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特開2024-139167活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化塗膜、及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139167
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化塗膜、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/14 20060101AFI20241002BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20241002BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20241002BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241002BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20241002BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241002BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C09D175/14
C08F290/06
B05D7/02
B05D7/24 302P
B05D7/24 301T
B32B27/16 101
B32B27/30 A
C09D4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049986
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐太
(72)【発明者】
【氏名】野田 敏郎
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4D075CA02
4D075CA03
4D075CA13
4D075CA22
4D075DB48
4D075DC03
4D075DC13
4D075DC18
4D075DC21
4D075DC24
4D075DC36
4D075EA21
4D075EB22
4D075EB38
4F100AK25B
4F100AK45A
4F100AK51B
4F100BA02
4F100CC00B
4F100EH46B
4F100EJ54
4F100GB07
4F100GB15
4F100GB16
4F100GB32
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JC00A
4F100JG03
4F100JK08
4F100JK12B
4J038DG111
4J038DG131
4J038DG211
4J038DG261
4J038FA111
4J038FA112
4J038FA281
4J038KA04
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA11
4J038NA12
4J038NA27
4J038PA17
4J038PC08
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB021
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD461
4J127BD471
4J127BD481
4J127BE241
4J127BE24Y
4J127BF171
4J127BF611
4J127CB371
4J127CC111
4J127DA46
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA14
(57)【要約】
【課題】 本発明は、特定のウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル系単量
体の(共)重合体を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とすることで、イソソルバイ
ド含有基材に塗工した際の硬さ、伸度、密着性を両立した積層物を提供する。
【解決手段】 イソソルバイド含有基材に塗布するコーティング材であって、
下記(a1)及び(a2)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と

(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)と光重合開始剤(C)を含有する活性
エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(a1)イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート化合物
(a2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソソルバイド含有基材に塗布するコーティング材であって、
下記(a1)及び(a2)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)と光重合開始剤(C)を含有する活性エ
ネルギー線硬化型樹脂組成物。
(a1)イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート化合物
(a2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)の配合量が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
の固形分の総量に対して5質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載の活性エネ
ルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記基材がイソソルバイドを構造単位に有するポリカーボネート基材である、請求項1
に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)の配合量が、活性エネルギー線硬
化型樹脂組成物の固形分の総量に対して5質量%以上60質量%以下である、請求項1に
記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
さらに4級アンモニウム塩基を有する化合物(D)(ただし、(メタ)アクリル系単量
体の(共)重合体(B)を除く)を含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂
組成物。
【請求項6】
請求項1~5に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜。
【請求項7】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)と(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B
)と光重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、80℃における
伸度が20%以上である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
下記(a1)及び(a2)由来の構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)と

(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)と光重合開始剤(C)を含有する活性
エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる層をイソソルバイド含有基材上に有する積層体。
(a1)イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート化合物
(a2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソソルバイド含有基材に塗布するコーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ部材、電気・電子部品、自動車用部品、建築用資材、レンズ、容器、包装
材など種々の用途でポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、トリ
アセチルセルロース、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチック材料が使用され
ている。それらの中で例えば、ポリカーボネートは耐衝撃性や耐熱性に優れており適用さ
れる範囲が広い樹脂の1つである。
【0003】
ポリカーボネートを始め、多くのプラスチック製品は一般的に石油資源から誘導される
材料を用いて製造される。しかしながら石油資源の枯渇に繋がることから植物由来の原料
を用いたプラスチック製品の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加によ
る地球温暖化も課題として挙げられており、カーボンニュートラルの観点からも植物由来
の原料を用いることが求められている。
【0004】
植物由来化合物としてイソソルビドを用いたポリカーボネートが提案されている(特許
文献1)。ポリカーボネート上にウレタン(メタ)アクリレートを使用したコーティング
剤組成物を塗工しているが、(メタ)アクリロイル基を多数有する塗膜では十分な加工性
を得ることはできない。また、2官能(メタ)ウレタンアクリレートを使用した場合は十
分な接着性を得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-079321
