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特開2024-14010無線通信システム、無線通信方法、制御装置、および制御方法
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  • 特開-無線通信システム、無線通信方法、制御装置、および制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014010
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、制御装置、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/04 20060101AFI20240125BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H04L7/04
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116541
(22)【出願日】2022-07-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】398026347
【氏名又は名称】株式会社アバールデータ
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】別生 朋也
(72)【発明者】
【氏名】光峰 彰人
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA01
5K047AA13
5K047AA18
5K047BB01
5K047CC07
5K047DD03
(57)【要約】
【課題】第1装置から複数の第2装置へ無線通信により周期的なデータを送信する場合、複数の第2装置に対してデータを同期して送信することができる技術を提供する。
【解決手段】第1装置から複数の第2装置へ無線通信により周期的なデータを送信する無線送信システムは、第1装置に接続された第1無線装置と、複数の第2装置のそれぞれに接続された複数の第2無線装置とを有し、第1無線装置は、無線通信を行う第1無線部と、第1無線部を制御する第1制御部とを有し、第2無線装置は、無線通信を行う第2無線部と、第2無線部を制御する第2制御部とを有し、第1制御部と第2制御部は、第1装置からの周期的データを、第1無線装置が送信してから第2無線装置からの応答を第1無線装置が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、第1無線装置と複数の第2無線装置とを同期させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1装置から複数の第2装置へ無線通信により周期的なデータを送信する無線通信システムであって、
前記第1装置に接続された第1無線装置と、
前記複数の第2装置のそれぞれに接続された複数の第2無線装置と、
を有し、
前記第1無線装置は、無線通信を行う第1無線部と、前記第1無線部を制御する第1制御部と、を有し、
前記第2無線装置は、無線通信を行う第2無線部と、前記第2無線部を制御する第2制御部と、を有し、
前記第1制御部と前記第2制御部は、前記第1装置からの前記周期的データを、前記第1無線装置が送信してから前記第2無線装置からの応答を前記第1無線装置が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置とを同期させる、無線通信システム。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記第1装置からの周期的データに第1タイマ値を乗せたデータを作成し、前記第1タイマ値を乗せたデータを送信してから前記第2無線装置からの応答を受信するまでの応答時間を測定し、前記応答時間が設定値以下かどうかを判定し、前記設定値以下の場合はデータとともにフラグを前記第2無線装置に送信し、
前記第2制御部は、前記第2無線装置の第2タイマ値と、前記第1無線装置から送信されてきた前記データを前記第2無線装置で受信した際の第1タイマ値との差分を記録し、前記第2無線装置が前記フラグとともに前記データを受信した際に、前記差分に基づいて前記第2タイマ値を書き換え、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置との同期関係を確立させる、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1制御部は、
前記第1無線装置における時間を計測する第1タイマと、
前記第1装置からの周期的データに前記第1タイマの第1タイマ値を乗せたデータを生成する送信データ生成部と、
前記第1タイマ値を乗せたデータを送信してから前記第1無線装置が前記第2無線装置からの応答を受信するまでの応答時間をモニタする受信データモニタ部と、
前記受信データモニタ部でモニタされた前記応答時間が設定値以下であるか否かを判定する受信データ判定部と、
前記応答時間が設定値以下の場合にフラグを生成するフラグ生成部と、
を有し、
前記第2制御部は、
前記第2無線装置における時間を計測する第2タイマと、
前記第2タイマの第2タイマ値と前記受信したデータの前記第1タイマ値の差分を記録するタイマ値記録部と、
前記受信したデータのフラグ情報を判定するフラグ判定部と、
前記フラグが付いたデータを受信した場合に、その時点の前記第2タイマ値から前記タイマ値記録部に記録された差分を引いた値に、前記第2タイマ値を書き換えるタイマ値書き換え部と、
を有する、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記設定値は、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置との間で所望の同期通信を担保できるように設定される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記設定値は、設計値や実績値に基づいて決定される最短時間に所与のマージンを加えたものである、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記設定値は、実績値に基づいて統計的処理により求めたものである、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記設定値は、実績値から前記統計的処理により求めた平均値または中心値である、請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記第1装置および前記第2装置は、制御対象を制御する制御機器であり、前記第1装置は上位の制御機器であり、前記複数の第2装置は制御対象を制御する下位の制御機器であり、前記複数の第2装置へは制御対象が接続され、前記第1装置から前記複数の第2装置へ前記周期的なデータとして制御信号を送信し、前記複数の第2装置に接続された前記制御対象を制御する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
