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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139333
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】圧電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/50 20230101AFI20241002BHJP
   H10N 30/076 20230101ALI20241002BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20241002BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20241002BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20241002BHJP
   H10N 30/88 20230101ALI20241002BHJP
【FI】
H10N30/50
H10N30/076
H10N30/30
H10N30/853
H10N30/87
H10N30/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050223
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
(57)【要約】
【課題】高出力の圧電デバイスを提供する。
【解決手段】圧電デバイス100は、支持基板1と、支持基板1に接合して支持される振動領域7を備える。振動領域7は第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bと、それぞれを挟んで配置される第1~第4電極4a~4dとで構成され、第1圧電膜3aと第1電極4aおよび第2電極4bとで構成される第1積層領域A1と、第2圧電膜3bと第3電極4cおよび第4電極4dとで構成される第2積層領域A2と、第1積層領域A1と第2積層領域A2とを連結する中間領域A3とを含み、中間領域A3は、空隙10を有する領域で構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板に接合して支持される振動領域を構成する圧電膜と、
前記圧電膜を挟んで配置される電極と
を備え、
前記圧電膜は、
少なくとも第1圧電膜および第2圧電膜を含み、
前記振動領域は、
前記第1圧電膜と前記第1圧電膜を挟んで配置される第1電極および第2電極とで構成される第1積層領域と、前記第2圧電膜と前記第2圧電膜を挟んで配置される第3電極および第4電極とで構成される第2積層領域と、前記第1積層領域と前記第2積層領域との間に配置され、前記第1積層領域と前記第2積層領域とを連結する中間領域とを含み、
前記中間領域は、空隙を有する領域で構成される
圧電デバイス。
【請求項2】
前記中間領域は、一端が前記第1積層領域に接合され別の一端が前記第2積層領域に接合される連結部を複数含み、相互に離間する前記連結部の間に前記空隙を有する、
請求項1記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記中間領域は、前記第1積層領域と前記第2積層領域との間に積層される多孔質膜を含む、
請求項1記載の圧電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスに関し、特に高出力の圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体材料の薄膜(圧電膜)を備える圧電デバイスは、振動領域を構成する圧電膜が変位することで生じる電圧変化を検出することができ、または圧電膜に電圧を印加して変位させることができ、圧電センサや圧電アクチュエータ等として利用することができる。
【0003】
従来の圧電デバイスは、一例として振動領域の一端が支持基板に接合して支持されるカンチレバー構造が採用されている。この種の圧電デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5936154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6は従来の圧電デバイスを説明するための断面模式図を示している。図6に示すように従来の圧電デバイス400は、支持基板1上に絶縁膜2を介して第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bが積層され、第1圧電膜3aを挟んで第1電極4aおよび第2電極4bが配置され、第2圧電膜3bを挟んで第2電極4bおよび第3電極4cが配置される。支持基板1にはキャビティ5が形成され、キャビティ5上の第1圧電膜3a、第2圧電膜3bおよび第1~第3電極4a~4cがスリット6により区画される(図7)ことで、支持基板1に一端が接合して支持される振動領域7が形成される。8aおよび8bは引出電極で、引出電極8aは第1電極4aおよび第3電極4cに接続され、引出電極8bは第2電極4bに接続される。
