(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139059
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】管材および管材の製造方法、ならびにステント、ガイドワイヤおよびプレッシャーガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
C22C 19/03 20060101AFI20241002BHJP
C22F 1/10 20060101ALI20241002BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20241002BHJP
【FI】
C22C19/03 Z
C22F1/10 Z
C22F1/00 626
C22F1/00 627
C22F1/00 630G
C22F1/00 630Z
C22F1/00 625
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 691B
C22F1/00 691Z
C22F1/00 694Z
C22F1/00 694A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049844
(22)【出願日】2023-03-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000165996
【氏名又は名称】株式会社古河テクノマテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】藤井 美里
(72)【発明者】
【氏名】上岡 健
(72)【発明者】
【氏名】中隈 渉悟
(72)【発明者】
【氏名】多田 英史
(57)【要約】
【課題】容易な方法による工業的な製造が可能であり、Ni-Ti系合金材からなり、内壁面の粗さを改善し、回転曲げに対する耐久性に優れた管材およびその製造方法、ならびに管材を用いたステント、ガイドワイヤおよびプレッシャーガイドワイヤを提供する。
【解決手段】管材は、Ni-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm以下である、管材。
【請求項2】
Niを54.5質量%以上57.0質量%以下含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載の管材。
【請求項3】
前記管材の外径と内径との比(外径/内径)が1.01以上2.50以下である、請求項1に記載の管材。
【請求項4】
前記管材の外径が0.15mm以上4.00mm以下であり、前記管材の内径が0.10mm以上3.95mm以下である、請求項1に記載の管材。
【請求項5】
37℃において超弾性特性を有する、請求項1に記載の管材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の管材から形成されているステント。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の管材から形成されているガイドワイヤ。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の管材から形成されているプレッシャーガイドワイヤ。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の管材の製造方法であって、
Ni-Ti系合金素材に対する溶解・鋳造工程(工程1)と、
熱間加工工程(工程2)と、
前記熱間加工工程(工程2)で得られた管状のNi-Ti系合金熱間加工材にコアを挿入してなる複合材に対して抽伸加工を行い、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材と前記Ni-Ti系合金抽伸加工材の内部に延在する抽伸加工コア材とが一体化された抽伸加工複合材を得る、抽伸加工工程(工程3)と、
前記抽伸加工複合材における前記Ni-Ti系合金抽伸加工材が前記抽伸加工コア材から剥がれない大きさの引張荷重を、前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱するコア除去工程(工程4)と、
を有する、管材の製造方法。
【請求項10】
前記コア除去工程(工程4)において、4MPa以上300MPa以下の引張荷重を前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱する、請求項9に記載の管材の製造方法。
【請求項11】
前記コア除去工程(工程4)の後に行われ、前記管材に対して超弾性付与加熱を施す超弾性付与熱処理工程(工程5)をさらに有する、請求項9に記載の管材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管材および管材の製造方法、ならびにステント、ガイドワイヤおよびプレッシャーガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
Ni-Ti系合金材料は、耐食性や耐摩耗性に優れている。また、Ni-Ti系合金材料は、形状記憶特性および超弾性特性を示すことが知られており、通常の金属では変形が残ってしまう5%以上の変形にも耐え、塑性変形を発生せずに元の形状に戻ることが可能である特殊な性質を有している。さらに、Ni-Ti系合金材料は、一定の歪みを付与した状態での繰返し変形に対して耐性を示すことが分かっている。
【0003】
近年、Ni-Ti系合金材料を極細線や細管に加工する技術の進展に伴い、ステント、人工心臓弁、あるいはステントやカテーテルを体内に挿入するために用いられるガイドワイヤといった医療用デバイスへのNi-Ti系合金材料の適用が拡大している。
【0004】
医療用デバイスの中でも、ステントや人工心臓弁は、体内留置型と呼ばれるもので、生体内において血管などの脈動に伴う収縮・拡張の繰り返し負荷を受けることから、10年間以上の長期間にわたって優れた疲労耐久性を具備していることが望まれている高度な要求特性が多いデバイスである。
【0005】
一方、上記の医療用デバイスとは異なる用途であり、体内留置型ではなく使い捨て型のデバイス(以下、ディスポともいう。)への利用も大きく拡大している。ディスポは、細径血管の詰まり局所を狙って除くような使用方法が多い。特に、管材の内部へワイヤーやその他デバイスを通す方法も少なくない。
【0006】
このような背景から、特に管材においては、細径状態での耐破断特性が求められる。また、管材内部にその他デバイスを通す用途においては、管材内部にその他デバイスをスムーズに通せるような操作性の向上が求められるため、管材の内壁面の状態が重要となる。
【0007】
また、従来から、Ni-Ti系合金からなる管材については、種々の検討がなされている。
【0008】
例えば、特許文献1および2では、管材の内壁面の粗さ改善が重要であるという観点から、発明がなされている。さらに、これらの技術を基に、非特許文献1および2では、内壁面の粗さが良好である外径4mm以下の管材を得ることに成功している。
【0009】
しかしながら、非特許文献1および2を総括すると、内壁面状態の良い外径4mm以下の細管を得るためには、外径4mm以上の段階では固定プラグ引きを行い、外径4mm以下の段階ではマンドレル引きを行う。このように、異なる工程の併用を必要としていることから、長尺の細径管材を工業的に製造することは難しい。