第1装置から複数の第2装置へ無線通信により周期的なデータを送信する無線通信方法であって、
前記第1装置に接続された第1無線装置と、前記複数の第2装置のそれぞれに接続された複数の第2無線装置とを有する無線通信システムを準備する工程と、
前記第1装置からの前記周期的データを前記第1無線装置が送信してから前記第2無線装置からの応答を前記1無線装置が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、前記第1無線装置と前記第2無線装置とを同期させる工程と、
を有する、無線通信方法。
【請求項10】
前記第1無線装置と前記第2無線装置とを同期させる工程は、
前記第1装置からの前記周期的データに前記第1無線装置の第1タイマ値を乗せたデータを作成し、前記第1無線装置が前記第1タイマ値を乗せたデータを送信してから前記第2無線装置からの応答を前記第1無線装置が受信するまでの応答時間を測定することと、
前記応答時間が前記設定値以下かどうかを判定し、前記設定値以下の場合は前記第1タイマ値を乗せたデータとともにフラグを前記第2無線装置に送信することと、
前記第1無線装置から送信されてきた前記第1タイマ値を乗せたデータを前記第2無線装置が受信した際の、前記第1タイマ値と前記第2タイマ値との差分を記録することと、
前記複数の第2無線装置が、前記第1無線装置から前記フラグが付いたデータを受信した際に、前記第1タイマ値と前記第2タイマ値の差分に基づいて前記第2タイマ値を書き換え、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置との同期関係を確立させることと、
を有する、請求項9に記載の無線通信方法。
【請求項11】
前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置との同期関係を確立させることは、前記第2無線装置が、前記フラグが付いたデータを受信した場合に、その時点の前記第2タイマ値から前記差分を引いた値に前記第2タイマ値を書き換える、請求項10に記載の無線通信方法。
【請求項12】
前記設定値は、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置との間で所望の同期通信を担保できるように設定される、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項13】
前記設定値は、設計値や実績値に基づいて決定される最短時間に所与のマージンを加えたものである、請求項12に記載の無線通信方法。
【請求項14】
前記設定値は、実績値に基づいて統計的処理により求めたものである、請求項12に記載の無線通信方法。
【請求項15】
前記設定値は、実績値から前記統計的処理により求めた平均値または中心値である、請求項14に記載の無線通信方法。
【請求項16】
前記第1装置および前記第2装置は、制御対象を制御する制御機器であり、前記第1装置は上位の制御機器であり、前記複数の第2装置は制御対象を制御する下位の制御機器であり、前記複数の第2装置へは制御対象が接続され、前記第1装置から前記複数の第2装置へ前記周期的なデータとして制御信号を送信し、前記複数の第2装置に接続された前記制御対象を制御する、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項17】
基板に対して処理を行う基板処理装置の制御を行う制御装置であって、
上位の制御ユニットと、
前記上位の制御ユニットから周期的な制御データが送信される複数の下位の制御ユニットと、
前記上位の制御ユニットから前記複数の下位の制御ユニットへ無線通信により前記周期的な制御データを送信する無線通信システムと、
を有し、
前記無線通信システムは、
前記上位の制御ユニットに接続された第1無線装置と、
前記複数の下位の制御ユニットのそれぞれに接続された複数の第2無線装置と、
を有し、
前記第1無線装置は、無線通信を行う第1無線部と、前記第1無線部を制御する第1制御部と、を有し、
前記第2無線装置は、無線通信を行う第2無線部と、前記第2無線部を制御する第2制御部と、を有し、
前記第1制御部と前記第2制御部は、前記上位の制御ユニットからの前記周期的制御データを、前記第1無線装置が送信してから前記第2無線装置からの応答を前記第1無線装置が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置とを同期させる、制御装置。
【請求項18】
前記基板処理装置は、複数のエンドデバイスを用いて基板に対して処理を行い、前記複数の下位の制御ユニットは、それぞれ前記エンドデバイスが接続され、前記上位の制御ユニットから前記周期的な制御データが、前記無線通信システムを介して前記複数の下位の制御ユニットに送信され、前記複数のエンドデバイスが制御される、請求項17に記載の制御装置。
【請求項19】
前記下位の制御ユニットは、前記周期的な制御データの入出力制御を行うI/Oボードであり、前記上位の制御ユニットから、前記周期的な制御データとして、デジタルアウトプット更新データ、デジタルインプット更新要求データ、アナログインプット更新要求データが送信される、請求項18に記載の制御装置。
【請求項20】
前記基板処理装置は、前記基板に対してALD成膜を行う、請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項21】
基板に対して処理を行う基板処理装置を制御装置により制御する制御方法であって、
前記制御装置は、上位の制御ユニットと、前記上位の制御ユニットから周期的な制御データが送信される複数の下位の制御ユニットと、を有し、
前記上位の制御ユニットに接続された第1無線装置と、前記複数の下位の制御ユニットのそれぞれに接続された複数の第2無線装置とを有する無線通信システムを準備する工程と、
前記上位の制御ユニットからの前記周期的な制御データを前記第1無線装置が送信してから前記第2無線装置からの応答を前記1無線装置が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、前記第1無線装置と前記第2無線装置とを同期させる工程と、
前記上位の制御ユニットから前記周期的な制御データを、前記無線通信システムを介して前記下位の制御ユニットに送信して前記基板処理装置を制御する工程と、
を有する、制御方法。
【請求項22】
前記基板処理装置は、複数のエンドデバイスを用いて基板に対して処理を行い、前記複数の下位の制御ユニットは、それぞれ前記エンドデバイスが接続され、
前記基板処理装置を制御する工程は、前記上位の制御ユニットから前記下位の制御ユニットに送信された前記周期的な制御データにより、前記複数のエンドデバイスを制御する、請求項21に記載の制御方法。
【請求項23】
前記下位の制御ユニットは、前記周期的な制御データの入出力制御を行うI/Oボードであり、前記上位の制御ユニットから、前記周期的な制御データとして、デジタルアウトプット更新データ、デジタルインプット更新要求データ、アナログインプット更新要求データが送信される、請求項22に記載の制御方法。
