(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140145
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】非接触水位流速計及び水位流速監視システム
(51)【国際特許分類】
G01F 23/284 20060101AFI20241003BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20241003BHJP
G01P 5/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01F23/284
G01S13/58 200
G01P5/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051152
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山村 隆介
【テーマコード(参考)】
2F014
5J070
【Fターム(参考)】
2F014FC01
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD05
5J070AE07
5J070AF01
5J070AH04
5J070AK27
5J070BA10
(57)【要約】
【課題】複数のセンサを用いずに簡素な処理で正確に流水路4の水位及び流速を特定できる非接触水位流速計及び水位流速監視システムを提供すること。
【解決手段】非接触水位流速計1は、流水路4を流れる水の流れ方向Fにそれぞれ広い指向性を有し、流水路4の水面40に向かって送信波を送信する少なくとも1以上の送信アンテナ21と、水の流れ方向Fにそれぞれ広い指向性を有し、水面40に形成されている物標からの反射波を受信する少なくとも1以上の受信アンテナ22と、送信波及び反射波を処理して、複数の点群5を検知し、複数の点群5について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行って、複数の点群5毎の位置情報及び速度情報を算出し、当該位置情報及び速度情報から流水路4の水位及び流速を特定し、その結果を出力する処理部10と、を備え、送信アンテナ21と受信アンテナ22とを合わせたアンテナの本数は3以上である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水路を流れる水の流れ方向にそれぞれ広い指向性を有し、前記流水路の水面に向かって送信波を送信する少なくとも1以上の送信アンテナと、
前記水の流れ方向にそれぞれ広い指向性を有し、前記送信波が前記流水路の水面に形成されている物標に反射され、当該物標からの反射波を受信する少なくとも1以上の受信アンテナと、
前記送信波及び前記反射波を処理して、複数の点群を検知し、検知した複数の点群について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行って、複数の点群毎の位置情報及び速度情報を算出し、当該位置情報及び速度情報から前記流水路の水位及び流速を特定し、その結果を出力する処理部と、を備え、
前記少なくとも1以上の送信アンテナと前記少なくとも1以上の受信アンテナとを合わせたアンテナの本数は3以上である非接触水位流速計。
【請求項2】
前記処理部は、前記水の流れ方向の所定の範囲における前記複数の点群の前記水の流れ方向の前記位置情報及び前記速度情報に基づいて、前記流水路の流速を特定する請求項1に記載の非接触水位流速計。
【請求項3】
前記位置情報には、前記複数の点群それぞれと前記少なくとも1以上の送信アンテナ及び前記少なくとも1以上の受信アンテナが配置される送受信面との間の距離情報が含まれ、
前記処理部は、前記位置情報のうち前記送受信面に対する相対速度が0となる前記点群と前記送受信面との間の距離情報に基づいて、前記流水路の水位を特定する請求項1に記載の非接触水位流速計。
【請求項4】
前記位置情報には、前記複数の点群それぞれと前記少なくとも1以上の送信アンテナ及び前記少なくとも1以上の受信アンテナが配置される送受信面との間の距離情報が含まれ、
前記処理部は、前記位置情報のうち前記水の流れ方向毎に特定される前記複数の点群それぞれと前記送受信面との間の距離情報に基づいて、前記流水路の水面の傾きを特定する請求項1に記載の非接触水位流速計。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれか1項に記載の非接触水位流速計と、前記非接触水位流速計とネットワークを介して接続され、前記流水路の流速及び水位を監視する監視装置と、を備え、
前記非接触水位流速計は、前記ネットワークを介して特定した前記流水路の水位及び流速を前記監視装置へ送信する水位流速監視システム。
【請求項6】
前記位置情報には、前記複数の点群それぞれと前記少なくとも1以上の送信アンテナ及び前記少なくとも1以上の受信アンテナが配置される送受信面との間の距離情報が含まれ、
前記非接触水位流速計の前記処理部は、
前記位置情報のうち前記水の流れ方向毎に特定される前記複数の点群それぞれと前記送受信面との間の距離情報に基づいて、前記流水路の水面の傾きを特定し、
前記流水路の水面の傾きの時系列の変化に基づいて、前記送受信面の傾きの異常を検知する請求項5に記載の水位流速監視システム。
【請求項7】
