(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139345
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】絶縁カバー、バッテリー端子接続構造、バッテリー端子へのワイヤハーネス接続方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/70 20060101AFI20241002BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20241002BHJP
H01R 4/34 20060101ALI20241002BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20241002BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20241002BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20241002BHJP
【FI】
H01R4/70 B
H01R13/52 B
H01R4/34
H01M50/543
H01M50/588 101
H01M50/591
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050238
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】良島 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】安田 光利
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 雄基
(72)【発明者】
【氏名】植田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】興梠 樹美人
(72)【発明者】
【氏名】金井 万里
(72)【発明者】
【氏名】平松 尚也
【テーマコード(参考)】
5E012
5E087
5H043
【Fターム(参考)】
5E012BA12
5E087EE06
5E087LL02
5E087LL17
5E087MM05
5E087MM12
5E087PP03
5E087QQ03
5E087QQ04
5E087RR25
5E087RR27
5H043AA20
5H043GA23
5H043GA25
(57)【要約】
【課題】 特殊なワイヤハーネス端子を使用することなく、ワイヤハーネスの端子とバッテリー端子との接続作業が容易である絶縁カバー等を提供する。
【解決手段】 絶縁カバー10は、主に、端子保護部13とハーネス保護部15からなる。ハーネス保護部15は、バッテリー端子に接続されるワイヤハーネスを覆う部位である。ハーネス保護部15の開口部側から、略U字断面部分にワイヤハーネスが挿入されて保持される。端子保護部13は、バッテリー端子を覆う部位であり、側壁部17a、17b、17cの三面の側面を有する略箱型である。端子保護部13をバッテリー端子に被せると、端子保護部13の側壁部17a、17b、17cは、バッテリー端子の各面と接触する。このため、ボルトをねじ込む際に、側壁部17a、17b、17cが端子部の回転止めとして機能する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー端子を覆う絶縁カバーであって、
バッテリー端子を覆う端子保護部と、
バッテリー端子に接続されるワイヤハーネスを覆うハーネス保護部と、
を具備し、
前記ハーネス保護部には、ワイヤハーネスが保持され、
前記端子保護部は、少なくとも二面の側壁部を有し、前記端子保護部をバッテリー端子に被せた際に、前記側壁部がバッテリー端子の異なる少なくとも二面と接触可能であることを特徴とする絶縁カバー。
【請求項2】
前記端子保護部の端子挿入部とは逆側に開閉可能な蓋部が設けられることを特徴とする請求項1記載の絶縁カバー。
【請求項3】
前記ハーネス保護部は、ワイヤハーネスが収容される略U字状の断面を有し、前記ハーネス保護部の内面には、ワイヤハーネスを保持する爪部が形成されることを特徴とする請求項1記載の絶縁カバー。
【請求項4】
前記ハーネス保護部には、略U字状の開口部を塞ぐことが可能な保護部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の絶縁カバー。