【請求項24】
前記基板処理装置は、前記基板に対してALD成膜を行う、請求項21から請求項23のいずれか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システム、無線通信方法、制御装置、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第一無線装置と第二無線装置とを備える時刻同期可能な無線通信システムが開示されている。第一無線装置の無線部は、タイミング情報と、第一クロックから取得した時刻であってタイミング情報が送信された時刻である送信時刻に係る持続情報とを個別に無線送信する。第二無線装置の無線部は、無線送信されたタイミング情報と時刻情報とを個別に受信する。第二無線装置は、無線部がタイミング情報を受信したときの第二クロックが示す時刻である参照時刻と、時刻情報から得られた送信時刻とに基づき、第二クロックを補正する補正部を有する。
【0003】
この特許文献1の技術は、無線LANをはじめとする通信用無線規格において頻繁に発生する自律的な送信待ちや自動的な再送制御による、通信に係る時間に不確実性が生じることを抑制するものである。
【0004】
ところで、第1装置から複数の第2装置に無線通信により周期的なデータを送信する際に、複数の第2装置に対して同期したデータを送信することが求められることがある。しかし、特許文献1の技術は通信に係る時間に不確実性が生じることを抑制するものであり、複数の装置に対してデータを同期して送信する点については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/200043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、第1装置から複数の第2装置へ無線通信を行う際、第1装置と複数の第2装置との同期をとることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る無線通信システムは、第1装置から複数の第2装置へ無線通信により周期的なデータを送信する無線通信システムであって、前記第1装置に接続された第1無線装置と、前記複数の第2装置のそれぞれに接続された複数の第2無線装置と、を有し、前記第1無線装置は、無線通信を行う第1無線部と、前記第1無線部を制御する第1制御部と、を有し、前記第2無線装置は、無線通信を行う第2無線部と、前記第2無線部を制御する第2制御部と、を有し、前記第1制御部と前記第2制御部は、前記第1装置からの前記周期的データを、前記第1無線装置が送信してから前記第2無線装置からの応答を前記第1無線装置が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、前記第1無線装置と前記複数の第2無線装置とを同期させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1装置から複数の第2装置へ無線通信を行う際、第1装置と複数の第2装置との同期をとることができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
図2】Wi-Fiを用いて、128Byteのデータを10ms周期で送る状態を説明するための図である。
図3】アクセスポイント(AP)から10ms周期で128Byteのデータを約1時間送信した際の、データがクライアント(CL)に到達するまでの時間を示す図である。
図4】一実施形態の無線通信システムにおける無線通信動作の具体的なフローを示す図である。
図5】一実施形態の無線通信システムを有する制御装置を用いた基板処理装置を示す断面図である。
図6図5に示す基板処理装置を制御する制御装置を含む全体制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図7】MCから複数のI/Oボードを介してそれぞれに接続されたエンドデバイスへ制御データを送信し、その応答をMCが受信する状態を説明するための図である。
図8】同期ずれを確認した実験結果を示すチャートである。
図9】一実施形態の無線通信システムを用いて同期を確認した実験結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
<無線通信システム>
図1は一実施形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
本実施形態の無線通信システム100は、第1装置400から複数の第2装置500へ無線通信により周期的なデータを送信するものである。図示の例では第2装置500を4つ示しているが、複数であればその数は問わない。
【0012】
本実施形態において、対象となる無線通信規格は、後述するように、周期通信に不安定性が生じるものであれば特に限定されず、主要なものとして、Wi-Fi、Zigbee、Bluetooth、BLE等の2.4GHzおよび5GHz帯の通信規格を挙げることができる。
【0013】
無線通信システム100は、第1装置400に接続された第1無線装置200と、複数の第2装置500にそれぞれ接続された複数の第2無線装置300とを有する。第1装置400および第2装置500は、例えば制御対象を制御する制御機器であり、上位の制御機器である第1装置400から下位の制御機器である複数の第2装置500へ周期的なデータとして制御信号を送信し、第2装置500に接続された制御対象を制御することが例示される。
【0014】
第1無線装置200は、例えばアクセスポイント(AP)であり、データを電波に変換して無線通信を行う第1無線部201と、第1無線部201の無線通信を制御する第1制御部202とを有する。また、第2無線装置300は、例えばクライアント(CL)であり、データを電波に変換して無線通信を行う第2無線部301と、第2無線部301を制御する第2制御部302とを有する。実際の無線通信は、第1無線部201と第2無線部301との間で行われる。
【0015】
第1制御部202および第2制御部302は、周期的データを第1無線装置200が送信してから第2無線装置300からの応答を第1無線装置200が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、第1無線装置200と第2無線装置300とを同期させる。
【0016】
すなわち、第1制御部202は、第1装置400からの周期的データにタイマ値を乗せたデータを作成し、第1無線装置200がそのデータを送信してから第2無線装置300からの応答を第1無線装置200が受信するまでの応答時間を測定する。そして、その応答時間が設定値以下かどうかを判定し、設定値以下の場合はデータとともにフラグを第2無線装置300に送信する。
【0017】
一方、第2制御部302は、第1無線装置200から送信されてきた周期的データを第2無線装置300が受信した際の第1無線装置200の第1タイマ値と第2無線装置300の第2タイマ値の差分を記録する。そして、第2無線装置300が第1無線装置200から応答時間が設定値以下であるフラグとともにデータを受信した際に、差分に基づいて第2タイマ値を書き換え、第1無線装置200と複数の第2無線装置300との同期関係を確立させる。
