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特開2024-139191信号情報提供システムおよび生成制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139191
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】信号情報提供システムおよび生成制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050022
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長澤 弘之
(72)【発明者】
【氏名】中野 公彦
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB15
5H181JJ02
(57)【要約】
【課題】交差点に係る信号現示の情報を自動運転または運転支援の機能を有する自動車に提供する仕組みにおいて、通信断に対する安全性の確保を実現するための技術の提供。
【解決手段】信号情報提供システム1は、交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該次の停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない交差道路別の信号時刻情報を発信する。自動車30は、受信した信号時刻情報に含まれる変化時刻と現在時刻とを比較して自車の進路に係る交差点の現示を判断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を含む所定範囲を走行する自動車に向けて前記交差点に係る信号の変化時刻を含む信号時刻情報を発信する信号情報提供システムであって、
前記自動車は、前記信号時刻情報に含まれる変化時刻と現在時刻とを比較して自車の進路に係る前記交差点の現示を判断する機能を有しており、
前記交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該次の停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない交差道路別の前記信号時刻情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記信号時刻情報の発信を制御する発信制御手段と、
を備える信号情報提供システム。
【請求項2】
前記1サイクル分の信号の変化時刻には、進行現示に変化する進行現示開始時刻が含まれ、
前記生成手段は、前記1サイクル分の信号の変化時刻のうちの進行現示開始時刻であって、前記交差点に係る全ての交差道路別の進行現示開始時刻が、現在時刻より過去となったことを検出することで、前記信号時刻情報の更新タイミングの到来を検出する更新タイミング検出手段、を有する、
請求項1に記載の信号情報提供システム。
【請求項3】
前記生成手段は、前記更新タイミング検出手段の検出に応じて、1)前記信号時刻情報に含まれる進行現示開始時刻が前記交差点に係る一方道路よりも他方道路のほうが古い場合には、前記信号時刻情報のうちの、当該他方道路の進行現示開始時刻と、当該一方道路の停止現示開始時刻とを更新し、2)前記信号時刻情報に含まれる進行現示開始時刻が前記他方道路よりも一方道路のほうが古い場合には、前記信号時刻情報のうちの、当該一方道路の進行現示開始時刻と、当該他方道路の停止現示開始時刻とを更新する、
請求項2に記載の信号情報提供システム。
【請求項4】
前記生成手段は、前記停止現示開始時刻を更新する場合に、更新する前記停止現示開始時刻に係る交差道路の前記次の停止現示開始時刻を更新する、
請求項2又は3に記載の信号情報提供システム。
【請求項5】
前記所定範囲は、複数の交差点を含み、
前記生成手段は、前記所定範囲に含まれる交差点毎に当該交差点に係る前記信号時刻情報を生成し、
前記発信制御手段は、前記所定範囲に含まれる複数の交差点全ての前記信号時刻情報を発信する、
請求項1~3の何れか一項に記載の信号情報提供システム。
【請求項6】
交差点を含む所定範囲を走行する自動車に向けて前記交差点に係る信号の変化時刻を含む信号時刻情報を発信する信号情報提供システムにおける前記信号時刻情報の生成制御方法であって、
前記自動車は、前記信号時刻情報に含まれる変化時刻と現在時刻とを比較して自車の進路に係る前記交差点の現示を判断する機能を有しており、
前記交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該次の停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない交差道路別の前記信号時刻情報を生成する第1の生成ステップと、
前記1サイクル分の信号の変化時刻のうちの進行現示開始時刻であって、前記交差点に係る全ての交差道路別の進行現示開始時刻が、現在時刻より過去となったことを検出することで、前記信号時刻情報の更新タイミングの到来を検出する更新タイミング検出ステップと、
前記更新タイミング検出ステップの検出に応じて、前記第1の生成ステップで生成された前記信号時刻情報を更新して新たな前記信号時刻情報とする第2の生成ステップと、
