(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139334
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】圧電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 30/20 20230101AFI20241002BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20241002BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20241002BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20241002BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20241002BHJP
H03B 5/32 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
H10N30/20
H10N30/30
H10N30/06
H10N30/87
H03H3/02 B
H03B5/32 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050224
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝本 尚己
(72)【発明者】
【氏名】口地 博行
(72)【発明者】
【氏名】菊池 利克
(72)【発明者】
【氏名】竹内 治
【テーマコード(参考)】
5J079
5J108
【Fターム(参考)】
5J079AA03
5J079HA04
5J079HA13
5J108MM04
(57)【要約】
【課題】高出力の圧電デバイスを簡便に形成することができる製造方法を提供する。
【解決手段】圧電デバイス100の製造方法は、第1支持基板1と第1圧電膜3aを含む第1積層体と、第2支持基板と第2圧電膜3bを含む第2積層体とを、少なくとも振動領域形成予定領域において相互に離間して形成される連結部9aにより、連結部9a間に空隙を有して積層される第3積層体を形成する。第2支持基板を除去し、振動領域形成予定領域の第1支持基板1を除去し、振動領域7を形成する。振動領域7は、第1圧電膜3aと第2圧電圧3bが、連結部9aを介して接合され、連結部9a間に空隙10が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持基板上に第1電極、第1圧電膜および第2電極が順に積層される第1積層体を形成する工程と、
第2支持基板上に第3電極、第2圧電膜および第4電極が順に積層される第2積層体を形成する工程と、
前記第1積層体の前記第2電極上の少なくとも振動領域形成予定領域に、前記第2積層体と接合する連結部を相互に離間して形成する工程と、
前記連結部を前記第2積層体の前記第4電極に接合し、前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が、前記連結部間に空隙を有して積層される第3積層体を形成する工程と、
前記第3積層体の前記第2支持基板を除去する工程と、
前記第3積層体の前記振動領域形成予定領域に対応する領域の前記第1支持基板を除去し、振動領域を形成する工程と
を含む圧電デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1積層体上に、前記連結部の代わりに前記連結部の一部を構成する第1連結部を形成する工程と、
前記第2積層体上に、前記第1連結部とともに前記連結部を構成する第2連結部を形成する工程とを含み、
前記第3積層体を形成する工程が、
前記第1連結部と前記第2連結部を接合し、前記第1連結部および前記第2連結部とで構成される前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が積層される工程を含む、
請求項1記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が積層されて形成される前記第3積層体は複数の圧電デバイス形成領域を含み、複数の圧電デバイス集合体を形成した後、各圧電デバイスに個片化する工程を含む、
請求項1または2記載の圧電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイスの製造方法に関し、特に高出力の圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体材料の薄膜(圧電膜)を備える圧電デバイスは、振動領域を構成する圧電膜が変位することで生じる電圧変化を検出することができ、または圧電膜に電圧を印加して変位させることができ、圧電センサや圧電アクチュエータ等として利用することができる。
【0003】
従来の圧電デバイスは、一例として振動領域の一端が支持基板に接合して支持されるカンチレバー構造が採用されている。この種の圧電デバイスは、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は従来の圧電デバイスを説明するための断面模式図を示している。
