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特開2024-140141二酸化炭素の回収設備及び回収方法、二酸化炭素の貯留方法、セメントクリンカの製造システム及び製造方法、並びにドライアイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140141
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収設備及び回収方法、二酸化炭素の貯留方法、セメントクリンカの製造システム及び製造方法、並びにドライアイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20241003BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20241003BHJP
   C04B 7/44 20060101ALI20241003BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241003BHJP
   C01B 32/55 20170101ALI20241003BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
C04B7/38
C04B7/44
C01B32/50
C01B32/55
B01D53/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051147
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】島 裕和
【テーマコード(参考)】
4D002
4G112
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA13
4D002CA13
4D002DA05
4D002DA11
4D002FA01
4D002HA08
4G112KA05
4G146JB07
4G146JB09
4G146JC02
4G146JC35
4G146LA10
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することが可能な二酸化炭素の回収設備を提供すること。
【解決手段】二酸化炭素の回収設備100は、CaCOを含む第1原料が導入され、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼してCaCOを熱分解し、COを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱装置20と、冷却部41で冷却しながら、加熱装置20で生成したCaOを含む固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを接触させて、CaCOを生成するとともに排ガス及び第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応装置40と、反応装置40で生成したCaCOを含む固形分を加熱装置20に導入する搬送路Bと、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaCOを含む第1原料が導入され、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼してCaCOを熱分解し、COを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱装置と、
冷却部で冷却しながら、加熱装置で生成したCaOを含む前記固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを接触させて、CaCOを含む固形分を生成するとともに前記排ガス及び前記第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応装置と、
前記反応装置で生成したCaCOを含む前記固形分を前記加熱装置に導入する搬送路と、を備える二酸化炭素の回収設備。
【請求項2】
空気から酸素を分離する分離装置を備え、前記高酸素濃度ガスは当該酸素を含む、請求項1に記載の二酸化炭素の回収設備。
【請求項3】
前記加熱装置は仮焼炉であり、当該仮焼炉で生成したCaOを含む仮焼物の一部が導入されるセメントキルンを備え、
前記反応装置には、前記セメントキルンからの前記排ガスが導入される、請求項1に記載の二酸化炭素の回収設備。
【請求項4】
前記加熱装置及び前記セメントキルンとは異なる二酸化炭素排出源からのCO含有ガスを前記反応装置に導入する流路を備える、請求項3に記載の二酸化炭素の回収設備。
【請求項5】
前記第1原料を前記第1ガスで予熱する第1予熱装置を備え、
前記第1予熱装置で予熱された前記第1原料が前記加熱装置に導入される、請求項1に記載の二酸化炭素の回収設備。
【請求項6】
CaCOを含む第2原料を前記第2ガスで予熱する第2予熱装置を備え、
前記第2予熱装置で予熱された前記第2原料が前記加熱装置に導入される、請求項1に記載の二酸化炭素の回収設備。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の二酸化炭素の回収設備とセメントクリンカ製造設備とを備え、前記排ガスがセメントキルンからの排ガスを含み、前記加熱装置が仮焼炉である、セメントクリンカの製造システム。
【請求項8】
CaCOを含む第1原料が導入される加熱装置において空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼し、CaCOを熱分解してCOを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱工程と、
前記加熱工程で生成したCaOを含む前記固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを冷却しながら接触させて、CaCOを含む固形分を生成するとともに前記排ガス及び前記第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応工程と、
前記反応工程で生成したCaCOを含む前記固形分を前記加熱装置に導入する導入工程と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
【請求項9】
空気から酸素を分離する分離工程を有し、前記高酸素濃度ガスは当該酸素を含む、請求項8に記載に二酸化炭素の回収方法。
【請求項10】
前記反応工程におけるCOを含む前記排ガスは、互いに異なる複数の二酸化炭素排出源で発生したものである、請求項8に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項11】
前記第1原料を前記第1ガスで予熱する第1予熱工程を有し、
前記第1予熱工程で予熱された前記第1原料を前記加熱装置に導入する、請求項8に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項12】