を含む生成制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に向けて交差点に係る信号時刻情報を発信する信号情報提供システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
信号機の設置された交差点では、円滑な交通流の確保を目的とした当該信号機の動作制御である交通信号制御が行われている。交通信号制御の方式は、主に、交通管制センターの中央装置によって各交差点の信号機の動作を一括制御する集中制御方式(遠隔制御方式)と、各々の交差点で信号機の動作を独立制御する地点制御方式とに分類される。
【0003】
近年では、自律走行が可能な自動運転車両の技術開発が進められている。自動運転車両は、交差点を安全に通過するために、その交差点の信号現示(信号機の表示灯色)を確実に認識する必要がある。自動運転車両が交差点に係る信号現示の情報を認識する手法としては、車両に搭載したカメラやセンサ等で信号機の表示灯色を直接画像認識する手法が主流である。他方、外部システム(交通インフラ側)から発信される情報を自動運転車両が取得する手法も考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-27416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の後者の手法において、外部システム(交通インフラ側)による交差点に係る信号現示の情報の発信は、自動運転車両は移動体であることから無線通信によって実現される。その場合、外部システムと自動運転車両との間の無線通信が途切れないことが前提であるが、無線通信が途切れた場合に安全側の制御(フェールセーフ)となる仕組みが必要である。なお、この課題は、完全な自動運転の自動車だけでなく、自動運転レベルが運転支援のレベルの自動車についても同様に対象となる課題である。また、物理的な信号機の設置を廃止して無線通信のみによる完全な自動運転の自動車だけが走行可能な地域・都市構想を実現する場合にも同様である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、交差点に係る信号現示の情報を自動運転または運転支援の機能を有する自動車に提供する仕組みにおいて、通信断に対する安全性の確保を実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
交差点を含む所定範囲を走行する自動車に向けて前記交差点に係る信号の変化時刻を含む信号時刻情報を発信する信号情報提供システムであって、
前記自動車は、前記信号時刻情報に含まれる変化時刻と現在時刻とを比較して自車の進路に係る前記交差点の現示を判断する機能を有しており、
前記交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該次の停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない交差道路別の前記信号時刻情報を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記信号時刻情報の発信を制御する発信制御手段と、
を備える信号情報提供システムである。
【0008】
他の発明として、
交差点を含む所定範囲を走行する自動車に向けて前記交差点に係る信号の変化時刻を含む信号時刻情報を発信する信号情報提供システムにおける前記信号時刻情報の生成制御方法であって、
前記自動車は、前記信号時刻情報に含まれる変化時刻と現在時刻とを比較して自車の進路に係る前記交差点の現示を判断する機能を有しており、
前記交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該次の停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない交差道路別の前記信号時刻情報を生成する第1の生成ステップと、
前記1サイクル分の信号の変化時刻のうちの進行現示開始時刻であって、前記交差点に係る全ての交差道路別の進行現示開始時刻が、現在時刻より過去となったことを検出することで、前記信号時刻情報の更新タイミングの到来を検出する更新タイミング検出ステップと、
前記更新タイミング検出ステップの検出に応じて、前記第1の生成ステップで生成された前記信号時刻情報を更新して新たな前記信号時刻情報とする第2の生成ステップと、
を含む生成制御方法を構成してもよい。
【0009】
第1の発明等によれば、交差点に係る信号現示の情報を自動運転または運転支援の機能を有する車両に提供する仕組みにおいて、通信断に対する安全性の確保を実現することができる。つまり、信号情報提供システムは、交差点に係る信号の変化時刻を含む信号時刻情報を更新タイミングの到来ごとに更新して発信する。その信号時刻情報は、交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない情報である。このため、信号情報提供システムとの通信断が生じて自動車において信号時刻情報が受信されなくなった場合、当該自動車は、それ以前に受信した信号時刻情報に基づいて自車の進路に係る交差点の現示を判断することになる。したがって、その信号時刻情報に含まれる1サイクルの次に停止現示に変化する停止現示開始時刻が到来して停止現示と判断した後は、それ以降もその判断を継続することになる。このことから、当該自動車は交差点に進入せず、通信断に対する安全側の制御(フェールセーフ)が実現される。
