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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138944
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】エキスパンド方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241002BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20241002BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H01L21/78 X
H01L21/68 F
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049677
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【テーマコード(参考)】
5F047
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F047FA75
5F063AA28
5F063AA31
5F063AA48
5F063CB05
5F063CB07
5F063CB29
5F063CC32
5F063DD25
5F063DD68
5F063DD73
5F063DD75
5F063DD85
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE31
5F063DE32
5F063DE33
5F063DE38
5F063DG21
5F063EE21
5F063EE48
5F063FF04
5F063FF05
5F063FF52
5F131AA04
5F131BA52
5F131BA54
5F131CA31
5F131KA11
5F131KA12
5F131KA14
5F131KA33
5F131KA51
5F131KB04
5F131KB05
5F131KB53
(57)【要約】
【課題】チップの分割や間隔拡大が適切に行われたかを確認できるエキスパンド方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ(11)を分割して複数のチップ(16)を製造するための分割溝または分割起点が形成されたウエーハを支持する支持シート(13)を拡張するエキスパンド方法において、支持シートを拡張してチップ同士の間隔を広げる拡張ステップと、直径方向に沿ったウエーハの両端でウエーハの外縁を検出する検出ステップと、検出ステップで検出された外縁の位置から拡張ステップの拡張量を算出し、良否を判定する判定ステップと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを分割して複数のチップを製造するための分割溝または分割起点が形成されたウエーハを支持する支持シートを拡張するエキスパンド方法であって、
該支持シートを拡張して該チップ同士の間隔を広げる拡張ステップと、
直径方向に沿った該ウエーハの両端で該ウエーハの外縁を検出する検出ステップと、
該検出ステップで検出された該外縁の位置から該拡張ステップの拡張量を算出し、良否を判定する判定ステップと、
を備えるエキスパンド方法。
【請求項2】
該判定ステップは、
該検出ステップの該外縁の位置から算出される拡張後のウエーハの直径と、拡張前のウエーハの直径とを比較することで該拡張量を算出し、該拡張量が所定の範囲内に入らない場合、不良と判定することを特徴とする、請求項1に記載のエキスパンド方法。
【請求項3】
該拡張ステップの実施前に、該ウエーハの外縁の位置を検出する事前検出ステップをさらに備え、
該判定ステップは、
該事前検出ステップの該外縁の位置と、該検出ステップの該外縁の位置とを比較することで該拡張量を算出し、該拡張量が所定の範囲内に入らない場合、不良と判定することを特徴とする、請求項1に記載のエキスパンド方法。
【請求項4】
該判定ステップにおいて不良と判定された場合、エラーを報知することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のエキスパンド方法。
【請求項5】
該判定ステップにおいて不良と判定された場合、
該拡張量が該所定の範囲の下限を超えない場合に該支持シートをさらに拡張する拡張量増加処理と、該拡張量が該所定の範囲の上限を超える場合に該支持シートの拡張を緩める拡張量低減処理と、の少なくとも一方を含む拡張量調整ステップを実施することを特徴とする、請求項2または3に記載のエキスパンド方法。
【請求項6】
該検出ステップは、
第1の方向における該ウエーハの直径に沿った両側の外縁の位置と、該第1の方向と直交する第2の方向における該ウエーハの直径に沿った両側の外縁の位置と、を検出し、
該判定ステップは、
該第1の方向において検出された拡張量と、該第2の方向において検出された拡張量と、の差が所定値以上である場合、不良と判定することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のエキスパンド方法。
【請求項7】
該検出ステップは、撮像ユニット、光センサ、超音波センサ、接触式センサ、のいずれかによって該ウエーハのエッジを検出することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のエキスパンド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを支持するシートを拡張するエキスパンド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のチップを製造する際に、分割予定ラインで区画された複数のデバイス領域を表面に有するウエーハをシートで支持してシートを拡張するエキスパンド方法を用いて、各デバイス領域に形成されたチップを分割したり、分割後のチップ間隔を広げたり、チップに貼着された接着フィルムを破断させたりすることが行われている。
【0003】