図12に示すように従来の圧電デバイス300は、支持基板1上に絶縁膜2を介して第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bが積層され、第1圧電膜3aを挟んで第1電極4aおよび第2電極4bが配置され、第2圧電膜3bを挟んで第2電極4bおよび第3電極4cが配置される。支持基板1にはキャビティ5が形成され、キャビティ5上の第1圧電膜3a、第2圧電膜3bおよび第1~第3電極4a~4cがスリット6により区画される(
図13)ことで、支持基板1に一端が接合して支持される振動領域7が形成される。8aおよび8bは引出電極で、引出電極8aは第1電極4aおよび第3電極4cに接続され、引出電極8bは第2電極4bに接続される。
【0006】
図13は、
図12の圧電デバイス300のスリット6の配置の一例を説明する平面模式図である。
図13に示すようにスリット6を配置すると、カンチレバー構造の2枚の振動領域7を備える圧電デバイス300が構成される。なお
図13のB-B線における断面図が
図12に相当し、
図13には
図12に示す第3電極4c、引出電極8aおよび8b等は図示されておらず、キャビティ5を覆う第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3b等を貫通するスリット6の配置のみが示されている。
【0007】
図12および13に示す圧電デバイス300において、振動領域7の共振周波数は振動領域7の剛性と長さにより調整することができる。具体的には、振動領域7の剛性を大きくすると共振周波数が高くなり、また振動領域7の長さLを短くすると共振周波数が高くなる。なお振動領域7の長さLとは、
図13に示すように支持基板1との接合端から開放端までの長さである。
【0008】
ここで良好な膜質の圧電膜を形成するため、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される圧電膜の厚さは、通常0.5~1.0μmに設定され、圧電膜の厚さを大きく変更することは難しい。圧電膜を構成する圧電材料の種類と厚さが決まれば振動領域7の剛性が決まることから、振動領域7の共振周波数を調整するために振動領域7の剛性を大きく変更することは難しい。そこで、振動領域7の共振周波数は、振動領域7の長さを変更することにより調整するのが一般的である。
【0009】
例えば、
図12および13に示す圧電デバイス300が障害物検知や超音波診断のための超音波送受信機として使用される場合、振動領域7の長さを短く調整して振動領域7の共振周波数を高くする必要がある。このように振動領域7の長さが短くなると、振動領域7を構成する圧電膜の変位は小さくなり、出力信号が低下するという問題があった。
【0010】
そこで本出願人は、高出力の圧電デバイスを提案している。
図1は本出願人が提案している高出力の圧電デバイスを説明する断面模式図である。
図1に示す圧電デバイス100は、支持基板1上に、絶縁膜2を介して第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bが積層され、さらに連結部9および9aを介して第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cが積層される。支持基板1に形成されるキャビティ5上の第1圧電膜3a、第2圧電膜3bおよび第1~第4電極4a~4dはスリット6により区画され、支持基板1に一端が接合して支持される振動領域7が形成される。8aおよび8bは引出電極である。
【0011】
図2は、
図1の圧電デバイス100のスリット6と連結部9aの配置の一例を説明する平面模式図である。
図2に示すようにスリット6および連結部9aを配置することで、カンチレバー構造の2枚の振動領域7を備える圧電デバイス100を構成することができる。なお
図2のA-A線における断面図が、
図1に相当し、
図2には
図1に示す第3電極4c、引出電極8aおよび8b等が図示されておらず、キャビティ5を覆う第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3b等を貫通するスリット6および柱状の連結部9aの配置のみを模式的に示している。
【0012】
このように構成される圧電デバイス100は、連結部9aを備えることで厚い振動領域7を備える構成とされる。さらに柱状の連結部9aが相互に離間し空隙10が配置されることで、振動領域7の剛性は、同じ厚さの振動領域を単一の圧電膜で構成した場合と比較して小さく、
図12に示すように連結部を挟まずに第1圧電膜3aと第2圧電膜3bが積層されている構造の剛性と比較して大きく変化しない。その結果、第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bの変位は大きく、高出力の圧電デバイスを構成することが可能となる。
【0013】
このように連結部9aおよび空隙10を備える構成の圧電デバイス100において、連結部9aおよび空隙10の製造工程としては、次のような工程が考えられる。まず、支持基板1上に絶縁膜2を介して全面に第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bを順に積層形成する。第2電極4b上に連結部9aを形成して、隣接する連結部9a間の空隙部10となる領域に犠牲層を充填して平坦化する。さらに全面に第4電極4d、第2圧電膜3bおよび第3電極4cを順に積層形成する。その後、第1圧電膜3a、第2圧電膜3b、第1~第4電極4a~4dおよび犠牲層等を貫通するスリット6を形成して犠牲層の一部を露出させる。犠牲層はこのスリット6から除去され、空隙10が形成される。