【0010】
また、形状記憶合金からなるコアを使用している特許文献1では、20s(算術平均粗さRaが約5μm)以下の内壁面を有する管材が得られ、長尺管材の製法として知られているフロートプラグ引きを行う特許文献2では、5s(算術平均粗さRaが約1.25μm)以下の内壁面を有する管材が得られている。しかしながら、特許文献1および2の管材を上記用途に適用するには、管材内壁面の粗さは大きく、さらなる改善の余地がある。
【0011】
ここで、形状記憶合金からなる管材の製造方法に関する先行技術の概要を説明する。特許文献3および4には、金属管に形状記憶合金からなるコアを挿入して一体加工する製造方法が記載されている。冷間加工されたコアを金属管に投入し加熱することで、金属管とコアとのギャップが最小になり、金属管とコアとが一体化した複合材となる。複合材の状態で金属管(管材)の目標寸法までの加工が可能となり、外径と肉厚が制御された寸法精度のよい管材の製造が工業的に可能となる。その後、目標の寸法まで加工した管材を得るには、管材からコアを除去することが必要である。特許文献3および4では、加工後の複合材全体を750~825℃に加熱する、もしくはコアのみへ通電加熱を行うことを必要としており、加熱によりコアの歪みが除去され、その後にコアをドローベンチで引き抜くことで、コアが伸長することにより縮径するため、管材からのコアの除去が可能になるとしている。
【0012】
また、特許文献5および6には、形状記憶合金からなる管材に軟鋼、炭素鋼、ステンレス鋼、真鍮などからなるコアを挿入して複合材とし、複合材を一体化加工する方法が記載されている。特許文献5および6では、コアの除去方法として、加工後に複合材を加熱すると、シームレスの管材のみが熱膨張により大きく膨らみ、管材とコアとの間に隙間(以下、クリアランスともいう)ができる。このクリアランスの発生により、管材からのコアの除去が可能となる。
【0013】
特許文献3~6は管材を製造する上で有効な技術ではあるものの、4mm以下の細径管材の製造においては、なお改善の余地がある。特に、コアの除去工程では、特に細径管材の場合、クリアランスの精度や管材とコアとが確実に剥離しているかどうかが工業的に重要なポイントとなる。例えば、クリアランスが不足するもしくは管材とコアとの剥離が不十分である状態で管材からコアを引き抜くと、管材の内壁面に管材長手方向のスジが入る問題が確認されている。
【0014】
また、上述の技術はいずれも2004年以前に開発された技術である。そのため、医療用Ni-Ti系合金で規定されているASTM F2063-18(Standard Specification for Wrought Nickel-Titanium Shape Memory Alloys for Medical Device and Surgical Implants)に適応可能となる条件について、なお改善の余地がある。医療用デバイスで使用する場合においては、体内留置型のみならず、ディスポにおいても上記規格が要求される。特に、炭素濃度と酸素濃度の許容量が、ともに最大で0.04質量%に改定され、炭素濃度と酸素濃度を制御する範囲が上記規格前よりもさらに狭くなる。そのため、これらの元素濃度の制御を行うための製造条件の適正化を図りながら、細径管材を製造する技術開発が必要とされている。
【0015】
さらに、従来技術では、内壁面の粗さを評価する場合、管材の長手方向に沿って線状に測定する算術平均粗さRaを評価するため、管状の長手方向に形成されているキズについては、粗さの影響を定量的に判断することができない。そのため、管材内壁面の粗さの評価技術に関しても、改善の余地がある。
【0016】
以上から、工業的に容易な方法で製造が可能となる、内壁面の粗さが改善されたNi-Ti系合金からなる管材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10ー17963号公報
【特許文献2】特開平11-61301号公報
【特許文献3】米国特許第5709021号明細書
【特許文献4】米国特許第6799357号明細書
【特許文献5】特許第3443206号公報
【特許文献6】特許第2133478号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】J. Materials Processing Technology、118(2001)、p.251-255
【非特許文献2】J. Materials Processing Technology、153-154(2004)、p.145-150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本開示の目的は、容易な方法による工業的な製造が可能であり、Ni-Ti系合金材からなり、内壁面の粗さを改善し、回転曲げに対する耐久性に優れた管材およびその製造方法、ならびに管材を用いたステント、ガイドワイヤおよびプレッシャーガイドワイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
[1] Ni-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm以下である、管材。
[2] Niを54.5質量%以上57.0質量%以下含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなる、上記[1]に記載の管材。
[3] 前記管材の外径と内径との比(外径/内径)が1.01以上2.50以下である、上記[1]または[2]に記載の管材。
[4] 前記管材の外径が0.15mm以上4.00mm以下であり、前記管材の内径が0.10mm以上3.95mm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の管材。
[5] 37℃において超弾性特性を有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の管材。
[6] 上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の管材から形成されているステント。
[7] 上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の管材から形成されているガイドワイヤ。
[8] 上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の管材から形成されているプレッシャーガイドワイヤ。
[9] 上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の管材の製造方法であって、Ni-Ti系合金素材に対する溶解・鋳造工程(工程1)と、熱間加工工程(工程2)と、前記熱間加工工程(工程2)で得られた管状のNi-Ti系合金熱間加工材にコアを挿入してなる複合材に対して抽伸加工を行い、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材と前記Ni-Ti系合金抽伸加工材の内部に延在する抽伸加工コア材とが一体化された抽伸加工複合材を得る、抽伸加工工程(工程3)と、前記抽伸加工複合材における前記Ni-Ti系合金抽伸加工材が前記抽伸加工コア材から剥がれない大きさの引張荷重を、前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱するコア除去工程(工程4)と、を有する、管材の製造方法。
