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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139020
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】油分離器
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/02 20060101AFI20241002BHJP
   F25B 43/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B01D45/02
F25B43/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049789
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】冨山 靖司
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AA01
4D031AB06
4D031BA04
4D031BA07
4D031BA10
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】油分離器のサイズを大きくすることなく、分離効率を向上させることのできる油分離器を提供する。
【解決手段】
油分離器1は、気液混合物に含まれるガスと油を分離する横型の油分離器であって、筒状の本体部10と、本体部に連結され、本体部の長軸方向に沿うように先端側に向けて延在するとともに、気液混合物が流入する配管20と、配管の出口20Eに配置され、本体部内の上半分を覆うように略半円形状を備える仕切板50と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液混合物に含まれるガスと油を分離する横型の油分離器であって、
筒状の本体部と、
前記本体部に連結され、前記本体部の長軸方向に沿うように先端側に向けて延在するとともに、前記気液混合物が流入する配管と、
前記配管の出口に配置され、前記本体部内の上半分を覆うように略半円形状を備える仕切板と、を有する油分離器。
【請求項2】
前記仕切板の下流側に設けられ、上部が開口した板部材をさらに有する、請求項1に記載の油分離器。
【請求項3】
前記本体部のうち下流側に配置されるフィルタをさらに有する、請求項1または2に記載の油分離器。
【請求項4】
前記本体部の先端は、フラット形状を備える、請求項1または2に記載の油分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液混合物に含まれるガスと油を分離する横型の油分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機(以下、圧縮機とも称する)は、圧縮機に吸入されたガスに、冷却、潤滑等を目的として冷凍機油(以下、油とも称する)を注入しつつ用いられる。したがって、圧縮機から吐出されたガス中には、油が混在(気液混合物)している。
【0003】
このため、圧縮機から吐出された気液混合物は、一旦油分離器に導入されて、油分離器内においてガスおよび油を分離する必要がある。
【0004】
このような油分離器としては、例えば下記の特許文献1に示すように、水平方向に寝かせて用いられる横型の油分離器が存在する。横型の油分離器では、ガス中の油分子を重力沈降して分離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-75776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガス中の油粒子の分離効率を向上させるためには、横型の油分離器の胴長を長くして重力沈降距離を長くするか、横型の油分離器の胴径を太くして、流速を遅くする必要があるが、油分離器のサイズを大きくすることは好ましくない。
【0007】
上記の課題を踏まえて、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、油分離器のサイズを大きくすることなく、分離効率を向上させることのできる油分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る油分離器は、気液混合物に含まれるガスと油を分離する横型の油分離器である。油分離器は、筒状の本体部と、前記本体部に連結され、前記本体部の長軸方向に沿うように先端側に向けて延在するとともに、前記気液混合物が流入する配管と、前記配管の出口に配置され、前記本体部内の上半分を覆うように略半円形状を備える仕切板と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上述の油分離器によれば、配管の出口に略半円形状の仕切板が配置されるため、重力沈降部に流入する気液混合物の流速がアップするが、重力沈降部に流入する際の気液混合物の落下高さを低くできる。そして、本発明者らは、流速がアップするデメリットよりも落下高さを低くするメリットの方が、効果が高いことを発見して、結果的に重力沈降距離が短くなり、分離効率を向上させることができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る油分離器を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る油分離器を示す概略正面図である。
