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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139183
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20241002BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20241002BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050012
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】古田 高之
【テーマコード(参考)】
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G333AA09
5G333AB16
5G333CB18
5G333DA03
5G333EA02
5G363AA16
5G363BA02
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】車体パネルに対して容易かつ確実に取り付けることができるグロメットを提供することを目的とする。
【解決手段】グロメット1は、車体パネルPに設けたパネル孔P1よりも大径に形成され、ハーネスWHを挿通するカバー10と、カバー10に装着されるグロメットインナ20とが備えられ、車体パネルPに取り付けた状態において、カバー10とグロメットインナ20との外縁部分で車体パネルPを挟んで係止し、カバー10は、可撓性を有し、グロメットインナ20は、パネル孔P1に対して挿入させる挿入方向Hdに沿って、貫通する挿通孔Sを有する環状体で構成され、外縁部分と挿通孔Sとの間に、挿入方向Hdに向けて延出するインナー延出片24が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに設けたパネル孔よりも大径に形成され、ワイヤーハーネスを挿通するグロメットカバーと、前記グロメットカバーに装着されるグロメットインナとが備えられ、前記車体パネルに取り付けた状態において、前記グロメットカバーと前記グロメットインナとの外縁部分で前記車体パネルを挟んで係止するグロメットであって、
前記グロメットカバーは、可撓性を有し、
前記グロメットインナは、
前記パネル孔に対して挿入させる挿入方向に沿って、貫通する貫通孔を有する環状体で構成され、
前記外縁部分と前記貫通孔との間に、前記挿入方向に向けて延出する延出部が設けられた
グロメット。
【請求項2】
前記延出部は、複数設けられるとともに、前記ワイヤーハーネスの前記挿入方向から視て、前記貫通孔に沿った軸を中心軸として回転対称となる位置に配置された
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記延出部は、前記車体パネルと係止する係止部に対応する位置に設けられた
請求項1に記載のグロメット。
【請求項4】
前記延出部が、前記グロメットインナに設けられた
請求項2に記載のグロメット。
【請求項5】
前記グロメットインナに、前記延出部を補強する補強部が設けられた
請求項4に記載のグロメット。
【請求項6】
前記グロメットカバーに、前記挿入方向に突出し、装着状態において、前記貫通孔に嵌合する突出部が設けられた
請求項5に記載のグロメット。
【請求項7】
前記補強部は、少なくとも、前記貫通孔と前記延出部との間に設けられた
請求項6に記載のグロメット。
【請求項8】
前記延出部は、前記グロメットカバーに設けられ、
前記グロメットインナに、前記延出部を挿通させる挿通部が設けられた
請求項2に記載のグロメット。
【請求項9】
前記グロメットインナに、前記挿通部を補強する補強部が設けられた
請求項8に記載のグロメット。
【請求項10】
前記貫通孔は、前記挿入方向と直交する一方向に沿った長さが、前記挿入方向と直交する他方向に沿った長さよりも短い、長孔で構成され、
前記延出部は、前記貫通孔における長軸に沿って設けられた
請求項4又は請求項8に記載のグロメット。
【請求項11】
前記グロメットインナは、
周方向に対して取り付けることができる一対の組付体で構成され、
前記延出部は、それぞれの前記組付体に設けられた
請求項4又は請求項8に記載のグロメット。
【請求項12】
前記延出部は、一対の前記組付体を跨ぐように設けられた
請求項11に記載のグロメット。
【請求項13】
前記延出部に、板厚方向に凹ませた凹部が設けられた
請求項1に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体パネルに設けたパネル孔を挿通するワイヤーハーネスを保護するグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車体パネルに設けたパネル孔を挿通するワイヤーハーネスは、パネル孔の外縁と干渉して損傷しないように、例えば、特許文献1に開示されているようなグロメットを用いて保護されている。
このグロメットは、車体パネルに設けたパネル孔よりも大径に形成され、中央部分にワイヤーハーネスを挿通するハーネス挿通部を有するグロメットカバーと、グロメットカバーの一端に装着されたグロメットインナとで構成されており、ハーネス挿通部にテープ固定したワイヤーハーネスを、パネル孔に対してグロメットインナを挿入させる挿入方向に向けて引っ張ることで、車体パネルをグロメットインナとグロメットカバーとで挟持させ、パネル孔に係止固定できるとされている。
【0003】
しかしながら、グロメットカバーは可撓性を有するため、グロメットカバーの中央部分においてテープ固定されているワイヤーハーネスを挿入方向に向けて引っ張ることで、グロメットカバーの中央部分が変形する。このため、引張力が分散され、グロメットの外縁部分に引張力を十分に伝播できず、パネル孔に対してグロメットを確実に取り付けることができないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-078729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、車体パネルに対して容易かつ確実に取り付けることができるグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車体パネルに設けたパネル孔よりも大径に形成され、ワイヤーハーネスを挿通するグロメットカバーと、前記グロメットカバーに装着されるグロメットインナとが備えられ、前記車体パネルに取り付けた状態において、前記グロメットカバーと前記グロメットインナとの外縁部分で前記車体パネルを挟んで係止するグロメットであって、前記グロメットカバーは、可撓性を有し、前記グロメットインナは、前記パネル孔に対して挿入させる挿入方向に沿って、貫通する貫通孔を有する環状体で構成され、前記外縁部分と前記貫通孔との間に、前記挿入方向に向けて延出する延出部が設けられたことを特徴とする。
【0007】
前記延出部は、前記グロメットインナ及び前記グロメットカバーの少なくとも一方に設けられている。
また前記延出部は、前記外縁部分と前記貫通孔との間において、前記挿入方向に向けて延出していれば、その形状や数に限定はなく、例えば、中実の板状や棒状である場合、板厚方向に沿って貫通孔を有する板状体である場合を含む。
【0008】
この発明により、外縁部分と貫通孔との間に設けられた延出部に対して挿入方向に向けた引張力を作用させることにより、引張力をグロメットカバーの外縁部分に効率的に伝播させることができる。したがって、グロメットを挿入方向に向けて確実に移動させることができ、車体パネルに対してグロメットを確実に取り付けることができる。
【0009】
また、ワイヤーハーネスを挿通させる貫通孔よりも径方向外側に延出部が設けられていることから、貫通孔を挿通するワイヤーハーネスと延出部との間に空間が形成されている。このため、容易に延出部を挿入方向に向けて引っ張ることができる。すなわち、延出部に引張力を作用しやすく、グロメットをパネル孔に取り付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0010】