[10] 前記コア除去工程(工程4)において、4MPa以上300MPa以下の引張荷重を前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱する、上記[9]に記載の管材の製造方法。
[11] 前記コア除去工程(工程4)の後に行われ、前記管材に対して超弾性付与加熱を施す超弾性付与熱処理工程(工程5)をさらに有する、上記[9]または[10]に記載の管材の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、容易な方法による工業的な製造が可能であり、Ni-Ti系合金材からなり、内壁面の粗さを改善し、回転曲げに対する耐久性に優れた管材およびその製造方法、ならびに管材を用いたステント、ガイドワイヤおよびプレッシャーガイドワイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態の管材の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、引張荷重付与工程(工程4-1)の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、引張荷重付与工程(工程4-1)の他例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す構成の抽伸加工複合材に対する焼鈍工程(工程4-2)を行った後の状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す構成の抽伸加工複合材に対する焼鈍工程(工程4-2)を行った後の状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、コア縮径工程(4-3)の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、コア抜取工程(工程4-4)の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例および比較例で用いる両駆動型回転曲げ疲労試験機を示す概略図である。
【
図9】
図9は、実施例1で製造した管材の内壁面を3D測定レーザー顕微鏡で観察した結果である。
【
図10】
図10は、実施例10で製造した管材の内壁面を3D測定レーザー顕微鏡で観察した結果である。
【
図11】
図11は、比較例6で製造した管材の内壁面を3D測定レーザー顕微鏡で観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、管材内壁面の粗さの改善で知られているフロートプラグ引き、固定プラグ引き、マンドレル引きなどの通常の工程および管材内壁面を物理的あるいは化学的に研磨などで処理する工程を行わずに、管材内壁面の粗さ改善が可能となる製造方法を見出した。さらに、管材内壁面の粗さを改善することにより、回転曲げに対する耐久性に優れる特性が得られることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて完成させるに至った。
【0025】
実施形態の管材は、Ni-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm以下である。
【0026】
図1は、実施形態の管材の一例を示す斜視図である。
図1に示す管材1は、Ni-Ti系合金からなり、内壁面1aの算術平均高さSaが0.55μm以下である。
【0027】
管材1の内壁面1aの算術平均高さSaが0.55μm以下であると、内壁面1aの粗さが改善され、管材1は回転曲げに対する優れた耐久性を有することができる。このような観点から、管材1の内壁面1aの算術平均高さSaは、0.55μm以下であり、好ましくは0.45μm以下であり、小さいほど好ましい。また、内壁面1aの算術平均高さSaの下限値は、加工容易性から、例えば0.08μm以上である。
【0028】
算術平均高さSaは、一般的な粗さ評価で用いられる線状測定の算出平均粗さRaを面に拡張したパラメーターである。管材1を長手方向に縦割りした後、3D測定レーザー顕微鏡を用いて管材1の内壁面1aを測定することで、内壁面1aの算術平均高さSaを得ることができる。
【0029】
Ni-Ti系合金からなる管材1は、不図示の母相(マトリックス)と母相中に存在する複数の非金属介在物(不図示)とで主に構成されている。また、管材1は、超弾性特性を有することが好ましい。
【0030】
また、管材1は、加工性を向上するために、Ni(ニッケル)を54.5質量%以上57.0質量%以下含有し、残部がTi(チタン)および不可避的不純物からなることが好ましい。このような合金組成のなかでも、管材1に含まれるC(炭素)の含有割合が0.04質量%以下、O(酸素)の含有割合が0.04質量%以下であると、医療用Ni-Ti系合金で規定されているASTM F2063-18の条件に管材1が適合するため、管材1を医療用途に適用することができる。
【0031】
Niは、Ni-Ti系合金において、超弾性特性や形状記憶特性を発揮させるために必要な元素である。Ni含有量が54.5質量%以上57.0質量%以下の範囲外であると、管形状の加工が容易ではない。このため、加工性を重視する場合、Ni含有量について、下限値は、好ましくは54.5質量%以上、より好ましくは55.6質量%以上であり、上限値は、好ましくは57.0質量%以下、より好ましくは56.7質量%以下である。
【0032】
Cは、非金属介在物を形成する元素である。C含有量が多くなると、母相中に存在する非金属介在物の数が増加し、管材1中に占める非金属介在物の占有率が高くなることから、管材1の早期破断(少ない回転回数での破断)が生じ易くなる。このため、C含有量が少ないほど好ましい。特に、ASTM F2063-18の規定に基づき、C含有量は0.04質量%以下であることが好ましい。
【0033】
Oは、非金属介在物を形成する元素である。O含有量が多くなると、非金属介在物の粒子径が大きくなることから、管材1の早期破断が生じ易くなる。このため、O含有量が少ないほど好ましい。特に、ASTM 2063-18の規定に基づき、O含有量は0.04質量%以下であることが好ましい。
【0034】
さらに、管材1は、超弾性特性や形状記憶特性を調整するために、Cu(銅)、Ta(タンタル)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、Fe(鉄)およびCo(コバルト)からなる群より選択される少なくとも1種以上の元素を合計で0.00質量%超0.05質量%以下含有してもよい。これらの元素は、超弾性特性や形状記憶特性の調整を行うために必要に応じて管材1に含まれる元素である。上記元素の各濃度が0.05質量%以下であれば、管材1の内壁面1aの算術平均高さSaに影響を及ぼさない。
【0035】
上記した成分以外の残部は、Tiおよび不可避的不純物である。不可避的不純物は、製造工程上、不可避的に混入してしまう含有量レベルの不純物を意味する。不可避的不純物の含有量によっては管材の特性に影響を及ぼす要因になりうるため、不可避不純物の含有量は少ないほど好ましい。例えば、不可避的不純物であるN(窒素)の含有量は0.005質量%以下であることが好ましい。
【0036】
また、管材1を構成する母相は、Ni-Ti系合金からなるオーステナイト相であり、CsCl型の体心立方格子構造をとるB2型結晶構造を有している。
【0037】
