(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139132
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】加工システム
(51)【国際特許分類】
B23P 17/00 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
B23P17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049941
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 亮太
(57)【要約】
【課題】加工装置の制御ユニット、もしくは、ポンプユニットの制御ユニットのハングアップを検出して、適切に高圧の液体の噴出を停止できる加工システムを提供すること。
【解決手段】加工システム1は、加工装置100とポンプユニット200とを備え、噴射ノズル131を有する加工装置100を制御する第1制御ユニット160とポンプユニット200のポンプ210を制御する第2制御ユニット260とが所定間隔で通信し互いのハングアップを監視し、第1制御ユニット160が、第2制御ユニット260がハングアップしたと判定した場合、ポンプユニット200への電力供給を遮断して噴射ノズル131からの液体600の噴射を停止し、第2制御ユニット260が、第1制御ユニット160がハングアップしたと判定した場合、ポンプ210への電力供給を遮断して、噴射ノズル131からの液体600の噴射を停止する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工システムであって、
保持テーブルに保持された被加工物に加圧された液体を噴射する噴射ノズルと、該保持テーブルと該噴射ノズルとを相対的に移動させる移動ユニットと、各ユニットを制御する第1制御ユニットと、を有する加工装置と、
該噴射ノズルに供給される該液体を加圧するポンプと、該第1制御ユニットと通信し、該ポンプを制御する第2制御ユニットと、を有するポンプユニットと、を備え、
該第1制御ユニットと、該第2制御ユニットと、が所定間隔で通信し、互いのハングアップを監視し、
該第1制御ユニットが、該第2制御ユニットがハングアップしたと判定した場合は、該第1制御ユニットが該ポンプユニットへの電力供給を遮断して該噴射ノズルからの該液体の噴射を停止し、
該第2制御ユニットが、該第1制御ユニットがハングアップしたと判定した場合は、該第2制御ユニットが該ポンプへの電力供給を遮断して、該噴射ノズルからの該液体の噴射を停止することを特徴とする加工システム。
【請求項2】
該加工システムは、電源と加工装置とポンプとを接続する電気回路を有し、
該電気回路は、
該電源と、該加工装置と、該ポンプと、に接続され、該第1制御ユニットによって該電気回路を開閉する第1コンタクタと、
該第1コンタクタと、該ポンプと、の間に設置され、該第2制御ユニットによって該電気回路を開閉する第2コンタクタと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された液体によって被加工物を加工する加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧された液体によって被加工物を加工する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置において、加工装置の制御ユニットは、供給する液体を加圧するポンプを含むポンプユニットの制御ユニットを、通信によって制御している。例えば、加工装置の制御ユニットは、ポンプの圧力の設定や動作命令、現在のポンプの圧力やポンプのモータの回転数等のステータス情報やアラーム、ポンプの消耗品の寿命情報等を、ポンプユニットの制御ユニットとの間で通信する。
【0005】
ポンプが高圧で動作中に、加工装置の制御ユニットがハングアップ、すなわち通信処理が出来なくなっている状態となってしまった場合、加工装置の制御ユニットからポンプユニットの制御装置にポンプを停止する命令が送信できないため、ポンプによって加圧された高圧の液体を噴出し続けてしまうという問題があった。また、ポンプユニットの制御ユニットがハングアップしてしまった場合も同様のことが考えられ、ポンプユニットの制御装置が加工装置の制御ユニットからポンプを停止する命令が受信できないため、ポンプによって加圧された高圧の液体を噴出し続けてしまうという問題があった。