【0006】
図7は、図6の圧電デバイス400のスリット6の配置の一例を説明する平面模式図である。図7に示すようにスリット6を配置すると、カンチレバー構造の2枚の振動領域7を備える圧電デバイス400が構成される。なお図7のC-C線における断面図が図6に相当し、図7には図6に示す第3電極4c、引出電極8aおよび8b等は図示されておらず、キャビティ5を覆う第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3b等を貫通するスリット6の配置のみが示されている。
【0007】
図6および7に示す圧電デバイス400において、振動領域7の共振周波数は振動領域7の剛性と長さLにより調整することができる。具体的には、振動領域7の剛性を大きくすると共振周波数が高くなり、また振動領域7の長さLを短くすると共振周波数が高くなる。なお振動領域7の長さLとは、図7に示すように支持基板1との接合端から開放端までの長さである。
【0008】
ここで良好な膜質の圧電膜を形成するため、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される圧電膜の厚さは、通常0.5~1.0μmに設定され、圧電膜の厚さを大きく変更することは難しい。圧電膜を構成する圧電材料の種類と厚さが決まれば振動領域7の剛性が決まることから、振動領域7の共振周波数を調整するために振動領域7の剛性を大きく変更することは難しい。そこで、振動領域7の共振周波数は、振動領域7の長さを変更することにより調整するのが一般的である。
【0009】
例えば図6および7に示す圧電デバイス400がマイクロフォンとして使用される場合、マイクロフォンの感度を上げるために振動領域7の共振周波数は20kHz程度に調整される。この場合、振動領域7の長さは、500μm程度となる。このように共振周波数を調整するために振動領域7の長さを短くすると振動領域7を構成する圧電膜の変位は小さくなり、出力信号が低下するという問題があった。
【0010】
また、圧電デバイス400が障害物検知や超音波診断のための超音波送受信機として使用される場合、振動領域7の長さはさらに短く調整され、さらなる出力信号の低下を招いてしまう。このような出力信号の低下は、図6および7に示すカンチレバー構造の圧電デバイス400に限らず、支持基板に振動領域の対向する二辺が接合されて支持されるブリッジ構造の圧電デバイスや、スリットを形成せず振動領域の周縁部が支持基板に接合されて支持されるメンブレン構造の圧電デバイスにおいても生じる問題であった。
【0011】
そこで本発明は、高出力の圧電デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の圧電デバイスは、支持基板と、前記支持基板に接合して支持される振動領域を構成する圧電膜と、前記圧電膜を挟んで配置される電極とを備え、前記圧電膜は、少なくとも第1圧電膜および第2圧電膜を含み、前記振動領域は、前記第1圧電膜と前記第1圧電膜を挟んで配置される第1電極および第2電極とで構成される第1積層領域と、前記第2圧電膜と前記第2圧電膜を挟んで配置される第3電極および第4電極とで構成される第2積層領域と、前記第1積層領域と前記第2積層領域との間に配置され、前記第1積層領域と前記第2積層領域とを連結する中間領域とを含み、前記中間領域は、空隙を有する領域で構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の圧電デバイスによれば、振動領域が第1積層領域、中間領域および第2積層領域を含む構成とすることで振動領域を厚く構成することができ、かつ中間領域が空隙を有する構成とすることで振動領域の剛性の上昇が抑えられることから、第1積層領域を構成する第1圧電膜および第2積層領域を構成する第2圧電膜の変位は大きくなり、高出力の圧電デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態である圧電デバイス(実施形態1)の断面模式図である。
図2】実施形態1の圧電デバイスにおけるスリットと連結柱部の配置の一例を説明する平面図である。
図3】本発明の別の実施形態である圧電デバイス(実施形態2)の断面模式図である。
図4】実施形態2の圧電デバイスにおけるスリットと連結壁部の配置の一例を説明する平面図である。
図5】本発明のさらに別の実施形態である圧電デバイス(実施形態3)の断面模式図である。
