(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139203
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241002BHJP
【FI】
A61B5/055 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050038
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智宏
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA09
4C096AB39
4C096AC04
4C096AC05
4C096BA22
4C096BA24
4C096DA18
4C096FC20
(57)【要約】
【課題】心電同期及び呼吸同期を併用した撮像においてデータ取得効率の向上を図る。
【解決手段】撮像中、呼吸動を監視して呼吸安定期(呼気)の開始を検知する。R波検出後に、その直前の呼吸動が呼吸安定期に移行したことを確認し、被検者の心時相、呼吸時相が合ったタイミングで本計測を行い、画像データを取得する。画像データを取得する心時相は固定し、その直前に取得した呼吸動変位を用いて本計測のスライス位置を調整する。これにより、体動の影響を抑制しながら、安定期に入った後の呼吸周期で2心拍分の画像データが取得可能となる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から発生する核磁気共鳴信号を収集し、前記被検体の呼吸動を検出するナビゲーション計測及び前記被検体の画像を生成するための本計測を行う撮像部と、
前記撮像部を制御する計測制御部と、
前記ナビゲーション計測の結果を用いて前記被検体の呼吸動を監視し、前記被検体の呼吸動の大きさが、予め設定したゲートウィンドウの内側であるかゲートウィンドウの外側であるかによってアクセプト信号及びレジェクト信号を前記計測制御部に発信する呼吸動監視部と、
前記被検体の心周期を監視し、心周期のR波発生タイミングにゲート信号を発生する心周期監視部と、を備え、
前記計測制御部は、前記ナビゲーション計測を前記ゲート信号の発生の前後に連続して実行し、前記心周期監視部からゲート信号を受け取ると、ゲート信号受領前のナビゲーション計測中に生じた前記呼吸動監視部からの信号の遷移のうち直近の遷移がリジェクト信号からアクセプト信号への遷移であるとき、予め設定したディレイ時間の経過後に本計測を行うよう前記撮像部を制御することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記呼吸動監視部は、本計測後に行われるナビゲーション計測のうち、本計測の直近のナビゲーション計測の結果を呼吸動の監視に用いないことを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記制御部は、前記ディレイ時間に行われたナビゲーション計測によって得た呼吸動位置を用いて、当該ナビゲーション計測に続く本計測のスライス位置を調整することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記呼吸動のゲートウィンドウを設定する事前情報設定部をさらに備え、
前記事前情報設定部は、前記呼吸動の安定期である位置に前記ゲートウィンドウを設定することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記事前情報設定部は、前記呼吸動の安定期の最大値を含むようにゲートウィンドウを設定することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項6】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記事前情報設定部は、前記呼吸動の安定期の最大値より低い位置が上限値となるようにゲートウィンドウを設定することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項7】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記撮像部が行う計測は、前記被検体の撮像部位を決定するためのスキャノ撮像を含み、前記事前情報設定部は、前記スキャノ撮像で得た画像を用いて前記ゲートウィンドウの位置を決定することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項8】
請求項4に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
ゲートウィンドウの位置のユーザによる調整を受け付けるUI部をさらに備え、
