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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139383
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20241002BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61B17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050290
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠 健司
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160EE21
4C160MM33
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB28
4C267BB39
4C267CC09
4C267DD01
4C267GG05
4C267GG07
4C267GG22
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】スコアリング性および通過性の両方に優れたバルーンカテーテルを提供する。
【解決手段】本発明に係るバルーンカテーテル10は、体内に挿入されるカテーテルチューブ100と、カテーテルチューブ100の遠位端部に拡縮可能に取り付けられたバルーン200と、バルーン200の外周面上に設けられており、バルーン200が拡張した状態でバルーン200の径方向外側を指向する先端部410をそれぞれ有する複数のブレード部400と、を備えて構成されており、複数のブレード部400が、バルーン200の軸方向に対して離隔して配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入されるカテーテルチューブと、
前記カテーテルチューブの遠位端部に拡縮可能に取り付けられたバルーンと、
前記バルーンの外周面上に設けられており、前記バルーンが拡張した状態で前記バルーンの径方向外側を指向する先端部をそれぞれ有する複数のブレード部と、を備えて構成されており、
前記複数のブレード部が、前記バルーンの軸方向に対して離隔して配置されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記複数のブレード部が、前記バルーンの軸方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記複数のブレード部のそれぞれの前記先端部の上面に位置する先端面部が、前記バルーンの軸方向に延在していることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記複数のブレード部の前記先端部の上面に位置する先端面部が、前記バルーンの軸方向に沿う同一軸線上に配列されていることを特徴とする請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記複数のブレード部のそれぞれの前記先端部の上面に位置する先端面部が、前記バルーンの外周面から所定の高さに位置しながら前記バルーンの軸方向に沿って延在していることを特徴とする請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記バルーンの軸方向に延在し、前記複数のブレード部のそれぞれの基端部を固定する支持部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記複数のブレード部のそれぞれの前記基端部が、前記支持部材から前記先端部の方向へ脱落することを防止する抜止部を有することを特徴とする請求項6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記複数のブレード部のそれぞれの前記基端部に係止孔が前記抜止部として形成されており、前記支持部材が前記係止孔に入り込んで前記基端部を固定していることを特徴とする請求項7に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記複数のブレード部のそれぞれの前記基端部が、前記先端部より肉厚となる肉厚部を前記抜止部として有しており、前記支持部材が前記肉厚部を覆うように配置されていることを特徴とする請求項7に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記複数のブレード部と前記複数のブレード部を固定する前記支持部材とを含んで構成されたブレード構成部材が、前記バルーンの軸方向に延在するように前記バルーンの外周面上に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記ブレード構成部材が複数設けられており、複数の前記ブレード構成部材が、前記バルーンの周方向に等間隔となるように配置されていることを特徴とする請求項10に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関し、石灰化等によって硬化した血管を拡張するために用いられるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冠動脈内において狭窄部を拡張する手技として、経皮的冠動脈インターベーション(PCI:Percutaneous Coronary Intervention)が知られている。PCIは、橈骨動脈、大腿動脈、または上腕動脈等からバルーンカテーテルを挿入して冠動脈にアプローチし、バルーンを拡張させて狭窄部を押し広げることで冠動脈を拡張する手技である。PCIでは、例えば、バルーンの表面に金属製のブレードやワイヤが設けられたカッティングバルーンを用いて、石灰化等によって硬化した血管の病変部に切り込み(割)を入れながら冠動脈を拡張させる。PCIにより冠動脈を拡張した後は、例えば薬剤溶出性バルーンを用いた薬剤の塗布やステントの留置等が行われる。また、カッティングバルーンは、PCIのみならず、例えば末梢血管に対するインターベンションにおいても用いられている。
【0003】
下記の特許文献1には、カッティング面および基部を有する単一の連続するブレードを備えたカッティング部材がバルーンに取り付けられているカッティングバルーンカテーテルが記載されている。単一の連続するブレードのカッティング面は、内方を指向するスロットを有し、スロットの少なくとも一部は、可撓性を有する結合部材内に埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008-519654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カッティングバルーンカテーテルには、石灰化等によって硬化した血管の病変部に切り込みを入れる性能(スコアリング性)と、病変部までバルーンを円滑に挿入することを可能にする性能(通過性)の両立が求められる。すなわち、カッティングバルーンカテーテルは、病変部まで円滑に挿入可能となる柔軟性と、病変部に確実に切り込みを入れることが可能なブレードの硬さの両方が求められ、これらの特性を適切に調和させることが重要となる。