このようなエキスパンド方法で良好な結果を得るためには、拡張量(エキスパンド量)の過不足や不均一さを防いで適切な拡張量でシートを拡張する必要がある。例えば、特許文献1には、ウエーハ上の個々のデバイス領域が長方形であり、長方形の長辺方向と短辺方向でシートの伸びやすさが異なることに着目して、長軸部と短軸部を有する楕円の開口を備えた治具を用いて、シートの拡張量を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-072139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エキスパンド方法におけるシートの拡張には様々な要素が関係しており、チップの形状やシートの性質によっては、特許文献1のような対策だけでは、拡張量に過不足が生じたり、拡張量が不均一になったりするおそれがある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、チップの分割や間隔拡大が適切に行われたかを確認できるエキスパンド方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のエキスパンド方法は、ウエーハを分割して複数のチップを製造するための分割溝または分割起点が形成されたウエーハを支持する支持シートを拡張するエキスパンド方法であって、該支持シートを拡張して該チップ同士の間隔を広げる拡張ステップと、直径方向に沿った該ウエーハの両端で該ウエーハの外縁を検出する検出ステップと、該検出ステップで検出された該外縁の位置から該拡張ステップの拡張量を算出し、良否を判定する判定ステップと、を備える。
【0008】
該判定ステップは、該検出ステップの該外縁の位置から算出される拡張後のウエーハの直径と、拡張前のウエーハの直径とを比較することで該拡張量を算出し、該拡張量が所定の範囲内に入らない場合、不良と判定する。
【0009】
該拡張ステップの実施前に、該ウエーハの外縁の位置を検出する事前検出ステップをさらに備え、該判定ステップは、該事前検出ステップの該外縁の位置と、該検出ステップの該外縁の位置とを比較することで該拡張量を算出し、該拡張量が所定の範囲内に入らない場合、不良と判定する。
【0010】
該判定ステップにおいて不良と判定された場合、エラーを報知する。
【0011】
該判定ステップにおいて不良と判定された場合、該拡張量が該所定の範囲の下限を超えない場合に該支持シートをさらに拡張する拡張量増加処理と、該拡張量が該所定の範囲の上限を超える場合に該支持シートの拡張を緩める拡張量低減処理と、の少なくとも一方を含む拡張量調整ステップを実施する。
【0012】
該検出ステップは、第1の方向における該ウエーハの直径に沿った両側の外縁の位置と、該第1の方向と直交する第2の方向における該ウエーハの直径に沿った両側の外縁の位置と、を検出し、該判定ステップは、該第1の方向において検出された拡張量と、該第2の方向において検出された拡張量と、の差が所定値以上である場合、不良と判定する。
【0013】
該検出ステップは、撮像ユニット、光センサ、超音波センサ、接触式センサ、のいずれかによって該ウエーハのエッジを検出する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエキスパンド方法によれば、拡張後に直径方向に沿ったウエーハの両端でウエーハの外縁を検出して拡張ステップの拡張量を算出し、良否を判定することによって、チップの分割や間隔拡大が適切に行われたかを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ウエーハユニットの斜視図である。
図2】拡張ステップを示す図である。
図3】拡張ステップ及び第1検出ステップを示す図である。
図4】弛緩ステップを示す図である。
図5】収縮ステップを示す図である。
図6】収縮ステップ後の第2検出ステップを示す図である。
図7】エキスパンド方法の流れを示すフローチャートである。
図8】検出ステップでのウエーハの検出領域を示す図である。
図9】シートマウンタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すウエーハユニット10は、ウエーハ11と、接着フィルム12と、支持シート13と、リングフレーム14と、によって構成されている。
【0017】
ウエーハ11は、例えば半導体ウエーハなどである。ウエーハ11の表面側は、格子状の分割予定ライン15によって複数のデバイス形成領域に区画されており、各デバイス形成領域にチップ16が形成されている。チップ16は、例えば、IC(Integrated Circuit)などの電子デバイスである。ウエーハ11の外縁の一部には、ウエーハ11の結晶方位を示すマークであるノッチ17が形成されている。なお、ウエーハ11の材質やチップ16の種類は限定されない。また、本実施形態のウエーハ11は円板状であるが、後述する拡張量を算出可能であればウエーハの形状は限定されない。
【0018】
ウエーハ11の裏面には、ウエーハ11よりも直径が大きい円形状の接着フィルム12が貼着されている。接着フィルム12は、例えば、DAF(Die Attach Film)と呼ばれるフィルム状の接着剤である。接着フィルム12は、所定の外的刺激(熱、光など)によって硬化する性質を有し、ウエーハ11を分割して得られる各チップ16を、接着フィルム12を介して所定の固定対象に固定することができる。
【0019】
支持シート13は、接着フィルム12に対してウエーハ11とは反対側の面に貼着されている。支持シート13は、伸縮可能なシートであり、所定の外力を加えて拡張させることができる。
【0020】
リングフレーム14は金属製の環状部材であり、リングフレーム14の内側には開口が形成されている。リングフレーム14の開口の径はウエーハ11の外径よりも大きい。
【0021】
支持シート13は、接着フィルム12よりも面積が大きく、リングフレーム14の開口を塞ぎ、外縁部分がリングフレーム14に貼着される。ウエーハ11は、接着フィルム12及び支持シート13を介してリングフレーム14に支持されて、リングフレーム14の開口内に位置する。ウエーハ11の外縁とリングフレーム14の内縁は径方向に離れており、ウエーハ11とリングフレーム14の間の径方向領域を支持シート13が塞いで、ウエーハユニット10が構成される。支持シート13において、ウエーハ11の外縁とリングフレーム14の内縁との間の径方向領域を露出領域131とする。
