(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139440
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】クランプ、及びクランプ付きワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20241002BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20241002BHJP
F16L 3/10 20060101ALI20241002BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F16B2/08 U
F16B19/00 E
F16L3/10 A
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050380
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】上野 清一郎
【テーマコード(参考)】
3H023
3J022
3J036
5G363
【Fターム(参考)】
3H023AA04
3H023AB01
3H023AC09
3H023AC21
3H023AC64
3H023AD08
3H023AE07
3H023AE11
3J022DA12
3J022DA30
3J022EA03
3J022EB02
3J022EC02
3J022ED02
3J022FA05
3J022FB08
3J022FB13
3J022HA01
3J022HA05
3J036AA01
3J036BA01
3J036CA04
3J036DA12
3J036DB05
3J036EA06
5G363AA12
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DA16
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】被取付部Pに対する組付け性を向上して、電磁シールド管Tを被取付部Pに取り付けるクランプ10及びクランプ付きワイヤーハーネス1を提供することを目的とする。
【解決手段】長尺形状の電磁シールド管Tを被取付部Pに取り付けるためのクランプ10であって、電磁シールド管Tにおける長手方向Xの所定箇所を保持する保持部材11と、長手方向Xへ移動可能な状態で保持部材11に支持されるとともに、被取付部Pの貫通孔Paに挿着する挿着部材13とが備えられたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状の長尺部材を被取付部に取り付けるためのクランプであって、
前記長尺部材における長手方向の所定箇所を保持する保持部材と、
前記長手方向へ移動可能な状態で前記保持部材に支持されるとともに、前記被取付部の貫通孔に挿着する挿着部材とが備えられた
クランプ。
【請求項2】
前記挿着部材とは別体で前記長手方向に延びるとともに、前記長手方向の端部側が前記保持部材に保持される軸体が備えられ、
該軸体は、前記挿着部材に挿通される構成である
請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記長手方向に直交する方向を直交方向として、
前記挿着部材は、
前記被取付部の前記貫通孔に挿着するアンカー部と、
該アンカー部に対して前記直交方向にスライド移動可能に取り付けられるとともに、前記軸体が挿通される挿通孔を有する軸支部とが備えられ、
該軸支部は、
前記挿通孔から前記直交方向に沿ってスリット状に開口したスリット開口が設けられ、
前記アンカー部は、
前記スリット開口を挟んで対向配置され、前記軸支部の前記直交方向への移動に伴って前記軸支部を挟持するとともに、前記軸支部に係止する係止脚部が備えられた
請求項2に記載のクランプ。
【請求項4】
前記軸体は、前記保持部材に対して圧入される構成である
請求項2に記載のクランプ。
【請求項5】
前記保持部材は、前記軸体の端部側を挟持する基部及び押え部が備えられた
請求項2に記載のクランプ。
【請求項6】
前記挿着部材は、
前記軸体に軸支された状態において、前記軸体の近傍が前記保持部材に接触する外形形状に形成された
請求項2に記載のクランプ。
【請求項7】
前記保持部材は、
前記長手方向に直交する直交方向に貫通した開口で、前記軸体を配置する収容空間が設けられ、
前記挿着部材は、
前記収容空間の前記軸体に軸支された状態において、前記軸体の近傍が前記収容空間を介して前記長尺部材に接触する外形形状に形成された
請求項2に記載のクランプ。
【請求項8】
前記挿着部材は、
前記長手方向の両方向へ一体的に延設されるとともに、前記長手方向の端部側が前記保持部材に回転可能に支持された軸体が備えられた
請求項1に記載のクランプ。
【請求項9】
前記保持部材は、前記軸体の端部を収容する軸収容部が備えられ、
前記軸収容部は、
前記軸体の端部が遊嵌する一対の遊嵌部分と、前記軸体の端部が嵌合によって固定される一対の嵌合部分とを、前記軸収容部の基部から前記嵌合部分、前記遊嵌部分の順に並設して備えた
請求項8に記載のクランプ。
【請求項10】
前記保持部材は、前記軸体の端部を挟持する基部及び押え部が備えられた
請求項8に記載のクランプ。
【請求項11】
前記保持部材は、前記軸体の端部を収容する軸収容部が備えられ、
前記軸収容部は、
前記長手方向に所定間隔を隔てた位置に、周面に沿って立設された複数の突起部分が備えられ、
前記軸体は、
前記軸収容部に収容される部分に前記突起部分が嵌合する溝部分が備えられた
請求項8に記載のクランプ。
【請求項12】
前記軸体は、前記長手方向に延びる断面多角形状の柱状体に形成され、
前記軸収容部の内面は、前記軸体が嵌合する断面多角形状に形成された
請求項11に記載のクランプ。
【請求項13】
複数の電線を束ねたワイヤーハーネスと、
請求項1から請求項12のいずれか1つのクランプとが備えられ、
前記ワイヤーハーネスが前記クランプに保持された
クランプ付きワイヤーハーネス。
【請求項14】
複数の電線を束ねたワイヤーハーネスと、
該ワイヤーハーネスを挿通した管体と、
請求項1から請求項12のいずれか1つのクランプとが備えられ、
