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特開2024-139464硬化物、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139464
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】硬化物、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20241002BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241002BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241002BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241002BHJP
   C08K 7/26 20060101ALI20241002BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20241002BHJP
   C08G 8/36 20060101ALI20241002BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241002BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C08L101/08
G03F7/004 501
G03F7/027
G03F7/004 512
C08K3/013
C08K7/26
C08K5/00
C08G8/36
C08F2/44 Z
H05K3/28 C
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050417
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】間中 薫
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J011
4J033
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC33
2H225AC55
2H225AC72
2H225AD02
2H225AE14P
2H225AE15P
2H225AN61P
2H225AN62P
2H225AN94P
2H225AN95P
2H225AP11P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225BA33P
2H225CA13
2H225CB03
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J002AA021
4J002AA062
4J002BG041
4J002BG051
4J002CD001
4J002CD061
4J002CD081
4J002CK021
4J002DJ017
4J002DL007
4J002EE036
4J002EH048
4J002EH078
4J002EL028
4J002EL038
4J002ES016
4J002EW146
4J002FA107
4J002FD010
4J002FD017
4J002FD090
4J002FD146
4J002FD206
4J002FD208
4J002GH00
4J002GP03
4J002GQ01
4J002GQ05
4J011PA13
4J011PA39
4J011PA86
4J011PB22
4J011QA24
4J011QB19
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4J011SA20
4J011UA01
4J011UA08
4J033CA12
4J033EA63
4J033EA66
4J033EA72
4J033HB10
5E314AA24
5E314AA32
5E314AA34
5E314BB06
5E314BB11
5E314BB12
5E314CC01
5E314CC15
5E314EE01
5E314EE03
5E314FF05
5E314FF06
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】低誘電率、低誘電正接の硬化物、その硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、その硬化物を有するプリント配線板を提供する。
【解決手段】硬化性樹脂組成物の硬化物であって、硬化物の空隙率が5体積%以上15体積%以下である、硬化物。硬化物に用いられる硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂、光重合開始剤、及び中空フィラー、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂組成物の硬化物であって、
前記硬化物の空隙率が5体積%以上15体積%以下である、
硬化物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化物に用いられる硬化性樹脂組成物であって、
カルボキシル基含有樹脂、
光重合開始剤、及び
中空フィラー、
を含有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記中空フィラーがシリカを含む、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記中空フィラーの配合量が、
カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して250質量部以下である、
請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記中空フィラーの平均粒径D50が0.1~110μmである、
請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記中空フィラーの空隙率が30~50体積%である、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに光重合性モノマーを含有する、請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を第一のフィルムに塗布、乾燥して得られる、ドライフィルム。
【請求項9】
請求項8に記載のドライフィルムを硬化させて得られる硬化物。
【請求項10】