図6】従来の圧電デバイスの断面模式図である。
図7】従来の圧電デバイスにおけるスリットの配置の一例を説明する平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の圧電デバイスについて、図面を参照して説明するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また図面において同一符号は同等あるいは同一のものを示し、各構成要素間の大きさや位置関係等は便宜上のものであり、実態を厳密に反映したものではない。
【0016】
本発明における圧電デバイスは、振動領域が第1積層領域、中間領域および第2積層領域を含み、中間領域が空隙を有する領域で構成されている。このように構成される圧電デバイスの振動領域は厚く構成することができる。さらにこの振動領域の剛性は、同じ厚さの振動領域を単一の圧電膜で構成した場合と比較して小さく、第1積層領域の第1圧電膜と第2積層領域の第2圧電膜とが中間領域を挟まずに積層されている構造の剛性と比較して大きく変化しない。その結果、第1圧電膜および第2圧電膜の変位は大きく、高出力の圧電デバイスを構成することが可能となる。
【0017】
(実施形態1)
図1は、本発明の圧電デバイスの実施形態1を説明するための断面模式図である。図1に示すように、例えばシリコン基板等により構成される支持基板1上に、例えば熱酸化膜等により構成される絶縁膜2を介して、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bが積層され、第1圧電膜3aを挟んで第1電極4aおよび第2電極4bが配置される。第1電極4aおよび第2電極4bは、例えばモリブデン等により構成され、第1圧電膜3aは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により構成される。
【0018】
第2電極4b上に、例えばポリシリコンで構成される連結部9が積層される。連結部9の一部は、例えば円柱構造の連結柱部9aを構成する。この連結柱部9aは、振動領域7を構成する領域の第2電極4b上に複数配置される。複数の連結柱部9aは相互に離間して配置されることで、連結柱部9a間に空隙10を有する構成とされる。
【0019】
連結部9および連結柱部9a上に、第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cが積層され、第2圧電膜3bを挟んで第3電極4cおよび第4電極4dが配置される。第3電極4cおよび第4電極4dは、例えばモリブデン等により構成され、第2圧電膜3bは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT等により構成される。第1圧電膜3aと第2圧電膜3bは、応力制御の観点から同じ圧電材料で構成するのが好ましい。
【0020】
支持基板1にはキャビティ5が形成され、キャビティ5上の第1圧電膜3a、第2圧電膜3bおよび第1~第4電極4a~4dがスリット6により区画されることで、支持基板1に一端が接合して支持される振動領域7が形成される。8aおよび8bは引出電極であり、引出電極8aは第1電極4aおよび第3電極4cに接続され、引出電極8bは第2電極4bおよび第4電極4dに接続される。
【0021】
図2は、図1の圧電デバイス100のスリット6と連結柱部9aの配置の一例を説明する平面模式図である。図2に示すようにスリット6を配置すると、カンチレバー構造の2枚の振動領域7を備える圧電デバイス100を構成することができる。なお図2のA-A線における断面図が図1に相当し、図2には図1に示す第3電極4c、引出電極8aおよび8b等が図示されておらず、キャビティ5を覆う第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3b等を貫通するスリット6および連結柱部9aの配置のみを模式的に示している。
【0022】
図1および2に示すように本実施形態の圧電デバイス100の振動領域7は、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bで構成される第1積層領域A1と、第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cで構成される第2積層領域A2との間に、これらを連結する連結柱部9aと空隙10で構成される中間領域A3が配置される。連結柱部9aは一端が第2電極4bに接合され、別の一端が第4電極4dに接合されることで、第1積層領域A1と第2積層領域A2が連結される。
【0023】