【0010】
第2の発明は、上述の発明において、
前記1サイクル分の信号の変化時刻には、進行現示に変化する進行現示開始時刻が含まれ、
前記生成手段は、前記1サイクル分の信号の変化時刻のうちの進行現示開始時刻であって、前記交差点に係る全ての交差道路別の進行現示開始時刻が、現在時刻より過去となったことを検出することで、前記信号時刻情報の更新タイミングの到来を検出する更新タイミング検出手段、を有する、
信号情報提供システムである。
【0011】
第2の発明によれば、信号時刻情報に含まれる全ての交差道路別の進行現示開始時刻が現在時刻より過去となった更新タイミングで、当該信号時刻情報が更新される。
【0012】
第3の発明は、上述の発明において、
前記生成手段は、前記更新タイミング検出手段の検出に応じて、1)前記信号時刻情報に含まれる進行現示開始時刻が前記交差点に係る一方道路よりも他方道路のほうが古い場合には、前記信号時刻情報のうちの、当該他方道路の進行現示開始時刻と、当該一方道路の停止現示開始時刻とを更新し、2)前記信号時刻情報に含まれる進行現示開始時刻が前記他方道路よりも一方道路のほうが古い場合には、前記信号時刻情報のうちの、当該一方道路の進行現示開始時刻と、当該他方道路の停止現示開始時刻とを更新する、
信号情報提供システムである。
【0013】
第3の発明によれば、全ての変化時刻を同時に更新するのではなく、交差道路別に進行現示開始時刻および停止現示開始時刻を交互に更新することで、安全性を確保した信号時刻情報の更新となる。つまり、信号時刻情報は全ての交差道路別の進行現示開始時刻が現在時刻より過去となった更新タイミングで更新される。しかし、交差点では交差道路が交互に進行現示となるから、進行現示開始時刻が新しいほうの交差道路はその時点では進行現示である可能性が高いので進行現示開始時刻を更新せずに停止現示開始時刻のみを更新し、進行現示開始時刻が古いほうの交差道路、つまり、停止現示となっている交差道路の進行現示開始時刻を更新する。このように、半サイクルごとに交差道路別の既に終了した進行現示開始時刻を更新することで、自動車における信号の誤判断を防止して安全性を確保することができる。
【0014】
第4の発明は、上述の発明において、
前記生成手段は、前記停止現示開始時刻を更新する場合に、更新する前記停止現示開始時刻に係る交差道路の前記次の停止現示開始時刻を更新する、
信号情報提供システムである。
【0015】
第4の発明によれば、信号時刻情報に含まれる停止現示開始時刻の更新とともに、その交差道路の次の停止現示開始時刻も更新することで、当該信号時刻情報の整合性を確保することができる。
【0016】
第5の発明は、上述の発明において、
前記所定範囲は、複数の交差点を含み、
前記生成手段は、前記所定範囲に含まれる交差点毎に当該交差点に係る前記信号時刻情報を生成し、
前記発信制御手段は、前記所定範囲に含まれる複数の交差点全ての前記信号時刻情報を発信する、
信号情報提供システムである。
【0017】
第5の発明によれば、自動車は、自車の進路に係る次の交差点のみならず、その先の交差点の信号時刻情報をも受信することができるので、走行制御に役立てることができ有益である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】信号情報提供システムの適用例。
図2】制御単位エリアの設定例。
図3】信号時刻情報の説明図。
図4】信号時刻情報の説明図。
図5】信号時刻情報更新処理のフローチャート。
図6】信号時刻情報の更新の説明図。
図7】信号時刻情報の更新の説明図。
図8】自動車における信号の判断の説明図。
図9】通信断が生じた場合の自動車における信号の判断の説明図。
図10】通信断が生じた場合の自動車における信号の判断の説明図。
図11】通信断が生じた場合の自動車における信号の判断の説明図。
図12】信号情報提供システムの機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0020】
[システム構成]
図1は、本実施形態における信号情報提供システム1の適用例を示す図である。信号情報提供システム1は、交差点を含む所定範囲を走行する自動車30に向けて交差点に係る信号情報を発信するシステムである。
【0021】
信号情報には信号時刻情報が含まれる。信号時刻情報は、詳細を後述するが、外部システムである交通信号システム3から取得する交差点制御情報に基づく情報であり、交差点における交差道路別の信号の変化時刻(現示の開始時刻)を含む情報である。
【0022】
交通信号システム3は、信号機の信号現示を制御することによって交差点の交通(交通流)を制御するシステムであり、複数の交差点の信号機の動作を一括して集中制御(遠隔制御)する。具体的には、各交差点の信号機に対する信号制御指令を所定の制御周期ごとに生成して各信号機へ送信する。信号情報提供システム1は、各交差点についての信号制御指令を含む情報を交差点制御情報として交通信号システム3から取得する。
【0023】
