(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024139651
(43)【公開日】2024-10-09
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20241002BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241002BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241002BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241002BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023127009
(22)【出願日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2023049414
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】前 僚太
(72)【発明者】
【氏名】熊山 あかね
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CA05
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
3C158EB01
3C158ED10
3C158ED23
3C158ED26
5F057BB19
5F057BB38
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA17
5F057EA23
5F057EA26
5F057EA28
5F057EA32
(57)【要約】
【課題】Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なものとすることができる手段を提供する。また、酸化ケイ素および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の選択比を適度なものとすることができ、かつ研磨後の酸化ケイ素表面の欠陥を低減することができる手段を提供する。
【解決手段】砥粒と、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物と、を含有し、pHが7未満である、研磨用組成物であって、前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は負である、研磨用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、
炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物と、
を含有し、pHが7未満である、研磨用組成物であって、
前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は負である、研磨用組成物。
【請求項2】
前記アルキルアミン化合物は、前記アルキル基を1つのみ有するモノアルキルアミン化合物である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記アルキル基の炭素数は、2以上7以下である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記アルキルアミン化合物は、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、およびn-ヘキシルアミンからなる群より選択される少なくとも1種のモノアルキルアミン化合物である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記砥粒は、アニオン変性コロイダルシリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
pH調整剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
電気伝導度調整剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
分散媒をさらに含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は、-45mV以上-15mV以下である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項11】
前記Low-k材料は、SiOCである、請求項10に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
前記窒化ケイ素の研磨速度に対する前記Low-k材料の研磨速度の比(Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度)が1.0以上2.0以下である、請求項10に記載の研磨用組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項14】
Low-k材料および窒化ケイ素を含む半導体基板を、請求項13に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【請求項15】
酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項16】
前記酸化ケイ素の研磨速度に対する前記窒化ケイ素の研磨速度の比(窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度)が1.5以上2.5以下である、請求項15に記載の研磨用組成物。
【請求項17】
請求項1~9および請求項15~16のいずれか1項に記載の研磨用組成物を用いて、酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法。
【請求項18】
酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む半導体基板を、請求項17に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨方法、および半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(Large Scale Integration)の高集積化、高性能化に伴って新たな微細加工技術が開発されている。化学機械研磨(chemical mechanical polishing;CMP)法もその一つであり、LSI製造工程、特に多層配線形成工程における層間絶縁膜の平坦化、金属プラグ形成、埋め込み配線(ダマシン配線)形成において頻繁に利用される技術である。
【0003】
多層配線形成工程における層間絶縁膜の材料として、配線間容量を抑えるために、低誘電率(Low-k)材料が採用されつつある。プラズマCVD法により形成されるSiOC(SiO2にCをドープした、炭素含有酸化ケイ素)は、低誘電率(Low-k)材料として広く採用されている。
【0004】
SiOCを研磨するための技術として、特許文献1には、セリウムを含む砥粒と、ヒドロキシアルキルセルロースとを含有し、pHが6.0以上である研磨用組成物が開示されている。特許文献1によれば、このような構成とすることにより、SiOCの研磨速度を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、SiOCに代表されるLow-k材料と窒化ケイ素(Si3N4)とを共に含む基板が用いられるようになってきている。このような基板において、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、適度な研磨速度の選択比(例えば、Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度=1.0以上2.0以下)で研磨するという要求が高まってきている。しかしながら、特許文献1に記載の研磨用組成物によると、かような要求を満足しないという問題があった。
【0007】
また、酸化ケイ素と窒化ケイ素とを共に含む基板も用いられるようになってきている。このような基板においては、酸化ケイ素および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、適度な研磨速度の選択比(例えば、窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度=1.5以上2.5以下)で研磨し、さらに研磨後の酸化ケイ素表面の欠陥を低減するという要求が高まってきている。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なものとすることができる手段を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、酸化ケイ素および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の選択比を適度なものとすることができ、かつ研磨後の酸化ケイ素表面の欠陥を低減することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、砥粒と、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物と、を含有し、pHが7未満である、研磨用組成物であって、前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は負である、研磨用組成物によって、上記課題の少なくとも1つが解決することを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なものとすることができる手段が提供されうる。
【0012】