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定のウレタン(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル系単量体の(共
)重合体を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とすることで、イソソルバイド含有基
材に塗工した際の硬さ、伸度、及び密着性に優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる硬化塗膜、及び前記活性エネルギー線硬
化型樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の[1]~[7]の手段により解決できる。
[1]イソソルバイド含有基材に塗布するコーティング材であって、
下記(a1)及び(a2)から合成されるウレタン(メタ)アクリレート(A)と、(メ
タ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)と光重合開始剤(C)を含有する活性エネル
ギー線硬化型樹脂組成物。
(a1)イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート化合物
(a2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート
[2]ウレタン(メタ)アクリレート(A)の配合量が、活性エネルギー線硬化型樹脂組
成物の固形分の総量に対して5質量%以上80質量%以下である、[1]に記載の活性エ
ネルギー線硬化型樹脂組成物。
[3]前記基材がイソソルバイドを構造単位に有するポリカーボネート基材である、[1
]または[2]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[4]前記(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)の配合量が、活性エネルギー
線硬化型樹脂組成物の固形分の総量に対して5質量%以上60質量%以下である、[1]
~[3]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[5]さらに4級アンモニウム塩基を有する化合物(D)を含む、[1]~[4]に記載の
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[6][1]~[5]に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜。
[7]ウレタン(メタ)アクリレート(A)と(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体
(B)と光重合開始剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が、80℃における伸
度が20%以上である、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
[8]下記(a1)及び(a2)から合成されるウレタン(メタ)アクリレート(A)と

(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)と光重合開始剤(C)を含有する活性エ
ネルギー線硬化型樹脂組成物をイソソルバイド含有基材上に塗工してなる積層体。
(a1)イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート化合物
(a2)水酸基含有単官能(メタ)アクリレート
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イソソルバイド含有基材に塗工した際に優れた硬さ、伸度、及び密着
性を有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
からなる硬化塗膜、及び前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる層を有する積層
体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<活性エネルギー線樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下、本組成物という。)は、後述する
化合物(a1)、化合物(a2)を反応させて得られたウレタン(メタ)アクリレート(
A)[成分(A)という。]、(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体(B)[成分(
B)という。]、光重合開始剤(C)[成分(C)という。]を含む活性エネルギー線硬
化型樹脂組成物である。
【0010】
[成分A]
本組成物に配合される成分(A)は、化合物(a1)及び化合物(a2)由来の構造を
有するウレタン(メタ)アクリレートである。成分(A)としては、例えば、化合物(a
1)、化合物(a2)を反応させて得られたウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる
。成分(A)は、本組成物を硬化して得られる硬化塗膜(以下、単に硬化塗膜という。)
の靭性に寄与する。
【0011】
[化合物(a1)]
化合物(a1)は、イソシアネート基を少なくとも2つ有するイソシアネート化合物で
ある。化合物(a1)は、塗膜の可撓性に寄与する。
化合物(a1)としては、例えば、従来からウレタン(メタ)アクリレートの製造に使
用されているものが使用できる。化合物(a1)としては、例えば、1,3-フェニレン
ジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシア
ネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;エチ
レンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキ
サメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート
、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、
メチルシクロヘキシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;キシレンジイ
ソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネ
ート;これらのビューレット体、アロファネート体、イソシアヌレート体等が挙げられる

これらの中でも、塗膜に優れた靭性を付与できることから、1,3-フェニレンジイソ
シアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート
、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4
,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(4-
イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1,2-水添キシリレンジイソシアネート、1,4
-水添キシリレンジイソシアネート、水添テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノ
ルボルナンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、
2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族骨格のジイソシアネー
トが好ましい。
成分(A)の合成には、化合物(a1)として1種の化合物を単独で、又は2種以上の
化合物を併せて用いることができる。
【0012】
[化合物(a2)]
化合物(a2)は、化合物中に一個の水酸基と一個の(メタ)アクリロイルオキシ基を
有する化合物である。化合物(a2)は、その水酸基が化合物(a1)又は化合物(a1
)から得られたイソシアネート基を有する中間体化合物のイソシアネート基とウレタン結
合を形成し、(A)成分に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入できるものであればよい

化合物(a2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-
ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート
、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メ
タ)アクリレートや、これら(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物が挙げられる

これらの中でも、低い粘度の成分(A)が得られることから、2-ヒドロキシエチル(
メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブ
チル(メタ)アクリレートが好ましい。
(A)成分の合成には、化合物(a2)として1種の化合物を単独で、又は2種以上を
併せて使用できる。
【0013】
成分(A)の合成には、化合物(a1)及び(a2)に加えて、ポリオール(a3)を
併用することもできる。ポリオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレ
ングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオー
ル、1,4-ブタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-
メチルペンタンジオール、2,4-ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタ
ノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1
,3-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、
トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール;これら多価アルコール
に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオ
キサイドを付加したポリエーテル変性ポリオール;これら多価アルコールと、ε-カプロ
ラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン
類との反応によって得られるポリカプロラクトンポリオール;これら多価アルコール及び
多塩基酸と、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレ
ロラクトン等のラクトンとの反応によって得られるカプロラクトン変性ポリエステルポリ
オール;1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタンジオール、2,4-ジエチルペン
タンジオール、トリメチルヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタン
ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等のジオール類と、エチレンカーボネート、
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソ
プロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェ
ニルカーボネート等の炭酸エステルとのエステル交換反応により得られるポリカーボネー
トジオール、ポリブタジエングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオ
ール、アミドジオールが挙げられる。
これらの中でも、本組成物の硬化性が良好となるので、ネオペンチルグリコール、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオ
ール、1,4-ブタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3
-メチルペンタンジオール、2,4-ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメ
タノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、
1,3-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA
、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールが好ましい。
(A)成分の合成には、化合物(a3)として1種の化合物を単独で、又は2種以上を
組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(a3)の分子量は500以上3,000未満が好ましい。分子量が下限以上であれば
塗膜にした際の耐湿性が良好になり、上限以下であれば塗膜の外観が良好になる。
【0015】
[成分(A)の合成法]
成分(A)の合成法は、例えば、従来から知られるウレタン(メタ)アクリレート合成
法を使用できる。具体的な合成法としては、例えば、フラスコ内に化合物(a1)を2mo
lモル仕込み、更にジブチル錫ジラウレート等の公知の触媒を混合し、フラスコ内の温度
を40~80℃に保ちながら、滴下ロートを用いて化合物(a3)1molモルを滴下して
、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る。その後、得られたウレ
タンプレポリマー末端に残存するイソシアネート基に当量の水酸基を有する化合物(a2
)2mol を滴下し、60~85℃でウレタンプレポリマーのイソシアネート基と化合
物(a2)の水酸基との付加反応を行うことで成分(A)を合成することができる。その
反応終点は、残存するイソシアネート基を定量することで判定できる。終点の反応率は、
好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。
【0016】
[成分(A)の配合割合]
本組成物中の成分(A)の配合割合は、硬さと伸度のバランスの観点から、活性エネル
ギー線硬化型樹脂組成物の固形分の総量に対して5質量%以上80質量%以下が好ましく
、7質量%以上70質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは10質量%以上60質
量%以下である。(A)成分の配合割合は、下限以上であれば硬さと伸度のバランスが向
上し、上限以下であれば密着性に優れる。
【0017】
[成分(B)]
成分(B)は、(メタ)アクリル系単量体の(共)重合体である。成分(B)の製造方
法としては、例えば、従来から知られるラジカル重合開始剤の存在下で1種又は2種以上
の(メタ)アクリル系単量体を溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等の方法で重合する
方法が挙げられる。
【0018】
成分(B)の原料となるビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレー
ト、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)
アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2
-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキ
シル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ
)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシ
エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メ
タ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アク
リレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メ
タ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の水酸基を含まない
(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプ
ロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒド
ロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2-ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ
)アクリレートとε-カプロラクトンの付加物等の2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリ
レートとアルキレンオキシド又は有機ラクトンの付加物等の水酸基含有ビニルモノマー;
スチレン、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン
又はスチレン誘導体;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メ
タ)アクリルアミド等のアクリルアミド;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸
、フマル酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;マレ
イン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコ
ン酸ジブチル等不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル
エステルが挙げられる。
これらの中でも、硬さの点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリ
レート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル
(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)
アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
成分(B)としては、1種の(共)重合体を単独で、又は2種以上の(共)重合体を併
せて使用することができる。
【0019】
[成分(B)の配合割合]
成分(B)の配合割合は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分の総量に対して
5質量%以上60質量%以下が好ましく、6質量%以上55質量%以下がより好ましく、
さらに好ましくは8質量%以上50質量%以下である。成分(B)の配合割合は下限以上
であれば硬化塗膜の加工性が良好であり、上限以下であれば硬さがより優れる。
【0020】
成分(B)の分子量としては3,000~150,000が好ましく、4,000~1
40,000がより好ましく、5,000~130,000がさらに好ましい。分子量が
下限範囲以上であれば塗膜の強靭さが向上して硬度が向上し、上限範囲以下であれば塗膜
の平滑性が向上する。
成分(B)のガラス転移温度(Tg)としては30~150℃が好ましく、40~14