自動車30は、無線基地局10を介して発信された信号情報を受信する無線通信機能を有するとともに、自動運転または運転支援の機能として受信した信号情報に基づく走行制御機能を有する走行制御装置32を搭載している。本実施形態においては、自動車30には走行予定経路が予め設定されており、この走行予定経路に沿って走行制御装置32が自車(自動車30)を走行制御することとして説明する。走行制御装置32が有する走行制御機能には、受信した信号情報に含まれる信号時刻情報に基づき、自車(自動車30)の進路に係る交差点の信号を判断する機能が含まれる。また、当該走行制御機能には、車載カメラの撮影画像等に基づき他の走行車両を画像認識することで衝突防止や車間距離保持等の走行制御を実現する公知の機能が含まれることとして説明する。さらに、当該走行制御機能には、従来と同様の車載カメラ等で信号機の表示灯色を直接画像認識する機能が含まれていてもよい。
【0024】
信号情報提供システム1は、所定範囲である制御単位エリア20毎に、当該制御単位エリア20全体を通信範囲に含むように設置した無線基地局10を介することで、当該制御単位エリア20内の交差点に係る信号情報を、当該制御単位エリア20内を走行する自動車30に向けて発信する。また、信号情報提供システム1は、信号情報の生成および発信を所定周期で繰り返し行う。この発信は、相手先を特定せずに、いわゆる放送の形態で行うことができる。そして、信号情報は、交差点毎の情報(例えば、信号時刻情報)を含む。各情報は、該当する交差点の識別情報(交差点ID)に対応付けられている。
【0025】
図2は、制御単位エリア20を説明する図である。図2では、上下左右の実線が道路を示し、実線の交差箇所が、信号機を表す4つの点を表記することで交差点であることを示している。また、破線の円状の範囲1つ1つが制御単位エリア20であることを示している。図2に示すように、制御単位エリア20は、複数設定されるとともに、隣り合うエリア20同士が一部重複するように設定される。自動車30が制御単位エリア20の重複部分に位置する場合、当該重複する各制御単位エリア20についての信号情報を取得することができる。したがって、道路を走行する自動車30は、故障等の何らかの不具合が発生しなければ、隣り合う各交差点に係る信号情報を途切れなく取得することができる。
【0026】
[信号時刻情報]
信号時刻情報は、交通信号システム3から取得した交差点制御情報に基づく情報である。図3は、信号時刻情報を説明する図である。図3では、主道路および従道路が交差する十字交差点についての信号時刻情報の例を示している。信号時刻情報は、当該交差点の信号サイクルに関する情報である信号サイクル情報に基づいて生成される。信号サイクル情報は、現示階梯表や、サイクル長、スプリットおよびオフセットである信号制御パラメータ等である。信号制御パラメータは、交差点制御情報に含まれる交通信号システム3による信号制御指令によって制御される。
【0027】
信号時刻情報は、交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含む。図3の例では、信号時刻情報は、交差道路である主道路および従道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻として停止現示(赤信号)に変化する停止現示開始時刻である“赤信号開始時刻”および進行現示(青信号)に変化する進行現示開始時刻である“青信号開始時刻”と、当該1サイクルの次の停止現示開始時刻である“次赤信号開始時刻”とを含む情報である。
【0028】
また、信号時刻情報における“次赤信号開始時刻”は、1サイクルの次の赤信号開始時刻であるから、当該1サイクル分の信号の変化時刻である“赤信号開始時刻”および“青信号開始時刻”に比べて未来の時刻である。
【0029】
図4は、信号時刻情報の一例である。図4では、上側に、横方向の共通の時刻として、信号サイクル情報から求められる複数サイクル分の主道路および従道路それぞれの信号(進行現示である“青信号”、停止現示である“赤信号”および“黄信号”)に変化する時刻(開始時刻)を示し、下側に、ある時刻Tにおける信号時刻情報を示している。なお、サイクルは、主道路の青信号の開始を起点としている。
【0030】
図4の例では、時刻Tにおける信号時刻情報では、主道路の信号の変化時刻は、2サイクル目の赤信号の開始時刻ta2および青信号の開始時刻ta1がそれぞれ“赤信号開始時刻”および“青信号開始時刻”であり、2サイクル目の赤信号の開始時刻ta2の次のサイクルである3サイクル目の赤信号の開始時刻ta4が“次赤信号開始時刻”である。また、従道路の信号の変化時刻は、1サイクル目の赤信号の開始時刻tb0および2サイクルの青信号の開始時刻tb1がそれぞれ“赤信号開始時刻”および“青信号開始時刻”であり、1サイクル目の赤信号の開始時刻tb0の次のサイクルである2サイクル目の赤信号の開始時刻tb2が“次赤信号開始時刻”である。なお、従道路の赤信号開始時刻tb0から次赤信号開始時刻tb2までの期間は、主道路の青信号の開始を起点としたサイクルの順序数である1サイクル目および2サイクル目に跨っているが、期間の長さとしては1サイクル分に相当している。
【0031】
信号情報提供システム1は、時間経過に応じて信号時刻情報を更新する。図5は、ある交差点についての信号時刻情報を更新する処理(信号時刻情報更新処理)の流れを説明するフローチャートである。
【0032】
図5に示すように、信号情報提供システム1は、現在の信号時刻情報に含まれる1サイクル分の信号の変化時刻のうちの青信号開始時刻であって、当該交差点に係る全ての交差道路別の青信号開始時刻が現在時刻より過去となったかを判断し、全てが過去となっていなければ待機し(ステップS1:NO)、全てが過去となったならば(ステップS1:YES)、信号時刻情報の更新タイミングの到来と判断する。更新タイミングと判断すると、信号時刻情報を更新する。
