(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139604
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】較正システム及び較正方法
(51)【国際特許分類】
G01J 5/80 20220101AFI20241002BHJP
G01J 5/53 20220101ALI20241002BHJP
G01J 5/00 20220101ALN20241002BHJP
【FI】
G01J5/80
G01J5/53
G01J5/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023050623
(22)【出願日】2023-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】松岡 豪
【テーマコード(参考)】
2G066
【Fターム(参考)】
2G066AC13
2G066BA11
2G066BA57
2G066BB15
2G066BC15
2G066CA15
2G066CB03
(57)【要約】
【課題】非接触温度測定装置の使用時における高精度の較正を可能にする較正システム及び較正方法が提供される。
【解決手段】較正システム(1)は、第1温度であるように制御される熱源(61)と、熱源の温度を測定する熱源温度測定部(62)と、熱源を制御する熱源制御部(63)と、を有する較正用装置(60)と、測定対象から放射される赤外線のエネルギー量に基づいて、算出式を用いて測定対象の温度を算出する非接触温度測定装置(10)と、を備え、較正用装置又は非接触温度測定装置は、測定対象を熱源とした場合に非接触温度測定装置が算出した温度が第1温度に等しくなるように、算出式の係数を補正する補正処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1温度であるように制御される熱源と、前記熱源の温度を測定する熱源温度測定部と、前記熱源を制御する熱源制御部と、を有する較正用装置と、
測定対象から放射される赤外線のエネルギー量に基づいて、算出式を用いて前記測定対象の温度を算出する非接触温度測定装置と、を備え、
前記較正用装置又は前記非接触温度測定装置は、前記測定対象を前記熱源とした場合に非接触温度測定装置が算出した温度が前記第1温度に等しくなるように、前記算出式の係数を補正する補正処理を実行する、較正システム。
【請求項2】
前記非接触温度測定装置と通信が可能な端末装置を備え、
前記較正用装置、前記非接触温度測定装置又は前記端末装置は、前記補正処理を実行する、請求項1に記載の較正システム。
【請求項3】
前記較正用装置、前記非接触温度測定装置又は前記端末装置は、ユーザが前記端末装置を用いて較正の実行を指示した場合に前記補正処理を開始する、請求項2に記載の較正システム。
【請求項4】
前記算出式の係数のうち、補正前の赤外線センサからの電気信号のゲイン係数及びオフセット係数が補正される、請求項1に記載の較正システム。
【請求項5】
較正用装置は、前記非接触温度測定装置が設けられる電子機器を収納又は設置する部材であって、前記非接触温度測定装置を前記第1温度と固定の温度差を有する第2温度に保つ恒温部を備える、請求項1に記載の較正システム。
【請求項6】
前記算出式の係数のうち、補正前の赤外線センサからの電気信号のゲイン係数、オフセット係数及びゲインの温度特性調整用の係数と、補正前の前記赤外線センサの温度のオフセット係数及びゲイン係数と、が補正される、請求項5に記載の較正システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の較正システムが実行する較正方法であって、
前記補正処理として、
前記熱源が前記第1温度であることを判定するステップと、
前記熱源が前記第1温度であるときに、前記測定対象を前記熱源とした場合に非接触温度測定装置が算出した温度と前記第1温度との差分を算出するステップと、
前記差分がゼロとなるように、前記算出式の係数を補正するステップと、を含む、較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は較正システム及び較正方法に関する。本開示は特に非接触温度測定装置の較正システム及び較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長が2μm以上の赤外線は、その熱的効果及びガスによる赤外線吸収の効果から、人体を検知する人感センサ、非接触温度測定装置及びガスセンサ等に使用されている。例えば非接触温度測定装置に用いられる赤外線センサは、測定対象から入射する赤外線のエネルギー量に基づいて温度を検出する。
