(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140327
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】搬送パッドおよび搬送装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20241003BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20241003BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20241003BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B41/06 A
H01L21/68 B
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
B23Q7/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051419
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】外薗 直樹
【テーマコード(参考)】
3C016
3C033
3C034
5F131
【Fターム(参考)】
3C016DA05
3C033BB04
3C033HH28
3C033MM02
3C034AA08
3C034BB15
3C034BB73
3C034BB83
3C034BB84
3C034DD07
3C034DD10
5F131AA02
5F131BA32
5F131CA70
5F131DB22
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB76
5F131DB77
5F131DB88
5F131EA05
5F131EB03
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルの保持面からウェーハを素早く離脱させる。
【解決手段】本実施形態では、搬送パッド80の外周吸引部91によって、ウェーハ100の外周部を反り上がらせて、この外周部のみをチャックテーブル20の保持面22から離隔することにより、ウェーハ100を中凸形状にして、ウェーハ100の外周部から保持面22に大気を入れて、保持面22(ポーラス部材21)の真空を破壊している。したがって、流体流通機構46によって保持面22から水や混合流体を噴出しなくとも、保持面22からウェーハ100を離隔することが可能となる。このため、保持面22からウェーハ100を素早く離脱させることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルの載置面に載置されている板状ワークの上面を吸引保持する搬送パッドであって、
基台と、
該基台に配置され、吸引源に連通されて該板状ワークの外周部を吸引し、該板状ワークの外周部を反り上がらせて湾曲形状にして保持する外周吸引部と、
を備える搬送パッド。
【請求項2】
請求項1記載の搬送パッドを用いてテーブルから板状ワークを搬出する搬送装置であって、
該搬送パッドを昇降させる昇降機構と、制御部とを備え、
該制御部は、
該昇降機構によって該搬送パッドを下降させ、吸引源に連通させた該外周吸引部によって該板状ワークの外周部を吸引保持すること、および、
該昇降機構によって該搬送パッドを上昇させ、該板状ワークの外周部を反り上がらせて該板状ワークを湾曲形状にして、該テーブルから該板状ワークを搬出すること、を実施する、
搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送パッドおよび搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2に開示のように、研削装置では、チャックテーブルのポーラス部材の上面の保持面によってウェーハの下面を吸引保持して、ウェーハの上面を砥石で研削している。そして、研削されたウェーハの上面を搬送パッドによって吸引保持し、チャックテーブルから水とエアとの混合流体を噴出させ、ウェーハを吸引保持した搬送パッドを保持面から上昇させて、保持面からウェーハを離脱させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-184269号公報
【特許文献2】特開2009-125900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように保持面からウェーハを離脱させる際には、保持面から噴出する混合流体によって保持面からウェーハを浮き上がらせ、混合流体のエアによって水の表面張力を破壊している。
【0005】
つまり、混合流体の噴出によって保持面からウェーハを浮上させてから、ウェーハを保持している搬送パッドを上昇させて保持面からウェーハを離脱させ、ウェーハを洗浄装置に搬送している。このため、保持面からウェーハを離脱させるまでに時間がかかる。
したがって、本発明の目的は、チャックテーブルの保持面からウェーハを素早く離脱させることにある。
【0006】
また、搬送パッドによって、チャックテーブルに載置された板状ワークの上面を吸引保持して、チャックテーブルから板状ワークを離脱させる際、ウェーハが、吸盤のように作用して、チャックテーブルに引っ付くことがある。
このため、本発明の他の目的は、チャックテーブルに引っ付かないように、板状ワークを離脱させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の搬送パッド(本搬送パッド)は、テーブルの載置面に載置されている板状ワークの上面を吸引保持する搬送パッドであって、基台と、該基台に配置され、吸引源に連通されて該板状ワークの外周部を吸引し、該板状ワークの外周部を反り上がらせて湾曲形状にして保持する外周吸引部と、備えている。