【0006】
上記の特許文献1においても、単一の連続するブレードにスロットを設けることで通過性の向上を図っている、しかしながら、長手方向に連続した単一のブレードは必ずしもバルーンに十分な柔軟性をもたらさず、より通過性に優れたバルーンカテーテルが望まれる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、スコアリング性および通過性の両方に優れたバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係るバルーンカテーテルは、体内に挿入されるカテーテルチューブと、前記カテーテルチューブの遠位端部に拡縮可能に取り付けられたバルーンと、前記バルーンの外周面上に設けられており、前記バルーンが拡張した状態で前記バルーンの径方向外側を指向する先端部をそれぞれ有する複数のブレード部と、を備えて構成されており、前記複数のブレード部が、前記バルーンの軸方向に対して離隔して配置されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、複数のブレード部の配置によってバルーンが拡張した際に石灰化等によって硬化した血管の病変部に切り込みを入れるスコアリング性が発揮されるとともに、隣接するブレード部の間に離隔領域を設けることで柔軟に湾曲可能となって血管の病変部まで挿入する際の通過性が確保され、スコアリング性および通過性の両方に優れたバルーンカテーテルを提供することができる。
【0010】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部が、前記バルーンの軸方向に沿って等間隔に配置されていてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、複数のブレード部を軸方向に沿って均等に配置することができ、複数のブレード部を配置した軸方向全体にわたって偏りなくスコアリング性や柔軟性を確保することができるようになる。
【0012】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部のそれぞれの前記先端部の上面に位置する先端面部が、前記バルーンの軸方向に延在していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、各ブレード部の先端部の上面に位置する先端面部がバルーンの軸方向に沿って延在するように配置されるので、硬化した血管の病変部に対してバルーンの拡張に適した方向に切り込みを入れることができる。
【0014】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部の前記先端部の上面に位置する先端面部が、前記バルーンの軸方向に沿う同一軸線上に配列されていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、複数のブレード部が軸方向に沿って一直線となるように配列されるので、直線状の切り込みを入れることができ、バルーンの拡張によって病変部に広範囲な切り込みを生じさせることができるようになる。
【0016】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部のそれぞれの前記先端部の上面に位置する先端面部が、前記バルーンの外周面から所定の高さに位置しながら前記バルーンの軸方向に沿って延在していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、各ブレード部の先端面部が、バルーンの外周面から所定の高さの位置に揃うようにバルーンの軸方向に沿って配列されるので、病変部に対して軸方向に沿って均一な切り込みを入れることができる。
【0018】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記バルーンの軸方向に延在し、前記複数のブレード部のそれぞれの基端部を固定する支持部材を備えていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、それぞれ独立している複数のブレード部を1つの支持部材によって支持固定することができる。
【0020】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部のそれぞれの前記基端部が、前記支持部材から前記先端部の方向へ脱落することを防止する抜止部を有していてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、抜止部によって各ブレード部が支持部材から脱落することを防止することができる。
【0022】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部のそれぞれの前記基端部に係止孔が前記抜止部として形成されており、前記支持部材が前記係止孔に入り込んで前記基端部を固定していてもよい。
【0023】
上記の構成によれば、抜止部を構成する係止孔に支持部材が入り込むことで基端部が支持部材に係止し、支持部材によるブレード部の固定力を向上させることができる。
【0024】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部のそれぞれの前記基端部が、前記先端部より肉厚となる肉厚部を前記抜止部として有しており、前記支持部材が前記肉厚部を覆うように配置されていてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、抜止部を構成する肉厚部が支持部材によって覆われることで基端部が支持部材に係止し、支持部材によるブレード部の固定力を向上させることができる。
【0026】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記複数のブレード部と前記複数のブレード部を固定する前記支持部材とを含んで構成されたブレード構成部材が、前記バルーンの軸方向に延在するように前記バルーンの外周面上に設けられていてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、複数のブレード部と支持部材とを含んで構成されたブレード構成部材をバルーンの外周面上に配置することで、バルーンカテーテルに対して、病変部に切り込みを入れるスコアリング性を容易に持たせることができるようになる。