【0003】
例えば特許文献1は、環境温度に基づいたオフセット補正量を加算又は減算する工程を有し、赤外線センサ信号の環境温度に対する変化を補正して、高精度に測定温度を定量することが可能な赤外線センサ信号の補正方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、赤外線センサを非接触温度測定装置として使用する場合に、例えば汚れなどの外的要因及び経時変化などの要因によって、測定精度が変化することがある。また、製品出荷時に赤外線センサの個体差についても考慮して補正が行われるが、この場合には黒体炉などが用いられることが一般的である。非接触温度測定装置の使用時に、黒体炉などの装置を用意して補正を行うことは困難である。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、非接触温度測定装置の使用時における高精度の較正を可能にする較正システム及び較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係る較正システムは、
第1温度であるように制御される熱源と、前記熱源の温度を測定する熱源温度測定部と、前記熱源を制御する熱源制御部と、を有する較正用装置と、
測定対象から放射される赤外線のエネルギー量に基づいて、算出式を用いて前記測定対象の温度を算出する非接触温度測定装置と、を備え、
前記較正用装置又は前記非接触温度測定装置は、前記測定対象を前記熱源とした場合に非接触温度測定装置が算出した温度が前記第1温度に等しくなるように、前記算出式の係数を補正する補正処理を実行する。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記非接触温度測定装置と通信が可能な端末装置を備え、
前記較正用装置、前記非接触温度測定装置又は前記端末装置は、前記補正処理を実行する。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記較正用装置、前記非接触温度測定装置又は前記端末装置は、ユーザが前記端末装置を用いて較正の実行を指示した場合に前記補正処理を開始する。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記算出式の係数のうち、補正前の赤外線センサからの電気信号のゲイン係数及びオフセット係数が補正される。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(3)において、
較正用装置は、前記非接触温度測定装置が設けられる電子機器を収納又は設置する部材であって、前記非接触温度測定装置を前記第1温度と固定の温度差を有する第2温度に保つ恒温部を備える。
【0012】
(6)本開示の一実施形態として、(5)において、
前記算出式の係数のうち、補正前の赤外線センサからの電気信号のゲイン係数、オフセット係数及びゲインの温度特性調整用の係数と、補正前の前記赤外線センサの温度のオフセット係数及びゲイン係数と、が補正される。
【0013】
(7)本開示の一実施形態に係る較正方法は、
(1)から(6)のいずれかの較正システムが実行する較正方法であって、
前記補正処理として、
前記熱源が前記第1温度であることを判定するステップと、
前記熱源が前記第1温度であるときに、前記測定対象を前記熱源とした場合に非接触温度測定装置が算出した温度と前記第1温度との差分を算出するステップと、
前記差分がゼロとなるように、前記算出式の係数を補正するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、非接触温度測定装置の使用時における高精度の較正を可能にする較正システム及び較正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る非接触温度測定装置の較正システムの一構成例のブロック図である。
【
図2】
図2は、非接触温度測定装置の使用例を示す図である。
【
図3】
