(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140322
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20241003BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20241003BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20241003BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02G3/32
H02G3/30
F16B2/08 U
F16B2/08 Q
B60R16/02 623H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051412
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】岡 大智
(72)【発明者】
【氏名】保田 大地
(72)【発明者】
【氏名】永野 華穂
(72)【発明者】
【氏名】小坂 朋也
(72)【発明者】
【氏名】辻 憲二郎
【テーマコード(参考)】
3J022
5G363
【Fターム(参考)】
3J022DA11
3J022DA12
3J022EA42
3J022EC14
3J022EC22
3J022FA05
3J022FB12
3J022FB22
3J022GA03
3J022GB43
3J022GB45
3J022GB59
3J022GB74
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DA15
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】破壊せずに結束状態を解除でき、差込孔周辺の小型化が容易なクランプを提供する。
【解決手段】クランプ1は、本体部11と、固定部12と、ロック部品40と、バンド部15と、を備える。本体部11には、貫通状の通過孔14が形成される。固定部12は、車両パネルの取付孔に取り付けられる。ロック部品40には、貫通状の差込孔41が形成される。ロック部品40は弾性変形可能である。バンド部15は、通過孔14及び差込孔41を通過することが可能である。バンド部15の長さ方向に複数の凹部34が並べて形成される。通過孔14においてバンド部15が通過する下流側の端部に、下流端に近づくに従って広がるように傾斜する第1テーパ部51が本体部11に形成される。ロック部品40に、窄まるように傾斜する第2テーパ部52が形成される。差込孔41における内壁に、凹部34に引っ掛けることが可能なロック爪42が形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通状の第1差込空間が形成された本体部と、
前記本体部から突き出すように設けられ、車両パネルの取付孔に取り付けられる固定部と、
貫通状の第2差込空間が形成された、弾性変形可能なロック部と、
基端部が前記本体部に接続され、先端部が前記第1差込空間及び前記第2差込空間を通過することが可能であり、長さ方向に複数の凹部が並べて形成されたバンド部と、
を備え、
前記第1差込空間において前記バンド部が通過する下流側の端部に、下流端に近づくに従って広がるように傾斜する第1傾斜部が前記本体部に形成され、
前記ロック部に、窄まるように傾斜する第2傾斜部が形成され、
前記第2差込空間における内壁に、前記凹部に引っ掛けることが可能なロック凸部が形成されることを特徴とするクランプ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプであって、
前記バンド部に取り付けられ、前記バンド部の長さ方向にスライド移動可能なバンド保持部を備え、
前記バンド保持部には、前記バンド部が通過可能な内部空間が形成され、
前記バンド保持部は、前記バンド部において前記第1差込空間及び前記第2差込空間を通過した先端側の部分を、前記内部空間に保持可能であることを特徴とするクランプ。
【請求項3】
請求項2に記載のクランプであって、
前記バンド保持部の外壁面のうち、前記バンド部が前記第1差込空間に差し込まれた状態における内周側を向く面において、前記バンド部の長さ方向での両端部には、面取り又はフィレットが形成されており、