図3図2の3-3線に沿う矢視図である。
図4】実施形態および比較例に係る油分離器における、アンモニアガス雰囲気中の油粒子径80μmの場合の重力沈降距離を示すグラフである。
図5】本実施形態に係る油分離器の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図1図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る油分離器1を示す概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る油分離器1を示す概略正面図である。図3は、図2の3-3線に沿う矢視図である。
【0013】
油分離器1は、気液混合物に含まれるガスと油を分離するためのものである。油分離器1は、水平方向に寝かせて配置される横型である。以下の説明において、図2の左右方向をX方向と称し、図3の左右方向をY方向と称し、鉛直方向をZ方向と称する。
【0014】
油分離器1は、図1図3に示すように、筒状の本体部10と、本体部10に連結され、気液混合物が流入する配管20と、ガスが排気される排気流路30と、油が排出される油排出流路40と、配管20の出口20Eに配置される仕切板50と、仕切板50の下流に配置される板部材60と、板部材60の下流に配置されるフィルタ70と、を有する。
【0015】
本体部10は、図1に示すように、X方向に延在するように筒状に構成されている。本体部10は、例えば鋳物や鋼材によって構成されているが、特に限定されない。本体部10の大きさは特に限定されないが、好適に気液を分離することのできる大きさにすることが好ましい。
【0016】
本体部10の下方には、一定量の油Lが予め溜められている。
【0017】
配管20は、図1に示すように、本体部10を貫通するようにZ方向のマイナス側に延在するとともに、本体部10内をX方向のマイナス側に向けて延在する。すなわち、配管20は湾曲した形状を備える。配管20は、スクリュー圧縮機から油分離器1の本体部10に向けて気液混合物が流入する際の通路となる。配管20は、図3に示すように、本体部10のY方向の中心となる位置に設けられる。なお、配管20および出口20Eが、仕切り板50の板面の範囲内に入っていれば、配管20は、本体部10のY方向の中心からずれていてもよい。
【0018】
図3に示すように、配管20のうちX方向のマイナス側に向けて延在している箇所は、Z方向の上方に配置されることが好ましい。この構成によれば、本体部10内に溜められている油Lから離間させることができ、配管20から吐出された気液混合物が仕切板50の下(図3)を通過した後、気液混合物の流れを乱さずに油滴を速やかに重力沈降することができる。
【0019】
排気流路30は、図1に示すように、本体部10のうち基端側(X方向のプラス側)の上方に設けられる。排気流路30を介して、ガスのみが排気される。
【0020】
油排出流路40は、図1に示すように、本体部10の下方に設けられる。油排出流路40を介して、油のみが排出される。
【0021】
仕切板50は、配管20の出口20Eの外周近傍に配置される。具体的には、仕切板50は、配管20の外径に相当する孔部を備えており、配管20が仕切板50の孔部に貫通するように配置される。このとき、図1図2に示すように、仕切板50のX方向のマイナス側の端面、および配管20のX方向のマイナス側の端面は略同一面となる。
【0022】
仕切板50は、略半円形状を備えている。なお、仕切板50の構成は、本発明の効果を奏する限りにおいて、完全な半円形状でなくてもよい。仕切板50は、本体部10内の内壁の上方を覆うように配置されている。具体的には、仕切板50は、落下高さh、流速、および重力沈降距離L1を考慮した上で、欠円形状が求められる。
【0023】
仕切板50は、本体部10の内壁に固定されている。仕切板50の本体部10に対する固定方法は特に限定されないが、例えば溶着である。仕切板50のX方向の厚さは、特に限定されないが、油分離器1内のガスの流動圧力に耐えうる板厚であることが好ましく、4mm~9mmであることが好ましい。
【0024】
板部材60は、本体部10の下方に溜まった油Lをせき止めるための部材である。板部材60は、図2に示すように正面視で、本体部10の底部から、Z方向のプラス側に延在するとともにX方向のマイナス側に例えば50mm程度、延在する。板部材60は、L字形状を備える。このX方向のマイナス側に延在する箇所は、重力沈降できない程の微小な油滴が板部材60の表面を沿って、板部材60の上部開口に吸い込まれるのを、当該箇所で凝集落下させるために設けられる。
【0025】
板部材60のZ方向の高さは、特に限定されないが、本体部10の高さの1/2以上であることが好ましい。
【0026】
板部材60は、底面において本体部10に固定されている。板部材60の本体部10に対する固定方法は特に限定されないが、例えば溶着である。
【0027】
フィルタ70は、板部材60の上方を通過したガスに、まだ油が含まれている場合に、その油を補助的に分離するものである。フィルタ70は、コアレッサとも称され、例えば円筒状のろ紙、不織布やカートリッジ状にしたろ材を用いることができる。
【0028】