請求項1又は9に記載の硬化物を有する、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希アルカリ水溶液に可溶な硬化物、その硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物、そのドライフィルム及び硬化物を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一部の民生用プリント配線板並びにほとんどの産業用プリント配線板のソルダーレジスト用光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、高精度、高密度の観点から、紫外線照射後、現像することにより画像形成し、熱及び/又は光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型ソルダーレジスト用光硬化性熱硬化性樹脂組成物が使用されている。それらの中でも、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のフォトソルダーレジスト用光硬化性熱硬化性樹脂組成物が主流になっており、実際のプリント配線板の製造において大量に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-539072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソルダーレジストを使用する目的のひとつに、絶縁材としてプリント配線板を保護するということがある。しかしながら、近年第5世代通信システム(5G)に代表される大容量高速通信などの普及に伴う通信機器の信号の高周波化高密度実装化や大電流化により、比誘電率(Dk)と誘電正接(Df)が十分に低くないと、周波数が誘電損失に由来する伝送損失の増大が起こり、信号の減衰や発熱などの問題が生じるため低誘電率かつ低誘電正接の硬化物を形成できることが要求されている。この問題を解決するためには、ソルダーレジストの低誘電率化及び低誘電正接化が必要である。
【0005】
本発明の目的は、低誘電率、低誘電正接の硬化物、その硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、その硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を行い、低誘電率、低誘電正接を備えた硬化物、その硬化物を形成可能な樹脂組成物等を提供することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 硬化性樹脂組成物の硬化物であって、前記硬化物の空隙率が5体積%以上15体積%以下である、硬化物。
[2] [1]に記載の硬化物に用いられる硬化性樹脂組成物であって、カルボキシル基含有樹脂、
光重合開始剤、及び中空フィラー、を含有する、硬化性樹脂組成物。
[3] 前記中空フィラーがシリカを含む、[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4] 前記中空フィラーの配合量が、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して250質量部以下である、[2]または[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
[5] 前記中空フィラーの平均粒径D50が0.1~110μmである、[2]~[4]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[6] 前記中空フィラーの空隙率が30~50%である、[2]~[5]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[7] さらに光重合性モノマーを含有する、[2]~[6]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
[8] [2]~[7]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を第一のフィルムに塗布、乾燥して得られる、ドライフィルム。
[9] [8]に記載のドライフィルムを硬化させて得られる硬化物。
[10] [1]又は[9]に記載の硬化物を有する、プリント配線板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の空隙率を有し低誘電率、低誘電正接の硬化物、その硬化物を形成するために中空フィラーを含む硬化性樹脂組成物、ドライフィルム及び硬化物を有するプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」、「メタクリレート」及びこれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0011】
[硬化物]
本発明による硬化物は、硬化性樹脂組成物からなる硬化物であって、空隙率が5体積%以上15体積%以下である。本発明の硬化物は、低誘電率、低誘電正接であるという優れた特性を有するため、特にプリント配線板のソルダーレジストに好適に用いることができる。なお、本発明において硬化した状態とは、具体的には、硬化物の表面に、イソプロピルアルコールを含ませたウエスを載せ、さらに、その上に500gのおもりを載せて1分間、静置した後に、ウエスの表面に硬化性樹脂組成物が付着していない状態であることをいう。硬化物の作製方法は後述の硬化被膜の説明及び実施例に記載の方法などが挙げられる。
【0012】
硬化物の空隙率は5体積%以上15体積%以下である。硬化物の空隙率が上記数値範囲内であれば、優れた低誘電率と低誘電正接とを実現することができる。
硬化物の空隙率は、好ましくは5体積%以上13体積%以下であり、より好ましくは6体積%以上12体積%以下である。
なお、硬化物の空隙率は従来公知の方法により算出することができ、例えば、実施例に記載の方法などが挙げられる。
なお、硬化物の空隙率を調整する方法としては特に限定されないが、例えば本発明の硬化性樹脂組成物において配合される中空フィラーの種類や配合量を調整する方法が挙げられる。また、中空フィラーの代わりに配合されるか又は中空フィラーと併用して配合される発泡剤の種類や配合量を調整する方法などが挙げられる。
【0013】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂、光重合開始剤、及び中空フィラーを含有する。本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分を含むため、高感度で、誘電率および誘電正接が低く、はんだ耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。高感度の場合、硬化物を得る際の露光時間を短くすることができるため、タクトタイムの短縮につながる。
【0014】
(カルボキシル基含有樹脂)
本実施形態の硬化性樹脂組成物におけるカルボキシル基含有樹脂は、アルカリ現像性を付与するために用いられ、分子中にカルボキシル基を含有する公知の樹脂を使用することができる。特に、光硬化性や耐現像性の面から、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するカルボキシル基含有樹脂が好ましい。そして、その不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものがより好ましい。
カルボキシル基含有樹脂としては、エポキシ樹脂を出発原料とするカルボキシル基含有樹脂、ウレタン骨格を有するカルボキシル基含有ウレタン樹脂、不飽和カルボン酸の共重合構造を有するカルボキシル基含有共重合樹脂、フェノール化合物を出発原料とするカルボキシル基含有樹脂が好ましい。
以下にカルボキシル基含有樹脂の具体例を示す。
【0015】
(1)(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどの不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物などのジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物などのジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