前記呼吸動監視部は、事前情報設定部が設定したゲートウィンドウの位置を前記UI部が受け付けた調整を反映して変更することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気共鳴撮像装置であって、
前記本計測のディレイ時間を設定する事前情報設定部をさらに備え、
前記事前情報設定部は、前記被検体の心臓を含む領域を対象とするシネ撮像で得たシネ画像を用いて、前記ディレイ時間を決定することを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項10】
被検体の心電波形及び呼吸動波形がそれぞれ決められた範囲にあるときに、本計測として被検体画像生成用の信号収集を行う磁気共鳴撮像装置の制御方法であって、
本計測の前後に呼吸動波形を検出するナビゲーション計測を連続して行うステップ、
前記ナビゲーション計測の結果を監視し、呼吸動の大きさが、設定したゲートウィンドウの内側であるときにアクセプト信号を発生し、ゲートウィンドウの外側であるときにレジェクト信号を発生するステップ、及び
前記心電波形のR波を検出後、R波検出前のナビゲーション計測中に発生した信号の遷移のうち直近の遷移がリジェクト信号からアクセプト信号への遷移であるとき、予め設定したディレイ時間後に本計測を開始するステップ、
を含む磁気共鳴撮像装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気共鳴撮像装置の制御方法であって、
前記本計測の直前に行われたナビゲーション計測の結果を用いて、前記本計測のスライス位置を調整するステップをさらに含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置の制御方法。
【請求項12】
請求項10に記載の磁気共鳴撮像装置の制御方法であって、
スキャノ撮像を行うステップをさらに含み、
前記スキャノ撮像の結果から、前記被検体の呼吸動の情報を取得し、前記ゲートウィンドウの位置を設定するステップをさらに含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置の制御方法。
【請求項13】
請求項10に記載の磁気共鳴撮像装置の制御方法であって、
心臓のシネ画像を取得するステップと、シネ画像から心周期の情報を取得しディレイ時間を決定するステップをさらに含むことを特徴とする磁気共鳴撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴撮像装置(以下、MRI装置という)に係り、特に心電同期撮像を行う際のMRI装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置を用いて画像診断の対象が心臓やその周辺の血管などの組織の場合は、画像が心臓の動き及び呼吸動の影響を受け、体動アーチファクトが発生する。体動アーチファクト抑制のために、拍動と呼吸動が安定したタイミングで画像データを取得する必要があり、通常、心周期の比較的動きの少ない時相(拡張期)で且つ呼吸が呼気期間(安定期)で動きのほとんど無いタイミングで被検者からの核磁気共鳴信号を取得し、心臓の動きの影響を極力排除した画像を得るようにしている。
【0003】
このため、従来、心電計や心拍計からの信号を受け取り、R波などの発生時点をトリガーとして、所定のディレイ時間を経た拡張期に撮像用パルスシーケンスを実行する。この際、呼吸動モニタ用のナビゲーションエコー(以下、ナビエコーという)と本撮像をセットで実行し、呼吸変位が予め設定した数mmの閾値内の場合のみ画像再構成用信号(画像データ)を収集している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の心電同期と呼吸動同期とを併用する二重同期では、被検者の呼吸周期と心拍周期に依存して、データ収集するため、データ取得効率が低く撮像時間が長くかかる場合がある。例えば、呼気の安定期に2心拍分のデータを取得し、2心拍で1回データを取得する撮像があるが、従来の制御では、R波検出後の呼吸変位が設定した閾値から外れた場合、本撮像を実行しないので、2心拍でデータ取得するような撮像では2心拍分の延長が累積することになる。また呼吸動の安定期が短い被検体では、2心拍でデータ取得する撮像自体が困難である。
【0006】
本発明は、二重同期撮像におけるデータ取得効率の向上を図ることを課題とする。また被検体の呼吸動が比較的安定期が短い場合にも、体動の影響を抑制して、連続した2心拍でのデータ取得を可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、撮像中、呼吸動を監視して呼吸安定期(呼気)の開始を検知する。心電同期信号を受領後、その直前の呼吸動が呼吸安定期に遷移しているこるときに、被検者の心時相、呼吸時相が合ったタイミングで画像データを取得する。これにより、各呼吸周期で2心拍分の画像データが取得可能となる。
【0008】