前記非接触水位流速計は、前記ネットワークを介して検知した前記送受信面の傾きの異常を前記監視装置に通知する請求項6に記載の水位流速監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触水位流速計及び水位流速監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川等の流水路の流速を測定する場合は、投下した浮子が観測地点間を流れるのにかかる流下時間を人間が測定することによって求められることが多い。人の手による方法では、長時間継続した測定が困難であること、台風や豪雨等の厳しい気象条件では浮子が激しく流され、浮子の位置が不安定となるため、正確な測定が容易ではなく、測定者が危険な状態に置かれるおそれがある等の問題もある。このため、流水路の流速等を非接触で測定するための検討が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、それぞれ異なる位置に配置されるマスター装置及びスレーブ装置から水面における同一の観測地点に向けて電波を照射し、その反射波によって流速を計測する電波式流速計が記載されている。特許文献1の電波式流速計では、マスター装置がスレーブ装置から計測結果を受け取り、受け取った計測結果と自身の計測結果とに基づいて観測地点の流速ベクトルを演算している。特許文献2には、被測定水面に対してマイクロ波送受信機を傾斜させて設置し、マイクロ波の反射波を受信して水位を非接触で連続して計測する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6418684号
【特許文献2】特許第5817082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、流速情報しか取得できず、流速測定においても2台のセンサが必要となる。このため、2台のセンサの連携精度によっては測定結果に影響を与える可能性があり、システムとして複雑である。特許文献2の技術では、水位と流速に関する情報を取得するために、FMCW信号とドップラー信号の切り替えが必要となり、処理が複雑になる。
【0006】
本発明は、複数のセンサを用いずに簡素な処理で正確に流水路の水位及び流速を特定できる非接触水位流速計及び水位流速監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)非接触水位流速計は、流水路を流れる水の流れ方向にそれぞれ広い指向性を有し、前記流水路の水面に向かって送信波を送信する少なくとも1以上の送信アンテナと、前記水の流れ方向にそれぞれ広い指向性を有し、前記送信波が前記流水路の水面に形成されている物標に反射され、当該物標からの反射波を受信する少なくとも1以上の受信アンテナと、前記送信波及び前記反射波を処理して、複数の点群を検知し、検知した複数の点群について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行って、複数の点群毎の位置情報及び速度情報を算出し、当該位置情報及び速度情報から前記流水路の水位及び流速を特定し、その結果を出力する処理部と、を備え、前記少なくとも1以上の送信アンテナと前記少なくとも1以上の受信アンテナとを合わせたアンテナの本数は3以上である。
【0008】
(2)(1)に記載の非接触水位流速計において、前記処理部は、前記水の流れ方向の所定の範囲における前記複数の点群の前記水の流れ方向の前記位置情報及び前記速度情報に基づいて、前記流水路の流速を特定する。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載の非接触水位流速計において、前記位置情報には、前記複数の点群それぞれと前記少なくとも1以上の送信アンテナ及び前記少なくとも1以上の受信アンテナが配置される送受信面との間の距離情報が含まれ、前記処理部は、前記位置情報のうち前記送受信面に対する相対速度が0となる前記点群と前記送受信面との間の距離情報に基づいて、前記流水路の水位を特定する。
【0010】
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の非接触水位流速計において、前記位置情報には、前記複数の点群それぞれと前記少なくとも1以上の送信アンテナ及び前記少なくとも1以上の受信アンテナが配置される送受信面との間の距離情報が含まれ、前記処理部は、前記位置情報のうち前記水の流れ方向毎に特定される前記複数の点群それぞれと前記送受信面との間の距離情報に基づいて、前記流水路の水面の傾きを特定する(1)に記載の非接触水位流速計。
【0011】
(5)水位流速監視システムは、(1)から(4)のいずれか1つに記載の非接触水位流速計と、前記非接触水位流速計とネットワークを介して接続され、前記流水路の流速及び水位を監視する監視装置と、を備え、前記非接触水位流速計は、前記ネットワークを介して特定した前記流水路の水位及び流速を前記監視装置へ送信する。
【0012】
(6)(5)に記載の水位流速監視システムにおいて、前記位置情報には、前記複数の点群それぞれと前記少なくとも1以上の送信アンテナ及び前記少なくとも1以上の受信アンテナが配置される送受信面との間の距離情報が含まれ、前記非接触水位流速計の前記処理部は、前記位置情報のうち前記水の流れ方向毎に特定される前記複数の点群それぞれと前記送受信面との間の距離情報に基づいて、前記流水路の水面の傾きを特定し、前記流水路の水面の傾きの時系列の変化に基づいて、前記送受信面の傾きの異常を検知する。