(5)上述した(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(6)上述した(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
(7)後述するような2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。ここで、エポキシ樹脂は、固形であることが好ましい。
(8)後述するような2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。ここで、エポキシ樹脂は、固形であることが好ましい。
(9)ノボラックなどの多官能フェノール化合物にエチレンオキサイドなどの環状エーテル、又は、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネートを付加させ、得られた水酸基を(メタ)アクリル酸で部分エステル化し、残りの水酸基に多塩基酸無水物を反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
(10)これら(1)~(9)の樹脂に、さらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどの分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0016】
カルボキシル基含有樹脂は、これらのものに限らず使用することができ、1種類でも複数種混合しても使用することができる。
なお、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、以下他の類似の表現についても同様である。
カルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数の遊離のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能となる。
【0017】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、好ましくは40~200mgKOH/gである。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g~200mgKOH/g以下であると、硬化被膜の密着性が得られ、アルカリ現像が容易となり、現像液による露光部の溶解が抑えられ、必要以上にラインが痩せたりせずに、正常なレジストパターンの描画が容易となる。より好ましくは45~120mgKOH/gである。
【0018】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。2,000~150,000の範囲であると、タックフリー性能が良好であり、露光後の硬化被膜の耐湿性が良く、現像時に膜減りが生じにくい。また、上記重量平均分子量の範囲であると、解像度が向上し、現像性が良好であり、貯蔵安定性が良くなる。より好ましくは5,000~100,000である。
【0019】
カルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物中に、20~80質量%が適当である。20質量%以上80質量%以下であると、皮膜強度が良好で、組成物の粘性を低くでき、塗布性などに優れる。より好ましくは30~60質量%である。
【0020】
(光重合開始剤)
本発明の硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を好適に使用することができる。
【0021】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアー OXE01、イルガキュアー OXE02、アデカ社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、カルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が好ましい。
【0022】
アルキルフェノン系光重合開始剤の市販品としてはBASFジャパン社製イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー2959、イルガキュアー127などのα―ヒドロキシアルキルフェノンタイプが挙げられる。
【0023】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、BASFジャパン社製のイルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379などが挙げられる。
【0024】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、BASF社製のルシリンTPO、BASFジャパン社製のイルガキュアー819などが挙げられる。
また、光重合開始剤としてはBASFジャパン製のイルガキュア389、イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤も好適に用いることが出来る。
【0025】
光重合開始剤の配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1~25質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。0.1~25質量部であることにより、光硬化性及び解像性に優れ、密着性やPCT耐性も向上し、さらには無電解金めっき耐性などの耐薬品性にも優れる硬化膜を得ることができる。特に、25質量部以下であると、アウトガスの低減効果が得られ、さらに硬化被膜の表面での光吸収が激しくなり、深部硬化性が低下することを抑えることができる。
【0026】
上記硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤の他に、光開始助剤、増感剤を用いることができる。硬化性樹脂組成物に好適に用いることができる光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、及びキサントン化合物などを挙げることができる。
【0027】
これらの光重合開始剤、光開始助剤及び増感剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。このような光重合開始剤、光開始助剤、及び増感剤の総量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して35質量部以下であることが好ましい。35質量部以下であると、これらの光吸収により深部硬化性が低下することを抑制できる。
【0028】
(中空フィラー)
中空フィラーとは、内部が空洞のフィラーである。空洞の程度は中空フィラーの空隙率により表すことができ、好ましい中空フィラーの空隙率は30~50体積%である。中空フィラーの空隙率が30~50体積%であると、硬化物において好ましい空隙率が得られる。
中空フィラーの平均粒径D50は、好ましくは0.1μm~110μm、より好ましくは0.5μm~100μmである。平均粒径D50が0.1μm~110μmであると、硬化物において好ましい空隙率が得られる。
中空フィラーとしては、内部が空洞であればいずれでもよいが、中空シリカが好ましい。また、中空フィラーは、中空シリカの他に、中空ガラスであってもよい。
