(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139046
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】加工用排液濾過装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20241002BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20241002BHJP
B23Q 11/14 20060101ALI20241002BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/10 E
B23Q11/14
B01D23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049830
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】坪井 天汰
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直宗
【テーマコード(参考)】
3C011
4D116
【Fターム(参考)】
3C011BB31
3C011EE09
4D116AA07
4D116BB01
4D116BC03
4D116BC05
4D116BC07
4D116BC71
4D116DD01
4D116DD04
4D116EE03
4D116EE10
4D116EE12
4D116FF07B
4D116FF12B
4D116FF15B
4D116GG21
4D116KK01
4D116QA06C
4D116QA06D
4D116QA06E
4D116QA06G
4D116QA31C
4D116QA31D
4D116QA31G
4D116QA46C
4D116QA46D
4D116QA46G
4D116QC08A
4D116QC22A
4D116VV09
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】加工装置から排出される排液を濾過するための濾過能力を高めて、濾過部材(フィルタ)の交換の手間を省き、濾過された排液の品質を一定に保つことができる加工用排液濾過装置を提供する。
【解決手段】切り屑を含む排液14Aが溜められるダーティタンク15と、ダーティタンク15内に溜められた排液14Aを汲み上げるダーティタンク用ポンプ20と、ダーティタンク用ポンプ20から供給される排液14A内に混入している切り屑を回収する一次濾過処理用のスクリーンフィルタ18と、スクリーンフィルタ18で回収された切り屑を収容する切り屑回収容器19と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置から排出された切り屑を含む排液を濾過する加工用排液濾過装置であって、
前記排液が溜められる第1タンクと、
前記第1タンク内に溜められた前記排液を汲み上げる第1タンク用ポンプと、
前記第1タンク用ポンプから供給される前記排液内に混入している前記切り屑を回収する一次濾過処理用のスクリーンフィルタと、
前記スクリーンフィルタで回収された前記切り屑を収容する切り屑回収容器と、
を備える、ことを特徴とする加工用排液濾過装置。
【請求項2】
前記第1タンク用ポンプで汲み上げられた前記排液の一部を、前記第1タンク内の前記排液中に戻し、前記第1タンク内の前記排液を撹拌する排液撹拌手段をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の加工用排液濾過装置。
【請求項3】
前記第1タンク用ポンプで汲み上げられた前記排液の一部を、前記第1タンク用ポンプの外表面に浴びせるポンプ冷却流路を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の加工用排液濾過装置。
【請求項4】
前記第1タンク内の前記排液の量を検出するセンサと、
前記センサからの信号に基づいて前記第1タンク用ポンプの運転・停止を制御する制御部と、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の加工用排液濾過装置。
【請求項5】
前記第1タンク側から排出される一次濾過処理が済んだ前記排液が溜められる第2タンクと、
前記第2タンク内に溜められた前記排液を通過させて前記排液内に混入している微小な前記切り屑を回収する二次濾過処理用のバックフィルタと、
前記第2タンク内に溜められた前記排液を汲み上げて前記バックフィルタの上流側に供給する第2タンク用ポンプと、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の加工用排液濾過装置。
【請求項6】
前記第2タンク内の前記排液の量を検出するセンサと、