【0018】
無線通信システム100は、第1無線装置200から複数の第2無線装置300へ同時にデータを送信するマルチキャストであっても、第1無線装置200から複数の第2無線装置300へ1台ずつ順番にデータを送信するユニキャストであってもよい。
【0019】
以下、具体的に説明する。
第1制御部202は、第1タイマ203と、送信データ生成部204と、受信データモニタ部205と、受信データ判定部206と、フラグ生成部207とを有する。
【0020】
第1タイマ203は、第1無線装置200における時間を計測するものである。送信データ生成部204は、第1装置400からの周期的データに第1タイマ203の第1タイマ値を乗せたデータを生成する。受信データモニタ部205は、第1無線装置200からデータを送信してから第2無線装置300からの応答を受信するまでの応答時間をモニタする。受信データ判定部206は、受信データモニタ部205でモニタされた応答時間が設定値以下であるか否かを判定する。フラグ生成部207は、応答時間が設定値以下の場合にOKのフラグ1を生成し、設定値を超えた場合はNGとしてフラグ0(フラグを生成しない)とする。
【0021】
なお、設定値は、第1無線装置200と複数の第2無線装置300との間で同期を担保できるように適宜設定される。設定値としては、例えば、設計値や実績値に基づいて決定される最短時間に所与のマージンを加えたもの(例えば最短時間+2%)を用いることができる。また、設定値は、実績値に基づいて統計的処理により求めてもよい。例えば、実績値から統計的処理により求めた平均値や中心値であってよい。
【0022】
送信データ生成部204は、フラグ1が生成された場合は、次の周期のデータにフラグ1の情報を乗せたデータを生成し、フラグ0の場合は、次の周期のデータとしてフラグ0のデータを生成する。
【0023】
各第2制御部302は、第2タイマ303と、タイマ値記録部304と、フラグ判定部305と、タイマ値書き換え部306とを有する。
【0024】
第2タイマ303は、第2無線装置300における時間を計測するものである。タイマ値記録部304は、第1無線装置200から送信されたデータを第2無線装置300で受信した際に、第2タイマ303の第2タイマ値と受信したデータの第1タイマ値との差分を記録する。フラグ判定部305は、受信したデータのフラグ情報を判定する。タイマ値書き換え部306は、フラグ1が付いたデータを受信した場合には、その時点の第2タイマ値から、フラグ1が付いたデータをタイマ値記録部304に記録する前にタイマ値記録部304に記録された差分を引いた値に第2タイマ値を書き換える。このとき、タイマ値記録部304には差分0が記録される。
【0025】
すなわち、受信したデータにフラグ1が付いている場合は、その前に受信したデータが、第1無線装置200が設定時間以内に応答を受信したことを示しており、そのデータは信頼できるデータである。このため、前回、タイマ値記録部304に記録された差分の値も信頼できる値である。したがって、上記のように、タイマ値書き換え部306により第2タイマ303の第2タイマ値を書き換えることによって、第1無線装置200と複数の第2無線装置300を同期させることができる。このように、第1無線装置200と複数の第2無線装置300とを同期させることにより、複数の第2無線装置300間も同期させることができる。
【0026】
なお、フラグ0のデータを受信した場合は、タイマ値記録部304に上記計算により差分が記録されるが、この記録は次の周期のデータの差分が記録された後に破棄される。
【0027】
次に、このように構成される無線通信システム100における無線通信動作について具体的に説明する。
【0028】
無線通信は、有線通信に用いる信号ケーブルが不要であるため、有線通信に比べて装置の小型化を図ることができ、線材の削減による環境貢献にもつながる。しかし、無線通信では、周期的データを送信する場合、具体的には一定の周期で決まったサイズのデータ(パケット)を送信する場合、周囲の外乱や通信環境の悪化によって通信時間にばらつきを生じる。このような問題は有線通信では通常発生しない。
【0029】
例えば、Wi-Fiを用いて、図2のように、128Byteのデータを10ms周期で送る場合、その実測データは図3に示すようになる。図3は、アクセスポイント(AP)から10ms周期で128Byteのデータを約1時間送信した際の、データがクライアント(CL)に到達するまでの時間を示すものであり、その一部は拡大して示している。図3に示すように、データの到達時間の平均値は10ms程度であるが、その値は2~35msまで大きくばらついており、データの到達時間が不安定であることがわかる。
【0030】
このようにデータ到達時間が不安定な場合は、無線通信システム100を用いて第1装置400から複数の第2装置500へデータを同期して、例えば同時的に送信することが困難である。
【0031】
そこで、本実施形態に係る無線通信システム100では、第1制御部202および第2制御部302により、第1装置400からの周期的データを第1無線装置200が送信してから第2無線装置300からの応答を第1無線装置200が受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、第1無線装置200と複数の第2無線装置300とを同期させる。
【0032】
具体的には、まず、第1装置400からの周期的データに第1タイマ値を乗せたデータを作成し、第1無線装置200がそのデータを送信してから第2無線装置300からの応答を第1無線装置200が受信するまでの応答時間を測定する。
【0033】
次に、その応答時間が設定値以下かどうかを判定し、設定値以下の場合は第1タイマ値を乗せたデータとともにフラグを第2無線装置300に送信する。
【0034】
第2無線装置300は、第1無線装置200から送信されてきた第1タイマ値を乗せたデータを第2無線装置300が受信した後、第1タイマ値と第2タイマ値との差分を記録する。
【0035】
次に、第2無線装置300が第1無線装置200からデータとともにフラグを受信した際に、第1タイマ値と第2タイマ値の差分に基づいて第2タイマ値を書き換え、第1無線装置200と複数の第2無線装置300との同期関係を確立させる。これにより、複数の第2無線装置300間で同期をとることができ、第1装置400からの周期的データを複数の第2装置500に対して同期して、例えば同時的に送信することができる。
【0036】
以下、具体的なフローについて図4を参照して説明する。
ここでは、第1無線装置200をアクセスポイント(AP)とし、複数の第2無線装置300をクライアント(CL)として、第1装置400からデータを10ms周期で送信する場合を例にとって説明する。
【0037】
まず、第1装置400からの最初のデータがAP200からCL300へ送信される。このとき、AP200の第1タイマ203の第1タイマ値は11msであり、送信データ生成部204で第1タイマ値である11msを乗せたデータを生成し、送信する。