【0028】
本発明に係るバルーンカテーテルは、上記の構成において、前記ブレード構成部材が複数設けられており、複数の前記ブレード構成部材が、前記バルーンの周方向に等間隔となるように配置されていてもよい。
【0029】
上記の構成によれば、複数のブレード構成部材をバルーンの軸心に対して対称となるように配置することができるので、病変部へのブレード部の位置合わせが容易となり、バルーンカテーテルの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルの構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルの遠位端部の構成を示す斜視図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材を示す透過斜視図である。
図6】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材を示す透過上面図である。
図7】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材を示す透過正面図である。
図8】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材を構成するブレード部の斜視図である。
図9】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材の断面図であり、(a)はブレード部の断面図、(b)はブレード部および支持部材の断面図である。
図10】本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルのブレード構成部材の派生例の断面図であり、(a)は第1派生例のブレード部の断面図、(b)は第2派生例のブレード部の断面図である。
図11】本発明の実施形態において、ブレード構成部材のブレード部の基になる金属板材を示す平面図、および金属板材の中央部の拡大平面図である。
図12】本発明の実施形態において、ブレード構成部材のブレード部の基になる金属板材を示す斜視図、および金属板材の中央部の拡大斜視図である。
図13】本発明の実施形態において、ブレード構成部材のブレード部の基になる金属板材の中央部の拡大平面図であり、金属板材に支持部材の基になる樹脂材料を一体化させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態におけるバルーンカテーテルについて説明する。本明細書では、バルーンカテーテルの使用者を基準として、患者の体内側を遠位側とし、使用者の手元側を近位側とする。本明細書において参照する図面は、実際の寸法に対して必ずしも正確な縮尺を有するものではなく、本発明に係る構成を模式的に示すために一部を誇張または簡略化したものである。
【0032】
まず、図1図3を参照しながら、本発明の実施形態におけるバルーンカテーテル10の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態におけるバルーンカテーテル10の構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態におけるバルーンカテーテル10の遠位端部の構成を示す斜視図である。図3は、図1のA-A断面図である。
【0033】
本発明の実施形態におけるバルーンカテーテル10は、血管内に挿入されて当該血管を内側から拡張する医療器具であり、例えば、PCIや末梢血管インターベンションにおいて使用することができる。本発明の実施形態におけるバルーンカテーテル10は、特にPCIや末梢血管インターベンションにおいて、石灰化等によって硬化した血管の病変部に切り込みを入れながら血管を拡張するために使用することができる。
【0034】
図1に示すように、バルーンカテーテル10は、先端チップ20、カテーテルチューブ100、バルーン200、コネクタ50を有している。図1ではカテーテルチューブ100の一部を破断して図示省略しているが、実際にはカテーテルチューブ100は繋がっており、バルーンカテーテル10は長尺な形状を有している。以下では、バルーンカテーテル10の延在方向を軸方向とし、バルーンカテーテル10の先端チップ20側を遠位側とし、バルーンカテーテル10のコネクタ50側を近位側として説明を行う。
【0035】
先端チップ20は、バルーンカテーテル10の最遠位端に位置する部材である。先端チップ20は筒状の形状を有しており、先端チップ20の遠位端は、血管内での良好な挿入性を実現するとともに血管壁を傷つけないようにするために、丸みを帯びた先細のテーパ状に形成されている。先端チップ20の内部には、貫通孔21が軸方向に形成されており、貫通孔21には内管101が挿入および固定されている。
【0036】
先端チップ20の材質は特に限定されず、例えばポリウレタン、ポリアミド等の樹脂やエラストマー等の高分子材料、ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。
【0037】
先端チップ20のサイズは特に限定されず、例えば、先端チップ20の軸方向の長さは0.1~10mmであり、外径は0.1~3mmである。貫通孔21には内管101が挿入されることから、貫通孔21の近位端の内径は、内管101の遠位端の外径と同等であることが好ましい。
【0038】
カテーテルチューブ100は、一例として、軸方向に延在するチューブ形状の内管(ガイドワイヤチューブ)101および外管(シャフト)102により構成されている。
【0039】
外管102の内径は内管101の外径より大きく、内管101が外管102の遠位端部(遠位側シャフト102d)の内腔に挿入された構成となっている。内管101の外周面の一部は外管102の内周面の一部に固定されていてもよい。また、バルーン200の拡張収縮部201の直胴部と円錐状部との遠位側境界位置および近位側境界位置をそれぞれ示すために、バルーン200の内部に挿通された内管101に金属製のX線透視用部材(X線造影用マーカー)を設けて、X線透視画像における造影性を付与してもよい。
【0040】
外管102の遠位端は、バルーン200の近位端部203近傍で終端してバルーン200内部の空間に開口している。一方、外管102の近位端は、コネクタ50の外管挿入口51に挿入されて外管固定部52に固定されている。
【0041】
外管102は、図1に示すように、軸方向の途中で近位側シャフト102pと遠位側シャフト102dとが接合面103で接合した構成となっている。換言すると、図1に示す外管102は、接合面103よりも近位側が近位側シャフト102pで構成されており、接合面103よりも遠位側が遠位側シャフト102dで構成されている。遠位側シャフト102dは、接合面103からバルーン200の近位端部203近傍まで延在しており、近位側シャフト102pは、接合面103からコネクタ50まで延在している。また、遠位側シャフト102dには、外管102の管壁を貫通する側孔105が形成されている。
