部と前記第2光路の少なくとも一部が重なることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ。
【請求項3】
前記第1光学部品と前記第2光学部品との間には焦点を調整するために移動可能に構成される第3光学部品が設けられると共に、
前記第1光学部品と前記第2光学部品と前記第3光学部品は、室内に配されることを特徴とする請求項2に記載の真空チャンバ。
【請求項4】
前記第1光学部品と前記第2光学部品との間には焦点を調整するために移動可能に構成される第3光学部品が設けられると共に、
前記第1光学部品と前記第2光学部品と前記第3光学部品は、室外に配されることを特徴とする請求項2に記載の真空チャンバ。
【請求項5】
前記基板は透光性を有し、かつ、前記第2光路上に前記基板が配されると共に、
前記基板から前記カメラに至る領域において、前記第1光路の少なくとも一部と前記第2光路の少なくとも一部が重なることを特徴とする請求項1に記載の真空チャンバ。
【請求項6】
前記第2アライメントマークから前記第1光路の少なくとも一部と重なる位置に至るように前記第2光路を形成するための複数の前記光学部品は室内に配されることを特徴とする請求項5に記載の真空チャンバ。
【請求項7】
前記第2アライメントマークから前記第1光路の少なくとも一部と重なる位置に至るように前記第2光路を形成するための複数の前記光学部品は室外に配されることを特徴とする請求項5に記載の真空チャンバ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載の真空チャンバ内で位置が調整された基板を成膜室内に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送された前記基板に対して薄膜を形成する成膜源と、
を備えることを特徴とする電子デバイスの製造装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一つに記載の真空チャンバ内で前記調整機構により基板の位置
を調整する調整工程と、
前記調整工程により位置が調整された前記基板を成膜室内に搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送された前記基板に対して成膜源を用いて薄膜を形成する成膜工程と、
を有することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ、電子デバイスの製造装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスを製造する製造装置においては、基板上に精度よく薄膜を形成するために、基板とマスクとの位置決めが重要である。そこで、真空チャンバ内で基板の配置位置を調整する技術が知られている。このような技術においては、基板に複数のアライメントマークを設け、かつ、それぞれのアライメントマークを各々撮影するカメラを設けることで、それぞれ撮影された画像データに基づいて基板の位置調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-192898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、従来技術においては、基板に設けられたアライメントマークの数分だけカメラを必要としていたため、コストが増加する要因となっていた。
【0005】
本発明の目的は、コストの低減を可能とする真空チャンバ、電子デバイスの製造装置及び電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
すなわち、本発明の真空チャンバは、
基板に形成された第1アライメントマーク及び第2アライメントマークを撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像データに基づいて前記基板の位置を調整する調整機構と、
前記第1アライメントマークから前記カメラに至る第1光路と、前記第2アライメントマークから前記カメラに至る第2光路とを形成し、かつ、前記第1光路のうち前記カメラに至る部分を含む光路の少なくとも一部と、前記第2光路のうち前記カメラに至る部分を含む光路の少なくとも一部とが重なるように、前記第1光路と前記第2光路を形成する複数の光学部品と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は電子デバイスの製造装置の構成の一例を示す模式図である。
図2図2は電子デバイスの製造装置の構成の他の一例を示す模式図である。
図3図3は基板の向きを変える動作を説明するための図である。
図4図4は成膜室に設置される成膜装置の構成を示す模式図である。
図5図5(a)及び5(b)はそれぞれラフアライメント工程及びファインアライメント工程を説明するための図面である。
図6図6はアライメント室内のアライメント機構を概略的に示す模式図である。
図7図7は実施例1に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。
図8図8はカメラにより撮影される画像の一例を示す図である。
図9図9は実施例2に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。
図10図10は実施例3に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。