前記バンド保持部に形成された前記内部空間の内壁面のうち、前記バンド部が前記第1差込空間に差し込まれた状態における内周側を向く面において、前記バンド部の長さ方向での両端部には、面取り又はフィレットが形成されていることを特徴とするクランプ。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のクランプであって、
前記第2差込空間における内壁から前記ロック凸部が突出する向きは、前記内壁から遠ざかるに従って、前記第2差込空間において前記第2傾斜部が窄まっている側の端部から遠ざかるように傾斜していることを特徴とするクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に巻き付けて固定するバンド部を有し、車両の車体に固定可能なクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この種のクランプを開示する。
【0003】
特許文献1のバンドクランプにおいては、本体に第1貫通孔と第2貫通孔が2段に設けられている。第1貫通孔の一端よりバンドを延伸させ、第2貫通孔の外壁に車体係止部が突設されている。第1貫通孔の内周面より、バンドの鋸歯状の係止部と係止する係止片が突設されている。第2貫通孔の外壁に、幅方向の両側の前後対称位置に切欠を設け、これら切欠に挟まれた部分をバンド挿通路としている。切欠には、車体係止部の左右の羽根から突設した突片が挿入される。バンドは、第1貫通孔に挿通して係止された後、第2貫通孔に挿通される。バンドを第2貫通孔に通すと、突片が移動不可となり車体係止部が貫通孔に係止固定される。バンド部を第2貫通孔より引き出すと、突片が移動自由となり車体係止部を貫通孔から抜き出せるようになる。
【0004】
特許文献2は、車体に固定する部分を有しないが、電線に巻き付けて固定するバンド部を有する電線結束具を開示する。
【0005】
特許文献2の電線結束具は、バンド部とロック部を備える。ロック部は、枠体本体と、蓋状体と、を含んで構成されている。枠体本体は、横向きU字形に形成され、内方に係止爪を支持する。枠体本体には、バンド部の基端が一体的に結合されている。蓋状体は、L字形に形成されている。蓋状体は、枠体本体に回動可能に結合され、開放状態と閉止状態との間で切り換えることができる。閉止状態においてバンド部がロック部内に挿入されると、係止爪に係止され、電線群の結束状態を維持することができる。蓋状体を回動させて開放状態とすると、バンド部を係止爪から離脱させることができるので、バンド部をロック部から引き抜いて結束状態を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-324059号公報
【特許文献2】特開2016-082689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなクランプを用いて電線束を車両に固定した後、車両オーナーが装備の追加を希望する等の様々な理由で、追加の回路(電線)を取り付ける必要が生じることがある。しかし、特許文献1の構成は、バンド部によって電線束をいったん結束すると、バンド部を切断しない限り結束を解除することはできない。
【0008】
特許文献2の構成の電線結束具で電線束を結束した場合、結束具を破壊せずに、必要に応じて電線束の結束を解除することができる。しかし、特許文献2の電線結束具は、電線束を結束する機能を有するだけで、電線束を別の部材(例えば、車体)に固定する機能を有していない。また、特許文献2の電線結束具は、横向きU字状の枠体本体に対してL字状の蓋状体が重ねて配置される構成であるため、ロック部の小型化が困難であり、狭小空間における電線束の固定に適用することが難しかった。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、破壊せずに結束状態を解除でき、差込孔周辺の小型化が容易なクランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成のクランプが提供される。即ち、クランプは、本体部と、固定部と、ロック部と、バンド部と、を備える。前記本体部には、貫通状の第1差込空間が形成される。前記固定部は、前記本体部から突き出すように設けられ、車両パネルの取付孔に取り付けられる。前記ロック部には、貫通状の第2差込空間が形成される。前記ロック部は弾性変形可能である。前記バンド部の基端部は前記本体部に接続され、先端部は前記第1差込空間及び前記第2差込空間を通過することが可能である。前記バンド部の長さ方向に複数の凹部が並べて形成される。前記第1差込空間において前記バンド部が通過する下流側の端部に、下流端に近づくに従って広がるように傾斜する第1傾斜部が前記本体部に形成される。前記ロック部に、窄まるように傾斜する第2傾斜部が形成される。前記第2差込空間における内壁に、前記凹部に引っ掛けることが可能なロック凸部が形成される。