【0014】
以上のような製造工程において、振動領域7の変位が大きい領域となる支持基板1との接合部近傍の犠牲層は確実に除去する必要がある。しかし、接合部近傍はスリット6から離れているため犠牲層の除去に長時間を要し、または除去が難しくなるという問題があった。このような問題は、カンチレバー構造の圧電デバイスに限らず、支持基板に振動領域の対向する二辺が接合されて支持されるブリッジ構造の圧電デバイスにおいても生じる問題であった。
【0015】
そこで本発明は、高出力の圧電デバイスを簡便に形成することができる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の圧電デバイスの製造方法は、第1支持基板上に第1電極、第1圧電膜および第2電極が順に積層される第1積層体を形成する工程と、第2支持基板上に第3電極、第2圧電膜および第4電極が順に積層される第2積層体を形成する工程と、前記第1積層体の前記第2電極上の少なくとも振動領域形成予定領域に、前記第2積層体と接合する連結部を相互に離間して形成する工程と、前記連結部を前記第2積層体の前記第4電極に接合し、前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が、前記連結部間に空隙を有して積層される第3積層体を形成する工程と、前記第3積層体の前記第2支持基板を除去する工程と、前記第3積層体の前記振動領域形成予定領域に対応する領域の前記第1支持基板を除去し、振動領域を形成する工程とを含む構成とされている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の圧電デバイスの製造方法によれば、第1圧電膜を含む第1積層体と、第2圧電膜を含む第2積層体をそれぞれ形成し、少なくとも振動領域形成予定領域は相互に離間して配置される複数の連結部を介して積層する工程を備える構成とすることで、除去が難しい犠牲層を形成することなく空隙を有する連結部を形成することが可能となる。その結果、振動領域の厚さが厚く、振動領域の剛性の上昇が抑えられて高出力となる圧電デバイスを簡便に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本出願人が提案している高出力の圧電デバイスを説明する断面模式図である。
【
図2】
図1に示す圧電デバイスにおけるスリットと連結部の配置の一例を説明する図である。
【
図3】本発明の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図4】本発明の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図5】本発明の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図6】本発明の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図7】本発明の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図8】本発明の別の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図9】本発明の別の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一態様を説明する図である。
【
図10】本発明の別の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一形態を説明する図である。
【
図11】本発明の別の圧電デバイスの製造方法における製造工程の一形態を説明する図である。
【
図13】従来の圧電デバイスにおけるスリットの配置の一例を説明する平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の圧電デバイスの製造方法について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではなく、以下に説明する部材、材料等は、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また図面において同一符号は同等あるいは同一のものを示し、各構成要素間の大きさや位置関係等は便宜上のものであり、実態を厳密に反映したものではない。
【0020】
以下、本発明の圧電デバイスの製造方法の実施態様について、複数の圧電デバイスの集合体を形成し、個片化することで複数の圧電デバイスを同時に形成する製造方法について説明する。
【0021】
(圧電デバイスの製造方法1)
図3~7は本発明の圧電デバイスの製造方法の一実施態様の説明図である。まず、例えばシリコン基板等により構成される第1支持基板1a上に、例えば熱酸化膜等により構成される第1絶縁膜2aを介して、第1電極4a、第1圧電膜3aおよび第2電極4bが積層されている第1積層体10Aを形成する(
図3)。また同様に、例えばシリコン基板等により構成される第2支持基板1b上に、例えば熱酸化膜等により構成される第2絶縁膜2bを介して、第3電極4c、第2圧電膜3bおよび第4電極4dが積層されている第2積層体10Bを形成する。なおこの第2積層体10Bは、
図3に示す第1積層体10Aと同一形状となるため、図示を省略し、