Ni-Ti系合金からなる管材1の母相中に存在する非金属介在物としては、主に、TiCなどの炭化物を主とするTiC系介在物と、Ti4Ni2Oxなどの酸窒化物を主とする非TiC系介在物とが混在している。母相中に存在する非金属介在物の量が多くなると、非金属介在物を起点とする早期破断が生じ易くなる。母相中に存在する非金属介在物のうち、特に早期破断の起点となり易い非金属介在物は、非TiC系介在物であり、なかでもTi4Ni2Oxである。
【0038】
また、管材1の外径Rと内径rとの比(外径R/内径r)は1.01以上2.50以下であることが好ましい。管材1の比(外径R/内径r)が上記範囲内であると、管材1が細径であっても回転曲げに対する耐久性が優れており、さらには管材1を医療用デバイスに好適に用いることができる。
【0039】
また、管材1の外径Rが0.15mm以上4.00mm以下であり、管材1の内径rが0.10mm以上3.95mm以下であることが好ましい。管材1の外径Rと内径rとがそれぞれ上記範囲内であると、管材1が細径であっても回転曲げに対する耐久性が優れており、さらには管材1を医療用デバイスに好適に用いることができる。
【0040】
また、管材1が37℃において超弾性特性を有すると、管材1は生体内で超弾性特性を示すことができるため、管材1を医療用デバイスに好適に用いることができる。
【0041】
次に、実施形態の管材の製造方法について説明する。
【0042】
実施形態の管材の製造方法は、Ni-Ti系合金素材に対する溶解・鋳造工程(工程1)と、熱間加工工程(工程2)と、熱間加工工程(工程2)で得られた管状のNi-Ti系合金熱間加工材にコアを挿入してなる複合材に対して抽伸加工を行い、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材とNi-Ti系合金抽伸加工材の内部に延在する抽伸加工コア材とが一体化された抽伸加工複合材を得る、抽伸加工工程(工程3)と、抽伸加工複合材におけるNi-Ti系合金抽伸加工材が抽伸加工コア材から剥がれない大きさの引張荷重を、抽伸加工複合材における抽伸加工コア材に付与しながら、Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱するコア除去工程(工程4)と、を有する。この製造方法で製造される管材は、上記実施形態の管材1である。
【0043】
Ni-Ti系合金素材に対する溶解・鋳造工程(工程1)では、Ni-Ti系合金素材を溶解した後に鋳造を行うことで、Ni-Ti系合金鋳塊を得る。好ましくは、Ni-Ti系合金鋳塊中の炭素濃度([C])および酸素濃度([O])をいずれも0.04質量%以下に調整する。
【0044】
また、工程1において、([C]/[O])比が0.5以上であると、工程1で得られる鋳塊におけるTi4Ni2Oxの生成が抑制されるため、特に留置型デバイスで求められる疲労耐久性を向上できる。
【0045】
Ni-Ti系合金素材を溶解させる方法として、高周波溶解法により、真空雰囲気下やArガスのような不活性ガス雰囲気下でNi-Ti系合金素材の溶解を行う。
【0046】
炭素濃度(質量%)は、使用する坩堝から溶出される炭素量を加味した合計の炭素量が所定量となるように、素材を秤量して調整する。酸素濃度(質量%)は、原料であるチタン地金のグレードに応じてチタン地金に含まれる酸素量が異なることに基づいて、酸素量が所定量となるようにチタン地金のグレードを選択し秤量して調整する。
【0047】
炭素濃度および酸素濃度は、それぞれ、従来公知の炭素濃度分析装置および酸素濃度分析装置を用いて測定できる。
【0048】
工程1の後に実施される熱間加工工程(工程2)は、鍛造工程(工程2-1)を有し、さらには押出工程(工程2-2)を有してもよい。
【0049】
鍛造工程(工程2-1)では、工程1で得られたNi-Ti系合金鋳塊に対して鍛造を行うことで、Ni-Ti系合金熱間加工材を得る。Ni-Ti系合金鋳塊の鍛造時の加熱温度は、好ましくは500℃以上950℃以下であり、より好ましくは600℃以上800℃以下である。工程2-1では、プレス鍛造またはエアーハンマー鍛造を用いることができる。
【0050】
続いて、Ni-Ti系合金熱間加工材をガンドリルで穿孔した後、旋盤により仕上げ加工することで、シームレスの管状のNi-Ti系合金熱間加工材を得る。
【0051】
また、鍛造工程(工程2-1)の後に押出工程(工程2-2)を実施してもよい。押出工程(工程2-2)では、工程2-1で得られたNi-Ti系合金熱間加工材に対し、押出しを行うことで、シームレスの管状のNi-Ti系合金熱間加工材を得る。Ni-Ti系合金熱間加工材の押出し時の加熱温度は、好ましくは500℃以上950℃以下であり、より好ましくは600℃以上800℃以下である。なお、特許文献5では、製造効率を重視する観点で高い減面率の確保を目的としているため、押出し時の最適加工温度は800~1000℃としている。一方、本実施形態では、医療用デバイスに用いられる管材には介在物(金属組織)の制御が重要であるとの観点から、工程1で制御した炭素濃度([C])および酸素濃度([O])がいずれも0.04質量%以下を維持する目的で、上記押出し時の加熱温度範囲が特許文献5とは異なる。
【0052】
工程2の後に実施される抽伸加工工程(工程3)では、工程2で得られた管状のNi-Ti系合金熱間加工材にコアを挿入してなる複合材に対する抽伸加工を行う。
【0053】
まず、工程2で得られた管状のNi-Ti系合金熱間加工材へコアを挿入することで、管状のNi-Ti系合金熱間加工材の内部にコアが挿入されてなる複合材を製造する。管状の熱間加工材へのコアの挿入時、熱間加工材の長手方向に沿った挿入傷が熱間加工材の内壁面に形成されないように注意する必要があるが、熱間加工材の内径寸法に応じて難易度が異なる。そのため、コアの挿入が困難な場合には、熱間加工材の内壁面やコアの外壁面に潤滑剤を塗布しても良い。潤滑剤としては、リン酸塩皮膜、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素が好ましい。
【0054】
コアを挿入する前の管状の熱間加工材について、外径は、好ましくは0.75mm以上51.00mm以下、より好ましくは2.50mm以上10.00mm以下であり、内径は、好ましくは0.50mm以上9.00mm以下である。また、熱間加工材の外径に対する内径の比は、好ましくは1.01以上2.50以下、より好ましくは1.15以上2.00以下である。
【0055】
ここで、熱間加工材にコアを挿入する前のコアの外径と熱間加工材の内径との寸法差を2%以上25%以下に設定すると、コア挿入時のクリアランスを十分に確保できるため、複合材の容易な組み立てが可能となる。また、コアの変形抵抗を熱間加工材の変形抵抗と同程度にすると、熱間加工材の内壁面の座屈を抑制できると共に、熱間加工材から細径管材までの加工を良好な状態で行うことができる。この際、コアと熱間加工材との変形抵抗を調整する目的で、複合材に対して後述の温間加工を施してもよい。
【0056】
熱間加工材へ挿入する前のコアは冷間加工上がりであることが好ましい。ここで、本発明者らは、管材の内壁面の算術平均高さSaは挿入前のコアの外壁面の粗さ状態が重要であることを見出している。そのため、コアの外壁面の算術平均高さSaは、後述する「[3] コアの外壁面の算術平均高さSa」の記載に基づいて測定した場合、好ましくは0.03μm以上0.30μm以下、より好ましくは0.03μm以上0.20μm以下である。コアの焼鈍条件は、一部が大気雰囲気で行っても良いが、仕上げは不活性雰囲気で行うことが好ましい。
【0057】