中空シリカの具体例としては、日揮触媒化成社製スルーリア1110などが挙げられる。また、中空ガラスの具体例としては、住友スリーエム株式会社製グラスバブルズK1、K15、K20、S22、K25、K37、S38、VS5500、S42XHS、K46、iM16K、S60J、S60HS、iM30K、ポッターズ・バロティーニ社製Sphericel 110P8、60P18、34P30、25P45、Q-CEL 5020、5020FPS、7014、7040S、Ceramic Multi Cellular CMC-20、CMC-15L、Extendospheres SGなどが挙げられる。
中空フィラーは、1種又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0029】
中空フィラーの配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは250質量部以下、より好ましくは20~150質量部、特に好ましくは、30~130質量部である。中空フィラーの配合量が、250質量部以下であると、所期した空隙率の硬化物が得られる。
【0030】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述した空隙率を有する本発明の硬化物を形成するために、中空フィラーに代えて、又は中空フィラーと併用して、発泡剤を含むことができる。発泡剤は無機系発泡剤や有機系発泡剤を用いることができ、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられる。有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。有機アゾ化合物としては、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス-イソブチロニトリル等が挙げられる。有機系発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p,p-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などである。
発泡剤の配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、好ましくは250質量部以下である。
【0031】
(光重合性モノマー)
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに光重合性モノマーを含むことができる。光重合性モノマーとしては、分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物等が使用される。
【0032】
分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物若しくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物若しくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの多価アクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類等が挙げられる。
【0033】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、グリセリンジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類等が挙げられる。
【0034】
またグリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAグリシジルエーテルジアクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリアクリレート等;その他、2,2-ビス(4-アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルアクリレート、及び/又は上記アクリレートに対応する各メタクリレート類等が挙げられる。これらの光重合性モノマーは、単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0035】
光重合性モノマーの配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、より好ましくは10~90質量部、さらにより好ましくは15質量部~85質量部であることが好ましい。上記配合量の範囲とすることで、光硬化性が向上して、パターン形成が容易となり、硬化膜の強度も向上できる。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに熱硬化性成分を含むことができる。
熱硬化性成分としては、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、メラミン誘導体などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、1分子中に2個以上の環状エーテル基及び/又は環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0037】
このような分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4又は5員環の環状エーテル基、又は環状チオエーテル基のいずれか一方又は2種類の基を2個以上有する化合物であり、例えば、分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0038】
前記多官能エポキシ化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、大日本インキ化学工業社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社のアラルダイド6071、アラルダイド6084、アラルダイドDY250、アラルダイドDY260、住友化学工業社製のスミ-エポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL903、大日本インキ化学工業社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド8011、住友化学工業社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、大日本インキ化学工業社製のエピクロンN-730、エピクロンN-770、エピクロンN-865、東都化成社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドECN1235、アラルダイドECN1273、アラルダイドECN1299、アラルダイドXPY307、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、住友化学工業社製のスミ-エポキシESCN-195X、ESCN-220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN-235、ECN-299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製のエピクロン830、ジャパンエポキシレジン社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドXPY306等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH-434、