前記センサからの信号に基づいて前記第2タンクの運転の停止を制御する制御部と、
をさらに備える、ことを特徴とする請求項5に記載の加工用排液濾過装置。
【請求項7】
前記第2タンク内の前記排液の量が所定量を越えたときに、前記第2タンク内の前記排液を前記第1タンクに戻す排液帰還ラインを有する、ことを特徴とする請求項5に記載の加工用排液濾過装置。
【請求項8】
前記バックフィルタは、前記排液が濾過して順次通過して行く複数段のフィルタで構成されており、各段のフィルタがそれぞれ独立して交換可能に構成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の加工用排液濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置等の加工装置から排出される研削液等の排液を濾過して排出する加工用排液濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造工程では、多数のデバイスが形成されたシリコンや化合物半導体等からなる半導体ウェハを、デバイス間の境界である分割予定ラインに沿って切断し分割することにより、個片化した半導体デバイスを得ている。このようにして製造される半導体デバイスは、携帯電話やパソコン等の各種電子機器に広く用いられるが、近年ではこの種の電子機器の小型化・軽量化を可能にするために、半導体デバイスを積層可能に構成した積層デバイスが開発されている。
【0003】
積層デバイスは、半導体デバイスの表面にバンプと呼ばれる突起状の電極を形成し、このバンプをエポキシ樹脂等からなるアンダーフィル材で埋設し、この後、バンプをアンダーフィル材ごと切削加工により削り取ることにより、バンプをアンダーフィル材の表面に露出させるという加工を行っている。このようにバンプや樹脂を切削加工するには、保持テーブルに保持した被加工物に対して研削液(例えば、純水等の冷却水)を供給しながら、切り刃を有したバイトホイールを回転させてバンプを切り刃で切削する形式のフライカット装置等が用いられる(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。また、研削加工で使用した研削液は研削装置が設置された加工室から回収し、濾過して排出させる方法が採られている。
【0004】
上記のような研削装置で樹脂や金属を切削するにあたっては、その樹脂や金属が粘性を有していたり加工時の発熱により粘性が生じたりした場合には、加工屑、すなわち切り屑が糸状となって発生することが多い。このような切り屑を含んだ排液は、一度加工室内の沈殿槽に貯溜し、加工屑を沈殿させて大きな切り屑を捕集し、小さなものはそのまま排出させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-18942号公報
【特許文献2】特開2022-35272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような切り屑は、沈殿槽に直接フィルタを設けた場合、切り屑の排出量が多いために目詰まりが発生し、高頻度でメンテナンスが必要であった。また、沈殿槽では、液中及び液面を浮遊しているものは捕集する効果が無いため、樹脂などの軽量なものは、そのまま加工室外の排水ラインに流れ出て、排水ラインを詰まらせてしまう虞があった。また、従来では、排水ラインにYストレーナ式の排水トラップを使用しただけの場合もあり、直ぐに排水ラインが詰まり、頻繁にメンテナンスの必要が生じ、生産性が悪いという問題点があった。
【0007】
そこで、加工室内から排出される排液を濾過するための濾過能力を高めて、濾過部材(フィルタ)の交換の手間を省き、濾過された排液の品質を一定に保つことができる加工用排液濾過装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、加工装置から排出された切り屑を含む排液を濾過する加工用排液濾過装置であって、前記排液が溜められる第1タンクと、前記第1タンク内に溜められた前記排液を汲み上げる第1タンク用ポンプと、前記第1タンク用ポンプから供給される前記排液内に混入している前記切り屑を回収する一次濾過処理用のスクリーンフィルタと、前記スクリーンフィルタで回収された前記切り屑を収容する切り屑回収容器と、を備える、加工用排液濾過装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、加工装置から排出された排液は、一度、第1タンク内に溜められ、その後、第1タンク用ポンプで一次濾過処理用のスクリーンフィルタ上に供給される。そして、排液内に混入されている切り屑はスクリーンフィルタで捕集されて切り屑回収容器内に回収され、スクリーンフィルタを透過した排液は第1タンク外に排出される。また、スクリーンフィルタで捕集された切り屑は、スクリーンフィルタから切り屑回収容器内へ自動回収することが可能となり、スクリーンフィルタのメンテナンスを高頻度で行う必要が無くなる。