【0038】
CL300では、第2タイマ303のタイマ値が55msのときにAP200から送信された最初のデータを受信し、第1無線装置200へ応答する。このとき、CL300のタイマ値記録部304は、第2タイマ303の第2タイマ値と受信したデータの第1タイマ値の差分、すなわち、55ms-11ms=44msを記録する。
【0039】
応答を受信したAP200では、受信データモニタ部205によりデータを送信してからCL300からの応答を受信するまでの時間をモニタし、受信データ判定部206により、受信データモニタ部205でモニタした応答を受信するまでの時間が設定値以下であるか否かを判定する。このとき、設定値(最短時間+2%)が1.95msであるのに対し、応答を受信するまでの時間が設定値より大きい時間、例えば5msかかったため、受信データ判定部206でNGと判定し、フラグ生成部207ではフラグ0としている。
【0040】
次に、第1装置400からの次のデータがAP200からCL300へ送信される。このときの時間は最初のデータから10ms後であり、AP200の第1タイマ203の第1タイマ値は21msである。送信データ生成部204では第1タイマ値である21msを乗せ、前回のフラグ0を反映させたデータを生成し、送信する。
【0041】
CL300では、第2タイマ303のタイマ値が65msのときに上記次のデータを受信し、第1無線装置200へ応答する。このとき、CL300のタイマ値記録部304は、第2タイマ303の第2タイマ値と受信したデータの第1タイマ値の差分、すなわち、65ms-21ms=44msを記録し、前回の差分記録を破棄する。
【0042】
応答を受信したAP200では、同様に、受信データモニタ部205によりデータを送信してからCL300からの応答を受信するまでの時間をモニタし、受信データ判定部206により、応答を受信するまでの時間が設定値以下であるか否かを判定する。このとき、応答を受信するまでの時間が設定値以下であったため、受信データ判定部206でOKと判定し、フラグ生成部207でフラグ1を生成している。
【0043】
次に、第1装置400からのさらに次のデータがAP200からCL300へ送信される。このときの時間は上記次のデータから10ms後であり、AP200の第1タイマ203の値は31msである。送信データ生成部204では第1タイマ値である31msとフラグ1を乗せ、送信する。
【0044】
CL300では、第2タイマ303の第2タイマ値が75msのときに上記さらに次のデータを受信し、第1無線装置200へ応答する。このとき、フラグ判定部305は、受信したデータにフラグ1が付いていると判定し、タイマ値書き換え部306により、その時点の第2タイマ303の第2タイマ値からタイマ値記録部304に記録された差分値を引いた値、すなわち、75ms-44ms=31msに第2タイマ303の自身の第2タイマ値を書き換える。このとき、次のフラグに備えてタイマ値記録部304には差分0(31ms-31ms=0ms)が記録される。
【0045】
応答を受信したAP200では、同様に、受信データモニタ部205によりデータを送信してからCL300からの応答を受信するまでの時間をモニタし、受信データ判定部206により、応答を受信するまでの時間が設定値以下であることを確認する。
【0046】
このように、受信したデータが、AP200が設定時間以内に応答を受信した際にフラグ1を生成し、次のデータ送信時にデータにフラグ1を乗せ、そのデータに基づいてその時点の第2タイマ値からタイマ値記録部304に記録された差分値を引いた値に第2タイマ303の自身の第2タイマ値を書き換える。このようなことを複数のCL300に対して行うことにより、AP200と複数のCL300とを同期させることができ、複数のCL300間の同期をとることができる。このため、第1装置400からの周期的データを複数の第2装置500に対して同期して、例えば同時的に送信することができる。
【0047】
また、第1装置400および第2装置500が制御機器である場合に、制御機器内の時間の基準である水晶振動子を有する発振器(クロック)のばらつきによる複数の第2装置500間で同期ずれが生じることがあるが、後述するように、本実施形態の無線通信システム100により同期ずれを抑制できる。
【0048】
この同期ずれは長い時間をかけて微量の誤差が蓄積して生じるが、本実施形態の無線通信システム100は、わずかな時間であっても上述したような設定時間以下での通信が成立すれば、複数の第2装置500で同期性を確立して、周期通信の不安定性や同期ずれを抑制することができる。
【0049】
<基板処理装置>
次に、以上のような無線通信システムを有する制御装置を用いた基板処理装置について説明する。ここでは、基板処理装置の例として、原料ガスと反応ガスを用いてALDにより基板上に膜を形成する成膜装置の場合を示すが、これに限るものではない。
【0050】
図5は、一実施形態の無線通信システムを有する制御装置を用いた基板処理装置を示す断面図である。図5に示すように基板処理装置600は、基板処理部700と、制御装置800とを有する。
【0051】
基板処理部700は、処理容器1と、載置台2と、シャワーヘッド3と、ガス供給部4と、排気部5とを有している。
【0052】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有している。処理容器1の側壁には基板Wを搬入出するための搬入出口(図示せず)が形成され、搬入出口はゲートバルブ(図示せず)で開閉可能となっている。また、処理容器1の底部には排気口1aが設けられている。
【0053】
載置台2は、基板Wに対応した大きさの円板状をなし、処理容器1内に水平に設けられ、支持部材21に支持されている。載置台2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒーター(図示せず)が埋め込まれており、ヒーターはヒーター電源(図示せず)から給電されることにより昇温される。載置台2の上面近傍には温度センサ24が設けられており、温度センサによりヒーターの出力を制御することにより、基板Wの温度を制御する。
【0054】
支持部材21は、載置台2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構22に接続されている。昇降機構22により載置台2が支持部材21を介して昇降可能となっている。ALDプロセス中に昇降機構22により載置台2を昇降させることにより基板W近傍の圧力を変動させることができる。
【0055】
支持部材21と処理容器1の底壁との間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ23が設けられている。
【0056】