【請求項5】
前記端子保護部と前記ハーネス保護部とが、略垂直に屈曲していることを特徴とする請求項1記載の絶縁カバー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の絶縁カバーを用いたバッテリー端子接続構造であって、ワイヤハーネスの端子部と、バッテリー端子とがボルトで接続され、
前記ワイヤハーネスの一部が前記ハーネス保護部に収容され、前記ワイヤハーネスの端子部が前記端子保護部に配置され、前記端子保護部の前記側壁部で前記バッテリー端子が覆われることを特徴とするバッテリー端子接続構造。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の絶縁カバーを用いたバッテリー端子へのワイヤハーネス接続方法であって、
ワイヤハーネスの一部を前記ハーネス保護部に収容し、前記ワイヤハーネスの端子部を前記端子保護部に配置し、前記端子保護部を前記バッテリー端子へ被せ、前記側壁部と前記バッテリー端子とを接触させて前記ワイヤハーネスの端子部の回り止めとして機能させ、ボルトで前記ワイヤハーネスの端子部と前記バッテリー端子を接続することを特徴とするバッテリー端子へのワイヤハーネス接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバイク等のバッテリーの端子における接続部を保護する絶縁カバー等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイク等のバッテリーは、例えば、板状部材を略コの字状に折り曲げて形成された端子を有する。このようなバッテリー端子には、例えば上面及び前面に孔が形成されており、ボルトによって、ワイヤハーネス(端子付き電線)の端子部が接続可能となっている。
【0003】
このようなバッテリー端子にワイヤハーネスの端子部を接続する際には、ボルト締結後に+端子側にPVC製の赤い絶縁カバーを被せ、作業時の工具と車体の接触による短絡を防止している。この絶縁カバーは、通常は軟質であり、予めワイヤハーネスに先通しされる。端子接続作業時には、絶縁カバーをめくりあげて退避させて作業を行い、端子接続後に元の状態に戻すことで、端子接続部を保護することができる。
【0004】
しかし、従来の絶縁カバーは、予めワイヤハーネスに先通しする必要があり、端子接続時には、絶縁カバーをめくりあげて退避させる必要があるため、必ずしも作業性がよいとは言えない。
【0005】
これに対し、一端に開口部を有するカバー本体の下面に、バッテリーターミナルの取り付け部に挿入される切欠部を設け、その周りにバッテリーターミナルの取り付け部に係合するロック部を設けたバッテリー端子カバーが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、締結部が締結状態である場合に、蓋体に設けられた第1リブが締結部とカバー本体との間に形成される隙間に挿入されて、当該蓋体が閉状態となる一方、締結部が非締結状態である場合には、第1リブが締結部に接触して蓋体が開状態を維持するバッテリーターミナルカバーが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平1-104652号公報
【特許文献2】特開2022-179897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、通常、ワイヤハーネスの端子部をバッテリー端子に接続する際、ボルトをねじ込むと、ボルトとともにワイヤハーネスの端子部も回転してしまう恐れがある。このため、ワイヤハーネスの端子部には、回り止めの突起が設けられ、突起をバッテリー端子の一面に引っ掛けることで、ワイヤハーネスの端子部の回転を抑制しつつボルトをねじ込むことができる。
【0009】
しかし、バイクの車種等によって、バッテリーに接続されるワイヤハーネスの配策方向が異なる場合がある。例えば、車種によって、バッテリー端子の上面側の孔を用いる場合や、前面側の孔を用いる場合があり、さらに、接続されたワイヤハーネスの引き出し方向が異なる場合がある。このため、バッテリー端子への接続方向に応じて、ワイヤハーネスの端子部の回転止めの向き等を変える必要があった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、特殊なワイヤハーネス端子を使用することなく、ワイヤハーネスの端子部とバッテリー端子との接続作業が容易である絶縁カバー等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために第1の発明は、バッテリー端子を覆う絶縁カバーであって、バッテリー端子を覆う端子保護部と、バッテリー端子に接続されるワイヤハーネスを覆うハーネス保護部と、を具備し、前記ハーネス保護部には、ワイヤハーネスが保持され、前記端子保護部は、少なくとも二面の側壁部を有し、前記端子保護部をバッテリー端子に被せた際に、前記側壁部がバッテリー端子の異なる少なくとも二面と接触可能であることを特徴とする絶縁カバーである。