【0022】
ウエーハユニット10を後述するエキスパンド装置20にセットし、支持シート13を拡張させることによって、複数のチップ16の分割、複数のチップ16の間隔の拡大、各チップ16間での接着フィルム12の破断、などを行なわせる。
【0023】
支持シート13の拡張によって複数のチップ16を分割する場合、ウエーハ11には、分割予定ライン15に沿って分割起点が形成されている。分割起点を形成する加工として、レーザー加工や切削加工を用いることができる。レーザー加工の一例として、ウエーハ11の厚みの内部に集光点を合わせてレーザー光線を照射し、分割予定ライン15に沿って脆弱性の改質層を形成する。切削加工の一例として、分割予定ライン15に沿って所定の深さのハーフカット溝(有底溝)を形成するハーフカットを行う。レーザー加工で形成された改質層や切削加工で形成されたハーフカット溝が分割起点となる。そして、支持シート13の拡張によって、分割起点に沿ってウエーハ11が分割される。なお、分割起点を形成する加工は、上記の例には限定されない。
【0024】
支持シート13の拡張によって分割後の複数のチップ16の間隔を拡大させる場合、ウエーハ11には分割予定ライン15に沿って分割溝が形成されており、複数のチップ16に分割されている。そして、支持シート13の拡張によって、分割溝の幅が広げられる。
【0025】
支持シート13の拡張によって各チップ16間での接着フィルム12の破断を行わせる場合、上記のチップ16の分割と同時に接着フィルム12の破断を行わせてもよいし、上記のチップ16の間隔を拡大させるのと同時に接着フィルム12の破断を行わせてもよい。
【0026】
なお、後述する本実施形態のエキスパンド装置20は、リングフレーム14を保持した状態で支持シート13を下方から突き上げて拡張を行う構成であるが、支持シート13の両面を挟持してウエーハ11の径方向に引っ張って拡張する構成のエキスパンド装置にも適用が可能である。この構成のエキスパンド装置を用いる場合、リングフレーム14は不要である。また、接着フィルム12を介さずに支持シート13上にウエーハ11を支持することも可能である。従って、本発明のエキスパンド方法では、接着フィルムやリングフレームは必須の要素ではなく、ウエーハとエキスパンドシートだけの状態で拡張を行うことも可能である。
【0027】
図2から図6を参照してエキスパンド装置20を説明する。エキスパンド装置20は、ウエーハユニット10の支持シート13を拡張して、チップ16同士の間隔を広げる装置である。本発明においてチップ16同士の間隔を広げることは、未分割のウエーハ11を複数のチップ16に分割させたり、既に分割されている複数のチップ16の間隔を拡大させたりすることのいずれも含む。
【0028】
エキスパンド装置20は、制御ユニット21によって統括制御される。制御ユニット21は、エキスパンド装置20の各部を制御するための信号を生成する処理部(プロセッサ)と、処理部において用いられる各種情報を記憶する記憶部と、を有する。処理部は、記憶部に記憶したプログラムを読み出して実行することにより、後述するエキスパンド装置20の各部の動作を制御する。
【0029】
エキスパンド装置20はフレーム支持部22を備える。フレーム支持部22は、上下方向に延びる仮想の中心軸Pを囲む構造の環状の台座であり、フレーム支持部22の中央には上下方向に貫通する開口部23が形成されている。エキスパンド装置20に搬送されたウエーハユニット10は、ウエーハ11を上方に向けた状態で、フレーム支持部22の上面にリングフレーム14が載置される。フレーム押さえ部24によってリングフレーム14を上方から押さえて、フレーム支持部22とフレーム押さえ部24とによってリングフレーム14を挟持することによって、ウエーハユニット10を固定する。フレーム支持部22とフレーム押さえ部24との間には、リングフレーム14に加えて支持シート13の外縁付近も挟持される。フレーム押さえ部24は、フレーム支持部22に対して水平方向の軸を中心として回動可能に支持されたクランプや、フレーム支持部22に対して上下方向に移動可能に支持された昇降板など、任意の構造を適用することが可能である。
【0030】
エキスパンド装置20に搬送されたウエーハユニット10は、ウエーハ11の中心が中心軸P上に位置するように、フレーム支持部22及びフレーム押さえ部24によってリングフレーム14が支持される。このウエーハユニット10の支持状態では、ウエーハ11、接着フィルム12及び支持シート13(露出領域131)が開口部23の直上に位置している。
【0031】
開口部23の下方に設けた基台25に対して、保持テーブル26が昇降駆動部27を介して支持されている。昇降駆動部27は、モータやエアシリンダの駆動力によって、保持テーブル26を上下方向に昇降動作させる。
【0032】
保持テーブル26は、ポーラスセラミックスなどの多孔質材で形成されており、吸引路を介して吸引源28に通じている。吸引源28を動作させて、吸引路の途中に設けた開閉弁29を開くことによって、保持テーブル26の上面に吸引力を作用させることができる。
【0033】
保持テーブル26の外周に複数のローラー30が環状に配置されている。個々のローラー30は、水平方向に延在する軸を中心として回動可能に支持されている。また、保持テーブル26に対してローラー30を上下方向に昇降移動させるローラー昇降機構37を備えている。ローラー昇降機構37は、個々のローラー30を個別に昇降動作させる。あるいは、ローラー昇降機構37は、所定の位置関係にある複数のローラー30(例えば、保持テーブル26の直径方向に並ぶ一対のローラー30)をグループごとにまとめて昇降移動させる。
【0034】
保持テーブル26と複数のローラー30とによって拡張ユニット31が構成されている。拡張ユニット31は、フレーム支持部22の内側で、フレーム支持部22と同軸となる位置に配置されている。拡張ユニット31の直径は、フレーム支持部22における開口部23の内径(リングフレーム14の内径)よりも小さく、ウエーハ11の外径よりも大きい。そして、複数のローラー30は、支持シート13の露出領域131の下方に位置する。
【0035】