CaCOを含む第2原料を前記第2ガスで予熱する第2予熱工程を有し、
前記第2予熱工程で予熱された前記第2原料を前記加熱装置に導入する、請求項8に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一項に記載の二酸化炭素の回収方法によって得られる前記第1ガスを精製してドライアイスを製造する工程を有する、ドライアイスの製造方法。
【請求項14】
請求項8~12のいずれか一項に記載の二酸化炭素の回収方法によって得られる前記第1ガス又はその精製物を地中に貯留する工程を有する、二酸化炭素の貯留方法。
【請求項15】
請求項8~12のいずれか一項に記載の二酸化炭素の回収方法によって生成するCaOを含む前記固形分の一部を仮焼物としてセメントキルンに導入し、セメントクリンカを製造するクリンカ製造工程を有し、
前記加熱装置が仮焼炉であり、
前記反応工程における前記排ガスは、前記セメントキルンから導出される排ガスを含む、セメントクリンカの製造方法。
【請求項16】
前記反応工程における前記排ガスは、前記加熱装置及び前記セメントキルンとは異なる二酸化炭素排出源からのCO含有ガスを含む、請求項15に記載のセメントクリンカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素の回収設備及び二酸化炭素の回収方法、二酸化炭素の貯留方法、セメントクリンカの製造システム及びセメントクリンカの製造方法、並びにドライアイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止の観点から、種々のプロセスで発生する二酸化炭素を回収する取り組みが進められている。例えば、特許文献1では、石灰石を熱分解して生石灰を生成する際に発生する二酸化炭素を、金属元素に対する酸素元素の結合数に応じて酸化還元状態が変化する金属酸化物を含む酸素キャリアを用いることによって、高純度の二酸化炭素を回収することが検討されている。特許文献2では、セメントクリンカを製造する際に、空気に比べて酸素濃度を高めた支燃性ガスを仮焼炉に導入し、高濃度の炭酸ガスを得ることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-99610号公報
【特許文献2】特開2022-96064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の二酸化炭素の回収方法では、酸化鉄等の酸素キャリアが必要となる。特許文献2のプロセスでは、ロータリーキルンで生じた排ガスに含まれる二酸化炭素を回収することができない。そこで、本開示は、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することが可能な二酸化炭素の回収設備及び二酸化炭素の回収方法を提供する。また、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することが可能なセメントクリンカの製造システム及びセメントクリンカの製造方法を提供する。また、ドライアイスを効率よく製造することが可能なドライアイスの製造方法を提供する。また、二酸化炭素を効率よく貯留することが可能な二酸化炭素の貯留方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼して第1原料に含まれるCaCOを熱分解し、COを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱装置と、冷却部で冷却しながら、加熱装置で生成したCaOを含む固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを接触させて、CaCOを含む固形分を生成するとともに排ガス及び第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応装置と、反応装置で生成したCaCOを含む固形分を加熱装置に導入する搬送路と、を備える二酸化炭素の回収設備を提供する。
【0006】
この二酸化炭素の回収設備の加熱装置では、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼することから、空気を用いる場合よりも加熱装置で生成する第1ガスに含まれるCO以外の成分(窒素等)を十分に低減することができる。また、加熱装置で生成する第1ガスは、炭素含有燃料の燃焼で生じるCOに加えてCaCOの熱分解で生じるCOの両方を含む。ここで、加熱装置で熱分解するCaCOには、第1原料に含まれるもののみならず、反応装置においてCaOと排ガスに含まれるCOとの反応によって生成したものも含まれる。したがって、この二酸化炭素の回収設備によれば、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することができる。
【0007】
本開示の一側面は、上記二酸化炭素の回収設備とセメントクリンカ製造設備とを備え、前記排ガスがセメントキルンからの排ガスを含み、加熱装置が仮焼炉である、セメントクリンカの製造システムを提供する。セメントクリンカの製造システムでは原料として多量の石灰石を用いるとともに、二酸化炭素排出源である仮焼炉及びセメントキルンから二酸化炭素を含む多量の排ガスが発生する。上記二酸化炭素の回収設備を備えるとともに加熱装置が仮焼炉であることから、仮焼炉及びセメントキルンから発生する多量の排ガスから二酸化炭素を効率よく回収することができる。
【0008】
本開示の一側面は、CaCOを含む第1原料が導入される加熱装置において空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼し、CaCOを熱分解してCOを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱工程と、加熱工程で生成したCaOを含む固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを冷却しながら接触させて、CaCOを含む固形分を生成するとともに排ガス及び第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応工程と、反応工程で生成したCaCOを含む固形分を加熱装置に導入する導入工程と、を有する二酸化炭素の回収方法を提供する。
【0009】
この二酸化炭素の回収方法の加熱工程では、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼することから、空気を用いる場合よりも加熱工程で生成する第1ガスに含まれるCO以外の窒素等の成分を十分に低減することができる。また、加熱工程で生成する第1ガスは、炭素含有燃料の燃焼で生じるCOに加えてCaCOの熱分解で生じるCOの両方を含む。ここで、加熱工程で熱分解するCaCOには、第1原料に含まれるもののみならず、反応工程においてCaOと排ガスに含まれるCOとが反応して生成したものも含まれる。したがって、この二酸化炭素の回収方法によれば、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することができる。