また、排液撹拌手段により、第1タンク内から第1タンク用ポンプで汲み上げられた排液の一部を第1タンク内の排液中に戻し、戻した排液の流れで第1タンク内の排液を撹拌する。そして、この撹拌により、液面に集まる樹脂などの軽量なものを液中に引き込み、第1タンクの底に溜まる切り屑を液中に浮遊させて、撹拌されて切り屑を含んだ排液を第1タンク用ポンプでスクリーンフィルタ上に供給するので、濾過性能の品質等を高める。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記第1タンク用ポンプで汲み上げられた前記排液の一部を、前記第1タンク内の前記排液中に戻し、前記第1タンク内の前記排液を撹拌する排液撹拌手段をさらに備える、加工用排液濾過装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、排液撹拌手段により、第1タンク内から第1タンク用ポンプで汲み上げられた排液の一部を第1タンク内の排液中に戻し、戻した排液の流れで第1タンク内の排液を撹拌する。この撹拌により、液面に集まる樹脂などの軽量なものを液中に引き込み、第1タンクの底に溜まる切り屑を液中に浮遊させて、撹拌されて切り屑を含んだ排液を第1タンク用ポンプでスクリーンフィルタ上に供給するので、濾過性能の品質等を高める。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記第1タンク用ポンプで汲み上げられた前記排液の一部を、前記第1タンク用ポンプの外表面に浴びせるポンプ冷却流路を有する、加工用廃液濾過装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、第1タンク用ポンプで汲み上げられた排液の一部を、第1タンク用ポンプの外表面に浴びせて冷やすことにより、運転中の第1タンク用ポンプにおける温度上昇を抑えて、長時間に亘る連続運転を可能にする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記第1タンク内の前記排液の量を検出するセンサと、前記センサからの信号に基づいて前記第1タンク用ポンプの運転・停止を制御する制御部と、をさらに備える、加工用排液濾過装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、第1タンク内の排液の量をセンサで検出し、センサからの信号に基づいて、制御部が第1タンク用ポンプの運転・停止を制御することにより、第1タンク内の排液の量を略一定に保持することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記第1タンク側から排出される一次濾過処理が済んだ前記排液が溜められる第2タンクと、前記第2タンク内に溜められた前記排液を通過させて前記排液内に混入している微小な前記切り屑を回収する二次濾過処理用のバックフィルタと、前記第2タンク内に溜められた前記排液を汲み上げて前記バックフィルタの上流側に供給する第2タンク用ポンプと、をさらに備える、加工用排液濾過装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、スクリーンフィルタを通って第1タンク側から排出された排液は、一度、第2タンク内に溜められ、その後、第2タンク側ポンプで二次濾過処理用のバックフィルタ上に供給される。そして、排液内に混入されている微小の切り屑はバックフィルタで更に捕集され、スクリーンフィルタを透過した排液は第2タンク外に排出される。したがって、第1タンク側から排出される一次濾過処理が済んだ排液中に含まれる極めて微小な切り屑は、バックフィルタで更に捕集され、またバックフィルタを通った排液は、更にクリーンな排液になって第2タンク外に排出される。これにより、濾過された排液の品質が更に向上する。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成において、前記第2タンク内の前記排液の量を検出するセンサと、前記センサからの信号に基づいて前記第2タンクの運転の停止を制御する制御部と、をさらに備える、ことを特徴とする加工用排液濾過装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、第1タンク内の排液の量をセンサで検出して、センサからの信号に基づいて、制御部が第1タンク用ポンプの運転・停止を制御することにより、第2タンク内の排液の量を略一定に保持することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の構成において、前記第2タンク内の前記排液の量が所定量を越えたときに、前記第2タンク内の前記排液を前記第1タンクに戻す排液帰還ラインを有する、加工用排液濾過装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、第2タンク内の排液の量が所定量を越えたときに、越えた分の排液を排液帰還ラインを通して第2タンク内から第1タンク側に戻す。