【0012】
これにより、第1傾斜部と第2傾斜部の結合によりロック部を弾性変形させてロックを実現し、結合の解除によりロックを解除することができる。従って、クランプを破壊せずに結束対象物の結束を解除して、再利用性を高めることができる。また、本体部を特に、第1差込空間における厚み方向(即ち、第1差込空間にバンド部が差し込まれた場合の当該バンド部の厚み方向に相当する方向)で小型化することができる。
【0013】
前記のクランプにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、クランプは、前記バンド部に取り付けられ、前記バンド部の長さ方向にスライド移動可能なバンド保持部を備える。前記バンド保持部には、前記バンド部が通過可能な内部空間が形成される。前記バンド保持部は、前記バンド部において前記第1差込空間及び前記第2差込空間を通過した先端側の部分を、前記内部空間に保持可能である。
【0014】
これにより、結束対象物を結束した後、バンド部を切断せずにコンパクトにまとめることができる。従って、クランプの再利用性を高めることができる。
【0015】
前記のクランプにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記バンド保持部の外壁面のうち、前記バンド部が前記第1差込空間に差し込まれた状態における内周側を向く面において、前記バンド部の長さ方向での両端部には、面取り又はフィレットが形成されている。前記バンド保持部に形成された前記内部空間の内壁面のうち、前記バンド部が前記第1差込空間に差し込まれた状態における内周側を向く面において、前記バンド部の長さ方向での両端部には、面取り又はフィレットが形成されている。
【0016】
これにより、バンド部を結束対象物の外側に巻いた状態においても、バンド保持部がバンド部の長さ方向にスムーズに移動することができる。また、バンド部の先端部をバンド保持部の内部空間にスムーズに差し込むことができる。
【0017】
前記のクランプにおいては、前記第2差込空間における内壁から前記ロック凸部が突出する向きは、前記内壁から遠ざかるに従って、前記第2差込空間において前記第2傾斜部が窄まっている側の端部から遠ざかるように傾斜していることが好ましい。
【0018】
これにより、バンド部において凹部と凹部の間に形成される段差部に、ロック凸部の先端が突き当たるので、バンド部の引抜きを強力に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るクランプの全体的な構成を示す斜視図。
【
図2】バンド部の先端部を差込孔に差し込んだ状態を示す斜視図。
【
図3】第1テーパ部と第2テーパ部とが結合した状態を示す一部断面図。
【
図4】ワイヤハーネスの結束作業が完了した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本願発明の一実施形態に係るクランプ1である。
【0021】
本実施形態のクランプ1は、クランプ本体10と、ロック部品(ロック部)40と、を備える。クランプ1は、ワイヤハーネス(結束対象物)100を、図略の目標物(自動車の車体パネル等)に対して固定することができる。
【0022】
クランプ本体10は、本体部11と、固定部12と、バンド部15と、が一体形成されたものである。クランプ本体10は、合成樹脂等を用いて成形されている。
【0023】
固定部12は、目標物に対して固定される部位である。固定部12は、本体部11から突出するように設けられている。
【0024】
固定部12は、複数に分割された差込軸を有する公知の構成である。差込軸が分割された部分のそれぞれに、爪部が一体的に形成されている。
【0025】
図示しない車体パネル等には、貫通状の取付孔が形成されている。固定部12を取付孔に挿入すると、当該取付孔の周縁に爪部を引っ掛けることができる。この結果、クランプ本体10が前記車体パネルに固定される。