【0012】
前記端子保護部の端子挿入部とは逆側に開閉可能な蓋部が設けられてもよい。
【0013】
前記ハーネス保護部は、ワイヤハーネスが収容される略U字状の断面を有し、前記ハーネス保護部の内面には、ワイヤハーネスを保持する爪部が形成されてもよい。
【0014】
前記ハーネス保護部には、略U字状の開口部を塞ぐことが可能な保護部材が設けられてもよい。
【0015】
前記端子保護部と前記ハーネス保護部とが、略垂直に屈曲していてもよい。
【0016】
第1の発明によれば、端子保護部が少なくとも二面の側壁部を有し、端子保護部をバッテリー端子に被せた際に、側壁部がバッテリー端子の異なる二面と接触可能であるため、ボルトを締める際に、端子保護部をワイヤハーネスの端子の回り止めとして機能させることができる。このため、ワイヤハーネスの端子部に回り止めを形成する必要がなく、取り付け方向によって端子を変える必要が無い。
【0017】
また、端子保護部の背面側に開閉可能な蓋部を設けることで、ボルト締結時には蓋部を開いて作業を行うことができる。また、ボルト締結後は蓋部を閉じることで、確実に端子接続部を覆い、保護することができる。
【0018】
また、ハーネス保護部の断面形状を、ワイヤハーネスが収容される略U字状の形状として、ハーネス保護部の内面に爪部を形成することで、ハーネス保護部にワイヤハーネスを確実に固定することができる。
【0019】
また、ハーネス保護部に、略U字状の開口部を塞ぐことが可能な保護部材を設けることで、より確実にワイヤハーネスを保護することができる。
【0020】
また、端子保護部とハーネス保護部とを、略垂直に屈曲させることで、任意の方向にワイヤハーネスを引き出すことができる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明にかかる絶縁カバーを用いたバッテリー端子接続構造であって、ワイヤハーネスの端子部と、バッテリー端子とがボルトで接続され、前記ワイヤハーネスの一部が前記ハーネス保護部に収容され、前記ワイヤハーネスの端子部が前記端子保護部に配置され、前記端子保護部の前記側壁部で前記バッテリー端子が覆われることを特徴とするバッテリー端子接続構造である。
【0022】
第2の発明によれば、接続作業が容易なバッテリー端子接続構造を得ることができる。
【0023】
第3の発明は、第1の発明にかかる絶縁カバーを用いたバッテリー端子へのワイヤハーネス接続方法であって、ワイヤハーネスの一部を前記ハーネス保護部に収容し、前記ワイヤハーネスの端子部を前記端子保護部に配置し、前記端子保護部を前記バッテリー端子へ被せ、前記側壁部と前記バッテリー端子とを接触させて前記ワイヤハーネスの端子部の回り止めとして機能させ、ボルトで前記ワイヤハーネスの端子部と前記バッテリー端子を接続することを特徴とするバッテリー端子へのワイヤハーネス接続方法である。
【0024】
第3の発明によれば、容易にバッテリー端子とワイヤハーネス端子とを接続することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、特殊なワイヤハーネス端子を使用することなく、ワイヤハーネスの端子部とバッテリー端子との接続作業が容易である絶縁カバー等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(a)は、バッテリー1を示す斜視図、(b)はバッテリー端子3の拡大図。
【
図2】(a)は、絶縁カバー10を示す上方斜視図、(b)は、絶縁カバー10を示す下方斜視図。
【
図3】絶縁カバー10の蓋部19を開いた状態の分解斜視図。
【
図4】(a)は、
図3(a)におけるC-C線断面図、(b)は、
図2(a)におけるD-D線断面図。
【
図5】絶縁カバー10にワイヤハーネス23を取り付けた状態を示す断面図。
【
図6】バッテリー端子3へ、ワイヤハーネス23を接続する前の分解図。
【
図7】(a)~(c)は、バッテリー端子3へ、ワイヤハーネス23を接続する工程を示す。