したがって、何かの不都合により、第2タンク内の排液が所定量以上になったときに、越えた分の排液を第1タンク内側へ自動的に戻すので、第2タンク内の排液量の管理を簡略化できる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の構成において、前記バックフィルタは、前記排液が濾過して順次通過して行く複数段のフィルタで構成されており、各段のフィルタがそれぞれ独立して交換可能に構成されている、加工用排液濾過装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、バックフィルタを、独立して交換可能な複数段のフィルタで構成することにより、フィルタの交換作業が簡単になる。また、作業を停止させずに、バックフィルタの交換が可能になる。これにより、生産性の向上が図れる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スクリーンフィルタで捕集された切り屑は、スクリーンフィルタから切り屑回収容器内へ自動回収することが可能となり、スクリーンフィルタのメンテナンスを高頻度で行う必要が無くなるので、生産性の向上が図れる。また、加工室内から排出される排液を濾過する濾過能力を高めて、濾過部材(フィルタ)の交換の手間を省き、濾過された排液の品質も一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る加工用排液濾過装置を適用した濾過システムの概略構成図である。
【
図2】同上濾過システムにおいてダーティタンク用ポンプ及びクリーンタンク用ポンプの運転・停止を制御する制御系の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、加工装置から排出される排液を濾過するための濾過能力を高めて、濾過部材(フィルタ)の交換の手間を省き、濾過された排液の品質を一定に保つことができる加工用排液濾過装置を提供するという目的を達成するために、加工装置から排出された切り屑を含む排液を濾過する加工用排液濾過装置であって、前記排液が溜められる第1タンクと、前記第1タンク内に溜められた前記排液を汲み上げる第1タンク用ポンプと、
前記第1タンク用ポンプから供給される前記排液内に混入している前記切り屑を回収する一次濾過処理用のスクリーンフィルタと、前記スクリーンフィルタで回収された前記切り屑を収容する切り屑回収容器と、を備える構成としたことにより実現した。
【実施例0027】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0028】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0029】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0030】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の加工用排液濾過装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0031】
図1は本発明に係る加工用排液濾過装置11を適用した濾過システム10の概略構成図である。
図1において、濾過システム10は、加工装置が設置された加工室12と、加工室12から排出される排液を濾過してクリーンな排液として送り出す加工用排液濾過装置11と、を備えている。ここでの加工装置は、例えば半導体ウェハやパッケージ基板等に代表される板状の被加工物に対し、切削若しくは研磨用の工具を押し付けて平坦な面を形成する研削装置やフライカット装置等である。この加工装置では、加工屑、すなわち切り屑が多量に発生する。これらの切り屑は、適切に除去できるように、洗浄用の流体を被加工物の被加工領域に向けて噴射し、流体と共に洗い流して、加工室12の外部に排液として排出される。そこで、排液内に含む切り屑を排液から分離し、切り屑を無くした状態の排液を工場外部等に排出するクリーン装置が、ここでの加工用排液濾過装置11である。なお、ここでの排液は、少なくとも、水等の液体が含まれる。ただし、具体的な液体の種類等に特段の制限はない。また、加工装置の種類についても特段の制限はない。
【0032】