【0026】
本体部11は、略四角筒状に形成された筒部13を備えている。筒部13には通過孔(第1差込空間)14が形成されており、この通過孔14にバンド部15を挿入することができる。以下、筒部13に対してバンド部15を挿入する方向を挿入方向と呼び、上記と反対の方向を引抜方向と呼ぶことがある。挿入方向は矢印A1で、引抜方向は矢印A2で、それぞれ示されている。
【0027】
バンド部15は、細長い帯状に形成されている。バンド部15の幅は一定である。バンド部15は、ある程度の可撓性を有している。
図1に示すように、バンド部15の長手方向一側の端部である基端部31は、筒部13に接続している。バンド部15において筒部13から遠い側の端部である先端部32は、筒部13に形成されている通過孔14に、矢印A1で示す向きに差し込むことができる。
【0028】
バンド部15の先端部32を矢印A1の向きに通過孔14に差し込んだ場合に、バンド部15の外周側に位置する面には、係止部33が形成されている。係止部33は、多数の凹部34がバンド部15の長さ方向に並べて配置された構成となっている。それぞれの凹部34の幅は、バンド部15の幅よりもやや小さい。それぞれの凹部34は、バンド部15の幅方向中央に配置されている。複数の凹部34が形成されることに伴って、バンド部15の幅方向中央部分の厚みは長さ方向で周期的に変化している。
【0029】
以下、通過孔14において幅方向及び厚み方向とは、通過孔14に差し込まれるバンド部15の幅方向及び厚み方向に対応する方向を意味する。後述の差込孔41及び通過孔61に関しても同様である。
【0030】
筒部13に形成された通過孔14のうち挿入方向下流側の端部には、V字状の第1テーパ部(第1傾斜部)51が形成されている。第1テーパ部51は1対の面から構成され、それぞれの面は、バンド部15が通過孔14を通過する方向に対して傾斜している。第1テーパ部51は、挿入方向下流側に近づくに従って通過孔14の厚み方向に広がるように形成されている。
【0031】
ロック部品40は、略四角筒状の部品である。ロック部品40は、合成樹脂等を用いて成形されており、弾性変形可能である。
図2に示すように、ロック部品40には、貫通状の差込孔(第2差込空間)41が形成されている。差込孔41の内壁には、2つのロック爪(ロック凸部)42が配置されている。1対のロック爪42は、差込孔41の中心軸を挟んで対称となるように配置される。それぞれのロック爪42は、差込孔41の厚み方向に概ね沿うように突出している。それぞれのロック爪42の幅は、差込孔41の幅よりもやや小さい。それぞれのロック爪42は、差込孔41の幅方向中央に配置されている。
【0032】
ロック部品40の端部には、通過孔14の第1テーパ部51に対応して、V字状の第2テーパ部(第2傾斜部)52が形成されている。第2テーパ部52は1対の面から構成され、それぞれの面は、バンド部15が差込孔41を通過する方向に対して傾斜している。第2テーパ部52は、筒部13から遠ざかるに従って、差込孔41の厚み方向に広がるように形成されている。
【0033】
第2テーパ部52が第1テーパ部51に接触して押されることで、ロック部品40は、差込孔41の厚み方向が小さくなるように変形することができる。
【0034】
差込孔41にバンド部15が差し込まれた状態で、1対のロック爪42のうち一方は、バンド部15に形成された係止部33に引っ掛かることができる。
【0035】
係止部33は鋸歯状であって、それぞれの凹部34は、バンド部15の基端部31から先端部32に近づくに従って深さが徐々に大きくなる緩やかな傾斜状に形成されている。凹部34と凹部34の間には段差部が形成されている。
【0036】
ロック部品40が変形していない状態では、バンド部15を差込孔41に差し込んだ状態でも、ロック爪42が凹部34の内部まで十分に突出しない。従って、ロック爪42はバンド部15の係止部33に引っ掛からず、バンド部15は差込孔41の内部を自由に移動することができる。
【0037】
第2テーパ部52に力が加えられた結果、ロック部品40が変形している状態では、ロック爪42が凹部34の内部まで突出する。ただし、バンド部15の先端部32を差込孔41に第2テーパ部52側から差し込む場合、バンド部15の移動に伴って、凹部34の傾斜に押されてロック爪42が弾性変形して退避する。従って、ロック爪42は係止部33に実質的に引っ掛からない。上記の差込と反対の向きにバンド部15が移動しようとすると、ロック爪42が、凹部34と凹部34の間の段差部に引っ掛かる。こうして、引抜方向(矢印A2)にバンド部15が移動するのを阻止するロック機能が実現される。