【0013】
(7)(5)又は(6)に記載の水位流速監視システムにおいて、前記非接触水位流速計は、前記ネットワークを介して検知した前記送受信面の傾きの異常を前記監視装置に通知する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のセンサを用いずに簡素な処理で正確に流水路の水位及び流速を特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る非接触水位流速計を含む水位流速監視システムと流水路とを模式的に示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る非接触水位流速計を含む水位流速監視システムと流水路とを模式的に示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る非接触水位流速計のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る非接触水位流速計の水位流速特定処理及び異常検知処理に関する機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】点群の位置情報及び速度情報の時系列データが流水路特有の傾向を示すか否かを判定する処理について説明するための模式図である。
【
図6A】鉛直方向を紙面上下方向として示す図であって、正常な傾きで設置された非接触水位流速計と流水路の水面の傾きを示す模式図である。
【
図6B】鉛直方向を紙面上下方向として示す図であって、水面の傾きが
図6Aと同じであり、非接触水位流速計が所定の角度以上傾いた状態を示す模式図である。
【
図6C】視野角方向を紙面上下方向として示す図であって、水面の傾きが
図6Aと同じであり、非接触水位流速計が所定の角度以上傾いた状態を示す模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る非接触水位流速計による水位流速特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る非接触水位流速計による異常検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態に係る非接触水位流速計1を含む水位流速監視システム100について説明する。
図1は、流水路4と水位流速監視システム100とを模式的に示す平面図である。
図2は、流水路4と水位流速監視システム100とを模式的に示す側面図である。
【0018】
水位流速監視システム100は、流水路4の水位及び流速を監視するためのシステムである。水位流速監視システム100は、流水路4の周辺に設置され、流水路4の水位及び流速を特定する非接触水位流速計1と、ネットワークNWを介して非接触水位流速計1に通信可能に接続される監視装置2と、を備える。
図1及び
図2に示す例では、1つの非接触水位流速計1が監視装置2に接続されているが、例えば異なる位置に配置される複数の非接触水位流速計1それぞれが監視装置2に通信可能に接続されていてもよい。
【0019】
流水路4としては、例えば用水路や放水路、運河等の人工的に造られた水路や河川等が挙げられる。本実施形態では、河川である流水路4の水位及び流速を監視する場合を例に説明する。なお、本明細書において流水路4の幅方向を幅方向Zとし、流水路4が形成される地面に対して鉛直な方向を鉛直方向Yとし、幅方向Z及び鉛直方向Yに直交する方向を左右方向Xとする。
【0020】
非接触水位流速計1は、電磁波の送受信により周囲に存在する物体を点群5として取得するレーダセンサである。非接触水位流速計1は、流水路4の水面40に向かって送信波を送信し、該送信波が水面40に形成されている物標に反射され、当該物標からの反射波を受信する。非接触水位流速計1は、例えば河川に架かる橋梁や河岸付近に設置される。非接触水位流速計1は、電磁波を送受信する送受信面23を流水路4の上方から水面40に向けるように設置される。非接触水位流速計1は、その送受信面23が水面40に対して鉛直方向Yに対向するように配置されてもよく、送受信面23の視野中心方向が鉛直方向Yに対して斜めに傾くように配置されてもよい。
【0021】
非接触水位流速計1は、送信波及び反射波に基づいて特定される複数の点群5の位置情報及び速度情報を取得し、これらの情報に基づいて流水路4の水位及び流速を特定し、ネットワークNWを介してその結果を監視装置2に送信する。
【0022】
監視装置2は、非接触水位流速計1からネットワークNWを介して送信された流水路4の水位及び流速の情報を取得し、この変化を監視する。監視装置2は、例えば水位や流速が所定の閾値を超えた場合に警報を発生させてもよい。
【0023】
次に、非接触水位流速計1のハードウェア構成について説明する。
図3は、本実施形態の非接触水位流速計1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図3の例では、非接触水位流速計1は、電磁波を送受信するアンテナ部20と、アンテナ部20の検出信号を処理して流水路4の水位及び流速を特定し、その結果を出力する処理部10と、を備える。
【0025】