【
図8】バッテリー端子3へ、他の方向からワイヤハーネス23を接続する工程を示す図。
【
図9】(a)は、他の方向からワイヤハーネス23を接続する工程を示す図、(b)は、ハーネス保護部15を屈曲させた絶縁カバー10を示す図。
【
図10】(a)、(b)は、保護部材35を取付ける工程を示す図。
【
図11】オフセット型の端子部25を有するワイヤハーネス23に固定される絶縁カバー10を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1(a)は、バッテリー1を示す斜視図であり、
図1(b)は、バッテリー端子3の拡大図である。バッテリー1の両端部には、一対のバッテリー端子3が配置される。バッテリー端子3は、板状の部材が屈曲して構成され、前面5、上面7、背面9を有する。すなわち、バッテリー端子3は、側面視において略コの字状であり、内部に略直方体の空間が形成される。
【0028】
バッテリー端子3の前面5と上面7には、孔11が設けられる。孔11は、続部材であるボルトが挿通される部位である。すなわち、バッテリー端子3は、前面5又は上面7に対して、後述するボルトでワイヤハーネスの端子部と接続可能である。なお、バッテリー1及びバッテリー端子3の形態等は、図示した例には限られない。
【0029】
次に、ワイヤハーネスの端子部をバッテリー端子3に接続した際に、バッテリー端子3の接続部を覆う絶縁カバーについて説明する。
図2(a)は、絶縁カバー10の上方斜視図であり、
図2(b)は、絶縁カバー10の下方斜視図である。絶縁カバー10は、主に、端子保護部13とハーネス保護部15からなる。絶縁カバー10は、硬質樹脂等の絶縁材により一体で構成される。
【0030】
ハーネス保護部15は、バッテリー端子に接続されるワイヤハーネスを覆う部位である。ハーネス保護部15は、ワイヤハーネスの一部が収容される略U字状の断面を有する。すなわち、ハーネス保護部15は、断面において、一方の方向に開口する。ハーネス保護部15の開口部側から、略U字断面部分にワイヤハーネスが挿入されて保持される。
【0031】
なお、ハーネス保護部15の内面側には、必要に応じて、互いに対向する位置に突出する爪部21が形成される。爪部21によって、ワイヤハーネスをより確実に保持することができる。
【0032】
ハーネス保護部15の先端側には、端子保護部13が設けられる。端子保護部13とハーネス保護部15の内部の空間(略U字状によって囲まれる空間)は連続する。端子保護部13は、バッテリー端子3を覆う部位であり、側壁部17a、17b、17cの三面の側面を有する略箱型である。端子保護部13は、少なくとも、ハーネス保護部15の開口方向と同一方向に開口する。この開口部が、バッテリー端子3が挿入される端子挿入部8となる。
【0033】
端子保護部13は、平面視で略正方形であり、ハーネス保護部15に対して幅が広く形成される。また、側壁部17a、17b、17cは、ハーネス保護部15の側壁よりも高さが高く、ハーネス保護部15に対して、側壁部17a、17b、17cの先端が端子挿入部8側に突出する。
【0034】
端子保護部13の端子挿入部8とは逆側には、開閉可能な蓋部19が設けられる。
図3は、絶縁カバー10の蓋部19を開いた状態の斜視図である。また、
図3には、取付け前のワイヤハーネス23を合わせて示す。蓋部19は、例えばヒンジ等によって開閉可能である。
【0035】
図4(a)は、
図3のC-C線断面図、
図4(b)は、
図2(a)のD-D線断面図である。蓋部19の下面側には、係止爪31が設けられる。また、端子保護部13の内面(側壁部17a、17cの内面)には、凹形状の係止部33が設けられる。蓋部19を閉じると、係止爪31が、係止部33に嵌合する。このため、蓋部19が閉じた状態を維持することができる。
【0036】
なお、蓋部19の固定方法は図示した例には限られない。また、蓋部19の開閉方向は特に限定されない。また、蓋部19は必ずしも必要ではなく、また、蓋部19を別体で形成して脱着可能としてもよい。
【0037】
図3に示すように、ワイヤハーネス23は、被覆電線と端子部25とが接続されて構成される。図示した例では、端子部25には電線接続部24を有し、電線接続部24は、例えば、被覆電線の先端から露出する導線を圧着する導線圧着部と被覆部を圧着する被覆圧着部を有するオープンバレルタイプである。なお、電線接続部24の構成は図示した例には限られず、電線と接続が可能であれば、接続構造は特に限定されない。
【0038】