【0042】
内管101は、遠位側シャフト102dの内腔に挿通されている。内管101の遠位端は、バルーン200内部の空間を通って先端チップ20の貫通孔21に挿入および固定されている。一方、内管101の近位端は、外管102の内腔から側孔105を通じて外部に露出しており、ガイドワイヤを挿通させるワイヤポートとして機能する。側孔105の開口と内管101の外周面とは、外管102の内部を流動する液体が外部に漏れないように封止されている。
【0043】
内管101の内側には第1ルーメン101Lが形成され、外管102の内側であって内管101の外側には第2ルーメン102Lが形成され、第1ルーメン101Lと第2ルーメン102Lとは相互に隔離されている。
【0044】
第1ルーメン101Lは、内管101の遠位側では先端チップ20の貫通孔21に連通しており、内管101の近位側では、側孔105から外部に露出した内管101の近位端で開口している。第1ルーメン101Lは、ガイドワイヤが挿通可能な通路として用いられる。
【0045】
バルーン200を拡張する血管内に配置する際には、先端チップ20の貫通孔21から第1ルーメン101Lを通じて内管101の近位端に向けてガイドワイヤを挿通させた状態でカテーテルチューブ100の遠位端を血管内に挿入し、ガイドワイヤを先行させながらカテーテルチューブ100の遠位端をガイドワイヤに沿って押し進めることで、バルーン200を血管内の目的とする位置に案内することができる。ガイドワイヤは、その外径が内管101の内径より小さく、内管101に挿通可能であるものが採用される。
【0046】
第2ルーメン102Lは、外管102の遠位側でバルーン200内の空間と連通しており、後述するようにコネクタ50の流体給排口53に連通している。第2ルーメン102Lは、流体給排口53を通じて流体を給排可能な給排路として用いられ、この給排路を通じて流体を給排することによってバルーン200を拡張および収縮(拡縮)させることが可能である。
【0047】
なお、ここでは、内管101の遠位端が外管102から突出してバルーン200の内部に延在する構成を一例として挙げているが、例えば内管101の遠位端と外管102の遠位端とが同一の位置で終端しており、内管101に別の管状部材を接続することで、当該別の管状部材がバルーン200の内部に延在する構成としてもよい。
【0048】
カテーテルチューブ100の材質は特に限定されないが可撓性を有するものであることが望ましく、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド共重合体等の樹脂材料や、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼等の金属などの金属材料を用いることができる。内管101および外管102の材質は同一であってもよく、異なっていてもよい。近位側シャフト102pおよび遠位側シャフト102dを接合して外管102を構成する場合、近位側シャフト102pには、例えばステンレス鋼等からなるハイポチューブを用いて軸方向に対する剛性(プッシャビリティ)を持たせ、遠位側シャフト102dには、例えば高分子成形チューブを用いて可撓性を持たせてもよい。また、内管101および外管102にコーティングを施してもよく、例えば、内管101の内周面に疎水性低摩擦コーティングを施し、外管102の外周面に、親水性潤滑コーティングを施してもよい。
【0049】
内管101のサイズは特に限定されず、例えば、内管101の軸方向の長さは200~2000mmであり、内径は0.1~2mmであり、肉厚は0.05~0.4mmである。外管102のサイズは特に限定されず、外管102の内径は内管101の外径より大きく設定され、例えば、外管102の軸方向の長さは200~2000mmであり、内径は0.5~4mmであり、肉厚は0.05~0.4mmである。
【0050】
バルーン200は、内部に流体が給排されることによって拡張および収縮可能な筒状の薄膜であり、カテーテルチューブ100の遠位端に配置されている。より具体的には、バルーン200は、流体が給排されることによって拡張および収縮可能な拡張収縮部201、拡張収縮部201の遠位側に位置する遠位端部202、拡張収縮部201の近位側に位置する近位端部203によって構成されている。バルーン200の拡張収縮部201は、例えば、長手方向中央部が円筒状に形成された直胴部を有するとともに、遠位端部202および近位端部203のそれぞれに向かって外径が小さくなるようにテーパ状に形成された円錐状部を有している。血管内でバルーン200を拡張した際、拡張収縮部201の長手方向中央部が血管の内壁に当接する。
【0051】
バルーン200の遠位端部202は内管101の遠位端近傍の外周面に接合されている。バルーン200の遠位端部202の外周面は先端チップ20の外周面と平らに揃っており、バルーン200の遠位端部202と先端チップ20との間には、段差の無い連続した面が形成されている。バルーン200の遠位端部202近傍では、バルーン200内部の空間は閉塞した状態となっている。一方、バルーン200の近位端部203は外管102の遠位側の外周面に接合されている。バルーン200の近位端部203近傍では、外管102の遠位端の開口を介してバルーン200内部の空間が第2ルーメン102Lに連通しており、第2ルーメン102Lおよび流体給排口53を通じてバルーン200内部の空間に流体が給排され、バルーン200が拡張および収縮できるようになっている。なお、バルーン200の遠位端部202および近位端部203を内管101および外管102に接合する方法は特に限定されず、例えば、接着剤を用いる接着、熱融着、溶剤による溶着、超音波溶着等が可能である。
【0052】
バルーンカテーテル10の使用時には、カテーテルチューブ100の遠位端が橈骨動脈、大腿動脈、上腕動脈等から血管内に挿入されて、バルーン200が血管内の病変部近傍に配置される。バルーン200は、内管101に沿うように折り畳まれた状態または内管101に巻き付けられた状態で血管内に挿入され、血管内の病変部近傍でバルーン200内に流体を導入することで拡張される。
【0053】
バルーン200の材質は特に限定されないが、耐屈曲疲労特性に優れるとともに非伸縮性材料であることが好ましく、一例として、ポリエーテルブロックアミド共重合体等の熱可塑性エラストマーやポリアミド等を用いることができる。バルーン200のサイズは特に限定されず、例えば、冠動脈(通常、内径1~4mm程度)等の拡張すべき血管まで挿入可能であって、その血管を拡張可能とするものであればよい。例えば、バルーン200の外径(拡張時)は1~10mmであり、軸方向の長さは4~40mmである。
【0054】