これにより、被加工物の1点に高圧の液体が当たり続けることになり、被加工物に穴が空き、さらに長時間高圧の液体を当て続けると、被加工物を保持する保持テーブルにまで穴が空いてしまうという問題が生じてしまう恐れがあった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工装置の制御ユニット、もしくは、ポンプユニットの制御ユニットのハングアップを検出して、適切に高圧の液体の噴出を停止できる加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工システムは、加工システムであって、保持テーブルに保持された被加工物に加圧された液体を噴射する噴射ノズルと、該保持テーブルと該噴射ノズルとを相対的に移動させる移動ユニットと、各ユニットを制御する第1制御ユニットと、を有する加工装置と、該噴射ノズルに供給される該液体を加圧するポンプと、該第1制御ユニットと通信し、該ポンプを制御する第2制御ユニットと、を有するポンプユニットと、を備え、該第1制御ユニットと、該第2制御ユニットと、が所定間隔で通信し、互いのハングアップを監視し、該第1制御ユニットが、該第2制御ユニットがハングアップしたと判定した場合は、該第1制御ユニットが該ポンプユニットへの電力供給を遮断して該噴射ノズルからの該液体の噴射を停止し、該第2制御ユニットが、該第1制御ユニットがハングアップしたと判定した場合は、該第2制御ユニットが該ポンプへの電力供給を遮断して、該噴射ノズルからの該液体の噴射を停止することを特徴とする。
【0008】
該加工システムは、電源と加工装置とポンプとを接続する電気回路を有し、該電気回路は、該電源と、該加工装置と、該ポンプと、に接続され、該第1制御ユニットによって該電気回路を開閉する第1コンタクタと、該第1コンタクタと、該ポンプと、の間に設置され、該第2制御ユニットによって該電気回路を開閉する第2コンタクタと、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、噴射ノズルを有する加工装置を制御する第1制御ユニットと、ポンプユニットのポンプを制御する第2制御ユニットとが互いにハングアップを監視し、一方の制御ユニットが、他方の制御ユニットのハングアップを判定した場合に、ポンプへの電力供給を遮断することにより、噴射ノズルからの高圧の液体の噴出を停止するため、加工装置の第1制御ユニット、もしくは、ポンプユニットの第2制御ユニットのハングアップを検出して、適切に高圧の液体の噴出を停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る加工システムの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の加工システムの加工対象である被加工物の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の被加工物の一部を拡大した拡大斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の加工システムの第1加工ユニットを説明する側断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の加工システムの第2加工ユニットを説明する側断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の加工システムの第2加工ユニットを説明する側断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の加工システムの機能構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る加工システム1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る加工システム1の構成例を示す斜視図である。実施形態に係る加工システム1は、
図1に示すように、加工装置100と、ポンプユニット200と、を備える。加工装置100は、
図1に示すように、保持テーブル110と、第1加工ユニット120と、第2加工ユニット130と、移動ユニット140と、第1制御ユニット160と、を備える。ポンプユニット200は、
図1に示すように、ポンプ210と、第2制御ユニット260と、を備える。
【0013】
図2は、
図1の加工システム1の加工対象である被加工物300の構成例を示す斜視図である。
図3は、
図2の被加工物300の一部を拡大した拡大斜視図である。被加工物300は、
図2に示すように、基板301と、樹脂層(モールド樹脂)302と、を備え、例えば、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ基板である。被加工物300は、