【0008】
本発明の搬送装置(本搬送装置)は、本搬送パッドを用いてテーブルから板状ワークを搬出する搬送装置であって、該搬送パッドを昇降させる昇降機構と、制御部とを備え、該制御部は、該昇降機構によって該搬送パッドを下降させ、吸引源に連通させた該外周吸引部によって該板状ワークの外周部を吸引保持すること、および、該昇降機構によって該搬送パッドを上昇させ、該板状ワークの外周部を反り上がらせて該板状ワークを湾曲形状にして、該テーブルから該板状ワークを搬出すること、を実施する。
【発明の効果】
【0009】
本搬送パッドを用いることにより、外周吸引部によって板状ワークの外周部を反り上がらせて、板状ワークの外周部のみをテーブルの載置面から離隔して、板状ワークの外周部から載置面に大気を入れて、載置面から板状ワーク全体を離脱させる。つまり、円形の板状ワークの外周部が載置面から離隔しないことで、板状ワークが吸盤のようになることによる載置面の吸引力を、破壊することができる。したがって、板状ワークがテーブルに対して吸盤のように吸い付いて、板状ワークがテーブルから離脱しにくくなることを、良好に抑制することができる。
【0010】
また、載置面を吸引源に連通させ載置面が板状ワークを吸引保持するテーブルの場合、板状ワークの外周部から載置面に大気を入れて載置面の吸引力を破壊することができる。したがって、載置面から水や混合流体を噴出しなくとも、載置面から板状ワークを離隔することが可能となる。また、載置面から水や混合流体を噴出して載置面から板状ワークが浮上する前に、板状ワークの外周部を反り上がらせて、載置面から板状ワークの外周部のみを離隔させているため、テーブルの載置面から板状ワークを素早く離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図3(a)は、搬送パッドの構成を示す斜視図であり、
図3(b)は、外周吸引部の構成を示す説明図である。
【
図4】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【
図5】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【
図6】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【
図8】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【
図9】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【
図10】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【
図11】搬出機構によるウェーハの搬送動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本実施形態にかかる研削装置1は、加工装置の一例であり、ウェーハ100を研削加工するための装置である。ウェーハ100は、板状ワークの一例であり、表面101および裏面102を有している。ウェーハ100の裏面102は、研削加工が施される被加工面となる。
【0013】
研削装置1は、第1の装置ベース10と、第1の装置ベース10の後方(+Y方向側)に配置された第2の装置ベース11とを有している。
【0014】
第1の装置ベース10の-Y方向側には、第1のカセットステージ160および第2のカセットステージ162が設けられている。第1のカセットステージ160には、加工前のウェーハ100が収容される第1のカセット161が載置されている。第2のカセットステージ162には、加工後のウェーハ100が収容される第2のカセット163が載置されている。
【0015】
第1のカセット161および第2のカセット163は、内部に複数の棚を備えており、各棚に一枚ずつウェーハ100が収容されている。すなわち、第1のカセット161および第2のカセット163は、複数のウェーハ100を棚状に収容する。
【0016】
第1のカセット161および第2のカセット163の開口(図示せず)は、+Y方向側を向いている。これらの開口の+Y方向側には、ロボット155が配設されている。ロボット155は、ウェーハ100を保持する保持面を備えている。ロボット155は、加工後のウェーハ100を第2のカセット163に搬入(収納)する。また、ロボット155は、第1のカセット161から加工前のウェーハ100を取り出して、仮置き機構152の仮置きテーブル154に載置する。
【0017】
仮置き機構152は、第1のカセット161から取り出されたウェーハ100を仮置きするために用いられ、ロボット155に隣接する位置に設けられている。仮置き機構152は、仮置きテーブル154、および、位置合わせ部材153を有している。
【0018】
位置合わせ部材153は、仮置きテーブル154を囲むように外側に配置される複数の位置合わせピンと、位置合わせピンを仮置きテーブル154の径方向に移動させるスライダとを備えている。位置合わせ部材153では、位置合わせピンが仮置きテーブル154の径方向に中央に向かって移動されることにより、複数の位置合わせピンを結ぶ円が縮径される。これにより、仮置きテーブル154に載置されたウェーハ100が、所定の位置に位置合わせ(センタリング)される。
【0019】
仮置き機構152に隣接する位置には、搬入機構170が設けられている。搬入機構170は、仮置き機構152に仮置きされたウェーハ100を、裏面102が上向きとなるように、チャックテーブル20の保持面22に載置する。
【0020】
第2の装置ベース11の上面側には、開口部13が設けられている。そして、開口部13内には、ウェーハ保持機構30が配置されている。
【0021】