コネクタ50は、外管挿入口51および流体給排口53の2箇所に開口部を有する内腔を備えた成形体であり、外管挿入口51から挿入された外管102を固定する外管固定部52を備えている。
【0055】
外管挿入口51から挿入された外管102の近位端(近位側シャフト102pの近位端)は、コネクタ50の内腔で開口しており、流体給排口53と連通している。すなわち、流体給排口53は第2ルーメン102Lと連通している。
【0056】
流体給排口53は、不図示のインデフレータ等に接続され、第2ルーメン102Lを通じてバルーン200内部の空間へ流体を供給し、バルーン200を拡張できるようになっている。血管内の病変部近傍にバルーン200を配置した状態でバルーン200の拡張を行うことで、後述するブレード部400を病変部に押し当てながら血管を内側から拡張させることができる。バルーン200の内部に導入される流体は特に限定されないが、通常は造影剤が用いられる。
【0057】
コネクタ50の材質は特に限定されず、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の熱可塑性の樹脂材料を用いることができ、金型を用いて射出成形によりコネクタ50を作製してもよい。コネクタ50のサイズ(軸方向の長さ)は特に限定されず、例えば10~150mmである。
【0058】
さらに、バルーンカテーテル10はブレード構成部材300を有している。ブレード構成部材300は、血管内でバルーン200を拡張した際に、石灰化等によって硬化した血管の病変部に切り込みを入れる機能を有している。
【0059】
ブレード構成部材300は、複数のブレード部400と、ブレード部400を支持する支持部材500と、により構成されており、全体として細長い形状を有している。ブレード構成部材300の詳細については後述する。
【0060】
ブレード構成部材300は、バルーン200の外周面に取り付けられており、特に、図2および図3に示すように、バルーン200の拡張収縮部201の外周面に取り付けられることが好ましい。ブレード構成部材300には複数のブレード部400が配置されているので、1つのブレード構成部材300をバルーン200の外周面に取り付けるだけで、それぞれ独立している複数のブレード部400をバルーン200の外周面に配置することができるようになっている。ブレード構成部材300をバルーン200に取り付ける方法は特に限定されないが、例えば、支持部材500の底面部502(図9(b)参照)をバルーン200の外周面に接着してもよい。
【0061】
バルーン200の外周面には、ブレード構成部材300を1つのみ取り付けてもよく、複数のブレード構成部材300を取り付けてもよい。
【0062】
バルーン200の外周面に複数のブレード構成部材300を取り付ける場合には、血管の内壁に対して偏りなく当接するように、複数のブレード構成部材300をバルーン200の周方向に等間隔となるように取り付けてもよい。例えば、N個(Nは2以上)のブレード構成部材300をバルーン200の外周面に取り付ける場合には、N個(Nは2以上)のブレード構成部材300をバルーン200の周方向に沿って(360°/N)間隔となるように取り付けてもよい。これにより、複数のブレード構成部材300をバルーン200の軸心に対して対称となるように配置することができるので、病変部へのブレード構成部材300の位置合わせが容易となる。図2および図3では、3つのブレード構成部材300がバルーン200の周方向に沿って120°間隔となるように取り付けられている。
【0063】
また、本実施形態では、図2および図3に示すように、ブレード構成部材300は、バルーン200の軸方向に延在するように(ブレード構成部材300の長手方向がバルーン200の軸方向と一致するように)バルーン200の外周面に取り付けられることが好ましい。これにより、バルーン200の軸方向に沿って病変部に切り込みを入れることができる。ただし、ブレード構成部材300を斜め方向に、すなわちバルーン200の軸心である内管101に対して螺旋状に巻回するように取り付けてもよい。また、ブレード構成部材300の長手方向を短くして、複数のブレード構成部材300が同一軸方向に沿って直列に配列してもよく、互い違い(千鳥状)またはランダムに配列してもよい。
【0064】
さらに図4図10を参照しながら、本実施形態におけるバルーンカテーテル10のブレード構成部材300について詳細に説明する。
【0065】
図4は、本実施形態におけるバルーンカテーテル10のブレード構成部材300を示す斜視図である。図5図7は、本実施形態におけるバルーンカテーテル10のブレード構成部材300を示す透過斜視図、透過上面図、および透過正面図である。図5図7では支持部材500を透明化し、支持部材500内部に埋設されているブレード部400の基端部420の状態が図示されている。
【0066】
図8は、本実施形態におけるバルーンカテーテル10のブレード構成部材300を構成するブレード部400の斜視図である。図9は、本実施形態におけるバルーンカテーテル10のブレード構成部材300の断面図であり、(a)はブレード部400の断面図、(b)はブレード部400および支持部材500の断面図である。図10は、本実施形態におけるバルーンカテーテル10のブレード構成部材300の派生例の断面図であり、(a)は第1派生例のブレード部400の断面図、(b)は第2派生例のブレード部400の断面図である。
【0067】
ブレード構成部材300は、図4図7に示すように、複数のブレード部400と、ブレード部400を支持する支持部材500と、により構成されている。1つのブレード構成部材300に設けるブレード部400の数は特に限定されないが、本実施形態では、1つのブレード構成部材300が13個のブレード部400を有するように構成されている。
【0068】
複数のブレード部400は、ブレード構成部材300の長手方向に沿って互いに離隔して配置されている。これにより、ブレード構成部材300がバルーン200の外周面に取り付けられた場合には、複数のブレード部400は、バルーン200の軸方向に対して離隔して配置される。ブレード部400は、例えばステンレス鋼またはチタン等の金属材料によって構成されている。
【0069】
ブレード部400の下側は支持部材500に埋設されており、支持部材500に支持固定されている。また、ブレード部400の上側は支持部材500から突出するように配置されている。本明細書では、ブレード部400において、支持部材500から突出している部分を先端部410とし、支持部材500に埋設されている部分を基端部420という。ブレード構成部材300がバルーン200の外周面に取り付けられた場合、ブレード部400の先端部410は、拡張したバルーン200の径方向外側を指向するように配置されている。また、ブレード部400は、血管の内壁に対して先端部410が当接する面積が大きくなるように、図7に示すように正面から見た場合に、基端部420の軸方向の長さよりも先端部410の軸方向の長さが長い等脚台形状に形成されている。