【0010】
本開示の一側面は、上記二酸化炭素の回収方法によって得られる第1ガスを精製してドライアイスを製造する工程を有する、ドライアイスの製造方法を提供する。この製造方法では、上記回収方法によって得られる第1ガスを用いる。この第1ガスは、二酸化炭素を効率よく回収して得られたものである。したがって、このドライアイスの製造方法によれば、ドライアイスを効率よく製造することができる。
【0011】
本開示の一側面は、上記二酸化炭素の回収方法によって得られる第1ガス又はその生成物を地中に貯留する工程を有する、二酸化炭素の貯留方法を提供する。この製造方法では、上記回収方法によって得られる第1ガスを用いる。この第1ガスは、二酸化炭素を効率よく回収して得られたものである。したがって、この二酸化炭素の貯留方法によれば、二酸化炭素を効率よく貯留することができる。
【0012】
本開示の一側面は、上記二酸化炭素の回収方法によって生成するCaOの一部を含む固形分の一部を仮焼物としてセメントキルンに導入し、セメントクリンカを製造するクリンカ製造工程を有し、上記加熱炉が仮焼炉であり、上記反応工程における排ガスは、セメントキルンから導出される排ガスを含む、セメントクリンカの製造方法を提供する。
【0013】
セメントクリンカの製造方法では原料として多量の石灰石を用いるとともに、二酸化炭素排出源である仮焼炉及びセメントキルンから二酸化炭素を含む多量の排ガスが発生する。上記二酸化炭素の回収方法における加熱装置が仮焼炉であり、当該仮焼炉において上記加熱工程を行うことによって、仮焼炉及びセメントキルンから発生する多量の排ガスから二酸化炭素を効率よく回収することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示は、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することが可能な二酸化炭素の回収設備及び二酸化炭素の回収方法を提供することができる。また、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することが可能なセメントクリンカの製造システム及びセメントクリンカの製造方法を提供することができる。また、ドライアイスを効率よく製造することが可能なドライアイスの製造方法を提供することができる。また、二酸化炭素を効率よく貯留することが可能な二酸化炭素の貯留方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る二酸化炭素の回収設備を示す図である。
図2】一実施形態に係るセメントクリンカの製造システムを示す図である。
図3図2のセメントクリンカの製造システムの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態を以下に説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す符号の向きを基準とする位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。「~」で例示される数値範囲は、上限及び下限を含む数値範囲である。各数値範囲の上限又は下限をいずれかの実施例の数値で置き換えたものも、本開示に含まれる。複数の材料が例示されている場合、そのうちの一種を単独で用いてもよいし、複数のうちの少なくとも二つを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
<二酸化炭素の回収設備>
一実施形態に係る図1の二酸化炭素の回収設備100は、CaCOを含む第1原料が導入され、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガス(以下、単に「高酸素濃度ガス」という場合もある。)を用いて炭素含有燃料を燃焼してCaCOを熱分解し、COを含む第1ガスとCaOとを生成する加熱装置20と、冷却部41を備え、加熱装置20で生成したCaOの少なくとも一部とCOを含む排ガスとを接触させてCaCOと第2ガスを生成する反応装置40と、反応装置40で生成したCaCOを含む固形分を加熱装置に導入する搬送路Bと、を備える。
【0018】
第1原料は、主成分としてCaCOを含んでよく、例えば、石灰石であってよい。第1原料は、石灰石以外の原材料を含んでもよい。炭素含有燃料は、炭素を含有する燃料であれば特に制限されず、化石燃料又は廃棄物であってよい。化石燃料としては、重油、液化天然ガス、液化石油ガス、及び石炭等が挙げられる。炭素含有燃料を燃焼すると、CO,CO,HOが発生する。高酸素濃度ガスは空気よりも酸素濃度が高く、高酸素濃度ガスにおける酸素濃度は、90体積%以上、95体積%以上、98体積%以上、又は、99体積%以上であってよい。本明細書におけるガスの「体積%」は、標準状態(1bar、0℃)における体積比率である。高酸素濃度ガスは、深冷分離装置のような分離装置30を用いて空気から分離される酸素を含む酸素富化空気であってよく、分離装置30で得られる酸素をそのまま高酸素濃度ガスとしてもよい。
【0019】
加熱装置20では、高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼する。燃焼は、加熱装置20に備えられるバーナ23で行ってよい。加熱装置20における燃焼の支燃性ガスとして高酸素濃度ガスを用いることによって、燃焼によって生成する燃焼ガスに含まれる窒素等の含有量を低減することができる。これによって、加熱装置20で生成する第1ガスにおける二酸化炭素の濃度を十分に高くすることができる。
【0020】
加熱装置20は、第1原料が導入される導入口20cを有する。二酸化炭素の回収設備100が第1原料を予熱する第1予熱装置を有する場合、第1予熱装置で予熱された第1原料が、導入口20cから加熱装置20に導入される。加熱装置20の内部は、バーナ23による炭素含有燃料の燃焼によって、例えば850~1000℃に加熱される。第1原料に含まれるCaCOは、下記式(1)のとおり熱分解してCaOとCOが生成する。
CaCO → CaO + CO (1)
【0021】
加熱装置20で生成する第1ガスは、バーナ23の燃焼によって生成する燃焼ガスと、上記式(1)の熱分解反応によって生じるCOとを含む。第1ガスには、COの他にCO及びHOが含まれてもよい。加熱装置20で生成する第1ガスにおけるCO濃度は、90体積%以上、95体積%以上、又は98体積%以上であってよい。加熱装置20で用いられる高酸素濃度ガスにおける酸素濃度を変えることによって、第1ガスにおけるCO濃度を調整することができる。
【0022】