加工室12と加工用排液濾過装置11を結ぶ流路51の途中には、三方弁13が設けられている。三方弁13は、加工室12から排出される排液14Aを、加工用排液濾過装置11内へ流す流路51Aと、加工用排液濾過装置11内には流さず加工室12から外部へ直接排出する流路51Bとを、択一的に切り換え可能な弁である。すなわち、三方弁13では、流路を切り換えることにより、濾過を必要としない排液は、流路51の途中から流路51Aを通して外部に直接排出できる。しかし、加工用排液濾過装置11を使用して、切り屑を無くした状態の排液を工場外部等に排出するときは、流路51Bが選択される。
【0033】
加工用排液濾過装置11は、ダーティ濾過部11Aとクリーン濾過部11Bとでなる。ダーティ濾過部11Aは、加工室12から排出された排液14A内に混入している比較的大きな切り屑を捕集して一次濾過の処理をし、一次濾過処理が済んだ排液14Bをクリーン濾過部11B側に送る箇所である。これに対して、クリーン濾過部11Bは、ダーティ濾過部11Aを通って一次濾過処理された排液14B内に混入している微小な切り屑を更に捕集して二次濾過の処理をし、二次濾過の処理を終えたクリーンな排液14Cを外部に排出する箇所である。したがって、微小な切り屑の処理が必要でない場合は、ダーティ濾過部11Aだけを設置し、クリーン濾過部11Bを省略する場合もある。しかし、本実施例では、ダーティ濾過部11Aとクリーン濾過部11Bの両方を必要としている場合として、以下説明する。
【0034】
ダーティ濾過部11Aには、加工室12から排出される処理前の排液14Aを溜めるダーティタンク(第1タンク)15が設けられている。また、ダーティ濾過部11Aには、ダーティタンク15内に溜められた排液14Aの液量を検出するセンサとして、フロート16Aを有したフロートスイッチ16が設けられている。フロートスイッチ16は、ダーティタンク15内の排液14Aの液面にフロート16Aを浮かべ、排液14Aの液量が決められた液量以下又は液量以上の状態にあるか否かを検出し、その検出信号を出力する。
【0035】
ダーティタンク15の上方には、一次濾過部17が設けられている。一次濾過部17内には、スクリーンフィルタ18と、スクリーンフィルタ18で捕集した切り屑等を収容する切り屑回収容器19と、を有している。スクリーンフィルタ18は、良く知られたものであって、平板状の細かな編み目(例えば、開口100um程度の編み目)を有するワイヤースクリーンを、上方から下方に向かって大きく傾斜(約45度)した状態にして設置されている。そして、スクリーンフィルタ18を下った下方端に、切り屑回収容器19が設置される。このスクリーンフィルタ18は、脱水性が良く、切り屑が落下していくので目詰まりし難く、メンテナンス頻度を低くすることが可能である。この一次濾過部17では、ダーティタンク15内の排液14Aがスクリーンフィルタ18上に送られて流されると、排液14A内に混入されている荒い切り屑をスクリーンフィルタ18上で捕獲し、荒い切り屑(大きな切り屑)が取り除かれた排液14Bは、流路52を通してクリーン濾過部11B側に送る。また、スクリーンフィルタ18上で捕獲された荒い切り屑は、スクリーンフィルタ18の傾斜により、下方に配置されている切り屑回収容器19内に滑り落ちて回収される設定になっている。
【0036】
また、ダーティタンク15内には、ダーティタンク15内に溜められた排液14Aを、一次濾過部17内のスクリーンフィルタ18上に、流路53を通して供給するダーティタンク用ポンプ(第1タンク用ポンプ)20が設けられている。ダーティタンク用ポンプ20は、例えば、研削装置やフライカット装置等の加工装置から発生する加工屑(切り屑)の塊も吸い込むことが可能である。ダーティタンク用ポンプ20は、本実施例ではカッターポンプであり、例えば鶴見製作所製の型番50C2.75-64である。また、ダーティタンク用ポンプ20の運転・停止は、ダーティタンク15内の排液14Aの液量を検出しているセンサ(フロートスイッチ)からのオン・オフ信号に基づいて制御する制御部50の制御により行われ、制御部50の運転・停止の制御で、ダーティタンク15内の排液14Aの液量を略一定に保持することができる。
【0037】
流路53は、途中に分岐流路53Aと分岐流路53Bが設けられている。また、一次濾過部17と分岐流路53A及び分岐流路53Bとの間には、開閉弁21と逆止弁22が設けられている。
【0038】
分岐流路53Aは、流路53内を流れる排液14Aの一部をダーティタンク用ポンプ20の外表面に浴びせて、ダーティタンク用ポンプ20の内部を冷却する排液14Aを通すポンプ冷却流路であって、途中には開閉弁23が設けられている。この開閉弁23の開閉は、後述する制御部50により開閉制御される。ここでは、ダーティタンク用ポンプ20の内部温度が所定温度以上になると開にされ、分岐流路53Aを通して排液14Aを浴びせて冷却する。反対に、ダーティタンク用ポンプ20の内部温度が所定温度以下になると閉じられる。
【0039】