この発明の態様として、前記延出部は、複数設けられるとともに、前記ワイヤーハーネスの前記挿入方向から視て、前記貫通孔に沿った軸を中心軸として回転対称となる位置に配置されてもよい。
この発明により、回転対称に設けられた複数の延出部に引張力を同時に作用させることができる。例えば、互いに対向するように設けられた延出部に対して引張力を作用させた場合には、グロメットインナを傾けることなく車体パネルにグロメットを装着させることができる。
【0011】
一方で、グロメットインナの外縁部分における、複数の延出部のうち一方が設けられた側をパネル孔にひっかけた状態で、互いに対向するように設けられた延出部の他方に対して引張力を作用させる、又は、一方の延出部と対向しない位置に設けられた延出部に引張力を作用させることで、グロメットインナを傾けながらグロメットを車体パネルに装着することができる。
【0012】
このように車体パネルに対してグロメットを垂直に装着させるなど状況に応じて、車体パネルに対するグロメットの装着方法を選択することができるため、汎用性を向上させるとともに、容易かつ確実に車体パネルにグロメットを装着することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記延出部は、前記車体パネルと係止する係止部に対応する位置に設けられてもよい。
上述の前記係止部に対応する位置とは、前記係止部の径方向内側に前記延出部が設けられた場合や、複数設けられた前記係止部に隣接する係止部同士の間に設けられた場合を含む。
【0014】
この発明により、延出部に作用させた引張力を係止部が設けられた箇所に効率的に伝播させることができる。したがって、効率的にグロメットを挿入方向に向けて移動させることができ、車体パネルにグロメットを確実に係止固定できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記延出部が、前記グロメットインナに設けられてもよい。
この発明によると、グロメットインナに引張力を直接作用させることができるため、引張力をグロメットインナの外縁部分により確実に伝播させることができる。したがって、車体パネルに対してグロメットを容易かつ確実に取り付けることができる。
【0016】
また、グロメットカバーに直接引張力が作用することがないため、可撓性を有するグロメットカバーが変形することを抑制できる。したがって、引張力によってグロメットカバーとグロメットインナとの装着状態が解除されることを抑制でき、より確実にグロメットをパネル孔に取り付けることができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記グロメットインナに、前記延出部を補強する補強部が設けられてもよい。
この発明によると、延出部の剛性を向上させることができるため、引張力が作用することによる延出部の変形や破損などを抑制できる。これにより、延出部に作用させた引張力が分散することを抑制できる。したがって、引張力をより確実かつ効率的にグロメットインナの外縁部分に伝播させることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記グロメットカバーに、前記挿入方向に向けて突出し、装着状態において、前記貫通孔に嵌合する突出部が設けられてもよい。
この発明により、貫通孔に嵌合された突出部にワイヤーハーネスを挿通させることができるため、ワイヤーハーネスが貫通孔を形成するグロメットインナの内縁部分と干渉することを防止できる。したがって、貫通孔に挿通させたワイヤーハーネスの損傷をより抑制できる。
【0019】
また、突出部が貫通孔に嵌合されているため、貫通孔を挿通するワイヤーハーネスの移動を規制できる。これにより、例えば、突出部における挿入方向の側に配索されたワイヤーハーネスが、突出部の挿入方向と反対側に配索されたワイヤーハーネスの配索方向の影響を受けることなく、突出部における挿入方向の側及びその反対側に配索されるワイヤーハーネスを所望の方向に配索できる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記補強部は、少なくとも、前記貫通孔と前記延出部との間に設けられてもよい。
この発明により、貫通孔を形成するグロメットインナの内縁部分の剛性を向上させることができる。このため、貫通孔に嵌合された突出部が変形することや、嵌合が解除されることを抑制できる。したがって、ワイヤーハーネスの損傷をより抑制できるとともに、突出部の挿入方向の側及びその反対側において、ワイヤーハーネスを所望の方向に配索できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記延出部は、前記グロメットカバーに設けられ、前記グロメットインナに、前記延出部を挿通させる挿通部が設けられてもよい。
この発明により、延出部に引張力を作用させることで、グロメットカバーを挿入方向に向けて引っ張ることができるとともに、グロメットカバーに作用させた引張力により、グロメットカバーでグロメットインナを挿入方向に向けて押し付けて移動させることができる。これにより、グロメットカバーとグロメットインナとの装着状態を確実に維持したまま、グロメットを車体パネルに取り付けることができる。
【0022】
また、挿通部が延出部を規制しているため、引張力をグロメットカバーに作用させることによるグロメットカバーの変形を抑制できるとともに、挿入方向に沿った引張力を延出部に確実に作用させることができる。したがって、効率よくグロメットを挿入方向に移動させることができる。
【0023】
さらにまた、挿通方向に向けて引張力を作用させることで、挿通部の近傍において、グロメットカバーがグロメットインナと当接する。これにより、グロメットカバーの変形を抑制でき、引張力を効率よくグロメットインナに伝播させることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記グロメットインナに、前記挿通部を補強する補強部が設けられてもよい。
この発明により、挿通部の剛性を向上させることができるため、挿通部に沿って確実に延出部を引っ張ることができる。したがって、効率的にグロメットを車体パネルに取り付けることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記貫通孔は、前記挿入方向と直交する一方向に沿った長さが、前記挿入方向と直交する他方向に沿った長さよりも短い、長孔で構成され、前記延出部は、前記貫通孔における長軸に沿って設けられてもよい。
【0026】
この発明により、前記一方向の側において、長孔で構成された貫通孔と外縁部分までの間隔が広くなるため、延出部を十分な板厚とすることができる。これにより、延出部の剛性を向上させることができるため、作業者が延出部を確実に把持して、引張力を作用させることができる。したがって、より確実にグロメットを車体パネルに取り付けることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記グロメットインナは、周方向に対して取り付けることができる一対の組付体で構成され、前記延出部は、それぞれの前記組付体に設けられてもよい。
この発明により、ワイヤーハーネスに対してグロメットインナを後付けすることができるため、ワイヤーハーネスに対するグロメットインナの取り付け作業の作業性を向上させることができる。
【0028】
また、それぞれの組付体に引張力を作用させることができるため、それぞれの組付体が分割されることなく、挿入方向に向けて移動させることができる。したがって、グロメットインナが装着されたグロメットカバーを挿入方向に向けて移動させることができ、車体パネルに対してグロメットを確実に取り付けることができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記延出部は、一対の前記組付体を跨ぐように設けられてもよい。
この発明により、組付体の双方に引張力を作用させることができるため、組付体同士が分離されることを抑制できる。したがって、グロメットインナを車体パネルに対してしっかりと係止固定することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記延出部に、板厚方向に凹ませた凹部が設けられてもよい。
前記凹部は、前記延出部を板厚方向に窪ませた場合の他、前記延出部を板厚方向に貫通させた場合を含む。
【0031】