アンテナ部20は、送信波を送信する少なくとも1以上の送信アンテナ21と、物体によって反射された反射波を受信する少なくとも1以上の受信アンテナ22と、を有し、送信アンテナ21と受信アンテナ22とを合わせて3以上となればよい。本実施形態のアンテナ部20は、4つの送信アンテナ21と、4つの受信アンテナ22と、を有する。送信アンテナ21及び受信アンテナ22は、それぞれ、所定の方向に並置された複数の放射素子によって構成される。
【0026】
複数の送信アンテナ21それぞれは、流水路4を流れる水の流れ方向Fに広い指向性を持つ。複数の送信アンテナ21は、例えば互いに間隔を空けて所定の方向に並ぶように送受信面23に配置される。また複数の受信アンテナ22それぞれは、流水路4の水の流れ方向Fに広い指向性を持つ。複数の受信アンテナ22は、例えば互いに間隔を空けて所定の方向に並ぶように送受信面23に配置される。送受信面23に複数の送信アンテナ21及び複数の受信アンテナ22が配置されているので、角度分解能を高めることができる。これにより、アンテナ部20の指向性が広い場合であっても、点群5の方位を示す角度情報を取得することが可能である。アンテナ部20は、複数の受信アンテナ22の受信信号を処理し、処理部10に送信する。
【0027】
処理部10は、アンテナ部20から送信された受信信号に基づいて、流水路4の水位及び流速を特定する水位流速特定処理や非接触水位流速計1自身の設置状態の異常を検知する異常検知処理を実行する。
【0028】
処理部10は、
図3に示すようにプロセッサ11、ROM(read-only memory)12、RAM(random-access memory)13、補助記憶装置14、通信I/F(interface)15を備え、各部がバス16等によって接続されるコンピュータである。
【0029】
プロセッサ11は、非接触水位流速計1の動作に必要な演算及び制御等の処理を行うコンピュータの中枢部分であり、各種演算及び処理等を行う。プロセッサ11は、例えば、CPU(central processing unit)、MPU(micro processing unit)、SoC(system on a chip)、DSP(digital signal processor)、GPU(graphics processing unit)、ASIC(application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)又はFPGA(field-programmable gate array)等である。あるいは、プロセッサ11は、これらのうちの複数を組み合わせたものである。また、プロセッサ11は、これらにハードウェアアクセラレーター等を組み合わせたものであっても良い。
【0030】
プロセッサ11は、ROM12又は補助記憶装置14等に記憶されたファームウェア、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等のプログラムに基づいて、非接触水位流速計1の各種の機能を実現するべく各部を制御する。また、プロセッサ11は、当該プログラムに基づいて後述する処理を実行する。なお、当該プログラムの一部又は全部は、プロセッサ11の回路内に組み込まれていても良い。
【0031】
ROM12及びRAM13は、プロセッサ11を中枢としたコンピュータの主記憶装置である。ROM12は、専らデータの読み出しに用いられる不揮発性メモリである。ROM12は、上記のプログラムのうち、例えばファームウェア等を記憶する。また、ROM12は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ等も記憶する。RAM13は、データの読み書きに用いられるメモリである。RAM13は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で一時的に使用するデータを記憶するワークエリア等として利用される。RAM13は、典型的には揮発性メモリである。
【0032】
補助記憶装置14は、例えばEEPROM(electric erasable programmable read-only memory)、HDD(hard disk drive)又はフラッシュメモリ等である。補助記憶装置14は、上記のプログラムのうち、例えば、システムソフトウェア及びアプリケーションソフトウェア等を記憶する。また、補助記憶装置14は、プロセッサ11が各種の処理を行う上で使用するデータ、プロセッサ11での処理によって生成されたデータ及び各種の設定値、流水路4の周辺に設置された非接触水位流速計1の送受信面23から流水路4の川底までの距離、流水路4の水面40に対する送受信面23の位置や向き等の非接触水位流速計1の設置状態に関する情報、後述する流水路4の水面40の傾きの基準値、後述する点群情報取得部31によって取得された複数の点群5に関する点群情報等を記憶する。
【0033】
通信I/F15は、ECU2と通信するためのインターフェースである。非接触水位流速計1による流水路4の水位及び流速の特定結果は、通信I/F15からネットワークNWを介して監視装置2に送信される。
【0034】
次に、非接触水位流速計1の処理部10の機能について
図4を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態の非接触水位流速計1の水位流速特定処理及び異常検知処理に関する機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