0℃がより好ましく、50~130℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が下限値以上で
あれば塗膜の強靭さが向上して硬度が向上し、上限範囲以下であれば塗膜の加工性が向上
する。
【0021】
[成分(C)]
成分(C)は光重合開始剤であり、本組成物を活性エネルギー線照射により硬化させる
成分である。成分(C)としては、例えば、ベンゾフェノン型、アントラキノン型、アル
キルフェノン型、チオキサントン型、アシルフォスフィンオキサイド型、フェニルグリオ
キシレート型の光重合開始剤が挙げられる。
【0022】
成分(C)としては、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,
6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト及び4-フェニル
ベンゾフェノン等のベンゾフェノン型;t-ブチルアントラキノン及び2-エチルアント
ラキノン等のアントラキノン型;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-
1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェ
ニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニ
ルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-
2-モルホリノ-1-プロパノン及び2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキ
シ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、
2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアルキルフェノン型;2
-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジ
エチルチオキサントン及びイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン型;2,4,
6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシ
ベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド及びビス(2,4
,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィン
オキサイド型;フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のフェニルグリオキ
シレート型の光重合開始剤が挙げられる。
これらの中でも、本組成物の指触乾燥性の点から、ベンゾフェノン、2-エチルアント
ラキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2
-ジフェニルエタン-1-オンが好ましい。
成分(C)としては、1種の化合物を単独で、又は2種以上を併せて使用できる。
【0023】
[成分(C)の配合量]
成分(C)の配合量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分の総量に対して、
0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好まし
い。成分(C)の配合量は、多いほど本組成物の空気雰囲気中での硬化性が向上し、少な
いほど硬化塗膜に残存する成分(C)の量が少なくなる傾向がある。
【0024】
[成分(D)]
成分(D)は、4級アンモニウム塩基を有する化合物である(ただし、(メタ)アクリ
ル系単量体の(共)重合体(B)を除く)。成分(D)は、例えば、4級アンモニウム塩
基を有する単量体や4級アンモニウム塩基を有する単量体の単独重合体又はその他の単量
体と共重合して得られる重合体が挙げられる。
【0025】
成分(D)として使用できる4級アンモニウム塩基含有単量体としては、例えば、アミ
ノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、具体的には、N,N-ジメチルアミノエチ
ル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N
-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メ
タ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエ
チルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート等が挙げられ、特にN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレー
トが好適に使用される。N,N-ジアルキルアミノ基の2つアルキル基は異なっていても
よい。
N,N-ジアルキルアミノ基含有単量体の4級アンモニウム塩としては、例えば、市販
のN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライドによる4級化物[例
えば、商品名「ライトエステル(登録商標)DQ-100」、共栄社化学株式会社製]な
どが挙げられる。N,N-ジアルキルアミノ基含有単量体の4級アンモニウム塩は、アミ
ノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルの4級化反応によって製造することもできる
【0026】
重合体は、4級アンモニウム塩基を有する単量体以外の重合性単量体単位を含んでいて
もよく、このような重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチ
ル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート
、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリ
ル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリ
レート;前記のアミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2-ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチ
ル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ
)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレ
ート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メ
タ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)
アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレー
ト、グリシジル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート、スチレン、メチル
スチレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて
もよい。これらの中で、疎水性の高い長鎖アルキル基を有する重合性単量体は、重合体を
硬化物層の空気界面に偏析させて、硬化物層の帯電防止性を高めることができるので好ま
しい。このような長鎖アルキル基を有する重合性単量体としては、ステアリル(メタ)ア
クリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが挙げら
れる。
【0027】
[成分(D)の配合量]
重合体中の4級アンモニウム塩基含有単量体単位の割合は、10~90重量%が好まし
く、20~70重量%がより好ましい。この割合は多いほど帯電防止性が高くなり、少な
いほど硬化物層の透明性が向上する傾向がある。
重合体の重量平均分子量は、800~120,000が好ましく、2,000~60,
000がより好ましい。
【0028】
重合体は、上記の原料単量体を用いてラジカル重合反応により製造することができる。
ラジカル重合反応は、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で実施することが好まし
い。
ラジカル重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン
(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IP
A)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プ
ロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレング
リコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセタート等のエステル系
溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを
用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ラジカル重合反応に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキ
サイド、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニト
リル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(
4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これら
のラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジ
カル重合開始剤は、原料単量体の合計100重量部に対して0.01~5重量部の範囲で
用いることが好ましい。
【0030】
また、ラジカル重合反応の際には、重合体の重量平均分子量を制御する目的で連鎖移動
剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオ
ール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオー
ル、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メ
ルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロ
ピオン酸2-エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2-エチルへキシル、ブチル-
3-メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル-3-
メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチ
オール、4-メチルベンゼンチオール、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,
8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプ
タン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3-ジメチルカプト-1-
プロパノ-ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコ
ール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀
酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物等が挙げられる。これらは、
1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
連鎖移動剤の使用量は、原料単量体の合計100重量部に対して0.1~25重量部が
好ましく、0.5~20重量部がより好ましく、1.0~15重量部がさらに好ましい。
【0032】
ラジカル重合反応の反応時間は1~20時間が好ましく、3~12時間がより好ましい
。また、反応温度は40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。
【0033】
[成分(D)の配合量]
成分(D)の配合量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分の総量に対して、
3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
成分(D)の配合量は、多いほど表面抵抗率が低くなり帯電防止性能が向上し、少ないほ
ど塗膜の透明性が向上する傾向がある。
【0034】
[その他成分]
その他成分として、各種(メタ)アクリレート化合物を加えることもできる。例として
、4個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、例えば、ジペンタエリ
スリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリ
レート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及び
、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドペンタエリスリトールテト
ラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール骨格を有するポリ(メタ)アクリレー
ト;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン
骨格を有するポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ウレ
タン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
その他成分として使用できるポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、例えば
、フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、
アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ヘキサンジオール、ポ
リエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールとのエステル化反
応で得られるポリエステルポリオールと、(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で
得られる化合物が挙げられる。
【0036】
その他成分として使用できるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソホ
ロンジイソシアネート等のポリイソシアネートと、ペンタエリスリトール等の水酸基と複
数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物とのウレタン化反応で得られるウレタン(メ
タ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
本組成物には、必要に応じて光増感剤を配合してもよい。光増感剤としては、例えば、
4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチル
アミノ安息香酸アミル、4-ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を挙げる
ことができる。
【0038】
本組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、酸化防止剤、黄
変防止剤、ブルーイング剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、防曇剤等の各種
の添加剤を使用してもよい。
【0039】
[有機溶剤]
本組成物には、粘度に調整するため等の目的で必要に応じて有機溶剤を配合することが
できる。有機溶剤としては水や、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケ
トン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチ
ルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコ
ールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメ
チルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル
、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤;ジメチルホ
ルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;メチルセ
ロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エ
タノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジクロ
ロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種
を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤のうち、塗布にお
ける作業性を向上させやすい点で、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤
およびケトン系溶剤が好ましい。
【0040】
<硬化塗膜>
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
を基材又は物品の面上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥した後、塗膜に活性エ
ネルギー線を照射することにより形成できる。硬化塗膜の形成に関しては従来公知の方法
を用いることができ、塗布の他にも、例えば転写などが挙げられるが、工程数が少ない、
また簡便に付与ができるという観点において塗布による方法が好ましい。硬化塗膜を形成
する際の塗布方法としては、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エア
ドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフ
コート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレ
ーコート、カレンダコート、押出コート、ディップコート、スピンコート等の公知のコー
ティング方式を用いることができる。
【0041】
硬化塗膜を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるものではないが
、塗布液に使用している有機溶剤等の媒体の乾燥に関しては、通常30~200℃、好ま
しくは50~150℃、さらに好ましくは70~120℃の範囲である。乾燥時間は、0
.01~30分が好ましく、0.1~10分がより好ましい。
【0042】
活性エネルギー線による硬化の場合において用いる活性エネルギー線としては、紫外線
、電子線、可視光線、赤外線、X線等が挙げられる。それらの中でも硬化性と樹脂劣化防