この発明によると、作業者が凹部を引っかけて延出部を引っ張ることができるため、より効率的にグロメットを車体パネルに取り付けることができる。したがって、車体パネルにグロメットを取り付ける作業の作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、車体パネルに対して容易かつ確実に取り付けることができるグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】パネル孔に装着させたグロメットの概略斜視図。
図2】グロメットの概略分解斜視図。
図3】グロメットカバーの説明図。
図4】グロメットインナの説明図。
図5】グロメットインナの説明図。
図6】グロメットインナ及びグロメットの説明図。
図7】車体パネルに対するグロメットの組み付け方法の説明図。
図8】車体パネルに組み付けられたグロメットの説明図。
図9】他の実施形態にかかるグロメットの概略分解斜視図。
図10】他の実施形態にかかるグロメットカバーの説明図。
図11】他の実施形態にかかるグロメットインナの説明図。
図12】車体パネルに対する他の実施形態にかかるグロメットの組み付け方法の説明図。
図13】他の実施形態にかかるグロメットの概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施形態を以下図面とともに説明する。
グロメット1は、車体パネルPに設けられたパネル孔P1を挿通するハーネスWHを保護する保護部材であり、筒状のカバー10と、カバー10の端部に装着されるグロメットインナ20とで構成されている。以下、グロメット1及びグロメットインナ20について、図1から図8に基づいて説明する。
【0035】
図1は挿入方向Hdから視た車体パネルPに装着されたグロメット1の概略斜視図を示し、図2は挿入方向Hdから視たグロメット1の概略分解斜視図を示す。図3はカバー10の説明図を示し、図4及び図5はグロメットインナ20の説明図を示し、図6はグロメットインナ20及びグロメット1の説明図を示す。図7はグロメット1を車体パネルPに装着させる前の説明図を示し、図8はグロメット1を車体パネルPに装着させた状態の説明図を示す。
【0036】
図3乃至図8について詳述する。図3(a)はカバー10の概略底面図を示し、図3(b)は図3(a)におけるA-A矢視断面図を示し、図3(c)は図3bにおけるフランジ装着部12の拡大概略断面図を示す。図4(a)はグロメットインナ20の概略底面図を示し、図4(b)は第一組付体30と第二組付体40との組み付け状態が解除されたグロメットインナ20の概略底面図を示す。
【0037】
図5(a)は図4(a)におけるB-B矢視断面図を示し、図5(b)は図4(a)におけるC-C矢視断面図を示し、図6(a)は図4(a)におけるD-D矢視断面図を示し、図6(b)はハーネスWHを挿通させたグロメット1の概略断面図を示す。
【0038】
図7はグロメットインナ20の先端部分をパネル孔P1に挿入させた状態のグロメット1の概略断面図を示し、図8(a)は車体パネルPに装着させた状態のグロメット1の概略断面図を示し、図8(b)は図8(a)におけるa部の部分拡大断面図を示す。
なお、図6(b)及び図7図3(a)におけるA-A矢視断面に対応する概略断面図を示し、図8(a)は図4(a)におけるB-B矢視断面に対応する概略断面図を示す。
【0039】
ここで、グロメット1に対してハーネスWHを挿通させる方向、すなわち図1中の上下方向を挿通方向Hとし、挿通方向Hと直交する方向を第一方向Lとし、挿通方向H及び第一方向Lに直交する方向を第二方向Wとする。また、図1中において、挿通方向Hに沿って下方向を挿入方向Hdとし、上方向を反挿入方向Huとする。なお、図1中における方向は図2乃至図13にも適用する。
【0040】
グロメット1は、ハーネスWHを内部に挿通可能な略筒状体であり、図1及び図2に示すように、可撓性を有する樹脂で構成されたカバー10と、カバー10における挿入方向Hdの端部に装着されるグロメットインナ20とで構成され、車体パネルPにおけるパネル孔P1に固定される。
ハーネスWHは、導体を絶縁被膜で囲繞した被覆電線を束ねたものである。なお、ハーネスWHには、通信ケーブルを含んでもよく、また、通信ケーブルのみで構成されていてもよい。
【0041】
カバー10は、図2及び図3に示すように、車体パネルPに設けたパネル孔P1よりも大径に形成された略円盤形状で構成され、ハーネスWHを挿通させる挿通部11と、挿通部11の径方向外側に設けられたフランジ装着部12とを有する。
【0042】
ここで、径方向とは、平面視において、略円形状に形成されたカバー10の中心から放射状に向かう方向をさす。また、径方向外側とは、径方向に沿ってカバー10の中心から外側に向けた方向をさし、径方向内側とは、径方向に沿って外側からカバー10の中心に向けた方向をさす。
【0043】
挿通部11は、図3(a)及び図3(b)に示すように、底面視略円形状の略平板状で構成されており、中央部分には、挿入方向Hdに向けて突出する突出部111と、突出部111の径方向内側から反挿入方向Huに向けて立設する一対の電線挿通部112とが設けられている。
【0044】
突出部111は、挿通部11の中央部分を挿入方向Hdに向けて、所定の長さだけ突出する、底面視略長円状の管状体である。この突出部111の第一方向Lに沿った長さは、第二方向Wに沿った長さのおよそ二倍である。なお、突出部111の反挿入方向Huの面は、挿入方向Hdに向けて窪んでいる(図3(b)参照)。
【0045】
電線挿通部112は、突出部111の径方向内側から反挿入方向Huに向けて延出する筒状体であり、第一方向Lに沿って二つ並んで配置されている。この電線挿通部112の中央部分には、挿通方向Hに沿った貫通孔が設けられており、それぞれにハーネスWHを挿通させることができる。
【0046】
フランジ装着部12は、図3(a)及び図3(b)に示すように、パネル孔P1の径と略同じ内径を有するとともに、パネル孔P1よりも大径に形成された略円環状の筒状体であり、挿通部11の外縁部分から突出部111の突出量を略半分の長さだけ、挿入方向Hdに向けて延出している。
【0047】
このように構成されたフランジ装着部12における内周面(径方向内側の内面)には、図3(b)及び図3(c)に示すように、径方向外側に向けて窪ませた装着凹部121が挿通方向Hの中央部分に設けられている。またフランジ装着部12の底面部分(挿入方向Hd側の面)には挿入方向Hdに向けて突出する外側リブ122と内側リブ123とが備えられている。
【0048】
装着凹部121は、図3(b)及び図3(c)に示すように、フランジ装着部12の内周面を径方向外側に向けて所定の深さだけ窪ませて形成された溝であり、周方向にわたって設けられている。
外側リブ122は、装着凹部121の溝底に対応する部分を基点とし、挿入方向Hdに向かうに伴い径方向外側に拡がる略円錐台形状に形成された略円環状のリブである。
【0049】
内側リブ123は、外側リブ122の径方向内側において、挿入方向Hdに向けて突出する略円環状のリブである。なお、内側リブ123の長さ(挿入方向Hdに向けて突出する長さ)は、外側リブ122の長さに比べて十分短い。
【0050】
グロメットインナ20は、中央部分にハーネスWHを挿通できる挿通孔Sを有する環状形状をしており、図4(a)及び図4(b)に示すように、周方向に取り付けることができる第一組付体30と第二組付体40とで構成されている。
【0051】
第一組付体30と第二組付体40は、カバー10と比べて剛性が高い樹脂で構成され、第一方向Lの一方側で第一組付体30と第二組付体40を連結するヒンジ部50を介して枢動可能に連結されているとともに、ヒンジ部50と反対側に設けられた固定部60を介して係止固定することができる。
【0052】
固定部60は、第一組付体30に設けられた固定片61と、第二組付体40に設けられた固定孔62とで構成され(図4(b)及び図6(a)参照)、ヒンジ部50を介して第一組付体30に対して第二組付体40を枢動させることにより、ヒンジ部50と反対側に設けられた固定孔62に固定片61が挿入され、第一組付体30と第二組付体40とを係止固定することができる。
以下において、第一組付体30と第二組付体40とが組み付けられたグロメットインナ20として説明し、分割された状態についての説明は省略する。
【0053】