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドMY720、住友化学工業社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY-350(商品名)等のヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドCY175、CY179等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL-933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、旭電化工業社製EPX-30、大日本インキ化学工業社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン社製のjERYL-931、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイド163等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のアラルダイドPT810、日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDDT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN-190、ESN-360、大日本インキ化学工業社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;大日本インキ化学工業社製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えばダイセル化学工業製PB-3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR-102、YR-450等)等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にノボラック型エポキシ樹脂、変性ノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物が好ましい。
【0039】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0040】
前記分子中に2つ以上の環状チオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)や、東都化成(株)製YSLV-120TEなどが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0041】
熱硬化性成分の配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して10~100質量部が好ましい。
特に、分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、環状(チオ)エーテル基が、好ましくは0.6~2.5当量、より好ましくは、0.8~2.0当量となる範囲である。熱硬化性成分の配合量が上記範囲であると、耐熱性、耐アルカリ性、電気絶縁性、硬化被膜の強度などが良好である。
【0042】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、指触乾燥性の改善、ハンドリング性の改善などを目的にバインダーポリマーを使用することができる。例えばポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステルウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステルアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、フェノキシ系ポリマーなどを用いることができる。これらのバインダーポリマーは、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0043】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物は、柔軟性の付与、硬化物の脆さを改善することなどを目的に更に他のエラストマーを使用することができる。例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステルウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステルアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマーを用いることができる。また、種々の骨格を有するエポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン-アクリロニトリルゴムで変性した樹脂なども使用できる。さらにはエポキシ含有ポリブタジエン系エラストマー、アクリル含有ポリブタジエン系エラストマーなども使用することができる。これらのエラストマーは、単独で又は2種類以上の混合物として使用することができる。
【0044】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂の合成や組成物の調整のため、又は基板やキャリアフィルムに塗布するための粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。
このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などである。このような有機溶剤は、単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0045】
一般に、高分子材料の多くは、一度酸化が始まると、次々と連鎖的に酸化劣化が起き、高分子素材の機能低下をもたらすことから、本発明の硬化性樹脂組成物には、酸化を防ぐために(1)発生したラジカルを無効化するようなラジカル捕捉剤又は/及び(2)発生した過酸化物を無害な物質に分解し、新たなラジカルが発生しないようにする過酸化物分解剤などの酸化防止剤を添加することができる。
【0046】
ラジカル捕捉剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としては、ヒドロキノン、4-t-ブチルカテコール、2-t-ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン等のフェノール系、メトキノン、ベンゾキノン等のキノン系化合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート、フェノチアジン等のアミン系化合物等などが挙げられる。
【0047】
ラジカル捕捉剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブAO-30、アデカスタブAO-330、アデカスタブAO-20、アデカスタブLA-77、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-67、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-87(以上、旭電化社製、商品名)、IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、TINUVIN 111FDL、