即ち本発明のMRI装置は、被検体から発生する核磁気共鳴信号を収集し、被検体の呼吸動を検出するナビゲーション計測及び被検体の画像を生成するための本計測を行う撮像部と、撮像部を制御する計測制御部と、ナビゲーション計測の結果を用いて被検体の呼吸動を監視し、被検体の呼吸動の大きさが、予め設定したゲートウィンドウ内であるかゲートウィンドウ外であるかによってアクセプト信号及びレジェクト信号を制御部に発信する呼吸動監視部と、被検体の心周期を監視し、心周期のR波発生タイミングにゲート信号を発生する心周期監視部と、を備える。
【0009】
計測制御部は、ナビゲーション計測をゲート信号の発生の前後に連続して実行し、心周期監視部からゲート信号を受け取ると、ゲート信号受領前のナビゲーション計測中に生じた呼吸動監視部からの信号の直近の遷移がリジェクト信号からアクセプト信号への遷移であるとき、予め設定したディレイ時間後に本計測を行うよう撮像部を制御する。
ゲート信号の直近で呼吸動監視部からの信号が2回以上連続してアクセプト信号の場合にも、ディレイ時間後に本計測を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、本計測を行うためのゲート信号の直前の呼吸動監視結果を利用して本計測の開始を制御することで、呼吸動の小さい期間を担保して固定の心時相でのデータ取得が可能となる。これにより体動アーチファクトが抑制できる。また心時相と呼吸変位が合ったタイミングに効率よくデータ取得できるため、撮像時間の延長を最小限に抑えることができる。さらに、ディレイ期間のナビエコーから画像データ取得時における呼吸動による変位が検出できるので、検出した変位に相当する撮像スライス位置を補正することができ、位置ずれを抑制した画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のMRI装置の構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のMRI装置とその制御方法の実施形態を説明する。
最初に、
図1及び
図2を参照して、MRI装置の全体構成を説明する。
MRI装置1は、
図1に示すように、被検体から発生する核磁気共鳴信号を収集する撮像部10、撮像部10の制御及び撮像部が収集した核磁気共鳴信号を用いた画像再構成等の演算を行う計算機20、表示装置や入力装置を備えたUI部30、及び記憶装置40を備えている。
【0013】
本発明はMRI装置を用いた心電同期撮像に適用される技術であり、同期撮像を制御するためのMRI装置の制御部の構成と機能に特徴があり、制御部として機能する計算機20には、計測を制御する計測制御部21の機能として、ナビエコーを用いて呼吸動を監視し、計測制御に必要な信号を発する呼吸動監視部213、被検体に装着した心電計50等の信号を入力し、心周期を監視する心周期監視部215、及び同期撮像に必要なパラメータを設定するための事前情報設定部211が備えられる。
【0014】
計算機20は計測制御部21の他、一般的なMRI装置と同様に、被検体から収集した核磁気共鳴信号を用いて画像再構成やその他の画像処理を行う画像処理部22、UI部30の表示を制御する表示制御部23などを備える。
【0015】
上述した計算機20の機能は、汎用の計算機やワークステーションにおいて、各機能を実現可能なプログラムを読み込むことで実現されるが、機能の一部をプログラマブルIC等のハードウェアで実現することも可能である。さらに機能の一部は、MRI装置とは別の処理装置で実現する場合もある。
【0016】
撮像部10の構成及び機能は、一般的なMRI装置と同様であり、簡単に説明すると、
図2に示すように、静磁場を発生するマグネット101、互いに直交する3軸方向の傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル102、高周波磁場を照射するRF送信コイル103、被検体105から発生する核磁気共鳴信号を検出するRF受信コイル104、RF送信コイル103に所定の高周波電流を送る送信器113、RF受信コイル104が接続された受信器114、傾斜磁場コイル102を駆動する傾斜磁場電源112、及びシーケンサ115を備えている。一つのRFコイルがRF送信コイル103とRF受信コイル104を兼ねる場合もあり、その場合には、送信器113と受信器114との間に切替器(不図示)が追加される。シーケンサ115は制御部の制御のもとでパルスシーケンスに従って、送信器113、受信器114及び傾斜磁場電源112を駆動する。
【0017】
被検体105は、通常、ベッド106に寝かせられた状態で、マグネット101が生成している静磁場空間(撮像空間)に搬入され、検査部位が静磁場空間の中心となるように位置付けられた後、撮像が行われる。
【0018】
次に、上記構成を踏まえ、MRI装置を用いた心電同期及び呼吸動同期の二重同期を行う撮像を説明する。
図3に処理の概要を示す。