前記管体が前記クランプに保持された
クランプ付きワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばワイヤーハーネスを挿通した電磁シールド管を車体の被取付部に固定するようなクランプ及びクランプ付きワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両では、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスを、配索経路の周辺環境に応じた材質の管体に挿通固定し、管体の長手方向における所定箇所を、クランプを用いて車体の被取付部に取り付けることで、ワイヤーハーネスの位置規制とワイヤーハーネスの保護とを両立している。
【0003】
具体的には、ワイヤーハーネスを車室内に配索する場合、ワイヤーハーネスをコルゲートチューブに挿通することで、周辺部品との接触からワイヤーハーネスを保護している。
また、ワイヤーハーネスを車室外に配索する場合、ワイヤーハーネスを導電性を有する管体で構成された電磁シールド管に挿通することで、飛び石などからワイヤーハーネスを保護している。
【0004】
このような管体の所定箇所を車体の被取付部に取り付けるクランプとして、例えば特許文献1には、ワイヤーハーネスの所定箇所に巻き付けるバンド部と、被取付部の貫通孔に挿着するアンカー部とが一体形成されたバンドクランプが開示されている。
【0005】
ところで、ワイヤーハーネスや管体のような長尺部材の場合、長手方向における複数の所定箇所をそれぞれクランプで保持し、各クランプを車体の被取付部に順番に取り付けることで、長尺部材を所望される配索経路に配索している。
【0006】
例えば長尺部材の両端近傍を、それぞれクランプを介して被取付部に取り付ける場合、一方のクランプを車体の被取付部に挿着したのち、他方のクランプを別の被取付部に挿着して配索している。
【0007】
この際、長手方向における所定箇所の位置及び被取付部の位置のバラツキによって、他方のクランプに保持された長尺部材の所定箇所が、被取付部の貫通孔に対して長手方向に位置ズレすることがある。
【0008】
この場合、貫通孔の貫通方向に対して交差する方向からアンカー部を貫通孔に挿着することになるため、被取付部にクランプを取り付け難いだけでなく、長尺部材を安定した状態で被取付部に取り付けられないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、被取付部に対する組付け性を向上して、長尺部材を被取付部に取り付けるクランプ及びクランプ付きワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、長尺形状の長尺部材を被取付部に取り付けるためのクランプであって、前記長尺部材における長手方向の所定箇所を保持する保持部材と、前記長手方向へ移動可能な状態で前記保持部材に支持されるとともに、前記被取付部の貫通孔に挿着する挿着部材とが備えられたことを特徴とする。
【0012】
またこの発明は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスと、上述のクランプとが備えられ、前記ワイヤーハーネスが前記クランプに保持されたクランプ付きワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0013】
またこの発明は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスと、該ワイヤーハーネスを挿通した管体と、上述のクランプとが備えられ、前記管体が前記クランプに保持されたクランプ付きワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0014】
上記長尺部材とは、長手方向における複数の所定箇所がクランプで保持される部材であって、例えばワイヤーハーネス、あるいはワイヤーハーネスを挿通するコルゲートチューブや導電性を有する電磁シールド管などの管体などのことをいう。
【0015】
この発明によれば、保持部材に対して挿着部材が長手方向に移動するため、長手方向における挿着部材の位置を変更することができる。このため、クランプは、貫通孔に対して挿着部材を対向配置させることができる。
【0016】
これにより、クランプは、長尺部材の所定箇所が被取付部の貫通孔に対して長手方向に位置ズレした場合であっても、被取付部の貫通孔に挿着部材をスムーズに挿着することができる。
【0017】
よって、クランプ及びクランプを用いたクランプ付きワイヤーハーネスは、挿着部材が保持部材に固定されたクランプに比べて被取付部に対する組付け性を向上して、長尺部材を被取付部に取り付けることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記挿着部材とは別体で前記長手方向に延びるとともに、前記長手方向の端部側が前記保持部材に保持される軸体が備えられ、該軸体は、前記挿着部材に挿通される構成であってもよい。
この構成よれば、保持部材に保持された軸体に対して挿着部材を長手方向に移動させることができる。
【0019】
さらに、挿着部材が軸体に軸支されるため、クランプは、軸体を軸中心とした挿着部材の回転位置を変更することができる。このため、クランプは、軸体を軸中心とする径方向に沿った挿着部材の向きを、被取付部における貫通孔の貫通方向に略一致させることができる。
【0020】
これにより、クランプは、貫通孔に対して挿着部材を確実に対向配置できるため、被取付部の貫通孔に挿着部材をよりスムーズに挿着することができる。このため、クランプは、被取付部に対する組付け性をより向上することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記長手方向に直交する方向を直交方向として、前記挿着部材は、前記被取付部の前記貫通孔に挿着するアンカー部と、該アンカー部に対して前記直交方向にスライド移動可能に取り付けられるとともに、前記軸体が挿通される挿通孔を有する軸支部とが備えられ、該軸支部は、前記挿通孔から前記直交方向に沿ってスリット状に開口したスリット開口が設けられ、前記アンカー部は、前記スリット開口を挟んで対向配置され、前記軸支部の前記直交方向への移動に伴って前記軸支部を挟持するとともに、前記軸支部に係止する係止脚部が備えられてもよい。