図3は、非接触温度測定装置を内蔵する電子機器の収納を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る非接触温度測定装置の較正方法の処理を例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、非接触温度測定装置を内蔵する電子機器の設置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る較正システム及び較正方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る較正システム1の一構成例のブロック図である。較正システム1は、非接触温度測定装置10と、較正用装置60と、を備える。較正システム1は、さらに端末装置50を備えてよい。較正システム1は非接触温度測定装置10の較正を実行するシステムである。本実施形態において較正とは、測定精度を低下させないために、定期的に又はユーザの要求に応じて行われる、測定対象の温度を算出するための算出式を補正する処理である。また、本実施形態において算出式の補正は、後述するように算出式で用いられる係数を調整することである。以下、較正において算出式の係数を補正する一連の処理を「補正処理」と称することがある。
【0018】
図2は、非接触温度測定装置10の使用例を示す図である。非接触温度測定装置10は、測定対象から放射される赤外線を検出して、検出した赤外線のエネルギー量に基づいて測定対象の温度を測定する装置である。非接触温度測定装置10は様々な電子機器で使用され得るが、本実施形態においてイヤホン40に設けられる。別の例として、非接触温度測定装置10は腕時計70(
図5参照)に設けられる。また、本実施形態において、使用時の非接触温度測定装置10が温度を測定する測定対象は、イヤホン40を使用する人(ユーザ)である。非接触温度測定装置10がユーザの温度(体温)を測定し、測定された温度に基づいてイヤホン40全体を制御するメイン制御装置が装着状態を判定して、イヤホン40の電源オン又は電源オフなどの動作を制御してよい。
【0019】
再び
図1を参照すると、非接触温度測定装置10は、赤外線センサ11と、演算制御装置20と、を備える。演算制御装置20は、信号処理部21と、温度測定部22と、記憶部24と、通信部25と、を備える。演算制御装置20は、非接触温度測定装置10が補正処理を実行する場合に、補正処理部をさらに備えてよい。非接触温度測定装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態において非接触温度測定装置10はイヤホン40の内部に配置される。また、イヤホン40の非接触温度測定装置10が配置されている部分には、赤外線を透過させるように、窓材30が設けられている。ここで、イヤホン40が使用されると窓材30が汚れて、非接触温度測定装置10の測定精度に影響が生じることがある。また、イヤホン40が使用される環境又は保管される環境によっても、非接触温度測定装置10の測定精度に影響が生じることがある。このような影響を除くために、イヤホン40の使用環境において非接触温度測定装置10の較正が行われることが好ましい。ただし、非接触温度測定装置10の製造出荷時と異なり、黒体炉を利用して補正することは難しい。本実施形態において、非接触温度測定装置10は、較正システム1が備える較正用装置60を利用することによって、イヤホン40の使用環境において補正が可能である。
【0021】
本実施形態において、端末装置50は、非接触温度測定装置10と通信が可能な装置である。本実施形態において、非接触温度測定装置10と端末装置50とは、双方向の無線通信を行うが、このような通信形態に限定されない。端末装置50は、例えばスマートフォン又はタブレット端末等の汎用の移動端末であるが、これらに限定されない。端末装置50は、ユーザによって所持される。端末装置50は、例えば非接触温度測定装置10からの各種情報を、ユーザに表示する表示装置(出力装置)として機能する。また、端末装置50は、ユーザが較正の実行などを指示する入力装置として機能する。
【0022】
以下、非接触温度測定装置10の構成要素の詳細が説明される。赤外線センサ11は、測定対象から放射される赤外線を検出する。また、赤外線センサ11は、検出された赤外線のエネルギー量(以下、赤外線量)に応じた電気信号を出力する。赤外線量に応じた電気信号は例えば電流値であってよい。赤外線センサ11は、半導体に赤外線が照射されるとその光量子によって発生する電子又は正孔を利用して、赤外線を検出する量子型のセンサであってよい。量子型のセンサは、熱型赤外線センサに比べて、高感度で応答速度が速い。
【0023】
演算制御装置20は、演算及び制御を実行するプロセッサを備える装置などであってよく、例えばマイコン(Micro Controller Unit)によって実現されてよい。また、演算制御装置20が備えるプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。