第一組付体30と第二組付体40とが組み付けられた状態のグロメットインナ20は、図2図4(a)及び図5に示すように、挿通方向Hに沿ってハーネスWHを挿通することのできる環状の円盤部21と、円盤部21から挿入方向Hdに向けて延出する略円筒状のハーネス挿通部22とで一体に構成されている(図2参照)。
【0054】
なお、第一組付体30と第二組付体40は、固定片61及び固定孔62が設けられていることなどを除き、第二方向Wに沿ったグロメットインナ20の中心を通過する第一方向L及び挿通方向Hに沿った面を対称面として、互いに面対称となるように構成されている。すなわち、第一組付体30と第二組付体40は、円盤部21及びハーネス挿通部22を略面対称となるように二分割している。
【0055】
円盤部21は、装着凹部121の溝底が形成する円形状の径と略同じ径を有するとともに、装着凹部121の溝幅(装着凹部121の挿通方向Hに沿った長さ)と略同じ板厚を有する平面視略円環形状の板状体であり、中央部分に突出部111と同じ形状の挿通孔Sが中央部分に設けられている。すなわち、装着凹部121には、円盤部21を嵌合することができる。
また、このように構成された円盤部21には、図4(a)に示すように、挿通方向Hに沿って貫通する平面視矩形状をした盤上貫通部211が八つ、周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられている。
【0056】
ハーネス挿通部22は、円盤部21から挿入方向Hdに向けて延出する略筒状体である。
【0057】
詳述すると、ハーネス挿通部22は、図4図5及び図6に示すように、パネル孔P1の外径と略同じ外径を有する略円筒形状の外側筒部221と、円盤部21の径方向内側の端部から挿入方向Hdに向けて延出する内側筒部222と、外側筒部221と内側筒部222との中間部分に設けられた中央筒部223と、外側筒部221と内側筒部222とを径方向に連結する複数の連結リブ224とで構成されている。すなわち、ハーネス挿通部22は、円盤部21によって反挿入方向Huが閉塞されている。
【0058】
外側筒部221は、上述のように、パネル孔P1の外径と略同じ外径を有する略円筒体であり、円盤部21から挿入方向Hdに向けて立設している。
この外側筒部221の外周面には、図4(a)及び図5(a)に示すように、円盤部21に装着されたカバー10とともに車体パネルPを挟み込んで固定する係止固定部23が、盤上貫通部211に対応する位置に設けられている。すなわち、係止固定部23は、周方向に沿って等間隔に八つ設けられている。
【0059】
係止固定部23は、図5(a)に示すように、外側筒部221の外周面を径方向内側に窪ませて形成された凹状の外面溝部231と、外面溝部231の溝底から径方向外側に突出するとともに、反挿入方向Huに向けて延出する係止片232とで構成されている。
【0060】
係止片232は、外面溝部231における挿入方向Hdの端部から径方向外側に向けて突出しており、外面溝部231から反挿入方向Huに向かうに伴い、外面溝部231の溝底から徐々に離間するように、径方向外側に向けて傾斜している。
なお、円盤部21は、装着凹部121の溝の深さを略等しい長さだけ外側筒部221の外周面から径方向外側に突出している。
【0061】
内側筒部222は、底面視において、円盤部21の径方向内側の端部から挿入方向Hdに向けて延出している環状のリブである。すなわち、内側筒部222は、底面視において、突出部111と略同形状に構成された長円環状のリブである。なお、内側筒部222は、円盤部21の板厚と略同じ高さを有する。
【0062】
中央筒部223は、図4(a)に示すように、外側筒部221の径方向内側に所定の間隔を隔てて立設した略円環状のリブであり、外側筒部221と同じ高さを有する。この中央筒部223は、第一方向Lの中央部分において分断されており、分断された中央筒部223の間には、ハーネス挿通部22から挿通方向Hに沿ってインナー延出片24が立設している。
【0063】
インナー延出片24は、図5(a)及び図5(b)に示すように、円盤部21における第一方向L及び第二方向Wの中央部分から、外側筒部221のおよそ二倍の高さだけ挿入方向Hdに向けて立設する中実状の柱状体である。このインナー延出片24は、底面視において、第一方向Lに沿った長辺を有するとともに、第二方向Wに沿った短辺を有する略長方形状をしている。すなわち、インナー延出片24は、略長円状に形成された内側筒部222の長軸に沿った長辺を有する。なお、インナー延出片24の長辺は、内側筒部222の第一方向Lに沿った長さのおよそ半分であり、インナー延出片24の短辺は、インナー延出片24の長辺のおよそ半分である。
【0064】
このように構成されたインナー延出片24は、図4(a)、図5(a)及び図5(b)に示すように、円盤部21から挿入方向Hdに向けて環状に立設する外側筒部221と内側筒部222との間において、ハーネス挿通部22の中央部分に形成された挿通孔Sを挟んで対となって設けられている。すなわち、インナー延出片24は、ハーネス挿通部22の中央部分に形成された挿通孔Sの中央を挿通方向Hに沿った軸を回転軸として回転対称となる位置に設けられている。
【0065】
このように、外側筒部221と内側筒部222との間に対となって設けられたインナー延出片24は、図4(a)及び図5に示すように、外側補強リブ25を介して外側筒部221と連結するとともに、内側補強リブ26を介して内側筒部222と連結している。
【0066】
外側補強リブ25は、インナー延出片24の径方向外側において第二方向Wに沿った底面視直線状のリブであり、円盤部21から挿入方向Hdに向けて、外側筒部221と同じ高さとなる位置まで立設している。このように構成された外側補強リブ25は、第一方向Lに沿って所定の間隔を隔てて、三つ並んで設けられている。ここで、三つ並んだ外側補強リブ25のうち、インナー延出片24における第一方向Lの中央と外側筒部221とを連結する外側補強リブ25を第一外側リブ251とし、インナー延出片24における第一方向Lの両端と外側筒部221とを連結する外側補強リブ25を第二外側リブ252とする。
なお、第二外側リブ252は、インナー延出片24における径方向外側の角部分において、中央筒部223とも連結している。
【0067】
内側補強リブ26は、インナー延出片24の径方向内側において、第二方向Wに沿った底面視直線状のリブであり、円盤部21から挿入方向Hdに向けて立設している。このように構成された内側補強リブ26における径方向内側の下端は、内側筒部222の下端と連結しており、径方向外側の下端はインナー延出片24の中央部分と連結している。そして、内側補強リブ26は、内側筒部222からインナー延出片24に向かうに伴い、径方向外側が径方向内側よりも急となるように湾曲しながら、挿入方向Hdに向けて傾斜している。
【0068】
このように構成された内側補強リブ26は、外側補強リブ25と同様に、第一方向Lに沿って所定の間隔を隔てて、三つ並んで設けられている。詳しくは、内側補強リブ26は、インナー延出片24の第一方向Lの両端及び第一方向Lの中央と内側筒部222とを連結している。
【0069】
連結リブ224は、図4及び図5に示すように、係止固定部23に対応する箇所において、外側筒部221と内側筒部222とを径方向に沿って連結する底面視直線状のリブであり、円盤部21から所定の長さだけ挿入方向Hdに立設している。
【0070】
より詳しくは、連結リブ224は、外面溝部231の幅端部(外面溝部231の周方向の両端部分)に対応する位置において、外側筒部221と中央筒部223とを径方向に沿って対となって放射状に連結している。また、連結リブ224は、外側筒部221と中央筒部223との間において、外側筒部221と同じ高さを有しており、内側筒部222と中央筒部223との間において、内側筒部222と中央筒部223との挿入方向Hdの端部を連結している。すなわち、連結リブ224は、内側筒部222と中央筒部223との間において、径外側に向かうに伴い挿入方向Hdに向けて直線状に傾斜している。
なお、周方向に沿った係止固定部23のうちインナー延出片24に対応する箇所に設けられた連結リブ224は、対となっておらず、インナー延出片24の第一方向L外側にのみ設けられている。
【0071】
このように構成されたハーネス挿通部22は、径方向内側が径方向外側に比べて反挿入方向Huに配置されている内側筒部222と中央筒部223との間において、径方向内側に向かうに伴い反挿入方向Huに向けて傾斜するすり鉢形状で構成されている。