図3において対応する符号を括弧内に記載している。第1~第4電極4a~4dは、例えばモリブデン等により構成され、第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bは、例えば窒化アルミニウム、酸化亜鉛、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により構成される。第1電極4aおよび第3電極4cは、絶縁膜2aが形成されている第1支持基板1aおよび絶縁膜2bが形成されている第2支持基板1bを、例えばスパッタ法により使用される反応装置内に収容し、同時に形成することができる。さらに第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bは、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法により使用される反応装置内で同時に形成することができる。このように同時に形成される圧電膜は配向性や圧電特性が揃った圧電膜となり好ましい。第1積層体10Aおよび第2積層体10Bは、複数の圧電体デバイス形成予定領域を含む構成とすることができるが、以下の説明は一つの圧電デバイス形成予定領域を図示して説明する。
【0022】
次に、
図4に示すように第1積層体10Aの第2電極4b上に、例えばポリシリコン等により構成される連結部9を形成し、少なくとも振動領域形成予定領域の連結部9の一部を除去し、連結部9aを形成する。連結部9aは円柱構造とすることができる。連結部9aは
図2に示すように相互に離間して配置する。なお、9bは連結部9の一部を除去することにより連結部9aとともに形成される連結部であるが、連結部9bは後述するスリットが形成される領域に配置され、スリットの形成によって除去される(
図4)。また、
図4に示す第2積層体10Bは、第2積層体10Bの表面を第1積層体10Aの表面に形成される連結部9等の表面側に向けて配置した状態を示している。
【0023】
図4に示すように第1積層体10Aおよび第2積層体10Bを配置し、第1積層体10Aに形成される連結部9、9aおよび9bの表面を、第2積層体10Bの第4電極4dの表面に接合し、第3積層体10Cを形成する(
図5)。この接合により、複数の連結部9a間に空隙10が形成される。連結部9、9aおよび9bの表面と第2積層体10Bの第4電極4dの表面との接合は、例えば接着剤としてポリイミド、エポキシ樹脂等の樹脂を用いた間接接合、あるいは金属接合等の直接接合により行うことができる。
【0024】
その後、第3積層体10Cから第2支持基板1bおよび第2絶縁膜2bを除去し、第3電極4cを露出する。露出する第3電極4cをパターニングし、第2圧電膜3b、第4電極4d、連結部9、第2電極4bおよび第1圧電膜3aの一部を適宜除去し、第1電極4aおよび第3電極4cに接続する引出電極8aと第2電極4bおよび第4電極4dに接続する引出電極8bを形成する。
図6において11は、引出電極8aと第2電極4bおよび第4電極4dを絶縁する絶縁膜である。なお、予め第2電極4bおよび第4電極4dを引出電極8aと接触しないようにパターニングすれば、絶縁膜11は不要となる。
【0025】
スリット6を形成するため、第3電極4c、第2圧電膜3b、第4電極4d、連結部9b、第2電極4b、第1圧電膜3aおよび第1電極4aの一部を除去し、第1絶縁膜2aの表面を露出する。その後、第1支持基板1aおよび第1絶縁膜2aの一部を除去し、キャビティ5を形成する。このキャビティ5が形成されることで、振動領域7が形成される。このように形成される複数の圧電デバイスの集合体を個片化するため格子状に切削溝12を形成する(
図7)ことで、
図1に示す圧電デバイス100を複数同時に形成することが可能となる。
【0026】
連結部9aは、振動領域7が所望の振動特性となるように配置される。一例として
図1および2に示すように、振動領域7を支持する支持基板1との接合部から振動領域7の端部まで、少なくとも長方形の振動領域7の短辺と平行方向に列状に連結部9aを配置することで、第1圧電膜3aと第2圧電膜3bが一体で振動するように構成することができる。またこのように連結部9aを配置すると、空隙10も振動領域7の短辺と平行方向に配置され、振動領域7の剛性は、同じ厚さの振動領域を単一の圧電膜で構成する場合と比較して小さく、第1圧電膜3aと第2圧電膜3bとが連結部9aを挟まずに積層されている構造の剛性と比較して大きくならない構成とすることができる。なお所望の振動特性とするため、連結部9aの配置のほか、形状や配置される数、連結部9aを構成する材料等を適宜変更するのが好ましい。
【0027】
以上説明したように本実施態様の製造方法により形成される圧電デバイス100は、振動領域7を構成する第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bを同時に形成することができるため、配向性や圧電特性のばらつきを抑えることが可能となる。また第1圧電膜3aと第2圧電膜3bが連結部9aを介して接合する構成とされ、振動領域7を厚く構成することができる。さらに連結部9a間に空隙10を有する構成とされることで振動領域7の剛性の上昇が抑えられ、特に振動領域7の変位が大きい支持基板1との接合部近傍に空隙10が配置される構成とすることができ、第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bの変位が大きく、高出力の圧電デバイスを簡便に形成することができる。
【0028】
(圧電デバイスの製造方法2)