上記式(1)の熱分解反応によって生成したCaOは、他の固形分及び第1ガスとともに加熱装置20の導出口20aより導出される。このようにCaOを含む固形分は第1ガスとともに導出されてよいし、別の例では、第1ガスとCaOを含む固形分が互いに異なる導出口から導出されてもよい。導出口20aから導出された第1ガスとCaOを含む固形分は、固気分離器22によって、第1ガスとCaOを含む固形分に分離される。この固形分はCaOを主成分として含有してもよいし、CaOのみからなっていてもよい。この固形分と分離された第1ガスは、例えば第1原料と熱交換して熱回収してもよい。これによって、バーナ23における炭素含有燃料の使用量を低減することができる。固気分離器22は、サイクロン等であってよい。第1ガスと分離されたCaOの一部又は全部を含む固形分は、搬送路A,A2を流通して反応装置40に導入される。搬送路A2には冷却器が設けられていてもよい。冷却器によってCaOを含む固形分を冷却することによって、反応装置40の温度上昇を抑制することができる。反応装置40に導入されるCaOを含む固形分の温度は500℃以下、450℃以下、又は350℃以下であってよい。
【0023】
反応装置40への導入量は、制御装置25によって制御されてよい。制御装置25は、CaOを含む固形分を複数に2つに分配する分配部と、分配部を制御する制御部とを有していてよい。制御装置25は、反応装置40の運転状況に基づいて、反応装置40に導入するCaOを含む固形分の導入量を制御してもよい。反応装置40に導入するCaOを含む固形分の導入量は、反応装置40に導入される排ガスのCO濃度、及び反応装置40から導出される第2ガスのCO濃度の一方又は両方に基づいて制御されてもよい。反応装置40に導入されないCaOを含む固形分は、搬送路A1で搬送され、そのままCaOとして製品化されてもよいし、セメントキルン等に導入されてもよい。
【0024】
反応装置40には、加熱装置20及び反応装置40とは異なる二酸化炭素排出源で発生したCOを含む排ガスが導入される。排ガスは、二酸化炭素を含む排ガスであれば特に制限されない。二酸化炭素排出源としては、加熱炉、セメントキルン、焼却炉、及びボイラ等が挙げられる。ただし、二酸化炭素排出源はこれらに限定されない。二酸化炭素排出源は、CO含有ガスを排出する互いに異なる複数の設備を含んでいてもよい。排ガスには、窒素及び水分等、CO以外の成分が含まれていてよい。反応装置40では、CaOと排ガスに含まれるCOが、下記式(2)のとおり反応してCaCOが生成する。
CaO + CO → CaCO (2)
【0025】
上記式(2)の反応は発熱反応である。反応装置40は、冷却部41を有している。反応装置40内の温度は、特に限定されないが、600~750℃の範囲内にあることが好ましい。冷却部41によって、反応装置40の内部を冷却し、600~750℃の温度範囲に調整することができる。これによって、反応装置40において上記式(2)の反応が円滑に進行する。冷却部41は熱交換器を備え、熱交換によって水を加熱して水蒸気を発生させてもよい。
【0026】
反応装置40は、上記式(2)の反応を進行させるとともに、CaCOと第2ガスとを固気分離する機能を有する。反応装置40は、サイクロン型反応器であってよいし、反応器とサイクロンとを個別に有していてもよい。反応装置40で生成したCaCOを含む固形分は搬送路Bを経由して加熱装置20に導入される。この固形分は、CaCOを主成分として含有してもよいし、CaCOのみからなっていてもよい。搬送路Bを経由して加熱装置20に導入された固形分に含まれるCaCOは、第1原料に含まれるCaCOとともに加熱装置20において上記式(1)のとおり熱分解してCaOとCOが生成する。このようにして、二酸化炭素排出源の排ガス中に含まれていたCOが加熱装置20で回収され、第1ガスに含まれて加熱装置20から導出される。
【0027】
反応装置40では上記式(2)のとおり排ガスに含まれるCOがCaOと反応してCaCOとなるため、反応装置40から導出される第2ガスのCO濃度は、排ガスのCO濃度よりも低くなる。第2ガスのCO濃度は、10体積%以下、5体積%以下又は1体積%以下、又は0.5体積%以下であってよい。第2ガスのCO濃度は、加熱装置20から導出される第1ガスのCO濃度よりも低い。CO濃度の大小関係は下記式(3)のとおりであってよい。このように、本実施形態の回収設備によれば、二酸化炭素の濃度が十分に高い第1ガスを得ることができる。また、第2ガスは、二酸化炭素の濃度が十分に低減されていることから、必要に応じて熱回収を行った後、大気に放出することができる。例えば、第2ガスと、第1原料と同様の成分を含有する第2原料との熱交換を行った後、第2ガスによって予熱された第2原料を加熱装置20に導入してもよい。
第1ガス>排ガス>第2ガス (3)
【0028】
第1ガスと第2ガスのCO濃度の差は、80体積%、90体積%以上又は95体積%以上であってよい。これによって、二酸化炭素の回収量を十分に大きくすることができる。第1ガスは、精製及び圧縮等を行って、水分等の不純物を除去し、液化炭酸ガスとしてもよいし、ドライアイスを製造してもよい。第1ガスは、必要に応じて精製を行った後、地中に貯留してもよい。また、メタネーションによって第1ガスに含まれる二酸化炭素と水素とを反応させて、メタンを合成してもよいし、第1ガスを用いて廃コンクリートの炭酸化を行ってもよい。
【0029】
二酸化炭素の回収設備100では、高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼することから、加熱装置20で生成する第1ガスに含まれるCO以外の成分(窒素等)を十分に低減することができる。また、加熱装置20で生成する第1ガスは、炭素含有燃料の燃焼で生じるCOに加えてCaCOの熱分解で生じるCOの両方を含む。ここで、加熱装置20で熱分解するCaCOには、第1原料に含まれるもののみならず、反応装置40においてCaOと排ガスに含まれるCOとの反応によって生成したものも含まれる。したがって、二酸化炭素の回収設備100によれば、二酸化炭素排出源から二酸化炭素を効率よく回収することができる。
【0030】
<二酸化炭素の回収方法>
一実施形態に係る二酸化炭素の回収方法は、以下のとおり、図1の二酸化炭素の回収設備100を用いて行うことができる。すなわち、二酸化炭素の回収方法は、第1原料が導入される加熱装置20において高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼し、CaCOを熱分解してCOを含む第1ガスとCaOとを生成する加熱工程と、加熱工程で生成したCaOの少なくとも一部とCOを含む排ガスとを、反応装置40において冷却しながら接触させて、CaCOを生成するとともに排ガス及び第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応工程と、反応工程で生成したCaCOを含む固形分を、搬送路Bを経由して加熱装置に導入する導入工程と、を有する。
【0031】
上記回収方法は、空気から酸素を分離する分離工程を有し、高酸素濃度ガスが当該酸素を含んでよい。分離工程は、分離装置30で行うことができる。上述の各工程は、上述の二酸化炭素の回収設備100の説明内容に沿って行ってもよい。二酸化炭素の回収設備100の説明内容が、二酸化炭素の回収方法にも適用される。ただし、本実施形態の二酸化炭素の回収方法は、図1に示す二酸化炭素の回収設備100以外の設備を用いて行ってもよい。