【0022】
この構成によれば、被取付部への挿着部材の挿着と略同時に、非固定状態の挿着部材を保持部材に固定することができる。
具体的には、挿着部材の先端が被取付部に接触した状態で、保持部材を被取付部へ向かう直交方向に押圧した際、クランプは、軸支部をアンカー部に対して直交方向へスライド移動させることができる。
【0023】
この際、係止脚部が軸支部を挟持するため、アンカー部は、スリット開口の間隔を狭めるように軸支部を変形させながら軸支部に係止される。このため、アンカー部が係止された軸支部は、保持部材に保持された軸体を把持することができる。
これにより、クランプは、挿着部材の回転と挿着部材の長手方向への移動とを略同時に規制できるため、挿着部材を保持部材に完全固定することができる。
【0024】
よって、クランプは、被取付部への挿着部材の挿着と略同時に、非固定状態の挿着部材を保持部材に固定できるため、長尺部材を被取付部に効率よく固定することができる。このため、クランプは、被取付部に対する組付け性をより向上することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記軸体は、前記保持部材に対して圧入される構成であってもよい。
またこの発明の態様として、前記保持部材は、前記軸体の端部側を挟持する基部及び押え部が備えられてもよい。
【0026】
上記押え部は、例えばヒンジを介して基部に連結された板状の部材、あるいは基部に連結された可撓性を有する帯状の部材などのことをいう。
【0027】
この構成によれば、保持部材が軸体を確実に保持できるため、例えば軸体に固定した挿着部材が長手方向に移動する、あるいは軸体に固定した挿着部材が軸体を軸中心とする回転方向に回転することを防止できる。
【0028】
これにより、クランプは、被取付部に取り付けた長尺部材が意図せず揺動することを防止できる。このため、クランプは、被取付部及び長尺部材に揺動による不具合が生じることを防止できる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記挿着部材は、前記軸体に軸支された状態において、前記軸体の近傍が前記保持部材に接触する外形形状に形成されてもよい。
またこの発明の態様として、前記保持部材は、前記長手方向に直交する直交方向に貫通した開口で、前記軸体を配置する収容空間が設けられ、前記挿着部材は、前記収容空間の前記軸体に軸支された状態において、前記軸体の近傍が前記収容空間を介して前記長尺部材に接触する外形形状に形成されてもよい。
【0030】
この構成によれば、保持部材と挿着部材との摩擦抵抗または長尺部材と挿着部材との摩擦抵抗によって、挿着部材を軸体に仮固定することができる。
このため、クランプは、所望される長手方向の位置に移動させた挿着部材が意図せず長手方向に移動することを抑止できる。
【0031】
さらに、クランプは、所望される向きに変更した挿着部材が意図せず回転することを抑止できる。
これにより、クランプは、被取付部の貫通孔に挿着部材をより容易に挿着できるため、被取付部に対する組付け性を向上することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記挿着部材は、前記長手方向の両方向へ一体的に延設されるとともに、前記長手方向の端部側が前記保持部材に回転可能に支持された軸体が備えられてもよい。
この構成よれば、保持部材に対して挿着部材を長手方向に移動させることができる。
【0033】
さらに、挿着部材が保持部材に軸支されるため、クランプは、軸体を軸中心とした挿着部材の回転位置を変更することができる。このため、クランプは、軸体を軸中心とする径方向に沿った挿着部材の向きを、被取付部における貫通孔の貫通方向に略一致させることができる。
【0034】
これにより、クランプは、貫通孔に対して挿着部材を確実に対向配置できるため、被取付部の貫通孔に挿着部材をよりスムーズに挿着することができる。このため、クランプは、被取付部に対する組付け性をより向上することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記保持部材は、前記軸体の端部を収容する軸収容部が備えられ、前記軸収容部は、前記軸体の端部が遊嵌する一対の遊嵌部分と、前記軸体の端部が嵌合によって固定される一対の嵌合部分とを、前記軸収容部の基部から前記嵌合部分、前記遊嵌部分の順に並設して備えてもよい。
【0036】
上記遊嵌部分は、軸体が長手方向へ移動可能に遊嵌する部分、あるいは軸体が回転可能に遊嵌するとともに、軸体が回転可能に遊嵌する部分のことをいう。
この構成によれば、保持部材を押圧することで、遊嵌部分に遊嵌している軸体を嵌合部分に嵌合させることができるため、非固定状態の軸体を保持部材に容易に固定することができる。
【0037】
さらに、嵌合部分及び遊嵌部分の並設方向が被取付部における貫通孔の貫通方向に略平行な場合、クランプは、被取付部への挿着部材の挿着と略同時に、非固定状態の軸体を保持部材に固定することができる。
これにより、クランプは、長尺部材を被取付部に効率よく固定できるため、被取付部に対する組付け性をより向上することができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記保持部材は、前記軸体の端部を挟持する基部及び押え部が備えられてもよい。
上記押え部は、例えばヒンジを介して基部に連結された板状の部材、あるいは基部に連結された可撓性を有する帯状の部材などのことをいう。
【0039】
この構成によれば、基部と押え部とで軸体を確実に保持できるため、挿着部材の長手方向への移動と、向きを変更した挿着部材の回転とを規制して、挿着部材を保持部材に仮固定することができる。
【0040】
さらに、クランプは、基部及び押え部の協働により、軸体を任意の回転角度で保持できるため、軸体を軸中心とする径方向に沿った挿着部材の向きを、貫通孔の貫通方向に容易に略一致させることができる。