次に本発明の別の圧電デバイスの製造方法の実施態様について説明する。上述の圧電デバイスの製造方法1では、
図4および5で説明したように第1積層体10A上に形成される連結部9a等が、第2積層体10Bの第4電極4dに接合する構成について説明したが、連結部9a等の形状は種々変更することが可能である。例えば、
図8に示すように第1積層体10Aの第2電極4b上に、例えばポリシリコン等により構成され、先に説明した連結部9、9aおよび9bのそれぞれ半分の高さの連結部9-1、9a-1および9b-1(第1連結部に相当)を形成し、同様に第2積層体10Bの第4電極4d上に、例えばポリシリコン等により構成され、先に説明した連結部9、9aおよび9bのそれぞれ半分の高さで、連結部9-1、9a-1および9b-1とともに連結部を構成する連結部9―2、9a-2および9b-2(第2連結部に相当)を形成する。
【0029】
第3積層体10Cを形成する場合、連結部9-1と連結部9-2とを、連結部9a-1と連結部9a-2とを、連結部9b-1と連結部9b-2とをそれぞれ接合する(
図9)。接合後の連結部は、それぞれ連結部9、9aおよび9bと同じ形状となるため、第3積層体10Cの形状は、
図5に示す第3積層体10Cの形状と同一となる。
【0030】
その後、上述の圧電デバイスの製造方法1同様、第3積層体10Cから第2支持基板1bおよび第2絶縁膜2bを除去し、第3電極4cを露出する。第3電極4cをパターニングし、第2圧電膜3b、第4電極4d、連結部9-2および9-1、第2電極4bおよび第1圧電膜3aの一部を適宜除去し、第1電極4aおよび第3電極4cに接続する引出電極8aと第2電極4bおよび第4電極4dに接続する引出電極8bを形成する。
【0031】
スリット6を形成するため、第3電極4c、第2圧電膜3b、第4電極4d、連結部9b-1および9b-2、第2電極4b、第1圧電膜3aおよび第1電極4aの一部を除去し、第1絶縁膜2aの表面を露出する。その後、第1支持基板1aおよび第1絶縁膜2aの一部を除去し、キャビティ5を形成する。このキャビティ5が形成されることで、振動領域7が形成される。複数の圧電デバイスの集合体を個片化するため格子状に切削溝12を形成する(
図10)。このように圧電デバイスの製造方法2においても、
図11に示す圧電デバイス200を複数同時に形成することが可能となる。
【0032】
以上本発明の圧電デバイスの製造方法の実施態様について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、連結部9aおよび9bの形状は、それぞれ円柱形状が接合した形状に限定されない。例えば、円錐台が接合した形状、壁形状や壁状構造が接合した形状等とすることも可能であり、これらの形状を組み合わせることも可能である。また連結部9a等の配置や大きさは、振動領域7が所望の振動となるように配置され、さらに連結部9a等を構成する材料も適宜選択すればよい。
【0033】
また、第1~第4電極4a~4dは、必ずしも振動領域7の全面に形成される必要はなく、少なくとも第1圧電膜3aおよび第2圧電膜3bの変位が生じる領域を挟んで配置する構成とすればよい。スリット6の配置も変更可能であり、カンチレバー構造のほか、ブリッジ構造やメンブレン構造とすることも可能である。
【0034】
(まとめ)
(1)本発明の圧電デバイスの製造方法の一実施態様では、第1支持基板上に第1電極、第1圧電膜および第2電極が順に積層される第1積層体を形成する工程と、第2支持基板上に第3電極、第2圧電膜および第4電極が順に積層される第2積層体を形成する工程と、前記第1積層体の前記第2電極上の少なくとも振動領域形成予定領域に、前記第2積層体と接合する連結部を相互に離間して形成する工程と、前記連結部を前記第2積層体の前記第4電極に接合し、前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が、前記連結部間に空隙を有して積層される第3積層体を形成する工程と、前記第3積層体の前記第2支持基板を除去する工程と、前記第3積層体の前記振動領域形成予定領域に対応する領域の前記第1支持基板を除去し、振動領域を形成する工程とを含む構成とすることができる。
【0035】
(2)前記第1積層体上に、前記連結部の代わりに前記連結部の一部を構成する第1連結部を形成する工程と、前記第2積層体上に、前記第1連結部とともに前記連結部を構成する第2連結部を形成する工程とを含み、前記第3積層体を形成する工程が、前記第1連結部と前記第2連結部を接合し、前記第1連結部および前記第2連結部とで構成される前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が積層される工程を含む構成とすることで、形状の異なる連結部を簡便に形成することができる。
【0036】
(3)前記連結部により前記第1積層体と前記第2積層体が積層されて形成される前記第3積層体は複数の圧電デバイス形成領域を含み、複数の圧電デバイス集合体を形成した後、各圧電デバイスに個片化する工程を含む構成とすることで、容易に複数の圧電デバイスを形成することができる。
【符号の説明】
【0037】
100~300 圧電デバイス
1a 第1支持基板
1b 第2支持基板
2 絶縁膜
3a 第1圧電膜
3b 第2圧電膜
4a~4d 第1~第4電極
5 キャビティ
6 スリット
7 振動領域
8a、8b 引出電極
9、9a、9a-1、9a-2、9b、9b-1、9b-2 連結部
10 空隙
10A~10C 第1~第3積層体
11 絶縁膜
12 切削溝