【0019】
まず事前計測として、被検体を撮像空間に位置づけるためのスカウト撮像や撮像空間中心で撮像部位の3断面を撮像するスキャノグラム(以下、スキャノと略す)、心臓シネ撮像を行う(S1)。これら事前計測から、本撮像の制御に必要な同期パラメータを設定する(S2)。同期パラメータは、呼吸動の安定期を監視するためのゲートウィンドウ、心周期の特定時相(R波)からの本計測までのディレイ時間、ナビエコー取得位置を含む。同期用パタメータは、被検体によって異なるので、被検体を対象とする事前計測で得られた画像やデータから決定する。
【0020】
その後、ナビゲーション計測を開始し、呼吸動の監視を開始する(S3)。それとともに、或いはナビゲーション計測に前後して、心電計50からの心電波形を取込み、心周期の監視を行う(S4)。
【0021】
呼吸動が所定の安定期にあり且つ心時相が特定の時相となるタイミングで本計測を実行し、画像データを収集する(S5)。このため、特定時相(R波)検出前から遡ったタイミングで取得した心周期の遷移(ゲートウィンドウ外からゲートウィンドウ内への遷移)を確認し、その結果によって本計測の実行を判断する。
【0022】
本計測は、例えば心臓撮像であり、公知の2D或いは3Dのパルスシーケンスを実行する。この際、画像データ取得時の心時相を固定し、画像データ取得までに取得したナビエコーから得られた呼吸動の変位をもとに、必要に応じて本計測のスライス位置を補正する。画像再構成に必要な画像データを収集したら画像再構成と表示などを行う(S6)。
【0023】
以上の処理により、心時相と呼吸変位が合ったタイミングを最大限利用して撮像を実行することが可能となり、データ取得効率を向上し、撮像時間の延長を抑制できる。また心時相と呼吸変位が合ったタイミングを逃さず撮像できるので、各呼吸周期で2回の本計測を行う撮像も可能になる。
【0024】
以下、撮像対象が心臓の場合を例に各処理とその制御の具体的な実施形態を説明する。
図3の処理は、以下の実施形態に共通するので、適宜参照して説明する。
【0025】
<実施形態1>
本実施形態は、比較的呼吸動が安定している被検体が対象の例であり、比較的継続時間が長い呼吸動の息を吐いた期間(呼気期間)全体を含むように呼吸動監視のウィンドウを設定する。
【0026】
まず、
図4を参照して、事前情報設定部211に係る事前計測(S1)と同期パラメータ設定(S2)の詳細を説明する。
【0027】
被検体の撮像部位を位置決めした後、スキャノを行い、被検体の撮像対象部位を撮像する(S101~S104)。スキャノでは、例えば、最初に心臓を磁場中心として3断面(Ax,COR,SAG)を撮像した後(S101)、3断面上で決定した左心室中心付近のAx断面を撮像し(S102)、S102のAx断面上で決定した左心室の長軸断面を撮像し(S103)、さらにS102のAx断面及びS103の長軸断面で決定した左心室の短軸断面を撮像する(S104)。
【0028】
続いて、S102またはS104で決定した断面についてシネ画像を撮像し(S105)、UI部30の表示装置に表示する。シネ画像は比較的低分解能の連続撮像で、時間軸に沿った心臓の動きを捉えることができる。ユーザは、表示装置に表示されたシネ画像を見て、拍動の小さい期間(心拡張期)の開始タイミングを確認することができ、この開始タイミングをその後に行われる撮像のディレイ時間(Delay Time)に設定する(S106)。
【0029】
次にユーザは、心臓から所定の位置にある部位を、ナビエコーを取得する位置として設定する(S107)。ナビエコーの位置は、限定されるものではないが、通常横隔膜に設定する。横隔膜の位置は、例えばSAG画像をもとにUI部30を介して設定することができる。
【0030】
次いでナビゲーション計測のためのゲートウィンドウを決定する(S108)。例えば、ゲートウィンドウ位置は、S101で得たSAG画像上で横隔膜上端に合わせる。これにより呼吸動が安定する呼気期間内でデータ収集が可能となる。ゲートウィンドウ幅は、スキャンパラメータとして事前に所定の値、例えば3mm程度、を設定しておく。
【0031】
以上の処理で、事前計測と同期パラメータの設定が完了し、撮像を開始する(S109)。撮像は、
図3に示したように、呼吸動監視(ナビゲーション計測)S3、心周期監視S4、本計測S5を含む。以下、
図5及び
図6を参照して、制御の流れを説明する。
図5は制御のフロー、
図6は時間軸に沿った心周期、呼吸動周期及び計測の進行を示している。
図6では、一例として、2心周期で2つの本計測を行い1回のデータを取得する場合の心電波形、呼吸動及び計測の時間経過を示している。
図6において、呼吸動監視部213が発生するアクセプト信号を「●」で示し、リジェクト信号を「○」で示す。
【0032】