【0038】
ロック爪42は1対で設けられている。これにより、仮にロック部品40を180°回転させてバンド部15に取り付けた場合でもロック機能が同様に発揮されるので、ロック部品40の取付け向きの管理が不要になる。
【0039】
バンド部15には、
図1に示すように、押え部材(バンド保持部)60が取り付けられている。押え部材60は四角筒状に形成されており、その通過孔(内部空間)61にバンド部15が差し込まれている。押え部材60は、バンド部15の長さ方向にスライド移動することができる。
【0040】
押え部材60の外壁面のうち、
図2に示すようにバンド部15をワイヤハーネス100に巻いたときに内周側を向く面には、バンド部15の長さ方向での両端部に面取り62が形成されている。これにより、ワイヤハーネス100に対する押え部材60の引っ掛かりを防止することができる。押え部材60において、この外壁面に対応する部分の肉厚を小さくすると、よりスムーズな移動を実現できるので好ましい。
【0041】
押え部材60が備える通過孔61の内壁面のうち、バンド部15をワイヤハーネス100に巻いたときに内周側を向く面には、バンド部15の長さ方向での両端部に面取り63が形成されている。これにより、バンド部15の先端部を通過孔61に差し込む作業及び引き抜く作業が容易になる。
【0042】
クランプ1をワイヤハーネス100に対して取り付ける方法は、以下のとおりである。(1)作業者は、バンド部15を、ワイヤハーネス100の外側に周回させてループ部を形成し、前述の挿入方向(矢印A1)に従って筒部13の通過孔14に挿入する。(2)通過孔14に差し込まれた状態のバンド部15の先端部32が、更に差込孔41に差し込まれるように、作業者は
図2に示すようにロック部品40をバンド部15に取り付ける。(3)作業者は、バンド部15に取り付けられたロック部品40を矢印A2の方向に移動させて、第2テーパ部52を、
図3に示すように筒部13の第1テーパ部51に近接させる。(4)作業者は、ロック部品40を筒部13に押さえ付けた状態(テーパ結合状態)を維持しつつ、先端部32を矢印A1の方向に引っ張ってループ部の弛みを解消し、バンド部15を締め付ける。
【0043】
バンド部15によってワイヤハーネス100を締め付けた状態では、ワイヤハーネス100の復元力等により、バンド部15を通過孔14から引き抜く方向の力(矢印A2の方向の力)が生じる。しかし、バンド部15に固定されているロック部品40の第2テーパ部52が筒部13の第1テーパ部51に接しているので、バンド部15が引抜方向に引っ張られると、第1テーパ部51及び第2テーパ部52の作用によりロック部品40が変形して、バンド部15が有する係止部33の凹部34にロック爪42が深く入り込む。この結果、バンド部15が差込孔41から(ひいては、通過孔14から)抜けないようにロックすることができる。
【0044】
ロック部品40は差込孔41の周囲を取り囲むように四角筒状に形成されているが、差込孔41の幅方向におけるロック部品40の壁厚の合計は、差込孔41の厚み方向における壁厚の合計よりも小さくなっている。これにより、ロック部品40を、
図3において小さい矢印で示す方向に変形させることが容易になっている。
【0045】
図2の角度C1で示すように、差込孔41において内壁からロック爪42が突出する向きは、内壁から遠ざかるに従って、差込孔41において第2テーパ部52が窄まっている側の端部から遠ざかるように傾斜している。このようにロック爪42の向きが定められているので、係止部33の段差部にロック爪42の先端が突き当たり、強力にロックすることができる。
【0046】
図2の角度C2で示すように、係止部33において形成されている段差部の壁面も、ロック爪42の先端を凹部34の深い部分へ案内するように、垂直から適宜傾斜している。これにより、ロック時の保持力を高めることができる。
【0047】
作業者は、適宜のタイミングで、押え部材60の位置を調整する。押え部材60には面取り62が形成されているので、押え部材60がワイヤハーネス100の外周面に接触していても、バンド部15の長さ方向に押え部材60をスムーズに移動させることができる。押え部材60の位置調整作業は、バンド部15によってワイヤハーネス100を強く締め付ける前に行われることが好ましい。