これにより、クランプは、被取付部の貫通孔に挿着部材をより容易に挿着できるため、被取付部に対する組付け性を向上することができる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記保持部材は、前記軸体の端部を収容する軸収容部が備えられ、前記軸収容部は、前記長手方向に所定間隔を隔てた位置に、周面に沿って立設された複数の突起部分が備えられ、前記軸体は、前記軸収容部に収容される部分に前記突起部分が嵌合する溝部分が備えられてもよい。
【0042】
この構成によれば、軸体を軸収容部に収容する際、軸体の溝部分を嵌合させる軸収容部の突起部分を変更することで、軸体の長手方向の位置を変更することができる。
【0043】
この際、クランプは、突起部分によって軸体の長手方向への移動を規制することができる。
このため、クランプは、所望される長手方向の位置において、軸体に一体形成された挿着部材を保持部材に固定することができる。
【0044】
これにより、クランプは、被取付部の貫通孔に対向配置した挿着部材を貫通孔に挿着する際、挿着部材が意図せず長手方向に移動することを防止できるため、被取付部の貫通孔に挿着部材をよりスムーズに挿着することができる。
【0045】
またこの発明の態様として、前記軸体は、前記長手方向に延びる断面多角形状の柱状体に形成され、前記軸収容部の内面は、前記軸体が嵌合する断面多角形状に形成されてもよい。
上記軸収容部の内面は、軸体に同じ断面多角形状、あるいは軸体の断面多角形よりも多い頂部を有する断面多角形状などのことをいう。
【0046】
この構成によれば、任意の回転角度に回転させた軸体を軸収容部に収容することで、挿着部材の向きを所望される方向へ向けることができる。この際、クランプは、断面多角形状によって長手方向を軸中心とした軸体の回転を規制することができる。
【0047】
このため、クランプは、被取付部における貫通孔の貫通方向に挿着部材の向きを略一致させた状態において、挿着部材を保持部材に固定することができる。
さらに、軸体の溝部分と軸収容部の突起部分との協働によって、挿着部材の長手方向への移動が規制されるため、クランプは、挿着部材を保持部材に完全固定することができる。
【0048】
これにより、クランプは、被取付部の貫通孔に挿着部材をよりスムーズに挿着できるため、被取付部に対する組付け性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明により、長尺部材の所定箇所が被取付部の貫通孔に対して長手方向に位置ズレしても、長尺部材を被取付部に取り付けられるクランプ及びクランプ付きワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】斜め上方から見たクランプ付きワイヤーハーネスの外観を示す外観斜視図。
【
図2】斜め下方から見たクランプ付きワイヤーハーネスの外観を示す外観斜視図。
【
図3】
図1中のA-A矢視断面における要部の断面図。
【
図5】斜め上方から見た分解状態におけるクランプの外観を示す分解斜視図。
【
図6】軸体の矩形部分を通る幅方向に沿った縦断面における保持部材の断面を示す断面図。
【
図7】斜め上方から見た分解状態における挿着部材の外観を示す分解斜視図。
【
図8】軸体に挿着部材を固定する過程を説明する説明図。
【
図9】挿着部材の長手方向への移動を説明する説明図。
【
図10】軸体を回転軸とする挿着部材の回転を説明する説明図。
【
図11】実施例2のクランプ付きワイヤーハーネスの外観を示す外観斜視図。
【
図13】斜め上方から見た分解状態におけるクランプの外観を示す分解斜視図。
【
図14】実施例3のクランプ付きワイヤーハーネスの外観を示す外観斜視図。
【
図15】斜め下方から見た分解状態におけるクランプの外観を示す分解斜視図。
【
図17】挿着部材を保持部材に固定する過程をD-D矢視断面で説明する説明図。
【
図18】実施例4のクランプ付きワイヤーハーネスの外観を示す外観斜視図。
【
図20】斜め下方から見た分解状態におけるクランプの外観を示す分解斜視図。
【
図21】斜め上方から見た分解状態におけるクランプの外観を示す分解斜視図。
【
図22】
図19中のF-F矢視断面における分解状態の断面図。
【
図23】挿着部材の回転をG-G矢視断面で説明する説明図。
【
図24】長手方向に沿った縦断面における実施例5のクランプ付きワイヤーハーネスの要部を示す断面図。
【
図25】斜め上方から見た分解状態におけるクランプの外観を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例0052】
実施例1では、ワイヤーハーネスWHを挿通した電磁シールド管Tにクランプ10を取り付けたクランプ付きワイヤーハーネス1について、
図1から
図10を用いて説明する。
なお、
図1は斜め上方から見たクランプ付きワイヤーハーネス1の外観斜視図を示し、
図2は斜め下方から見たクランプ付きワイヤーハーネス1の外観斜視図を示し、
図3は
図1中のA-A矢視断面における要部の断面図を示し、
図4は
図2中のB-B矢視断面図を示している。
【0053】
さらに、
図5は斜め上方から見た分解状態におけるクランプ10の分解斜視図を示し、
図6は軸体12の矩形部分117bを通る短手方向Yに沿った縦断面における保持部材11の断面図を示し、
図7は斜め上方から見た分解状態における挿着部材13の分解斜視図を示している。
【0054】
加えて、
図8は軸体12に挿着部材13を固定する過程を説明する説明図であり、
図8(a)はアンカー部15が軸支部14の第1係止部141に係止された状態のB-B矢視断面図を示し、
図8(b)はアンカー部15が軸支部14の第2係止部142に係止された状態のB-B矢視断面図を示している。
【0055】
さらにまた、
図9は挿着部材13の長手方向Xへの移動を説明する説明図であり、
図9(a)は挿着部材13が長手方向Xの一方側に移動した状態のA-A矢視断面図を示し、
図9(b)は挿着部材13が長手方向Xの他方側に移動した状態のA-A矢視断面図を示している。
【0056】
そして、
図10は軸体12を回転軸とする挿着部材13の回転を説明する説明図であり、
図10(a)は挿着部材13が正面視時計回りに回転した状態のB-B矢視断面図を示し、
図10(b)は挿着部材13が正面視反時計回りに回転した状態のB-B矢視断面図を示している。
【0057】
また、
図1中の上側をクランプ付きワイヤーハーネス1の上方向、