シャワーヘッド3は、処理容器1の上部に載置台2に対向するように設けられ、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に吐出するガス吐出部として機能する。シャワーヘッド3は、例えば金属材料により形成され、載置台2とほぼ同じ直径を有する。シャワーヘッド3の内部には、ガスを拡散するガス拡散空間31が形成されており、ガス拡散空間31には上方からガス導入管32が接続されている。シャワーヘッド3の底壁には多数のガス吐出孔33が形成され、ガス導入管32からガス拡散空間31に供給されたガスがガス吐出孔33から処理容器1内に吐出されるように構成されている。
【0057】
ガス供給部4は、ALD成膜に用いる原料ガス、反応ガス、パージガス等のガスを、シャワーヘッド3を経て処理容器1に供給するためものものである。原料ガスは、成膜しようとする膜の金属成分を含む化合物ガスであり、反応ガスは原料ガスと反応して膜を形成するためのガスである。また、パージガスは、処理容器1内に残留するガスをパージするためのものであり、Nガスや希ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0058】
ガス供給部4は、原料ガスを供給する原料ガス供給源41aと、反応ガスを供給する反応ガス供給源42aと、パージガスを供給する第1パージガス供給源43aおよび第2パージガス供給源44aとを有する。
【0059】
原料ガス供給源41a、反応ガス供給源42a、第1パージガス供給源43a、および第2パージガス供給源44aには、それぞれ、原料ガス供給配管41b、反応ガス供給配管42b、第1パージガス供給配管43b、および第2パージガス供給配管44bが接続されている。原料ガス供給配管41bには、原料ガス供給源41a側から順に、前段側バルブ41c、流量制御器41d、および、後段側バルブ41eが介設されている。反応ガス供給配管42bには、反応ガス供給源42a側から順に、前段側バルブ42c、流量制御器42d、および、後段側バルブ42eが介設されている。第1パージガス供給配管43bには、第1パージガス供給源43a側から順に、前段側バルブ43c、流量制御器43d、および、後段側バルブ43eが介設されている。第2パージガス供給配管44bには、第2パージガス供給源44a側から順に、前段側バルブ44c、流量制御器44d、および、後段側バルブ44eが介設されている。
【0060】
原料ガス供給配管41b、反応ガス供給配管42b、第1パージガス供給配管43b、および第2パージガス供給配管44bは共通配管45に合流し、共通配管45はガス導入管32に接続されている。
【0061】
第1パージガス供給配管43bおよび第2パージガス供給配管44bは、それぞれ原料ガス供給配管41b側および反応ガス供給配管42b側に設けられており、これらを通流するパージガスは、それぞれ原料ガスおよび反応ガスのキャリアガスとしても機能する。
【0062】
前段側バルブ41c、42c、43c、44cは通常の開閉バルブであり、後段側バルブ41e、42e、43e、44eはALD用の高速開閉バルブである。これらのバルブは、ソレノイドを用いて開閉駆動されるソレノイドバルブである。流量制御器41d、42d、43d、44dとしては、例えばマスフローコントローラが用いられる。また、流量計も設けられる。
【0063】
排気部5は、処理容器1の内部を排気して、処理容器1内を減圧する。排気部5は、排気配管51、自動圧力制御バルブ(APC)52および真空ポンプ53を含む。排気配管51は、排気口1aに接続されている。自動圧力制御バルブ(APC)52および真空ポンプ53は、排気配管51に介設されている。自動圧力制御バルブ(APC)52としては、開度を調整することで排気配管51内のコンダクタンスを制御するバルブを用いることができる。圧力制御バルブ(APC)52は、処理容器1内の圧力を検出する圧力センサ25の圧力値が所望の値になるように開度が制御される。
【0064】
基板処理部700においては、後述する制御装置800の制御により、以下のようなプロセスが実行される。
【0065】
まず、処理容器1内に基板Wを搬入して載置台2上に載置し、処理容器1内を所定の減圧状態に保持し、ヒーターにより載置台2の温度を設定温度に制御する。この状態で、ガス供給部4からシャワーヘッド3を介して処理容器1内にパージガスを供給し、処理容器1内をパージする。
【0066】
その後、ALD用の高速開閉バルブ41e~44eを高速で開閉して、処理容器1内への原料ガスの供給、処理容器1内の残留ガスのパージ、処理容器1内への反応ガスの供給、処理容器1内の残留ガスのパージを高速で繰り返し行う。これにより、基板Wへの原料ガスの吸着および原料ガスと反応ガスとの反応による膜形成が繰り返されるALDプロセスが行われ、基板W上に設定膜厚の膜が成膜される。
【0067】
このALDに際しては、各ステップにおいて、自動圧力制御バルブ(APC)52による高速圧力制御、昇降機構22による載置台2の高速昇降が行われる。
【0068】
次に、制御装置800について詳細に説明する。
図6図5の基板処理装置の制御装置を含む全体制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【0069】
制御装置800は、基板処理部700を構成する各構成部を制御し、基板処理装置600での処理を実行させるためのものである。制御装置800は、基板処理装置600を含む基板処理システムの全体を制御する全体制御システム1000の一部として構成され、上述した無線通信システム100を有している。
【0070】
図6に示すように、全体制御システム1000は、基板処理システム全体を制御する統括部であるEC(Equipment Controller)1100と、その下位に存在する、基板処理システムを構成する各装置(モジュール)を制御する複数のMC(Module Controller)1200とを有する。
【0071】
EC1100は、基板処理システムの複数の装置の制御を行う共通の上位制御部として機能し、複数の装置(モジュール)の一つとして基板処理装置600が含まれる。基板処理装置600以外の装置としては、例えば、ロードロック室、ローダーユニット等を挙げることができる。MC1200は複数の装置(モジュール)に対応して複数設けられるが、図6では基板処理装置600のMC1200のみを示し、他は省略している。
【0072】
制御装置800は、EC1100と、基板処理装置600に対応するMC1200と、その下位に設けられた複数のI/Oモジュール413とを備えている。複数のI/Oモジュール413にはそれぞれ複数のI/Oボード415が搭載され、各I/Oボード415には、基板処理部700内で処理を行うための高速制御機器であるエンドデバイス701が接続されている。エンドデバイス701は、ガス供給部4における高速開閉バルブ41e~44e、流量制御器41d~44d、排気部5の自動圧力制御バルブ(APC)52、昇降機構22、圧力計25のようなセンサ類等であり、これらを総称するものである。
【0073】
EC1100は、CPU(中央演算装置)503と、揮発性メモリとしてのRAM505と、記憶部としてのハードディスク装置507と、を有している。EC1100と各MC1200は、ネットワーク513により接続されている。ネットワーク513は、スイッチングハブ(HUB)515を有している。このスイッチングハブ515は、EC1100からの制御信号に応じてEC1100の接続先としてのMC1200の切り替えを行う。