フレーム支持部22の上方に支持プレート32が配置されている。支持プレート32は、概ねフレーム支持部22の開口部23を覆う大きさの円板であり、回転駆動部33によって支持されている。回転駆動部33は、モータの駆動力によって、中心軸Pを中心として支持プレート32を回転動作させる。また、支持プレート32は、上下方向に昇降移動可能に構成されていてもよい。
【0036】
支持プレート32の下面にヒーター34が支持されている。支持プレート32の周方向に位置を異ならせて複数のヒーター34が配置されており、各ヒーター34は支持シート13の露出領域131の上方に位置する。ヒーター34はコイルヒーターなどの熱源を内蔵しており、熱源で温めた温風を下方に向けて噴射する。
【0037】
支持プレート32の下面にはさらに、検出ユニット35が設けられている。検出ユニット35は、ヒーター34よりも支持プレート32の径方向の中心寄りに位置している。検出ユニット35は、撮像ユニット、光センサ、超音波センサ、接触式センサなどで構成された検出部を備えており、検出ユニット35の下方でフレーム支持部22及びフレーム押さえ部24によって支持されたウエーハユニット10の所定箇所を検出することができる。
【0038】
より詳しくは、検出ユニット35は、ウエーハユニット10が備えるウエーハ11のエッジを検出してエッジに関する情報を取得し、ウエーハ11の外縁の位置を検出することができる。例えば、検出ユニット35として撮像ユニットを用いる場合、撮像ユニットで撮像したデータを画像処理し、画像内のコントラストなどの情報からウエーハ11のエッジを検出する。回転駆動部33によって支持プレート32を回転させることによって、検出ユニット35の位置がウエーハ11の周方向に変化して、ウエーハ11における任意の箇所の外縁を検出できる。
【0039】
なお、支持プレート32の周方向に位置を異ならせて複数の検出ユニット35を備えてもよい。複数の検出ユニット35で同時に検出を行うことにより、後述する検出ステップを効率的に行うことができる。
【0040】
また、エキスパンド装置20が、直径の異なる複数種のウエーハ11のエキスパンド処理に対応している場合、直径の異なるウエーハ11の外縁を検出するために、支持プレート32の径方向に位置を異ならせて複数の検出ユニット35を設けたり、支持プレート32の径方向に移動可能に検出ユニット35を構成したりしてもよい。
【0041】
エキスパンド装置20は、報知部36を備えている。報知部36は、視覚による情報報知を行う表示モニタや表示灯、音声による情報報知を行うスピーカーなどによって構成されており、エキスパンド装置20を操作するオペレーターに情報を知らせることができる。また、報知部36は別の通信機器に情報を通達する構成になっていてもよい。
【0042】
続いて、エキスパンド装置20を用いて行う本実施形態のエキスパンド方法について説明する。図2から図6は本実施形態のエキスパンド方法の各ステップの状態を示しており、図7は本実施形態のエキスパンド方法の流れを示している。以下の説明において、制御の主体が明示されていない場合、制御ユニット21の制御によって処理や判定が実行されるものとする。なお、以下の実施形態は一例であり、一部のステップを省略するなどの変形例を適用することも可能である。変形例については後述する。
【0043】
まず、エキスパンド装置20にウエーハユニット10を搬送して、フレーム支持部22及びフレーム押さえ部24によってリングフレーム14を挟持してウエーハユニット10を支持する。この状態で、ウエーハ11の中心が中心軸P上に位置し、検出ユニット35の下方にウエーハ11の外縁が位置する。
【0044】
<事前検出ステップ>
ウエーハ11の拡張を行う前に、ウエーハ11の外縁の位置を検出ユニット35によって検出する事前検出ステップを行う。事前検出ステップでは、後述する第1検出ステップ及び第2検出ステップで検出を行う領域と同じ検出領域(直径方向に沿ったウエーハ11の両端)でウエーハ11の外縁の位置を検出し、検出した外縁の位置を制御ユニット21の記憶部に記憶する。
【0045】
なお、事前検出ステップを行わずに、ウエーハ11の直径の寸法データを事前に入力して制御ユニット21の記憶部に記憶させてもよい。
【0046】
<拡張ステップ>
事前検出ステップの実施後に、支持シート13を拡張してウエーハ11上の複数のチップ16同士の間隔を広げる拡張ステップを行う。なお、拡張ステップにおいてチップ16同士の間隔を広げることは、既に分割溝で分割された状態にある複数のチップ16の間隔を拡大させる場合と、分割予定ライン15(分割起点)に沿って複数のチップ16を分割させる場合、の両方を含んでいる。また、拡張ステップでは、チップ16の間隔を広げることに伴って、接着フィルム12を破断させてもよい。
【0047】
拡張ステップでは、図2に示すように、昇降駆動部27の駆動により拡張ユニット31を上昇させ、保持テーブル26とローラー30を下方から支持シート13に接触させて突き上げる。支持シート13のうちウエーハ11を支持する中央部分を保持テーブル26が突き上げ、支持シート13の露出領域131を複数のローラー30が突き上げる(図3参照)。支持シート13の外縁部分はリングフレーム14と共にフレーム支持部22及びフレーム押さえ部24によって挟持されているため、突き上げに伴って支持シート13が径方向に拡張される。支持シート13の拡張に伴って、支持シート13が貼着されているウエーハ11に対しても径方向に拡張する力が作用し、複数のチップ16同士の間隔が広がる。
【0048】
<第1検出ステップ>
拡張ステップの実施後に、拡張後のウエーハ11の外縁を検出する第1検出ステップを行う。図3に示すように、第1検出ステップでは、拡張ユニット31によって支持シート13を突き上げた状態で、検出ユニット35を支持する支持プレート32を回転させ、複数の検出領域で検出ユニット35によってウエーハ11の外縁を検出する。直径方向に沿ったウエーハ11の両端(両側)で外縁を検出し、検出したウエーハ11の両端の外縁の位置を、先の事前検出ステップで検出した拡張前のウエーハ11の直径方向の両端(両側)の外縁の位置と比較することにより、当該直径方向でのウエーハ11の拡張量を算出することができる。
【0049】