コアの材質としては、例えばSUS304、SUJ2、SS400、SCM415、SUS316、SUS309S、SUS310S、Ni(54.5~56.0質量%)-Ti(+不可避不純物)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
続いて、複合材に対して抽伸加工を行う。抽伸加工を行うことで、複合材が抽伸加工された抽伸加工複合材を得る。抽伸加工複合材は、管状のNi-Ti系合金熱間加工材が抽伸加工された管状のNi-Ti系合金抽伸加工材と、Ni-Ti系合金抽伸加工材の内部に延在し、コアが抽伸加工された抽伸加工コア材と、が一体化されてなる。
【0059】
抽伸加工は冷間加工または温間加工である。冷間加工は、複合材を温度調整された炉に投入せずに抽伸加工を行う。温間加工は、複合材の温度を制御しながら複合材の抽伸加工を行い、コアと熱間加工材との変形抵抗を調整する目的で行われる。温間加工の温度は、炉内設定温度で100℃以上800℃以下であることが好ましい。加熱雰囲気は、管材内壁面の状態に影響しないため大気雰囲気でも良いが、管材外壁面の状態を保つ目的で不活性雰囲気下であることが好ましい。
【0060】
工程3の加工率は、少なくとも10%以上かつ60%未満である。
【0061】
また、直径が減少し続けるダイを介した複数の延伸を複合材に施してもよい。
【0062】
工程3によって、外径が0.15mm以上4.00mm以下の抽伸加工複合材を得る。
【0063】
また、抽伸加工工程(工程3)では、複合材に対して、抽伸加工と焼鈍とを繰り返し施してもよい。抽伸加工によって複合材(管状のNi-Ti系合金加工材)や抽伸加工複合材(管状のNi-Ti系合金抽伸加工材)に生じたひずみを焼鈍にて除去して回復するため、抽伸加工中あるいは抽伸加工後に焼鈍を行う。
【0064】
工程3における焼鈍温度は、好ましくは500℃以上800℃以下であり、より好ましくは600℃以上800℃以下である。焼鈍の加熱雰囲気は、管材内壁面の状態に影響しないため大気雰囲気でも良いが、管材外壁面の状態を保つ目的で不活性雰囲気下であることが好ましい。
【0065】
上記の寸法になるまで、複合材の抽伸加工と焼鈍とを繰り返す。
【0066】
工程3の後に実施されるコア除去工程(工程4)では、工程3で得られた抽伸加工複合材から抽伸加工コア材のみを除去し、管材を得る。コア除去工程(工程4)は、引張荷重付与工程(工程4-1)、焼鈍工程(工程4-2)、コア縮径工程(工程4-3)およびコア抜取工程(工程4-4)を有する。コア縮径工程(工程4-3)は任意工程である。
【0067】
引張荷重付与工程(工程4-1)では、抽伸加工複合材における管状のNi-Ti系合金抽伸加工材が抽伸加工コア材から剥がれない大きさの引張荷重を、抽伸加工複合材における抽伸加工コア材に付与する。抽伸加工コア材に付与する引張荷重は、好ましくは4MPa以上300MPa以下、より好ましくは20MPa以上150MPa以下である。
【0068】
図2は、引張荷重付与工程(工程4-1)の一例を示す断面図であり、
図3は、引張荷重付与工程(工程4-1)の他例を示す断面図である。
図2に示すように、抽伸加工複合材10を構成する管状のNi-Ti系合金抽伸加工材20の両端部に円周方向に亘ってスコアライン21を入れてもよい。スコアライン21は、例えばNi-Ti系合金抽伸加工材20の外壁面から内壁面に貫通する。このような構成では、抽伸加工複合材10におけるスコアライン21よりも端部側の部分を掴みながら、抽伸加工コア材30に引張荷重を付与する。また、
図3に示すように、Ni-Ti系合金抽伸加工材20の両端部を削って、抽伸加工複合材10の両端部から抽伸加工コア材30を露出させてもよい。このような構成では、抽伸加工複合材10の両端部で露出している抽伸加工コア材30を掴みながら、抽伸加工コア材30に引張荷重を付与する。
【0069】
抽伸加工複合材10の抽伸加工コア材30に対して付与する引張荷重が上記範囲よりも大きい、すなわち、抽伸加工複合材10におけるNi-Ti系合金抽伸加工材20が抽伸加工コア材30から剥がれる大きさの引張荷重を付与すると、Ni-Ti系合金抽伸加工材20の塑性変形が生じるため、算術平均高さSaを含めた管材1の材料特性が悪化する。その結果、管材1の内壁面1aの算術平均高さSaが0.55μm超になる。
【0070】
引張荷重付与工程(工程4-1)の後に実施される焼鈍工程(工程4-2)では、引張荷重付与工程(工程4-1)で抽伸加工複合材10における抽伸加工コア材30に上記大きさの引張荷重を付与している状態で、Ni-Ti系合金抽伸加工材20を加熱する。加熱温度は、150℃以上800℃以下、好ましくは450℃以上700℃以下である。
【0071】
図4は、
図2に示す構成の抽伸加工複合材10に対する焼鈍工程(工程4-2)を行った後の状態を示す断面図であり、
図5は、
図3に示す構成の抽伸加工複合材10に対する焼鈍工程(工程4-2)を行った後の状態を示す断面図である。
図4~5に示すように、焼鈍工程(工程4-2)を行うことで、Ni-Ti系合金抽伸加工材20の熱膨張と抽伸加工コア材30の熱膨張との違いから、抽伸加工複合材10から抽伸加工コア材30を剥離させて、管材1を得る。焼鈍工程(工程4-2)では、Ni-Ti系合金抽伸加工材20が熱膨張により均一に拡張するため、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材20の内壁面では、Ni-Ti系合金抽伸加工材20からの抽伸加工コア材30の剥離に由来する擦れやキズなどの発生を抑制できる。また、焼鈍工程(工程4-2)によって、抽伸加工複合材10から抽伸加工コア材30を剥離させて管材1を得ると共に、管材1に超弾性特性を付与してもよい。
【0072】
また、焼鈍工程(工程4-2)の後にコア縮径工程(工程4-3)を実施してもよい。
図6は、コア縮径工程(工程4-3)の一例を示す断面図であり、
図4の構成に対してコア縮径工程(工程4-3)を施した状態を示している。
図6に示すように、コア縮径工程(工程4-3)では、管材1と分離している焼鈍後の抽伸加工コア材30に対して引張荷重を付与する。コア縮径工程(工程4-3)で抽伸加工コア材30に付与する引張荷重は、引張荷重付与工程(工程4-1)で抽伸加工コア材30に付与する引張荷重よりも大きい。また、コア縮径工程(工程4-3)の引張荷重は、管材1には付与されない。
【0073】
コア縮径工程(工程4-3)によって抽伸加工コア材30のみに大きな引張荷重を付与することで、抽伸加工コア材30を縮径できる。そのため、焼鈍工程(工程4-2)の後の構成に比べて、管材1の内壁面と抽伸加工コア材30の外壁面との間のクリアランスを大きくできる。
【0074】
図7は、コア抜取工程(工程4-4)の一例を示す断面図である。
図7に示すように、焼鈍工程(工程4-2)またはコア縮径工程(工程4-3)の後に実施されるコア抜取工程(工程4-4)では、管材1から抽伸加工コア材30を抜取ることで、管材1を製造できる。コア抜取工程(工程4-4)では、管材1の内壁面1aと抽伸加工コア材30の外壁面30aとが完全に分離している状態で、管材1から抽伸加工コア材30を抜取るため、管材1の内壁面1aに抽伸加工コア材30の抜取由来の擦れやキズなどの発生を抑制できることから、内壁面1aの算術平均高さSaが上記範囲内の管材1を製造することができる。
【0075】
また、
図4および
図6の構成である場合には、