ウェーハ保持機構30は、ウェーハ100を保持する保持面22を備えたチャックテーブル20、チャックテーブル20を支持するチャックテーブルベース29、チャックテーブルベース29の基端側に無端ベルト25を介して接続されている駆動部26、チャックテーブルベース29を支持する支持部材28、および、支持部材28を支える複数の支持柱27を含んでいる。
【0022】
チャックテーブル20は、テーブルの一例であり、ポーラス部材21と、ポーラス部材21の上面が露出するようにポーラス部材21を収容する枠体23と、を備えている。ポーラス部材21の上面は、ウェーハ100を吸引保持する保持面22である。保持面22は、第1吸引源47(
図2参照)に連通されることにより、ウェーハ100を吸引保持する。このように、チャックテーブル20は、第1吸引源47に連通された保持面22によって、板状ワークであるウェーハ100を吸引保持する。また、枠体23の上面である枠体面24は、保持面22を囲繞しており、保持面22と同一面(面一)となるように形成されている
【0023】
駆動部26は、モータおよび駆動プーリを備え、無端ベルト25を回動させることにより、チャックテーブルベース29を回転させる。これにより、チャックテーブルベース29に支持されているチャックテーブル20が、保持面22の中心を通るようにZ軸方向に延びるテーブル回転軸を中心に回転する。
【0024】
チャックテーブル20の周囲には、チャックテーブル20とともにY軸方向に沿って移動されるカバー板39が設けられている。また、カバー板39には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー12が連結されている。そして、ウェーハ保持機構30の下方には、Y軸方向移動機構40が配設されている。
【0025】
Y軸方向移動機構40は、チャックテーブル20と研削機構70の研削砥石77とを、相対的に、保持面22に平行なY軸方向に移動させる。本実施形態では、Y軸方向移動機構40は、研削機構70の研削砥石77に対して、チャックテーブル20をY軸方向に移動させるように構成されている。
【0026】
Y軸方向移動機構40は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール42、このY軸ガイドレール42上をスライドするY軸移動テーブル45、Y軸ガイドレール42と平行なY軸ボールネジ43、Y軸ボールネジ43に接続されているY軸モータ44、および、これらを保持する保持台41を備えている。
【0027】
Y軸移動テーブル45は、Y軸ガイドレール42にスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル45には、図示しないナット部が固定されている。このナット部には、Y軸ボールネジ43が螺合されている。Y軸モータ44は、Y軸ボールネジ43の一端部に連結されている。
【0028】
Y軸方向移動機構40では、Y軸モータ44がY軸ボールネジ43を回転させることにより、Y軸移動テーブル45が、Y軸ガイドレール42に沿って、Y軸方向に移動する。Y軸移動テーブル45には、ウェーハ保持機構30が載置されている。したがって、Y軸移動テーブル45のY軸方向への移動に伴って、チャックテーブル20を含むウェーハ保持機構30が、Y軸方向に移動する。
【0029】
本実施形態では、ウェーハ保持機構30は、チャックテーブル20の保持面22にウェーハ100を保持させるための-Y方向側のウェーハ保持位置と、保持面22に保持されているウェーハ100が研削される+Y方向側の研削位置との間を、Y軸方向移動機構40によって、Y軸方向に沿って移動される。
【0030】
また、第2の装置ベース11の+Y方向側には、コラム15が立設されている。コラム15の前面には、ウェーハ100を研削する研削機構70、および、研削送り機構60が設けられている。
【0031】
研削送り機構60は、チャックテーブル20と研削機構70の研削砥石77とを、保持面22に垂直なZ軸方向(研削送り方向)に相対的に移動させる。本実施形態では、研削送り機構60は、チャックテーブル20に対して、研削砥石77をZ軸方向に移動させるように構成されている。
【0032】
研削送り機構60は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール61、このZ軸ガイドレール61上をスライドするZ軸移動テーブル63、Z軸ガイドレール61と平行なZ軸ボールネジ62、Z軸モータ64、Z軸ボールネジ62の回転量(回転回数および回転角度)を検知するためのZ軸エンコーダ65、および、Z軸移動テーブル63に取り付けられたホルダ66を備えている。ホルダ66は、研削機構70を支持している。
【0033】
Z軸移動テーブル63は、Z軸ガイドレール61にスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル63には、図示しないナット部が固定されている。このナット部には、Z軸ボールネジ62が螺合されている。Z軸モータ64は、Z軸ボールネジ62の一端部に連結されている。
【0034】
研削送り機構60では、Z軸モータ64がZ軸ボールネジ62を回転させることにより、Z軸移動テーブル63が、Z軸ガイドレール61に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル63に取り付けられたホルダ66、および、ホルダ66に支持された研削機構70も、Z軸移動テーブル63とともにZ軸方向に移動する。
【0035】
Z軸エンコーダ65は、Z軸モータ64がZ軸ボールネジ62を回転させることで回転され、Z軸ボールネジ62の回転量(回転回数および回転角度)を認識することができる。そして、本実施形態では、制御部7が、Z軸エンコーダ65が認識したZ軸ボールネジ62の回転量を認識して、その認識結果に基づいて、Z軸方向に移動される研削機構70の研削砥石77の高さ位置を検知することができる。
【0036】