図3に示すように、基板301及び樹脂層302がともに、互いに交差(本実施形態では、直交)する複数のストリート(分割予定ライン)303によって複数の領域に区画されている。基板301は、平面視で矩形状の平板状に形成され、表面304側の複数のストリート303によって区画された複数の領域に、不図示の複数のデバイスチップが配置されている。このデバイスチップは、さらに表面側に金属で形成された電極が配置されている。樹脂層302は、
図2及び
図3に示すように、基板301上に配置されたデバイスチップの表面側に形成され、複数のデバイスチップを電極とともに表面側から封止する。樹脂層302は、本実施形態では、基板301上に配置されたデバイスチップの表面側に、複数箇所(
図2に示す例では2箇所)に分けて形成されているが、本発明ではこれに限定されず、1箇所にまとめて形成されてもよい。被加工物300は、ストリート303に沿って分割して個片化することにより、それぞれデバイスチップを含む複数のパッケージデバイスが得られる。
【0014】
樹脂層302は、
図3に示すように、表面側に、ストリート303に沿って平面視で楕円状の複数の凹部305が形成されている。凹部305は、その長軸方向がストリート303の長さ方向と垂直な方向に沿うように配置されており、凹部305の深さは樹脂層302の厚さよりも小さい。樹脂層302の内部には、デバイスチップの表面側に形成された電極が配置されており、樹脂層302の表面側に凹部305を形成することにより、凹部305の内壁及び底面でこの電極が露出する。この露出した電極は、被加工物300が複数のパッケージデバイスに分割され、個々のパッケージデバイスが他の実装基板に実装される際に、実装基板側に形成された端子と接続される接続用の電極として機能する。被加工物300は、このようにストリート303上に金属を含むので、ストリート303に沿って後述する第1加工ユニット120の切削ブレード121で切削された場合、この金属が切削ブレード121と接触して引き伸ばされて、髭状のバリが発生することがある。
【0015】
なお、被加工物300は、本発明では、上述のパッケージ基板に限定されることなく、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハ、セラミックス板、又はガラス板でも良い。
【0016】
被加工物300は、基板301の表面304の裏側の裏面306に粘着テープ307が貼着され、粘着テープ307の外縁部に環状フレーム308が装着されている。本実施形態では、1枚の被加工物300が1枚の粘着テープ307に貼着されて1つの環状フレーム308と一体とされているが、本発明ではこれに限定されず、複数枚の被加工物300が1枚の粘着テープ307に貼着されて1つの環状フレーム308と一体とされてもよい。1枚の粘着テープ307に貼着される複数枚の被加工物300は、互いに交差するストリート303のうちいずれかの延長線上に互いに並ぶように配置される。
【0017】
保持テーブル110は、
図1に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部と、を備える、いわゆるチャックテーブルである。保持テーブル110の吸着部は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持テーブル110の吸着部の上面は、被加工物300が載置されて、真空吸引源から導入される負圧により、載置された被加工物300を吸引保持する保持面111である。保持面111は、実施形態では、被加工物300が樹脂層302側を上方に向けて載置され、載置された被加工物300を裏面306側から粘着テープ307を介して吸引保持する。保持面111と保持テーブル110の枠体の上面とは、同一平面上に配置されており、水平面であるXY平面に平行に形成されている。保持テーブル110は、移動ユニット140のX軸方向移動ユニット141により水平方向と平行なX軸方向に移動自在に設けられている。保持テーブル110は、不図示の回転駆動源により、鉛直方向に平行でかつXY平面に直交するZ軸回りに回転自在に設けられている。
【0018】
図4は、
図1の加工システム1の第1加工ユニット120を説明する側断面図である。第1加工ユニット120は、保持テーブル110に保持された被加工物300を加工する。第1加工ユニット120は、本実施形態の例では、
図4に示すように、切削ブレード121が回転可能に装着されるスピンドル122を備え、切削ブレード121で保持テーブル110に保持された被加工物300を切削加工する切削ユニットである。