止の観点から紫外線や電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。また、活性エネルギー
線の照射量は、照射する活性エネルギー線に応じて適宜選定できる。
【0043】
例えば、紫外線を用いる場合、照射の積算光量は20~5,000mJ/cmが好ま
しく、50~3,000mJ/cmがより好ましく、100~2,000mJ/cm
がさらに好ましい。また、照度としては、50~600mW/cmが好ましく、75~4
50mW/cmがより好ましく、100~300mW/cmがさらに好ましい。光源とし
ては、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、
又は走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等高圧水銀灯、超高圧水銀灯等、低圧
水銀灯等を用いることができる。
【0044】
また、電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる
。電子線の照射量(Mrad)は、好ましくは0.5~20Mradであり、本発明の活
性エネルギー線硬化性組成物の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から
より好ましくは1~15Mradである。
【0045】
硬化塗膜の厚みは、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.05~10μ
m、さらに好ましくは0.1~7μmの範囲である。硬化塗膜の厚みが上記範囲内であれ
ば、所望の硬度を実現しやすい。
【0046】
<積層体>
本発明の積層体は、基材と、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜とを有する
。当該積層体は、本発明の硬化塗膜の上にさらに機能層を設けることも可能である。機能
層としては従来公知のものが挙げられ、例えば反射防止層、低反射層、高反射層、アンチ
グレア層、アンチブロッキング層、防汚層、防曇層、粘着層等が挙げられる。さらに基材
の硬化塗膜がある側と反対面側に各種の機能層を設けることも可能である。基材の両面と
もに硬化塗膜を設けることも可能である。
【0047】
[基材]
基材はイソソルビド構造を有する化合物を含有するものであれば任意のものを使用する
ことができる。特にイソソルビドをジヒドロキシ成分としてポリカーボネート樹脂やポリ
エステル樹脂に組み込む形態が挙げられ、多くのイソソルビド構造を含有させることがで
きるため植物由来の量を高くすることができ好ましい形態である。
【0048】
基材としてイソソルビドをジヒドロキシ成分としたポリカーボネート樹脂を使用する場
合、ポリカーボネート樹脂の原料としての炭酸ジエステルは従来公知の材料を使用するこ
とができる。例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のフェニルカー
ボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネー
ト等のアルキルカーボネート類等が挙げられる。これらの中でもフェニルカーボネート類
が好ましく、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルは単体で
用いてもよいし2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
また、ジヒドロキシ成分としてイソソルビド以外の化合物も使用することが好ましい形
態でもある。すなわちイソソルビドの共重合成分として使用する共重合ポリカーボネート
樹脂であることが好ましい。ジヒドロキシ成分としては、例えば、脂肪族ジヒドロキシ化
合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、芳香族ビスフェノール化合物、またはイソソルビド以
外のエーテル基含有ジヒドロキシ化合物が好ましい化合物として挙げられ、イソソルビド
構造よりも柔軟な分子構造を導入することができ、ポリカーボネート樹脂の靭性を向上さ
せることができる。また、耐衝撃性をより向上させる観点において、脂肪族ジヒドロキシ
化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、または芳香族ビスフェノール化合物を使用すること
が好ましい。さらに、耐候性が向上するという観点からは、分子構造内に芳香環構造を有
しない化合物、すなわち、脂肪族ジヒドロキシ化合物または脂環式ジヒドロキシ化合物で
あることがより好ましく、さらに耐熱性の向上も考慮すると、脂環式ジヒドロキシ化合物
がさらに好ましい。これらのジヒドロキシ成分は1種類でもよいし2種類以上を組み合わ
せて使用することも可能である。また、ジヒドロキシ構造に限らず、トリヒドロキシ、テ
トラヒドロキシのように3つ以上のヒドロキシル基を有する化合物を使用することもでき
る。
【0050】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシク
ロデカンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール
、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、ペンタ
シクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジ
メタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,
5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等が挙げ
られる。これらの中でも耐衝撃性や柔軟性のバランス、および製造のしやすさを考慮する
と1,4-シクロヘキサンジメタノールまたはトリシクロデカンジメタノールがより好ま
しく、特に柔軟性も重視する用途においては1,4-シクロヘキサンジメタノールがさら
に好ましい。
【0051】
脂肪族ジヒドロキシ化合物は、直鎖脂肪族であっても、分岐鎖脂肪族であってもよい。
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパ
ンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオ
ール、1,2-ブタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘキサンジオール
、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1
,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール
などが挙げられる。
【0052】
芳香族ビスフェノール化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロ
パン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル
)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2
,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビ
ス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロ
キシフェニル)ペンタン、2,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒド
ロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン、1,1
-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペ
ンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキ
シフェニル)スルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロ
キシフェニル)スルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジ
ヒドロキシ-3,3’-ジクロロジフェニルエーテル、9,9-ビス(4-(2-ヒドロ
キシエトキシ-2-メチル)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェ
ニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)フルオレンが
挙げられる。これらの中でも性能のバランスを考慮するとビスフェノールAがより好まし
い。
【0053】
エーテル基含有ジヒドロキシ化合物としては、ジエチレングリコール、トリエチレング
リコール、ポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラ
メチレングリコールなどが挙げられる。ポリエチレングルコールとしては、分子量が、例
えば150~2,000のものを用いることができる。
【0054】
基材として共重合ポリカーボネート樹脂を使用する場合、全ジヒドロキシ化合物由来の
構造単位100モル%中のイソソルビド由来の構造単位の割合は好ましくは1モル%以上
、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上、特に好ましくは4
5モル%以上、最も好ましくは55モル%以上の範囲である。また上限に関しては特に制
限はなく全てがイソソルビド由来の構造単位でもよいが、好ましくは99モル%以下、よ
り好ましくは95モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下、特に好ましくは85モ
ル%以下の範囲である。上記範囲で使用することで、耐熱性や剛性の向上、また成形加工
性や機械強度のバランスが取れた特性を調整しやすくなる。