また、本発明によれば、酸化ケイ素および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の選択比を適度なものとすることができ、かつ研磨後の酸化ケイ素表面の欠陥を低減することができる手段が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、砥粒と、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物と、を含有し、pHが7未満である、研磨用組成物であって、前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は負である、研磨用組成物が提供される。かような本発明の研磨用組成物によれば、Low-k材料および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができ、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なもの(例えば、Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度=1.0以上2.0以下)とすることができる。また、本発明の研磨用組成物によれば、酸化ケイ素および窒化ケイ素を高い研磨速度で研磨しながら、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の選択比を適度なもの(例えば、窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度=1.5以上2.5以下)とすることができ、かつ研磨後の酸化ケイ素表面の欠陥(例えばスクラッチ)を低減することができる。
【0014】
なぜ、本発明の研磨用組成物により、上記効果が得られるのか、詳細は不明である。しかしながら、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物に対する効果発現は、以下のようなメカニズムによるものと考えられる。なお、当該メカニズムは推測によるものであり、本発明の技術的範囲が当該メカニズムにより制限されるものではない。
【0015】
Low-k材料の表面は一般に疎水性であるが、アルキルアミン化合物はLow-k材料に吸着しやすい。アルキルアミン化合物がLow-k材料の表面に吸着すると、Low-k材料の化学結合が歪み脆化しやすくなる。これにより、Low-k材料の研磨速度が高くなる。また、本発明に係る研磨用組成物は、pHが7.0未満であり、このような条件下では、窒化ケイ素表面のゼータ電位は正となる。ゼータ電位が正である窒化ケイ素表面に対して、静電的な引き合いにより、研磨用組成物に含まれる負のゼータ電位を有する砥粒が接近しやすくなり、窒化ケイ素の研磨速度も高くなる。その結果、Low-k材料および窒化ケイ素の研磨速度がともに高くなり(例えば、300Å/min以上)、かつ窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度な選択比(例えば、Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度=1.0以上2.0以下)とすることができる。さらに、本発明の研磨用組成物によれば、研磨後の研磨対象物(特には窒化ケイ素)表面の欠陥(例えばスクラッチ)を低減することができる。
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態のみには限定されず、特許請求の範囲内で種々改変することができる。本明細書に記載される実施形態は、任意に組み合わせることにより、他の実施形態とすることができる。本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で行う。
【0017】
[砥粒]
本発明に係る研磨用組成物は、砥粒を含む。該砥粒は、研磨対象物を機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を向上させる。
【0018】
本発明の研磨用組成物において、砥粒は、負のゼータ電位を有する。ここで、「ゼータ(ζ)電位」とは、互いに接している固体と液体とが相対運動を行なったときの両者の界面に生じる電位差のことである。砥粒のゼータ電位が0mV以上(0mVまたは正)の場合、Low-k材料、窒化ケイ素、および酸化ケイ素の研磨速度が低下する。
【0019】
本発明の研磨用組成物において、砥粒のゼータ電位は、-60mV以上-10mV以下であることが好ましく、-50mV以上-10mV以下であることがより好ましく、-45mV以上-15mV以下であることがさらに好ましい。砥粒がこのような範囲のゼータ電位を有していることにより、研磨対象物の研磨速度をより向上させることができる。また、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の選択比を適度なもの(例えば、Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度=1.0以上2.0以下)とすることができる。さらに、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の選択比を適度なもの(例えば、窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度=1.5以上2.5以下)とすることができる。
【0020】
ここで、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、実施例に記載の方法により測定される値である。また、砥粒のゼータ電位は、下記で説明する砥粒が有するアニオン性基(特には有機酸基)の量、研磨用組成物のpH等により調整することができる。
【0021】
砥粒の種類としては、特に制限されず、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物が挙げられる。該砥粒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。該砥粒は、それぞれ市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0022】
砥粒の種類としては、好ましくはシリカであり、より好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられ、いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであっても、本発明の砥粒として好適に用いられる。しかしながら、金属不純物低減の観点から、高純度で製造できるゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが好ましい。
【0023】
ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、研磨用組成物中に含まれるコロイダルシリカは、好ましくはアニオン変性コロイダルシリカ(アニオン修飾コロイダルシリカ)であり、より好ましくは有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカである。有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカは、有機酸が固定化されていない通常のコロイダルシリカに比べて、研磨用組成物中でのゼータ電位の絶対値が大きい傾向がある。そのため、研磨用組成物中におけるコロイダルシリカのゼータ電位を負に調整しやすい。
【0025】
有機酸を表面に固定化したコロイダルシリカとしては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アルミン酸基等の有機酸基を表面に固定化したコロイダルシリカが好ましく挙げられる。これらのうち、容易に製造できるという観点からスルホン酸、カルボン酸を表面に固定化したコロイダルシリカであるのが好ましく、スルホン酸を表面に固定化したコロイダルシリカであるのがより好ましい。
【0026】
コロイダルシリカの表面への有機酸の固定化は、コロイダルシリカと有機酸とを単に共存させただけでは果たされない。例えば、有機酸の一種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups”, Chem. Commun. 246-247 (2003)に記載の方法で行うことができる。具体的には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのチオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に過酸化水素でチオール基を酸化することにより、スルホン酸を表面に固定化したコロイダルシリカ(スルホン酸変性コロイダルシリカ、スルホン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0027】
あるいは、有機酸の一種であるカルボン酸をコロイダルシリカに固定化するのであれば、例えば、“Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel”, Chemistry Letters, 3, 228-229 (2000)に記載の方法で行うことができる。具体的には、光反応性2-ニトロベンジルエステルを含むシランカップリング剤をコロイダルシリカにカップリングさせた後に光照射することにより、カルボン酸を表面に固定化したコロイダルシリカ(カルボン酸変性コロイダルシリカ、カルボン酸修飾コロイダルシリカ)を得ることができる。
【0028】
砥粒の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭型形状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、ラグビーボール形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0029】
砥粒の大きさは特に制限されない。例えば、砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましく、12nm以上が特に好ましい。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。また、砥粒の平均一次粒子径は、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いた研磨により欠陥が少ない表面を得ることが容易になる。すなわち、砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上100nm以下であることが好ましく、8nm以上80nm以下であることがより好ましく、10nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、12nm以上50nm以下であることが特に好ましい。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法から算出した砥粒の比表面積(SA)を基に、砥粒の形状が真球であると仮定して算出することができる。本明細書では、砥粒の平均一次粒子径は、実施例に記載の方法により測定された値を採用する。
【0030】