図1中の下側をクランプ付きワイヤーハーネス1の下方向として、図中の矢印Xはクランプ付きワイヤーハーネス1の長手方向(以降、長手方向Xと呼ぶ)を示している。
さらに、図中の矢印Yは長手方向Xに平面視直交するクランプ付きワイヤーハーネス1の短手方向(以降、短手方向Yと呼ぶ)を示している。
【0058】
実施例1のクランプ付きワイヤーハーネス1は、
図1及び
図2に示すように、複数の電線(図示省略)を束ねたワイヤーハーネスWHと、ワイヤーハーネスWHを内部に挿通した電磁シールド管Tと、電磁シールド管Tを保持するクランプ10とを備えている。
【0059】
まず、ワイヤーハーネスWHは、例えばバッテリーと電気機器、あるいは電気機器同士を電気的に接続する複数の電線(図示省略)を束ねて構成されている。このワイヤーハーネスWHは、車室外の車体に沿って配索されるとともに、後述する電磁シールド管T及びクランプ10を介して、車体の被取付部P(
図1参照)に固定されている。
【0060】
また、電磁シールド管Tは、
図1に示すように、所望されるワイヤーハーネスWHの配索経路に沿って延びる長尺形状の管体であって、例えば導電性を有する管状の金属層における内周面及び外周面を、絶縁性を有する絶縁層で覆った管体で構成されている。この電磁シールド管Tは、ワイヤーハーネスWHの配索経路を規制するとともに、内部に挿通したワイヤーハーネスWHを飛び石などから保護している。
【0061】
また、クランプ10は、
図1及び
図2に示すように、ワイヤーハーネスWHを挿通した電磁シールド管Tを車体の被取付部Pに取り付けるためのクランプである。このクランプ10は、
図2に示すように、電磁シールド管Tの長手方向Xにおける所定箇所(図示省略)を保持する保持部材11と、長手方向Xの端部が保持部材11に保持される軸体12と、軸体12に支持され、被取付部Pの貫通孔Pa(
図3参照)に挿着する挿着部材13とを備えている。
【0062】
まず、クランプ10の保持部材11は、
図2に示すように、電磁シールド管Tが当接する板状の保持本体111と、電磁シールド管Tを保持本体111に固定する一対のバンド部112及び一対のロック部113とを備えている。
【0063】
保持本体111は、
図2に示すように、上下方向に厚みを有するとともに、長手方向Xに長い底面視略矩形の板状に形成されている。
さらに、保持本体111の底面視略中央には、
図2に示すように、挿着部材13の上部(後述する挿着部材13の軸支部14)を収容する収容空間S1が下方から上方へ向けて凹設されている。
【0064】
この収容空間S1は、
図3及び
図4に示すように、短手方向Yに沿った縦断面における断面形状が上端を短辺とする断面略台形状であって、軸体12よりも短い長手方向Xの長さで形成されている。
【0065】
詳述すると、保持部材11の保持本体111は、
図2から
図4に示すように、上下方向に厚みを有する板状で、上下方向に重ね合わせた基部114及び押え部115と、基部114に押え部115を枢動自在に連結するヒンジ部116とを備えている。
【0066】
保持本体111の基部114は、
図2から
図4に示すように、押え部115の下方に位置する底面視略矩形の板状であって、収容空間S1の下部を構成する開口が上下方向に貫通形成されている。
【0067】
また、保持本体111の押え部115は、
図2から
図4に示すように、基部114の上方に位置する底面視略矩形の板状であって、収容空間S1の上部を構成する凹部分が下面から上方へ向けて凹設されている。
【0068】
さらに、押え部115には、
図4及び
図5に示すように、収容空間S1の上面となる部分に、長手方向Xに延びるとともに、上方へ向けて断面略円弧状に凹設された溝部分115aが設けられている。
【0069】
この溝部分115aは、挿着部材13の上端(後述する挿着部材13の軸支部14)が接触する部分として設けられている。
なお、押え部115は、クランプ10が電磁シールド管Tを保持した状態において、電磁シールド管Tと基部114とで挟持されることで、基部114に対する枢動が規制されている。
【0070】
また、保持本体111のヒンジ部116は、
図4及び
図5に示すように、可撓性を有する薄板状であって、基部114における短手方向Yの一方側の側面と、押え部115における短手方向Yの一方側の側面とを連結している。
【0071】
このような構成の保持本体111には、
図3に示すように、基部114と押え部115とを重ね合わせた状態において、収容空間S1を挟んで長手方向Xに延びるとともに、後述する軸体12における長手方向Xの端部を収容保持する一対の軸収容部117が短手方向Yの略中央に形成されている。
【0072】
この軸収容部117は、
図3及び
図5に示すように、収容空間S1に連通するとともに、後述する軸体12の円柱部12aを収容する断面円形の円形部分117aと、後述する軸体12の角柱部12bを収容する断面矩形の矩形部分117bとで構成されている。
なお、矩形部分117bは、円形部分117aの断面円形に内接する大きさの断面矩形に形成されている。
【0073】
より詳しくは、軸収容部117の円形部分117aは、
図5に示すように、基部114の上面に凹設した断面半円状の半円凹部分114aと、押え部115の下面に凹設した断面半円状の半円凹部分115bとで構成されている。
【0074】
一方、軸収容部117の矩形部分117bは、
図5及び
図6に示すように、基部114の上面に凹設した断面三角形状の三角凹部分114bと、押え部115の下面に凹設した断面三角形状の三角凹部分115cとで構成されている。
この矩形部分117bは、後述する軸体12に接触して、長手方向Xを軸中心とする軸体12の回転を規制する規制部として構成されている。
【0075】
また、保持部材11のバンド部112は、
図4及び
図5に示すように、可撓性を有する略帯状であって、基部114における短手方向Yの他方側の側面に、長手方向Xに所定間隔を隔てて配置されている。
【0076】
より詳しくは、バンド部112は、ヒンジ部116に対向する基部114の側面から上方へ向けて延設されるとともに、電磁シールド管Tを囲繞可能な長さに形成されている。このバンド部112は、例えば結束バンドのバンド部分と同様に、その主面に略山型の突起が複数形成され、ロック部113に係合可能に形成されている。