【0033】
具体的には、信号時刻情報に含まれる主道路(一方道路)の青信号開始時刻のほうが従道路(他方道路)の青信号開始時刻よりも古いならば(ステップS3:YES)、信号時刻情報のうちの主道路(一方道路)の青信号開始時刻を更新する(ステップS5)。また、信号時刻情報のうちの従道路(他方道路)の赤信号開始時刻と、次赤信号開始時刻とを更新する(ステップS7)。
【0034】
一方、信号時刻情報に含まれる従道路(他方道路)の青信号開始時刻が主道路(一方道路)の青信号開始時刻よりも古いならば(ステップS9:YES)、信号時刻情報のうちの従道路(他方道路)の青信号開始時刻を更新する(ステップS11)。また、信号時刻情報のうちの主道路(一方道路)の赤信号開始時刻と次赤信号開始時刻とを更新する(ステップS13)。以上の処理を行うと、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0035】
図6図7は、上述の信号時刻情報更新処理に従った信号時刻情報の更新の一例である。図6は、図4の時刻Tから約半サイクルの時間が経過して時刻Tとなった場合である。時刻Tにおいては、主道路の青信号開始時刻ta1および従道路の青信号開始時刻tb1は、ともに過去の時刻(時刻Tより古い時刻)であり、更新タイミングが到来している(図5のステップS1:YESに該当)。そして、主道路の青信号開始時刻ta1のほうが従道路の青信号開始時刻tb1より古いから(図5のステップS3:YESに該当)、主道路の青信号開始時刻と、従道路の赤信号開始時刻および次赤信号開始時刻とが更新される(図5のステップS5,S7に該当)。すなわち、主道路の“青信号開始時刻”が3サイクル目の青信号の開始時刻ta3に更新され、従道路の“赤信号開始時刻”が2サイクル目の赤信号の開始時刻tb2に更新され、“次赤信号開始時刻”が3サイクル目の赤信号の開始時刻tb4に更新される。
【0036】
図7は、図6の時刻Tからさらに約半サイクルの時間が経過して時刻Tとなった場合である。時刻Tにおいては、主道路の青信号開始時刻ta3および従道路の青信号開始時刻tb1は、ともに過去の時刻(時刻Tより古い時刻)であり、更新タイミングが到来している(図5のステップS1:YESに該当)。そして、従道路の青信号開始時刻tb1のほうが主道路の青信号開始時刻ta3より古いから(図5のステップS9:YESに該当)、従道路の青信号開始時刻と、主道路の赤信号開始時刻および次赤信号開始時刻とが更新される(図5のステップS11,S13に該当)。すなわち、従道路の“青信号開始時刻”が3サイクル目の青信号の開始時刻tb3に更新され、主道路の“赤信号開始時刻”が3サイクル目の赤信号の開始時刻ta4に更新され、“次赤信号開始時刻”が4サイクル目の赤信号の開始時刻ta6に更新される。
【0037】
このように、信号時刻情報は、約半サイクルが経過するごとに、(1)主道路および従道路の青信号開始時刻のうちの古いほうの青信号開始時刻が更新され、且つ、(2)赤信号開始時刻について、主道路および従道路の赤信号開始時刻のうちの古いほうの赤信号開始時刻が更新されるとともに当該赤信号開始時刻の更新に伴って同じ道路に係る次赤信号開始時刻も更新される、といったように交互に更新されてゆく。
【0038】
自動車30に搭載される走行制御装置32は、受信した信号時刻情報に含まれる変化時刻と現在時刻とを比較して自車(自動車30)の進路に係る交差点の現示を判断する機能を有している。図8は、走行制御装置32による交差点の現示の判断を説明する図である。図8では、主道路および従道路が交差する十字交差点に、主道路を走行する自動車30が差し掛かる場合を示している。この場合、自動車30に搭載される走行制御装置32は、自車の進路に係る交差点の現示を、信号時刻情報における主道路に係る信号の変化時刻と現在時刻とを比較して判断する。
【0039】
具体的には、図8の中央には、走行制御装置32が受信した最新の信号時刻情報の一例を示しており、下側には、この信号時刻情報が示す主道路に係る信号の変化を示している。なお、信号時刻情報には黄信号の開始時刻が含まれていないので、走行制御装置32は、信号時刻情報における“赤信号開始時刻”および“次赤信号開始時刻”それぞれから所定時間(例えば、3秒)だけ過去に遡った時刻を、黄信号の開始時刻と判断する。
【0040】
また、走行制御装置32は、受信した信号時刻情報における青信号開始時刻および赤信号開始時刻がともに現在時刻と比較して過去となり、かつ、青信号開始時刻が赤信号開始時刻よりも古いならば、青信号開始時刻を無効とするとともに、赤信号開始時刻から遡って判断した黄信号開始時刻も無効とする。これにより、青信号開始時刻が現在時刻と比較して過去となってはいるが、信号情報提供システム1との通信断が生じた場合に誤って青信号と判断することを確実に回避し、更なる安全側の制御(フェールセーフ)が実現される。
【0041】
走行制御装置32は、自車(自動車30)が走行している道路に係る信号の変化時刻のうち、現在時刻より過去の時刻であって現在時刻に最も近い時刻(直近過去の時刻)に開始された信号を、現在の信号と判断する。図8の例では、現在時刻が時刻Tならば、直近過去の変化時刻は“赤信号開始時刻”であるから、現在の信号は“赤信号(停止現示)”と判断する。また、現在時刻が時刻Tならば、直近過去の変化時刻は“青信号開始時刻”であるから、現在の信号は“青信号(進行現示)”と判断する。