【0019】
このような切削ユニットでは、スピンドル122は、
図4に示すように、水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向と平行な軸心周りに回転可能に設けられ、スピンドル122の先端に装着された切削ブレード121をY軸方向と平行な軸心周りに回転可能に支持する。このような切削ユニットは、
図1に示すように、それぞれ移動ユニット140のY軸方向移動ユニット142-1及びZ軸方向移動ユニット143-1により、Y軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0020】
このような切削ユニットは、
図4に示すように、X軸方向移動ユニット141(
図1参照)により保持テーブル110上の被加工物300に対して相対的に加工送り方向であるX軸方向に沿って移動し、かつ、スピンドル122によりY軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられた切削ブレード121で、被加工物300を例えばストリート303に沿って切削して、被加工物300を完全に分割しない深さのハーフカット溝309を形成する。
【0021】
図5及び
図6は、いずれも、
図1の加工システム1の第2加工ユニット130を説明する側断面図である。
図6は、
図5の一部を拡大した拡大図である。第2加工ユニット130は、保持テーブル110に保持された被加工物300を加工する。第2加工ユニット130は、
図5及び
図6に示すように、噴射ノズル131と、カバー132と、チューブ133と、を備え、噴射ノズル131によって噴射した高圧の液体600で被加工物300を加工するウォータージェットユニットである。ここで、液体600は、後述する液体供給源503(
図7参照)から供給され、本実施形態では、例えば、純水である。
【0022】
噴射ノズル131は、
図5に示すように、保持テーブル110の保持面111に対向するように下方に向けられた先端側が、噴射口134が形成されている。噴射ノズル131は、基端側が、ポンプユニット200のポンプ210が接続されており、ポンプ210を介して液体供給源503が接続されている。噴射ノズル131は、液体供給源503によって供給され、ポンプ210によって高圧化された液体600を、噴射口134から噴射する。
【0023】
カバー132は、
図6に示すように、内部が空洞の半球状(お椀型)に形成されており、カバー132の平面視で中央に位置する領域(頂部)には開口135が形成されている。カバー132は、開口135に噴射ノズル131が挿入されることで、円環状の縁136が保持テーブル110の保持面111と対向するように噴射ノズル131に装着される。噴射ノズル131に装着されたカバー132は、噴射ノズル131により高圧の液体600を噴射して被加工物300を加工する領域(加工領域)を覆うように位置付けられ、高圧の液体600による被加工物300の加工によって生じたミストや加工屑の外部への飛散を防止する。カバー132は、本実施形態では半球状に形成されているが、本発明ではこれに限定されず、ミストや加工屑の飛散を防止可能であれば形状を適宜変更でき、例えば、内部が空洞の円錐状に形成されていてもよい。
【0024】
チューブ133は、
図6に示すように、一端がカバー132に接続されており、チューブ133の内部がカバー132の内部と連通している。チューブ133は、他端が不図示の吸引源と接続されている。チューブ133は、吸引源からの負圧をカバー132の内部に導入することにより、カバー132の内部で生じたミストや加工屑を吸引除去する。
【0025】
第2加工ユニット130は、
図1に示すように、それぞれ移動ユニット140のY軸方向移動ユニット142-2及びZ軸方向移動ユニット143-2により、Y軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられている。第2加工ユニット130は、
図5及び
図6に示すように、噴射ノズル131により噴射口134から保持テーブル110に保持された被加工物300に向けて高圧の液体600を噴射しながら、X軸方向移動ユニット141(
図1参照)により保持テーブル110上の被加工物300に対して相対的に加工送り方向であるX軸方向に沿って移動することにより、高圧の液体600により被加工物300を例えばストリート303に沿って加工して、被加工物300が第1加工ユニット120の切削ブレード121で切削されたことによって発生し、ハーフカット溝309の上方や内部等に残留したバリを除去する。このように、第2加工ユニット130は、バリが発生しやすい被加工物300に対して好適に使用される。