連結柱部9aは、振動領域7が所望の振動特性となるように配置される。一例として図1および2に示すように、振動領域7を支持する支持基板1との接合部から振動領域7の端部まで、少なくとも長方形の振動領域7の短辺と平行方向に列状に連結柱部9aを配置することで、第1積層領域A1と第2積層領域A2が一体で振動するように構成することができる。このように連結柱部9aを配置すると、空隙10も振動領域7の短辺と平行方向に配置され、中間領域A3を含む振動領域7の剛性が、第1圧電膜3aと第2圧電膜3bとが中間領域A3を挟まず積層されている構造の積層膜の剛性と比較して大きくならない構成とすることができる。なお所望の振動特性とするため、連結柱部9aの配置のほか、形状や配置される数、連結柱部9aを構成する材料等を適宜変更するのが好ましい。
【0024】
次に、図1および2に示す本実施形態の圧電デバイス100において、高出力化を図ることができる構成について、図6および7に示す従来の圧電デバイス400と比較しながら詳細に説明する。
【0025】
振動領域7の厚さは、厚いほど振動領域7表面の変位が大きくなり高出力化を図ることが可能となる。圧電デバイス100は、中間領域A3が配置されることで振動領域7の厚さが圧電デバイス400の振動領域7の厚さより厚く構成され、振動領域7の表面に第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bが配置される。したがって、第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bの変位が大きく、高出力化を図ることが可能となる。
【0026】
振動領域7の長さ(図7のLに相当する長さ)は、長いほど振動領域7の変位が大きくなり高出力化を図ることが可能となる。圧電デバイス100は、上述のように振動領域7が厚く構成されるため、圧電デバイス100の振動領域7の共振周波数は、同じ長さとした圧電デバイス400の振動領域7の共振周波数より高くなる。つまり同一周波数おいて共振する振動領域7を構成する場合、圧電デバイス100の振動領域7の長さが圧電デバイス400の振動領域の長さより長く構成される。したがって、高出力化を図ることが可能となる。
【0027】
振動領域7の剛性は、高くなると振動領域7の変位が妨げられ、高出力化の妨げとなる。圧電デバイス100は、複数の連結柱部9aを相互に離間して配置し、中間領域A3が空隙10を有する構成とされることで振動領域7の剛性の上昇が抑制されている。圧電デバイス100の振動領域7の剛性は、圧電デバイス400の振動領域の剛性とほぼ等しく構成することも可能となる。したがって、高出力化が妨げられることはない。
【0028】
さらに、振動領域7を構成する圧電膜は、良好な膜質に形成されることで高出力化を図ることが可能となる。圧電デバイス100は、第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bの厚さを良好な膜質の圧電膜を形成することができる範囲(スパッタ法等により形成される場合は0.5~1.0μm)に設定することが可能となる。つまり、圧電デバイス100の振動領域7を構成する圧電膜の膜質は、圧電デバイス400の振動領域を構成する圧電膜の膜質とほぼ等しく構成することが可能となる。したがって、高出力化が妨げられることはない。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の圧電デバイス100によれば、振動領域7の長さ、剛性、厚さおよび圧電膜の膜質を高出力化のために好適な設定とすることができる。
【0030】
(実施形態2)
次に、本発明の圧電デバイスの実施形態2について説明する。図3は、本発明の圧電デバイスの実施形態2を説明するための断面模式図である。図3に示すように、例えばシリコン基板等により構成される支持基板1上に、例えば熱酸化膜等により構成される絶縁膜2を介して、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bが積層され、第1圧電膜3aを挟んで第1電極4aおよび第2電極4bが配置される。第1電極4aおよび第2電極4bは、例えばモリブデン等により構成され、第1圧電膜3aは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT等により構成される。
【0031】
第2電極4b上に、例えばポリシリコンで構成される連結部9が積層される。連結部9の一部は、例えば壁状構造の連結壁部9bを構成する。この連結壁部9bは、振動領域7を構成する領域の第2電極4b上に複数配置される。複数の連結壁部9bは相互に離間して配置されることで、連結壁部9b間に空隙10を有する構成とされる。
【0032】
連結部9および連結壁部9b上に、第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cが積層され、第2圧電膜3bを挟んで第3電極4cおよび第4電極4dが配置される。第3電極4cおよび第4電極4dは、例えばモリブデン等により構成され、第2圧電膜3bは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT等により構成される。第1圧電膜3aと第2圧電膜3bは、応力制御の観点から同じ圧電材料で構成するのが好ましい。