TINUVIN 123、TINUVIN 144、TINUVIN 152、TINUV
IN 292、TINUVIN 5100(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)などが挙げられる。
【0048】
過酸化物分解剤として働く酸化防止剤としては、具体的な化合物としてトリフェニルフォスファイト等のリン系化合物、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系化合物などが挙げられる。
【0049】
過酸化物分解剤は市販のものであってもよく、例えば、アデカスタブTPP(旭電化社製、商品名)、マークAO-412S(アデカ・アーガス化学社製、商品名)、スミライザーTPS(住友化学社製、商品名)などが挙げられる。
上記の酸化防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また一般に、高分子材料は光を吸収し、それにより分解・劣化を起こすことから、本発明の硬化性樹脂組成物には、紫外線に対する安定化対策を行うために、上記酸化防止剤の他に、紫外線吸収剤を使用することができる。
【0051】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、シンナメート誘導体、アントラニレート誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体などが挙げられる。ベンゾフェノン誘導体の具体的な例としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン及び2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ベンゾエート誘導体の具体的な例としては、2-エチルヘキシルサリチレート、フェニルサリチレート、p-t-ブチルフェニルサリチレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール誘導体の具体的な例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)べンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。トリアジン誘導体の具体的な例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては市販のものであってもよく、例えば、TINUVIN PS、TINUVIN 99-2、TINUVIN 109、TINUVIN 384-2、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 1130、TINUVIN
400、TINUVIN 405、TINUVIN 460、TINUVIN 479(
以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)などが挙げられる。
上記の紫外線吸収剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、前記酸化防止剤と併用することで本発明の硬化性樹脂組成物より得られる成形物の安定化が図れる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物には、感度を向上するために連鎖移動剤として公知慣用のNフェニルグリシン類、フェノキシ酢酸類、チオフェノキシ酢酸類、メルカプトチアゾール等を用いることができる。連鎖移動剤の具体例を挙げると例えば、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メチオニン、システイン、チオサリチル酸及びその誘導体等のカルボキシル基を有する連鎖移動剤;メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトブタンジオール、ヒドロキシベンゼンチオール及びその誘導体等の水酸基を有する連鎖移動剤;1-ブタンチオール、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、ドデシルメルカプタン、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、1-オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、チオグリセロール、4,4-チオビスベンゼンチオール等である。
【0054】
また、多官能性メルカプタン系化合物を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサン-1,6-ジチオール、デカン-1,10-ジチオール、ジメルカプトジエチルエーテル、ジメルカプトジエチルスルフィド等の脂肪族チオール類、キシリレンジメルカプタン、4,4′-ジメルカプトジフェニルスルフィド、1,4-ベンゼンジチオール等の芳香族チオール類;エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、ポリエチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、プロピレングリコールビス(メルカプトアセテート)、グリセリントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)等の多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート)類;エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の多価アルコールのポリ(3-メルカプトプロピオネート)類;1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等のポリ(メルカプトブチレート)類を用いることができる。
これらの市販品としては、例えばBMPA、MPM、EHMP、NOMP、MBMP、STMP、TMMP、PEMP、DPMP、及びTEMPIC(以上、堺化学工業(株)製)、カレンズMT-PE1、カレンズMT-BD1、及びカレンズ-NR1(以上、昭和電工(株)製)等を挙げることができる。
【0055】
さらに、連鎖移動剤として働くメルカプト基を有する複素環化合物として、例えば、メルカプト-4-ブチロラクトン(別名:2-メルカプト-4-ブタノリド)、2-メルカプト-4-メチル-4-ブチロラクトン、2-メルカプト-4-エチル-4-ブチロラクトン、2-メルカプト-4-ブチロチオラクトン、2-メルカプト-4-ブチロラクタム、N-メトキシ-2-メルカプト-4-ブチロラクタム、N-エトキシ-2-メルカプト-4-ブチロラクタム、N-メチル-2-メルカプト-4-ブチロラクタム、N-エチル-2-メルカプト-4-ブチロラクタム、N-(2-メトキシ)エチル-2-メルカプト-4-ブチロラクタム、N-(2-エトキシ)エチル-2-メルカプト-4-ブチロラクタム、2-メルカプト-5-バレロラクトン、2-メルカプト-5-バレロラクタム、N-メチル-2-メルカプト-5-バレロラクタム、N-エチル-2-メルカプト-5-バレロラクタム、N-(2-メトキシ)エチル-2-メルカプト-5-バレロラクタム、N-(2-エトキシ)エチル-2-メルカプト-5-バレロラクタム、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メチルチオ-チアジアゾール、2-メルカプト-6-ヘキサノラクタム、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン(三協化成株式会社製:商品名 ジスネットF)、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン(三協化成株式会社製:商品名 ジスネットDB)、及び2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン(三協化成株式会社製:商品名 ジスネットAF)等が挙げられる。