【0026】
加工装置100は、
図1に示すように、第1加工ユニット120と第2加工ユニット130とが概ねY軸方向に沿って対向して設けられている。加工装置100は、本実施形態では、切削ユニットである第1加工ユニット120とウォータージェットユニットである第2加工ユニット130とがそれぞれ1つずつ設けられているが、本発明ではこれに限定されず、ウォータージェットユニットである第2加工ユニット130が少なくとも1つ設けられていればよく、例えば、切削ユニットである第1加工ユニット120に代えてウォータージェットユニットである第2加工ユニット130をもう1つ設けてもよい。加工装置100では、第1加工ユニット120に隣接して撮像ユニット128が備えられており、第2加工ユニット130に隣接して撮像ユニット138が備えられている。
【0027】
撮像ユニット128,138は、いずれも、保持テーブル110に保持された被加工物300を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット128,138は、それぞれ、保持テーブル110に保持された被加工物300の表面側を撮像して、被加工物300と第1加工ユニット120及び第2加工ユニット130との位置合わせを行なうアライメントを遂行するための画像を得、得た画像を第1制御ユニット160に出力する。また、撮像ユニット128,138は、保持テーブル110に保持された被加工物300の表面側を撮像して、被加工物300の加工が正常な範囲内で実行されたか否かを自動的に確認するチェックを遂行するための画像を得、得た画像を第1制御ユニット160に出力する。本実施形態では、撮像ユニット128は、第1加工ユニット120に隣接して固定されており、第1加工ユニット120と一体的に移動し、撮像ユニット138は、第2加工ユニット130に隣接して固定されており、第2加工ユニット130と一体的に移動する。
【0028】
移動ユニット140は、
図1に示すように、X軸方向移動ユニット141と、Y軸方向移動ユニット142-1,142-2と、Z軸方向移動ユニット143-1,143-2と、を備える。X軸方向移動ユニット141、Y軸方向移動ユニット142-1及びZ軸方向移動ユニット143-1は、それぞれ、保持テーブル110と、切削ブレード121を含む第1加工ユニット120と、を相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット141、Y軸方向移動ユニット142-2及びZ軸方向移動ユニット143-2は、それぞれ、保持テーブル110と、第2加工ユニット130の噴射ノズル131(及びカバー132)と、を相対的にX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に移動させる。X軸方向移動ユニット141は、本実施形態では、X軸方向に沿って、保持テーブル110を第1加工ユニット120及び第2加工ユニット130の噴射ノズル131に対して相対的に移動させる。Y軸方向移動ユニット142-1及びZ軸方向移動ユニット143-1は、本実施形態では、それぞれY軸方向及びZ軸方向に沿って、切削ブレード121を含む第1加工ユニット120を保持テーブル110に対して相対的に移動させる。Y軸方向移動ユニット142-2及びZ軸方向移動ユニット143-2は、本実施形態では、それぞれY軸方向及びZ軸方向に沿って、第2加工ユニット130の噴射ノズル131を保持テーブル110に対して相対的に移動させる。X軸方向移動ユニット141、Y軸方向移動ユニット142-1,142-2及びZ軸方向移動ユニット143-1,143-2は、いずれも、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。
【0029】
加工装置100は、
図1に示すように、一対のレール151と、不図示の搬送ユニットと、洗浄ユニット153と、カセット載置台155と、を備える。一対のレール151は、互いに平行な状態を維持しながら接近または離隔でき、一対のレール151間で、環状フレーム308を介して被加工物300を保持できる。不図示の搬送ユニットは、カセット載置台155に載置されたカセット156内と、一対のレール151上と、保持テーブル110上もしくは洗浄ユニット153のスピンナテーブル上とのそれぞれの間で、被加工物300を搬送する。洗浄ユニット153は、加工後の被加工物300を洗浄し、加工等によって被加工物300に付着した加工屑等の異物を除去する。カセット載置台155は、複数の被加工物300を収容するための収容器であるカセット156を載置する載置台であり、載置されたカセット156をZ軸方向に昇降させる。