スクリュー圧縮機のような数%_volの油が流入してくる場合、油の流入濃度が大きすぎてフィルタ70が目詰まりして使用できない。そのため、フィルタ流入前に重力沈降部が必要で、そこで油濃度を薄く低下させる必要がある。コアレッサの仕様により一概には言えないが、例えばアンモニアガスの場合でコアレッサ出口濃度0.5ppm_vol以下とする場合、入口を200ppm_vol以下とする必要がある。
【0029】
次に、スクリュー圧縮機から排出された気液混合物の流れを説明しつつ、本実施形態に係る油分離器1の効果について説明する。
【0030】
配管20から本体部10内に流入した気液混合物は、配管20の出口20Eから吐出された後、本体部10の先端10Aに衝突してUターンして仕切板50に移動する(図1図2の矢印参照)。
【0031】
そして、仕切板50に到達した気液混合物は、仕切板50でX方向のプラス側への移動において、本体部10の高さ方向の下半分の開口部を通ってX方向のプラス側に移動する。
【0032】
ここで、図2に示すように、仕切板50が設けられる箇所を原点として、X方向のプラス側に気液混合物が移動する際に、最上部の油が、本体部10の下方に溜められている油Lに落下するまでの距離を重力沈降距離L1と称する。また、仕切板50が設けられる箇所を原点として、X方向のプラス側に気液混合物が移動する際に、開口部の最上部の油が、本体部10の下方に溜められている油Lに落下するまでの箇所を、重力沈降部15と称する。
【0033】
ここで、例えば、仕切板50が設けられない構成の場合、配管20の出口20Eから吐出された後、本体部10の先端10Aに衝突してUターンして配管20の出口20Eに移動した気液混合物は、仕切板50に遮られることなく本体部10の最上部から落下を開始する。このため、最上部から落下する油の重力沈降距離L1は、図4の点線で示すように、約0.7mとなる。
【0034】
これに対して、本実施形態に係る油分離器1では、仕切板50が設けられる。このため、配管20の出口20Eから吐出された後、本体部10の先端10Aに衝突してUターンして仕切板50まで移動した気液混合物は、本体部10の下半分から落下を開始する。本実施形態に係る油分離器1では、重力沈降距離L1は、図4の実線で示すように、約0.6mであった。
【0035】
つまり、重力沈降部15に流入する気液混合物の流速は、仕切板50で本体部10のガス層部分の流路が仕切られたことによってアップするが、重力沈降部15に流入する気液混合物の落下高さを低くできる。本発明者らは、流速がアップするデメリットよりも落下高さを低くするメリットの方が、効果が高いことを発見して、結果的に重力沈降距離L1が短くなり、分離効率を向上させることができることを見出した。
【0036】
また、図5を参照して、比較例に係る油分離器および実施形態に係る油分離器1において、フィルタ70流入直前における油濃度をシミュレーションした結果を説明する。
【0037】
図5は、横軸がスクリュー圧縮機を起動させてから経過した時間を示し、縦軸は上述した箇所における油濃度を示す。図5において、点線が比較例に係る油分離器の結果を示し、実線が実施形態に係る油分離器1の結果を示す。
【0038】
図5から分かるように、実施形態に係る油分離器1は、比較例に係る油分離器に対して、およそ1/3ほど、油濃度が低下していることが分かる。すなわち、仕切板50を配置することによって、分離効率が向上していることが分かる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る油分離器1は、気液混合物に含まれるガスと油を分離する横型の油分離器である。油分離器1は、筒状の本体部10と、本体部10に連結され、本体部10の長軸方向に沿うように先端側に向けて延在するとともに、気液混合物が流入する配管20と、配管20の出口20Eに配置され、本体部10内の上半分を覆うように略半円形状を備える仕切板50と、を有する。このように構成された油分離器1によれば、配管20の出口20Eに略半円形状の仕切板50が配置されるため、重力沈降部15に流入する気液混合物の流速がアップするが、重力沈降部15に流入する気液混合物の落下高さを低くできる。そして、本発明者らは、流速がアップするデメリットよりも落下高さを低くするメリットの方が、効果が高いことを発見して、結果的に重力沈降距離が短くなり、分離効率を向上させることができることを見出した。
【0040】
また、油分離器1は、本体部10のうち下流側に配置されるフィルタ70をさらに有する。このように構成された油分離器1によれば、より確実にガスおよび油を分離することができる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態および変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、油分離器1はフィルタ70を有していたが、フィルタ70が設けられず、デミスタが採用されてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、油分離器1の本体部10の先端10Aは、丸みを帯びた形状を備えていたが、フラット形状であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 油分離器、
10 本体部、
10A 本体部の先端、
20 配管、
20E 配管の出口、
50 仕切板、
60 板部材
70 フィルタ。
図1
図2
図3
図4
図5