研削機構70は、チャックテーブル20の保持面22に吸引保持された板状ワークとしてのウェーハ100を加工する加工機構の一例である。研削機構70は、ホルダ66に固定されたスピンドルハウジング71、スピンドルハウジング71に回転可能に保持されたスピンドル72、スピンドル72を回転駆動するスピンドルモータ73、スピンドル72の下端に取り付けられたホイールマウント74、および、ホイールマウント74に支持された研削ホイール75を備えている。
【0037】
スピンドルハウジング71は、Z軸方向に延びるようにホルダ66に保持されている。スピンドル72は、チャックテーブル20の保持面22と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング71に回転可能に支持されている。
【0038】
スピンドルモータ73は、スピンドル72の上端側に連結されている。このスピンドルモータ73により、スピンドル72は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。
【0039】
ホイールマウント74は、円板状に形成されており、スピンドル72の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント74は、研削ホイール75を支持している。
【0040】
研削ホイール75は、外径がホイールマウント74の外径と略同径を有するように形成されている。研削ホイール75は、金属材料から形成された円環状のホイール基台76を含む。ホイール基台76の下面には、全周にわたって、環状に配列された複数の研削砥石77が固定されている。研削砥石77は、その中心を軸に、スピンドル72とともにスピンドルモータ73によって回転され、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100の裏面102を研削する。
【0041】
また、第2の装置ベース11における開口部13の側部には、厚み測定器67が配設されている。厚み測定器67は、保持面ハイトゲージ68および上面ハイトゲージ69を有している。保持面ハイトゲージ68は、チャックテーブル20の保持面22と同一面である枠体23の枠体面24の高さを測定することによって、保持面22の高さを測定する。上面ハイトゲージ69は、保持面22に保持されたウェーハ100の上面の高さを測定する。厚み測定器67では、保持面ハイトゲージ68の測定値と上面ハイトゲージ69の測定値との差を算出することにより、ウェーハ100の厚さを測定する。
【0042】
研削後のウェーハ100は、搬送装置の一例である搬出機構172によって搬出される。搬出機構172は、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100を、枚葉式のスピンナ洗浄機構156のスピンナテーブル157に搬送する。
【0043】
スピンナ洗浄機構156は、ウェーハ100を洗浄するスピンナ洗浄ユニットである。スピンナ洗浄機構156は、ウェーハ100を保持するスピンナテーブル157、および、スピンナテーブル157に向けて洗浄水および乾燥エアを噴射するノズル158を備えている。
【0044】
スピンナ洗浄機構156では、ウェーハ100を保持したスピンナテーブル157が回転するとともに、ウェーハ100に向けて洗浄水が噴射されて、ウェーハ100がスピンナ洗浄される。その後、ウェーハ100に乾燥エアが吹き付けられて、ウェーハ100が乾燥される。
【0045】
スピンナ洗浄機構156によって洗浄されたウェーハ100は、ロボット155により、第2のカセットステージ162上の第2のカセット163に搬入される。
【0046】
また、研削装置1は、その内部に、研削装置1の制御のための制御部7を有している。制御部7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部7は、各種の処理を実行し、研削装置1の各構成要素を統括制御する。
【0047】
たとえば、制御部7は、研削装置1の上述した各部材を制御して、ウェーハ100に対する研削処理を実行する。
【0048】
ここで、
図2を用いて、流体流通機構46について説明する。流体流通機構46は、チャックテーブル20の保持面22に対して、流体であるエア、水あるいはエアと水との混合流体を供給する、あるいは、保持面22に吸引力を付与するための機構である。
【0049】
流体流通機構46は、吸引溝403、吸引溝403に連通されている吸引流路470、および、吸引流路470に連通されている吸引配管471を備えている。
【0050】
吸引溝403は、ポーラス部材21の下面に接するように、チャックテーブル20における枠体23の凹部の底面に設けられている。吸引溝403は、チャックテーブル20の中心を中心として、同心円状に形成されている。
【0051】
吸引流路470は、吸引溝403の底面から下方に延びて、吸引配管471に接続されている。吸引配管471の一端側は、吸引流路470に連通されている。吸引配管471の他端側には、第1吸引源47が接続されている。この第1吸引源47は、たとえば、バキュームポンプまたはエジェクター機構等の真空発生装置を備え、チャックテーブル20のポーラス部材21に連通されて、その上面である保持面22に吸引力を与えるために用いられる。
【0052】
また、吸引配管471には、第1吸引源47から吸引流路470側に向かって順に、吸引開閉弁475および吸引流量調整部473が配設されている。吸引開閉弁475は、吸引配管471と第1吸引源47との連通状態を切り換える。吸引流量調整部473は、たとえば比例制御弁であり、吸引開閉弁475が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、第1吸引源47からポーラス部材21の保持面22に伝達される吸引力を調整するために用いられる。
【0053】