【0048】
次に、作業者は、押え部材60の通過孔61に先端部32を矢印B1の向きに差し込む。これにより、
図4に示すように、バンド部15の先端部32を、先に巻かれたバンド部15の外周に重なるコンパクトな状態で保持することができる。また、余分なバンド部15を切断する必要がないので、後述の再利用性を高めることができる。
【0049】
押え部材60の通過孔61には面取り63が形成されているので、バンド部15の先端部32を通過孔61にスムーズに入れることができる。また、係止部33において形成されている上述の段差部が、通過孔61に対して引っ掛かりにくくすることができる。
【0050】
車体においてクランプ1を用いてワイヤハーネス100を上述のように固定した後、電線を追加的に取り付ける必要が生じた場合を考える。この場合、作業者は、
図4の状態で、バンド部15を掴んで矢印B2の方向に引っ張り、押え部材60から先端部32を引き抜く。これにより、クランプ1は
図3の状態に戻る。次に、作業者は、バンド部15の先端部32を、
図3の矢印A1の方向に少し引っ張る。係止部33に対して一体化しているロック部品40は、バンド部15とともに矢印A1の方向に移動する。この結果、第2テーパ部52が第1テーパ部51から離れるので、ロック部品40の弾性変形が元に戻り、係止部33に対するロック爪42のロックが解除される。その後、作業者は、ロック部品40を掴んで
図3の矢印A1の向きに引っ張り、ロック部品40をバンド部15から取り外す。最後に、作業者は、バンド部15を掴んで
図3の矢印A2の向きに引っ張り、差込孔41から引き抜く。以上により、ワイヤハーネス100の結束を解除することができる。
【0051】
結束を解除したクランプ1は、追加された電線を含むワイヤハーネスを取り付けるために再び使用することができる。従って、コストの低減及び省資源を実現することができる。
【0052】
本実施形態において、バンド部15のロック/ロック解除はロック部品40によって実現される。このロック部品40は、本体部11(筒部13)に対して、前述の挿入方向(矢印A1の方向)で通過孔14に近接して配置される。従って、バンド部15のロック/ロック解除を実現しつつ、本体部11(筒部13)を特に、通過孔14における厚み方向(
図3の矢印D1で示す方向)でコンパクト化することができる。従って、破壊せずにワイヤハーネス100の結束を解除して再利用性を高めることと、狭小空間にワイヤハーネス100を取付可能であることと、を両立させることができる。
【0053】
次に、
図5を参照してクランプ1の変形例を説明する。本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0054】
図5に示す変形例のクランプ1xは、前述のロック部品40に代えてロック部40xを備える。ロック部40xは、クランプ本体10と一体的に形成されている。ロック部40xは、1対の薄肉部45を介して、筒部13と接続されている。薄肉部45は容易に変形可能であるので、前述のロック部品40と同様に、ロック部40xは筒部13に対して矢印A1及び矢印A2の方向に移動することができる。ロック部40xが筒部13に対して近づく向きに移動すると、第2テーパ部52は第1テーパ部51に対して、薄肉部45を挟んでテーパ結合する。
【0055】
本変形例の構成では、ロック部40xがクランプ本体10と接続されているので、ロック部40xの紛失を防止することができる。
【0056】
本変形例においては、ロック部40xが薄肉部45を介して筒部13に接続されているので、ロック部40xが前述のように180°回転してバンド部15に取り付けられることはない。従って、ロック部40xにおいて、ロック爪42は1対ではなく1つだけ配置されている。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態のクランプ1は、本体部11と、固定部12と、ロック部品40と、バンド部15と、を備える。本体部11には、貫通状の通過孔14が形成される。固定部12は、本体部11から突き出すように設けられ、車両パネルの取付孔に取り付けられる。ロック部品40には、貫通状の差込孔41が形成される。ロック部品40は弾性変形可能である。バンド部15の基端部31は、本体部11に接続される。バンド部15の先端部32は、通過孔14及び差込孔41を通過することが可能である。バンド部15の長さ方向に複数の凹部34が並べて形成される。通過孔14においてバンド部15が通過する下流側の端部に、下流端に近づくに従って広がるように傾斜する第1テーパ部51が本体部11に形成される。ロック部品40に、窄まるように傾斜する第2テーパ部52が形成される。差込孔41における内壁に、凹部34に引っ掛けることが可能なロック爪42が形成される。