図11図11は実施例4に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。
図12図12は有機EL表示装置の全体図及び有機EL表示装置の素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
本実施形態は、真空チャンバ、電子デバイスの製造装置及び電子デバイスの製造方法に関する。本実施形態によれば、特に、中継装置で予めアライメントを行うことで、アライメントの工程時間を短縮することができる。
【0012】
本実施形態は、平行平板の基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。本実施形態の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。特に、有機EL表示装置の製造装置は、基板の大型化あるいは表示パネルの高精細化により基板とマスクのアライメント精度及び速度のさらなる向上が要求されているため、本実施形態の好ましい適用例の一つである。
【0013】
<電子デバイスの製造装置>
図1乃至図3は、電子デバイスの製造装置の一例を示す模式図である。図1乃至図3の電子デバイスの製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後に、成膜後の基板を切り出して複数の小サイズのパネルが作製される。
【0014】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、図1に示したように、複数のクラスタ装置を備える。図1においては、複数のクラスタ装置のうち、2つのクラスタ装置101,102が示されている。それぞれのクラスタ装置101,102は、搬送室1と、搬送室1の周りに配置される複数の成膜室2と、使用前後のマスクが収納されるマスク積載室3とを備える。搬送室1内には、基板Sを保持して搬送する搬送ロボットRが設置される。搬送ロボットRは、例えば、多関節アームに、基板Sを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットであり、成膜室2やマスク積載室3に対して基板S及びマスクの搬入及び搬出を行う役割を担っている。
【0015】
各々の成膜室2には、それぞれ成膜装置が設置される。搬送ロボットRとの基板Sの受け渡し、基板Sとマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板Sの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動的に行われる。
【0016】
隣り合うクラスタ装置の間には、基板Sの搬送方向(図中、矢印X参照)上流側のクラスタ装置101から基板Sを受け取って、下流側のクラスタ装置102に搬入する前に一時的に複数の基板Sを収納するバッファ室4と、バッファ室4から基板Sを受け取って、下流側のクラスタ装置102に基板Sを搬入する前にアライメントを実行するアライメント室6が設置される。
【0017】
本実施形態の電子デバイスの製造装置の一例によれば、図1及び図3(a)に示すように、アライメント室6では、後述するアライメント以外に、バッファ室4から基板Sを受け取って基板Sの向きを180度回転させる動作が行われる。この動作を行うために、アライメント室6には、基板Sを水平回転させるための回転機構(不図示)が設置される。このような構成によって、下流側のクラスタ装置102でも基板Sが上流側のクラスタ装置101と同じ向きとなり、電子デバイスの製造装置全体において基板Sの処理が統一化される。
【0018】
また、図2及び図3(b)に示したように、電子デバイスの製造装置の他の例によれば、バッファ室4とアライメント室6のとの間に旋回室5が設置される。旋回室5には、搬送ロボットR1が設置される。搬送ロボットR1は、上流側のバッファ室4から基板Sを受け取って、この基板Sを旋回させてアライメント室6に搬送する。このような構成によって、アライメント室6の構造をより簡単にしつつ、基板Sの向きを上下流のクラスタ装置101,102で同じようにすることができる。以下、上流側のクラスタ装置101と下流側のクラスタ装置102との間に設置された、バッファ室4、旋回室5、及びアライメント室6を合わせて、「中継装置」と称する。
【0019】
以上のような構成によれば、各クラスタ装置において、マスクについても同じ向きに設置できるので、マスクの管理が簡易化される。例えば、電子デバイスの製造装置に障害が発生し、人為的にマスクを設置する際、上下流のクラスタ装置101,102でマスクを同じ向きに設置すればよいので、マスクの設置ミスを抑制することができる。
【0020】
また、電子デバイスの製造装置の組み立ての際にアライメントの精度を機構的に調整する場合、基板Sの一領域を基準として調整が行われるが、基板とマスクの向きをそれぞれのクラスタ装置で同じようにすることで、各クラスタ装置での調整を同一基準で行うことができる。これにより、組み立て速度が向上し、かつ、調整ミスを低減することができる。
【0021】