【0024】
信号処理部21及び温度測定部22の機能は、ソフトウェアによって実現されてよく、ハードウェアによって実現されてよい。また、演算制御装置20が補正処理部を備える場合に、補正処理部の機能も、ソフトウェアによって実現されてよく、ハードウェアによって実現されてよい。例えば記憶部24に1つ以上のプログラムが記憶されていてよい。記憶部24に記憶されたプログラムは、演算制御装置20が備えるプロセッサによって読み込まれると、演算制御装置20を信号処理部21及び温度測定部22などとして機能させてよい。
【0025】
信号処理部21は、検出された赤外線量に応じた電気信号を赤外線センサ11から取得する。そして、信号処理部21は、算出式を用いて電気信号から測定対象の温度を算出する。算出式は、赤外線量に応じた電気信号から測定対象の温度を算出する式(関数)である。ここで、赤外線センサ11は温度特性が大きい。そのため、算出式は赤外線センサ11の温度に応じた修正項を含んでよい。算出式は例えば以下の式(1)で示される。
【0026】
【0027】
ここで、Tobjは算出される測定対象の温度である。式(1)によって測定対象の温度が予測される。fは変換用の関数を示し、公知の技術の関数を用いることができるが、例えば4次以上の多項式であり得る。TS´は補正後の赤外線センサ11の温度である。また、IR´は補正後の赤外線センサ11からの電気信号(赤外線量に応じた電気信号)である。TSを補正前の温度測定部22によって測定される赤外線センサ11の温度とすると、TS´は例えば以下の式(2)で示される。また、IRを補正前の赤外線センサ11からの電気信号とすると、IR´は例えば以下の式(3)で示される。また、式(3)に含まれるGIR´´は例えば以下の式(4)で示される。
【0028】
【0029】
ここで、GTS´はTSのゲインについての補正係数(ゲイン係数)である。OTSはTSのオフセットについての補正係数(オフセット係数)である。GIR´及びGIR´´はIRのゲイン係数である。GIT´はIRのゲインの温度特性調整用の係数である。また、OIRはIRのオフセット係数である。6つの補正係数(GTS´、OTS、GIR´、GIR´´、GIT´、OIR)は、非接触温度測定装置10の出荷時に、例えば黒体炉などを用いた測定に基づいて個体毎に設定される。較正においては、6つの補正係数の少なくとも一部が補正処理によって調整される。
【0030】
温度測定部22は、赤外線センサ11の温度を測定する。温度測定部22は、測定した温度を示す信号である温度情報を出力する。温度情報は、直接的に温度を示してよいし、温度に応じた値(一例として温度に比例して変化する電圧値)であってよい。本実施形態において、温度情報は直接的な温度(上記のTS)であるとする。温度測定部22は、特定の種類に限定されず、公知の構成のものが用いられてよい。温度測定部22は、例えばサーミスタ又は白金抵抗体などを含んで構成されてよい。本実施形態において、赤外線センサ11と演算制御装置20とが積層するように配置されるが(
図2の右図参照)、温度測定部22は、演算制御装置20に含まれて、赤外線センサ11と近接するように設けられてよい。
【0031】
記憶部24は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部24は、演算制御装置20が実行する各種の処理において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部24は、演算制御装置20が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0032】
記憶部24は測定対象の温度の算出で用いられる算出式を記憶してよい。また、記憶部24は、補正処理が実行された場合に、補正後の算出式又は係数を記憶してよい。また、上記のように、記憶部24はプログラムを記憶してよい。
【0033】
通信部25は、較正用装置60と通信するための1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。また、通信部25は、ユーザの入力装置及び出力装置の少なくとも一方として機能する端末装置50と通信するために、1つ以上の通信モジュールを含んで構成されてよい。通信部25は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部25は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0034】