分岐流路53Bは、流路53内を流れる排液14Aの一部をダーティタンク15の排液14A中に戻す流路であり、途中には開閉弁24が設けられている。分岐流路53Bの先端側の吹出口は、ダーティタンク15内で、排液14Aが溜まっている液中の中間層まで延ばされており、分岐流路53Bの先端吹出口から排液14Aを液中の中間層へ戻すことにより、戻される排液14Aの流れでダーティタンク15内の排液14Aの全体を撹拌する排液撹拌手段59を構成している。そして、排液撹拌手段59によるダーティタンク15内の撹拌により、排液14Aの液面に集まる樹脂などの軽量なものを液中に引き込み、反対にダーティタンク15内の底面に沈んでいる重い切り屑をダーティタンク15中に浮遊させて、ダーティタンク用ポンプ20で流路53内に切り屑を吸い込み易くする。
【0040】
なお、流路53の開閉弁21開閉動作及び分岐流路53Bの開閉弁24の開閉動作も、後述する制御部50により制御される。また、一次濾過部17には、切り屑回収容器19内に落下し、流路52からクリーン濾過部11B側に流されなかった排液14Bを、ダーティタンク15内に戻す流路54が設けられている。
【0041】
クリーン濾過部11Bには、ダーティ濾過部11Aから流路52を通して排出される、一次透過の処理が済んだ後の排液14Bを溜めるクリーンタンク(第2タンク)25が設けられている。また、クリーン濾過部11Bには、クリーンタンク25内に溜められた排液14Bの液量を検出するセンサとして、フロート26Aを有するフロートスイッチ26が設けられている。フロートスイッチ26は、ダーティタンク15内の排液14Bの液面にフロート26Aを浮かべ、排液14Bの液量が決められた液量以下又は液量以上の状態にあるか否かを検出し、その検出信号を出力する。
【0042】
クリーンタンク25の上方には、二次濾過部27が設けられている。二次濾過部27内には、二次濾過処理用のバックフィルタ28と二次濾過部27内で二次濾過された排液14Cの液量を検出するセンサとして、フロート29Aを有するフロートスイッチ29が設けられている。
【0043】
バックフィルタ28は、板状をした複数枚(本実施例ではフィルタ28A、フィルタ28B、フィルタ28C、フィルタ28Dの4枚)のフィルタを縦型の多段形式に配置して、フィルタ28Aの上流側から供給される一次濾過処理された排液14Bを、フィルタ28A、フィルタ28B、フィルタ28C、フィルタ28Dの順に通して二次濾過処理するものである。このバックフィルタ28は、例えば30um~3umの編み目をした不織布で形成されている。
【0044】
二次濾過部27では、バックフィルタ28のフィルタ28Aの上流側に排液14Bが供給されると、排液14Bをフィルタ28A、フィルタ28B、フィルタ28C、フィルタ28Dの順に通して二次濾過処理をし、一次濾過処理で捕集されずに排液14B内に残っていた微小な切り屑を各フィルタ(フィルタ28A、フィルタ28B、フィルタ28C、フィルタ28D)で順に捕集する。そして、二次濾過処理により微小な切り屑が取り除かれた排液14Cは、流路55を通して外部に排出処理される。
【0045】
さらに、バックフィルタ28の各フィルタ28A~フィルタ28Dは、それぞれ独立して交換可能であり、例えば図示しない案内レールに沿わせて上方からスライド挿入すると、二次濾過部27の決められた位置にそれぞれセットでき、反対にセットされている状態から上方に引き上げると取り外して交換等が可能であり、この交換を繰り返して行うことができる構造になっている。このように、バックフィルタ28を、独立して交換可能な複数段のフィルタ(28A~28D)で構成すると、フィルタを交換する場合に、処理作業を止めずに、交換を行わない他のフィルタを残して、作業を続けている状態で、必要とするフィルタだけを交換することが可能になり、交換作業の簡略化と生産性の向上が図れる。
【0046】
また、二次濾過部27には、クリーンタンク25内に溜められた排液14Bを、二次濾過部27内のバックフィルタ28におけるフィルタ28Aの上流側に、流路56を介して供給するクリーンタンク用ポンプ30が設けられている。クリーンタンク用ポンプ(第2タンク用ポンプ)30は、本実施例では供給ポンプであり、例えばNIKUNI製の型番32UPD15Zである。
【0047】
また、二次濾過部27には、バックフィルタ28で二次濾過された排液14Cが、二次濾過部27内の隔壁27Aの上端を超えて溢れると、溢れ出た排液14Cをダーティタンク15側に流して戻す流路58が設けられている。そして、隔壁27A及び流路58により、二次濾過部27内の排液14Cの液量が、隔壁27Aの上端より多く溜まらないように調節する。
【0048】
また、ダーティタンク15とクリーンタンク25との間には、クリーンタンク25内に貯溜された排液14Bの液量が、所定量を超えると、クリーンタンク25内の排液14Bをダーティタンク15側に流す流路(排液帰還ライン)57が設けられている。流路57では、クリーンタンク25内の排液14Bの液量が、クリーンタンク25側の隔壁57Aの上端を超えると、隔壁57Aを乗り越えた排液14Cをダーティタンク15側に流し、クリーンタンク25内の液量が隔壁57Aの上端より多く溜まらないように調節する。