【0042】
[通信断]
上述のように、信号情報提供システム1は、約半サイクルごとに到来する更新タイミングで発信する信号時刻情報を更新しており、自動車30に搭載される走行制御装置32は、受信した最新の信号時刻情報に基づいて自車(自動車30)の進路に係る信号を判断する。しかし、信号情報提供システム1との通信断が生じると、走行制御装置32において信号時刻情報(正確には、当該信号時刻情報を含む信号情報)が受信されないことになる。この信号情報提供システム1との通信断は、例えば、自車(自動車30)が有する無線通信機能の不具合のほか、信号情報提供システム1の不具合、信号情報提供システム1と走行制御装置32との間の通信網N2や無線基地局10の不具合等によって生じる。
【0043】
図9は、信号情報提供システム1との通信断が生じた場合の走行制御装置32による信号の判断の一例を説明する図である。図9では、図8と同様に、主道路および従道路が交差する十字交差点に主道路を走行する自動車30が差し掛かる場合を示している。図9の上側に、信号時刻情報の一例を示し、下側に、当該自動車30に搭載される走行制御装置32が判断する信号の変化を示している。
【0044】
この場合、走行制御装置32は、信号時刻情報に含まれる主道路に係る信号の変化時刻に基づいて、自車(当該自動車30)の進路に係る信号を判断する。そして、例えば、“赤信号開始時刻(10:00:35)”と“青信号開始時刻(10:01:03)”との間において、信号情報提供システム1との通信断が生じたとすると、それ以降は、走行制御装置32においては信号時刻情報が受信されないことになる。
【0045】
走行制御装置32は、通信断が生じた時点においては“赤信号”と判断している。その後、時間が経過して“青信号開始時刻(10:01:03)”が到来すると“青信号”に変化したと判断し、続いて、“黄信号開始時刻(10:01:32)”が到来すると“黄信号”に変化したと判断し、さらに、“次赤信号開始時刻(10:01:35)”が到来すると“赤信号”に変化したと判断する。信号時刻情報にはそれ以降の時刻についての信号の変化時刻が含まれないので、その後は“赤信号”であるとの判断を継続することになる。このように、通信断が生じると、走行制御装置32は、その時点での信号時刻情報に含まれる次赤信号開始時刻以降は赤信号であるとの判断を継続することになる。
【0046】
なお、信号情報提供システム1との通信が正常ならば、従道路の“青信号開始時刻(10:00:38)”の経過後となる“次赤信号開始時刻(10:01:35)”の経過後に、信号時刻情報における主道路の“青信号開始時刻”が更新されることになる(図5のステップS3:YES~S5に該当)。
【0047】
走行制御装置32は、このように信号時刻情報に基づいて判断した交差点の信号の変化時刻(開始時刻)と当該交差点への自車(自動車30)の到達予定時刻とを比較して当該交差点へ進入するか否かの判断を含む制御を行う。もしも信号情報提供システム1との通信断が生じ、次赤信号開始時刻(図9では、“10:01:35”の時点)以降となってしまった場合には、走行制御装置32は、赤信号であると判断するため、当該交差点への自車(自動車30)の進入を抑止させ、その手前に停止させる。実際には青信号であったとしても、自車(自動車30)は、当該交差点に進入せずにその手前に停止することになる。
【0048】
信号情報提供システム1は制御単位エリア20内の複数の交差点それぞれについての信号時刻情報(信号情報)を発信している。そのため、走行制御装置32は、制御単位エリア20内において、自車(自動車30)の進路に係る(進入予定の)複数の交差点それぞれについての信号の変化時刻を把握することができる。したがって、信号情報提供システム1との通信断が生じた場合、走行制御装置32は、その時点までに受信した交差点それぞれについての信号時刻情報に基づいて、走行を制御することになる。走行制御装置32は、交差点毎に、次赤信号開始時刻と自車(自動車30)の到達予定時刻とを比較して、当該交差点へ進入するか否かの判断を行うことになる。
【0049】
例えば、図10において、自動車30aの走行予定経路が、同じ制御単位エリア20内にある交差点5a,5b,5cを直進して通過する経路であり、当該自動車30aが交差点5aに差し掛かっているとする。このとき、自動車30aに搭載された走行制御装置32において、当該装置の不具合によって信号情報提供システム1との通信断が生じた場合を考える。通信断が生じる前に最後に受信した信号時刻情報(信号情報)に基づいて、走行制御装置32が自車(自動車30a)の走行を制御することになる。例えば、交差点5aと次の交差点5bとについては、それぞれ、次赤信号開始時刻の到来前に到達するので進入・通過することができるが、その次の交差点5cについては、次赤信号開始時刻後に到達するので進入できずにその手前に停車する、といった安全側の運転制御を行うことになる。
【0050】
他の自動車30は、信号情報提供システム1との通信が正常に行われていれば、随時発信される信号情報(信号時刻情報)を受信できるため、最新の信号情報に基づいて次の青信号となる時刻を判断し、交差点へ進入する制御が可能となる。
【0051】