較正用装置60は熱源61と、熱源温度測定部62と、熱源制御部63と、を備える。較正用装置60は恒温部64をさらに備えてよい。較正用装置60は、非接触温度測定装置10が設けられる電子機器を収納する部材(例えばケース)であってよい。本実施形態において、較正用装置60はイヤホン40の充電ケースである。ここで、別の例として、較正用装置60は、電子機器を設置する部材(例えば充電装置)であってよい(
図5参照)。つまり、較正用装置60は、電子機器を収納又は設置する部材であり得る。
図3は、非接触温度測定装置10を内蔵する電子機器(イヤホン40)の収納を説明するための図である。較正用装置60は較正の際に非接触温度測定装置10に既知の温度(第1温度)の熱源61を測定させる機能を有する。また、本実施形態において較正用装置60は電子機器を既知の温度(第2温度)に保つ機能を有する。ただし、例えば
図5のように、較正用装置60は電子機器を既知の温度(第2温度)に保つ機能を省略する構成であってよい。
【0035】
熱源61は第1温度であるように制御される発熱体である。熱源61は、例えば電流を流すことで発熱する発熱部分と、発熱部分と接触する金属部分とで構成されてよい。ただし、熱源61は特定の構成に限定されない。
【0036】
熱源温度測定部62は熱源61の温度を測定する。熱源温度測定部62は、例えばサーミスタ又は白金抵抗体などを含んで構成されてよい。
図3の例において、熱源温度測定部62は白金抵抗体である。
【0037】
熱源制御部63は熱源61を制御する。熱源制御部63は演算及び制御を実行するプロセッサを備える装置などであってよく、例えばマイコンによって実現されてよい。また、演算制御装置20が備えるプロセッサは、特定用途向けICを含んでよい。熱源制御部63は、較正の際に熱源61の温度が第1温度となるように制御する。また、熱源温度測定部62の状態に基づいて、熱源61の温度が第1温度であるかを判定する。
図3の例において、熱源制御部63は、白金抵抗体の抵抗値を測定して、測定された抵抗値から熱源61の温度を算出し、熱源61の温度が第1温度であるかを判定してよい。
【0038】
また、熱源制御部63は非接触温度測定装置10と通信するための通信機能を有する。例えば熱源制御部63は通信部25と同様の通信モジュールを含んでよい。熱源制御部63は、非接触温度測定装置10の通信部25を介して、記憶部24に記憶された算出式及び各種のデータを取得可能である。
【0039】
本実施形態において、熱源制御部63は補正処理(較正において算出式の係数を補正する処理)も実行する。ただし、補正処理は非接触温度測定装置10によって実行されてよい。つまり、較正システム1において、補正処理は較正用装置60又は非接触温度測定装置10で実行されてよい。また、本実施形態のように較正システム1が端末装置50を備える場合に、端末装置50が備えるプロセッサなどによって補正処理が実行されてよい。つまり、較正システム1において、補正処理は較正用装置60、非接触温度測定装置10又は端末装置50で実行されてよい。補正処理の詳細については後述する。
【0040】
恒温部64は、非接触温度測定装置10を第1温度と固定の温度差を有する第2温度に保つ。固定の温度差は、特定の値に限定されないが、一例として10℃である。本実施形態において、恒温部64は電子機器を収納する部材の内部空間であって、非接触温度測定装置10の温度を熱源61の温度より10℃低い温度に保つ。ただし、恒温部64は密閉された空間で実現されなくてよく、例えば電子機器を載置して用いる平板型の充電器で恒温部64の機能が実現されてよい。また、恒温部64にも例えば発熱体と白金抵抗体が備えられて、熱源制御部63は、熱源温度測定部62と同様の手法で、恒温部64の温度が第2温度であるかを判定してよい。
【0041】
図4は、本実施形態に係る較正方法の処理を示すフローチャートである。
図4に示される一連の処理が「補正処理」に対応する。非接触温度測定装置10の較正は、ユーザが端末装置50を用いて較正の実行を指示した場合に自動的に開始されてよい。また、非接触温度測定装置10の較正は、非接触温度測定装置10を内蔵する電子機器が較正用装置60に収納又は設置された場合に開始されてよい。また、非接触温度測定装置10の較正は定期的に実行されてよい。
【0042】
補正処理が較正用装置60又は端末装置50で実行される場合に、通信部25を介して、記憶部24に記憶された算出式は較正用装置60又は端末装置50によって取得される。