【0033】
支持基板1にはキャビティ5が形成され、キャビティ5上の第1圧電膜3a、第2圧電膜3bおよび第1~第4電極4a~4dがスリット6により区画されることで、支持基板1に一端が接合して支持される振動領域7が形成される。本実施形態の圧電デバイス200も、上述の圧電デバイス100同様、図示しない引出電極を備え、一方の引出電極は第1電極4aおよび第3電極4cに接続され、別の引出電極は第2電極4bおよび第4電極4dに接続される。
【0034】
図4は、図3の圧電デバイス200のスリット6と連結壁部9bの配置の一例を説明する平面模式図である。図4に示すようにスリット6を配置すると、カンチレバー構造の2枚の振動領域7を備える圧電デバイス200を構成することができる。なお図4のB-B線における断面図が図3に相当し、図4には図3に示す第3電極4cが図示されておらず、キャビティ5を覆う第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3b等を貫通するスリット6および連結壁部9bの配置のみを模式的に示している。
【0035】
図3および4に示すように本実施形態の圧電デバイス200の振動領域7も、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bで構成される第1積層領域A1と、第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cで構成される第2積層領域A2との間に、これらを連結する連結壁部9bと空隙10で構成される中間領域A3が配置される。連結壁部9bは一端が第2電極4bに接合され、別の一端が第4電極4dに接合されることで、第1積層領域A1と第2積層領域A2が連結される。
【0036】
連結壁部9bは、振動領域7が所望の振動特性となるように配置される。一例として図4に示すように、振動領域7を支持する支持基板1との接合部から振動領域7の端部まで、長方形の振動領域7の短辺と平行方向に延出するように連結壁部9bを配置することで、第1積層領域A1と第2積層領域A2が一体で振動するように構成することができる。このように連結壁部9bを配置すると、空隙10も振動領域7の短辺と平行方向に配置され、中間領域A3を含む振動領域7の剛性が、第1圧電膜3aと第2圧電膜3bとが中間領域A3を挟まず積層されている構造の積層膜の剛性と比較して大きくならない構成とすることができる。なお所望の振動特性とするため、連結壁部9bの配置のほか、形状や配置される数、連結壁部9bを構成する材料等を適宜変更するのが好ましい。
【0037】
このように連結壁部3bを備える圧電デバイス200においても、上記実施形態1で説明した圧電デバイス100同様、振動領域7の厚さを厚く、長さを長く構成することができる。また、圧電膜の厚さを良好な膜質の圧電膜を形成することができる範囲に設定することができる。
【0038】
本実施形態の圧電デバイス200の振動領域7の剛性は、連結壁部9bと第2電極4bおよび第4電極4dとの接合面積が、圧電デバイス100における連結柱部9aと第2電極4bおよび第4電極4dとの接合面積より広くなり、圧電デバイス100の振動領域7の剛性より高くなる可能性がある。しかしながら、圧電デバイス400と比較した場合には、剛性は同等であり高出力化が妨げられることはない。
【0039】
したがって、本実施形態の圧電デバイス200によれば、振動領域7の長さ、剛性、厚さおよび圧電膜の膜質を高出力化のために好適な設定とすることができる。
【0040】
(実施形態3)
次に、本発明の圧電デバイスの実施形態3について説明する。図5は、本発明の圧電デバイスの実施形態3を説明するための断面模式図である。図5に示すように、例えばシリコン基板等により構成される支持基板1上に、例えば熱酸化膜等により構成される絶縁膜2を介して、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bが積層され、第1圧電膜3aを挟んで第1電極4aおよび第2電極4bが配置される。第1電極4aおよび第2電極4bは、例えばモリブデン等により構成され、第1圧電膜3aは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT等により構成される。
【0041】
第2電極4b上には、多孔質膜11(連結部に相当)が積層される。多孔質膜11は、内部に複数の空隙を有する膜で構成されており、例えばフッ素添加ガラス(FSG:fluorinated silicate glass)、炭素添加ガラス(SiOC)、ポーラスシリカ等により構成される。