本実施形態に係るアライメント室6は、基板Sが搬送室1内の搬送ロボットRによってクラスタ装置に搬入される前に、位置ずれが発生した基板Sの位置を大まかに調整するラフアライメント機構を備えている。このように、中継装置にラフアライメント機構を設けることによって、基板Sの搬送精度を向上することができる。また、従来においては、成膜室2ごとに行われたラフアライメントを成膜室2では行わなくてもよくなる。すなわち、上流側に配された基板Sが、ロボットハンド等により下流側に搬送されると、下流側に配置される基板Sの位置は、上流側での基板Sの位置に応じて規定される。従って、中継装置において、基板Sの配置位置を調整しておくことで、成膜室2に搬入された基板Sの位置をある程度調整することができる。これにより、成膜室2において、ラフアライメントを省略することが可能となる。なお、中継装置を構成するバッファ室4、旋回室5、及びアライメント室6は、いずれも真空チャンバを備えている。本実施形態においては、アライメント室6においてラフアライメントを行う場合を説明するが、ラフアライメントは、他の室内で行うこともできる。このラフアライメントを行うための機構が調整機構に相当し、ラフアライメントを行う工程が調整工程に相当する。そして、ラフアライメントを行う真空チャンバ内で位置が調整された基板を成膜室2に搬送する手段を搬送機構ということができる。例えば、搬送ロボットRが搬送機構に相当する。また、ラフアライメント
を行う真空チャンバ内で位置が調整された基板を成膜室2に搬送する工程が搬送工程に相当し、成膜室2内において、成膜源を用いて基板Sに薄膜を形成する工程が成膜工程に相当する。
【0022】
<成膜装置>
図4は、成膜室2に設置される成膜装置20の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板Sが水平面(XY平面)と平行となるよう固定された場合において、基板Sの短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向とする。また、Z軸まわりの回転角をθとする。
【0023】
成膜装置20の真空チャンバ200は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される。真空チャンバ200の内部には、基板保持ユニット210と、マスクMと、マスク台221と、冷却板230と、成膜源(例えば蒸発源)240が設けられる。
【0024】
基板保持ユニット210は、搬送ロボットRから受け取った基板Sを保持する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。マスクMは、基板S上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンを持つメタルマスクであり、枠状のマスク台221の上に固定される。
【0025】
成膜時には、マスクMの上に基板Sが載置される。冷却板230は、成膜時に、基板SにおけるマスクMとは反対側の面に密着して、成膜時の基板Sの温度上昇を抑えることで有機材料の変質や劣化を抑制する役割を担っている。冷却板230は、マグネット板としての機能を兼備させることもできる。マグネット板は、磁力によってマスクMを引き付けることで、成膜時の基板SとマスクMの密着性を高める部材である。成膜源240は、蒸着材料を収納する坩堝、ヒータ、シャッタ、駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成される(いずれも不図示)。
【0026】
真空チャンバ200の上部外側(大気側)には、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、XYθアクチュエータ(不図示)などが設けられる。これらのアクチュエータは、例えば、モータとボールねじ、或いはモータとリニアガイドなどで構成される。基板Zアクチュエータ250は、基板保持ユニット210を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。クランプZアクチュエータ251は、基板保持ユニット210の挟持機構を動作させるための駆動手段である。冷却板Zアクチュエータ252は、冷却板230を昇降させるための駆動手段である。
【0027】
XYθアクチュエータは、基板Sのアライメントを行うための駆動手段である。XYθアクチュエータは、基板保持ユニット210及び冷却板230の全体を、X方向移動、Y方向移動、θ方向に回転させる機能を備えている。なお、本実施形態では、マスクMを固定した状態で基板SのX、Y、θ方向の位置を調整する構成を採用している。しかしながら、マスクMの位置を調整する構成、又は、基板SとマスクMの両者の位置を調整する構成を採用することで、基板SとマスクMのアライメントを行うこともできる。
【0028】
本実施形態に係る成膜室2のXYθアクチュエータは、ファインアライメントを行うためのアライメント機構であり、後述するアライメント室6のXYθアクチュエータよりも高精度の駆動機構により構成される。例えば、成膜室のXYθアクチュエータはX方向への2個のモータ及びY方向への2個のモータなど計4個のモータを有する。これによって、成膜室2で行われるファインアライメントにおける基板SのマスクMに対する相対的な位置調整を、より精細に制御することができる。
【0029】
真空チャンバ200の外側上面には、上述した駆動機構の他に、真空チャンバ200の
上面に設けられた透明窓を介して、基板S及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラ261が設置される。本実施形態においては、アライメント用カメラ261は、矩形の基板S及びマスクMの4コーナーに対応する位置にそれぞれ設置される。すなわち、合計4台のアライメント用カメラ261が設置される。