なお、事前検出ステップで検出したウエーハ11の外縁の位置ではなく、予め制御ユニット21に入力されている拡張前のウエーハ11の直径の寸法データを比較対象として、ウエーハ11の拡張量を算出することもできる。具体的には、第1検出ステップで検出されたウエーハ11の直径方向の両端の外縁の位置からウエーハ11の直径を算出し、制御ユニット21の記憶部に予め記憶させていた拡張前のウエーハ11の直径の値と比較することによって、ウエーハ11の拡張量を算出できる。この場合、事前検出ステップを省略できる。
【0050】
第1検出ステップで検出するウエーハ11の外縁の検出領域の例を図8に示した。ウエーハ11上では格子状の分割予定ライン15で区画された複数の長方形のデバイス形成領域にそれぞれチップ16が形成されている。長方形のデバイス形成領域の長辺方向に沿う第1の方向における第1の直径Daの両端の検出領域Ea及び検出領域Faと、長方形のデバイス領域の短辺方向に沿う第2の方向における第2の直径Dbの両端の検出領域Eb及び検出領域Fbとの4箇所を、少なくとも検出することが好ましい。第1の直径Daが延在する第1の方向と、第2の直径Dbが延在する第2の方向は、互いに直交している。
【0051】
円形のウエーハ11上に長方形のデバイス領域を形成する場合、長辺方向に沿う第1の直径Daにおける分割予定ライン15の数と、短辺方向に沿う第2の直径Dbにおける分割予定ライン15の数とが異なり、これらの分割予定ライン15の数の違いに応じて、支持シート13を拡張した際のウエーハ11の直径の変化量が異なりやすい。つまり、分割予定ライン15の数が多い第2の直径Dbの方が、分割予定ライン15の数が少ない第1の直径Daよりも、支持シート13が伸びやすい傾向になる。従って、拡張量に差が生じやすいこれらの2つの方向の直径Da、Dbの両端である4箇所(Ea、Eb、Fa、Fb)を検出領域に含めることによって、精度の高い検出結果を得ることができる。
【0052】
本実施形態のウエーハ11は、結晶方位を示すマークであるノッチ17が検出領域Fbに含まれている。この場合、検出領域Fbにおいては、V字状のノッチ17の縁をウエーハ11の外縁として検出してもよいし、ノッチ17を形成しない場合のウエーハ11の円形の外縁形状を仮想的に算出して検出してもよい。
【0053】
結晶方位を示すマークとして、直線状のオリエンテーションフラットが形成されているウエーハにおいても同様に、検出領域にオリエンテーションフラットが含まれている場合には、オリエンテーションフラットの縁をウエーハの外縁として検出してもよいし、オリエンテーションフラットを形成しない場合のウエーハの外縁の円形の外縁形状を仮想的に算出して検出してもよい。
【0054】
なお、結晶方位を示すマークを含まない領域でウエーハの外縁を検出するように、ウエーハの両端の外縁位置を検出する直径の向きを変更することも可能である。例えば、図8において、検出領域Fbがノッチ17を含まないように第2の直径Dbの向きを変更してもよい。長方形のデバイス形成領域の長辺方向や短辺方向に対して傾いた(非平行な)向きの直径の両端でウエーハ11の外縁を検出した場合にも、当該直径方向での支持シート13の拡張量を算出できる。
【0055】
また、図8の例では、ウエーハ11の外縁を4箇所で検出しているが、さらに多くの箇所(互いに向きが異なる3本以上の直径の両端)で検出を行ってもよい。検出箇所の数が多くなるほど、支持シート13の拡張に関する情報量が多くなり、精度の高い検出を実現できる。
【0056】
<第1判定ステップ>
第1検出ステップの実施後に、支持シート13の拡張量を算出し、良否を判定する第1判定ステップを行う。第1判定ステップでは、第1検出ステップでの検出結果と、第1検出ステップの前に取得されている拡張前のウエーハ11に関する情報(拡張前のウエーハ11の外縁の位置、あるいは拡張前のウエーハ11の直径)と、を用いて拡張量を算出する。
【0057】
事前検出ステップを行った場合は、事前検出ステップで検出した拡張前のウエーハ11の直径方向の両端の外縁の位置と、第1検出ステップで検出した拡張後のウエーハ11の直径方向の両端の外縁の位置と、を比較して拡張量を算出して、第1判定ステップを行う。
【0058】
事前検出ステップを行わない場合は、予め制御ユニット21の記憶部に記憶させた拡張前のウエーハ11の直径と、第1検出ステップで検出した拡張後のウエーハ11の外縁の位置から算出されるウエーハ11の直径と、を比較して拡張量を算出して、第1判定ステップを行う。
【0059】
第1判定ステップでは、算出した拡張量が所定の範囲内に入っている場合に、制御ユニット21は適正な拡張が行われたと判定(良判定)し、算出した拡張量が所定の範囲内から外れている場合に、制御ユニット21は適正な拡張が行われていない不良状態であると判定(不良判定)する。判定の基準とする所定の範囲は、下限と上限の両方にしきい値を設定してもよいし、下限と上限の一方のしきい値だけを設定してもよい。下限のしきい値を設定した場合、算出した拡張量が下限のしきい値を超えない場合に不良(拡張が不足している)と判断する。上限のしきい値を設定した場合、算出した拡張量が上限のしきい値を超えた場合に不良(拡張が過大である)と判断する。
【0060】
例えば、拡張前のウエーハ11の直径がXmmであり、拡張後のウエーハ11の直径の目標値がXmm+4mmであるとする。第1条件として、拡張後のウエーハ11の直径の下限値をXmm+3mm、上限値をXmm+5mmと設定する。つまり、拡張後のウエーハ11の直径の条件をXmm+3mm以上、Xmm+5mm以下と設定する。また、第2条件として、第1の直径Daと第2の直径Dbの差が2mm以下と設定する。第1条件又は第2条件を満たさない場合、制御ユニット21は拡張量が不良であると判定する。
【0061】
第1判定ステップで拡張量の良否を判定した結果、不良であると判定された場合、制御ユニット21は報知部36にエラー報知を行わせる。
【0062】
<拡張量調整ステップ>
第1判定ステップで拡張量が不良であると判定された場合、報知部36でエラー報知を行うことに加えて、拡張量調整ステップを行って拡張量の調整を行うことができる。
【0063】
拡張量が下限のしきい値を超えていないと判定した場合には、ローラー30(拡張ユニット31)をさらに上昇させる拡張量増加処理を行う。例えば、上記の第1条件に関して、拡張後のウエーハ11の直径がXmm+3mm以下であった場合、ローラー30(拡張ユニット31)を1mm上昇させる。拡張量増加処理でのローラー30の上昇量は、事前に設定した任意の値である。ローラー30(拡張ユニット31)の上昇によってウエーハ11の拡張量が増大する。