【0030】
第1制御ユニット160は、加工装置100の各構成要素の動作を制御して、被加工物300に対する加工処理等の各種処理を加工装置100に実施させる。第1制御ユニット160は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。第1制御ユニット160が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。第1制御ユニット160の演算処理装置は、第1制御ユニット160の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置100を制御するための制御信号を、第1制御ユニット160の入出力インターフェース装置を介して加工装置100の各構成要素に出力する。
【0031】
ポンプ210は、液体供給源503と第2加工ユニット130の噴射ノズル131との間に配設され、液体供給源503から噴射ノズル131に供給される液体600を加圧する。ポンプ210は、不図示のモータと接続されており、モータの回転数に応じて液体600の圧力を制御し、本実施形態では、例えばプランジャーポンプである。ポンプ210に接続されたモータは、インバータ220(
図7参照)を介して第2制御ユニット260と接続されている。第2制御ユニット260は、インバータ220を介してポンプ210に接続されたモータの回転数を制御することにより、ポンプ210によって加圧される液体600の圧力を制御する。なお、以降において、ポンプ210に接続されたモータのことを、適宜、単にポンプ210のモータと称し、ポンプ210によって加圧される液体600の圧力のことを、適宜、単にポンプ210の圧力と称する。
【0032】
第2制御ユニット260は、ポンプユニット200の各構成要素(ポンプ210及びポンプ210のモータ等)の動作を制御して、ポンプ210の圧力の制御処理等の各種処理をポンプユニット200に実施させる。第2制御ユニット260は、本実施形態では、第1制御ユニット160と同様のコンピュータシステムを含み、第1制御ユニット160からの指令信号に従って動作するプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)である。第2制御ユニット260の演算処理装置は、第2制御ユニット260の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、ポンプユニット200を制御するための制御信号を、第2制御ユニット260の入出力インターフェース装置を介してポンプユニット200の各構成要素に出力する。
【0033】
ウォータージェットユニットである第2加工ユニット130では、精密なポンプ210の圧力調整を実現するためには、第1制御ユニット160による加工装置100の制御とは独立したポンプユニット200(ポンプ210)専用の制御を実施する第2制御ユニット260が必要である。このため、実施形態に係る加工システム1は、加工装置100を制御する第1制御ユニット160とは別に、ポンプユニット200(ポンプ210)専用の制御を実施する第2制御ユニット260を備える。
【0034】
図7は、
図1の加工システム1の機能構成例を示す機能ブロック図である。加工システム1は、
図7に示すように、電気回路401と、通信回路402と、液体供給路403と、を有する。電気回路401は、
図7に示すように、電源501と、加工装置100と、ポンプユニット200のポンプ210と、を電気的に接続する。電源501は、電気回路401を通じて、加工装置100及びポンプユニット200のポンプ210に電力を供給する。
【0035】
電気回路401は、第1コンタクタ170と、第2コンタクタ270と、を含む。第1コンタクタ170は、電源501と、加工装置100と、ポンプ210と、に接続され、第1制御ユニット160によって電気回路401を開閉する。第2コンタクタ270は、第1コンタクタ170と、ポンプ210と、の間に設置され、第2制御ユニット260によって電気回路401を開閉する。
【0036】
第1制御ユニット160は、第1コンタクタ170を閉じることにより、電気回路401による電源501からポンプユニット200への電力供給を可能とし、第1コンタクタ170を開くことにより、電気回路401による電源501からポンプユニット200への電力供給を遮断する。第2制御ユニット260は、第2コンタクタ270を閉じることにより、電気回路401による電源501からインバータ220を介してポンプ210への電力供給を可能とし、第2コンタクタ270を開くことにより、電気回路401による電源501からインバータ220を介してポンプ210への電力供給を遮断する。