【0074】
また、EC1100は、ネットワーク901を介して基板処理システムが設置されている工場全体の製造工程を管理するMES(Manufacturing Execution System)としてのホストコンピュータ903に接続されている。
【0075】
また、EC1100には、ユーザーインターフェース511も接続されている。ユーザーインターフェース511は、工程管理者が基板処理システムを管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理システムの稼働状況を可視化して表示するディスプレイ、メカニカルスイッチ等を有している。
【0076】
EC1100は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体517に対して情報を記録し、記憶媒体517より情報を読み取ることができるようになっている。
【0077】
EC1100では、ユーザーインターフェース511においてユーザ等によって指定された基板Wの処理レシピを含むプログラムをCPU503がハードディスク装置507や記憶媒体517から読み出す。そして、EC1100から複数のMC1200に処理レシピを含むプログラムを送信するように構成されている。上述したように複数のMC1200のうち一つが基板処理装置600の制御装置800に対応する。
【0078】
制御装置800に含まれ、基板処理装置600に対応するMC1200は、CPU403と、RAMなどの揮発性メモリ部405と、I/O情報記憶部としての不揮発性メモリ部407と、I/O制御部409と、を有している。
【0079】
不揮発性メモリ部407には、基板処理装置600における種々の履歴情報が保存される。また、不揮発性メモリ部407は、I/O情報記憶部としても機能し、後述するようにMC1200と基板処理部700に備えられている複数のエンドデバイス701との間で取り交される各種のI/O情報を不揮発性メモリ部407に随時書き込んで保存できるように構成されている。
【0080】
MC1200のI/O制御部409は、I/Oモジュール413のI/Oボード415に種々の制御信号を送出したり、I/Oボード415から各エンドデバイス701に関するステータス情報などの信号を受け取ったりする。
【0081】
MC1200による各エンドデバイス701の制御は、I/Oボード415を介して行われる。I/Oボード415は、各エンドデバイス701への制御信号およびエンドデバイス701からの入力信号の伝達を行う。I/Oボード415と各エンドデバイス701との間はデジタル/アナログ信号で接続される。
【0082】
MC1200とI/Oボード415との間には、上述した無線通信システム100が設けられている。無線通信システム100は、上述したように、第1無線通信装置200と複数の第2無線通信装置300を有しており、MC1200は第1装置400に相当し、エンドデバイス701が接続されたI/Oボード415は第2装置500に相当する。すなわち、無線通信システム100は、上位の制御ユニットであるMC1200と、下位の制御ユニットであるI/Oボード415との間で、データとして制御信号の通信を行う。
【0083】
なお、図6では、MC1200と1つのI/Oモジュール413の複数のI/Oボード415を無線通信システム100で無線通信する状態を示しているが、複数のI/Oモジュール413に対応して複数の無線通信システム100を設けてもよい。その場合は、MC1200に複数のチャンネルを設け、各チャンネルにそれぞれ無線通信システム100の第1装置200を接続することができる。
【0084】
I/Oボード415において管理される入出力情報は、デジタルインプット情報DI、デジタルアウトプット情報DO、アナログインプット情報AIを含んでいる。DIは、下位の各エンドデバイス701から上位のMC1200へインプットされるデジタル情報に関する。DOは、上位のMC1200から下位の各エンドデバイス701へアウトプットされるデジタル情報に関する。AIは、各エンドデバイス701からMC1200へインプットされるアナログ情報に関する。
【0085】
DIおよびAIには、例えば各エンドデバイス701のステータスに関する情報が含まれている。DOには、例えば、各エンドデバイスへのプロセス条件に関する値の設定の指令(コマンド)が含まれている。すなわち、DIおよびAIは例えば機器の監視処理を行う圧力計、流量センサ、温度センサ等のセンサ類であり、DOは例えば機器の操作を行う高速開閉バルブ、昇降機構、自動圧力制御バルブ(APC)等の動作系である。
【0086】
DI、DO、AIは、それぞれの内容に対応してI/Oアドレスが付与されている。各I/Oアドレスには、例えば16ビット(0~15)のデジタル情報またはアナログ情報が含まれている。アナログ情報は、例えば0~FFFの16進数で表される。また、各I/Oアドレスにはアドレス番号が割り当てられている。さらに、I/Oボード415には、数字の1から始まるノード番号が割り当てられている。そして、複数のチャンネルには番号が付与されている。したがって、チャンネル番号と、ノード番号と、I/Oアドレス番号の3種類のパラメータによって、DI、DO、AIのI/Oアドレスを特定できるようになっている。
【0087】
次に、以上のように構成された基板処理装置600における制御装置800の制御動作について説明する。
【0088】
基板処理装置600では、基板処理の例として上述したようなALDプロセスが行われ、ALDプロセスは、処理レシピに基づき制御装置800により基板処理部700の複数のエンドデバイス701を制御することにより行われる。
【0089】
まず、図6に示す構成の制御装置800において、EC1100から基板処理装置600に対応するMC1200に基板Wの処理を行うための処理レシピが送信される。そして、MC1200は、この処理レシピに基づいて無線通信システム100を介してI/Oボード415に制御のための周期的データを送信し、それに接続されたエンドデバイス701を制御する。
【0090】
従来、ALD成膜装置のような基板処理装置には、ソレノイドバルブや圧力計のような多数のエンドデバイスが設けられており、これらのエンドデバイスを制御するために、その上位の制御装置であるMC1200から、I/Oモジュール413、I/Oボード415を介して多数のエンドデバイスを制御するために多数の信号ケーブルが配線されている。このため、信号ケーブルのために大きなスペースが必要になり、装置の小型化が困難である。
【0091】
これに対して、本実施形態では、基板処理装置600のMC1200と複数のI/Oボード415との間に無線通信システム100を設け、無線通信を行うことにより、信号ケーブルを削減することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0092】