【0077】
また、保持部材11のロック部113は、
図2及び
図4に示すように、ヒンジ部116を設けた基部114の側面において、バンド部112に対して短手方向Yに対向配置されている。
【0078】
このロック部113は、上下方向に貫通した開口を有する平面視略矩形の柱状体であって、電磁シールド管Tに巻き回したバンド部112の上方から下方へ向けたバンド部112の挿入を許容し、下方から上方へ向けてバンド部112の離脱を阻止するように形成されている。
なお、詳細な図示を省略するが、このロック部113の内面には、所謂結束バンドと略同じように、バンド部112の突起に係止される係止爪が形成されている。
【0079】
また、クランプ10の軸体12は、
図3に示すように、保持部材11の軸収容部117よりも僅かに短い長手方向Xの長さに形成されている。この軸体12は、
図5に示すように、長手方向Xに延びる円柱状の円柱部12aと、円柱部12aの両端からそれぞれ延設された四角柱状の角柱部12bとで一体形成されている。
【0080】
具体的には、軸体12の円柱部12aは、
図3に示すように、軸収容部117の円形部分117aに略同じ直径の円柱状に形成されている。
なお、円柱部12aは、
図3に示すように、軸収容部117の円形部分117aに略同じ長手方向Xの長さに形成されている。
【0081】
一方、軸体12の角柱部12bは、
図5及び
図6に示すように、軸収容部117の矩形部分117bに略同じ大きさ、かつ円柱部12aに内接する大きさの四角柱状に形成されている。
なお、角柱部12bは、
図3に示すように、軸収容部117の矩形部分117bよりも僅かに短い長手方向Xの長さに形成されている。
【0082】
また、クランプ10の挿着部材13は、軸体12を回転軸として回転可能に軸体12に支持されるとともに、軸体12に対して長手方向Xに移動可能に支持されている。換言すると、挿着部材13は、長手方向Xを回転軸として回転可能、かつ長手方向Xに移動可能な状態で保持部材11に支持されている。
【0083】
この挿着部材13は、
図4及び
図7に示すように、軸体12が挿通される軸支部14と、軸支部14に対してスライド可能に取り付けられ、被取付部Pの貫通孔Paに挿着するアンカー部15とで構成されている。
さらに、挿着部材13は、アンカー部15のスライド移動によって、軸支部14が軸体12を把持するように構成されている。
詳述すると、挿着部材13の軸支部14は、
図4に示すように、短手方向Yに沿った縦断面における断面形状が、上方へ向けて突出した円弧面14aを有する断面釣鐘形状に形成されている。
なお、軸支部14は、
図3に示すように、保持部材11の収容空間S1よりも短い長手方向Xの長さに形成されている。
【0084】
この軸支部14には、
図4及び
図7に示すように、長手方向Xに貫通して軸体12を挿通する正面視円形の挿通孔14bが開口形成されている。
具体的には、挿通孔14bは、断面釣鐘形状における円弧面14aの中心に中心が略一致するとともに、軸体12の直径に略同じ直径の正面視円形に開口形成されている。
【0085】
さらに、軸支部14には、
図4及び
図7に示すように、挿通孔14bから円弧面14aに対向する断面釣鐘形状の端面へ向かう挿通孔14bの径方向(下方)に沿ったスリット状の開口であるスリット開口14cが形成されている。
そして、軸支部14は、円弧面14aが保持本体111の溝部分115aに接触するように、軸体12に軸支されている。
【0086】
このような軸支部14には、
図7及び
図8に示すように、後述するアンカー部15の係止脚部154が係止される一対の第1係止部141及び一対の第2係止部142が、短手方向Yで対向する側面に突設されている。
【0087】
具体的には、第1係止部141は、
図7及び
図8(a)に示すように、軸支部14の側面における下端に突設されている。この第1係止部141は、アンカー部15が挿通孔14bの径方向(下方)へ向けて離脱することを阻止する抜け止めとして設けている。
【0088】
一方、第2係止部142は、
図7及び
図8(a)に示すように、軸支部14の側面において、第1係止部141よりも挿通孔14b側の位置に突設されている。この第2係止部142は、挿通孔14bへ向けてスライド移動したアンカー部15の状態を維持するために設けている。
【0089】
また、挿着部材13のアンカー部15は、
図8に示すように、挿通孔14bから円弧面14aに対向する断面釣鐘形状の端面へ向かう挿通孔14bの径方向及びその逆方向へスライド移動可能に、軸支部14に組み付けられている。
【0090】
このアンカー部15は、
図7および
図8(a)に示すように、上下方向に厚みを有する平面視略矩形の板状のアンカー基部151と、アンカー基部151から下方へ延設され、被取付部Pの貫通孔Paに挿着するアンカー本体152とが一体形成されている。
【0091】
さらに、アンカー部15は、長手方向Xに対向してアンカー基部151の上面に立設された一対の規制壁部153と、短手方向Yに対向してアンカー基部151の上面に立設された一対の係止脚部154とがアンカー基部151に一体形成されている。
【0092】
具体的には、アンカー部15のアンカー本体152は、
図2に示すように、長手方向Xに長い平面視略長楕円形状の軸部分(符号省略)と、軸部分から短手方向Yへ延設された一対の爪部分(符号省略)とで構成されている。
このアンカー部15は、
図4に示すように、被取付部Pの貫通孔Paに軸部分が挿通されるとともに、爪部分が被取付部Pの縁端に係止されることで車体に固定される。
【0093】
また、アンカー部15の一対の規制壁部153は、
図7に示すように、長手方向Xに厚みを有する正面視略矩形の平板であって、軸支部14に略同じ長手方向Xの間隔を隔てて立設されている(
図4参照)。この一対の規制壁部153は、アンカー部15に対して軸支部14が長手方向Xへ移動することを規制するために設けている。
【0094】
また、アンカー部15の一対の係止脚部154は、
図7及び
図8(a)に示すように、他方の係止脚部154へ向けて突設され、軸支部14に係止される係止爪154aと、短手方向Yを厚み方向として、係止爪154aからアンカー基部151へ向かうほど、漸次、厚肉になる脚部本体154bとを備えている。
【0095】