【0064】
拡張量が上限のしきい値を超えたと判定した場合には、ローラー30(拡張ユニット31)を下降させる拡張量低減処理を行う。例えば、上記の第1条件に関して、拡張後のウエーハ11の直径がXmm+5mm以上であった場合、ローラー30(拡張ユニット31)を1mm下降させる。拡張量低減処理でのローラー30の下降量は、事前に設定した任意の値である。ローラー30(拡張ユニット31)の下降によってウエーハ11の拡張量が減少する。
【0065】
また、上記の第2条件に関して、第1の直径Daと第2の直径Dbの差が2mm以上の場合、拡張量(伸び)が大きい方の直径に対応する位置のローラー30を下降させることと、拡張量(伸び)が小さい方の直径に対応する位置のローラー30を上昇させること、の少なくとも一方を行う。保持テーブル26の周方向に並ぶ複数のローラー30を個別又は所定のグループごとに昇降させるローラー昇降機構37を用いることによって、このような拡張量の不均一を補正する形態の調整を行うことができる。
【0066】
第1条件と第2条件の両方を満たさないと判定された場合、上記の各調整を事前に設定した通りに組み合わせて実施させる。
【0067】
拡張量調整ステップの実施後に、再び第1検出ステップと第1判定ステップを実施して、拡張量の良否を判定する。拡張量調整ステップを所定回(1回以上の任意の数)行っても、第1判定ステップで拡張量が不良であると判定される場合には、それ以上の拡張量調整ステップを行わずに、報知部36でのエラー報知だけを行うように制御してもよい。
【0068】
<吸引保持ステップ>
第1判定ステップで拡張量が所定の範囲内であると判定(良判定)されたら、吸引源28を動作させて開閉弁29を開き、保持テーブル26の上面に吸引力を作用させる。これにより、支持シート13の中央部分及びウエーハ11が保持テーブル26の上面に吸引保持され、拡張後のチップ16同士の間隔が縮まらないように維持される。
【0069】
<弛緩ステップ>
吸引保持ステップの実施後に、弛緩ステップを行う。図4に示すように、弛緩ステップでは、昇降駆動部27を動作させて拡張ユニット31を下降させる。拡張ユニット31が下降すると、拡張ユニット31による支持シート13の突き上げが解消され、支持シート13を拡張させる力が解除される。ウエーハ11を支持している支持シート13の中央部分は保持テーブル26に吸引保持されていて拡張後の状態(拡張後のチップ16同士の間隔)を維持している。これに対し、ウエーハ11よりも外周の露出領域131は、保持テーブル26に吸引されないフリーな状態でローラー30からの突き上げを受けなくなるので、露出領域131が弛緩する。
【0070】
<収縮ステップ>
弛緩ステップの実施後に、収縮ステップを行う。図5に示すように、収縮ステップでは、回転駆動部33によって支持プレート32を回転させ、ヒーター34から温風を下方に向けて噴射する。すると、温風で加熱された支持シート13の露出領域131が熱収縮して弛みが減少する。支持プレート32を回転させながらヒーター34から温風を噴射することにより、周方向の全体で支持シート13の露出領域131をムラなく加熱することができる。また、ヒーター34は露出領域131よりも内側の領域を加熱しないように指向性をもって温風を噴射するので、ウエーハ11が貼着されている領域では支持シート13の熱収縮による変形が抑制され、拡張後の適切なチップ16同士の間隔を維持できる。
【0071】
<第2検出ステップ>
収縮ステップの実施後に、ウエーハ11の外縁を検出する第2検出ステップを行う。図6に示すように、第2検出ステップでは、拡張ユニット31が下降していて支持シート13の突き上げを行っていない状態で、検出ユニット35を保持する支持プレート32を回転させ、複数の検出領域で検出ユニット35によってウエーハ11の外縁を検出する。第2検出ステップで検出するウエーハ11の外縁の検出領域は、先に説明した第1検出ステップでの検出領域と同様の箇所に設定される(図8参照)。
【0072】
<第2判定ステップ>
第2検出ステップの実施後に、支持シート13の拡張量を算出し、良否を判定する判定ステップを行う。第2判定ステップでは、第2検出ステップでの検出結果と、拡張前のウエーハ11に関する情報(拡張前のウエーハ11の外縁の位置、あるいは拡張前のウエーハ11の直径)と、を用いて拡張量を算出する。そして、算出した拡張量の良否を判定する。この第2判定ステップにおける拡張量の算出及び拡張量の判定は、第1判定ステップにおいて説明した方法と同様に行われるので、詳細な説明を省略する。
【0073】
なお、第2判定ステップで判定の基準として用いる所定の範囲を定めるしきい値は、第1判定ステップと同じしきい値であってもよいし、第1判定ステップとは異なるしきい値であってもよい。例えば、第1判定ステップの後に行われる弛緩ステップや収縮ステップの際にウエーハ11の拡張量が僅かに変化することが想定される場合は、その変化分を見込んで、第2判定ステップで参照する所定の範囲を定めるしきい値(下限値や上限値)を、第1判定ステップでのしきい値から変更してもよい。
【0074】
弛緩ステップ及び収縮ステップは、拡張量の変化を防ぐために、拡張後のウエーハ11を保持テーブル26に吸引保持しながら行われる。しかし、弛緩ステップや収縮ステップにおいてウエーハ11の拡張量に僅かな変化が生じる可能性がある。
【0075】
例えば、ウエーハ11を支持する支持シート13のウエーハ11の領域にヒーター34の温風がかかるなどして、支持シート13において露出領域131よりも内側で収縮が進行するおそれがある。この場合、拡張ステップの直後よりもウエーハ11の拡張量が小さくなる原因となる。
【0076】
あるいは、収縮ステップにおいて支持シート13の露出領域131の収縮が不十分であり、露出領域131に多少の弛みが残る可能性がある。この場合、露出領域131に残る弛みが支持シート13の中央領域に影響して、チップ間隔にばらつきが発生し、拡張ステップの直後よりもウエーハ11の拡張量がばらつく原因となる。
【0077】
あるいは、弛緩ステップにおいて保持テーブルの26の吸引がリークする、または吸引保持力が不十分であれば、ウエーハ11が貼着されている領域の支持シート13が収縮する方向に戻ってしまい、収縮ステップ後に拡張量が減少してしまう変化が生じる可能性がある。