【0070】
ブレード部400の大きさは特に限定されず、支持部材500の大きさに適合して、支持部材500から突出した先端部410と、支持部材500に埋設された基端部420とを有するようにすればよい。各ブレード部400の先端部410の長手方向(バルーン200の軸方向)の長さL1は例えば0.2~2mmである(図7参照)。また、各ブレード部400の先端部410の幅L2は例えば0.01~0.2mmであり、各ブレード部400の先端部410における支持部材500の上面部501からの高さL3は例えば0.02~0.4mmである(図9(b)参照)。また、本実施形態では複数のブレード部400は等間隔に配置されており、隣接するブレード部400の離隔距離L4は例えば0.01~0.5mmである(図7参照)。
【0071】
支持部材500は、ブレード構成部材300の長手方向に延在する外形を形成し、それぞれ独立している複数のブレード部400のそれぞれの基端部420を固定する部材である。すなわち、1つの支持部材500により、それぞれ独立している複数のブレード部400を支持固定することができるようになっている。支持部材500は、その角部が面取りされて滑らかな形状となっていることが好ましい。支持部材500は、可撓性および柔軟性を備えて構成されることが好ましく、支持部材500の材料としては、一例として、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド等の樹脂材料を用いることができる。
【0072】
支持部材500の長手方向の長さ(すなわち、ブレード構成部材300の長手方向の長さ)は特に限定されないが、バルーン200の拡張収縮部201の範囲内に収まる長さとすることが好ましく、支持部材500の長手方向の長さL5は例えば3~18mmである(図7参照)。
【0073】
支持部材500の形状や幅および高さの長さも特に限定されず、バルーン200の拡張収縮部201の拡張および収縮を妨げないものとすることが好ましい。本実施形態では、図9に示すように、支持部材500の断面は上面部501の幅よりも底面部502の幅が長い等脚台形状に形成されており、支持部材500の底面部502をバルーン200の拡張収縮部201の外周面に安定して取り付けることができるようになっている。支持部材500の上面部501の幅L6は例えば0.02~0.3mm、支持部材500の底面部502の幅L7は例えば0.03~0.5mm、支持部材500の高さL8は例えば0.05~1mmである(図9(b)参照)。
【0074】
このように、本実施形態では、複数のブレード部400はバルーン200の軸方向に対して離隔している。金属等により構成された硬質なブレード部400の間の離隔領域には、樹脂材料等により構成された柔軟性を有する支持部材500が介在している。換言すると、ブレード構成部材300は、硬質なブレード部400を節として、隣接する節間が柔軟な支持部材500で繋がった多節構造となっている。これにより、ブレード構成部材300は、その長手方向に対して垂直な方向に柔軟に湾曲可能となっており、バルーン200の外周面に取り付けられた場合であっても、バルーンカテーテル10の遠位端部の柔軟性を損なうことなく、柔軟に湾曲可能となって血管の病変部まで挿入する際の通過性を確保することができる。
【0075】
また、ブレード構成部材300に設けられたブレード部400の先端部410は、バルーン200が拡張した際にバルーン200の径方向外側を指向するように配置されているので、バルーン200が拡張した際にブレード部400の先端部410が石灰化等によって硬化した血管の病変部に押し当てられ、それによって病変部に切り込みを入れることができるようになっているため、スコアリング性を発揮することができる。
【0076】
ブレード構成部材300に設けられた複数のブレード部400のそれぞれの離隔距離は、バルーン200およびブレード構成部材300の長手方向の長さやブレード部400の数および軸方向の長さに応じて適宜設定することができる。隣接するブレード部400の間の離隔距離は、それぞれ異なっていてもよいが、ブレード構成部材300の長手方向に沿って等間隔に配置されることが好ましい。隣接するブレード部400を等間隔に配置することで、複数のブレード部400を軸方向に沿って均等に配置することができ、複数のブレード部400を配置した軸方向全体にわたって偏りなくスコアリング性や柔軟性を確保することができるようになる。
【0077】
以下、図8および図9を参照しながら、ブレード部400の構成について詳細に説明する。ブレード部400は、全体として平坦な板状に形成されており、主面部411を有している。ブレード部400の主面部411は、ブレード部400を構成する大きな面であり、表面と反対側の裏面とにより構成されている。また、ブレード部400は主面部411の周りに側面部を有している。支持部材500から突出する先端部410の上面には、側面部の1つである先端面部412が形成されている。
【0078】
各ブレード部400の先端面部412は、その長手方向がブレード構成部材300の長手方向に沿って延在するように配置されることが好ましい。この場合、ブレード構成部材300の長手方向がバルーン200の軸方向と一致するようにブレード構成部材300をバルーン200の外周面に取り付けることで、各ブレード部400の先端面部412をバルーン200の軸方向に沿って配置することができ、硬化した血管の病変部に対してバルーン200の拡張に適した方向に切り込みを入れることができるようになる。
【0079】
また、各ブレード部400の先端面部412は、バルーン200の軸方向に沿う同一軸線上に配列されることが好ましい。すなわち、複数のブレード部400の先端面部412が軸方向に沿って一直線となるように配列されることが好ましい。これにより、病変部に対して直線状の切り込みを入れることができ、バルーン200の拡張によって病変部に広範囲な切り込みを生じさせることができるようになる。なお、例えば、各ブレード部400の先端面部412を周方向の異なる位置に交互(千鳥状)に配置して、複数のブレード部400の先端面部412が軸方向に沿って2列以上の直線となるように配列されてもよい。
【0080】
また、各ブレード部400の先端面部412は、バルーン200の外周面から所定の高さに位置しながらバルーン200の軸方向に沿って延在することが好ましい。この構成は、すべてのブレード部400において、先端部410における支持部材500の上面部501からの高さL3(図9(b)参照)を同一とすることで実現できる。これにより、各ブレード部400の先端面部412が、バルーン200の外周面から所定の高さの位置に揃うようにバルーン200の軸方向に沿って配列されるので、硬化した血管の病変部に対して軸方向に沿って均一な切り込みを入れることができるようになる。
【0081】