端子部25は略矩形であり、端子保護部13の内部形状に対応する形状である。すなわち、端子部25は、端子保護部13にちょうどはまり込むようなサイズで構成される。また、端子部25には、ボルトが挿入される孔が形成される。
【0039】
図5(a)は、絶縁カバー10がワイヤハーネス23に取り付けられた状態を示す斜視図であり、
図4(b)は、絶縁カバー10がワイヤハーネス23に取り付けられた状態を示す断面図である。
【0040】
ハーネス保護部15には、ワイヤハーネス23の電線接続部24が配置される。この際、前述したように、ワイヤハーネス23の一部(電線接続部24)は、ハーネス保護部15の内部に挿入され、爪部21によって保持される。また、ワイヤハーネス23の端子部25が端子保護部13の内部に配置される。端子部25の端面は、側壁部17a、17b、17cの内面と接触させてもよい。蓋部19を開けることで、端子保護部13の内部の端子部25が上方に露出する。
【0041】
次に、絶縁カバー10を用いたバッテリー端子3へのワイヤハーネス23の接続方法について説明する。
図6は、バッテリー端子接続構造の分解図である。なお、以下の説明では、バッテリー端子3の上面7にワイヤハーネス23の端子部25を接続する例について説明する。
【0042】
まず、前述したように、ワイヤハーネス23に絶縁カバー10を取り付ける。すなわち、ワイヤハーネス23の一部(電線接続部24)をハーネス保護部15に収容し、ワイヤハーネス23の端子部25を端子保護部13に収容する。
【0043】
この状態で、
図7(a)に示すように、端子挿入部8へバッテリー端子3を挿入して、端子保護部13をバッテリー端子3の上方(
図1のA方向)から被せる。前述したように、端子保護部13は、三面の側壁部17a、17b、17cを有するため、側壁部17a、17b、17cによってバッテリー端子3が周囲から覆われる。
【0044】
次に、
図7(b)に示すように、蓋部19を開いて開口した部位からボルト29を挿入し、ボルト29とナット27によって、ワイヤハーネス23の端子部25とバッテリー端子3とを接続する。
【0045】
最後に、
図7(c)に示すように、蓋部19を閉じることで、絶縁カバー10を用いたワイヤハーネス23とバッテリー端子3とが接続された、バッテリー端子接続構造を得ることができる。
【0046】
ここで、端子保護部13をバッテリー端子3に被せると、端子保護部13の側壁部17a、17b、17cは、バッテリー端子3の各面と接触する。このため、ボルト29をねじ込む際に、側壁部17a、17b、17cが端子部25の回転止めとして機能する。
【0047】
すなわち、端子部25は端子保護部13の内部に保持されており、また、端子保護部13がバッテリー端子3を囲むように配置される。ボルト29を締めこむと、端子部25には回転力が発生するが、端子保護部13はバッテリー端子3に対して回転することができず、また、端子部25も絶縁カバー10に対して内部で回転することができないため、ボルト29によって端子部25が回転することが無い。
【0048】
なお、側壁部とバッテリー端子3とを接触させて、ワイヤハーネス23の端子部25の回り止めとしての機能を発揮させるためには、端子保護部13は、少なくとも異なる方向の二面の側壁部を有すればよい。すなわち、端子保護部13をバッテリー端子3に被せた際に、少なくとも二面の側壁部がバッテリー端子3の異なる少なくとも二面と接触可能であればよい。
【0049】
例えば、
図8(a)は、絶縁カバー10を取り付ける前の状態のバッテリー1の側面図(
図8(b)のF矢視図)であり、
図8(b)は絶縁カバー10を取り付けた状態のバッテリー1の正面図(
図8(b)のE矢視図)である。なお、以下の図では、特に記載がない限りワイヤハーネスの図示を省略し、絶縁カバー10のみを示す。
図8に示す例では、絶縁カバー10がバッテリー端子3の正面側(
図1のB方向)から挿入されて、ハーネス保護部15が上方に向くように配置される。
【0050】
図示した向きで、絶縁カバー10をバッテリー端子3の正面側から挿入する場合には、端子保護部13の側壁部17bを省略すればよい、すなわち、端子保護部13は、対向する側壁部17a、17cの二面で構成される。この場合でも、端子保護部13をバッテリー端子3に被せると、端子保護部13の側壁部17a、17cの二面が、バッテリー端子3の異なる面と接触し、端子部25の回り止めとして機能させることができる。
【0051】
また、