【0043】
熱源制御部63は、熱源61が第1温度であることを判定する(ステップS1)。熱源制御部63は、熱源61が第1温度になるまで待機する(ステップS1のNo)。熱源制御部63によって熱源61が第1温度になったと判定されると(ステップS1のYes)、補正処理はステップS2に進む。また、較正用装置60が恒温部64を備える場合に、恒温部64が第2温度であることが判定されてよい。
【0044】
熱源制御部63は、熱源61が第1温度であるときに、測定対象を熱源61とした場合に非接触温度測定装置10が算出した温度と第1温度との差分を算出する(ステップS2)。較正の際に、
図3に示すように、イヤホン40の非接触温度測定装置10は測定対象を熱源61とする。信号処理部21は、上記の式(1)を用いて測定対象である熱源61の温度を算出する。熱源制御部63は、通信部25を介して、算出された熱源61の温度(T
obj)を取得する。そして、熱源制御部63は温度(T
obj)と第1温度との差分を算出する。
【0045】
熱源制御部63は、非接触温度測定装置10が算出した温度(Tobj)が第1温度に等しくなるように、算出式の係数を補正する。換言すると、熱源制御部63は、差分がゼロとなるように、算出式の係数を補正する(ステップS3)。熱源制御部63は、較正用装置60が恒温部64を備えない場合に、式(3)の係数であるGIR´、GIR´´及びOIRについて補正を行う。このとき、GIT´は固定値に設定される。換言すると、第1温度を用いて、算出式の係数のうち、補正前の赤外線センサ11からの電気信号のゲイン係数(GIR´、GIR´´)及びオフセット係数(OIR)と、が補正される。第1温度に対して、GIR´を用いてIRの傾きを調整し、OIRを用いてIRのオフセット量を調整することで、第1温度の差分がゼロとなるようにする。また、熱源制御部63は、較正用装置60が恒温部64を備える場合に、TS´が第2温度であるように、式(3)の係数であるGTS´及びOTS、GIT´についてさらに補正を行う。換言すると、第1温度及び第2温度を用いて、算出式の係数のうち、補正前の赤外線センサ11からの電気信号のゲイン係数(GIR´、GIR´´)、オフセット係数(OIR)及びゲインの温度特性調整用の係数(GIT´)と、補正前の赤外線センサ11の温度のオフセット係数(OTS)及びゲイン係数(GTS´)と、が補正される。第1温度の差分と第2温度の差分がゼロとなるように、GTS´を用いてTSの傾きが調整され、OTSを用いてTSのオフセット量が調整される。また、ここで算出されたTS´を用いてGIT´を調整することで、IRゲインの温度特性が補正される。
【0046】
係数が補正された算出式は、記憶部24に記憶されて更新される。補正処理が、較正用装置60又は端末装置50で実行される場合に、補正後の係数又は算出式が非接触温度測定装置10に送信されて、算出式の更新が行われる。その後、信号処理部21は、補正後の係数を適用した算出式を用いて、窓材30の汚れなどの影響が補正された正確な測定対象の温度を算出することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る較正システム1及び較正方法は、上記の構成及び処理によって、非接触温度測定装置10の使用時における高精度の較正を可能にする。
【0048】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0049】
上記の実施形態において、非接触温度測定装置10は、イヤホン40に設けられるとして説明したが、イヤホン40に限らず様々な電子機器で使用可能である。例えば非接触温度測定装置10は、腕時計型の電子機器(
図5参照)又はスマートグラスなどで使用され得る。
【0050】
また、上記の実施形態において、較正用装置60が熱源61と、熱源温度測定部62と、熱源制御部63と、恒温部64と、を含む収納部材であるとして説明したが、このような構成に限定されない。例えば較正システム1が少なくとも熱源61と、熱源温度測定部62と、熱源制御部63と、を備える構成であれば、筐体としての較正用装置60が無くてよい。
【符号の説明】
【0051】
1 較正システム
10 非接触温度測定装置
11 赤外線センサ
20 演算制御装置
21 信号処理部
22 温度測定部
24 記憶部
25 通信部
30 窓材
40 イヤホン
50 端末装置
60 較正用装置
61 熱源
62 熱源温度測定部
63 熱源制御部
64 恒温部
70 腕時計