また、砥粒の平均二次粒子径は、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、25nm以上であることが特に好ましい。砥粒の平均二次粒子径が大きくなるにつれて、研磨中の抵抗が小さくなり、安定的に研磨が可能になる。また、砥粒の平均二次粒子径は、400nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましく、80nm以下であることが最も好ましい。砥粒の平均二次粒子径が小さくなるにつれて、砥粒の単位質量当たりの表面積が大きくなり、研磨対象物との接触頻度が向上し、研磨速度がより向上する。すなわち、砥粒の平均二次粒子径は、10nm以上400nm以下であることが好ましく、15nm以上300nm以下であることがより好ましく、20nm以上200nm以下であることがさらに好ましく、25nm以上100nm以下であることがよりさらに好ましく、25nm以上80nm以下であることが特に好ましい。なお、砥粒の平均二次粒子径は、例えばレーザー回折散乱法に代表される動的光散乱法により測定することができる。
【0031】
砥粒の平均会合度は、5.0以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.5以下であることが特に好ましい。砥粒の平均会合度が小さくなるにつれて、欠陥をより低減することができる。砥粒の平均会合度はまた、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。この平均会合度とは、砥粒の平均二次粒子径の値を平均一次粒子径の値で除することにより得られる。砥粒の平均会合度が大きくなるにつれて、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する有利な効果がある。
【0032】
研磨用組成物中の砥粒のアスペクト比の上限は、特に制限されないが、2.0未満であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物表面の欠陥をより低減することができる。なお、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡により砥粒粒子の画像に外接する最小の長方形をとり、その長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均であり、一般的な画像解析ソフトウェアを用いて求めることができる。研磨用組成物中の砥粒のアスペクト比の下限は、特に制限されないが、1.0以上であることが好ましく、1.2以上がより好ましい。
【0033】
砥粒のレーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子質量が全粒子質量の90%に達するときの粒子の直径(D90)と全粒子の全粒子質量の10%に達するときの粒子の直径(D10)との比であるD90/D10の下限は、特に制限されないが、1.1以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.7以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが最も好ましい。また、研磨用組成物中の砥粒における、レーザー回折散乱法により求められる粒度分布において、微粒子側から積算粒子質量が全粒子質量の90%に達するときの粒子の直径(D90)と全粒子の全粒子質量の10%に達するときの粒子の直径(D10)との比D90/D10の上限は特に制限されないが、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物表面の欠陥を寄り低減することができる。
【0034】
砥粒の大きさ(平均一次粒子径、平均二次粒子径、アスペクト比、D90/D10等)は、砥粒の製造方法の選択等により適切に制御することができる。
【0035】
砥粒の濃度(含有量)は特に制限されないが、研磨用組成物の総質量に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%を超えることがさらにより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。また、砥粒の濃度(含有量)の上限は、研磨用組成物の総質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。すなわち、砥粒の濃度(含有量)は、研磨用組成物の総質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、0.8質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上15質量%以下がさらに好ましく、1質量%を超えて10質量%以下がさらにより好ましく、1.5質量%以上5質量%以下が特に好ましい。このような範囲であれば、コストを抑えながら、研磨速度を向上させることができる。なお、研磨用組成物が2種以上の砥粒を含む場合には、砥粒の濃度(含有量)は、これらの合計量を意味する。
【0036】
[アルキルアミン化合物]
本発明に係る研磨用組成物は、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物(以下、単に「アルキルアミン化合物」とも称する)を含有する。上述したように、アルキルアミン化合物は、Low-k材料の化学結合を歪ませる効果を有し、Low-k材料の研磨速度を向上させ得る。また、アルキルアミン化合物は、研磨後の酸化ケイ素表面の欠陥(例えばスクラッチ)を低減させ得る。
【0037】
本発明に係るアルキルアミン化合物は、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有する。このようなアルキル基を有する化合物であれば、モノアルキルアミン化合物(第一級アルキルアミン化合物)、ジアルキルアミン化合物(第二級アルキルアミン化合物)、トリアルキルアミン化合物(第三級アルキルアミン化合物)のいずれも使用可能である。
【0038】
スクラッチが増える要因の一つとして、砥粒と有機物残渣(例えば研磨パッド屑)とが複合体を形成し、その複合体が局所的な研磨を引き起こすことが考えられる。炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有する本発明に係るアルキルアミン化合物は、砥粒と有機物残渣(例えば研磨パッド屑)との両方に吸着しやすい。その結果、砥粒と有機物残渣との間に立体障害がもたらされ、砥粒と有機物残渣との複合体の形成を抑制し、スクラッチが抑制されると考えられる。
【0039】
炭素数が1であるアルキル基(メチル基)のみを有するアルキルアミン化合物の場合、Low-k材料の化学結合を歪ませる効果が低下し、Low-k材料の研磨速度が低下する。また、砥粒と有機物残渣(例えば研磨パッド屑)との両方に吸着しにくくなり、上記立体障害による複合体の形成の抑制が難しくなり、スクラッチが増加する傾向がある。
【0040】
炭素数が15を超えるアルキル基のみを有するアルキルアミン化合物の場合、窒化ケイ素の表面に吸着しやすくなり、窒化ケイ素の保護膜のように作用し、窒化ケイ素の研磨速度が低下する。また、砥粒が凝集しやすくなり、スクラッチが増大する。ジアルキルアミン化合物(第二級アルキルアミン化合物)およびトリアルキルアミン化合物(第三級アルキルアミン化合物)の場合、炭素数2以上15以下のアルキル基を少なくとも1つ有していれば、他のアルキル基は炭素数が1であるアルキル基(メチル基)または炭素数が15を超えるアルキル基であってもよいが、好ましくは炭素数2以上15以下のアルキル基のみを有する化合物である。
【0041】
炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基の例としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、2-メチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-アミル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、3-メチルペンタン-2-イル基、3-メチルペンタン-3-イル基、4-メチルペンチル基、4-メチルペンタン-2-イル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、1-(n-プロピル)ブチル基、1,1-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,3,3-トリメチルブチル基、1-エチル-2,2-ジメチルプロピル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキサン-2-イル基、2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、1,1-ジメチルペンタン-1-イル基、2,2-ジメチルヘキサン-3-イル基、2,3-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-2-イル基、2,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,4-ジメチルヘキサン-3-イル基、3,5-ジメチルヘキサン-3-イル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、2-メチルヘプタン-2-イル基、3-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-3-イル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,4-ジメチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、1-エチル-4-メチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1-イソプロピル-1,2-ジメチルプロピル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、n-ノニル基、1-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1-(n-ブチル)ペンチル基、4-メチル-1-(n-プロピル)ペンチル基、1,5,5-トリメチルヘキシル基、1,1,5-トリメチルヘキシル基、2-メチルオクタン-3-イル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-(n-ブチル)ヘキシル基、1,1-ジメチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、1-エチルノニル基、n-ドデシル基、1-メチルウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、1-メチルトリデシル基、n-ペンタデシル基等が挙げられる。ジアルキルアミン化合物(第二級アルキルアミン化合物)およびトリアルキルアミン化合物(第三級アルキルアミン化合物)が有する2以上のアルキル基は、互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