【0030】
本実施形態に係る成膜装置20に設置されるアライメント用カメラ261は、基板SとマスクMとの相対的な位置を高精度で調整するのに使われるファインアライメント用カメラであり、視野角は狭いが高解像度を持つカメラである。一般的な成膜装置においては、ファインアライメント用カメラ261以外に相対的に視野角が広くて低解像度であるラフアライメント用カメラ260も設置されている。しかしながら、本実施形態においては、ラフアライメントを成膜室2では行わず、アライメント室6で行う構成を採用しているため、成膜室2にはラフアライメント用カメラ260は設置されない。
【0031】
したがって、図4図5(a)に点線で示したラフアライメント用カメラ260は、本実施形態では必要ない。また、図5(a)は、一般的な成膜装置において行われるラフアライメント工程の様子を示したものであるが、本実施形態では、成膜装置においては、ラフアライメントは行う必要がない。
【0032】
次に、本実施形態に係る成膜装置20のアライメント機構によって実行されるアライメント工程を説明する。
【0033】
図5(b)に示したように、本実施形態に係る成膜装置20のアライメント機構によって行われるファインアライメントは、基板SとマスクMが一部接触された状態で行われる。
【0034】
この状態で、ファインアライメント用カメラ261によって撮影された基板S及びマスクMのアライメントマーク画像から、基板S及びマスクMのXY面内での相対的位置ずれが計測される。基板SとマスクMとの間の相対的な位置ずれが所定の閾値を超える場合、成膜装置20のXYθアクチュエータによってアライメントステージが駆動され、アライメントステージに繋がっている基板保持ユニット210上の基板SのXY面内での位置が相対的に調整される。
【0035】
このようなアライメント工程を基板SとマスクMとの間の相対的な位置ずれが所定の閾値内に入るまで繰り返される。基板SとマスクMとの間の相対的な位置ずれが所定の閾値内に収まれば、基板SをマスクM上に固定して成膜工程がなされる。
【0036】
このように、本実施形態に係る成膜装置20においては、アライメント工程をラフアライメントとファインアライメントとの2段階の工程で行うのではなく、ファインアライメントのみ行われる。このように、中継装置においてラフアライメントを行うことで、複数備えられる成膜装置20において、従来それぞれ行われていたラフアライメントを省略できるため、装置全体でのアライメント工程に必要な時間を大幅に短縮することができる。
【0037】
また、成膜室2は、制御部270を具備する。制御部270は、基板Zアクチュエータ250、クランプZアクチュエータ251、冷却板Zアクチュエータ252、XYθアクチュエータ及びカメラ261の制御以外にも、成膜源の制御、成膜の制御を行う機能を有する。制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを有するコンピューターにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリー又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを用いてもよいし、組込型のコンピューター又はPLC(programmable logic controlle
r)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置20ごとに制御部270が設けられてもよく、1つの制御部270が複数の成膜装置20を制御してもよい。
【0038】
<中継装置内でのアライメント>
上述したように、従来、一つのクラスタ装置で複数の成膜室2ごとに大まかな位置調整のためのラフアライメント工程を行っていたので、アライメント工程全体に必要な時間が長くなっていた。また、基板SとマスクMとの相対的な位置ずれは、クラスタ装置内の搬送ロボットRによる各成膜室2への基板Sの搬入及び搬出の過程でも発生するが、基板Sがクラスタ装置に搬入される前の中継装置内において基板Sが搬送される過程でも発生する。
【0039】
そこで、上記の通り、本実施形態では、クラスタ装置内に基板Sが搬入される前に、アライメント室6内でラフアライメント工程を実施して基板Sの位置を前もって調整することで、成膜室2内ではラフアライメント工程を省略する構成が採用されている。なお、本実施形態では、アライメント室6でラフアライメントを行う構成を説明するが、ラフアライメントを中継装置の他の装置、例えば、バッファ室4または旋回室5の真空チャンバ内でも行うことができる。
【0040】
図6は、アライメント室6の構造を概略的に示す模式図である。図6においては、真空チャンバ61に備えられる各種光学部品を省略している。アライメント室6は、内部が真空状態に維持される真空チャンバ61と、真空チャンバ61内において基板Sが載置される基板ステージ302と、基板Sのアライメントを行うための各種部材と、これらの動作を制御する制御手段303とを備えている。
【0041】
アライメント室6は、基板ステージ302に置かれた基板Sの位置情報(真空チャンバ61に対する基板Sの位置を示す情報)を取得するためのカメラ301と、基板ステージ302をX軸方向、Y軸方向、及びθ方向に駆動するための基板ステージ駆動機構(XYθアクチュエータ)307とを備える。この基板ステージ駆動機構307は、基板Sの位置を調整する調整機構に相当する。基板ステージ302は基板ステージ駆動機構307に対してシャフト310によって繋がるように構成されている。