【0078】
収縮ステップの実施後に第2検出ステップを行い、第2判定ステップで拡張量の良否を判定することによって、以上のような拡張ステップ後に生じ得るウエーハ11の拡張量の変化を検出することができる。また、第1検出ステップと第2検出ステップで2回の検出を行うことにより、ウエーハ11の拡張量の良否を判定する精度が向上する。
【0079】
第2判定ステップで拡張量の良否を判定した結果、不良であると判定された場合、制御ユニット21は報知部36にエラー報知を行わせる。第1判定ステップとの違いとして、収縮ステップで支持シート13の露出領域131を収縮させた後であり、支持シート13の拡張量の再調整が難しい状態であるため、第2判定ステップで不良判定がなされた場合には、拡張量調整ステップを行わずにエラー報知のみを行う。
【0080】
第1判定ステップ(拡張量調整ステップを実施しても良判定にならなかった場合を含む)や第2判定ステップで不良判定されたウエーハユニット10は、エキスパンド装置20から搬出されてから次の加工工程に進まないように処理される。次の加工工程とは、例えば、ダイボンダー装置において、個片化された各チップ16を支持シート13からピックアップする工程などである。拡張後のチップ16同士が適切な間隔ではない場合、そもそもチップ16に分割されないことが発生したり、チップ16には分割されているもののエキスパンド装置20からの搬出時にウエーハユニット10上の複数のチップ16が相互に干渉してエッジチッピングが発生したり、ダイボンダー装置でチップ16を適切にピックアップできずに作業が停止したりする。従って、チップ間隔が所定の品質基準を満たさないウエーハ11をエキスパンド装置20において確実に検出して、次の加工工程に進まないように除外することは、以降のチップ製造工程を効率的に行うために非常に有用である。
【0081】
各判定ステップで拡張量が不良であると判定された場合、報知部36でエラー報知が行われるので、エラー報知を受けたオペレーターが、不良判定されたウエーハユニット10を次の加工工程に進ませずに回収するように所定の操作を行う。あるいは、エキスパンド装置20の制御ユニット21が、付随する搬送装置の動作を処理して、不良判定されたウエーハユニット10を自動的に所定の回収場所に搬送するように制御してもよい。
【0082】
<フィードバックステップ>
エキスパンド装置20で行われるエキスパンド方法は以上に説明した通りであるが、以上のエキスパンド方法において検出及び算出したウエーハ11の拡張量に関するデータをフィードバックするフィードバックステップを実施してもよい。
【0083】
例えば、拡張量の目標値に対するウエーハ11の実際の拡張量のずれや、ウエーハ11上での拡張量の不均一さなどのデータを、ダイボンダー装置で行うチップ16のピックアップ工程にフィードバックすることができる。これにより、高精度で迅速なチップ16のピックアップを行うことが可能になる。
【0084】
また、拡張量の目標値に対するウエーハ11の実際の拡張量のずれや、ウエーハ11上での拡張量の不均一さなどのデータを、エキスパンド装置20が次のロットのウエーハユニット10を拡張する際の拡張ステップの条件設定(拡張ユニット31やローラー30の突き上げ量など)に反映させて拡張の精度を向上させることができる。
【0085】
また、フィードバックステップの一態様として、ウエーハ11及びリングフレーム14に支持シート13を貼着するシートマウンタでのテンション調整に反映することが可能である。
【0086】
図9に示すシートマウンタ40は、送り出しロール41と、固定ローラー42と、貼着ローラー43と、一対の剥離ローラー44と、巻き取りロール45と、を備えている。これらの各ロール及び各ローラーは、図9の紙面に垂直な軸を中心として回転可能に支持されている。支持シート13は送り出しロール41に巻回されており、送り出しロール41から送り出された支持シート13は、固定ローラー42に案内されて貼着ローラー43に導かれ、貼着ローラー43の外面に沿って向きを代えて一対の剥離ローラー44に向かい、一対の剥離ローラー44の間を通って、巻き取りロール45により巻き取られる。
【0087】
貼着ローラー43と一対の剥離ローラー44の下方に保持テーブル46を備える。保持テーブル46上にウエーハ11とリングフレーム14が載置される。貼着ローラー43は、保持テーブル46上に載置されたウエーハ11及びリングフレーム14の厚み分の間隔を空けて、保持テーブル46の上面に対向しており、支持シート13の搬送方向Qへ移動することが可能である。一対の剥離ローラー44も支持シート13の搬送方向Qへ移動することが可能である。
【0088】
シートマウンタ40で支持シート13を貼着する際には、貼着の前に、巻き取りロール45を巻き取り方向に回転させて支持シート13に所定のテンションを持たせた状態にする。この状態で、貼着ローラー43を搬送方向Qに移動させる。すると、図9に二点鎖線で示すように、支持シート13がウエーハ11及びリングフレーム14に押し付けられて支持シート13が貼着される。ウエーハ11及びリングフレーム14は支持シート13を介して一体化される。
【0089】
ウエーハ11及びリングフレーム14に支持シート13が貼着されたら、上方に待機しているカッターユニット47を下降させ、カッターユニット47が備えるシートカッター48をリングフレーム14の裏側で支持シート13に接触させる。シートカッター48は、回転軸49を中心として回転可能な旋回アーム50により支持されている。モータによって旋回アーム50を回転動作させることによって、シートカッター48が支持シート13を円形に切断する。その結果、上記のウエーハユニット10が完成する。
【0090】
続いて、一対の剥離ローラー44を支持シート13の搬送方向Qへ往復移動させて、シートカッター48によって切断された支持シート13の残り部分(ウエーハ11及びリングフレーム14に貼着されなかった部分)をリングフレーム14から剥離させる。同時に、巻き取りロール45を回転させて使用済みの支持シート13を巻き取りロール45に巻き取り、未使用の支持シート13を送り出しロール41から引き出す。
【0091】