【0072】
このように構成されたグロメットインナ20は、周方向に分割させた第一組付体30と第二組付体40とで、ハーネスWHを挟み込むように配置し、ヒンジ部50を枢動軸として枢動させて、固定孔62に固定片61を挿入させて係止固定することで、ハーネスWHに取り付けることができる。
【0073】
そして、ハーネスWHを挿通させたカバー10における装着凹部121に円盤部21の外縁部分を嵌合させることにより、カバー10にグロメットインナ20を装着させたグロメット1とすることができる(図6(b)参照)。このように、カバー10にグロメットインナ20を装着させた状態において、突出部111は内側筒部222に対して嵌合されている。このため、突出部111が円盤部21よりも挿入方向Hdに配置される。また、突出部111から延出する電線挿通部112の先端が反挿入方向Huに配置される。
【0074】
このようにグロメットインナ20をカバー10に装着させたグロメット1は、車体パネルPの反挿入方向Huからハーネス挿通部22の先端部分をパネル孔P1に挿入した状態で(図7参照)、インナー延出片24を挿入方向Hdに引っ張ることで、グロメットインナ20を挿入方向Hdに移動させて車体パネルPに容易に取り付けることができる。
【0075】
詳述すると、図7に示すように、ハーネス挿通部22の先端部分をパネル孔P1に挿入した状態で、挿入方向Hdに向けた引張力F1を一対のインナー延出片24に作用させる。ここで、円盤部21は、環状のリブである外側筒部221と内側筒部222と中央筒部223と、直線状のリブである連結リブ224とを組み合わせて形成されているため、円盤部21は引張力F1を作用させたとしても容易に変形しない程度の剛性を有している。
【0076】
したがって、引張力F1を一対のインナー延出片24に作用させることによる円盤部21の変形を抑制でき、円盤部21の径方向外側に引張力F1を効率よく伝播させ、外側筒部221に伝播した伝播力F2を作用させることができる(図7参照)。
【0077】
また、外側筒部221に伝播力F2が伝播することにより、円盤部21の外縁部分が嵌合しているカバー10(装着凹部121)に対しても引張力F1を確実に伝播させることができ、図8(a)及び図8(b)に示すように、車体パネルPをフランジ装着部12と係止固定部23とで挟み込んで係止固定することができる。したがって、車体パネルPに対してグロメット1を容易かつ確実に取り付けることができる。
【0078】
また、インナー延出片24の第二方向Wの両側に外側補強リブ25及び内側補強リブ26を設けることでインナー延出片24の剛性を向上させている。これにより、インナー延出片24に対して引張力F1を作用させることによるインナー延出片24の変形も抑制し、インナー延出片24を介して効率的に円盤部21に引張力F1を伝播させることができる(図7参照)。
【0079】
さらにまた、対となるインナー延出片24のそれぞれが、第一方向Lの中央部分に設けられた四つの係止固定部23に対応する位置に設けられているため、インナー延出片24に作用させた引張力F1を効率的に係止固定部23に伝播させることができる。また、インナー延出片24を補強する内側補強リブ26が、内側筒部222を介して連結リブ224と連結されているとともに、係止固定部23に対応する位置において、連結リブ224が内側筒部222と外側筒部221とを連結している。
【0080】
このため、インナー延出片24に作用させた引張力F1を、連結リブ224を介して係止固定部23が設けられた外側筒部221により効率的に伝播させることができる。これにより、グロメット1を車体パネルPに確実に係止固定できる(図8参照)。
【0081】
このようにグロメット1は、車体パネルPに設けたパネル孔P1よりも大径に形成され、ハーネスWHを挿通するカバー10と、カバー10に装着されるグロメットインナ20とが備えられ、車体パネルPに取り付けた状態において、カバー10とグロメットインナ20との外縁部分で車体パネルPを挟んで係止する。そして、カバー10は、可撓性を有し、グロメットインナ20は、パネル孔P1に対して挿入させる挿入方向Hdに沿って、貫通する挿通孔Sを有する環状体で構成され、外縁部分と挿通孔Sとの間に、挿入方向Hdに向けて延出するインナー延出片24が設けられている。
【0082】
これにより、グロメット1の外縁部分と挿通孔Sとの間に設けられたインナー延出片24に対して挿入方向Hdに向けた引張力F1を作用させることにより、引張力F1をカバー10の外縁部分に効率的に伝播させることができる。したがって、グロメット1を挿入方向Hdに向けて確実に移動させることができ、車体パネルPに対してグロメット1を確実に取り付けることができる。
【0083】
また、ハーネスWHを挿通させる挿通孔Sよりも径方向外側にインナー延出片24が設けられていることから、挿通孔Sを挿通するハーネスWHとインナー延出片24との間に空間が形成されている。このため、容易にインナー延出片24を挿入方向Hdに向けて引っ張ることができる。すなわち、インナー延出片24に引張力F1を作用させやすく、グロメット1をパネル孔P1に取り付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0084】
また、インナー延出片24は、二つ設けられるとともに、ハーネスWHの挿入方向Hdから視て、挿通孔Sに沿った軸を中心軸として回転対称となる位置に配置されていることにより、回転対称に設けられた二つのインナー延出片24に引張力F1を同時に作用させることができる。
【0085】
具体的には、互いに対向するように設けられたインナー延出片24に対して引張力F1を作用させた場合には、グロメットインナ20を傾けることなく車体パネルPにグロメット1を装着させることができる。一方で、グロメットインナ20の外縁部分における、複数のインナー延出片24のうち一方が設けられた側をパネル孔P1にひっかけた状態で、互いに対向するように設けられたインナー延出片24の他方に対して引張力F1を作用させることで、グロメットインナ20を傾けながらグロメット1を車体パネルPに装着することができる。
【0086】
このように車体パネルPに対してグロメット1を垂直(挿通方向Hに沿って)に装着させるなど状況に応じて、車体パネルPに対するグロメット1の装着方法を選択することができるため、汎用性を向上させるとともに、容易かつ確実に車体パネルPにグロメット1を装着することができる。
【0087】
さらにまた、インナー延出片24は、車体パネルPと係止する係止固定部23に対応する位置に設けられていることにより、インナー延出片24に作用させた引張力F1を係止固定部23が設けられた箇所に伝播力F2として効率的に伝播させることができる。したがって、効率的にグロメット1を挿入方向Hdに向けて移動させることができ、車体パネルPにグロメット1を確実に係止固定できる。
【0088】
また、インナー延出片24は、グロメットインナ20に設けられていることにより、グロメットインナ20に引張力F1を直接作用させることができる。このため、引張力F1をグロメットインナ20の外縁部分により確実に伝播させることができる。したがって、車体パネルPに対してグロメット1を容易かつ確実に取り付けることができる。
【0089】
さらにまた、カバー10に直接引張力F1が作用することがないため、可撓性を有するカバー10が変形することを抑制できる。したがって、引張力F1によってカバー10とグロメットインナ20との装着状態が解除されることを抑制でき、より確実にグロメット1をパネル孔P1に取り付けることができる。
【0090】
また、グロメットインナ20に、インナー延出片24を補強する外側補強リブ25及び内側補強リブ26が設けられているため、インナー延出片24の剛性を向上させることができる。これにより、引張力F1が作用することによるインナー延出片24の変形や破損などを抑制でき、インナー延出片24に作用させた引張力F1が分散することを抑制できる。したがって、引張力F1をより確実かつ効率的にグロメットインナ20の外縁部分に伝播させることができる。
【0091】
また、カバー10に、挿入方向Hdに向けて突出し、装着状態において、挿通孔Sに嵌合する突出部111が設けられている。これにより、挿通孔Sに嵌合された突出部111にハーネスWHを挿通させることができるため、ハーネスWHが内側筒部222と干渉することを防止できる。したがって、挿通孔Sに挿通させたハーネスWHの損傷をより抑制できる。