さらに、吸引配管471には、エア配管481が連通されている。エア配管481は、チャックテーブル20の保持面22とエア供給源48とを連通するための配管である。
【0054】
エア配管481の一端側は、吸引配管471を介して、吸引流路470に連通されている。エア配管481の他端側には、エア供給源48が接続されている。エア供給源48は、コンプレッサー等を備え、チャックテーブル20の保持面22にエアを供給するために用いられる。
【0055】
また、エア配管481には、エア供給源48から吸引流路470側に向かって順に、エア供給開閉弁485およびエア調整部483が配設されている。エア供給開閉弁485は、エア配管481とエア供給源48との連通状態を切り換える。エア調整部483は、たとえば比例制御弁であり、エア供給開閉弁485が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、エア供給源48から保持面22に送られるエアの流量を調整するために用いられる。
【0056】
また、エア配管481には、水配管491が連通されている。水配管491は、チャックテーブル20の保持面22と水供給源49とを連通するための配管である。
【0057】
水配管491の一端側は、エア配管481および吸引配管471を介して、吸引流路470に連通されている。水配管491の他端側には、水供給源49が接続されている。水供給源49は、ポンプ等を備え、チャックテーブル20の保持面22に水を供給するために用いられる。
【0058】
また、水配管491には、水供給源49から吸引流路470側に向かって順に、水供給開閉弁495および水調整部493が配設されている。水供給開閉弁495は、水配管491と水供給源49との連通状態を切り換える。水調整部493は、たとえば比例制御弁であり、水供給開閉弁495が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、水供給源49から保持面22に送られる水の流量を調整するために用いられる。
【0059】
なお、吸引流量調整部473、エア調整部483および水調整部493は、手動でオリフィス径を調整するニードルバルブあるいはゲートバルブでもよい。
【0060】
次に、搬出機構172の構成について説明する。搬出機構172は、搬送パッド80を用いてチャックテーブル20からウェーハ100を搬出するものである。具体的には、搬出機構172は、第1吸引源47に連通されたチャックテーブル20の保持面22に吸引保持されているウェーハ100の上面を搬送パッド80によって吸引保持し、第1吸引源47との連通が遮断された保持面22からウェーハ100を上昇させ、保持面22からウェーハ100を搬出させる。
【0061】
図2に示すように、搬出機構172は、円板状の搬送パッド80、搬送パッド80を上下自在に吊持するアーム81、Z軸方向に延びる回動柱部82、および、回動柱部82に接続されている移動機構50を備えている。アーム81における基端側の端部は、回動柱部82の上端に連結されている。移動機構50は、回動柱部82を、アーム81および搬送パッド80とともに移動させる。
【0062】
移動機構50は、搬送パッド80を昇降させる昇降機構の一例である。移動機構50は、第1の装置ベース10(
図1参照)に立設されたコラム51と、コラム51に設けられたボールネジ52と、ボールネジ52に対して平行に配設されたガイドレール53と、ボールネジ52を回転させるモータ54と、ボールネジ52の回転量(たとえば回転回数および回転角度)を検知するためのエンコーダ57と、ボールネジ52に螺合するナット55と、を備えている。ガイドレール53には、回動柱部82が、スライド可能な状態で設置されている。また、回動柱部82は、ナット55に連結されている。
【0063】
移動機構50では、モータ54により、ボールネジ52をZ軸方向に延びる回転軸521を軸として回転させることで、回動柱部82を、ガイドレール53に沿ってZ軸方向に昇降移動させる。そして、このように回動柱部82をZ軸方向に昇降移動させることで、回動柱部82に連結されたアーム81、および、アーム81に吊持されている搬送パッド80を昇降移動させる。なお、この際、エンコーダ57が、ボールネジ52の回転量(回転回数および回転角度)を認識し、認識結果に基づいて、Z軸方向に昇降移動される搬送パッド80の高さ位置を検知する。
【0064】
また、移動機構50は、アーム81を、回動柱部82を通るZ軸方向の回転軸821を軸にして旋回移動させることが可能なように構成されている。本実施形態では、アーム81は、図示しない旋回モータによって、回転軸821を軸にして、吊持している搬送パッド80とともに旋回移動することが可能である。
【0065】
このように、移動機構50では、アーム81の昇降移動および旋回移動を行うことで、搬送パッド80を移動させて、搬送パッド80の高さ位置および水平位置を調整することができる。
【0066】
アーム81の先端側の端部には、円板状の円板部材811が取り付けられている。円板部材811には、複数(たとえば3つ)の貫通孔812が、円周上に等間隔に貫通形成されている。そして、貫通孔812には、搬送パッド80に連結されたボルト84が挿入されている。
【0067】
ボルト84は、貫通孔812よりも僅かに小さな径を有する軸部841と、軸部841の上端に形成された頭部842とを備えている。
【0068】
軸部841は、貫通孔812を貫通しており、貫通孔812に遊嵌されている。軸部841の下端は、搬送パッド80の基台プレート90の上面に連結されている。頭部842は、貫通孔812よりも大径に形成されており、ボルト84の下降範囲を制限している。
【0069】
また、ボルト84は、軸部841の周囲に、衝撃吸収部材としてのスプリング843を有している。スプリング843の上端は円板部材811の下面に接触している一方、スプリング843の下端は、搬送パッド80の基台プレート90の上面に接触している。スプリング843は、円板部材811と搬送パッド80とを、互いに遠ざかる方向に付勢している。