【0042】
アルキルアミン化合物のより具体的な例としては、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン等のモノアルキルアミン化合物(第一級アルキルアミン化合物);
ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、エチルメチルアミン、メチル-n-プロピルアミン、メチル-n-ブチルアミン、メチル-n-ペンチルアミン、メチル-n-オクチルアミン、メチル-n-デシルアミン、メチル-n-ドデシルアミン、メチル-n-テトラデシルアミン、メチル-n-ヘキサデシルアミン、メチル-n-オクタデシルアミン、エチルイソプロピルアミン、エチル-n-ブチルアミン、エチル-n-ペンチルアミン、エチル-n-オクチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、ジ-n-オクチルアミン、ジ-n-ドデシルアミン等のジアルキルアミン化合物(第二級アルキルアミン化合物);
トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ドデシルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジメチル-n-ヘキシルアミン、ジメチル-n-オクチルアミン、ジメチル-n-デシルアミン、ジエチル-n-デシルアミン、ジメチル-n-ドデシルアミン、ジメチル-n-テトラデシルアミン等のトリアルキルアミン化合物(第三級アルキルアミン化合物);
等が挙げられる。これらアルキルアミン化合物は、1種単独でもまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。また、アルキルアミン化合物は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0043】
本発明の効果がより向上するという観点から、アルキルアミン化合物は、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を1つのみ有するモノアルキルアミン化合物であることが好ましい。また、研磨後の研磨対象物表面のスクラッチをより低減させるという観点から、本発明に係るアルキルアミン化合物が有するアルキル基の炭素数は、2以上7以下であることがより好ましく、2以上6以下であることがさらに好ましい。アルキルアミン化合物が有するアルキル基の炭素数が多くなると、砥粒の凝集が起こりやすくなり、スクラッチの数が増える傾向にある。
【0044】
加えて、入手容易性およびコスト低減の観点から、上記アルキル基は、直鎖状であることが好ましい。
【0045】
以上のことから、本発明に係るアルキルアミン化合物は、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、およびn-ドデシルアミンからなる群より選択される少なくとも1種のモノアルキルアミン化合物がより好ましい。本発明に係るアルキルアミン化合物は、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、およびn-ヘプチルアミンからなる群より選択される少なくとも1種のモノアルキルアミン化合物がさらに好ましく、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、およびn-ヘキシルアミンからなる群より選択される少なくとも1種のモノアルキルアミン化合物が特に好ましい。
【0046】
研磨用組成物の総質量に対するアルキルアミン化合物の濃度(含有量)の下限は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.005質量%以上であることがより好ましく、0.007質量%以上であることがさらに好ましく、0.01質量%以上であることが特に好ましい。また、研磨用組成物の総質量に対するアルキルアミン化合物の濃度(含有量)の上限は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。すなわち、研磨用組成物の総質量に対するアルキルアミン化合物の濃度(含有量)は、0.001質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.007質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下であることが特に好ましい。このような範囲の濃度とすることにより、酸化ケイ素表面の欠陥低減の効果を達成しつつ、安定性を確保することができる。
【0047】
なお、研磨用組成物が2種以上のアルキルアミン化合物を含む場合、アルキルアミン化合物の濃度(含有量)は、これらの合計量を意味する。
【0048】
[電気伝導度調整剤]
本発明の一実施形態に係る研磨用組成物は、電気伝導度調整剤をさらに含むことが好ましい。電気伝導度調整剤は、研磨用組成物の電気伝導度を適切な範囲へと調整することで、例えば、酸化ケイ素の研磨速度をより向上させたり、または研磨用組成物の分散安定性を向上させたりするよう作用する。
【0049】
電気伝導度調整剤としては、電気伝導度調整機能を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、塩化合物を使用することができる。塩化合物としては、例えば、酸化合物の塩、塩基性化合物の塩等が挙げられる。酸化合物の塩としては、有機酸塩であっても、無機酸塩であってもよい。
【0050】
電気伝導度調整剤の具体的な例としては、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、チオ硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、シュウ酸二ナトリウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グルタル酸二ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化アンモニウム、臭化カルシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、三ヨウ化カリウム、ヨウ化カルシウム、リン酸三リチウム、リン酸三カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム等が挙げられる。これら電気伝導度調整剤は、1種単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0051】
これら電気伝導度調整剤の中でも、硫酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、酢酸カリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、シュウ酸二カリウム、シュウ酸アンモニウムが好ましい。
【0052】
電気伝導度調整剤の濃度(含有量)は、後述する研磨用組成物の好ましい電気伝導度の値となるような量を適宜選択すればよい。いくつかの実施形態によれば、電気伝導度調整剤の濃度(含有量)は、研磨用組成物の全質量を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、電気伝導度調整剤の濃度(含有量)は、研磨用組成物の全質量を100質量%として、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましい。すなわち、電気伝導度調整剤の濃度(含有量)は、研磨用組成物の全質量を100質量%として、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下がさらに好ましい。このような範囲の濃度により、酸化ケイ素の研磨速度向上を達成しつつ、安定性を確保することができる。
【0053】
なお、研磨用組成物が2種以上の電気伝導度調整剤を含む場合、電気伝導度調整剤の濃度(含有量)は、これらの合計量を意味する。
【0054】
[pHおよびpH調整剤]
本発明に係る研磨用組成物のpHは、7.0未満である。pHが7.0以上の場合、Low-k材料および窒化ケイ素の研磨速度が低下する。当該pHは、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、当該pHは、6.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物のpHは、1.0以上6.0以下であることが好ましく、1.5以上5.0以下であることがより好ましく、2.0以上4.5以下であることがさらに好ましい。
【0055】
本発明に係る研磨用組成物は、pHを調整するためのpH調整剤を含むことが好ましい。pH調整剤は酸および塩基のいずれであってもよく、また、無機化合物および有機化合物のいずれであってもよい。pH調整剤は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0056】
pH調整剤として使用できる酸の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、およびリン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸、およびフェノキシ酢酸等の有機酸が挙げられる。
【0057】
pH調整剤として使用できる塩基としては、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン、水酸化第四級アンモニウム等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、第2族元素の水酸化物、およびアンモニア等が挙げられる。
【0058】
pH調整剤の添加量は、特に制限されず、研磨用組成物が所望のpHとなるように適宜調整すればよい。また、研磨用組成物のpHは、例えばpHメーターにより測定することができ、具体的には実施例に記載の方法により測定することができる。
【0059】
[分散媒]