しかし、無線通信で周期的データを送信する場合、従来の有線通信の場合と異なり、上述したように、その周期は周囲の外乱や通信環境の悪化によって通信時間にばらつきが生じる。装置同士が有線の通信インターフェースやI/Oケーブルでつながっていれば同期信号を共有することで同期をとることができるのでこのような問題は生じないが、無線通信では電気信号による接続がないため、同期信号を用いることはできない。
【0093】
複数のI/Oボード415にそれぞれDOが入力される動作系のエンドデバイス701が接続されている場合、これらのエンドデバイス701が同期して動作することが求められる場合があるが、上記のような通信時間のばらつきが生じると、同期動作を実現することが困難である。具体的には、図7(a)に示すように、MC1200から複数のI/Oボード415を介してそれぞれに接続されたエンドデバイス701にDO更新データが送信され、エンドデバイス701からMC1200にCRC結果のデータが返信される。この場合、通信時間のばらつきが存在していると、MC1200から複数のI/Oボード415へのDO更新データの出力タイミングにばらつきが生じ、データを同期して(例えば同時に)送信することができない。
【0094】
エンドデバイス701がDI、AIを取得するものである場合、エンドデバイス701からのデータ取得タイミングを揃えることを求められる場合があるが、上記のような通信時間のばらつきが生じると、データ取得タイミングを揃えることが困難である。具体的には、図7(b)に示すように、MC1200から複数のI/Oボード415を介してそれぞれに接続されたエンドデバイス701にDI、AI更新要求データが送信され、エンドデバイス701からMC1200にDI、AIデータが返信される。この場合、通信時間のばらつきが存在していると、MC1200から複数のI/Oボード415へのDI、AI更新要求データの出力タイミングにばらつきが生じ、制御周期(1ms、10ms等)に関わらず、データ取得タイミングを揃えることが困難である。
【0095】
そこで、無線通信システム100を用いて、上述した実施形態と同様、第1無線装置(AP)200から周期的データを送信してから、第1無線装置(AP)200が第2無線装置(CL)300からの応答を受信するまでの時間が設定値以下であった場合に、第1無線装置(AP)200と複数の第2無線装置(CL)300とを同期させる。これにより、第1装置400に対応するMC1200からの周期的データを複数の第2装置500に対応するI/Oボード415に対して同期して、例えば同時的に送信することができる。
【0096】
また、このように無線通信システム100を用いて、複数の第2装置500に対応する複数のI/Oボード415間で同期して(同時的に)データを送信する手法を用いることにより、有線接続の場合においても生じる機器間の同期ずれを抑制することもできる。
【0097】
以下、詳細に説明する。
MC1200やI/Oボード415のような制御機器は、水晶振動子を有する発振器(クロック)を基準に動作する。制御機器に内蔵されたPLL等で周波数を変更して使用することもあるが、原振は発振器になる。すなわち、制御機器内部のカウンタ/タイマは、発振器の周期を基準に計算を行う。しかし、発振器には個々に固体差があるため、公称周波数が同じであっても異なる発振器から作られる周期には必ずずれが生じる。このため、複数の制御機器間、本例の場合には、複数のI/Oボード415間で周期のずれが生じる。
【0098】
この周期のずれは±25ppm程度であり、例えば25MHzの発振器の場合は、25MHz±625Hz、すなわち、24.999375MHz~25.000625MHzの範囲となり、周期は40.001ns~39.999nsの範囲となる。40nsで1秒を測る場合は、2500万カウントでちょうど1秒(1000ms)となる。39.999nsの2500万カウントは999.975msであり、40.001nsの2500万カウントは1000.025msであるから、25MHzの発振器の場合は、1秒が999.975ms~10000.025msの範囲でばらつく。この誤差は微量であるが、この微量の誤差が蓄積することにより大きな同期ずれとなる。
【0099】
図8はこの同期ずれを確認した実験結果を示すチャートである。ここでは、マイコンボードを3台並べ、10ms周期でHighになる信号を出力し、オシロスコープで約8分間計測した。この図に示すように、1台目を基準に、2台目、3台目は徐々にずれていくことが確認された。このタイミングでDO出力、DIサンプリングに使用した場合、機器間の同期はとれない。
【0100】
これに対し、本実施形態の無線通信システム100を用い、AP200が周期的データを送信して応答を受信するまでの時間が設定値以下である場合に、タイマ値を更新してAP200とCL300を同期させる手法を採用とることにより、発振器のばらつきに起因する同期ずれも抑制することができる。
【0101】
図9は一実施形態の無線通信システムを用いて同期を確認した実験結果を示すチャートである。ここでは、APに相当するマイコンボードとCLに相当する2つのマイコンボードを並べ、10ms周期でHighになる信号を用いてマルチキャストにて本実施形態の無線通信を行い、オシロスコープで約8分間計測した。この図に示すように、8分間経過してもAPを基準にしたCL1、CL2の波形移動が見られない。APからCLにデータを送る時間だけはAPに対してCLのタイマは1ms以下の遅れが生じているものの、CL1およびCL2間は完全に同期している。
【0102】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0103】
例えば、上記実施形態では、無線通信システムが適用される第1装置および複数の第2装置として、制御機器を例示したが、周期的なデータの通信に用いるものであればこれに限るものではない。
【0104】
また、上記実施形態では、上位の制御ユニットであるMCと、下位の制御ユニットであるI/Oボードとの間に無線通信システムを用いて基板処理装置の制御部を構成する例を示したが、これに限るものではない。さらに、基板処理装置としてALD成膜を行う装置を例にとって説明したが、基板処理装置はALD成膜装置に限るものではない。
【符号の説明】
【0105】
1;処理容器
2;載置台
3;シャワーヘッド
4;ガス供給部
5;排気部
22;昇降機構
25;圧力計
41e、42e、43e、44e;後段側バルブ(高速開閉バルブ)
52;自動圧力制御バルブ(APC)
100;無線通信システム
200;第1無線装置
201;第1無線部
202;第1制御部
203;第1タイマ
204;送信データ生成部
205;受信データモニタ部
206;受信データ判定部
207;フラグ生成部
300;第2無線装置
301;第2通信部
302:第2制御部
303;第2タイマ
304;タイマ値記録部
305;フラグ判定部
306;タイマ値書き換え部
400;第1装置
415;I/Oボード(第2装置)
500;第2装置
600;基板処理装置
700;処理部
701;エンドデバイス
800;制御装置
1200;MC(第1装置)
W;基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9