【0070】
アーム81は、このような構成の円板部材811およびボルト84を介して、搬送パッド80に加えられる衝撃を吸収しながら、搬送パッド80を吊持することが可能となっている。
【0071】
搬送パッド80は、チャックテーブル20の載置面である保持面22に載置されているウェーハ100の上面である裏面102を吸引保持する。搬送パッド80は、
図2および
図3(a)に示すように、基台の一例としての円板状の基台プレート90と、基台プレート90の下面90aに配置された外周吸引部91と、を有している。
【0072】
外周吸引部91は、ウェーハ100の外周部を吸引保持するための部材である。本実施形態では、基台プレート90の下面90aにおける外周部付近に、下面90aの中心を中心とする円上に、等間隔に4つの外周吸引部91が配置されている。
【0073】
図3(a)に示すように、外周吸引部91は、基台プレート90に取り付けられている柱状部材911と、柱状部材911の先端に取り付けられている外周吸盤912とを備えている。
【0074】
図3(b)に示すように、柱状部材911は、基台プレート90の下面90aに、下面90aの径方向外側に傾いた状態で取り付けられている。すなわち、柱状部材911は、下面90aに垂直な垂直軸301から径方向外側に傾いている傾斜軸302に沿って延びるように、下面90aに取り付けられている。また、柱状部材911は、たとえば筒蛇腹などの弾性部材から構成されており、外力に応じて弾性的に向きを変えることが可能なように構成されている。
【0075】
また、搬出機構172は、
図2に示すように、外側吸引路93を有している。外側吸引路93の下端は、4つに分岐されて基台プレート90を貫通し、4つの外周吸引部91に接続されている。また、外側吸引路93の上端は、外側エアバルブ94を介して、第2吸引源95に接続されている。外側エアバルブ94は、外周吸引部91の外周吸盤912と第2吸引源95との連通状態を切り換える。
【0076】
したがって、搬出機構172では、外側エアバルブ94を開けることにより、第2吸引源95を外周吸引部91に連通させて外周吸盤912に吸引力を与えて、保持面22上のウェーハ100の外周部を吸引保持することが可能となる。これにより、搬送パッド80が、ウェーハ100を保持することができる。
【0077】
そして、移動機構50によって回動柱部82およびアーム81を旋回および昇降させることにより、ウェーハ100を保持している搬送パッド80を旋回および昇降させて、ウェーハ100をチャックテーブル20から搬出することが可能となる。
【0078】
次に、上記のような構成を有する搬出機構172によるウェーハ100の搬送方法について説明する。搬出機構172によるウェーハ100の搬送は、研削機構70(
図1参照)を用いたウェーハ100に対する研削加工の終了後に、制御部7によって実施される。
【0079】
このときには、
図2に示すように、流体流通機構46の吸引開閉弁475が開かれており、チャックテーブル20の保持面22が、第1吸引源47に連通されて、ウェーハ100を吸引保持している。また、外側エアバルブ94は閉じている。
【0080】
ウェーハ100に対する研削加工の終了後、制御部7は、
図1に示したY軸方向移動機構40を制御して、ウェーハ100を保持しているチャックテーブル20を、研削機構70の下方の研削位置から、搬出機構172に近い-Y方向側のウェーハ保持位置に移動させる。
【0081】
その後、研削機構70は、搬出機構172における移動機構50によって回動柱部82およびアーム81を旋回移動させることで、
図2に示すように、搬送パッド80を、チャックテーブル20の保持面22に吸引保持されているウェーハ100の上方に位置づける。この際、制御部7は、搬送パッド80における基台プレート90の中心とウェーハ100の上面である裏面102の中心との水平位置が略合致するように、搬送パッド80の位置を調整する。
【0082】
次に、制御部7は、移動機構50によって搬送パッド80を下降させ、第2吸引源95に連通させた外周吸引部91によってウェーハ100の外周部を吸引保持する。具体的には、制御部7は、移動機構50によって回動柱部82を下降させることにより、アーム81の先端に吊持されている搬送パッド80を下降させる。これにより、制御部7は、
図4に示すように、搬送パッド80の外周吸引部91の外周吸盤912を、保持面22に保持されたウェーハ100の裏面102の外周部に押し付けて接触させる。
【0083】
この際、外周吸盤912の下面がウェーハ100の裏面102にならって裏面102に平行になろうとするため、外周吸引部91の柱状部材911が、外周吸盤912から力を受けて、基台プレート90の下面90a(ウェーハ100の裏面102)の径方向外側に傾いている状態から、下面90aに略垂直な状態に、弾性的に変形する。
【0084】
なお、外周吸盤912の下面をウェーハ100の裏面102にならって平行にするために、さらにアーム81を下降させ、アーム81の上面とボルト84の頭部842の下面との間に隙間を形成し、スプリング843を押しつぶして、外周吸盤912をウェーハ100の裏面102に押し付ける力を強めてもよい。
【0085】
そして、制御部7は、この状態で外側エアバルブ94を開くことで、外周吸引部91を第2吸引源95に連通させて、外周吸引部91の外周吸盤912によってウェーハ100の裏面102の外周部を吸引保持する。さらに、制御部7は、流体流通機構46の吸引開閉弁475を閉じることにより、チャックテーブル20の保持面22と第1吸引源47との連通を遮断する。
【0086】
次に、制御部7は、移動機構50によって搬送パッド80を上昇させ、ウェーハ100の外周部を反り上がらせてウェーハ100を湾曲形状にして、チャックテーブル20からウェーハ100を搬出する。