【0032】
<セメントクリンカの製造システム>
図2は、二酸化炭素の回収設備を備えるセメントクリンカの製造システムの一実施形態を示す図である。図2のセメントクリンカの製造システム200は、二酸化炭素の回収設備101と、二酸化炭素の回収設備101からCaOを含む原料が導入されるとともに、COを含むキルン排ガスを二酸化炭素の回収設備101に導入するセメントクリンカ製造設備150と、を備える。
【0033】
セメントクリンカ製造設備150におけるセメントキルン10は、回転可能な円筒形の炉体11と、炉体11の内部を加熱するバーナ12とを備える。炉体11は、一方の端部に仮焼物導入部15と、他方の端部にクリンカ取出部16とを有する。クリンカ取出部16はクリンカクーラー13と接続されている。クリンカクーラー13は、冷却ファンなどの冷却装置を有する。二酸化炭素排出源の一つであるセメントキルン10は、セメント原料の仮焼物を、バーナ12を用いて焼成することによって、セメントクリンカとCOを含むキルン排ガスを生成する。キルン排ガスには、仮焼物から発生するCOと、バーナ12の燃焼によって発生するCOが含まれてよい。キルン排ガスは、炉体11の一方の端部に設けられたキルン排ガス管14によって炉体11から導出される。クリンカクーラー13は、空気との熱交換によりセメントクリンカを冷却する。クリンカクーラー13からは、セメントクリンカを冷却したときに得られる高温空気CGが導出される。
【0034】
高温空気CGは、セメントクリンカの製造システム200における乾燥機等の熱源として使用してよい。セメントクリンカの製造システム200は、高温空気CGと、分離装置30で得られる酸素、又はバーナ23に導入される高酸素濃度ガスとの熱交換を行う熱交換器を備えていてもよい。
【0035】
仮焼炉20(加熱装置)は、下部に3つの導入口20b,20c,20dを、上部に1つの導出口20aを備える。導入口20cからは、CaCOを含むセメント原料(第1原料)が導入される。仮焼炉20は、バーナ23を備えている。バーナ23は、高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼する。炭素含有燃料は、化石燃料又は廃棄物であってよい。これによって、仮焼炉20内が例えば700~1000℃に加熱される。加熱によって、上記式(1)のとおりセメント原料に含まれるCaCOが熱分解し、CaOを含む仮焼物とCOを含むガスが生成する。
【0036】
仮焼炉20内で生成した仮焼物とCOは、仮焼炉20に接続された取出管21を流通し、固気分離器22に導入される。固気分離器22では、仮焼物とCOを含むガスの混合物を、仮焼物とCOを含む第1ガスとに分離する。固気分離器22の上方には、上下方向に直列的に配置された複数の固気分離器61a,61b,61cと、上下方向に隣接する固気分離器同士を接続する配管62a,62b,62cとを有する第1予熱装置60が設けられている。固気分離器61a,61b,61cは、例えば、サイクロンであってよい。本実施形態では、第2予熱装置50は3基の固気分離器を有しているが、変形例では、固気分離器の数が2基以下であってよく、4基以上であってもよい。
【0037】
第1予熱装置60の最下段にある固気分離器61aと、固気分離器22の上側の導出口22aとが配管62aで接続されている。最上段の固気分離器61cには、第1ガスを導出する排出管62dが接続されている。排出管62dには、送風機63が配置されている。送風機63から第1ガスが排出される。第1ガスは、十分に高いCO濃度を有する。第1ガスは必要に応じて精製を行った後、地中又は海底下に貯留する方法などによって固定されてもよい。或いは、送風機63の下流側に、第1ガスの精製及び圧縮等を行う装置を設けて、水分等の不純物を除去し、液化炭酸ガスを製造してもよいし、地中に貯留してもよいし、ドライアイスを製造してもよい。また、メタネーションによって第1ガスに含まれる二酸化炭素と水素とを反応させてメタンを合成する装置を設けてもよい。
【0038】
第1予熱装置60は、最上段の固気分離器61cと中段の固気分離器61bとの間の配管62cに、第1セメント原料の導入口を有する。第1セメント原料の導入量は、制御装置によって制御されてよい。第1セメント原料としては、例えば、主成分として石灰石(炭酸カルシウム)を含み、副成分として粘土成分(SiO、Al、Fe)が挙げられる。副成分として、その他の成分を含んでいてもよい。第1セメント原料は、第1予熱装置60内を仮焼炉20の導入口20cに向かって流通しながら、第1ガスと接触することによって予熱される。このように第1予熱装置60はプレヒータとして機能する。最下段の固気分離器61aの固形物の導出口には搬送路Cが接続されている。搬送路Cは、仮焼炉20の導入口20cと接続している。第1予熱装置60で予熱された第1セメント原料は、搬送路Cを流通して導入口20cから仮焼炉20に導入される。搬送路Cとしては、パイプラインなどのセメント原料の搬送装置として通常使用されている部材を用いることができる。
【0039】
固気分離器22の下側の導出口22bには搬送路Aの基端が接続されている。搬送路A、及び後述する搬送路A1,A2としては、パイプラインなどのセメント原料の搬送装置として通常使用されている部材を用いることができる。搬送路Aの先端は、酸化カルシウムを2つに分岐させる制御装置25に接続されている。制御装置25に接続される一方の搬送路A1は、CaOを含む仮焼物をセメントキルン10に搬送する。制御装置25に接続される他方の搬送路A2は、CaOを含む仮焼物を反応装置40に搬送する。制御装置25は、セメントキルン10に搬送する仮焼物の量と、反応装置40に搬送する仮焼物の量とを、それぞれ制御する。
【0040】
制御装置25は、反応装置40に導入されるキルン排ガスのCO濃度及び反応装置40から導出される第2ガスのCO濃度の一方又は両方に基づいて、反応装置40に搬送する酸化カルシウムの量を調整してもよい。搬送路A2には、仮焼物を冷却するための冷却器26が配置されている。冷却器26は、熱交換器であってもよい。
【0041】
反応装置40は、制御装置25で分配された仮焼物を搬送する搬送路A2が接続される。仮焼物は、搬送路A2における冷却器26で、例えば、500℃以下、450℃以下、又は350℃以下になるように冷却された後、反応装置40に導入される。冷却器26で仮焼物を冷却することによって反応装置40の温度上昇を抑制できる。反応装置40では、仮焼物に含まれるCaOとキルン排ガス管14から反応装置40に導入されるキルン排ガスとが接触する。
【0042】
反応装置40は冷却部41を有する。冷却部41は、水の吸熱によって水蒸気を発生させるボイラであってよい。反応装置40では、キルン排ガス中のCOと仮焼物中のCaOとが上記式(2)のとおり反応してCaCOを生成する。これによって、反応装置40では、CaCOが生成する。この反応は発熱反応であるため、反応装置40が冷却部41を有することによって、安定的にCaCOを生成することができる。反応装置40の温度は、600~750℃であってよい。これによって、上記式(2)の反応が十分に促進され、キルン排ガス中のCOを十分効率よく回収することができる。反応装置40は、生成した炭酸カルシウムとCOが低減されたガス(第2ガス)とを固気分離する。反応装置40は、サイクロン型反応器であってよい。