【0049】
図2は、ダーティタンク用ポンプ20及びクリーンタンク用ポンプ30の連続運転と一時運転停止、すなわち運転・停止を制御する制御系の一例を示すブロック図である。
図2において、制御系は制御部50と、この制御部50に接続されたダーティタンク用ポンプ20、クリーンタンク用ポンプ30、フロートスイッチ16、フロートスイッチ26、フロートスイッチ29等で構成されている。
【0050】
制御部50は、例えばCPU、メモリ等により構成され、予め組み込まれたソフトウエアによる手順に従い、また、フロートスイッチ16、フロートスイッチ26、フロートスイッチ29等の液量を検出するセンサからのオン・オフ信号に基づいて、ダーティタンク用ポンプ20及びクリーンタンク用ポンプ30の運転・停止を制御し、ダーティタンク15内の液量(排液14A)とクリーンタンク25内の液量(排液14B)と二次濾過部27内の液量(排液14C)がそれぞれ適正に保たれるように制御する。
【0051】
図1及び
図2を用いて、濾過システム10の動作を説明する。加工室12で発生した切り屑等が混入された排液14Aは、流路51と三方弁13と流路51Bを通って加工用排液濾過装置11側に送られ、ダーティタンク15内に貯留される。ダーティタンク15内に溜められた排液14Aの液量は、フロートスイッチ16で監視されており、所定の液量範囲内にあるときはダーティタンク用ポンプ20が連続駆動される。そして、ダーティタンク15内に溜められた排液14Aがダーティタンク用ポンプ20で汲み上げられて、流路53を通って一次濾過部17のスクリーンフィルタ18上に流される。
【0052】
また、流路53内に流された排液14Aの一部は、開閉弁23を介して分岐流路53Aに流され、その排液14Aの一部をダーティタンク用ポンプ20の外表面に浴びせ、連続した運転により温度上昇しているダーティタンク用ポンプ20の内部を外側から冷却する。
【0053】
また、流路53内に流された排液14Aの一部は、開閉弁24を介して分岐流路53Bに流され、その排液14Aの一部を、ダーティタンク15内で排液14Aが溜まっている中間層の部分に戻し、その戻した排液14Aの流れによりダーティタンク15内の排液を撹拌する。そして、この撹拌により、排液14Aの液面に集まる樹脂などの軽量なものを液水に引き込み、反対にダーティタンク15内の底面に沈んでいる切り屑を液内に浮遊させて、ダーティタンク用ポンプ20で流路53内に吸い込む。
【0054】
一方、一次濾過部17に送られ、スクリーンフィルタ18上に流された排液14Aは、排液14A内に混入されている荒い切り屑がスクリーンフィルタ18上に捕集されて残され、荒い切り屑が取り除かれた排液14Bだけが流路52を通ってクリーンタンク25内に送られて溜められる。一方、スクリーンフィルタ18で取り除かれた荒い切り屑は、スクリーンフィルタ18の傾斜により、下方に配置されている切り屑回収容器19内に滑り落ちて回収される。ここで、切り屑回収容器19内に回収された荒い切り屑は、定期的に回収されて処理される。
【0055】
一方、クリーンタンク25側では、クリーンタンク25内に溜まっている排液14Bは、フロートスイッチ26で監視されており、所定の液量範囲内にあるときはクリーンタンク用ポンプ30が駆動され、クリーンタンク25内に溜められている排液14Bがクリーンタンク用ポンプ30で汲み上げられて、流路56を通って二次濾過部27に送られる。二次濾過部27では、排液14Bがバックフィルタ28の上流、すなわちフィルタ28Aの上流側に供給される。二次濾過部27に送られた排液14Bは、バックフィルタ28のフィルタ28A、フィルタ28B、フィルタ28C、フィルタ28Dを順に通過し、一次濾過処理で捕集されなかった微小な切り屑がバックフィルタ28で捕集されて除去され、クリーンな排液14Cとなる。そして、排液14Cが流路55を通って外部に排出される。そして、バックフィルタ28で捕集された微小な切り屑は、定期的にバックフィルタ28のフィルタ28A、フィルタ28B、フィルタ28C、フィルタ28Dを交換することにより取り除かれる。
【0056】
したがって、本実施例による加工用排液濾過装置11は、スクリーンフィルタ18で捕集された切り屑は、スクリーンフィルタ18から切り屑回収容器19内へ自動回収することが可能となるので、スクリーンフィルタ18のメンテナンスを高頻度で行う必要が無くなり、生産性が向上する。これにより、加工室12から排出される排液14Aを濾過する濾過能力を高めて、濾過部材(スクリーンフィルタ18、バックフィルタ28)の交換の手間を省き、濾過処理された排液の品質を一定に保つことができる。
【0057】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。