【0092】
さらにまた、突出部111が挿通孔Sに嵌合されているため、挿通孔Sを挿通するハーネスWHの移動を規制できる。これにより、例えば、突出部111における挿入方向Hdの側に配索されたハーネスWHが、突出部111の挿入方向Hdと反対側(反挿入方向Huの側)に配索されたハーネスWHの配索方向の影響を受けることなく、突出部111における挿入方向Hdの側及び反挿入方向Huの側に配索されるハーネスWHを所望の方向に配索できる。
【0093】
また、挿通孔Sとインナー延出片24との間に内側補強リブ26が設けられているため、挿通孔Sを形成する内側筒部222の剛性を向上させることができる。これにより、挿通孔Sに嵌合された突出部111が変形することや、嵌合が解除されることを抑制できる。したがって、ハーネスWHの損傷をより抑制できるとともに、突出部111の挿入方向Hdの側及び反挿入方向Huの側において、ハーネスWHを所望の方向に配索できる。
【0094】
さらにまた、挿通孔Sは、ハーネスWHの挿通する挿入方向Hdと直交する第二方向Wに沿った長さが、挿入方向Hdと直交する第一方向Lに沿った長さよりも短い、長孔で構成され、インナー延出片24は、挿通孔Sにおける長軸に沿って設けられている。
【0095】
これにより、第二方向Wにおいて、挿通孔Sと外縁部分までの間隔が広くなるため、インナー延出片24を十分な板厚とすることができ、インナー延出片24の剛性を向上させることができる。このため、作業者がインナー延出片24を確実に把持して、引張力F1を作用させることができる。したがって、より確実にグロメット1を車体パネルPに取り付けることができる。
【0096】
また、グロメットインナ20は、周方向に対して取り付けることができる第一組付体30及び第二組付体40で構成され、インナー延出片24は、それぞれの第一組付体30及び第二組付体40に設けられている。これにより、ハーネスWHに対してグロメットインナ20を後付けすることができるため、ハーネスWHに対するグロメットインナ20の取り付け作業の作業性を向上させることができる。
【0097】
さらにまた、それぞれの第一組付体30及び第二組付体40に引張力F1を作用させることができるため、それぞれの第一組付体30及び第二組付体40が分割されることなく、挿入方向Hdに向けて移動させることができる。したがって、グロメットインナ20が装着されたカバー10を挿入方向Hdに向けて移動させることができ、グロメット1を確実に取り付けることができる。
【0098】
上述の実施形態では、グロメットインナ20にインナー延出片24が設けられているが、必ずしもグロメットインナ20に設ける必要はなく、例えば、インナー延出片24に対応する構造をカバー10に設けてもよい。以下、インナー延出片24の代わりとなるカバー延出片13が設けられたカバー10aと、カバー10aに装着されるグロメットインナ20aとで構成されたグロメット1aについて、図9乃至図12に基づいて簡単に説明する。
ここで、グロメット1aにおいて、グロメット1と同じ構成については、同じ付番を付し、その説明を省略する。
【0099】
図9は挿入方向Hdから視たグロメット1aの概略分解斜視図を示し、図10はカバー10aの説明図を示し、図11はグロメットインナ20aの説明図を示す。図12はグロメット1aを車体パネルPに取り付ける方法の説明図を示す。
【0100】
図10及び図11について詳述する。図10(a)はカバー10aの概略底面図を示し、図10(b)は図10(a)におけるE-E矢視断面図を示し、図11(a)はグロメットインナ20aの概略底面図を示し、図11(b)は図11(a)におけるF-F矢視断面図を示す。
【0101】
グロメット1aは、図9に示すように、グロメット1と同様に、ハーネスWHを内部に挿通可能な略筒状体であり、可撓性を有する樹脂で構成されたカバー10aと、カバー10aの端部に装着されるグロメットインナ20aとで構成され、車体パネルPにおけるパネル孔P1に固定される。
【0102】
カバー10aは、図10(a)及び図10(b)に示すように、車体パネルPに設けたパネル孔P1よりも大径に形成された略円盤状で構成され、カバー10aの中央部分においてハーネスWHを挿通させる挿通部11aと、カバー10aの径方向外側に設けられたフランジ装着部12とを有する。
【0103】
挿通部11aは、底面視略円形状の平板状で構成されており、中央部分から挿入方向Hdに向けて突出する突出部111と、突出部111の径方向内側から反挿入方向Huに向けて立設する一対の電線挿通部112と、突出部111とフランジ装着部12との中央部分から挿入方向Hdに延出するカバー延出片13とを有する。
【0104】
カバー延出片13は、底面視において、第一方向Lに沿った長辺を有するとともに、第二方向Wに沿った短辺を有する略長方形状の底面を有する、中実の柱状体であり、突出部111とフランジ装着部12との中央部分から挿入方向Hdに延出している(図10(b)参照)。なお、カバー延出片13の挿通方向Hに沿った長さは、インナー延出片24と略同じである。
【0105】
グロメットインナ20aは、ハーネスWHを挿通可能な略円筒形状をしており、図11(a)及び図11(b)に示すように、グロメットインナ20と同様に、周方向に取り付けることができる第一組付体30aと第二組付体40aとで構成されている。
【0106】
第一組付体30aと第二組付体40aは、第一組付体30と同様に、カバー10aと比べて剛性が高い樹脂で構成され、ヒンジ部50を介して枢動可能に連結されているとともに、ヒンジ部50と反対側に設けられた固定部60を介して係止固定することができる。
なお、以下の説明において、グロメットインナ20の説明と同様に、第一組付体30aと第二組付体40aとが組み付けられたグロメットインナ20aとして説明し、分割された状態についての説明は省略する。
【0107】
第一組付体30aと第二組付体40aが組み付けられた状態のグロメットインナ20aは、環状の円盤部21aと、円盤部21aから挿入方向Hdに向けて延出する略円筒状のハーネス挿通部22aとで一体に構成されている(図9及び図11参照)。
【0108】
円盤部21aは、グロメットインナ20におけるインナー延出片24に対応する箇所に、カバー延出片13を挿通させる延出片挿通部212が設けられている点を除き、円盤部21と略同じ構成である。
延出片挿通部212は、底面視において、カバー延出片13の底面と同形状をしており、円盤部21を板厚方向に貫通して形成されている。
【0109】
ハーネス挿通部22aは、円盤部21aから挿入方向Hdに向けて延出する略筒状体である。
詳述すると、ハーネス挿通部22aは、パネル孔P1の外径と略同じ外径を有する略円筒形状の外側筒部221と、円盤部21の径内側端部から挿入方向Hdに向けて延出する内側筒部222と、外側筒部221と内側筒部222との中間部分に設けられた中央筒部223と、外側筒部221と内側筒部222とを径方向に連結する複数の連結リブ224とで構成されており、グロメットインナ20においてインナー延出片24が設けられた箇所に挿通保持部29が設けられている。すなわち、挿通保持部29の反挿入方向Huを除いて、ハーネス挿通部22aの反挿入方向Huは、円盤部21によって閉塞されている。
【0110】
挿通保持部29は、図11(a)及び図11(b)に示すように、円盤部21における延出片挿通部212の縁から挿入方向Hdに向けて延出する底面視略長方形状のリブであり、第一方向Lに沿った一対の長辺リブ291と、第二方向Wに沿った一対の短辺リブ292とで構成されている。
【0111】
第一方向Lに沿った一対の長辺リブ291のうち、径方向外側に配置された長辺リブ291は、外側筒部221と同じ高さである。一方で、径方向内側に配置された長辺リブ291は、外側筒部221の3分の2程度の高さである。
【0112】
短辺リブ292は、底面視において長辺リブ291のおよそ半分の長さであり、径方向に並んで設けられた長辺リブ291の挿入方向Hdの端部同士を第二方向Wに沿って連結するように、延出片挿通部212の縁から挿入方向Hdに向けて立設している。すなわち、短辺リブ292は径方向外側に向かうに伴い挿入方向Hdに向けて傾斜している。
【0113】