また、支持部材500に埋設される基端部420の中央には、主面部411を貫通する係止孔440が形成されている。また、支持部材500に埋設される基端部420には、主面部411に対して略垂直な段差面を形成する段差部421が設けられている。この段差部421により、基端部420の下側は先端部410よりも肉厚となった肉厚部450を有している。
【0082】
支持部材500に埋設される基端部420は、支持部材500から先端部410の方向へ脱落することを防止する抜止部430を有していてもよい。本実施形態では、抜止部430の一例として係止孔440および肉厚部450が設けられている。
【0083】
図9(b)に示すように、ブレード部400の基端部420が支持部材500に埋設された状態において、基端部420に形成された係止孔440には、支持部材500が充填された状態となっている。このように、係止孔440に支持部材500が入り込むことで基端部420が支持部材500に係止するので、支持部材500によるブレード部400の固定力を向上させることができ、ブレード部400が支持部材500から脱落することを防止することができる。なお、係止孔440は、ブレード部400を軽量化するための肉抜きとしての役割も有している。
【0084】
図9(b)に示すように、ブレード部400の基端部420が支持部材500に埋設された状態において、基端部420に形成された肉厚部450は、支持部材500により覆われている。基端部420の肉厚部450は、先端部410より肉厚となっているので、先端部410の突出により形成されている支持部材500の上面部501の開口よりも肉厚部450が大きいため、肉厚部450が開口から抜け出しにくくなっている。これにより、基端部420が支持部材500に係止するので、支持部材500によるブレード部400の固定力を向上させることができ、ブレード部400が支持部材500から脱落することを防止することができる。
【0085】
なお、ブレード部400の先端部410の上面である先端面部412を適宜加工してスコアリング性をより向上させてもよい。例えば、図10(a)および図10(b)に示すように、先端側に向かって先細となるように先端面部412を加工した場合には、バルーン200が拡張した際に病変部に対する応力を集中させることができ、病変部に切り込みを生じさせやすくなる。
【0086】
次に、図11図13を参照しながら、本実施形態におけるブレード構成部材300の製造方法について説明する。ただし、以下のブレード構成部材300の製造方法は好適な一例であり、この製造方法に限定されるものではない。
【0087】
図11は、本発明の実施形態において、ブレード構成部材300のブレード部400の基になる金属板材600を示す平面図、および金属板材600の中央部の拡大平面図である。図12は、本発明の実施形態において、ブレード構成部材300のブレード部400の基になる金属板材600を示す斜視図、および金属板材600の中央部の拡大斜視図である。図13は、本発明の実施形態において、ブレード構成部材300のブレード部400の基になる金属板材600の中央部の拡大平面図であり、金属板材600に支持部材500の基になる樹脂材料を一体化させた状態を示す図である。
【0088】
ブレード構成部材300は、金属からなるブレード部400と、樹脂材料からなる支持部材500と、により構成された金属樹脂複合体であり、例えばインサート成形によって製造することができる。
【0089】
ブレード構成部材300を製造する際、まず、ブレード構成部材300のブレード部400の基になる金属板材600を準備する。ブレード部400の基になる金属板材600は、プレス加工やエッチング加工等により所望の形状となるように形成される。
【0090】
ブレード部400の基になる金属板材600は、図11および図12に示すように、基材部601の中央部分がくり抜かれており、そのくり抜かれた中央部分に複数の櫛歯部610が形成されている。また、金属板材600の基材部601には、インサート成形時に使用する位置決め孔602が形成されている。
【0091】
櫛歯部610の基端611は基材部601に繋がっており、櫛歯部610の先端612は、例えば係止孔440等が形成されており、ブレード部400の形状に加工されている。なお、櫛歯部610の先端612側がブレード部400の基端部420となるため、櫛歯部610の先端612側は肉厚となっている(肉厚部450に対応)。櫛歯部610の数はブレード部400と同じ数だけ設けられており、図11および図12では、13個のブレード部400を設けるために、同一形状の13本の櫛歯部610が形成されている。
【0092】
次いで、上記の金属板材600を使用してインサート成形を行う。インサート成形では、金属板材600をインサート部品として金型にセットした状態で、支持部材500の基になる溶融した樹脂材料を金型に注入して硬化させる。ここで使用する金型は支持部材500の形状に型取られており、抜き勾配やシボ加工を施すものであってもよい。金型に注入した樹脂材料は、複数の櫛歯部610の先端612を覆った状態で硬化して、複数の櫛歯部610の先端612に支持部材500が形成される。
【0093】
次いで、図13に示すように、複数の櫛歯部610を横断するように切断する。具体的には、複数の櫛歯部610の支持部材500近傍(一点鎖線C)で複数の櫛歯部610を切断する。複数の櫛歯部610の先端612は複数のブレード部400となる。その後、基材部601から切り離した金属樹脂複合体に対してバリ取り等の加工を施したり、必要に応じてブレード部400の先端面部412の形状を加工したりすることで、ブレード構成部材300の製造が完了する。
【0094】
上記の製造方法によれば、複数の独立したブレード部400が支持部材500に埋設されたブレード構成部材300を少ない工程数で容易に製造することができ、所望のブレード構成部材300を確実かつ大量に製造することができるようになる。
【0095】
以下、上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10の作用について説明する。
【0096】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、体内に挿入されるカテーテルチューブ100と、カテーテルチューブ100の遠位端部に拡縮可能に取り付けられたバルーン200と、バルーン200の外周面上に設けられており、バルーン200が拡張した状態でバルーン200の径方向外側を指向する先端部410をそれぞれ有する複数のブレード部400と、を備えて構成されており、複数のブレード部400が、バルーン200の軸方向に対して離隔して配置されていることを特徴とする。
【0097】
上記の構成によれば、複数のブレード部400の配置によってバルーン200が拡張した際に石灰化等によって硬化した血管の病変部に切り込みを入れるスコアリング性が発揮されるとともに、隣接するブレード部400の間に離隔領域を設けることで柔軟に湾曲可能となって血管の病変部まで挿入する際の通過性が確保され、スコアリング性および通過性の両方に優れたバルーンカテーテル10を提供することができる。