【0042】
多孔質膜11上に、第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cが積層され、第2圧電膜3bを挟んで第3電極4cおよび第4電極4dが配置される。第3電極4cおよび第4電極4dは、例えばモリブデン等により構成され、第2圧電膜3bは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT等により構成される。第1圧電膜3aと第2圧電膜3bは、応力制御の観点から同じ圧電材料で構成するのが好ましい。
【0043】
支持基板1にはキャビティ5が形成され、キャビティ5上の第1圧電膜3a、多孔質膜11、第2圧電膜3bおよび第1~第4電極4a~4dがスリット6により区画されることで、支持基板1に一端が接合して支持される振動領域7が形成される。8aおよび8bは引出電極であり、引出電極8aは第1電極4aおよび第3電極4cに接続され、引出電極8bは第2電極4bおよび第4電極4dに接続される。
【0044】
スリット6は、実施形態1および2で説明したスリット6と同様の配置とすることで、カンチレバー構造の2枚の振動領域7を備える圧電デバイス300を構成することができる。
【0045】
図5に示すように本実施形態の圧電デバイス300の振動領域7は、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bで構成される第1積層領域A1と、第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cで構成される第2積層領域A2との間に、これらを連結する内部に空隙を有する多孔質膜11で構成される中間領域A3が配置される。
【0046】
多孔質膜11は、振動領域7が所望の振動特性となる材料から選択され、厚さや膜質、空孔率等を調整すればよい。
【0047】
このように多孔質膜11を備える圧電デバイス300においても、上記実施形態1および2で説明した圧電デバイス100および200同様、振動領域7の厚さを厚く、また長さを長く構成することができる。また、圧電膜の厚さを良好な膜質の圧電膜を形成することができる範囲に設定することができる。
【0048】
振動領域7の剛性は、空隙を含む多孔質膜11であれば、圧電デバイス400と比較して十分低く、高出力化を図ることができる。
【0049】
以上本発明の圧電デバイスの一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず種々変更可能である。例えば中間領域を構成する連結部は、連結柱部および連結壁部を組み合わせて構成することができる。また連結壁部は、短く形成される連結壁部を列状に配置する構成とすることもできる。また第1~第4電極は、必ずしも振動領域の全面に形成される必要はなく、少なくとも第1圧電膜および第2圧電膜の変位が生じる領域を挟んで配置する構成とすればよい。スリット6の配置も変更可能であり、カンチレバー構造のほか、ブリッジ構造やメンブレン構造とすることも可能である。
【0050】
(まとめ)
(1)本発明の圧電デバイスの一実施形態は、支持基板と、前記支持基板に接合して支持される振動領域を構成する圧電膜と、前記圧電膜を挟んで配置される電極とを備え、前記圧電膜は、少なくとも第1圧電膜および第2圧電膜を含み、前記振動領域は、前記第1圧電膜と前記第1圧電膜を挟んで配置される第1電極および第2電極とで構成される第1積層領域と、前記第2圧電膜と前記第2圧電膜を挟んで配置される第3電極および第4電極とで構成される第2積層領域と、前記第1積層領域と前記第2積層領域との間に配置され、前記第1積層領域と前記第2積層領域とを連結する中間領域とを含み、前記中間領域は、空隙を有する領域で構成される。
【0051】
本実施形態の圧電デバイスによれば、振動領域を厚く構成することができ、かつ振動領域の剛性の上昇が抑えられることから、第1積層膜を構成する第1圧電膜および第2積層膜を構成する第2圧電膜の変位が大きく、高い出力信号を得ることが可能となる。
【0052】
(2)前記中間領域は、一端が前記第1積層領域に接合され別の一端が前記第2積層領域に接合される連結部を複数含み、相互に離間する前記連結部の間に前記空隙を有する構成とされる。
【0053】
(3)前記中間領域は、前記第1積層領域と前記第2積層領域との間に積層される多孔質膜を含む構成とされる。
【符号の説明】
【0054】
100~400 圧電デバイス
1 支持基板
2 絶縁膜
3a 第1圧電膜
3b 第2圧電膜
4a~4d 第1~第4電極
5 キャビティ
6 スリット
7 振動領域
8a、8b 引出電極
9 連結部
9a 連結柱部
9b 連結壁部
10 空隙
11 多孔質膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7