【0037】
電気回路401は、第1コンタクタ170及び第2コンタクタ270がともに閉じている場合、電源501からインバータ220を介してポンプ210への電力供給ができ、第1コンタクタ170と第2コンタクタ270との少なくとも一方が開いている場合、電源501からインバータ220を介してポンプ210への電力供給が遮断される。
【0038】
第1コンタクタ170は、
図7に示す本実施形態の例では、加工装置100内に備えられているが、本発明ではこれに限定されず、加工装置100外に設けられてもよい。また、第2コンタクタ270は、
図7に示す本実施形態の例では、ポンプユニット200内に備えられているが、本発明ではこれに限定されず、ポンプユニット200外に設けられてもよい。
【0039】
通信回路402は、
図7に示すように、第1制御ユニット160と第1コンタクタ170との間、第1制御ユニット160と第2制御ユニット260との間、第2制御ユニット260と第2コンタクタ270との間、及び、第2制御ユニット260とインバータ220との間、を情報通信可能に接続する。
【0040】
第1制御ユニット160は、通信回路402を通じて、第1コンタクタ170の開閉を制御する。第1制御ユニット160と第2制御ユニット260とは、通信回路402を通じて互いに情報通信する。第2制御ユニット260は、通信回路402を通じて、第2コンタクタ270の開閉を制御する。第2制御ユニット260は、通信回路402を通じて、インバータ220を介してポンプ210を制御して、ポンプ210のモータの回転数や、ポンプ210の圧力を制御する。
【0041】
液体供給路403は、
図7に示すように、液体供給源503と、ポンプ210と、噴射ノズル131と、を連通する。液体供給源503は、液体供給路403を通じて、ポンプユニット200のポンプ210及び噴射ノズル131に液体600を供給する。
【0042】
加工システム1は、本実施形態では、加工装置100側の第1制御ユニット160が上位となり、ポンプユニット200側の第2制御ユニット260が下位となって、第1制御ユニット160が第2制御ユニット260に指令信号を送信し、第2制御ユニット260が指令信号に応じて第1制御ユニット160に回答信号を送信する形で、第1制御ユニット160と第2制御ユニット260との間の通信を実施する。
【0043】
第1制御ユニット160と第2制御ユニット260との間の通信では、具体的には、第1制御ユニット160は、ポンプ210のモータの回転数や圧力等の設定に関する指令信号、ポンプ210の動作の開始や停止、終了に関する指令信号、動作中の現在のポンプ210のモータの回転数や圧力等のステータス情報を要求する旨の指令信号、ポンプ210の動作に対するアラームを要求する旨の指令信号、ポンプ210の消耗品(例えば、寿命を有する寿命品)の消耗程度(例えば、使用時間)を要求する旨の指令信号、等を第2制御ユニット260に送信する。第2制御ユニット260は、このような第1制御ユニット160からの指令信号を受信し、このような指令信号に応じて、指令信号に基づく設定や動作ができた場合には当該設定や動作後に正常に設定や動作が完了した旨の回答信号、指令信号に基づく設定や動作ができなかった場合にはその旨の回答信号、指令信号により要求されたステータス情報を含む回答信号、指令信号により要求されたアラームの有無及び数や内容を含む回答信号、指令信号により要求された消耗程度を含む回答信号、等を第1制御ユニット160に送信する。
【0044】
例えば、第1制御ユニット160がポンプ210の圧力を所定の圧力(例えば、70MPa)に設定する旨の指令信号を送信すると、第2制御ユニット260がこの指令信号に応じてポンプ210を制御してポンプ210の圧力を当該所定の圧力に設定した後に、正常に当該設定が完了した旨の回答信号を送信する。また、第1制御ユニット160がポンプ210を運転開始する旨の指令信号を送信すると、第2制御ユニット260がこの指令信号に応じてポンプ210を制御してポンプ210の運転を開始した後に、正常に運転開始した旨の回答信号を送信する。また、第1制御ユニット160がポンプ210の圧力の情報を要求する旨の指令信号を送信すると、第2制御ユニット260がこの指令信号に応じて回答信号としてポンプ210の圧力の情報を送信する。また、第1制御ユニット160がポンプ210の所定の寿命(例えば、1000時間)を有する所定の消耗品の消耗程度を要求する旨の指令信号を送信すると、第2制御ユニット260がこの指令信号に応じて回答信号としてポンプ210の当該所定の消耗品の使用時間(例えば、561時間)の情報を送信する。