【0087】
具体的には、制御部7は、移動機構50によって回動柱部82を上昇させることにより、アーム81および搬送パッド80を、所定の距離だけ上昇させる。これにより、基台プレート90が所定距離だけ上昇して、
図5に示すように、ウェーハ100の裏面102の外周部を保持している外周吸引部91が、所定の距離だけ上昇する。そして、基台プレート90の下面90a(ウェーハ100の裏面102)に略垂直な状態に変形していた外周吸引部91の柱状部材911の向きが、弾性力により、下面90a(裏面102)の径方向外側に傾いている状態に戻る。
これにより、柱状部材911の先端の外周吸盤912に吸引保持されているウェーハ100の外周部が反りあがり、保持面22から離隔される。したがって、ウェーハ100は、
図5に示すように、中央が下方に突出した中凸形状となる。
【0088】
このように、外周吸引部91は、第2吸引源95に連通されてウェーハ100の外周部を吸引し、ウェーハ100の外周部を反り上がらせて湾曲形状にして保持する。したがって、ウェーハ100では、外周吸引部91に吸引保持されている外周部のみが保持面22から離隔される。これにより、ウェーハ100の外周部から保持面22に大気が導入されて、保持面22(ポーラス部材21)の真空(吸引力)が破壊される。すなわち、保持面22を構成するポーラス部材21内の真空が破られる。
【0089】
なお、制御部7は、流体流通機構46の吸引開閉弁475を閉じるときに、エア供給開閉弁485または水供給開閉弁495を開けて保持面22の吸引力を破壊することにより、外周吸盤912をウェーハ100の裏面102に押し付け、即座にアーム81を上昇させ、ウェーハ100を、その中央が下方に突出した中凸形状にして、ウェーハ100を保持面22から離脱させる時間を短くしてもよい。
また、チャックテーブル20の保持面22は、ウェーハ100を吸引保持せず、ウェーハ100を載置するだけの載置面であってもよい。つまり、保持面22を第1吸引源47に連通させない構成でもよい。
【0090】
このように、制御部7は、移動機構50によって搬送パッド80を所定距離だけ上昇させることにより、ウェーハ100の中央を下方向に中凸形状にして、外周吸引部91によって吸引保持されているウェーハ100の外周部のみを保持面22から離隔させ、保持面22に大気を入れて、保持面22(ポーラス部材21)の真空を破壊する。これにより、保持面22からウェーハ100への吸引力が消失して、ウェーハ100を保持面22から容易に離脱させることが可能となる。
【0091】
次に、制御部7は、
図6に示すように、移動機構50によって搬送パッド80をさらに上昇させて、保持面22からウェーハ100を完全に離脱させて、保持面22からウェーハ100を搬出する。
【0092】
以上のように、本実施形態にかかる搬出機構172では、搬送パッド80の外周吸引部91が、弾性部材からなる柱状部材911を備えており、ウェーハ100の外周部を保持したまま、ウェーハ100の径方向外側を向くように弾性変形することが可能なように構成されている。これにより、外周吸引部91によって、ウェーハ100の外周部を反り上がらせて、この外周部のみを保持面22から離隔することができるので、ウェーハ100を中凸形状にして、ウェーハ100の外周部から保持面22に大気を入れて、保持面22の(ポーラス部材21)真空を破壊することができる。
【0093】
したがって、流体流通機構46によって保持面22から水や混合流体を噴出しなくとも、保持面22からウェーハ100を離隔することが可能となる。このため、保持面22からウェーハ100を素早く離脱させることができるので、搬出機構172による搬送時間を短縮することが可能である。また、ウェーハ100が濡れることを防止することもできる。
【0094】
また、ウェーハ100の外周部から保持面22に大気を入れて、保持面22(ポーラス部材21)の真空を破壊している。このため、ウェーハ100の外周部が保持面22から離隔しないことによりウェーハ100が吸盤のようになることによる保持面22の吸引力を、容易に破壊することができる。したがって、ウェーハ100がチャックテーブル20に対して吸盤のように吸い付いて、ウェーハ100がチャックテーブル20から離脱しにくくなることを、良好に抑制することもできる。
【0095】
なお、搬送パッド80は、
図7に示すように、外周吸引部91に加えて、中央吸引部92を有していてもよい。
【0096】
中央吸引部92は、基台プレート90における外周吸引部91よりも内側に配置されている。中央吸引部92は、ウェーハ100の中央部分を吸引保持するための部材である。本実施形態では、基台プレート90の下面90aの中心を中心とする円上に、等間隔に3つの中央吸引部92が配置されている。
【0097】
中央吸引部92は、基台プレート90に取り付けられている柱状部材である伸縮部921と、伸縮部921の先端に取り付けられている中央吸盤922を備えている。
【0098】
伸縮部921は、伸縮可能な蛇腹管状に形成されており、バネ性を有している。伸縮部921は、
図8に示すように、中央吸盤922および伸縮部921の重さと伸縮部921のバネ性とによって、下方に向かって伸びた状態となっている。したがって、中央吸引部92の中央吸盤922は、伸縮部921が伸びた状態で基台プレート90から吊り下げられており、外周吸引部91の外周吸盤912よりも低い位置に配置されている。
【0099】
また、伸縮部921は、比較的に強い吸引力が中央吸盤922に付与されたときに収縮するように構成されている。そして、伸縮部921が収縮したときには、中央吸盤922は、外周吸引部91の外周吸盤912と同じ高さに配置される。
【0100】
また、搬出機構172は、