撮像が開始されると、計測制御部21はナビゲーション計測を開始し、呼吸動による横隔膜の変位を検出する(S201)。具体的には、撮像部10が横隔膜を含む概ね体軸方向の細長い領域から核磁気共鳴信号(データ)を取得し、呼吸動監視部213が細長い領域のデータを体軸方向と平行する方向に一次元フーリエ変換した画像から横隔膜位置を検出するとともにUI部30(表示装置)に表示する。ユーザは、撮像開始後に被検者の呼吸状態を見て、必要に応じて、S106で設定したゲートウィンドウの位置を調整する。通常、呼吸で上下動する横隔膜上端にウィンドウ上端を合せる。
【0033】
呼吸動監視と前後して、心周期監視部215は心電計50からの信号を取込み、R波を検出したら、ゲート信号を計測制御部21に送る(S203)。計測制御部21は、ゲート信号を受け取ると、それ以前に受け取った呼吸動監視部213からの信号から、直近の信号の遷移がリジェクト信号からアクセプト信号への遷移(リジェクト/アクセプト遷移)であるか、アクゼプト信号からリジェクト信号への遷移(アクセプト/リジェクト遷移)であるかを確認する(S204)。その結果、
図6に示すように、(A)で示すタイミングで、リジェクト/アクセプト遷移であることが確認されると、R波から所定のディレイ時間後に本計測(Main1)を開始するように撮像部10を制御する(S205)。R波から本計測開始までのディレイ時間は、同期パラメータ設定ステップ(
図3:S2、
図4:S106)で設定した時間である。なお、
図6の例で示した例とは異なり、
図6の(A)で示すタイミングで、リジェクト/アクセプト遷移ではなく、2回以上連続アクセプトが確認された場合でも同様の処理を実施する。
【0034】
また
図6に示すように、ディレイ時間もナビゲーション計測(B1)を続行し、呼吸動位置を監視する。そしてディレイ時間が経過する直前に取得したナビエコーCで検出された呼吸動の位置を用いて、続く本計測のスライス位置の補正が必要か否かを判断する。例えば、ナビエコーCで検出された呼吸動の位置と、ゲートウィンドウ内の所定の位置(基準位置)との差ΔD或いはΔD×係数に相当するずれ量分だけスライス位置を変化させて本計測を行う。係数は、例えば、横隔膜の変位幅に対する心臓の変位幅の割合として経験的に求めた値を用いることができ、通常60%程度に設定される。呼吸動の位置と基準位置との差ΔDがゼロの場合には、スライス位置の調整を行わずに本計測を開始する。
スライス位置の調整は、励起RFの周波数を調整することで行われる。このようなスライス位置補正を行うことで、位置ずれを防止できる。
【0035】
本計測は、特に限定されるものではないが、心臓の撮像の場合、心臓内の血液信号を抑制し、心壁形状の診断画像を取得する“Black Blood”や、WHCA( Whole Heart Coronary Angiography)と呼ばれる冠動脈検査画像を実行する。これらの心臓撮像では、プリパルスを印加後に本計測のパルスシーケンスを実行する。
図6では、本計測(Main1、Main2)の前にこのようなプリパルスを示している。具体的には、“Black Blood”では、プリパルスとして反転パルス(IR)をスライス非選択-スライス選択の順で2回印加した後、2D-FSE(Fast Spin Echo)法のシーケンスにより、
図4のS104で決定した短軸断面で左心室全体を撮像する。また“WHCA”では、プリパルスとして脂肪抑制パルス(FatSat)を印加し、例えば3D-BASG(Balanced SARGE: steady-state acquisition with rewinded gradient echo)シーケンスを用いて、Ax断面で心臓全体を撮像する。
【0036】
本計測終了後、さらにナビゲーション計測を行い、呼吸動を監視する。なお
図6において本計測終了後に発生させるナビエコーは、信号が安定するまで呼吸動変位の検出には使わないダミーであり、呼吸動監視部213は、信号安定後のナビエコー(B2)を用いて呼吸動監視を継続する。ダミーを設けることで呼吸動監視の精度を上げることができる。
【0037】
図6に示す例では、2回目のR波検出時点で、呼吸動は安定期にありアクセプト信号が出されている状態であるので、このR波検出の直近の呼吸動の信号の遷移は、1回目のR波検出時と同様にリジェクト/アクセプト遷移である。従って2回目のR波検出後にも所定のディレイ後本計測(Main2)を行う。この本計測についても、その直前のナビエコーCで得られた呼吸動変位の情報を反映してスライス位置の調整を行うことは1回目の本計測(Main1)と同様である。
【0038】
一方、R波検出前の呼吸動の遷移が、リジェクト/アクセプト遷移ではない場合(S204)は、本計測を行うことなく、呼吸動監視状態(S201)に戻り、次のリジェクト/アクセプト遷移まで本計測は待機状態となる。
図6に示す例では、3回目のR波検出時、その直近で生じている信号の遷移はアクセプト/リジェクト遷移であってリジェクト信号が出されている状態であるので、本計測は行わずに、ナビゲーション計測のみが継続される(S204からS201へ)。