【0056】
特に、硬化性樹脂組成物の現像性を損なうことがない連鎖移動剤であるメルカプト基を有する複素環化合物として、メルカプトベンゾチアゾール、3-メルカプト-4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール、5-メチル-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾールが好ましい。これらの連鎖移動剤は、単独又は2種以上を併用することができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物には、層間の密着性、又は樹脂層と基材との密着性を向上させるために密着促進剤を用いることができる。具体的に例を挙げると例えば、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール(商品名:川口化学工業(株)製アクセルM)、3-モルホリノメチル-1-フェニル-トリアゾール-2-チオン、5-アミノ-3-モルホリノメチル-チアゾール-2-チオン、2-メルカプト-5-メチルチオ-チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノ基含有ベンゾトリアゾール、シランカップリング剤などがある。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物には、上記分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT(登録商標)3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を前記熱硬化触媒と併用する。
【0059】
これら熱硬化触媒の配合量は、通常の量的割合で充分であり、例えば、カルボキシル基含有樹脂に対して、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.5~15.0質量部である。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特性に悪影響を与えない範囲で中空シリカ以外のフィラーを配合することができる。そのようフィラーとしては、公知慣用の無機又は有機フィラーが使用できるが、特に硫酸バリウム、球状シリカ及びタルクが好ましく用いられる。さらに、白色の外観や難燃性を得るために酸化チタンなどの金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を体質顔料フィラーとしても使用することができる。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイトなどのチキソ化剤を添加することができる。チキソ化剤としての経時安定性は有機ベントナイト、ハイドロタルサイトが好ましく、特にハイドロタルサイトは電気特性に優れている。また、熱重合禁止剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及び/又はレベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、着色剤、防錆剤、更にはビスフェノール系、トリアジンチオール系などの銅害防止剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0062】
前記熱重合禁止剤は、前記重合性化合物の熱的な重合又は経時的な重合を防止するために用いることができる。熱重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル又はアリール置換ハイドロキノン、t-ブチルカテコール、ピロガロール、2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-メトキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、塩化第一銅、フェノチアジン、クロラニル、ナフチルアミン、β-ナフトール、2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ピリジン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、4-トルイジン、メチレンブルー、銅と有機キレート剤との反応物、サリチル酸メチル、及びフェノチアジン、ニトロソ化合物、ニトロソ化合物とAlとのキレートなどが挙げられる。
【0063】
[硬化被膜(硬化物)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの乾燥塗膜を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、未露光部をアルカリ水溶液(例えば0.3~3%炭酸ソーダ水溶液)により現像してレジストパターンが形成される。さらに、熱硬化性成分例えば約130~180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、カルボキシル基含有樹脂と熱硬化性成分が反応し、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0064】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙-フェノール樹脂、紙-エポキシ樹脂、ガラス布-エポキシ樹脂、ガラス-ポリイミド、ガラス布/不繊布-エポキシ樹脂、ガラス布/紙-エポキシ樹脂、合成繊維-エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネート等の複合材を用いた全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法及びノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0066】
以下のように本発明の硬化性樹脂組成物を塗布し、揮発乾燥した後、得られた塗膜に対し、露光(活性エネルギー線の照射)を行う。塗膜は、露光部(活性エネルギー線により照射された部分)が硬化する。
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光機、もしくは(超)高圧水銀ランプなどの紫外線ランプを使用した直接描画装置を用いることができる。
【0067】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【0068】
[ドライフィルム]
本発明の硬化性樹脂組成物は、液状で直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムに硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥して形成した樹脂層を有するドライフィルムの形態で使用することもできる。本発明の硬化性樹脂組成物をドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