処理部10は、プロセッサ11等によって構成される演算装置であり、ROM12やRAM13、補助記憶装置14等から各種プログラム、データを読み込んで実行し、水位流速特定処理及び異常検知処理を行う。
【0036】
処理部10は、
図4に示すように点群情報取得部31と、判定部32と、流速特定部33と、水位特定部34と、傾き特定部35と、異常検知部36と、出力処理部37と、を備える。
【0037】
点群情報取得部31は、アンテナ部20による送信波及び反射波を処理して、複数の点群5を検知する。具体的には、点群情報取得部31は、アンテナ部20から取得した受信信号に対して距離処理、速度処理、角度処理等を実行し、位置情報及び速度情報が特定された複数の点群5を取得する。距離処理は、例えば送信アンテナ21からの送信波と受信アンテナ22によって受信された反射波の周波数差に基づいて、点群5までの距離に相当する距離データを複数の測定期間それぞれにおいて求める処理である。速度処理は、例えば複数の測定期間それぞれで求めた複数の距離データを処理することで点群5の速度に相当する情報を求める処理である。角度処理は、点群5の水平角や仰俯角を特定する処理である。本実施形態では、各送信アンテナ21及び各受信アンテナ22が流水路4の水の流れ方向Fに広い指向性を有するので、水平角方向の広い範囲で点群5の水平角を特定できる。
【0038】
そして点群情報取得部31は、距離処理、速度処理、及び角度処理によって検知した複数の点群5について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行って、複数の点群5毎の位置情報や速度情報等の点群情報を算出して取得する。位置情報には、例えば点群5と送受信面23との間の距離を示す点群距離情報、角度処理によって特定される送受信面23から見た点群5の方位を示す角度情報等が含まれる。速度情報には、例えば水の流れ方向Fにおける点群5の速度や点群5から送受信面23に向かう方向における点群5の速度等に関する情報が含まれる。なお、本実施形態では、点群情報取得部31は、視野角θの検出可能範囲R内に存在する水面40の点群5に関する点群情報を取得する。
【0039】
ここで、送信アンテナ21及び受信アンテナ22のうち少なくともいずれか一方を複数備えていない場合、指向性を広くすると、角度分解能が低くなり、点群5の正確な角度情報を取得できない。本実施形態では、水の流れ方向Fに広い指向性を持つ送信アンテナ21及び受信アンテナ22のうち少なくともいずれか一方を複数備えるので、角度分解能を高めることができ、水の流れ方向Fに広い範囲における複数の点群5の正確な角度情報を取得できる。これにより、複数の点群5の位置情報及び速度情報を高い精度で取得できる。
【0040】
判定部32は、点群情報取得部31によって取得された複数の点群5の位置情報及び速度情報に基づいて、河川特有の相関の有無を判定する処理を実行する。河川特有の相関を有することは、点群5の位置情報及び速度情報の時系列データが河川等の流水路4特有の傾向を示すことを意味する。
図5は、点群5の位置情報及び速度情報の時系列データが流水路4特有の傾向を示すか否かを判定する処理について説明するための模式図である。
【0041】
判定部32は、例えば複数の点群5が非接触水位流速計1よりも流水路4の上流側から下流側に移動するまでの各点群5の点群情報の時系列データが流水路4特有の傾向を示すかを判定することで、河川特有の相関を有するか否かを判定する。
【0042】
具体的には判定部32は、以下の式(1)によって得られる速度Vrの時系列データが、流水路4特有の傾向を示すか否かを判定する。
Vr=V×sinθr・・・式(1)
なお、
図5に示すように、Vrは水面40から送受信面23に向かう方向の一の点群5の速度、即ち送受信面23に対する点群5の相対速度を示し、Vは水の流れ方向Fの一の点群5の速度を示し、θrは送受信面23の鉛直方向Y下方に位置する点群5の方位を示す角度を0°とした場合の一の点群5の方位を示す角度を示す。
【0043】
流水路4特有の傾向を有する点群5の点群情報の時系列データとは、例えば点群5の速度Vrが送受信面23よりも上流側から送受信面23に向かうにつれて減少し、角度θrが0となる位置である送受信面23の真下で0となり、さらに下流側に向かうとマイナスとなるデータである。流水路4特有の傾向は、同じ方向に一定の速度で流れる水の流れを考慮して定められたものである。判定部32は、この傾向を複数の点群5それぞれの速度Vrの時系列データが示す場合に河川特有の相関を有すると判定する。
【0044】
流速特定部33は、点群情報取得部31によって取得された複数の点群5の位置情報及び速度情報に基づいて、流水路4の流速を特定する処理を実行する。流速特定部33は、例えば水の流れ方向Fの所定の範囲内における2つ以上の点群5の点群情報を所定の時間間隔で取得し、その結果得られた2つ以上の点群5それぞれの点群情報の時系列データに基づいて、流水路4を流れる水の流速を特定してもよい。
【0045】
例えば流速特定部33は、水の流れ方向Fにおける各点群5の位置情報の時間変化に基づいて流水路4の流速を特定してもよい。この場合に特定される流速は、例えば水の流れ方向Fにおける複数の点群5の速度の中央値であってもよく、平均値であってもよい。