【0055】
共重合ポリカーボネート樹脂として、上述したジヒドロキシ化合物以外の構造単位を含
有していてもよい。例えば芳香族炭化水素のジヒドロキシ化合物等を例示できるが、芳香
環を含有する化合物は太陽光や紫外線に曝されると、紫外線を吸収して構造劣化すること
で黄変等の不具合を生じることが多い。そのため、芳香族炭化水素のジヒドロキシ化合物
等を用いる場合には、成形加工性、耐候性、表面特性など要求される製品特性を損なわな
い範囲で使用することが望まれる。
【0056】
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度としては耐熱性および靭性を考慮すると好まし
くは40~180℃、より好ましくは60~160℃、さらに好ましくは80~150℃
、特に好ましくは90~140℃の範囲である。
【0057】
ポリカーボネート樹脂は、前述のジヒドロキシ化合物と前述の炭酸ジエステルとのエス
テル交換反応により重縮合させることで合成できる。より詳細には、エステル交換反応に
おいて副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に留去させることで重縮合反応を進行させ
ることができる。エステル交換反応は、エステル交換反応触媒の存在下で促進する。当該
触媒としては、長周期型周期表における第1族または第2族の金属化合物、並びに塩基性
ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、またはアミン系化合物等
の塩基性化合物を使用することができ、中でも第1族金属化合物または第2族金属化合物
の少なくとも一方を使用することが好ましい。触媒の使用量は、反応に供される全ジヒド
ロキシ化合物1モル当たり、好ましくは0.1~300μモル、より好ましくは0.5~
100μモル、特には1~50μモルである。
【0058】
ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの混合モル比率は、好ましくは0.90~
1.20の範囲がよい。この場合には、ポリカーボネート樹脂のヒドロキシル基末端量の
増加を抑制することができるため、樹脂の熱安定性の向上が可能になる。そのため、成形
時の着色を低減することができる。また、エステル交換反応の速度が低下を抑制すること
ができ、所望の分子量の共重合体のより確実な製造が可能になる。また、この場合には、
反応時の熱履歴の増大を抑制することができるという観点からも、ポリカーボネート樹脂
の着色を低減することができる。さらにこの場合には、ポリカーボネート樹脂中の残存炭
酸ジエステル量を減少させることができ、かかる観点からも樹脂の着色を低減することが
できる。さらに臭気の発生を回避又は緩和することができる。これらの効果をより高める
という観点から、ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルの混合モル比率は、特に好
ましくは0.95~1.10の範囲である。
【0059】
重合反応の方法としては、バッチ式、連続式、またはそれらの組合せ等の方法を例示で
きる。中でも、前記触媒の存在下で、複数の反応器を用いて多段階で実施される連続式が
、生産性や熱履歴管理のしやすさの観点で好ましい。
【0060】
また基材として用いるポリカーボネート樹脂には、種々の添加剤を含有させることも可
能である。添加剤としては例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒失活剤、
染顔料、難燃剤、難燃助剤、充填剤、衝撃改良剤、加水分解抑制剤、核剤、可塑剤等が挙
げられる。
【0061】
基材としてイソソルビドをジヒドロキシ成分としたポリエステル樹脂を使用する場合、
重合させる酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタ
ル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、4,4-スチルベンジ
カルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジ
カルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p-カルボキシフ
ェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニルエーテルジカルボン酸
、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、エチ
レン-ビス-p-安息香酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸
、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロ
ヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそれらのエステル誘導体から誘導さ
れる化合物が挙げられる。これらの酸成分は、1種類を単独で含有していてもよいし、2
種類以上を含有していてもよい。
【0062】
ジヒドロキシ成分としてイソソルビドを単体で形成されたホモポリマーでもよいが柔軟
性などを考慮すると他のポリヒドロキシ成分を使用した共重合ポリエステル樹脂がより好
ましい。使用できるポリヒドロキシ成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチ
レングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレ
ングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、2,2,4,
4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール等の化合物が挙げられる。これらの中
でも特に各種の性能のバランスが取れるという観点においてエチレングリコールや1,4
-シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。
【0063】
上述の方法等で得られたイソソルビド構造を有する化合物を含有する樹脂は従来公知の
各種の方法で加工することが可能である。下記の方法に限定されるものではないが、例え
ば、樹脂を押出機に導入し、添加剤等を連続的に供給しながら混練し、減圧設備を介して
副生ガスや低分子揮発分を脱揮除去し、押出機先端からストランド状に溶融物を押し出し
て冷却固化させながらペレット状にカットする方法が挙げられる。押出機は十分な脱揮能
力や、添加物の均一分散を得るために減圧装置をベント口に備えた二軸押出機が好ましい
【0064】
押出機の運転条件としては、脱揮効率を高めるためには樹脂の溶融粘度が低い方が好ま
しく、押出機系内での溶融混練温度は高い方が好ましい。しかし温度が高過ぎると着色や
熱分解が生じる恐れがあるため、できるだけ高くかつ適切な温度で加工することが必要で
ある。適切な溶融温度は、樹脂の種類、樹脂のガラス転移温度、分子量、溶融粘度等に依
存するが、熱分解が急激に起こり始める温度を考慮して、200℃~320℃が好ましい
。この場合には、押出機の可塑化負荷が小さくなり、生産性を向上させることができると
共に、樹脂の熱分解を抑制するこができ、着色、分子量低下による機械強度の低下、熱分
解ガスの発生等をより防止することができる。この効果をより高めるという観点から、溶
融温度は、210℃~300℃がより好ましく、220℃~290℃が特に好ましい。
【0065】
押出機で溶融され、好ましくはギアポンプを経由して、必要に応じてフィルタで濾過を
行った樹脂は、例えばダイヘッドからストランド状に吐出され、冷却固化の後に、回転式
カッター等でペレット状に切断される。ストランドの冷却方法は、通常は空冷または水冷
等で行われ、空冷の場合に使用する空気は、ヘパフィルタ等で空気中の異物を濾過した清
浄な空気を用いて、空気中の異物の混入を防ぐことが好ましい。また水冷の場合に使用す
る水は、イオン交換樹脂等で水中の金属成分を除去したのち、水用フィルタで水中の異物
を除去した清浄な水を用いることが好ましい。
【0066】
得られたペレット状の樹脂はさらに従来公知の方法で加工をすることができる。例えば
フィルムへの加工や、金型を用いた成形加工による方法が挙げられる。以下の方法に限定
するものではないが、例えばフィルムとする場合、一般的な製造方法としては、樹脂を溶
融し、シート化し、必要に応じて、強度を上げる等の目的で延伸を行う方法が挙げられる
【0067】
例えば、上述の樹脂を、押出機を用いてダイから溶融押し出しし、溶融フィルムを冷却
ロールで冷却固化して未延伸フィルムを得る。この場合、フィルムの平面性を向上させる
ため、溶融シートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液
体塗布密着法を使用することもできる。そのまま未延伸フィルムとする場合は、ロール温
度や押出速度などを調整して厚み振れを低減することができる。また、生産効率性や厚み
振れ、粗さ低減などのために得られた未延伸フィルムを延伸することも可能である。例え
ばフィルム長手方向への延伸はロールの周速差を利用すること等で実現できるし、フィル
ム横手方向へはテンター方式の延伸機等で実現することができる。またその両者を組み合
わせて二軸延伸フィルムとすることも可能である。また同時二軸延伸の方法を取ることも
可能である。延伸温度や延伸倍率は、樹脂の種類などにより様々であるが、好ましくは7
0~200℃、より好ましくは80~160℃の範囲であり、延伸倍率は一方向において
7倍以下、より好ましくは5倍以下の範囲である。下限は特にないが1倍である。その後
、樹脂の種類に応じて適宜熱処理などを施し延伸フィルムを得ることが可能である。
【0068】
上述の樹脂の加工の任意の段階で各種の添加剤を使用することも可能である。例えばペ
レット作成時やフィルム作成時などの溶融押出の前あるいはその途中段階で添加すると分