より詳しくは、一対の係止脚部154における脚部本体154bは、
図8(a)に示すように、短手方向Yの間隔が係止爪154aからアンカー基部151へ向かうほど幅狭になるように、他方の脚部本体154bに対向する対向面が傾斜した形状に形成されている。
【0096】
さらに、脚部本体154bの対向面は、
図8(b)に示すように、係止爪154aが軸支部14の第2係止部142に係止された状態において、第1係止部141の突端に対向する対向部分近傍の短手方向Yの間隔が、第1係止部141の突端における短手方向Yの間隔に対して幅狭になるように形成されている。
【0097】
このため、係止脚部154は、
図8(b)に示すように、係止爪154aが軸支部14の第2係止部142に係止された状態において、円弧面14aに対向する軸支部14の端面近傍を短手方向Yに押圧して、挿通孔14bが縮径するように軸支部14を変形させている。
【0098】
上述した構成の挿着部材13は、
図9に示すように、アンカー部15が軸支部14の第1係止部141に係止された状態では、保持部材11に保持された軸体12に対して長手方向Xの任意の位置に移動可能となる。
【0099】
さらに、挿着部材13は、
図10に示すように、保持部材11に保持された軸体12を回転軸として、正面視時計回り及び正面視反時計回りの回転方向に回転可能となる。
この際、挿着部材13は、断面釣鐘形状の円弧面14aが保持部材11の溝部分115aに摺動しながら、長手方向Xに移動するとともに、軸体12を回転軸とする回転方向に回転する。
【0100】
このように軸体12に挿着部材13が固定されていない非固定状態(
図8(a)参照)において、挿通孔14bから円弧面14aに対向する断面釣鐘形状の端面へ向かう挿通孔14bの径方向へ軸支部14が移動すると、アンカー部15の脚部本体154bは、軸支部14の第1係止部141に接触する。
【0101】
この際、一対の係止脚部154が軸支部14を短手方向Yに押圧するため、軸支部14は、スリット開口14cの対向面が近接するように変形して、挿通孔14bの縮径を開始する。
【0102】
そして、アンカー部15が軸支部14の第2係止部142に係止されると、軸支部14は、
図8(b)に示すように、軸体12を把持する。これにより、挿着部材13は、長手方向Xへの移動と軸体12を回転軸とした回転とが規制され、軸体12に固定された固定状態となる。
【0103】
このように実施例1のクランプ10は、挿着部材13が軸体12に固定されていない非固定状態と、挿着部材13が軸体12に固定された固定状態とに移行可能に構成されている。
【0104】
次に、上述したクランプ付きワイヤーハーネス1を、被取付部Pの貫通孔Paに挿着する工程について簡単に説明する。
なお、クランプ10は、挿着部材13が軸体12に固定されていない非固定状態で電磁シールド管Tを保持している。
【0105】
まず、作業者は、例えば車両の車体における所望される配索経路に沿って配索したクランプ付きワイヤーハーネス1を、実施例1のクランプ10とは異なる構成のクランプを用いて車両の車体に固定する。
【0106】
この実施例1のクランプ10とは異なる構成のクランプとしては、被取付部Pの貫通孔Paに挿着するアンカー本体に電磁シールド管Tを保持するバンド部及びロック部が設けられたバンドクランプ(例えば特許文献1のバンドクランプ)とする。
【0107】
そして、実施例1のクランプ10を貫通孔Paに挿着する際、作業者は、アンカー部15のアンカー本体152が貫通孔Paに対向するように、軸体12に対して挿着部材13を長手方向Xに移動させる。
【0108】
さらに、作業者は、軸体12からアンカー本体152の先端に向かう方向が、貫通孔Paの貫通方向に略一致するように、挿着部材13を回転させて位置合わせを行う。
この際、クランプ10の挿着部材13は、保持部材11の溝部分115aとの摩擦抵抗によって保持部材11に仮固定された状態となる。
【0109】
その後、作業者は、アンカー本体152を貫通孔Paに当接させたのち、クランプ10の保持部材11を被取付部Pへ向けて押圧する。
この際、挿着部材13の軸支部14がアンカー部15のアンカー基部151へ向けて移動するため、アンカー部15の係止脚部154が第1係止部141から離脱するとともに、軸支部14を短手方向Yに押圧開始する。
【0110】
そして、アンカー部15の係止脚部154が第2係止部142に係止されることで、挿着部材13が軸体12に固定されるとともに、アンカー部15が被取付部Pの貫通孔Paに挿着される。
【0111】
このようにして、実施例1のクランプ付きワイヤーハーネス1は、被取付部Pの貫通孔Paに対する電磁シールド管Tの所定箇所の位置ズレを吸収するとともに、挿着部材13の保持部材11への固定と、貫通孔Paへのクランプ10の挿着とを略同時に行うことができる。
【0112】
以上のように、実施例1のクランプ付きワイヤーハーネス1は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスWHと、ワイヤーハーネスWHを挿通した電磁シールド管Tと、上述のクランプ10とが備えられ、電磁シールド管Tがクランプ10に保持されている。
【0113】
そして、実施例1のクランプ10は、長尺形状の電磁シールド管Tを被取付部Pに取り付けるためのものである。このクランプ10は、電磁シールド管Tにおける長手方向Xの所定箇所を保持する保持部材11と、長手方向Xへ移動可能な状態で保持部材11に支持されるとともに、被取付部Pの貫通孔Paに挿着する挿着部材13とが備えられている。
【0114】
この構成によれば、保持部材11に対して挿着部材13が長手方向Xに移動するため、長手方向Xにおける挿着部材13の位置を変更することができる。このため、クランプ10は、貫通孔Paに対して挿着部材13を対向配置させることができる。
【0115】
これにより、クランプ10は、電磁シールド管Tの所定箇所が被取付部Pの貫通孔Paに対して長手方向Xに位置ズレした場合であっても、被取付部Pの貫通孔Paに挿着部材13をスムーズに挿着することができる。
【0116】
よって、クランプ10及びクランプ10を用いたクランプ付きワイヤーハーネス1は、挿着部材が保持部材に固定されたクランプに比べて被取付部Pに対する組付け性を向上して、電磁シールド管Tを被取付部Pに取り付けることができる。