【0042】
また、カメラ301は真空チャンバ61に対して固定されており、カメラ301により撮影された画像データに基づいて、真空チャンバ61に対する基板Sの位置情報を取得することができる。そして、その位置情報に基づいて、制御手段303は、基板ステージ302を駆動する基板ステージ駆動機構307の動作を制御する。
【0043】
アライメント用のカメラ301は、基板Sの大まかな位置調整を行うための位置情報取得手段であり、成膜装置20で使われるファインアライメント用カメラ261に比べて低解像度であるが、広視野角を持つカメラである。このカメラ301は、図6(a)に示したように、真空チャンバ61の底面306に設けられた窓(不図示)を介して、基板Sの特定の部分を撮影できるように設置される。
【0044】
基板ステージ駆動機構307は、真空チャンバ61の底面306を介して、基板ステージ302に繋がるように、真空チャンバ61の底面306側の外部に設置される。基板ステージ駆動機構307は、サーボモータと、サーボモータからの回転駆動力を直線駆動力に転換するための動力転換機構(例えば、リニアガイド)を通じて、XYθ方向への駆動力を基板ステージ302に伝達する。ここでは、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系が用いられる。基板Sが基板ステージ302上に水平に置かれる時、基板Sの短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向、Z軸周りの方
向の回転角をθとする。
【0045】
この基板ステージ駆動機構307は、成膜室2で基板SとマスクMの間の精細な位置調整に用いられるファインアライメント用XYθアクチュエータに比べて、位置調整の精度は低いが、移動範囲が広く、調整可能な位置ずれの範囲も広い。本実施形態に係る基板ステージ駆動機構307に使われるX方向サーボモータの個数は2個であり、Y方向サーボモータは1つであるが、このような個数は例示であり、本実施形態はこのような具体的な個数に限定されない。
【0046】
制御手段303は、基板ステージ302上の基板Sの位置情報に基づいて、基板ステージ駆動機構307の動作を制御する。この制御手段303は、カメラ301によって撮影された基板Sのアライメントマークの画像データから基板Sの位置情報を算出する画像処理部304と、基板Sの基準位置情報を記憶するメモリー部305とを備える。そして、この制御手段303は、メモリー部305に予め記憶された基板Sの基準位置情報と、画像処理部304によって算出された基板Sの位置情報とに基づいて、基板Sの位置ずれ量を算出する。なお、本実施形態においては、基板Sに2つのアライメントマーク(以下、「第1アライメントマークS1」「第2アライメントマークS2」と称する)が形成されている。
【0047】
次に、制御手段303によって制御されるアライメント動作について説明する。本実施形態においては、基板Sが基準位置に正確に配置された場合の第1アライメントマークS1及び第2アライメントマークS2の位置がメモリー部305に記憶されている。以下、これらの位置を、便宜上、それぞれ、第1基準位置、第2基準位置と称する。そして、実際にカメラ301により撮影された画像データから算出される第1アライメントマークS1の位置と第1基準位置とのXYθ方向の位置ずれ量と、第2アライメントマークS2の位置と第2基準位置とのXYθ方向の位置ずれ量が画像処理部304により算出される。
【0048】
制御手段303は、算出された位置ずれ量が所定の閾値を超える場合には、算出された位置ずれ量に基づいて、基板ステージ駆動機構307の動作を制御して、基板ステージ302をXYθ方向に移動させることにより、基板Sの位置を調整する。このようなアライメント動作は、基板Sの位置ずれ量が予め定めた閾値(許容値)内に収まるまで、繰り返される。
【0049】
基板Sの位置ずれ量が閾値内に収まってアライメント工程が完了すると、位置が調整された基板Sは、アライメント室6から搬出され、クラスタ装置の搬送室1内に搬入される。基板Sが搬出されたら、基板ステージ302は、元の位置に復帰する。
【0050】
一般的には、上記の通り、基板に形成された複数のアライメントマークの位置情報を正確に得るために、各アライメントマークに対応して各々カメラが設けられる。これに対して、本実施形態においては、一つのカメラで複数のアライメントマークの位置情報を正確に得る構成が採用されている。以下、この点について、具体的な実施例1~4に基づいて説明する。
【0051】
(実施例1)
図7は本発明の実施例1に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。なお、図7においては、説明の便宜上、アライメント室6において、光学部品以外の基板ステージ302や基板ステージ駆動機構307に関する構成は省略して示している。
【0052】
本実施例においては、真空チャンバ61の底面に配される窓が固定レンズleにより構成されており、この固定レンズleを通して、カメラ301によって真空チャンバ61の
内部が撮影されるように構成されている。
【0053】