【0043】
反応装置40で生成し第2ガスと分離されたCaCOを含む固形分は、反応装置40から導出され、搬送路Bを通って導入口20bから仮焼炉20に導入される。搬送路Bとしては、パイプラインなどのセメント原料の搬送装置として通常使用されている部材を用いることができる。反応装置40から仮焼炉20に導入されたCaCOは、第1予熱装置60で予熱された第1セメント原料に含まれるCaCOとともに、上記式(1)のとおり熱分解して、CaOとCOを生成する。反応装置40で生成しCaCOと分離された第2ガスは、反応装置40の上方に設けられた第2予熱装置50の配管52aに導入される。
【0044】
第2予熱装置50は、上下方向に直列的に配置された複数の固気分離器51a,51b,51cと、上下方向に隣接する固気分離器同士を接続する配管52a,52b,52cとを有する。固気分離器51a,51b,51cは、例えば、サイクロンであってよい。この例では、第2予熱装置50は3基の固気分離器を有しているが、変形例では、固気分離器の数が2基以下であってよく、4基以上であってもよい。
【0045】
第2予熱装置50の最下段にある固気分離器51aと、反応装置40とが配管52aで接続されている。最上段の固気分離器51cには、第2ガスを導出する排出管52dが接続されている。排出管52dには、送風機53が配置されている。送風機53から第2ガスが排出される。送風機53の下流側に、第2ガスの排熱回収をする装置(熱交換器等)を設けてもよい。
【0046】
第2予熱装置50は、最上段の固気分離器51cと中段の固気分離器51bとの間の配管52cに、第2セメント原料の導入口を有する。第2セメント原料の導入量は、制御装置によって制御されてよい。第2セメント原料は、第1セメント原料と同様の成分を含んでよい。第1セメント原料の成分と第2セメント原料の成分は、同じであってよく、異なっていてもよい。第2セメント原料は、第2予熱装置50内を仮焼炉20の導入口20dに向かって流通しながら、第2ガスと接触することによって予熱される。このように第2予熱装置50も、第1予熱装置60と同様にプレヒータとして機能する。最下段の固気分離器51aの導出口には搬送路Dが接続されている。搬送路Dは、仮焼炉20の導入口20dと接続している。第2予熱装置50で予熱された第2セメント原料は、搬送路Dを通過して導入口20dから仮焼炉20に導入される。搬送路Dとしては、パイプラインなどのセメント原料の搬送装置として通常使用されている部材を用いることができる。
【0047】
搬送路A1で搬送されたCaOを含む仮焼物は、仮焼物導入部15からセメントキルン10の炉体11内に導入される。仮焼物は炉体11内において焼成されセメントクリンカが生成する。炉体11内で生成したセメントクリンカは、クリンカ取出部16から取り出され、クリンカクーラー13で冷却される。このようにしてセメントクリンカが製造される。
【0048】
セメントクリンカの製造システム200では、第1セメント原料及び第2セメント原料に含まれる石灰石に由来するCO、並びに、仮焼炉20及びセメントキルン10における炭素含有燃料の燃焼によって生じるCOを、効率よく回収して第1ガスにCOを濃縮することができる。これによって、大気に放出されるCOを低減し、ドライアイスの製造、メタネーション、及び廃コンクリートの炭酸化といった種々のプロセスにCOを有効活用することができる。
【0049】
図3は、セメントクリンカの製造システム200の変形例である。図3のセメントクリンカの製造システム201は、キルン排ガス管14にCO含有ガスの流路70が接続されている。このCO含有ガスは、セメントキルン10及び仮焼炉20とは異なる二酸化炭素排出源(異排出源)で発生する排ガスであってよい。キルン排ガス管14に導入される際のCO含有ガスの温度は450℃以下であってよく、300℃以下であってもよい。
【0050】
セメントクリンカの製造システム201の二酸化炭素の回収設備102においては、キルン排ガス管14から反応装置40に導入されるガスが、キルン排ガスと二酸化炭素排出源からのCO含有ガスとの混合ガスとなる。反応装置40では、CaOを含む仮焼物と、キルン排ガス及び異排出源からのCO含有ガスの混合ガスとが接触し、CaCOとCOが低減された第2ガスとが生成する。
【0051】
セメントクリンカの製造システム201(二酸化炭素の回収設備102)は、キルン排ガス管14に、二酸化炭素排出源からのCO含有ガスの流路70が接続されていること以外は、図2のセメントクリンカの製造システム200(二酸化炭素の回収設備101)と同じであってよい。セメントクリンカの製造システム201は、セメントクリンカの製造システム201内で発生する二酸化炭素のみならず、異排出源で発生する排ガスに含まれる二酸化炭素をも効率よく回収して第1ガスにCOを濃縮することができる。これによって、大気に放出されるCOを低減し、ドライアイスの製造、メタネーション、地中への貯蔵及び廃コンクリートの炭酸化といった種々のプロセスにCOを有効活用することができる。
【0052】
<セメントクリンカの製造方法>
一実施形態に係るセメントクリンカの製造方法は、上述の二酸化炭素の回収方法によって生成するCaOを含む仮焼物の一部をセメントキルンに導入し、セメントクリンカを製造するクリンカ製造工程を有する。このセメントクリンカの製造方法は、図2図3に示すセメントクリンカの製造システム200,201を用いて行ってよい。この場合、二酸化炭素の回収方法の加熱工程、反応工程及び導入工程を含む各工程を、二酸化炭素の回収設備101,102を用いて行ってよい。この場合、加熱装置として仮焼炉20を用いる。
【0053】
加熱工程では、仮焼炉20において炭素含有燃料を燃焼しCaCOから、CaOとCOを生成する。上記式(1)の熱分解によってCOを生成するCaCOは、搬送路Cによって仮焼炉20に導入される第1セメント原料、搬送路Dによって仮焼炉20に導入される第2セメント原料、及び、搬送路Bによって仮焼炉20に導入されるCaCOを含む固形分に由来する。加熱工程では、炭素含有燃料の燃焼に高酸素濃度ガスを用いることから、燃焼によって生じるガスのCO濃度を十分に高くすることができる。高酸素濃度ガスは、空気から酸素を分離する分離工程によって得られる酸素を含んでよい。分離工程で得られる酸素を高酸素濃度ガスとして用いてもよいし、当該酸素と他のガスとを混合して高酸素濃度ガスとして用いてもよい。
【0054】
加熱工程における仮焼炉20内の温度は、CaCOが熱分解してCaOとCOを生成する温度であればよい。加熱温度は、上記式(1)の熱分解反応を円滑に進める観点から、700~1000℃であってよい。この温度は、仮焼炉20内の圧力によって変動する。仮焼炉20内の圧力が低くなるに伴って、CaCOの熱分解温度は低くすることができる。仮焼炉20内の圧力を低くする手段としては、例えば、送風機63に減圧タイプの送風機を用いることが挙げられる。加熱工程を大気圧よりも低い減圧下で行うことによって、炭素含有燃料の使用量を少なくすることができる。よって、燃料起源のCOの発生量を低減させることができる。