【0098】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400が、バルーン200の軸方向に沿って等間隔に配置されていてもよい。
【0099】
上記の構成によれば、複数のブレード部400を軸方向に沿って均等に配置することができ、複数のブレード部400を配置した軸方向全体にわたって偏りなくスコアリング性や柔軟性を確保することができるようになる。
【0100】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400のそれぞれの先端部410の上面に位置する先端面部412が、バルーン200の軸方向に延在していてもよい。
【0101】
上記の構成によれば、各ブレード部400の先端部410の上面に位置する先端面部412がバルーン200の軸方向に沿って延在するように配置されるので、硬化した血管の病変部に対してバルーン200の拡張に適した方向に切り込みを入れることができる。
【0102】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400の先端部410の上面に位置する先端面部412が、バルーン200の軸方向に沿う同一軸線上に配列されていてもよい。
【0103】
上記の構成によれば、複数のブレード部400が軸方向に沿って一直線となるように配列されるので、直線状の切り込みを入れることができ、バルーン200の拡張によって病変部に広範囲な切り込みを生じさせることができるようになる。
【0104】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400のそれぞれの先端部410の上面に位置する先端面部412が、バルーン200の外周面から所定の高さに位置しながらバルーン200の軸方向に沿って延在していてもよい。
【0105】
上記の構成によれば、各ブレード部400の先端面部412が、バルーン200の外周面から所定の高さの位置に揃うようにバルーン200の軸方向に沿って配列されるので、病変部に対して軸方向に沿って均一な切り込みを入れることができる。
【0106】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、バルーン200の軸方向に延在し、複数のブレード部400のそれぞれの基端部420を固定する支持部材500を備えていてもよい。
【0107】
上記の構成によれば、それぞれ独立している複数のブレード部400を1つの支持部材500によって支持固定することができる。
【0108】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400のそれぞれの基端部420が、支持部材500から先端部410の方向へ脱落することを防止する抜止部430を有していてもよい。
【0109】
上記の構成によれば、抜止部430によって各ブレード部400が支持部材500から脱落することを防止することができる。
【0110】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400のそれぞれの基端部420に係止孔440が抜止部430として形成されており、支持部材500が係止孔440に入り込んで基端部420を固定していてもよい。
【0111】
上記の構成によれば、抜止部430を構成する係止孔440に支持部材500が入り込むことで基端部420が支持部材500に係止し、支持部材500によるブレード部400の固定力を向上させることができる。
【0112】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400のそれぞれの基端部420が、先端部410より肉厚となる肉厚部450を抜止部430として有しており、支持部材500が肉厚部450を覆うように配置されていてもよい。
【0113】
上記の構成によれば、抜止部430を構成する肉厚部450が支持部材500によって覆われることで基端部420が支持部材500に係止し、支持部材500によるブレード部400の固定力を向上させることができる。
【0114】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、複数のブレード部400と複数のブレード部400を固定する支持部材500とを含んで構成されたブレード構成部材300が、バルーン200の軸方向に延在するようにバルーン200の外周面上に設けられていてもよい。
【0115】
上記の構成によれば、複数のブレード部400と支持部材500とを含んで構成されたブレード構成部材300をバルーン200の外周面上に配置することで、バルーンカテーテル10に対して、病変部に切り込みを入れるスコアリング性を容易に持たせることができるようになる。
【0116】
上述した実施形態におけるバルーンカテーテル10は、ブレード構成部材300が複数設けられており、複数のブレード構成部材300が、バルーン200の周方向に等間隔となるように配置されていてもよい。
【0117】
上記の構成によれば、複数のブレード構成部材300をバルーン200の軸心に対して対称となるように配置することができるので、病変部へのブレード部400の位置合わせが容易となり、バルーンカテーテル10の操作性を向上させることができる。
【0118】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであり、本発明を限定するものではない。上述した実施形態に開示された各構成要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。また、実施形態で説明した各構成要素を適宜組み合わせて得られる構成も本発明に包含される。
【符号の説明】
【0119】
10 バルーンカテーテル
20 先端チップ
21 貫通孔
50 コネクタ
51 外管挿入口
52 外管固定部
53 流体給排口
100 カテーテルチューブ
101 内管(ガイドワイヤチューブ)
101L 第1ルーメン
102 外管(シャフト)
102d 遠位側シャフト
102p 近位側シャフト
102L 第2ルーメン
103 接合面
105 側孔
200 バルーン
201 拡張収縮部
202 遠位端部
203 近位端部
300 ブレード構成部材
400 ブレード部
410 先端部
411 主面部
412 先端面部
420 基端部
421 段差部
430 抜止部
440 係止孔
450 肉厚部
500 支持部材
501 上面部
502 底面部
600 金属板材
601 基材部
602 位置決め孔
610 櫛歯部
611 基端
612 先端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13