図7に示すように、抽伸加工コア材30の一方の端部側を切断して、Ni-Ti系合金抽伸加工材20の一部と一体化している抽伸加工コア材30の片端部を除去した後、管材1から抽伸加工コア材30を抜取る。そのため、管材1から抽伸加工コア材30を抜取る時に、抽伸加工コア材30の片端部に付着しているNi-Ti系合金抽伸加工材20の一部が管材1の内壁面1aに接触することを回避できることから、管材1の内壁面1aに加工材20由来の擦れやキズなどの発生を防止できる。
【0076】
また、
図6に示すコア縮径工程(工程4-3)を行うと、
図4および5に示す焼鈍工程(工程4-2)の後の構成に比べて、管材1の内壁面1aと抽伸加工コア材30の外壁面30aとの間のクリアランスを大きくできる。そのため、コア抜取工程(工程4-4)では、管材1の内壁面1aに抽伸加工コア材30の抜取由来の擦れやキズなどの発生をさらに抑制できる。その結果、管材1の内壁面1aの算術平均高さSaをさらに小さくできる。
【0077】
このように、従来技術において必要とされているプラグ引き加工やマンドレル加工、内壁面研磨加工などの特殊な後加工工程を行わずに、上記の工業的に容易な方法によって、内壁面の粗さが良好で細径の管材を製造することができる。さらには、上記の工業的に容易な方法によって、従来よりも長い管材、例えば長さ10m~100m程度の管材を容易に製造することができる。
【0078】
また、実施形態の管材の製造方法は、コア除去工程(工程4)の後に行われ、管材1に対して超弾性付与加熱を施す超弾性付与熱処理工程(工程5)をさらに有してもよい。管材1の加熱雰囲気および加熱温度などの超弾性付与加熱の条件は、管材1に超弾性特性を付与できれば、特に限定されるものではない。
【0079】
例えば、管材を不活性ガス雰囲気下で600℃以下の温度で加熱すると、Ni-Ti系合金からなる管材に存在する非金属介在物の発生量を抑えることができる。また、加熱温度は、450℃以上580℃以下であることが好ましい。また、管材に引張荷重を付与して真っすぐに伸長している状態で、超弾性付与熱処理工程(工程5)を行うと、管材の真直性を向上できる。
【0080】
また、実施形態の管材の製造方法は、コア除去工程(工程4)と超弾性付与熱処理工程(工程5)との間、または超弾性付与熱処理工程(工程5)を行わない場合にはコア除去工程(工程4)の後に、管材の寸法を微調整する目的あるいは超弾性付与熱処理工程(工程5)の前段階加工処理の目的で、追加加工を実施しても良い。
【0081】
追加加工での管材の総減面率は、10%以上120%未満であることが好ましく、10%以上84%未満であることがより好ましい。管材の総減面率とは、JIS H0500:1998に記載される通り、加工によって減少した断面積の原断面積に対する割合であり、加工前の材料の断面積Aoと加工後の断面積Aの差を加工前の材料の断面積Aoで割った百分率(%)((Ao-A)/Ao×100%)で表す。ここでは、追加加工前の管材の断面積Aoと追加加工後の管材の断面積Aを測定し、上記計算式を用いて総減面率を算出する。
【0082】
実施形態の管材は、上記のように容易な方法により工業的な製造が可能であり、内壁面の粗さを改善し、回転曲げに対する耐久性に優れているため、医療用デバイスを構成する管材に好適に用いることができる。医療用デバイスとしては、ステント、ガイドワイヤ、プレッシャーガイドワイヤが好適である。こうしたステント、ガイドワイヤ、プレッシャーガイドワイヤは、それぞれ管材から形成されている。さらに、管材の内壁面の粗さが改善しているため、管材内部に別のデバイスを挿入して使用される形態が新規医療デバイスとして期待できる。
【0083】
以上説明した実施形態によれば、容易な方法により、Ni-Ti系合金材からなり、内壁面の粗さを改善し、回転曲げに対する耐久性に優れた管材を得ることができる。
【0084】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0085】
次に、実施例および比較例について説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。また、表1~2に示す各成分の組成(質量%)は、RIR(Reference Intensity Ratio)法により求めたものである。
【0086】
(実施例1)
溶解・鋳造工程(工程1)として、Ni-Ti系合金素材であるNi地金およびTi地金を高周波溶解炉で溶解させて得られた溶湯を注湯し、表1に示す合金組成を有するNi-Ti系合金鋳塊を得た。続いて、熱間加工工程(工程2)として、得られた鋳塊に対して、500℃以上950℃以下で鍛造を行い、Ni-Ti系合金鍛造材を得た。続いて、鍛造材をガンドリルで穿孔した後、旋盤により仕上げ加工することで、シームレスの管状のNi-Ti系合金熱間加工材を得た。続いて、抽伸加工工程(工程3)として、表3に示すコアを管状の加工材に挿入してなる複合材に対して抽伸加工を行った。こうして、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材とNi-Ti系合金抽伸加工材の内部に延在する抽伸加工コア材とが一体化された抽伸加工複合材を得た。
【0087】
次に、コア除去工程(工程4)として、抽伸加工複合材を構成する管状のNi-Ti系合金抽伸加工材の両端部に円周方向に亘ってスコアラインを入れた。続いて、抽伸加工複合材におけるスコアラインよりも端部側の部分を掴みながら、表3に示す引張荷重を抽伸加工コア材に付与した。続いて、表3に示す引張荷重を抽伸加工コア材に付与している状態で、表3に示す焼鈍温度でNi-Ti系合金抽伸加工材を加熱した。こうして、超弾性特性を付与させ、かつ、抽伸加工複合材から抽伸加工コア材を剥離させて、管材を得た。続いて、抽伸加工コア材の一方の端部側を切断して、Ni-Ti系合金抽伸加工材の一部と一体化している抽伸加工コア材の片端部を除去した後、管材から抽伸加工コア材を抜取った。こうして、長さ10~100m、表3に示すサイズ、算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0088】
(実施例2)
コア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表3に示す値に変えたこと、および管材に対して表3に示す総減面率の追加加工を施したこと以外、実施例1と同様にして、表3に算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0089】
(実施例3~8)
表3に示すコアを用いたこと、およびコア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表3に示す値に変えたこと以外、実施例1と同様にして、表3に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0090】
(実施例9~16)
表3に示すコアを用いたこと、コア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表3に示す値に変えたこと、および管材に対して表3に示す総減面率の追加加工を施したこと以外、実施例1と同様にして、表3に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0091】
(比較例1~4)
表3に示すコアを用いたこと、およびコア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表3に示す値に変えたこと以外、実施例1と同様にして、表3に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。なお、比較例1~2では、焼鈍前に引張荷重を付与せず、かつ引張荷重を抽伸加工コア材に付与しない状態で焼鈍を行った。また、比較例4では、焼鈍を行わなかった。