【0055】
加熱工程は、大気圧よりも高い圧力下で行ってもよい。これによって、CaCOの熱分解温度を高くすることができる。その結果、反応工程で用いる仮焼物(CaO)の温度が高くなり、CaOとCOの反応が促進され、排ガス中のCOを一層高い効率で回収することができる。また、セメントキルン10に導入される仮焼物(CaO)の温度が高くなるため、バーナ12の燃料消費を抑制してCOの発生量を低減することができる。
【0056】
加熱工程で生成するCOを含む第1ガスによって、第1セメント原料を予熱する第1予熱工程を行う。加熱工程において仮焼炉20内で生成したCOを含む第1ガスは、取出管21、及び固気分離器22を通って第1予熱装置60に導入される。第1ガスは、送風機63に向かって第1予熱装置60内を上昇する。配管62cから第1予熱装置60内に導入される第1セメント原料は、配管62cを流通する第1ガスに随伴して固気分離器61cに流入する。固気分離器61cにて、第1セメント原料と第1ガスとが分離され、分離された第1セメント原料は配管62bに導入される。配管62bに導入された第1セメント原料は、配管62bを流通する第1ガスに随伴して固気分離器61bに流入する。
【0057】
固気分離器61bにて、第1セメント原料と第1ガスとは分離され、分離された第1セメント原料は配管62aに導入される。配管62aに導入された第1セメント原料は、配管62aを流通する第1ガスに随伴して固気分離器61aに流入する。固気分離器61aにて、第1セメント原料と第1ガスとは分離され、分離された第1セメント原料は、搬送路Cを流通して仮焼炉20の導入口20cに送られる。このように、第1予熱装置60において第1セメント原料と第1ガスとが接触することによって、第1ガスの熱が第1セメント原料に伝導して、第1セメント原料が予熱されるとともに、第1ガスが冷却される。このような第1予熱工程を行うことによって、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。これによって、燃料起源のCOの発生量を低減することができる。
【0058】
反応工程では、反応装置40において、キルン排ガス(又は、キルン排ガスと異排出源からのCO含有ガスとの混合ガス)とCaOを含む固形分とを接触させることによって、CaCOを含む固形分とキルン排ガス(又は混合ガス)よりもCO濃度が低い第2ガスが生成する。反応工程における反応温度は、特に限定されず、600~750℃であってよい。これによって、上記式(2)の反応が十分に促進され、排ガス中のCOを十分効率よく回収することができる。この反応温度は、反応装置40に設けられる冷却部41を用いて調整することができる。
【0059】
反応工程でCaOを含む固形分と接触するガスが、キルン排ガスと異排出源からのCO含有ガスとの混合ガスである場合、キルン排ガスと異排出源からのCO含有ガスとを合流させる合流工程を有していてよい。これによって、回収するCO(第1ガス)の量を増やすことができる。
【0060】
導入工程では、反応工程で生成したCaCOを含む固形分を反応装置40において固気分離によって回収し、回収したCaCOを含む固形分を仮焼炉20に導入する。導入工程では搬送路Bを用いてよい。導入工程によって仮焼炉20に導入されるCaCOは、第1セメント原料及び第2セメント原料に含まれるCaCOとともに上記式(1)のとおり熱分解する。これによって、CaOを含む仮焼物とCOを含む第1ガスが生成する。
【0061】
反応工程で生成した第2ガスによって、第2セメント原料を予熱する第2予熱工程を行ってもよい。反応工程において反応装置40内で生成した第2ガスは、第2予熱装置50に導入される。第2ガスは、送風機53に向かって第2予熱装置50内を上昇する。配管52cから第2予熱装置50内に導入される第2セメント原料は、配管52cを流通する第2ガスに随伴して固気分離器51cに流入する。固気分離器51cにて、第2セメント原料と第2ガスとが分離され、分離された第2セメント原料は配管52bに導入される。配管52bに導入された第2セメント原料は、配管52bを流通する第2ガスに随伴して固気分離器51bに流入する。
【0062】
固気分離器51bにて、第2セメント原料と第2ガスとは分離され、分離された第2セメント原料は配管52aに導入される。配管52aに導入された第2セメント原料は、配管52aを流通する第2ガスに随伴して固気分離器51aに流入する。固気分離器51aにて、第2セメント原料と第2ガスとは分離され、分離された第2セメント原料は、搬送路Dを流通して仮焼炉20の導入口20dに送られる。このように、第2予熱装置50において第2セメント原料と第2ガスとが接触することによって、第2ガスの熱が第2セメント原料に伝導して、第2セメント原料が予熱されるとともに、第2ガスが冷却される。このような第2予熱工程を行うことによって、熱エネルギーの有効利用を図ることができる。これによって、燃料起源のCOの発生量を低減することができる。
【0063】
予熱された第2セメント原料は、加熱工程で加熱され、COを含む第1ガスとCaOを含む仮焼物とを生成する。第2予熱工程で、第2セメント原料と熱交換した第2ガスは、CO濃度が十分に低いため、例えば、排熱ボイラ、セメント原料の乾燥などの熱源として利用してもよい。その後、除塵処理を行った後に外部に排気されてもよい。
【0064】
クリンカ製造工程では、仮焼炉20で生成するCaOを含む仮焼物の一部をセメントキルン10に導入し、セメントクリンカを製造する。セメントキルン10に導入される仮焼物の量は、制御装置25で調整することができる。反応工程で用いる排ガスのCO濃度及び反応工程で生成する第2ガスのCO濃度の一方又は両方に基づいて、反応工程でキルン排ガスと接触させるCaOを含む仮焼物の量を調整する制御工程を有していてもよい。これによって、第1ガスにおけるCO濃度を高くするともに、第2ガスにおけるCO濃度を十分に低減して、COの回収量を増やすことができる。
【0065】
セメントキルン10に導入されたCaOを含む仮焼物は、炉体11内で焼成されてセメントクリンカとなる。セメントキルンで生成したセメントクリンカはクリンカクーラー13において、例えば空気との熱交換によって冷却された後、外部に導出される。このようにして、セメントクリンカが製造される。セメントクリンカを冷却したときに得られる高温空気CGは、熱源として有効活用することができる。
【0066】
高温空気CGは、乾燥機等の熱源として使用してよい。セメントクリンカの製造方法は、高温空気CGと、分離工程で得られる酸素を含む高酸素濃度ガスとを熱交換して、高酸素濃度ガスを加熱する熱交換工程を有していてもよい。これによって、燃料起源のCOの発生量を低減することができる。
【0067】
製造されたセメントクリンカは、石膏等の他の原料と混合してセメント組成物としてもよい。セメントキルン10において、バーナ12の燃焼によって生じるCOを含む排ガスは、反応工程において、仮焼物に含まれるCaOと接触しCaCOを生成する。