真空チャンバ61内において、基板ステージ302(図7では不図示)に載置される基板Sは、基板Sに形成された第1アライメントマークS1がカメラ301のレンズの光軸上におおよそ配置される。この光軸上に、2つの固定レンズle(そのうちの一つは、上記の窓に相当する)と、これら2つの固定レンズleの間に配される第1光学部品320が配される。第1光学部品320は、光の一部を透過しつつ光の一部を反射する機能を有しており、具体的には、ハーフミラーやビームスプリッタを適用し得る。また、真空チャンバ61内には、第2光学部品としての反射ミラーmrと、基板Sに形成された第2アライメントマークS2と反射ミラーmrとの間に配される固定レンズleと、反射ミラーmrと第1光学部品320との間に配される第3光学部品としてのフォーカスレンズFleも備えられている。フォーカスレンズFleは、焦点を調整するために、不図示の駆動機構によって、図中矢印方向に移動可能に構成されている。
【0054】
以上のように、複数の光学部品が設けられることによって、第1アライメントマークS1からカメラ301に至る第1光路OP1と、第2アライメントマークS2からカメラ301に至る第2光路OP2とが形成される。そして、本実施例によれば、第1光路OP1のうちカメラ301に至る部分を含む光路の少なくとも一部と、第2光路OP2のうちカメラ301に至る部分を含む光路の少なくとも一部とが重なるように、第1光路OP1と第2光路OP2が形成される。
【0055】
第1光学部品320は、第1光路OP1上かつ第2光路OP2上に設けられるということができる。また、第2光路OP2上には、第2アライメントマークS2から第1光学部品320に至る光路を形成するための第2光学部品としての反射ミラーmrが備えられている。そして、本実施例では、第1光学部品320からカメラ301に至る領域において、第1光路OP1の一部と第2光路OP2の一部が重なる構成が採用されている。
【0056】
また、本実施例においては、第1光学部品320と、第2光学部品としての反射ミラーmrと、第3光学部品としてのフォーカスレンズFleは、室内(真空チャンバ61内)に配されている。なお、その他の光学部品である2つの固定レンズleも室内に配されている。
【0057】
図8はカメラにより撮影される画像の一例を示す図である。図中、第1の十字マークS10は第1アライメントマークS1の画像に相当し、第2の十字マークS20は第2アライメントマークS2の画像に相当する。上記の通り、制御手段303においては、この画像データに基づいて、第1アライメントマークS1の位置と第1基準位置との位置ずれ量が所定の閾値内となり、第2アライメントマークS2の位置と第2基準位置との位置ずれ量が所定の閾値内となるように、基板ステージ駆動機構307の動作を制御する。
【0058】
このように、本実施例によれば、一つのカメラ301によって、2つのアライメントマーク(第1アライメントマークS1及び第2アライメントマークS2)を撮影し、これらの位置情報を得ることができる。
【0059】
(実施例2)
図9は本発明の実施例2に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。なお、図9においては、説明の便宜上、アライメント室6において、光学部品以外の基板ステージ302や基板ステージ駆動機構307に関する構成は省略して示している。
【0060】
本実施例においては、複数の光学部品の配置構成が実施例1と異なっている。具体的には、実施例1では室内に配されている2つの固定レンズleが真空チャンバ61の底面に
配されており、窓としての機能も担っている。また、実施例1ではいずれも室内に配されている第1光学部品320、第2光学部品としての反射ミラーmr、第3光学部品としてのフォーカスレンズFle、及び窓としても機能する固定レンズleが、室外(真空チャンバ61の外部)に配されている。
【0061】
第1光路OP1と、第2光路OP2と、これらの光路に配される各種光学部品の配置構成については、実施例1と同様である。
【0062】
以上のような構成を採用することで、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においては、移動可能に構成されるフォーカスレンズFle、及び、これを駆動するための駆動機構(不図示)が室外に配されるため、摩耗粉や潤滑剤などが真空チャンバ61内に飛散してしまうことを抑制できる利点もある。
【0063】
(実施例3)
図10は本発明の実施例3に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。なお、図10においては、説明の便宜上、アライメント室6において、光学部品以外の基板ステージ302や基板ステージ駆動機構307に関する構成は省略して示している。本実施例においては、基板Sが透光性を有する場合に適用可能である。
【0064】
本実施例においては、真空チャンバ61の底面に配される窓が固定レンズleにより構成されており、この固定レンズleを通して、カメラ301によって真空チャンバ61の内部が撮影されるように構成されている。
【0065】
真空チャンバ61内において、基板ステージ302(図7では不図示)に載置される基板Sは、基板Sに形成された第1アライメントマークS1がカメラ301のレンズの光軸上におおよそ配置される。この光軸上に、3つの固定レンズle(そのうちの一つは、上記の窓に相当する)が配される。そして、室内に配された2つの固定レンズleの間に、基板Sが配される。また、真空チャンバ61内には、2つの反射ミラーmrと、これら2つの反射ミラーmrの間に配されるフォーカスレンズFleと、反射ミラーmrと第2アライメントマークS2との間に配される固定レンズleも備えられている。フォーカスレンズFleは、焦点を調整するために、不図示の駆動機構によって、図中矢印方向に移動可能に構成されている。