【0092】
(比較例5~13)
表3に示すコアを用いたこと、コア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表3に示す値に変えたこと、および管材に対して表3に示す総減面率の追加加工を施したこと以外、実施例1と同様にして、表3に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。なお、比較例6~11では、焼鈍前に引張荷重を付与せず、かつ引張荷重を抽伸加工コア材に付与しない状態で焼鈍を行った。
【0093】
(実施例17~21)
抽伸加工工程(工程3)において、表4に示すコアを用いたこと、および複合材に対して抽伸加工と表4に示す温度の焼鈍とを繰り返し施したこと、ならびにコア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表4に示す値に変えたこと以外、実施例1と同様にして、表4に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0094】
(実施例22~25)
抽伸加工工程(工程3)において、表4に示すコアを用いたこと、および複合材に対して抽伸加工と表4に示す温度の焼鈍とを繰り返し施したこと、コア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表4に示す値に変えたこと、ならびに管材に対して表4に示す総減面率の追加加工を施したこと以外、実施例1と同様にして、表4に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0095】
(実施例26~36)
表5に示すコアを用いたこと、コア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表5に示す値に変えたこと、および管材に対して表5に示す総減面率の追加加工を施したこと以外、実施例1と同様にして、表5に示すサイズ、算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。なお、実施例27および31では、追加加工を行わなかった。
【0096】
(実施例37~48、比較例14~15)
表6に示すように表1~2に示す合金組成を有するNi-Ti系合金鋳塊を用いたこと、表6に示すコアを用いたこと、コア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表6に示す値に変えたこと、および管材に対して表6に示す総減面率の追加加工を施したこと以外、実施例1と同様にして、表6に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0097】
(実施例49~58)
表7に示すように表2に示す合金組成を有するNi-Ti系合金鋳塊を用いたこと、およびコア除去工程(工程4)における焼鈍前の引張荷重と焼鈍温度を表7に示す値に変えたこと以外、実施例1と同様にして、表7に示す算術平均高さSaおよび算出平均粗さRaを有する内壁面を備える管材を製造した。
【0098】
[測定および評価]
上記実施例および比較例で得られた管材について、下記の測定および評価を行った。
【0099】
[1] 管状の内壁面の算術平均高さSa
得られた管材における両端部から100mm以上離れた部分を切断して採取した管状試料を長手方向に縦割りした後、LEXT OLS5100 3D測定レーザー顕微鏡を用いて管材の内壁面を4箇所測定した。
【0100】
ISO 4288 1996E(JIS B0633:2001)に記載の通り、0.1<Ra(μm)<2.0では、粗さ曲線の評価長さ(mm)が最低4mm以上と規定されているのに対して、算術平均高さSaについては詳細な測定長さが規定されていない。また、JIS B0681-2:2018およびJIS B0681-3:2019にて三次元の表面性状に関する条件が記載されているが、二次元粗さ測定と比較してλcおよびλsのカットオフに関する規定はない。
【0101】
そこで、本測定では、管材の円周方向をX方向、管状の長手方向をY方向とし、X方向35μmとY方向125μmの測定面(1視野)に対して5視野をY方向に連結した画像(連結画像には重複部分があるので、連結した画像のY方向の長さは約592μm)を使用して解析し、その際の各フィルターのカットオフ値はなしとした。多次曲線4次除去処理を行い、X方向の湾曲を平面に変換してから、解析を行って、算術平均高さを得た。そして、測定した4箇所で得られた算術平均高さのうち、最も小さい値を管材内壁面の算術平均高さSaとした。
【0102】
[2] 管状の内壁面の算術平均粗さRa
上記と同様にして3D測定レーザー顕微鏡を用いて管材の内壁面を測定して得られた画像において、Y方向に沿った評価長さ4mm以上の7本ライン計測を行った。そして、測定した4箇所で得られた算術平均粗さのうち、最も小さい値を管材内壁面の算術平均粗さRaとした。
【0103】
[3] コアの外壁面の算術平均高さSa
コアにおける両端部から100mm以上離れた部分と中央部分について、上記と同様にして3D測定レーザー顕微鏡を用いてコアの外壁面を測定し、算術平均高さを得た。そして、測定した3箇所で得られた算術平均高さのうち、最も大きい値の小数点第二位の値を次のように0.05μmごとにまとめた数値をコア外壁面の算術平均高さSaとした。具体的には、0.08μm以上0.10μm以下の値は算術平均高さSa0.10μm、0.11μm以上0.15μm以下の値は算術平均高さSa0.15μm、0.16μm以上0.20μm以下の値は算術平均高さSa0.20μm、0.25μm以上0.30μm以下の値は算術平均高さSa0.30μmとした。なお、表1における実施例18の0.05μmおよび実施例19の0.03μmについては、上記に沿って0.05でまとめるには小さすぎる値であったため、最も大きい値をコア外壁面の算術平均高さSaとした。
【0104】
[4] 1.0%の曲げ歪みに対する破断耐久性
回転曲げに対する耐久性として、管材に1.0%の曲げ歪みを付与した状態で回転曲げ試験を行い、歪みに対する破断耐久性を測定した。具体的には、
図8に示す両駆動型回転曲げ疲労試験機50を用い、管材1の1.0%の曲げ歪みに対する破断耐久性試験を行った。なお、管材に負荷する最大曲げ歪み1.0%(strain)は、下記式(1)から設定した。また、チャック間距離Cは、下記式(2)にから設定した。Rは、管材の外径であり、Lは、管材の長さである。
【0105】
両駆動型回転曲げ疲労試験機50では、ヒーター51および攪拌装置52を有する攪拌装置用モーター付きヒーター電源53によって、シリコーンオイル54を循環させながら、シリコーンオイル54の温度を37℃に維持した。そして、積算回転計付きモーター55によって、管材1に1.0%の曲げ歪みを付与した状態で、管材1を回転数300回/分で回転させ、管材1が破断するまでの回数(破断回数)を測定した。ただし、変態温度が高い実施例48のみ、シリコーンオイル54の温度を100℃に維持した。この測定を3つの試料で測定し(n=3)、最低回数を破断回数とした。破断耐久性について、以下のランク付けをした。
【0106】
◎:破断回数が9000回以上であった。