以上のように動作するシートマウンタ40では、貼着前の巻き取りロール45の巻き取り方向への回転量を変更することで、ウエーハ11及びリングフレーム14に貼着された状態での支持シート13のテンションを変更できる。シートマウンタ40で支持シート13のテンションを高くして貼着すると、エキスパンド装置20で拡張する際に、支持シート13が拡張しやすく拡張量が大きくなる。逆に、シートマウンタ40で支持シート13のテンションを低くして貼着すると、エキスパンド装置20で拡張する際に、緩みを解消してから支持シート13が伸びるので、支持シート13が拡張しにくく拡張量が小さくなる。
【0092】
従って、エキスパンド装置20の拡張ステップで支持シート13の伸びやすさを変更したい場合は、検出ステップ(第1検出ステップ、第2検出ステップ)で検出したウエーハ11の拡張量に関するデータをシートマウンタ40にフィードバックする。そして、シートマウンタ40において支持シート13をウエーハ11に貼着する際の搬送方向Qのテンションを変更することで、搬送方向Qでの支持シート13の伸びやすさを変更できる。
【0093】
なお、フィードバックステップは必須ではなく、図7のフローチャートにおいてフィードバックステップを実施せずに一連の処理を完了してもよい。
【0094】
以上に説明した通り、本実施形態のエキスパンド方法によれば、ウエーハ11の拡張によってチップ16の分割や間隔拡大が適切に行われたかを確認できる。拡張ステップや収縮ステップの後に、検出ユニット35を用いてウエーハ11の直径方向に沿った両端で外縁を検出して拡張量を算出及び判定するので、分割予定ライン15に沿う複数の分割溝(カーフ)の広がり状態を個別に検出するのに比べて手間がかからず、比較的シンプルな構成の装置を用いて短時間で検出及び判定を実施できるという利点がある。
【0095】
また、ウエーハ11の外縁を検出する複数の検出領域(ウエーハ11の直径の方向)を適宜選択することにより、全体的な拡張量の過不足に加えて、チップ間隔が不均一になるような方向ごとの拡張量のばらつきも検出できる。
【0096】
上記実施形態とは異なる変形例として、第1検出ステップと第2検出ステップのいずれか一方だけを実施してもよい。これに伴い、第1検出ステップ後の第1判定ステップと、第2検出ステップ後の第2判定ステップのいずれか一方だけを実施してもよい。つまり、少なくとも拡張ステップの後に、所定のタイミングで少なくとも1回の検出ステップ及び1回の判定ステップを実施すればよい。
【0097】
上記実施形態では、判定ステップ(第1判定ステップ、第2判定ステップ)において、下限と上限の両方を区切って判定の基準とする所定の範囲を設定しているが、下限のみ、あるいは上限のみを設定した範囲で判定を行ってもよい。つまり、本発明の判定ステップで参照する所定の範囲内とは、下限よりも上の範囲、上限よりも下の範囲、下限と上限の間の範囲、の全ての態様を含んでいる。
【0098】
上記実施形態では、拡張量調整ステップにおいて、拡張量が所定の範囲の下限(下限のしきい値)を超えていないと判定した場合には、ローラー30(拡張ユニット31)をさらに上昇させる拡張量増加処理を行い、拡張量が所定の範囲の上限(上限のしきい値)を超えたと判定した場合には、ローラー30(拡張ユニット31)を下降させる拡張量低減処理を行う。これとは異なり、拡張量調整ステップにおいて、拡張量増加処理と拡張量低減処理の一方だけを行ってもよい。一般的には、拡張量の不足に対して拡張量を増加させる調整の方が拡張の精度をコントロールしやすいので、いずれかを選択する場合には、拡張量増加処理のみを行うことが好ましい。
【0099】
拡張ステップ後に行った第1検出ステップ及び第1判定ステップにおいて拡張量が不良であると判定した場合、拡張量調整ステップを実施せずに、報知部36によるエラーの報知のみを実施してもよい。
【0100】
先に述べたように、上記実施形態のエキスパンド装置20は、ウエーハユニット10のリングフレーム14を保持しながら支持シート13を突き上げて拡張を行うタイプであるが、支持シート13の両面を挟持してウエーハ11の径方向に拡張するタイプのエキスパンド装置に本発明を適用することも可能である。この場合は、リングフレーム14を備えない構成のウエーハユニットが適用される。
【0101】
上記実施形態のエキスパンド装置20は、拡張ユニット31の複数のローラー30が保持テーブル26に対して上下に移動可能であり、拡張量が不均一である場合に、拡張量調整ステップにおいてローラー30を個別(あるいは所定数のグループごと)に上昇や下降させて、ウエーハ11の直径方向ごとの拡張量の偏りを補正可能である。このような拡張量の偏り補正を行わずに、拡張ユニット31の全体を一律に上昇や下降させて拡張量の調整を行う場合は、保持テーブル26に対してローラー30の上下方向の位置が変化しない構造の拡張ユニット31を適用してもよい。
【0102】
上記実施形態のエキスパンド装置20は、保持テーブル26に対してローラー30が上下方向に可動であるが、保持テーブル26の外径方向にローラー30が移動して支持シート13を拡張させる構造の拡張ユニット31を適用してもよい。
【0103】
なお、本発明の実施の形態は上記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明のエキスパンド方法は、チップの分割や間隔拡大が適切に行われたかを確認することができ、生産性の向上が求められる各種デバイスの製造分野における有用性が高い。
【符号の説明】
【0105】
10 :ウエーハユニット
11 :ウエーハ
12 :接着フィルム
13 :支持シート
14 :リングフレーム
15 :分割予定ライン
16 :チップ
17 :ノッチ
20 :エキスパンド装置
21 :制御ユニット
22 :フレーム支持部
23 :開口部
24 :フレーム押さえ部
25 :基台
26 :保持テーブル
27 :昇降駆動部
28 :吸引源
29 :開閉弁
30 :ローラー
31 :拡張ユニット
32 :支持プレート
33 :回転駆動部
34 :ヒーター
35 :検出ユニット
36 :報知部
37 :ローラー昇降機構
40 :シートマウンタ
46 :保持テーブル
47 :カッターユニット
131 :露出領域
Da :第1の直径
Db :第2の直径
Ea :検出領域
Eb :検出領域
Fa :検出領域
Fb :検出領域
P :中心軸
Q :搬送方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9