【0046】
また例えば流速特定部33は、各点群5の水の流れ方向Fの速度情報に基づいて流水路4の流速を特定してもよい。この場合に特定される流速は、例えば所定の期間に取得した複数の点群5の水の流れ方向Fの速度情報の中央値であってもよく、平均値であってもよい。なお、本実施形態では、流速特定部33は、判定部32によって河川特有の相関を有すると判定された場合に、複数の点群5の位置情報及び速度情報に基づいて、流速を特定する処理を実行する。
【0047】
また流速特定部33は、例えば判定部32によって河川特有の相関を有しないと判定され、かつ点群5と送受信面23との間の点群距離情報と後述する基準距離情報とが一致しない場合、流水路4の流速が0であると判定してもよい。
【0048】
水位特定部34は、点群情報取得部31によって取得された複数の点群5の位置情報に基づいて、流水路4の水位を特定する処理を実行する。例えば水位特定部34は、補助記憶装置14等に記憶された送受信面23から流水路4の川底までの距離を示す基準距離情報と、複数の点群5それぞれと送受信面23との間の点群距離情報に基づいて、流水路4の水位を特定する。具体的には、水位特定部34は、基準距離情報から一の点群5と送受信面23との間の点群距離情報を差し引くことで流水路4の水位を特定する。
【0049】
水位特定部34は、例えば基準距離情報として鉛直方向Yにおける送受信面23と流水路4の川底との間の距離を示す情報を用いてもよい。この場合、水位特定部34は、電磁波の送受信方向における送受信面23と点群5との間の距離を示す点群距離情報を、鉛直方向Yにおける送受信面23と点群5との間の距離を示す点群距離情報に変換する。そして、水位特定部34は、基準距離情報から変換後の点群距離情報を差し引くことで流水路4の水位を特定してもよい。
【0050】
また水位特定部34は、例えば複数の点群5の位置情報のうち非接触水位流速計1との相対速度が0となる点群5と送受信面23との間の点群距離情報に基づいて、流水路4の水位を特定してもよい。即ち、水位特定部34は、送受信面23から最も近い水面40の点群5と送受信面23との間の点群距離情報に基づいて、水位を特定してもよい。
【0051】
また例えば水位特定部34は、水の流れ方向Fに沿って特定される複数の点群5それぞれの点群距離情報と基準距離情報とに基づいて各点群5に対応する水位を算出し、算出した水位の中央値又は平均値を流水路4の水位として特定してもよい。
【0052】
傾き特定部35及び異常検知部36について説明する。
図6Aは、鉛直方向Yを紙面上下方向として示す図であって、正常な傾きで設置された非接触水位流速計1と流水路4の水面40の傾きTを示す模式図である。
【0053】
傾き特定部35は、流水路4の水面40の傾きTを特定する処理を実行する。傾き特定部35は、点群情報取得部31によって取得され、水の流れ方向F毎に特定される各点群5と送受信面23との間の点群距離情報と各点群5の方位を示す角度情報に基づいて、流水路4の水面40の傾きを特定する。例えば傾き特定部35は、
図6Aに示すように、送受信面23からの距離及び方位が特定された各点群5を通る直線を水面40の傾きとして特定してもよい。傾き特定部35は、所定の時間間隔で水面40の傾きを特定してもよい。
【0054】
異常検知部36は、傾き特定部35によって取得された水面40の傾きTに基づいて、送受信面23の傾きの異常を特定する処理を実行する。異常検知部36は、例えば傾き特定部35によって取得された水面40の傾きTの時系列の変化に基づいて、送受信面23の傾きの異常を特定してもよい。具体的には、異常検知部36は、所定の期間における水面40の傾きTの変化が所定の閾値以上である場合に送受信面23の傾きが異常であると判定してもよい。また例えば異常検知部36は、傾き特定部35によって取得された水面40の傾きTと補助記憶装置14に記憶された流水路4の水面40の傾きの基準値とを比較することで送受信面23の傾きの異常を特定してもよい。具体的には、異常検知部36は、傾き特定部35によって取得された水面40の傾きTと水面40の傾きの基準値との差が所定の閾値以上である場合に、送受信面23の傾きが異常であると判定してもよい。
【0055】
図6Bは、鉛直方向Yを紙面上下方向として示す図であって、水面40の傾きTが
図6Aに示す水面40と同じであり、非接触水位流速計1が所定の角度以上傾いた場合の模式図である。
図6Cは、非接触水位流速計1の視野角方向を上下方向として示す図であって、水面40の傾きが
図6Aと同じであり、非接触水位流速計1が所定の角度以上傾いた場合の模式図である。
【0056】
図6B及び
図6Cに示すように、非接触水位流速計1の送受信面23が大きく傾くと、傾き特定部35によって特定される水面40の傾きTは、実際の傾きとは大きく異なる傾きとして特定される。このため、本実施形態では、水面40の傾きTの時系列の変化や水面40の傾きTと基準値との差が所定の閾値以上である場合に、非接触水位流速計1の設置状態の異常により、送受信面23の傾きの異常が発生していると判定している。
【0057】
出力処理部37は、流速特定部33によって特定された流速及び水位特定部34によって特定された水位を出力し、監視装置2に送信する処理を実行する。また出力処理部37は、異常検知部36が送受信面23の傾きTの異常を検知した場合に、検知した送受信面23の傾きTの異常を監視装置2に通知する。
【0058】