また、ハーネス挿通部22aには、径方向外側に設けられた長辺リブ291と外側筒部221とを連結する外側補強リブ25と、径方向内側に設けられた長辺リブ291と内側筒部222とを連結する内側補強リブ26とが設けられている。なお、短辺リブ292は、三つ設けられた内側補強リブ26のうち、第一方向Lの両外側に配置されて内側補強リブ26及び第一外側リブ251と一体となっている。
【0114】
このように構成されたグロメットインナ20aは、周方向に分割させた第一組付体30aと第二組付体40aとで、ハーネスWHを挟み込むように配置し、ヒンジ部50を枢動軸として枢動させることにより、固定孔62に固定片61を挿入させて係止固定することで、ハーネスWHに取り付けることができる。
【0115】
そして、ハーネスWHを挿通させたカバー10aにおける装着凹部121に、円盤部21の外縁部分を嵌合させることにより、カバー10aにグロメットインナ20aを装着させたグロメット1aとすることができる。このようにグロメットインナ20aをカバー10aに装着させたグロメット1aは、カバー延出片13が挿通保持部29を挿入方向Hdに向けて挿通するともに、突出部111が内側筒部222に嵌合されている。
【0116】
このグロメット1aは、図12に示すように、車体パネルPの反挿入方向Huからハーネス挿通部22aの先端部分がパネル孔P1に挿入された状態で、カバー延出片13を挿入方向Hdに引っ張ることで、カバー10aを挿入方向Hdに移動させて車体パネルPに容易に取り付けることができる。
【0117】
詳述すると、図12に示すように、ハーネス挿通部22aの先端部分をパネル孔P1に挿入した状態で、挿通保持部29が形成する貫通孔に挿通させた一対のカバー延出片13に対して挿入方向Hdに向けた引張力F1を作用させる。これにより、カバー10aを挿入方向Hdに対して移動させることができる。
【0118】
より詳しくは、延出片挿通部212に挿通されたカバー延出片13は、延出片挿通部212により位置規制されているため、カバー延出片13に引張力F1を作用させた場合に、カバー10の変形を抑制できるとともに、カバー延出片13に作用する引張力F1を挿入方向Hdに向けて確実に作用させることができる。
【0119】
また、延出片挿通部212を挿通するカバー延出片13は、挿通保持部29が形成する貫通孔を挿通する。すなわち、カバー延出片13は長辺リブ291及び短辺リブ292に囲まれて挿通方向Hに挿通されている。このため、カバー延出片13が径方向内側及び径方向外側に向けて倒れることを抑制し、引張力F1をより確実に挿入方向Hdに向けて作用させることができる。
【0120】
なお、径方向内側の長辺リブ291は、径方向外側の長辺リブ291よりも低いため、引張力F1を作用させることにより、挿通保持部29が径方向外側に倒れることをより抑制できる。一方で、径方向内側の長辺リブ291が低くなっていることから、作業者は力をかけやすい径方向内側に向けてカバー延出片13を引っ張ることができる。これにより、より効率よく引張力F1をカバー延出片13に作用させることができるため、グロメット1aを容易かつ確実に車体パネルPに取り付けることができる。
【0121】
また、カバー10aとグロメットインナ20aが装着した状態において、円盤部21aは挿通部11aと面で接しているため(図12参照)、カバー延出片13に引張力F1を作用させることで、円盤部21aに挿入方向Hdに向けて押し付ける押し付け力F3が作用し、グロメットインナ20aを挿入方向Hdに移動させることができる。これにより、カバー10aにグロメットインナ20aを装着させたグロメット1aを容易かつ確実に車体パネルPに係止固定できる。
【0122】
また、挿通部11aにおけるカバー延出片13の周辺部分は円盤部21aと当接しているため、カバー延出片13に引張力F1を作用させることによるカバー10aの変形を抑制できる。これにより、より効率よくカバー10aに引張力F1を作用させることができるため、グロメット1をより容易かつ確実に挿入方向Hdに向けて移動させ、車体パネルPに係止固定できる。
【0123】
このようにグロメット1aは、車体パネルPに設けたパネル孔P1よりも大径に形成され、ハーネスWHを挿通するカバー10aと、カバー10aに装着されるグロメットインナ20aとが備えられ、車体パネルPに取り付けた状態において、カバー10aとグロメットインナ20aとの外縁部分で車体パネルPを挟んで係止する。そして、カバー10aは、可撓性を有し、グロメットインナ20aは、パネル孔P1に対して挿入させる挿入方向Hdに沿って、貫通する挿通孔Sを有する環状体で構成され、外縁部分と挿通孔Sとの間に、挿入方向Hdに向けて延出するカバー延出片13が設けられている。
【0124】
これにより、グロメット1の外縁部分と挿通孔Sとの間に設けられたカバー延出片13に対して挿入方向Hdに向けた引張力F1を作用させることにより、引張力F1をカバー10aの外縁部分に効率的に伝播させることができる。したがって、グロメット1を挿入方向Hdに向けて確実に移動させることができ、車体パネルPに対してグロメット1を確実に取り付けることができる。
【0125】
また、ハーネスWHを挿通させる挿通孔Sよりも径方向外側にカバー延出片13が設けられていることから、挿通孔Sを挿通するハーネスWHとカバー延出片13との間に空間が形成されている。このため、容易にカバー延出片13を挿入方向Hdに向けて引っ張ることができる。すなわち、カバー延出片13に引張力F1を作用させやすく、グロメット1aをパネル孔P1に取り付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0126】
また、カバー延出片13は、複数設けられるとともに、ハーネスWHの挿入方向Hdから視て、挿通孔Sに沿った軸を中心軸として回転対称となる位置に配置されていることにより、回転対称に設けられた複数のカバー延出片13に引張力F1を同時に作用させることができる。
【0127】
具体的には、互いに対向するように設けられたカバー延出片13に対して引張力F1を作用させた場合には、グロメットインナ20aを傾けることなく車体パネルPにグロメット1aを装着させることができる。一方で、グロメットインナ20aの外縁部分における、複数のカバー延出片13のうち一方が設けられた側をパネル孔P1にひっかけた状態で、互いに対向するように設けられたカバー延出片13の他方に対して引張力F1を作用させることで、グロメットインナ20aを傾けながらグロメット1aを車体パネルPに装着することができる。
【0128】
このように車体パネルPに対してグロメット1aを垂直(挿通方向Hに沿って)に装着させるなど状況に応じて、車体パネルPに対するグロメット1aの装着方法を選択することができるため、汎用性を向上させるとともに、容易かつ確実に車体パネルPにグロメット1aを装着することができる。
【0129】
さらにまた、カバー延出片13は、車体パネルPと係止する係止固定部23に対応する位置に設けられていることにより、カバー延出片13に作用させた引張力F1を係止固定部23が設けられた箇所に効率的に伝播させることができる。したがって、効率的にグロメット1aを挿入方向Hdに向けて移動させることができ、車体パネルPにグロメット1aを確実に係止固定できる。
【0130】
カバー延出片13は、カバー10aに設けられ、グロメットインナ20aに、カバー延出片13を挿通させる挿通保持部29が設けられている。これにより、カバー延出片13に引張力F1を作用させることで、カバー10aを挿入方向Hdに向けて引っ張ることができるとともに、カバー10aに作用させた引張力F1により、カバー10aでグロメットインナ20aを挿入方向Hdに向けて押し付けて移動させることができる。したがって、カバー10aとグロメットインナ20aとの装着状態を確実に維持したまま、グロメット1aを車体パネルPに取り付けることができる。
【0131】
また、挿通保持部29がカバー延出片13を規制しているため、引張力F1をカバー10aに作用させることによるカバー10aの変形を抑制できるとともに、挿入方向Hdに沿った引張力F1をカバー延出片13に確実に作用させることができる。したがって、効率よくグロメット1aを挿入方向Hdに移動させることができる。
【0132】