図9(a)に示すように、絶縁カバー10をバッテリー1の正面から取り付ける場合でも、ハーネス保護部15を側方に向けて配置することもできる。この場合には、端子保護部13の側壁部17aを省略すればよい、すなわち、端子保護部13は、隣り合う側壁部17b、17cの二面で構成される。この場合でも、端子保護部13をバッテリー端子3に被せると、端子保護部13の側壁部17b、17cの二面が、バッテリー端子3の異なる面と接触し、端子部25の回り止めとして機能させることができる。
【0052】
また、上述した例では、ワイヤハーネス23がハーネス保護部15の向きに応じて、上向き又は左右方向に向けて引き出すことが可能であるが、他の方向に引き出す際には、屈曲した形状の絶縁カバー10を用いればよい。例えば、
図9(b)に示す例では、ハーネス保護部15と端子保護部13の間で略垂直に屈曲しているため、端子保護部13をバッテリー端子3の正面から挿入した場合でも、ワイヤハーネス23をバッテリー1の後方に引き出すことができる。
【0053】
このように、端子保護部13とハーネス保護部15との屈曲の有無や屈曲方向、端子保護部13のバッテリー端子3への取り付け方向を変えることで、任意の方向にワイヤハーネス23を引き出すことができる。
【0054】
以上、本実施形態によれば、絶縁カバー10が、複数面の側面を有する端子保護部13を有するため、絶縁カバー10をバッテリー端子3に被せた際に、バッテリー端子3の異なる少なくとも二面と接触して、端子部25の回り止めとして機能させることができる。このため、回り止めを有する特殊なワイヤハーネス端子を使用する必要がなく、ワイヤハーネス23の端子部25とバッテリー端子3との接続作業が容易である。
【0055】
また、端子保護部13に開閉可能な蓋部19を設けることで、絶縁カバー10をバッテリー端子3に被せた状態で、ボルト29の締めこみ作業を行うことができる。この際、蓋部19に係止爪31を設け、端子保護部13の内部の係止部33と係合させることで、蓋部19を確実に閉じた状態で保持することができる。
【0056】
また、ハーネス保護部15は、ワイヤハーネス23を保持するための爪部21を有するため、確実にワイヤハーネス23に絶縁カバー10を取り付けて固定することができる。このため、ワイヤハーネス23の例えば電線接続部24を保護することができる。
【0057】
なお、より確実にワイヤハーネス23をハーネス保護部15で保持して保護するためには、別途保護部材を用いてもよい。
図10(a)は、保護部材35を取り外した状態を示す図、
図10(b)は、保護部材35を取りつけた状態を示す図である。保護部材35は、例えば絶縁カバー10と同材質で構成され、ハーネス保護部15の開口部の形状に対応した外形の板状部材である。
【0058】
ワイヤハーネス23(図示省略)を絶縁カバー10に取り付けた状態で、さらに保護部材35を取り付けることで、ワイヤハーネス23の電線接続部24等を覆い、ワイヤハーネス23を保持することができる。
【0059】
なお、保護部材35とハーネス保護部15とは、ヒンジを介して開閉可能としてもよい。また、保護部材35とハーネス保護部15とを固定するための固定構造を有していてもよい。また、保護部材35を用いる場合には、爪部21を省略してもよい。
【0060】
また、任意の側壁部を一つ減らして、少なくとも二面の側壁部を有すれば、バッテリー端子3の異なる方向・向きで端子保護部13をバッテリー端子3に被せることができる。また、ハーネス保護部15と端子保護部13とを屈曲させて連結することで、ワイヤハーネス23の取り出し方向を任意の方向とすることができる。
【0061】
なお、端子保護部13とハーネス保護部15との間を略垂直に屈曲させるのではなく、端子保護部13とハーネス保護部15とを斜めに連結してもよい。例えば、
図11に示すように、ワイヤハーネス23が、オフセット型の端子部25を有する場合には、ハーネス保護部15と端子保護部13との間にテーパ形状を設けて、ワイヤハーネス23の電線接続部24と端子部25とのオフセットを吸収してもよい。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1………バッテリー
3………バッテリー端子
5………前面
7………上面
8………端子挿入部
9………背面
10……絶縁カバー
11………孔
13………端子保護部
15………ハーネス保護部
17a、17b、17c………側壁部
19………蓋部
21………爪部
23………ワイヤハーネス
24………電線接続部
25………端子部
27………ナット
29………ボルト
31………係止爪
33………係止部
35………保護部材