図11は、十字交差点である1つの交差点について、信号情報提供システム1の不具合により、信号情報提供システム1と当該交差点に差し掛かる自動車30に搭載される走行制御装置32との通信断が生じた場合の一例を示す図である。図11では、横方向を共通の時刻として、当該交差点の主道路および従道路それぞれを進行する自動車30に搭載される走行制御装置32が、自車の進路に係る信号として判断する信号の変化を、上側、中央および下側の順に分割して示している。
【0052】
図11の例では、従道路の青信号開始時刻“10:00:38”が経過して信号時刻情報が更新された後の時刻“10:00:43”に通信断が生じている。この時刻以降は、全ての自動車30において信号時刻情報が受信されないことになる。すると、主道路を走行する自動車30においては、次赤信号開始時刻“10:01:35”以降は“赤信号”であるとの判断を継続し、従道路を走行する自動車30においては、次赤信号開始時刻“10:01:00”以降は“赤信号”であるとの判断を継続することになる。その後の時刻“10:01:50”において通信が復旧すると、全ての自動車30において信号時刻情報が受信されるようになり、当該受信した信号時刻情報に基づくことで、従道路を走行する自動車30においては、青信号開始時刻が経過しているので“青信号”であると判断することになる。
【0053】
[機能構成]
図12は、信号情報提供システム1の機能構成の一例を示す図である。図12によれば、信号情報提供システム1は、機能部として、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータシステムとして構成される。
【0054】
操作部102は、例えばボタンスイッチやタッチパネル、キーボード等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に応じた各種表示を行う。音出力部106は、スピーカで実現され、処理部200から入力される報知音等の音声信号に基づく音声の出力を行う。通信部108は、有線または無線の通信装置で実現され、通信網N1を介して交通信号システム3といった外部装置との通信を行うとともに、通信網N2に接続された無線基地局10を介して自動車30に搭載された走行制御装置32といった外部装置との無線通信を行う。
【0055】
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、信号情報提供システム1を構成する各部への指示やデータ転送を行い、信号情報提供システム1の全体制御を行う。また、処理部200は、本実施形態に係る機能部として、生成部202、発信制御部206、および、時計部210を有する。但し、これらの機能部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0056】
生成部202は、交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻とを含み、当該次の停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない交差道路別の信号時刻情報を生成する(図3図4参照)。
【0057】
また、生成部202は、更新タイミング検出部204を有する。1サイクル分の信号の変化時刻には、進行現示に変化する進行現示開始時刻が含まれており、更新タイミング検出部204は、1サイクル分の信号の変化時刻のうちの進行現示開始時刻であって、交差点に係る全ての交差道路別の進行現示開始時刻が、現在時刻より過去となったことを検出することで、信号時刻情報の更新タイミングの到来を検出する。
【0058】
生成部202は、更新タイミング検出部204の検出に応じて、1)信号時刻情報に含まれる進行現示開始時刻が交差点に係る一方道路よりも他方道路のほうが古い場合には、信号時刻情報のうちの、当該他方道路の進行現示開始時刻と、当該一方道路の停止現示開始時刻とを更新し、2)信号時刻情報に含まれる進行現示開始時刻が他方道路よりも一方道路のほうが古い場合には、信号時刻情報のうちの、当該一方道路の進行現示開始時刻と、当該他方道路の停止現示開始時刻とを更新する。
【0059】
また、生成部202は、停止現示開始時刻を更新する場合に、更新する停止現示開始時刻に係る交差道路の次の停止現示開始時刻を更新する。また、生成部202は、所定範囲に含まれる交差点毎に当該交差点に係る信号時刻情報を生成する。
【0060】
具体的には、生成部202は、交差点毎に、信号サイクル情報に基づいて当該交差点に係る信号時刻情報を生成する(図3図4参照)。また、更新タイミング検出部204による更新タイミングの検出に応じて信号時刻情報を更新する。つまり、現在の信号時刻情報に含まれる主道路(一方道路)の青信号開始時刻のほうが従道路(他方道路)の青信号開始時刻よりも古いならば、信号時刻情報のうちの主道路(一方道路)の青信号開始時刻と、従道路(他方道路)の赤信号開始時刻および次赤信号開始時刻とを更新する。従道路(他方道路)の青信号開始時刻が主道路(一方道路)の青信号開始時刻よりも古いならば、信号時刻情報のうちの従道路(他方道路)の青信号開始時刻と、主道路(一方道路)の赤信号開始時刻および次赤信号開始時刻を更新する(図5図7参照)。
【0061】
更新タイミング検出部204は、信号時刻情報に含まれる1サイクル分の全ての交差道路別の青信号開始時刻が現在時刻より過去となったならば、信号時刻情報の更新タイミングの到来と判断する(図5参照)。
【0062】