【0039】
以上の処理を繰り返し、本計測で収集すべき画像データを収集した後、画像再構成に進む(S206,S207)。なお上述したように撮像方法にはいくつかの方法があり、一つの撮像内で1以上の撮像方法による計測を行ってもよく、本実施形態の「本計測」は、そのような場合を含む。
【0040】
このように本実施形態では、呼吸動をモニタするナビを連続的に実行し、呼吸安定期の開始を検知する。心電波を検知したら、呼吸動が安定期に入っていることを担保した状態で、所望の心時相になるまでナビを継続して実行し、本計測を行う。これにより、心時相と呼吸時相(変位)が合ったタイミングを逃さずデータ取得できる。また呼吸安定期が次の心周期まで継続している場合、連続してデータ取得が可能であり撮像効率が向上する。
【0041】
さらに本実施形態によれば、データ取得タイミングが所望の心時相となる直前のナビで検知した呼吸変位を用いて、変位に相当する撮像スライス位置の補正を行って画像データを取得するので、位置ずれのない画像を得ることができる。
【0042】
<実施形態2>
実施形態1は、比較的呼吸動が安定している被検体が対象であったが、本実施形態は呼吸安定期が比較的短い被検体を対象とする。
【0043】
呼吸安定期が短い場合、
図6に示すナビゲーション計測B2、B3の間、即ち一つの本計測の終了後と次の本計測の開始前の間で、リジェクト信号を受け取る可能性があり、その場合、2回目の本計測を行うことができないため撮像効率が低下する。本実施形態では、大幅な効率低下を回避するために、ゲートウィンドウを呼吸波形の頂点(呼気)からやや下側に設定する。
【0044】
このようにゲートウィンドウの位置を下にずらすことで、
図7に示すように、呼吸波形の頂点前後でリジェクト信号からアクセプト信号への変移がそれぞれ1回ずつ生じるようにすることができ、リジェクト/アクセプト遷移後に本計測を行うことで、2心周期で2回の本計測(1回の画像データ取得)を行う撮像が可能になる。
【0045】
本実施形態でも、制御のフローは
図5に示すフローと同様であり、実施形態1と同様に、撮像開始とともに呼吸動監視を行い、アクセプト信号が発せられた後、R波検知をゲート信号として本計測を行う。
図7を参照して、本実施形態の制御を説明する。
【0046】
ナビゲーション計測を開始し、呼吸動がウィンドウ内に入ると呼吸動監視部213からの信号はリジェクト信号からアクセプト信号に変わる。この状態でR波が検出されると、所定のディレイ後に本計測(Main1)を開始する設定がなされる。本計測開始までナビゲーション計測を行う。ゲートウィンドウは、呼吸動の頂点よりも低い位置に設定されているので、このナビゲーション計測中B1から本計測を行っている間に、ゲートウィンドウの外側に変位する(アクセプト/リジェクト遷移する)が安定期内にある。ただしここでも、本計測直前のナビエコーCで検出した呼吸動の変位に相当するスライス位置補正を行い、本計測を実行する。
【0047】
本実施形態では、安定期が短く、ゲートウィンドウが頂点より下側に設定されているので、次のR波までに、呼吸動監視部からの信号は再度リジェクト信号からアクセプト信号に変わる。この状態で2回目のR波が検出されると、所定のディレイ後に本計測(Main2)を開始する設定がなされる。ここでもディレイ期間及びナビゲーション計測の間に、呼吸動はリジェクト信号が出される状態に遷移するが、本計測直前のナビエコーCで検出した呼吸動の変位に相当するスライス位置補正を行い、本計測を実行することで、体動の影響を抑制して2心拍で1回の画像データを取得する撮像が可能となる。その後、リジェクト信号からアクセプト信号に変わるまで連続してナビゲーション計測を実行し、その間、本計測は行わない。なお、
図7の例の(A1)(A2)で示す期間で、リジェクト/アクセプト遷移ではなく、2回以上連続アクセプトが確認された場合でも同様の処理を実施する。
【0048】
本実施形態によれば、呼吸安定期が短い場合でも1呼吸周期内で2回データを取得することができ、撮像効率の低下を防ぐことができる。また本計測直前のナビエコーで得た変位情報を用いて本計測のスライス位置を調整するので、安定期が短くても位置ずれのない画像を取得できる。
【0049】
以上、心臓撮像を例に、本発明のMRI装置とその制御方法の実施形態を説明したが、本発明は心臓撮像のみならず、心臓近傍の動脈や組織など拍動及び呼吸動の影響を受けやすい組織の撮像であれば適用可能であり同様の効果を得ることができる。また心周期を監視するために心電計からのR波を用いた場合を説明したが、心周期を監視できるのであれば、心電計に限らず脈波計など利用できるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1:MRI装置、10:撮像部、20:計算機、21:計測制御部、211:事前情報取得部、213:呼吸動監視部、215:心周期監視部、30:UI部、40:記憶装置、50:心電計