〇:破断回数が7500回以上9000回未満であった。
×:破断回数が7500回未満であった。
【0107】
【0108】
【0109】
なお、通常では、回転曲げ試験は、試料表面の物理的状態(粗度、空隙、欠陥など)の影響を受けるため、試料表面の電解研磨を行うことで、試料表面の物理的状態を一定化している。しかしながら、管材の高い歪み曲げの場合、管材の電解研磨状態が管材の破断回数に影響することが明らかになったため、ここでは、管材の外壁面の算術平均高さSaを0.15μm以上0.25μm以下に加工した後に回転曲げ試験を行った。
【0110】
[5] 管材の特性評価
実施例1~58で製造した管材に対して、引張試験において6%の歪みを負荷した後に除荷もしくは除荷後に加熱することで、残留歪みが0.5%以下であったため、実施例1~58の管材は超弾性特性や形状記憶特性を有していた。
【0111】
[6] 酸素濃度および炭素濃度
実施例1~58で製造した管材に含まれる酸素濃度および炭素濃度について、炭素濃度分析装置および酸素濃度分析装置を用いて測定した結果、いずれも0.04質量%以下であった。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
図9は、実施例1で製造した管材の内壁面を3D測定レーザー顕微鏡で観察した結果である。
図10は、実施例10で製造した管材の内壁面を3D測定レーザー顕微鏡で観察した結果である。
図11は、比較例6で製造した管材の内壁面を3D測定レーザー顕微鏡で観察した結果である。
【0120】
表1~7および
図9~11に示すように、全ての実施例において、所定条件の工程で製造した管材は、Ni-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm以下であった。そのため、回転曲げに対する耐久性に優れていた。一方、全ての比較例において、所定条件外の工程で製造した管材は、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm超であったため、回転曲げに対する耐久性が劣っていた。
【0121】
具体的には、実施例1~16の結果から、使用したコアの材質を変えても、所定条件の工程で管材を製造することによって、内壁面の算術平均高さSaを0.55μm以下に制御できた。実施例17~25の結果から、抽伸加工工程(工程3)において、コアの外壁面のSaを変えても、内壁面の算術平均高さSaを0.55μm以下に制御できた。また、抽伸加工工程(工程3)において、抽伸加工と焼鈍とを繰り返し施しても、内壁面の算術平均高さSaを0.55μm以下に制御できた。実施例26~36の結果から、外径および内径が異なる管材について、内壁面の算術平均高さSaを0.55μm以下に制御できた。実施例37~58の結果から、合金組成が異なる管材について、内壁面の算術平均高さSaを0.55μm以下に制御できた。
【0122】
また、比較例1~2では、焼鈍前に引張荷重を付与せず、かつ引張荷重を抽伸加工コア材に付与しない状態で焼鈍を行ったことから、抽伸加工複合材から抽伸加工コア材を剥離できず、その結果、管材を製造できなかった。比較例3では、抽伸加工複合材において、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材が抽伸加工コア材から剥がれる大きさの引張荷重を抽伸加工コア材に付与したため、Ni-Ti系合金抽伸加工材が塑性変形し、管形状の制御ができなかったことから、管材を製造不可と判断した。比較例4では、引張荷重を抽伸加工コア材に付与している状態での焼鈍を行わなかったことから、抽伸加工複合材から抽伸加工コア材を剥離できず、その結果、管材を製造できなかった。比較例5では、焼鈍温度が800℃超であったため、非金属介在物の制御が不十分であったことから、管材内壁面のSaが0.55μm超であり、回転曲げに対する耐久性は実施例の管材に比べて劣っていた。比較例6~11では、コアの材質によっては、焼鈍前に引張荷重を付与せず、かつ引張荷重を抽伸加工コア材に付与しない状態で焼鈍を行っても、管材を製造できた。しかしながら、管材から抽伸加工コア材を抜取る際、実施例では発生しない摩擦抵抗を感じた。その結果、管材内壁面のSaが0.55μm超であり、回転曲げに対する耐久性は実施例の管材に比べて劣っていた。比較例12~13では、管材に対する追加加工の総減面率が大きすぎたことから、管材内壁面のSaが0.55μm超であり、回転曲げに対する耐久性は実施例の管材に比べて劣っていた。比較例14では、合金組成のNi濃度が低かったため、鍛造により割れが生じたことから、それ以降の工程を行うことができなかった。比較例15では、合金組成のNi濃度が高かったため、比較例14と同様に割れが生じたことから、それ以降の工程を行うことができなかった。
前記コア除去工程(工程4)において、4MPa以上300MPa以下の引張荷重を前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱する、請求項9に記載の管材の製造方法。
前記コア除去工程(工程4)において、4MPa以上300MPa以下の引張荷重を前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱する、請求項10に記載の管材の製造方法。
Niを54.5質量%以上57.0質量%以下含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなるNi-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.08μm以上0.55μm以下であり、外径と内径との比(外径/内径)が1.01以上2.50以下である、管材。
Niを54.5質量%以上57.0質量%以下含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなるNi-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.08μm以上0.55μm以下であり、外径が0.15mm以上4.00mm以下であり、内径が0.10mm以上3.95mm以下である、管材。
Niを54.5質量%以上57.0質量%以下含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなるNi-Ti系合金からなり、内壁面の算術平均高さSaが0.55μm以下であり、外径と内径との比(外径/内径)が1.01以上2.50以下である管材の製造方法であって、
Ni-Ti系合金素材に対する溶解・鋳造工程(工程1)と、
熱間加工工程(工程2)と、
前記熱間加工工程(工程2)で得られた管状のNi-Ti系合金熱間加工材にコアを挿入してなる複合材に対して抽伸加工を行い、管状のNi-Ti系合金抽伸加工材と前記Ni-Ti系合金抽伸加工材の内部に延在する抽伸加工コア材とが一体化された抽伸加工複合材を得る、抽伸加工工程(工程3)と、
前記抽伸加工複合材における前記Ni-Ti系合金抽伸加工材が前記抽伸加工コア材から剥がれない大きさの引張荷重を、前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱するコア除去工程(工程4)と、
を有する、管材の製造方法。
前記コア除去工程(工程4)において、4MPa以上300MPa以下の引張荷重を前記抽伸加工複合材における前記抽伸加工コア材に付与しながら、前記Ni-Ti系合金抽伸加工材を150℃以上800℃以下に加熱する、請求項9に記載の管材の製造方法。