本発明に係る研磨用組成物は、分散媒をさらに含むことが好ましい。分散媒の例としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等や、これらの混合物等が例示できる。これらのうち、分散媒としては水が好ましい。すなわち、本発明のより好ましい形態によると、分散媒は水を含む。本発明のさらに好ましい形態によると、分散媒は実質的に水からなる。なお、上記の「実質的に」とは、本発明の目的効果が達成され得る限りにおいて、水以外の分散媒が含まれ得ることを意図し、より具体的には、好ましくは90質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上10質量%以下の水以外の分散媒とからなり、より好ましくは99質量%以上100質量%以下の水と0質量%以上1質量%以下の水以外の分散媒とからなる。最も好ましくは、分散媒は水である。
【0060】
研磨用組成物に含まれる成分の作用を阻害しないようにするという観点から、分散媒としては、不純物をできる限り含有しない水が好ましく、具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後、フィルターを通して異物を除去した純水や超純水、または蒸留水がより好ましい。
【0061】
[研磨用組成物の電気伝導度]
本発明に係る研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、特に制限されないが、0.5mS/cm以上であることが好ましく、1mS/cm以上であることがより好ましく、1.5mS/cm以上であることがさらに好ましい。また、本発明に係る研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、20mS/cm以下であることが好ましく、15mS/cm以下であることがより好ましく、10mS/cm以下であることがさらに好ましい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、0.5mS/cm以上20mS/cm以下であることが好ましく、1mS/cm以上15mS/cm以下であることがより好ましく、1.5mS/cm以上10mS/cm以下であることがさらに好ましい。研磨用組成物の電気伝導度(EC)がこのような範囲であれば、Low-k材料および窒化ケイ素の研磨速度を高く維持でき、また、砥粒同士の反発を適切に調整し、安定性を確保することができる。また、酸化ケイ素の研磨速度をより向上させることができる。研磨用組成物の電気伝導度は、上述した電気伝導度調整剤の種類および量、pH調整剤等の種類および量等により調整することができる。なお、研磨用組成物の電気伝導度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0062】
[他の成分]
本発明の研磨用組成物は、必要に応じて、水溶性高分子、錯化剤、金属防食剤、防腐剤、防カビ剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤等の研磨用組成物に用いられ得る公知の添加剤をさらに含有してもよい。これらの中でも、研磨用組成物は、防カビ剤を含むことが好ましい。本発明に係る研磨用組成物は、酸性である。このため、研磨用組成物は、防カビ剤を含むことがより好ましい。すなわち、本発明の一実施形態では、研磨用組成物は、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、ならびに電気伝導度調整剤、pH調整剤、および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される。ここで、「研磨用組成物が、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、ならびに電気伝導度調整剤、pH調整剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種から実質的に構成される」とは、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、ならびに電気伝導度調整剤、pH調整剤および防カビ剤からなる群より選択される少なくとも1種の合計含有量が、研磨用組成物の総質量に対して、99質量%を超える(上限:100質量%)ことを意図する。好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、pH調整剤、および防カビ剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。他の好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、電気伝導度調整剤、pH調整剤、および防カビ剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。他の好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、およびpH調整剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。他の好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、電気伝導度調整剤、およびpH調整剤から構成される(上記合計含有量=100質量%)。
【0063】
以下、好ましい他の成分である、防カビ剤(防腐剤)について説明する。また、酸化剤についても説明する。
【0064】
(防カビ剤)
本発明に係る研磨用組成物に添加し得る防カビ剤(防腐剤)としては、例えば、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンや5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、およびフェノキシエタノール等が挙げられる。これら防カビ剤(防腐剤)は、1種単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(酸化剤)
本発明に係る研磨用組成物は、酸化剤を実質的に含有しないことが好ましい。研磨用組成物中に酸化剤が含まれていると、研磨対象物の表面を酸化して酸化膜を生じさせ、研磨時間が長くなってしまう虞がある。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H2O2)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、研磨用組成物が酸化剤を実質的に含有しないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。したがって、原料や製法等に由来して微量の酸化剤が不可避的に含まれている研磨用組成物は、ここでいう酸化剤を実質的に含有しない研磨用組成物の概念に包含される。例えば、研磨用組成物の総質量に対する酸化剤の濃度(含有量)は、好ましくは0.01質量%(100質量ppm)以下、より好ましくは0.01質量%(100質量ppm)未満、さらに好ましくは0.005質量%(50質量ppm)以下である。酸化剤の濃度(含有量)の下限は、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0.0005質量%(5質量ppm)以上である。
【0066】
[研磨用組成物の形態]
本発明に係る研磨用組成物は、典型的には研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物に供給されて、その研磨対象物の研磨に用いられる。本発明に係る研磨用組成物は、例えば、希釈(典型的には、水により希釈)して研磨液として使用されるものでもよく、そのまま研磨液として使用されるものでもよい。すなわち、本発明に係る研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨用組成物(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨に用いられる濃縮液(ワーキングスラリーの原液)との双方が包含される。上記濃縮液の濃縮倍率は、例えば、体積基準で2倍以上100倍以下程度とすることができ、通常は3倍以上50倍以下程度が適当である。
【0067】
[研磨対象物]
本発明に係る研磨対象物は、特に制限されず、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン(ポリシリコン)、n型またはp型不純物がドープされた多結晶シリコン、非晶質シリコン(アモルファスシリコン)、n型またはp型不純物がドープされた非晶質シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(SiCN)、金属、SiGe、炭素含有材料、低誘電率材料(Low-k材料)等が挙げられる。
【0068】
酸化ケイ素を含む研磨対象物の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOSタイプ酸化ケイ素膜(以下、単に「TEOS」「TEOS膜」とも称する)、HDP(High Density Plasma)膜、USG(Undoped Silicate Glass)膜、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)膜、RTO(Rapid Thermal Oxidation)膜等が挙げられる。
【0069】
金属としては、例えば、タングステン、銅、アルミニウム、コバルト、ハフニウム、ニッケル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等が挙げられる。
【0070】
炭素含有材料としては、例えば、アモルファス炭素(アモルファスカーボン)、スピンオンカーボン(SOC)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ナノ結晶ダイヤモンド、グラフェン等のLow-k材料以外の材料が挙げられる。
【0071】
低誘電率材料(Low-k材料)は、酸化ケイ素よりも比誘電率kが低い材料であり、好ましくは比誘電率kが3.0以下の材料である。具体的には、炭化ケイ素(SiC)、炭素含有酸化ケイ素(SiOC)、メチル基を含有する酸化ケイ素、ベンゾシクロブテン(BCB)、フッ素化酸化ケイ素(SiOF)、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)、MSQ(メチルシルセスキオキサン)、HMSQ(ハイドライド-メチルシルセスキオキサン)、ポリイミド系ポリマー、アリーレンエーテル系ポリマー、シクロブテン系ポリマー、パーフロロシクロブテン(PFCB)等が挙げられる。
【0072】