次に、本実施形態に係る非接触水位流速計1の処理部10が実行する水位流速特定処理の流れの一例について
図7を参照しながら説明する。
図7は、非接触水位流速計1による水位流速特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0059】
図7に示すように、ステップS11において、点群情報取得部31は、複数の送信アンテナ21及び複数の受信アンテナ22によって構成されるアンテナ部20から受信信号を取得し、該受信信号に基づいて複数の点群5の点群情報を取得する処理を実行する。
【0060】
ステップS12において、点群情報取得部31は、所定の測定回数分の点群情報を取得したか否かを判定する。点群情報取得部31は、所定の測定回数分の点群情報を取得したと判定した場合(ステップS12;YES)、処理をステップS13に移行させる。一方で、点群情報取得部31は、所定の測定回数分の点群情報を取得していないと判定した場合(ステップS12;NO)、所定の時間経過後に処理をステップS11に戻す。点群情報取得部31は、ステップS11及びステップS12の処理により、所定の測定回数分の点群情報の時系列データを取得することができる。
【0061】
ステップS13において、判定部32は、ステップS11及びステップS12で取得した複数の点群の位置情報及び速度情報の時系列データから河川特有の関係の有無を判定する。
【0062】
ステップS14において、判定部32は、ステップS13で河川特有の相関が有ると判定した場合(ステップS14;YES)、処理をステップS15に移行させる。ステップS15において、流速特定部33は、ステップS11及びステップS12で取得した点群情報に基づいて流水路4の流速を特定する。流速特定部33は、例えば2つ以上の点群5の位置情報の時間変化に基づいて、流水路4の流速を算出してもよい。次いで、水位特定部34は、水の流れ方向Fの所定の範囲における複数の点群5それぞれの点群距離情報と補助記憶装置14から抽出した基準距離情報とに基づいて流水路4の水位を特定する(ステップS16)。このとき、流速特定部33は、例えば水の流れ方向Fの所定の範囲の各点群5に対応する位置の水位の中央値を水位としてもよい。そして、ステップS17において、処理部10は、ステップS15で特定した流速とステップS16で特定した水位を出力し、監視装置2に送信する。その後、処理部10は、水位流速特定処理を終了する。
【0063】
一方で、判定部32は、ステップS13で河川特有の相関が無いと判定した場合(ステップS14;NO)、処理をステップS18に移行させる。ステップS18において、水位特定部34は、点群5と送受信面23との間の点群距離情報を特定する。このとき、水位特定部34は、水の流れ方向Fの所定の範囲における複数の点群5それぞれの点群距離情報の中央値を点群距離情報としてもよい。次いで、水位特定部34は、ステップS18で特定した距離情報が示す値と基準距離情報が示す値が一致するか否かを判定する(ステップS19)。処理部10は、点群距離情報が示す値と基準距離情報が示す値が一致すると判定した場合(ステップS19;YES)、流水路4の水流情報がないと判定し(ステップS20)、その判定結果を出力する(ステップS21)。その後、処理部10は水位流速特定処理を終了する。一方で、処理部10は、点群距離情報が示す値と基準距離情報が示す値が一致しないと判定した場合(ステップS19;NO)、流水路4の流速を0とし、ステップS16と同様の処理により流水路4の水位を特定し(ステップS22)、流水路4の流速及び水位の特定結果を監視装置2に出力する(ステップS23)。その後、処理部10は、水位流速特定処理を終了する。
【0064】
次に、本実施形態に係る非接触水位流速計1の処理部10が実行する異常検知処理の流れの一例について
図8を参照しながら説明する。
図8は、非接触水位流速計1による異常検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0065】
図8に示すように、ステップS31において、点群情報取得部31は、アンテナ部20から受信信号を取得し、該受信信号に基づいて水の流れ方向Fの所定の範囲における複数の点群5の点群情報を取得する処理を実行する。
【0066】
ステップS32において、傾き特定部35は、水の流れ方向F毎に特定される各点群5と送受信面23との間の点群距離情報と各点群5の角度情報を取得する。
【0067】
ステップS33において、傾き特定部35は、ステップS32で取得した距離情報及び角度情報に基づいて、水面40の傾きTを特定する。
【0068】
ステップS34において、異常検知部36は、所定の期間におけるステップS33で特定した水面40の傾きTと補助記憶装置14に記憶された水面40の傾きTの基準値との差が所定の閾値以上であるか否かを判定する。異常検知部36は、特定した水面40の傾きTと基準値との差が所定の閾値未満である場合、所定の時間経過後に処理をステップS31に戻す。一方で、異常検知部36は、特定した水面の傾きTと基準値との差が所定の閾値以上である場合、処理をステップS35に移行させる。
【0069】
ステップS35において、出力処理部37は、非接触水位流速計1の送受信面23の傾きが異常であると判定し、その判定結果を監視装置2に通知する。その後、処理部10は、傾き異常検知処理を終了する。