【0069】
ドライフィルムは、第一のフィルムと、樹脂層と、必要に応じて用いられる剥離可能な第二のフィルムとが、この順序に積層された構造を有するものである。樹脂層は、本発明の硬化性樹脂組成物を、第一のフィルムに塗布、乾燥して得られる層である。第一のフィルムに樹脂層を形成した後に、必要に応じて第二のフィルムをその上に積層することでドライフィルムが得られる。
【0070】
第一のフィルムとしては、2~150μmの厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
樹脂層は、硬化性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルム又はカバーフィルムに10~150μmの厚さで均一に塗布し乾燥して形成される。
第二のフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが良い。
【0071】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に硬化被膜を作製するには、第二のフィルムが第二のフィルムを剥がし、樹脂層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて張り合わせ、回路形成された基材上に樹脂層を形成する。形成された樹脂層に対し、前記と同様に露光、現像、加熱硬化すれば、硬化被膜を形成することができる。第一のフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すればよい。
【0072】
[プリント配線板]
本発明の硬化性樹脂組成物は、プリント配線板上に硬化被膜を形成するために用いられる。硬化被膜としては、現像型の永久絶縁被膜であることが好ましく、現像型のソルダーレジスト又はカバーレイであることが特に好ましい。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、層間絶縁材、穴埋充填材、ソルダーダム形成用材料として使用してもよい。
【実施例0073】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。尚、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0074】
合成例1
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和高分子(株)製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19g及びトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18g及びトルエン252.9gを、撹拌機、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5g及びトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計及び空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。固形物の酸価88mgKOH/g、不揮発分71%のカルボキシル基含有感光性樹脂の樹脂溶液を得た。以下、これをカルボキシル基含有樹脂とする。
【0075】
下記表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、硬化性樹脂組成物を調製した。なお、中空フィラーの平均粒径D50は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装(株)製「マイクロトラックMT3200II」を用いて測定した値である。
【0076】
【表1】
【0077】
表1中、カルボキシル基含有樹脂は、上述の合成例1であった。
光重合開始剤は、BASF社製IRGACURE907(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)であった。
中空フィラーは、中空シリカ(平均粒径D50が0.5μm、空隙率が40%)であった。
光重合性モノマーは、新中村工業製NKエステル A-TMPT(トリメチロールプロパントリアクリレート)であった。
熱硬化触媒は、DICY(ジシアンジアミド)であった。
熱硬化性成分1は、DIC社製N-660(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量202-212g/eq)であった。
熱硬化性成分2は、ジャパンエポキシレジン社製jER828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量184-194g/eq)であった。
着色剤1は、C.I.Pigment Blue 15:3であった。
着色剤2は、C.I.Pigment Yellow147であった。
消泡剤は、共栄社化学社製フローレンAC-902、シリコーン系消泡剤であった。
その他フィラーは、デンカ社製SFP-130MCであった。
【0078】
<評価用基板の作製>
表1の実施例および比較例の硬化性樹脂組成物をそれぞれ、バフロール研磨後水洗、乾燥させた厚み0.018μmの銅箔にスクリーン印刷法により膜厚が50~65μmになるように100メッシュで2回全面に塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させた。その後、波長365nmの紫外線をオーク製作所(株)製の積算光量計を用いて400mJ/cmの光量で照射したものをスプレー圧2kg/cmの現像液(炭酸ナトリウム水溶液)にて60秒間の現像を行い、150℃熱風循環式乾燥炉で60分間熱硬化し誘電率Dkおよび誘電正接Dfの測定用サンプルを得た。
【0079】
<誘電率Dkおよび誘電正接Dfの測定>
<評価用サンプルの作製>で得られた評価用基板を用いて、10GHzの誘電率Dkおよび誘電正接Dfを、JISK6911:1995に従って測定した。測定結果を表1に記載した。
【0080】
<硬化塗膜中の空隙率の算出>
<評価用サンプルの作製>で得られた評価用サンプルより銅箔を剥離し、実施例1~2および比較例1~2の硬化性樹脂組成物の硬化塗膜(硬化物)を得た。実施例1~2および比較例1~2の硬化性樹脂組成物の硬化塗膜を、5cm×8cmの大きさで2枚ずつ切り出した。切り出した各硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の厚さを測定した。この2枚ずつ切り出した各硬化性樹脂組成物の硬化塗膜を全面が重なるように重ね、重ねた各硬化性樹脂組成物の硬化塗膜の重量と体積とから、次式により硬化塗膜の密度を計算した。
また、別途に中空シリカの真密度を気体置換法により測定した。上述の硬化塗膜の密度と、この中空シリカの真密度と、硬化塗膜中の中空シリカの重量割合と、中空シリカの空隙率(実施例1~2:40%、比較例1~2:0%)とに基づいて次式により硬化塗膜中の空隙率を計算した。なお、比較例1~2は中空シリカの空隙率が0%のため、硬化塗膜中の空隙率は0%とした。得られた計算結果を表1に示した。
【0081】
表1から明らかなように、実施例1、2の硬化性樹脂組成物は、誘電率が低く、誘電正接も低かった。
なお、本実施例においては中空フィラーを用いて硬化物の空隙率を5~15体積%の範囲にした例を示したが、中空フィラーに代えて、発泡剤を用いた場合においても硬化物の空隙率を5~15体積%の範囲にすることができることを確認した。