【0068】
このようなセメントクリンカの製造方法では、セメントキルン10において生成した排ガスに含まれるCOを第1ガス中に回収することができる。また、反応工程において、セメントキルン10の排ガスに含まれるCOとCaOとの反応によって発生する反応熱を、第2予熱工程における第2セメント原料の予熱に利用することができる。したがって、二酸化炭素の発生量を抑制しつつ、発生した二酸化炭素を効率よく十分に回収することができる。
【0069】
以上、本開示の各実施形態を説明したが、本開示はこれらの実施形態に限定されない。例えば、図2及び図3の仮焼炉20は、3つの導入口20b,20c,20dを有しているが、導入口は2つ以下であってもよい。この場合、搬送路B,C,Dの少なくとも二つが合流し、合流後の搬送路が仮焼炉20に接続されていてもよい。冷却部41は水冷式ではなく、空冷式のものであってもよい。図1の二酸化炭素の回収設備及び二酸化炭素の回収方法は、セメントクリンカの製造システム以外のシステム及びセメントクリンカの製造方法以外の方法に用いられてもよい。例えば、石灰製造プロセスに用いられてもよい。
【0070】
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]CaCOを含む第1原料が導入され、空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼してCaCOを熱分解し、COを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱装置と、
冷却部で冷却しながら、加熱装置で生成したCaOを含む前記固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを接触させて、CaCOを含む固形分を生成するとともに前記排ガス及び前記第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応装置と、
前記反応装置で生成したCaCOを含む前記固形分を前記加熱装置に導入する搬送路と、を備える二酸化炭素の回収設備。
[2]空気から酸素を分離する分離装置を備え、前記高酸素濃度ガスは当該酸素を含む、[1]に記載の二酸化炭素の回収設備。
[3]前記加熱装置は仮焼炉であり、当該仮焼炉で生成したCaOを含む仮焼物の一部が導入されるセメントキルンを備え、
前記反応装置には、前記セメントキルンからの前記排ガスが導入される、[1]又は[2]に記載の二酸化炭素の回収設備。
[4]前記加熱装置及び前記セメントキルンとは異なる二酸化炭素排出源からのCO含有ガスを前記反応装置に導入する流路を備える、[3]に記載の二酸化炭素の回収設備。
[5]前記第1原料を前記第1ガスで予熱する第1予熱装置を備え、
前記第1予熱装置で予熱された前記第1原料が前記加熱装置に導入される、[1]~[4]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収設備。
[6]CaCOを含む第2原料を前記第2ガスで予熱する第2予熱装置を備え、
前記第2予熱装置で予熱された前記第2原料が前記加熱装置に導入される、[1]~[5]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収設備。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収設備とセメントクリンカ製造設備とを備え、前記排ガスがセメントキルンからの排ガスを含み、前記加熱装置が仮焼炉である、セメントクリンカの製造システム。
[8]CaCOを含む第1原料が導入される加熱装置において空気よりも高い酸素濃度を有する高酸素濃度ガスを用いて炭素含有燃料を燃焼し、CaCOを熱分解してCOを含む第1ガスとCaOを含む固形分とを生成する加熱工程と、
前記加熱工程で生成したCaOを含む前記固形分の少なくとも一部とCOを含む排ガスとを冷却しながら接触させて、CaCOを含む固形分を生成するとともに前記排ガス及び前記第1ガスよりもCO濃度が低い第2ガスを生成する反応工程と、
前記反応工程で生成したCaCOを含む前記固形分を前記加熱装置に導入する導入工程と、を有する、二酸化炭素の回収方法。
[9]空気から酸素を分離する分離工程を有し、前記高酸素濃度ガスは当該酸素を含む、[8]に記載に二酸化炭素の回収方法。
[10]前記反応工程におけるCOを含む前記排ガスは、互いに異なる複数の二酸化炭素排出源で発生したものである、[8]又は[9]に記載の二酸化炭素の回収方法。
[11]前記第1原料を前記第1ガスで予熱する第1予熱工程を有し、
前記第1予熱工程で予熱された前記第1原料を前記加熱装置に導入する、[8]~[10]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収方法。
[12]CaCOを含む第2原料を前記第2ガスで予熱する第2予熱工程を有し、
前記第2予熱工程で予熱された前記第2原料を前記加熱装置に導入する、[8]~[11]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収方法。
[13]上記[8]~[12]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収方法によって得られる前記第1ガスを精製してドライアイスを製造する工程を有する、ドライアイスの製造方法。
[14]上記[8]~[12]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収方法によって得られる前記第1ガス又はその精製物を地中に貯留する工程を有する、二酸化炭素の貯留方法。
[15]上記[8]~[12]のいずれか一つに記載の二酸化炭素の回収方法によって生成するCaOを含む前記固形分の一部を仮焼物としてセメントキルンに導入し、セメントクリンカを製造するクリンカ製造工程を有し、
前記加熱装置が仮焼炉であり、
前記反応工程における前記排ガスは、前記セメントキルンから導出される排ガスを含む、セメントクリンカの製造方法。
[16]前記反応工程における前記排ガスは、前記加熱装置及び前記セメントキルンとは異なる二酸化炭素排出源からのCO含有ガスを含む、[15]に記載のセメントクリンカの製造方法。
【符号の説明】
【0071】
10…セメントキルン、11…炉体、12,23…バーナ、13…クリンカクーラー、14…キルン排ガス管、15…仮焼物導入部、16…クリンカ取出部、20…加熱装置(仮焼炉)、20a,22a,22b…導出口、20b,20c,20d…導入口、21…取出管、22,51a,51b,51c,61a,61b,61c…固気分離器、25…制御装置、26…冷却器、30…分離装置、40…反応装置、41…冷却部、50…第2予熱装置、52a,52b,52c,62a,62b,62c…配管、52d,62d…排出管、53,63…送風機、60…第1予熱装置、70…流路、100,101,102…二酸化炭素の回収設備、150…セメントクリンカ製造設備、200,201…セメントクリンカの製造システム、A,A1,A2,B,C,D…搬送路。
図1
図2
図3