【0058】
これにより、第1テーパ部51と第2テーパ部52の結合によりロック部品40を弾性変形させてロックを実現し、結合の解除によりロックを解除することができる。従って、クランプ1を破壊せずにワイヤハーネス100の結束を解除して、再利用性を高めることができる。また、本体部11を特に、通過孔14における厚み方向で小型化することができる。
【0059】
本実施形態のクランプ1は、押え部材60を備える。押え部材60は、バンド部15に取り付けられ、バンド部15の長さ方向にスライド移動可能である。押え部材60には、バンド部15が通過可能な通過孔61が形成される。押え部材60は、バンド部15において通過孔14及び差込孔41を通過した先端側の部分を、
図4に示すように通過孔61に保持可能である。
【0060】
これにより、ワイヤハーネス100を結束した後、バンド部15を切断せずにコンパクトにまとめることができる。従って、クランプ1の再利用性を高めることができる。
【0061】
本実施形態のクランプ1において、押え部材60の外壁面のうち、バンド部15が通過孔14に差し込まれた状態における内周側を向く面において、バンド部15の長さ方向での両端部には、面取り62が形成されている。押え部材60に形成された通過孔61の内壁面のうち、バンド部15が通過孔14に差し込まれた状態における内周側を向く面において、バンド部15の長さ方向での両端部には、面取り63が形成されている。
【0062】
これにより、
図3のようにバンド部15をワイヤハーネス100の外側に巻いた状態においても、面取り62があるため、押え部材60がワイヤハーネス100の外周面に対して引っ掛かりにくい。従って、押え部材60がバンド部15の長さ方向にスムーズに移動することができる。また、押え部材60の内周面に面取り63があるため、バンド部15の先端部32を押え部材60にスムーズに差し込むことができる。
【0063】
本実施形態のクランプ1において、差込孔41における内壁からロック爪42が突出する向きは、内壁から遠ざかるに従って、差込孔41において第2テーパ部52が窄まっている側の端部から遠ざかるように傾斜している。
【0064】
これにより、バンド部15の係止部33が有する段差部にロック爪42の先端が突き当たるので、バンド部15の引抜きを強力に阻止することができる。
【0065】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0066】
押え部材60において、直線状の面取り62,63の代わりに、円弧状のフィレットが形成されても良い。面取り62,63が省略されても良い。
【0067】
押え部材60が省略されても良い。
【0068】
ロック爪42は、差込孔41の内壁に対して垂直な向きに突出しても良い。
【0069】
第1テーパ部51は、1対の面で構成されるのに代えて、片側の面だけで構成されても良い。第2テーパ部52も同様である。
【0070】
図5の変形例において、薄肉部45は1対で配置される代わりに片側にだけ配置されても良い。ただし、薄肉部45が1対で配置されると、ロック部40xの向きが安定するので好ましい。
【0071】
図6に示すロック部品40yのように、第2テーパ部52の1対の傾斜面が配置されている部分(言い換えれば、1対のロック爪42が配置されている部分)の周辺において、差込孔41の幅方向両側に相当する壁部が取り除かれても良い。この構成では、ロックのための弾性変形がより容易になる。
【符号の説明】
【0072】
1,1x クランプ
11 本体部
12 固定部
14 通過孔(第1差込空間)
15 バンド部
34 凹部
40 ロック部品(ロック部)
40x ロック部
41 差込孔(第2差込空間)
42 ロック爪(ロック凸部)
51 第1テーパ部(第1傾斜部)
52 第2テーパ部(第2傾斜部)
60 押え部材(バンド保持部)
61 通過孔(内部空間)
62,63 面取り