研磨対象物は、市販品を用いてもよいし、または公知の方法により製造してもよい。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、研磨対象物は、Low-k材料と、窒化ケイ素と、を含むことが好ましい。よって、本発明の好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途に用いられる。Low-k材料は、好ましくは炭素含有酸化ケイ素(SiOC)である。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、研磨対象物は、酸化ケイ素と、窒化ケイ素と、を含むことが好ましい。よって、本発明の好ましい一実施形態によれば、研磨用組成物は、酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途に用いられる。
【0075】
[研磨用組成物の製造方法]
本実施形態に係る研磨用組成物の製造方法は、特に制限されず、例えば、砥粒、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物、分散媒、および必要に応じて添加される他の添加剤を攪拌混合することにより得ることができる。各成分の詳細は上記の通りである。
【0076】
各成分を混合する際の温度は特に制限されないが、10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を上げるために加熱してもよい。また、混合時間も、均一混合できれば特に制限されない。
【0077】
[研磨方法および半導体基板の製造方法]
上記のように、本発明のいくつかの実施形態に係る研磨用組成物は、Low-k材料および窒化ケイ素を有する研磨対象物の研磨に特に好適に用いられる。よって、本発明は、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を、本発明に係る研磨用組成物で研磨する研磨方法を提供する。また、本発明は、Low-k材料および窒化ケイ素を含む半導体基板を、上記研磨方法により研磨することを有する、半導体基板の製造方法を提供する。
【0078】
また、本発明のいくつかの実施形態に係る研磨用組成物は、酸化ケイ素および窒化ケイ素を有する研磨対象物の研磨に特に好適に用いられる。よって、本発明は、酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む研磨対象物を、本発明に係る研磨用組成物で研磨する研磨方法を提供する。また、本発明は、酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む半導体基板を、上記研磨方法により研磨することを有する、半導体基板の製造方法を提供する。
【0079】
研磨装置としては、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと回転数を変更可能なモーター等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。
【0080】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0081】
研磨条件については、例えば、研磨定盤(プラテン)およびキャリア(ヘッド)の回転速度は、10rpm(0.17s-1)以上500rpm(8.33s-1)以下が好ましい。研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.45kPa)以上10psi(68.9kPa)以下が好ましい。
【0082】
研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、例えば、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明に係る研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
【0083】
本実施形態に係る研磨用組成物は、一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、本発明に係る研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水等の希釈液を使って、例えば3倍以上に希釈することによって調製されてもよい。
【0084】
[研磨速度]
上記したように、本発明に係る研磨用組成物は、Low-k材料、窒化ケイ素、および酸化ケイ素を高い研磨速度で研磨することができる。
【0085】
本発明において、Low-k材料の研磨速度は、300Å/min以上であることが好ましく、350Å/min以上、400Å/min以上、500Å/min以上、550Å/min以上、600Å/min以上であってもよい。また、窒化ケイ素の研磨速度は、300Å/min以上であることが好ましく、350Å/min以上、370Å/min以上、400Å/min以上、450Å/min以上、500Å/min以上、550Å/min以上、600Å/min以上、650Å/min以上、670Å/min以上であってもよい。さらに、酸化ケイ素の研磨速度は、250Å/min以上であることが好ましく、300Å/min以上、310Å/min以上、320Å/min以上、330Å/min以上、340Å/min以上、350Å/min以上、360Å/min以上であってもよい。
【0086】
[選択比]
上記したように、本発明に係る研磨用組成物は、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の比(以下、選択比Aとも称する)を適切な範囲に制御することができる。また、上記したように、本発明に係る研磨用組成物は、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の比(以下、選択比Bとも称する)を適切な範囲に制御することができる。
【0087】
本発明において、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の比(選択比A、Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度)は、1.0以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、1.4以上であることが特に好ましい。また、窒化ケイ素の研磨速度に対するLow-k材料の研磨速度の比(選択比A、Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度)は、2.0以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましく、1.8以下であることがさらに好ましく、1.7以下であることが特に好ましい。すなわち、当該選択比Aは、1.0以上2.0以下であってもよく、1.0以上1.9以下であってもよく、1.0以上1.8以下であってもよく、1.0以上1.7以下であってもよい。当該選択比Aは、1.1以上2.0以下であってもよく、1.1以上1.9以下であってもよく、1.1以上1.8以下であってもよく、1.1以上1.7以下であってもよい。当該選択比Aは、1.2以上2.0以下であってもよく、1.2以上1.9以下であってもよく、1.2以上1.8以下であってもよく、1.2以上1.7以下であってもよい。当該選択比Aは、1.4以上2.0以下であってもよく、1.4以上1.9以下であってもよく、1.4以上1.8以下であってもよく、1.4以上1.7以下であってもよい。当該選択比Aが上記範囲を外れる場合、最終的に得られる研磨後の研磨対象物の表面状態が劣る場合がある。
【0088】
本発明において、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の比(選択比B、窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度)は、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、1.6以上であることが特に好ましい。また、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の比(選択比B、窒化ケイ素の研磨速度/酸化ケイ素の研磨速度)は、3.0以下であることが好ましく、2.9以下であることがより好ましく、2.8以下であることがさらに好ましく、2.5以下であることがよりさらに好ましく、2.4以下であることが特に好ましい。すなわち、当該選択比Bは、1.3以上3.0以下であってもよく、1.3以上2.9以下であってもよく、1.3以上2.8以下であってもよく、1.3以上2.5以下であってもよく、1.3以上2.4以下であってもよい。当該選択比Bは、1.4以上3.0以下であってもよく、1.4以上2.9以下であってもよく、1.4以上2.8以下であってもよく、1.4以上2.5以下であってもよく、1.4以上2.4以下であってもよい。当該選択比Bは、1.5以上3.0以下であってもよく、1.5以上2.9以下であってもよく、1.5以上2.8以下であってもよく、1.5以上2.5以下であってもよく、1.5以上2.4以下であってもよい。当該選択比Bは、1.6以上3.0以下であってもよく、1.6以上2.9以下であってもよく、1.6以上2.8以下であってもよく、1.6以上2.5以下であってもよく、1.6以上2.4以下であってもよい。当該選択比Bが上記範囲を外れる場合、最終的に得られる研磨後の研磨対象物の表面状態が劣る場合がある。
【0089】
[スクラッチ]
上記したように、本発明に係る研磨用組成物は、研磨後の研磨対象物(特に窒化ケイ素および/または酸化ケイ素)表面の欠陥(例えばスクラッチ)を低減することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態において、研磨後の研磨対象物(特に窒化ケイ素および/または酸化ケイ素)表面のスクラッチ数は、30未満であることが好ましく、20未満であることがより好ましく、10未満であることがさらに好ましく、5未満であることが特に好ましい。なお、スクラッチ数の下限は0である。本明細書において、スクラッチは、深さが10nm以上100nm未満、幅が5nm以上500nm未満、長さが100nm以上の研磨対象物表面の傷を指す。スクラッチ数の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0091】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明らかである。
【0092】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