【0045】
第1制御ユニット160と第2制御ユニット260とは、上記したポンプ210に関する情報通信に加え、さらに、所定間隔で通信し、互いのハングアップを監視する。ここで、ハングアップとは、通信処理が出来なくなっている状態のことをいう。具体的には、第1制御ユニット160が正常に動作している場合、第1制御ユニット160が、所定間隔(本実施形態では、例えば、1秒)毎に、第2制御ユニット260が正常に動作している旨の回答を要求する旨の指令信号(動作確認信号)を第2制御ユニット260に送信し、第2制御ユニット260が正常に動作している場合、第2制御ユニット260が当該指令信号に応じて正常に動作している旨の回答信号(動作回答信号)を第1制御ユニット160に送信する。第1制御ユニット160は、動作確認信号を第2制御ユニット260に送信したにもかかわらず、第2制御ユニット260から動作回答信号を受信しない場合、第2制御ユニット260が正常に動作していない、すなわちハングアップしていると判定できる。また、第2制御ユニット260は、第1制御ユニット160から所定間隔より十分に長い一定間隔(本実施形態では、例えば、3秒)経っても動作確認信号を受信しない場合、第1制御ユニット160が正常に動作していない、すなわちハングアップしていると判定する。このように、第1制御ユニット160と第2制御ユニット260とは、互いに、所定間隔で動作確認信号及び動作回答信号により通信することにより、動作回答信号の受信の有無と動作確認信号の受信の有無とに基づいて、互いのハングアップを監視する。動作確認信号及び動作回答信号は、例えば、クロック信号が使用される。
【0046】
第1制御ユニット160は、第2制御ユニット260がハングアップしたと判定した場合は、第1コンタクタ170を開いて、電気回路401による電源501からポンプユニット200への電力供給を遮断することにより、ポンプ210によって加圧された高圧の液体600が噴射ノズル131に供給されることを停止することで、噴射ノズル131からの高圧の液体600の噴出を停止する。また、第2制御ユニット260は、第1制御ユニット160がハングアップしたと判定した場合は、第2コンタクタ270を開いて、電気回路401による電源501からインバータ220を介してポンプ210への電力供給を遮断することにより、ポンプ210によって加圧された高圧の液体600が噴射ノズル131に供給されることを停止することで、噴射ノズル131からの高圧の液体600の噴出を停止する。
【0047】
以上のような構成を有する実施形態に係る加工システム1は、噴射ノズル131を有する加工装置100を制御する第1制御ユニット160と、ポンプユニット200のポンプ210を制御する第2制御ユニット260とが互いにハングアップを監視し、一方の制御ユニットが、他方の制御ユニットのハングアップを判定した場合に、ポンプ210への電力供給を遮断することにより、噴射ノズル131からの高圧の液体600の噴出を停止する。このため、実施形態に係る加工システム1は、加工装置100の第1制御ユニット160、もしくは、ポンプユニット200の第2制御ユニット260のハングアップを検出して、適切に高圧の液体600の噴出を停止できるという作用効果を奏する。実施形態に係る加工システム1は、これにより、被加工物300の1点に高圧の液体600が当たり続けることにより被加工物300に穴が空いてしまう恐れや、さらに長時間高圧の液体600を当て続けることにより被加工物300を保持する保持テーブル110にまで穴が空いてしまう恐れを、抑制できる。
【0048】
また、実施形態に係る加工システム1は、電源501と加工装置100とポンプ210とを接続する電気回路401を有し、電気回路401が、第1制御ユニット160によって電気回路401を開閉する第1コンタクタ170と、第2制御ユニット260によって電気回路401を開閉する第2コンタクタ270と、を含むので、第1制御ユニット160と第2制御ユニット260とのどちらからでも好適にポンプ210への電力供給を遮断することができる。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 加工システム
100 加工装置
110 保持テーブル
131 噴射ノズル
140 移動ユニット
160 第1制御ユニット
170 第1コンタクタ
200 ポンプユニット
210 ポンプ
260 第2制御ユニット
270 第2コンタクタ
300 被加工物
401 電気回路
501 電源
600 液体