さらにまた、挿通部11aの挿入方向Hdに円盤部21aが配置されているため、カバー延出片13に引張力F1を作用させることにより、挿通保持部29の近傍においてカバー10aがグロメットインナ20aと当接し、押し付け力F3を円盤部21aに作用させることができる。これにより、カバー10aの変形を抑制でき、引張力F1を効率よくグロメットインナ20aに伝播させることができる。
【0133】
また、グロメットインナ20aに、挿通保持部29を補強する外側補強リブ25及び内側補強リブ26が設けられている。これにより、挿通保持部29の剛性を向上させることができるため、挿通保持部29に沿って確実にカバー延出片13を引っ張ることができる。したがって、効率的にグロメット1aを車体パネルPに取り付けることができる。
【0134】
また、前記カバー10に、前記挿入方向Hdに向けて突出し、前記装着状態において、前記挿通孔Sに嵌合する突出部111が設けられている。これにより、挿通孔Sに嵌合された突出部111にハーネスWHを挿通させることができるため、ハーネスWHが内側筒部222と干渉することを防止できる。したがって、挿通孔Sに挿通させたハーネスWHの損傷をより抑制できる。
【0135】
さらにまた、突出部111が挿通孔Sに嵌合されているため、挿通孔Sを挿通するハーネスWHの移動を規制できる。これにより、例えば、突出部111における挿入方向Hdの側に配索されたハーネスWHが、突出部111の挿入方向Hdと反対側(反挿入方向Huの側)に配索されたハーネスWHの配索方向の影響を受けることなく、突出部111における挿入方向Hdの側及び反挿入方向Huの側に配索されるハーネスWHを所望の方向に配索できる。
【0136】
また、挿通孔Sとカバー延出片13との間に、内側補強リブ26が設けられているため、挿通孔Sを形成する内側筒部222の剛性を向上させることができる。これにより、挿通孔Sに嵌合された突出部111が変形することや、嵌合が解除されることを抑制できる。したがって、ハーネスWHの損傷をより抑制できるとともに、突出部111の挿入方向Hdの側及び反挿入方向Huの側において、ハーネスWHを所望の方向に配索できる。
【0137】
さらにまた、挿通孔Sは、ハーネスWHの挿通する挿入方向Hdと直交する第二方向Wに沿った長さが、挿入方向Hdと直交する第一方向Lに沿った長さよりも短い、長孔で構成され、カバー延出片13は、挿通孔Sにおける長軸に沿って設けられている。
【0138】
これにより、第二方向Wにおいて、挿通孔Sと外縁部分までの間隔が広くなるため、カバー延出片13を十分な板厚とすることができ、カバー延出片13の剛性を向上させることができる。このため、作業者がカバー延出片13を確実に把持して、引張力F1を作用させることができる。したがって、より確実にグロメット1を車体パネルPに取り付けることができる。
【0139】
また、グロメットインナ20aは、周方向に対して取り付けることができる第一組付体30及び第二組付体40で構成され、カバー延出片13は、それぞれの第一組付体30及び第二組付体40に設けられている。これにより、ハーネスWHに対してグロメットインナ20aを後付けすることができるため、ハーネスWHに対するグロメットインナ20aの取り付け作業の作業性を向上させることができる。
【0140】
さらにまた、それぞれの第一組付体30及び第二組付体40に引張力F1を作用させることができるため、それぞれの第一組付体30及び第二組付体40が分割されることなく、挿入方向Hdに向けて移動させることができる。したがって、グロメットインナ20aが装着されたカバー10aを挿入方向Hdに向けて移動させることができ、グロメット1aを確実に取り付けることができる。
【0141】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の車体パネルは、車体パネルPに対応し、
以下同様に、
パネル孔は、パネル孔P1に対応し、
ワイヤーハーネスは、ハーネスWHに対応し、
グロメットカバーは、カバー10,10aに対応し、
グロメットインナは、グロメットインナ20,20aに対応し、
グロメットは、グロメット1,1aに対応し、
貫通孔は、挿通孔Sに対応し、
挿入方向は、挿入方向Hdに対応し、
延出部は、インナー延出片24及びカバー延出片13に対応し、
係止部は、係止固定部23に対応し、
補強部は、外側補強リブ25及び内側補強リブ26に対応し、
突出部は、突出部111に対応し、
挿通部は、挿通保持部29に対応し、
一方向は、第二方向Wに対応し、
他方向は、第一方向Lに対応し、
組付体は、第一組付体30,30a及び第二組付体40,40aに対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0142】
例えば、この実施形態において、インナー延出片24は第二方向Wの中央を通る第一方向L及び挿通方向Hに沿った面に対して面対称としているが、挿通孔Sにおける第二方向Wの中心を回転軸として、インナー延出片24が三つ以上回転対称となる位置に設けられていてもよい。
【0143】
また、グロメットインナ20は、ヒンジ部50を介して枢動可能に連結された第一組付体30と第二組付体40とで構成され、第一組付体30と第二組付体40とを周方向に取り付けることができるが、必ずしも、第一組付体30と第二組付体40とに分割される必要はなく、第一組付体30と第二組付体40とが一体で構成されていてもよい。また、第一組付体30と第二組付体40とが、ヒンジ部50を介して連結されておらず、第一組付体30と第二組付体40の双方に設けられた固定部60で互いに固定する構造であってもよい。
【0144】
また、インナー延出片24及びカバー延出片13が設けられる位置も、適宜変更してもよい。例えば、第一組付体30,30a及び第二組付体40,40aを取り付けた状態において、第一組付体30,30aと第二組付体40、第二組付体40aとを跨ぐように、インナー延出片24やカバー延出片13を設けてもよい。
【0145】
これにより、第一組付体30,30a及び第二組付体40,40aの双方に引張力F1を作用させることができるため、第一組付体30,30a及び第二組付体40,40a同士が分離することを抑制できる。したがって、グロメットインナ20,20aを車体パネルPに対して確実に係止固定することができる。
【0146】
さらにまた、インナー延出片24はグロメット1におけるグロメットインナ20に設けられ、カバー延出片13はグロメット1aにおけるカバー10aに設けられているが、カバー延出片13が設けられたカバー10aを、インナー延出片24及び挿通保持部29が設けられたグロメットインナ20に装着させてもよい。
【0147】
また、本実施形態において、インナー延出片24及びカバー延出片13は、第二方向Wに設けられた係止固定部23の間に設けられているが、係止固定部23の径方向内側にインナー延出片24やカバー延出片13を設けてもよい。
【0148】
さらにまた、本実施形態において、インナー延出片24は中実状の柱状体で構成されているが、必ずしもこの構成である必要はなく、例えば、図13に示す概略斜視図のように、インナー延出片24に板厚方向(第二方向W)に沿って貫通させた凹部241を設けてもよい。これにより、作業者がインナー延出片24を確実に把持できる。すなわち、作業者が凹部241を引っかけてインナー延出片24を引っ張ることができるため、より効率的にグロメットを車体パネルPに取り付けることができる。したがって、車体パネルPにグロメット1を取り付ける作業の作業効率を向上させることができる。
なお、第二方向Wに沿って貫通させた凹部241の代わりに、インナー延出片24における第二方向Wの少なくとも一方側の主面を板厚方向に窪ませてもよい。
【0149】
また、カバー延出片13は中実状の柱状体で構成されているが、インナー延出片24と同様に、凹部241に対応するように、カバー延出片13を板厚方向に沿って窪ませてもよいし、板厚方向に沿って貫通させてもよい。
【符号の説明】
【0150】
1,1a…グロメット
10,10a…カバー
13…カバー延出片
20,20a…グロメットインナ
23…係止固定部
24…インナー延出片
25…外側補強リブ
26…内側補強リブ
29…挿通保持部
30,30a…第一組付体
40,40a…第二組付体
111…突出部
241…凹部
L…第一方向
S…挿通孔S
P…車体パネル
W…第二方向
P1…パネル孔
Hd…挿入方向
WH…ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図13