1.砥粒と、炭素数2以上15以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を少なくとも1つ有するアルキルアミン化合物と、を含有し、pHが7未満である、研磨用組成物であって、前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は負である、研磨用組成物;
2.前記アルキルアミン化合物は、前記アルキル基を1つのみ有するモノアルキルアミン化合物である、上記1.に記載の研磨用組成物;
3.前記アルキル基の炭素数は、2以上7以下である、上記1.または2.に記載の研磨用組成物;
4.前記アルキルアミン化合物は、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、およびn-ヘキシルアミンからなる群より選択される少なくとも1種のモノアルキルアミン化合物である、上記1.~3.のいずれかに記載の研磨用組成物;
5.前記砥粒は、アニオン変性コロイダルシリカである、上記1.~4.のいずれかに記載の研磨用組成物;
6.pH調整剤をさらに含む、上記1.~5.のいずれかに記載の研磨用組成物;
7.電気伝導度調整剤をさらに含む、上記1.~6.のいずれかに記載の研磨用組成物;
8.分散媒をさらに含む、上記1.~7.のいずれかに記載の研磨用組成物;
9.前記研磨用組成物中の前記砥粒のゼータ電位は、-45mV以上-15mV以下である、上記1.~8.のいずれかに記載の研磨用組成物;
10.Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、上記1.~9.のいずれかに記載の研磨用組成物;
11.前記Low-k材料は、SiOCである、上記10.に記載の研磨用組成物;
12.前記窒化ケイ素の研磨速度に対する前記Low-k材料の研磨速度の比(Low-k材料の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度)が1.0以上2.0以下である、上記10.または11.に記載の研磨用組成物;
13.上記1.~12.のいずれかに記載の研磨用組成物を用いて、Low-k材料および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法;
14.Low-k材料および窒化ケイ素を含む半導体基板を、上記13.に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法;
15.酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する用途で使用される、上記1.~9.のいずれかに記載の研磨用組成物;
16.前記酸化ケイ素の研磨速度に対する前記窒化ケイ素の研磨速度の比(酸化ケイ素の研磨速度/窒化ケイ素の研磨速度)が1.5以上2.5以下である、上記15.に記載の研磨用組成物;
17.上記1.~9.および15.~16.のいずれかに記載の研磨用組成物を用いて、酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む研磨対象物を研磨する工程を含む、研磨方法;
18.酸化ケイ素および窒化ケイ素を含む半導体基板を、上記17.に記載の研磨方法により研磨する工程を有する、半導体基板の製造方法。
【実施例0093】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件下で行われた。なお、各物性は以下のようにして測定を行った。
【0094】
<砥粒の平均二次粒子径>
砥粒の平均二次粒子径は、動的光散乱式粒子径・粒度分布装置 UPA-UT151(日機装株式会社製)により、体積平均粒子径(体積基準の算術平均径;Mv)として測定した。
【0095】
<砥粒のゼータ電位>
研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、大塚電子株式会社製のゼータ電位測定装置(機器名「ELS-Z2」)を用いて測定した。
【0096】
<研磨用組成物のpH>
研磨用組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、型番:LAQUA)により測定した。
【0097】
<研磨用組成物の電気伝導度>
研磨用組成物の電気伝導度(EC)は、卓上型電気伝導度計(株式会社堀場製作所製、型番:DS-71 LAQUA(登録商標))により測定した。
【0098】
<スルホン酸変性コロイダルシリカ>
[製造例1]
以下の手順に従い、砥粒としてのスルホン酸変性コロイダルシリカを得た。
【0099】
(原料コロイダルシリカ分散液(非修飾シリカ粒子)の調製工程)
フラスコ内でメタノール 4080g、水 610gおよび29質量%アンモニア水溶液 168gを混合し、液温を20℃に保ち、そこにメタノール 135gとテトラメトキシシラン(TMOS) 508gとの混合液を滴下時間25分で滴下した。その後、pH7以上の条件下で熱濃縮水置換を行い、固形分濃度19.5質量%のシリカゾルを1000g得た(平均二次粒子径:34nm)。
【0100】
(表面修飾工程)
続いて、上記で得られたシリカゾル 1000g(シリカ固形分換算で195g)に対して、別途メタノール 4.8gと混合した3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、シランカップリング剤、製品名:KBM-803、信越化学工業株式会社製)2.4g(シリカ固形分の総質量に対するシランカップリング剤濃度:1.2質量%)を流速1mL/minで滴下した。その後加熱し、90℃で1時間攪拌を行った。
【0101】
次いで、放冷のため、上記反応液を一晩静置し、30質量%過酸化水素水0.0686g(シランカップリング剤1モルに対して3モル)を加え、再び90℃に加熱し、1時間攪拌を行った。その後、室温(25℃)まで冷却して、スルホン酸変性コロイダルシリカを得た。
【0102】
(実施例1)
<研磨用組成物の調製>
分散媒としての水に対して、上記製造例1で得られた砥粒であるスルホン酸変性コロイダルシリカ(平均二次粒子径:34nm)を、最終濃度が2質量%となるように加えた。さらに、n-ヘキシルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、最終濃度が0.1質量%となるように加え、攪拌混合を行った(攪拌温度:25℃、攪拌時間:20分)。硝酸を用いて研磨用組成物のpHを2.5に調整し、研磨用組成物を完成させた。
【0103】
(実施例2)
研磨用組成物のpHを4.0に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0104】
(実施例3)
n-ヘキシルアミンの代わりに、エチルアミン(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0105】
(実施例4)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-ブチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0106】
(実施例5)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-ヘプチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0107】
(実施例6)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-オクチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0108】
(実施例7)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-ドデシルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0109】
(比較例1)
n-ヘキシルアミンを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0110】
(比較例2)
n-ヘキシルアミンの代わりに、メチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0111】
(比較例3)
n-ヘキシルアミンの代わりに、ステアリルアミン(n-オクタデシルアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0112】
(比較例4)
研磨用組成物のpHを7.0に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0113】
[評価]
(実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物の研磨速度の評価)
実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物の各研磨用組成物を用いて、各研磨対象物の表面を下記の条件で研磨した。研磨対象物としては、以下の(1)、(2)を準備した:
(1)窒化ケイ素膜(Si3N4膜):表面に厚さ2000Åの窒化ケイ素膜を形成したシリコンウェーハ(200mm、ブランケットウェーハ)
(2)200mmウェーハ(SiOC膜、株式会社アドバンテック製、製品名:BD 5kA Blanket。
【0114】
実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物を用いて、この準備した基板を以下の研磨条件でそれぞれ研磨し、研磨速度を測定した:
(研磨装置および研磨条件)
研磨装置:アプライド・マテリアルズ製200mm用CMP片面研磨装置 Mirra
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
研磨圧力:2.0psi(1psi=6894.76Pa)
研磨定盤回転数:87rpm
ヘッド(キャリア)回転数:83rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:60秒。
【0115】
(研磨速度の算出)
各研磨対象物について、研磨前後の厚みを光学式膜厚測定器(ASET-f5x:ケーエルエー・テンコール株式会社製)で求めた。膜厚は、光学式膜厚測定器(ASET-f5x:ケーエルエー・テンコール社製)によって求めた。
【0116】
【0117】
(選択比A)
選択比Aは、上記で得られたSiOC膜の研磨速度を窒化ケイ素膜(Si3N4膜)の研磨速度で除することにより求めた。当該選択比Aは、1.0以上2.0以下であることが好ましい。なお、下記表1に示す選択比Aは、小数点第2位を四捨五入した値である。
【0118】
(実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物のスクラッチ評価)