【0117】
また、クランプ10は、挿着部材13とは別体で長手方向Xに延びるとともに、長手方向Xの端部側が保持部材11に保持される軸体12が備えられている。この軸体12は、挿着部材13に挿通される構成である。
この構成よれば、保持部材11に保持された軸体12に対して挿着部材13を長手方向Xに移動させることができる。
【0118】
さらに、挿着部材13が軸体12に軸支されるため、クランプ10は、軸体12を軸中心とした挿着部材13の回転位置を変更することができる。このため、クランプ10は、軸体12を軸中心とする径方向に沿った挿着部材13の向きを、被取付部Pにおける貫通孔Paの貫通方向に略一致させることができる。
【0119】
これにより、クランプ10は、貫通孔Paに対して挿着部材13を確実に対向配置できるため、被取付部Pの貫通孔Paに挿着部材13をよりスムーズに挿着することができる。このため、クランプ10は、被取付部Pに対する組付け性をより向上することができる。
【0120】
また、長手方向Xに直交する方向を直交方向として、挿着部材13は、被取付部Pの貫通孔Paに挿着するアンカー部15と、アンカー部15に対して直交方向(図中の下方)にスライド移動可能に取り付けられるとともに、軸体12が挿通される挿通孔14bを有する軸支部14とが備えられている。
【0121】
さらに、軸支部14は、挿通孔14bから直交方向に沿ってスリット状に開口したスリット開口14cが設けられている。
そして、アンカー部15は、スリット開口14cを挟んで対向配置され、軸支部14の直交方向への移動に伴って軸支部14を挟持するとともに、軸支部14に係止する係止脚部154が備えられている。
【0122】
この構成によれば、被取付部Pへの挿着部材13の挿着と略同時に、非固定状態の挿着部材13を保持部材11に固定することができる。
具体的には、挿着部材13の先端が被取付部Pに接触した状態で、保持部材11を被取付部Pへ向かう直交方向に押圧した際、クランプ10は、軸支部14をアンカー部15に対して直交方向へスライド移動させることができる。
【0123】
この際、係止脚部154が軸支部14を挟持するため、アンカー部15は、スリット開口14cの間隔を狭めるように軸支部14を変形させながら軸支部14に係止される。このため、アンカー部15が係止された軸支部14は、保持部材11に保持された軸体12を把持することができる。
これにより、クランプ10は、挿着部材13の回転と挿着部材13の長手方向Xへの移動とを略同時に規制できるため、挿着部材13を保持部材11に完全固定することができる。
【0124】
よって、クランプ10は、被取付部Pへの挿着部材13の挿着と略同時に、非固定状態の挿着部材13を保持部材11に固定できるため、電磁シールド管Tを被取付部Pに効率よく固定することができる。このため、クランプ10は、被取付部Pに対する組付け性をより向上することができる。
【0125】
また、軸体12の端部側を挟持する基部114及び押え部115を備えているため、保持部材11は、軸体12を確実に保持することができる。このため、クランプ20は、例えば軸体12に固定した挿着部材13が長手方向Xに移動する、あるいは軸体12に固定した挿着部材13が軸体12を軸中心とする回転方向に回転することを防止できる。
【0126】
これにより、クランプ10は、被取付部Pに取り付けた電磁シールド管Tが意図せず揺動することを防止できる。このため、クランプ10は、被取付部P及び電磁シールド管Tに揺動による不具合が生じることを防止できる。
【0127】
また、挿着部材13は、軸体12に軸支された状態において、円弧面14aが保持部材11に接触する外形形状に形成されている。
この構成によれば、保持部材11と挿着部材13との摩擦抵抗によって、挿着部材13を軸体12に仮固定することができる。
このため、クランプ10は、所望される長手方向Xの位置に移動させた挿着部材13が意図せず長手方向Xに移動することを抑止できる。
【0128】
さらに、クランプ10は、所望される向きに変更した挿着部材13が意図せず回転することを抑止できる。
これにより、クランプ10は、被取付部Pの貫通孔Paに挿着部材13をより容易に挿着できるため、被取付部Pに対する組付け性を向上することができる。
保持部材21のバンド部212及びロック部213は、実施例1のバンド部112及びロック部113に略同じ構成のため、その詳細な説明を省略するが、バンド部212が短手方向Yで対向する保持本体211の一方の側面に形成され、ロック部213がバンド部212に対向する保持本体211の他方の側面に形成されている。
このように実施例2のクランプ20は、上述した実施例1と同様に、アンカー部25と軸支部24との相対移動によって、挿着部材23が軸体22に固定されていない非固定状態と、挿着部材23が軸体22に固定された固定状態とに移行可能に構成されている。
以上のように、実施例2のクランプ付きワイヤーハーネス2は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスWHと、ワイヤーハーネスWHを挿通した電磁シールド管Tと、上述のクランプ20とが備えられ、電磁シールド管Tがクランプ20に保持されている。
そして、実施例2のクランプ20は、電磁シールド管Tを保持する保持部材21と、長手方向Xへ移動可能な状態で保持部材21に支持される挿着部材23とを備えている。
このため、クランプ20及びクランプ20を用いたクランプ付きワイヤーハーネス2は、実施例1と同様に、挿着部材23が保持部材21に固定されたクランプ20に比べて被取付部Pに対する組付け性を向上して、電磁シールド管Tを被取付部Pに取り付けることができる。
さらに、軸体22が保持部材21に対して圧入される構成であるため、保持部材21は、軸体22を確実に保持することができる。このため、クランプ20は、例えば軸体22に固定した挿着部材23が長手方向Xに移動する、あるいは軸体22に固定した挿着部材23が軸体22を軸中心とする回転方向に回転することを防止できる。
これにより、クランプ20は、被取付部Pに取り付けた電磁シールド管Tが意図せず揺動することを防止できる。このため、クランプ20は、被取付部P及び電磁シールド管Tに揺動による不具合が生じることを防止できる。