【0066】
以上のように、複数の光学部品が設けられることによって、第1アライメントマークS1からカメラ301に至る第1光路OP1と、第2アライメントマークS2からカメラ301に至る第2光路OP2とが形成される。そして、本実施例によれば、第1光路OP1のうちカメラ301に至る部分を含む光路の少なくとも一部と、第2光路OP2のうちカメラ301に至る部分を含む光路の少なくとも一部とが重なるように、第1光路OP1と第2光路OP2が形成される。
【0067】
そして、本実施例においては、第2光路OP2上に基板Sが配される。また、基板Sからカメラ301に至る領域において、第1光路OP1の全部と第2光路OP2の一部が重なるように構成される。また、本実施例においては、第2アライメントマークS2から第1光路OP1と重なる位置に至るように第2光路OP2を形成するための複数の光学部品を含む複数の光学部品(窓となる固定レンズleを除く全ての光学部品)は室内に配される。
【0068】
以上のような構成を採用することで、本実施例においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においては、光の一部を透過しつつ光の一部を反射する機能を有する光学部品(ハーフミラーやビームスプリッタ)が不要である。
【0069】
(実施例4)
図11は本発明の実施例4に係る真空チャンバにおける光学系の説明図である。なお、図11においては、説明の便宜上、アライメント室6において、光学部品以外の基板ステージ302や基板ステージ駆動機構307に関する構成は省略して示している。
【0070】
本実施例においては、複数の光学部品の配置構成が実施例3と異なっている。具体的には、実施例3では室内に配されている2つの固定レンズleが真空チャンバ61の天面に配されており、窓としての機能も担っている。また、実施例1では室内に配されている2つの反射ミラーmr及びフォーカスレンズFleが、室外(真空チャンバ61の外部)に配されている。つまり、第2アライメントマークS2から第1光路OP1の少なくとも一部と重なる位置に至るように第2光路OP2を形成するための複数の光学部品は室外に配されている。
【0071】
第1光路OP1と、第2光路OP2と、これらの光路に配される各種光学部品の配置構成については、実施例3と同様である。
【0072】
以上のような構成を採用することで、本実施例においても、上記実施例3と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においては、移動可能に構成されるフォーカスレンズFle、及び、これを駆動するための駆動機構(不図示)が室外に配されるため、摩耗粉や潤滑剤などが真空チャンバ61内に飛散してしまうことを抑制できる利点もある。
【0073】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造装置及び方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0074】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図12(a)は有機EL表示装置50の全体図、図12(b)は1画素の断面構造を表している。
【0075】
図12(a)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施形態に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの組合せにより画素52が構成されている。画素52は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0076】
図12(b)は、図12(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、発光層56R、56G、56Bと、電子輸送層57と、第2電極(陰極)58と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層55、発光層56R、56G、56B、電子輸送層57が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層56Rは赤色を発する有機EL層、発光層56Gは緑色を発する有機EL層、発光層56Bは青色を発する有機EL層である。発光層56R、56G、56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bと共通で形成されていてもよいし、
発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極54と第2電極58とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0077】
図12(b)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極54と正孔輸送層55との間には第1電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0078】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0079】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極54が形成された基板53を準備する。