実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物を用いて研磨を行った後の研磨対象物表面のスクラッチ数を評価した。具体的には、ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置“Surfscan(登録商標)SP2”を用いて、窒化ケイ素膜の全面(ただし外周10mmは除く)の座標を測定し、測定した座標をReview-SEM(RS-6000、株式会社日立ハイテク製)で全数観察することで、スクラッチ数を測定した。深さが10nm以上100nm未満、幅が5nm以上500nm未満、長さが100nm以上の研磨済研磨対象物表面の傷をスクラッチとしてカウントし、以下の評価基準によりスクラッチ数を評価した。スクラッチ数は、少ないほど好ましい:
<評価基準>
5:スクラッチ数が5未満
4:スクラッチ数が5以上10未満
3:スクラッチ数が10以上20未満
2:スクラッチ数が20以上30未満
1:スクラッチ数が30以上。
【0119】
実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物の構成および評価結果を下記表1に示す。なお、表1中の「-」は、その剤を使用していないことを表す。
【0120】
【0121】
上記表1から明らかなように、実施例の研磨用組成物を用いた場合、Low-k材料であるSiOCおよび窒化ケイ素の研磨速度がいずれも300Å/min以上であり、高い研磨速度が得られることがわかった。また、窒化ケイ素の研磨速度に対するSiOCの研磨速度の比(選択比A)が1.0以上2.0以下となっており、適切な選択比が得られることがわかった。一方、比較例の研磨用組成物を用いた場合、SiOCおよび窒化ケイ素のいずれか一方の研磨速度が低く、また、選択比も適度な値(1.0以上2.0以下)とならなかった。
【0122】
さらに、実施例の研磨用組成物を用いた場合、研磨後の研磨対象物表面のスクラッチが低減できた。比較例3の研磨用組成物を用いた場合、研磨後の研磨対象物表面のスクラッチが増大した。
【0123】
なお、上記表1は、Low-k材料(SiOC)を有する研磨対象物、および窒化ケイ素を有する研磨対象物を別々に研磨して得られた結果である。しかしながら、Low-k材料と、窒化ケイ素と、を共に有する研磨対象物を研磨した場合であっても、上記表1と同様の研磨速度、選択比、およびスクラッチの結果が得られると推測される。
【0124】
(実施例8)
<スルホン酸変性コロイダルシリカ>
[製造例2]
以下の手順に従い、砥粒としてのスルホン酸変性コロイダルシリカを得た。
【0125】
(原料コロイダルシリカ分散液(非修飾シリカ粒子)の調製工程)
フラスコ内でメタノール 4080g、水 610gおよび29質量%アンモニア水溶液 168gを混合し、液温を20℃に保ち、そこにメタノール 135gとテトラメトキシシラン(TMOS) 508gとの混合液を滴下時間25分で滴下した。その後、pH7以上の条件下で熱濃縮水置換を行い、固形分濃度19.5質量%のシリカゾルを1000g得た(平均二次粒子径:68nm)。
【0126】
(表面修飾工程)
続いて、上記で得られたシリカゾル 1000g(シリカ固形分換算で195g)に対して、別途メタノール 4.8gと混合した3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS、シランカップリング剤、製品名:KBM-803、信越化学工業株式会社製)2.4g(シリカ固形分の総質量に対するシランカップリング剤濃度:1.2質量%)を流速1mL/minで滴下した。その後加熱し、90℃で1時間攪拌を行った。
【0127】
次いで、放冷のため、上記反応液を一晩静置し、30質量%過酸化水素水0.0686g(シランカップリング剤1モルに対して3モル)を加え、再び90℃に加熱し、1時間攪拌を行った。その後、室温(25℃)まで冷却して、スルホン酸変性コロイダルシリカを得た。
【0128】
<研磨用組成物の調製>
分散媒としての水に対して、上記製造例2で得られた砥粒であるスルホン酸変性コロイダルシリカ(平均二次粒子径:68nm)を、最終濃度が2質量%となるように加えた。さらに、n-ヘキシルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を、最終濃度が0.01質量%となるように加え、硫酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を最終濃度が6質量%となるように加え、攪拌混合を行った(攪拌温度:25℃、攪拌時間:20分)。硝酸を用いて研磨用組成物のpHを2.5に調整し、研磨用組成物を完成させた。
【0129】
(実施例9)
研磨用組成物のpHを4.0に調整したこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0130】
(実施例10)
n-ヘキシルアミンの代わりに、エチルアミン(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0131】
(実施例11)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-ブチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0132】
(実施例12)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-ヘプチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0133】
(実施例13)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-オクチルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0134】
(実施例14)
n-ヘキシルアミンの代わりに、n-ドデシルアミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0135】
(比較例5)
n-ヘキシルアミンおよび硫酸アンモニウムを用いなかったこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0136】
(比較例6)
n-ヘキシルアミンの代わりに、ステアリルアミン(n-オクタデシルアミン、富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0137】
(比較例7)
研磨用組成物のpHを7.0に調整したこと以外は、実施例8と同様にして、研磨用組成物を調製した。
【0138】
(実施例8~14および比較例5~7の研磨用組成物の研磨速度の評価)
実施例8~14および比較例5~7の各研磨用組成物を用いて、各研磨対象物の表面を下記の条件で研磨した。研磨対象物としては、以下の(1)、(2)を準備した:
(1)窒化ケイ素膜(Si3N4膜):表面に厚さ2000Åの窒化ケイ素膜を形成したシリコンウェーハ(200mm、ブランケットウェーハ)
(2)酸化ケイ素膜(SiO2膜):表面に厚さ10000Åの酸化ケイ素膜(オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOSタイプ酸化ケイ素膜)を形成したシリコンウェーハ(200mm、ブランケットウェーハ)。
【0139】
上記で得られた研磨用組成物を用いて、この準備した基板を以下の研磨条件でそれぞれ研磨し、研磨速度を測定した:
(研磨装置および研磨条件)
研磨装置:アプライド・マテリアルズ製200mm用CMP片面研磨装置 Mirra
研磨パッド:ニッタ・デュポン株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
研磨圧力:3.0psi(1psi=6894.76Pa)
研磨定盤回転数:87rpm
ヘッド(キャリア)回転数:83rpm
研磨用組成物の供給:掛け流し
研磨用組成物供給量:200mL/分
研磨時間:60秒。
【0140】
研磨速度の算出は、上記実施例1~7および比較例1~4の研磨用組成物の場合と同様に行った。
【0141】
(選択比B)
選択比Aは、上記で得られた窒化ケイ素膜(Si3N4膜)の研磨速度を酸化ケイ素膜(SiO2膜)の研磨速度で除することにより求めた。当該選択比Bは、1.5以上2.5以下であることが好ましい。なお、下記表2に示す選択比Bは、小数点第2位を四捨五入した値である。
【0142】
(実施例8~14および比較例5~7の研磨用組成物のスクラッチ評価)
実施例8~14および比較例5~7の研磨用組成物を用いて研磨を行った後の研磨対象物表面のスクラッチの評価を行った。具体的には、ケーエルエー・テンコール社製のウェーハ検査装置“Surfscan(登録商標)SP2”を用いて、酸化ケイ素膜の全面(ただし外周10mmは除く)の座標を測定し、測定した座標をReview-SEM(RS-6000、株式会社日立ハイテク製)で全数観察することで、スクラッチ数を測定した。深さが10nm以上100nm未満、幅が5nm以上500nm未満、長さが100nm以上の研磨済研磨対象物表面の傷をスクラッチとしてカウントし、以下の評価基準によりスクラッチ数を評価した。スクラッチ数は、少ないほど好ましい:
<評価基準>
5:スクラッチ数が5未満
4:スクラッチ数が5以上10未満
3:スクラッチ数が10以上20未満
2:スクラッチ数が20以上30未満
1:スクラッチ数が30以上。
【0143】
実施例8~14および比較例5~7の研磨用組成物の構成および評価結果を下記表2に示す。なお、表2中の「-」は、その剤を使用していないことを表す。
【0144】
【0145】
上記表2から明らかなように、実施例8~13の研磨用組成物を用いた場合、酸化ケイ素および窒化ケイ素の研磨速度がいずれも300Å/min以上であり、高い研磨速度が得られることがわかった。また、実施例8~14の研磨用組成物を用いた場合、酸化ケイ素の研磨速度に対する窒化ケイ素の研磨速度の比(選択比B)が1.5以上2.5以下となっており適切な選択比が得られ、さらに研磨後の研磨対象物表面のスクラッチが低減されることがわかった。一方、比較例5~6の研磨用組成物を用いた場合、研磨後の研磨対象物表面のスクラッチが増大した。また、比較例6~7の研磨用組成物を用いた場合、選択比Bが適度な値(1.5以上2.5以下)とならなかった。
【0146】
なお、上記表2は、酸化ケイ素を有する研磨対象物、および窒化ケイ素を有する研磨対象物を別々に研磨して得られた結果である。しかしながら、酸化ケイ素と、窒化ケイ素と、を共に有する研磨対象物を研磨した場合であっても、上記表2と同様の研磨速度、選択比、およびスクラッチの結果が得られると推測される。