散効率がよいため好ましい。添加剤としては例えば、樹脂製造時の触媒失活剤、熱安定剤
、中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、粒子、離型剤、染料、顔料、滑剤、可塑剤、潤滑剤
、相溶化剤、難燃剤等が挙げられる。
【0069】
基材の形態としては任意のものを採用することが可能であり、例えば、フィルム、シー
ト、板、成形体等が挙げられる。厚みに関しても任意であるが、例えばフィルムなら取扱
い性、生産性や加工性の観点から1~500μm、好ましくは10~300μm、より好
ましくは20~250μmの範囲である。また、成形体であれば軽量の観点からすると0
.05~10mm、好ましくは0.1~6mm、より好ましくは0.2~4mmの範囲で
ある。
【0070】
また、基材は活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の塗布性をよくする、活性エネルギー
線硬化型樹脂組成物の硬化塗膜層との密着性を向上させる等のために、コロナ処理やプラ
ズマ処理を施すことも可能である。
【0071】
本発明の積層体は、各種用途の中でも特に硬度に優れる点からディスプレイ部材や電気
・電子部品に好適に用いることができ、一般的なポリカーボネート樹脂に比較すると耐傷
付き性に優れる点から自動車用部品や各種レンズに好適に用いることができ、同様に一般
的なポリカーボネート樹脂に比較すると加工性に優れることから各種フィルム用途、例え
ばディスプレイ用部材や加飾用途に好適に用いることができる。
【実施例0072】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明で用いた測定方法及び評価方法は次のとおりである。
【0073】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量の測定
機器:東ソー株式会社製「HLC-8120GPC」、
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperHZM-M*HZM-M*HZ
2000」、
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)、
溶媒:テトラヒドロフラン、
温度:40℃、
流速:0.5mL/分、
注入量:10μL、
濃度:0.2質量%、
校正試料:単分散ポリスチレン、
校正法:ポリスチレン換算。
【0074】
(2)鉛筆硬度の測定
塗工した積層体に対して、JIS K-5600に準じて試験を行い、鉛筆硬度を測定
した。評価基準は以下の通りである。
◎…鉛筆硬度がF以上
〇…鉛筆硬度がB~HB
×…鉛筆硬度が2B以下
【0075】
(3)伸度の測定
塗工した積層体を基材ごと幅10mm、長さ60mmの大きさで切り出した。得られた
サンプルをイマダ製MX2-500N-FAを使用して、チャック間距離40mm、引張
速度50mm/min、雰囲気温度80℃にて引張試験を行い、降伏点の値を伸度として
以下の基準で評価した。
◎…伸度が35%以上
〇…伸度が20%~34%
×…伸度が20%未満
【0076】
(4)密着性の測定
塗工した積層体にカッターナイフで碁盤目に1mm間隔で基材まで達するカットを入れ
て1mm2の碁盤目を100個作り、その上にニチバン製のセロテープ(登録商標)を貼
りつけてから急激にはがし、基材とコーティング層との間で剥離した碁盤目の状態を観察
した。初期付着性は以下の基準で評価した。
◎…碁盤目カットで残マス数が95個以上
〇…碁盤目カットで残マス数が70~94個
×…碁盤目カットで残マス数69個以下
【0077】
(5)帯電防止性の測定
塗工した積層体に対して、日東精工アナリティック性ハイレスタUPを使用して、印加
電圧500Vで表面抵抗率を測定した。帯電防止性は以下の基準で評価した。
◎…表面抵抗率が1.99E+10以下
〇…表面抵抗率が2.00E+10~9.99E+10
×…表面抵抗率が1.00E+11以上
【0078】
(製造例1)
ウレタンアクリレートAとして以下のものを調整した。
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、
イソホロンジイソシアネート37.5g(0.17モル)、ポリテトラメチレングリコー
ルジオール25.5g(水酸基価167mgKOH/g;水酸基価から計算される分子量
672;0.04モル)、ポリエステルトリオール13.4g(水酸基価262mgKO
H/g;水酸基価から計算される分子量642;0.02モル)、反応触媒としてジブチ
ルスズジラウレート0.02gを仕込み、80℃で反応させた。残存イソシアネート基が
11%以下となった時点で、2-ヒドロキシエチルアクリレート23.6g(0.2モル
)、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.04gをさらに仕込み、60℃で反応させ
、残存イソシアネート基が0.3%以下となった時点で反応を終了し、ウレタンアクリレ
ートA(官能基数:2~3、重量平均分子量:約3,500)を得た。
【0079】
(製造例2)
4級アンモニウム塩基を有する重合体Dとして以下のものを調整した。
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、DQ100:18質量部、S
LMA:7.5質量部、DMMA:4.5質量部、メチルエチルケトン(MEK):20
質量部、イソプロピルアルコール(IPA):50質量部を仕込み、撹拌開始後に系内を
窒素置換し、55℃に昇温した。ここへ、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロ
ニトリル)(和光純薬社製「V-65」):0.6質量部を添加した後、系内を65 ℃
まで昇温し、3時間撹拌した後、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニ
トリル):0.6質量部を添加して65℃で3時間撹拌した。系内を80℃まで昇温し、
2時間撹拌した後、室温まで冷却し、4級アンモニウム塩基を有する重合体の溶液を得た
。この溶液の組成は重合体/MEK/IPA=30/20/50(重量比)であった。重
合体の重量平均分子量(Mw)は45,200であった。
【0080】
成分(A)として前述のウレタンアクリレートA 40質量部、成分(B)としてBR
-80(三菱ケミカル製 商品名ダイヤナール BR-80)20質量部、成分(C)と
してOmn.184 5質量部(IGM Resin製 商品名Omnirad 184
)、成分(D)として前述の4級アンモニウム塩基を有する重合体D 26.7質量部、
その他成分としてV#300 20質量部、DPHA 12質量部、有機溶剤としてPG
M 150質量部、MEK 150質量部を混合溶解して活性エネルギー線硬化型組成物
を製造した。
【0081】
D7340A(三菱ケミカル製 商品名デュラビオ D7340A)のフィルム上に、
上記に示す活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をバーコーター#16を用いて塗布し、8
0℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯を用いて照射強度120mW/cm、積算光量30
0mJ/cm2で紫外線を照射し、膜厚5μmのハードコート層を設けた積層体を得た。
【0082】
[実施例2~9、比較例1~4]
表1の組成欄に示す配合及び組成とする以外は、実施例1と同様にして活性エネルギー
線硬化型組成物を調製し、評価した。結果を表1に示した。
【0083】
【表1】
【0084】
表中の配合比率以外の数値の単位は質量部とする。また表1中の略号は、以下の化合物
を示す。
・ウレタンアクリレートA:製造例1に記載
・ウレタンアクリレートB:三菱ケミカル製 ダイヤビーム UK-6091(商品名、
2官能ウレタンアクリレート)
・ウレタンアクリレートC:MIWON製 MIRAMER PU2100(商品名、2
官能ウレタンアクリレート)
・BR-80:三菱ケミカル製 ダイヤナール BR-80(商品名、アクリル共重合体
、Mw:100,000、Tg:104℃)
・MB-7940:三菱ケミカル製 ダイヤナール MB-7940(商品名、アクリル
共重合体、Mw:6000、Tg:82℃)
・Omn.184:IGM Resins製 Omnirad 184(商品名、1-ヒ
ドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
・4級アンモニウム塩基を有する重合体D:製造例2に記載
・V#300:大阪有機化学製 ビスコート#300(商品名、ペンタエリスリトールト
リアクリレート)
・DPHA:日本化薬製 KAYARAD DPHA(商品名、ジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレート)
・UV-7600B:三菱ケミカル製 紫光 UV-7600B(商品名、6官能ウレタ
ンアクリレート)
・PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・MEK:メチルエチルケトン
【0085】
以上の実施例から、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成した硬化塗膜
は鉛筆硬度、伸度、密着性に優れていた。一方、成分(B)を配合しなかった比較例1の
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成した硬化塗膜は、密着性が不十分であり、成
分(A)と成分(B)を配合しなかった比較例2の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物か
ら形成した硬化塗膜は伸度が不十分だった。また、成分(A)を配合しなかった比較例3
の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物から形成した硬化塗膜は、硬さと伸度のバランスが
不十分だった。