【0080】
第1電極54が形成された基板53の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0081】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層55は表示領域51よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0082】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板53の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層56Rを成膜する。本実施形態によれば、基板が搬送室1内の搬送ロボット(R)によって成膜クラスタに搬入される前に、アライメント室6で基板位置を大まかに調整するラフアライメントを行い、成膜装置20ではラフアライメントは行わず、ファインアライメントのみを行う。これによって、アライメント工程にかかる全体的な時間を大幅に短縮することができる。
【0083】
発光層56Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層56Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層56Bを成膜する。発光層56R、56G、56Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の発光層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0084】
電子輸送層57までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極58を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層60を成膜して、有機EL表示装置50が完成する。
【0085】
絶縁層59がパターニングされた基板53を成膜装置に搬入してから保護層60の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0086】
(その他)
上記実施例1~4においては、一つのカメラ301によって、基板Sに形成された2つのアライメントマークを撮影することで、これらの位置情報を得る構成を示した。しかしながら、本発明においては、一つのカメラによって、基板Sに形成された3つ以上のアライメントマークを撮影することで、これらの位置情報を得る構成も含まれる。なお、一つのカメラにより3つ以上のアライメントマークを撮影するためには、適宜、光学部品を配置することで、複数の光路を形成させればよい。また、本発明においては、基板Sに形成された複数のアライメントマークを撮影するために、2つ以上のカメラを設ける構成も採用し得る。例えば、4つのアライメントマークのうちの2つを一つのカメラで撮影し、残りの2つを別のカメラで撮影する構成も本発明に含まれる。
【0087】
また、上記実施形態においては、中継装置においてラフアライメントを行うための構成に対して本発明を適用する場合の例を説明した。しかしながら、本発明においては、真空チャンバ内において、基板の位置調整を行うことが必要な各種構成に対して適用し得る。例えば、本発明は、基板とマスクとのアライメントにも適用し得る。すなわち、真空チャンバ内において、マスクが予め定められた位置に正確に配置される場合には、マスクに対して基板を位置決めする際に、本発明を適用し得る。
【0088】
更に、上記実施形態においては、撮影されたアライメントマークの位置ずれ量を算出するための基準となる基準位置が、予め制御手段303のメモリー部305に記憶される場合の構成を示した。しかしながら、例えば、真空チャンバ内の所定の位置に基準位置となるマークを設けておき、アライメントの度に、カメラにより基準位置となるマークを撮影することで、基準位置とアライメントマークとの位置ずれ量を算出する構成も採用し得る。なお、コスト削減のため、基準位置となるマークの撮影も、アライメントマークを撮影するためのカメラを用いるのが望ましい。この場合、複数の基準となるマークの撮影もアライメントマークの撮影と同様の構成を採用することで、一つのカメラにより行うことが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1:搬送室 2:成膜室 3:マスク積載室 4:バッファ室 5:旋回室 6:アライメント室 20:成膜装置 101:クラスタ装置 102:クラスタ装置 200:真空チャンバ 210:基板保持ユニット 221:マスク台 230:冷却板 240:成膜源 250:基板Zアクチュエータ 251:クランプZアクチュエータ 252:冷却板Zアクチュエータ 261:(ファインアライメント用)カメラ 270:制御部 301:カメラ 302:基板ステージ 303:制御手段 304:画像処理部 305:メモリー部 306:底面 307:基板ステージ駆動機構 310:シャフト
320:第1光学部品 Fle:フォーカスレンズ M:マスク OP1:第1光路 OP2:第2光路 R:搬送ロボット R1:搬送ロボット S:基板 S1:第1アライメントマーク S2:第2アライメントマーク le:固定レンズ mr:反射ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12