【0070】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0071】
本実施形態に係る非接触水位流速計1は、流水路4を流れる水の流れ方向Fにそれぞれ広い指向性を有し、流水路4の水面40に向かって送信波を送信する少なくとも1以上の送信アンテナ21と、水の流れ方向Fにそれぞれ広い指向性を有し、送信波が流水路4の水面40に形成されている物標に反射され、当該物標からの反射波を受信する少なくとも1以上の受信アンテナ22と、送信波及び反射波を処理して、複数の点群5を検知し、検知した複数の点群5について、クラスタリング処理及びトラッキング処理を行って、複数の点群毎の位置情報及び速度情報を算出し、当該位置情報及び速度情報から流水路4の水位及び流速を特定し、その結果を出力する処理部10と、を備え、少なくとも1以上の送信アンテナ21と少なくとも1以上の受信アンテナ22とを合わせたアンテナの本数は3以上である。
【0072】
これにより、送信アンテナ21及び受信アンテナ22が水の流れ方向Fに広い指向性を有するので、水の流れ方向Fに沿った複数の点群5に関する情報を取得できる。また送信アンテナ21及び受信アンテナ22のうち少なくともいずれか一方を複数備えるので、アンテナの指向性が広い場合であっても各点群5の正確な角度情報を取得することができる。これにより、2つのセンサの使用や信号の切替を行わず、水の流れ方向Fに沿った複数の点群5の正確な位置情報及び速度情報を取得することができる。よって、複数のセンサを用いずに簡素な処理で正確に流水路4の水位及び流速を特定できる。
【0073】
また本実施形態に係る非接触水位流速計1において、処理部10は、水の流れ方向Fの所定の範囲における複数の点群5の水の流れ方向Fの位置情報及び速度情報に基づいて、流水路4の流速を特定する。
【0074】
これにより、より簡素な処理で正確に流水路4の流速を特定できる。
【0075】
また本実施形態に係る非接触水位流速計1において、位置情報には、複数の点群5それぞれと少なくとも1以上の送信アンテナ21及び少なくとも1以上の受信アンテナ22が配置される送受信面23との間の距離情報が含まれ、処理部10は、位置情報のうち送受信面23に対する相対速度が0となる点群5と送受信面23との間の距離情報に基づいて、流水路4の水位を特定する。
【0076】
これにより、例えば送受信面23に対する点群5の相対速度が0となる送受信面23と最も近い点群5との間の距離情報に基づいて水位を特定することになるので、より簡素な処理で正確な水位を特定できる。
【0077】
また本実施形態に係る非接触水位流速計1において、位置情報には、複数の点群5それぞれと少なくとも1以上の送信アンテナ21及び少なくとも1以上の受信アンテナ22が配置される送受信面23との間の距離情報が含まれ、処理部10は、位置情報のうち水の流れ方向毎に特定される複数の点群5それぞれと送受信面23との間の距離情報に基づいて、流水路4の水面40の傾きTを特定する。
【0078】
これにより、複数の装置を用いずにより簡素な処理で水位及び流速とともに水面40の傾きTを特定できる。
【0079】
本実施形態に係る水位流速監視システム100は、非接触水位流速計1と、非接触水位流速計1とネットワークNWを介して接続され、流水路4の流速及び水位を監視する監視装置2と、を備え、非接触水位流速計1は、ネットワークNWを介して特定した流水路4の水位及び流速を監視装置2へ送信する。
【0080】
これにより、非接触水位流速計1から水位及び流速を特定するための元データである容量の大きい点群情報を送信せずに、より小さい通信負荷で監視装置2に流水路4の状態を通知することができる。
【0081】
また本実施形態に係る水位流速監視システム100において、位置情報には、複数の点群5それぞれと少なくとも1以上の送信アンテナ21及び少なくとも1以上の受信アンテナ22が配置される送受信面23との間の距離情報が含まれ、非接触水位流速計1の処理部10は、位置情報のうち水の流れ方向F毎に特定される複数の点群5それぞれと送受信面23との間の距離情報に基づいて、流水路4の水面40の傾きTを特定し、流水路4の水面40の傾きTの時系列の変化に基づいて、送受信面23の傾きの異常を検知する。
【0082】
これにより、非接触水位流速計1の設置状態の異常を簡素な処理で把握でき、取得した流水路4の水位や流速に関する情報が信頼性のある情報であるか否かを把握できる。
【0083】
また本実施形態に係る水位流速監視システム100において、非接触水位流速計1は、ネットワークNWを介して検知した送受信面23の傾きの異常を監視装置2に通知する。
【0084】
これにより、より迅速に非接触水位流速計1の設置状態の異常を共有することができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0086】
上記実施形態では、基準距離情報は非接触水位流速計1の送受信面23と流水路4の川底との間の距離であったが、予め知られているある水位における水面40と送受信面23との間の距離であってもよい。そして水位特定部34は、例えば点群距離情報と基準距離情報とを比較して流水路4の水位を特定してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 非接触水位流速計
4 流水路
5 点群
10 処理部
21 送信アンテナ
22 受信アンテナ
40 水面
F 水の流れ方向