交差点の信号サイクル情報は、交差点管理情報320に含めて記憶されている。交差点管理情報320は、交差点毎に生成され、該当する交差点の識別情報である交差点IDに対応付けて、信号サイクル情報と、生成部202が生成した最新の信号時刻情報と、発信制御部206がこれまでに発信した発信済み信号情報とを格納している。信号サイクル情報は、現示階梯表や、交通信号システム3による信号制御指令によって制御される信号制御パラメータ等を含む。
【0063】
発信制御部206は、生成部202により生成された信号時刻情報の発信を制御する。また、発信制御部206は、所定範囲に含まれる複数の交差点全ての信号時刻情報を発信する。
【0064】
具体的には、発信制御部206は、各交差点について、生成部202により生成された信号時刻情報を含む信号情報を生成し、所定範囲である制御単位エリア20毎に、当該制御単位エリア20内の各交差点の信号情報を、当該制御単位エリア20に設置された無線基地局10を介して当該制御単位エリア20内の自動車30に向けて発信する処理を所定周期で繰り返し行う。
【0065】
制御単位エリア20は、制御単位エリア設定情報310にしたがって設定される。制御単位エリア設定情報310は、所定範囲である制御単位エリア毎に生成され、該当する制御単位エリアの識別情報であるエリアIDに対応付けて、当該エリア内の交差点の交差点IDと、無線基地局10の基地局IDとを格納している。
【0066】
時計部210は、水晶発振器を有する発振回路を有して構成され、現在時刻や、指定タイミングからの経過時間を計時する。より精確な時刻情報を通信装置を介して取得し、計時している現在時刻を定期又は随時に修正する方法を採用すると好適である。時刻情報の取得方法は、NTPサーバー、GNSS(Global Navigation Satellite System)、電波時計などがある。
【0067】
記憶部300は、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現され、処理部200が信号情報提供システム1を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部300は処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムにしたがって実行した演算結果や、操作部102や通信部108を介した入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、信号情報提供プログラム302と、制御単位エリア設定情報310と、交差点管理情報320とが記憶される。
【0068】
信号情報提供プログラム302は、処理部200が実行することで、交差点を含む所定範囲を走行する自動車に向けて交差点に係る信号制御情報を発信する機能を実現する。
【0069】
[作用効果]
本実施形態によれば、交差点に係る信号現示の情報を自動運転または運転支援の機能を有する車両に提供する仕組みにおいて、通信断に対する安全性の確保を実現することができる。つまり、信号情報提供システム1は、交差点に係る信号の変化時刻を含む信号時刻情報を更新タイミングの到来ごとに更新して発信する。その信号時刻情報は、交差点に係る交差道路別に、1サイクル分の信号の変化時刻と、当該1サイクルの次の停止現示に変化する停止現示開始時刻を含み、当該停止現示開始時刻より未来の信号の変化時刻を含まない情報である。このため、信号情報提供システム1との通信断が生じて自動車30において信号時刻情報が受信されなくなった場合、当該自動車30は、それ以前に受信した信号時刻情報に基づいて自車の進路に係る交差点の現示を判断することになる。したがって、その信号時刻情報に含まれる1サイクルの次に停止現示に変化する停止現示開始時刻が到来して停止現示と判断した後は、それ以降もその判断を継続することになる。このことから、当該自動車30は交差点に進入せず、通信断に対する安全側の制御(フェールセーフ)が実現される。
【0070】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0071】
(A)信号時刻情報
信号情報提供システム1が発信する信号時刻情報に、黄信号や右折青信号といった交差点の形態に応じた他の現示の開始時刻を含めるようにしてもよい。
【0072】
(B)交差点
上述の実施形態では、2つの交差道路が交差する交差点として主道路および従道路が交差する十字交差点を例としたが、丁字交差点についても同様である。さらには、2以上の交差道路が交差する交差点についても同様に適用可能である。この場合、信号時刻情報の更新は、1サイクル分の全ての交差道路別の青信号開始時刻が現在時刻より過去となったならば更新タイミングの到来を検出し、最も古い青信号開始時刻を更新するとともに、その次に古い青信号開始時刻に該当する交差道路の赤信号開始時刻および次赤信号開始時刻を更新するようにすればよい。
【符号の説明】
【0073】
1…信号情報提供システム
200…処理部
202…生成部
204…更新タイミング検出部
206…発信制御部
210…時計部
300…記憶部
302…信号情報提供プログラム
310…制御単位エリア設定情報
320…交差点管理情報
10…無線基地局
20…制御単位エリア
30…自動車
32…走行制御装置
3…交通信号システム
5a,5b,5c…交差点
N1,N2…通信網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12