図8に示すように、外側吸引路93に加えて、中央吸引路96を有している。中央吸引路96は、円板部材811の中央を貫通するように設けられた吸引路89を介して、基台プレート90内に配置されている。中央吸引路96の下端は、基台プレート90内で3つに分岐されて、3つの中央吸引部92に接続されている。また、中央吸引路96の上端は、中央エアバルブ97および流量調整弁99を介して、第3吸引源98に接続されている。中央エアバルブ97は、中央吸引部92の中央吸盤922と第3吸引源98との連通状態を切り換える。流量調整弁99は、たとえば比例制御弁であり、中央エアバルブ97が開いているときに、内部のオリフィス径を変更して、第3吸引源98から中央吸引部92の中央吸盤922に伝達される吸引力を調整するために用いられる。
【0101】
したがって、この構成の搬出機構172では、外側エアバルブ94を開けることにより、第2吸引源95を外周吸引部91に連通させて外周吸盤912に吸引力を与えて、保持面22上のウェーハ100の外周部を吸引保持することが可能となる。また、中央エアバルブ97を開けることにより、第3吸引源98を中央吸引部92に連通させて中央吸盤922に吸引力を与えて、保持面22上のウェーハ100の中央部分を吸引保持することができる。これにより、搬送パッド80が、ウェーハ100を保持することができる。
【0102】
この構成では、ウェーハ100をチャックテーブル20の保持面22から搬出する場合、制御部7は、上述したように、移動機構50を制御して、
図8に示すように、搬送パッド80を、チャックテーブル20の保持面22に吸引保持されているウェーハ100の上方に位置づける。
【0103】
次に、制御部7は、移動機構50によって回動柱部82を下降させることにより、アーム81の先端に吊持されている搬送パッド80を下降させる。これにより、制御部7は、
図9に示すように、搬送パッド80の外周吸引部91と中央吸引部92とを、ウェーハ100の裏面102に接触させる。すなわち、制御部7は、外周吸引部91の外周吸盤912を、保持面22に保持されたウェーハ100の裏面102の外周部に押し付けて接触させる。また、制御部7は、中央吸引部92の中央吸盤922を、ウェーハ100の裏面102の中央部分に押し付けて接触させる。
【0104】
この際、上述したように、外周吸引部91の柱状部材911が、外周吸盤912から力を受けて、基台プレート90の下面90aの径方向外側に傾いている状態から、下面90aに略垂直な状態に、弾性的に変形する。
【0105】
また、中央吸引部92の中央吸盤922がウェーハ100の裏面102の中央部分に押し付けられることにより、中央吸引部92の伸縮部921は、収縮した状態となる。
【0106】
そして、制御部7は、この状態で外側エアバルブ94を開くことで、外周吸引部91の外周吸盤912を第2吸引源95に連通させて、外周吸盤912によってウェーハ100の裏面102の外周部を吸引保持する。
【0107】
また、制御部7は、中央エアバルブ97を開いて中央吸引部92の中央吸盤922を第3吸引源98に連通させて、中央吸盤922によってウェーハ100の裏面102の中央部分を吸引保持する。この際、制御部7は、流量調整弁99を制御して、中央吸盤922に、比較的に弱い吸引力を付与する。
【0108】
さらに、制御部7は、流体流通機構46の吸引開閉弁475を閉じることにより、チャックテーブル20の保持面22と第1吸引源47との連通を遮断する。
【0109】
次に、制御部7は、移動機構50によって回動柱部82を上昇させることにより、アーム81および搬送パッド80を、所定の距離だけ上昇させる。これにより、基台プレート90が所定距離だけ上昇して、
図10に示すように、ウェーハ100の裏面102の外周部を保持している外周吸引部91が、所定の距離だけ上昇する。そして、基台プレート90の下面90aに略垂直な状態に変形していた外周吸引部91の柱状部材911の向きが、弾性力により、下面90aの径方向外側に傾いている状態に戻る。
これにより、柱状部材911の先端の外周吸盤912に吸引保持されているウェーハ100の外周部が反りあがり、保持面22から離隔される。
【0110】
一方、上述したように、中央吸引部92の中央吸盤922には、比較的に弱い吸引力が付与されている。このため、中央吸引部92の伸縮部921は、収縮することなく、基台プレート90の上昇に伴って、外周吸盤912および伸縮部921の重さと伸縮部921のバネ性とによって、下方に向かって伸びる。このため、ウェーハ100の裏面102の中央部分に接している中央吸盤922がウェーハ100を下方に押圧することとなるため、ウェーハ100の中央部分は、保持面22に接した状態のままとなる。したがって、ウェーハ100は、
図10に示すように、中央が下方に突出した中凸形状となる。
【0111】
したがって、ウェーハ100では、外周吸引部91に吸引保持されている外周部のみが保持面22から離隔され、ウェーハ100の外周部から保持面22に大気が導入されて、保持面22(ポーラス部材21)の真空が破壊される。これにより、保持面22からウェーハ100への吸引力が消失して、ウェーハ100を保持面22から容易に離脱させることが可能となる。
【0112】
次に、制御部7は、
図11に示すように、移動機構50によって搬送パッド80をさらに上昇させて、保持面22からウェーハ100を完全に離脱させて、保持面22からウェーハ100を搬出する。この際、制御部7は、流量調整弁99を制御して、中央吸盤922に比較的に強い吸引力を付与する。これにより、中央吸盤922を支持している伸縮部921が収縮して、ウェーハ100が平坦な状態となる。そして、制御部7は、この状態で、移動機構50によって搬送パッド80をさらに上昇させて、保持面22からウェーハ100を搬出する。
【0113】
このように、搬送パッド80が中央吸引部92を有している場合、
図10に示すように、中央吸引部92の中央吸盤922によってウェーハ100の中央部分が下方に押圧される。これにより、外周吸引部91によって、ウェーハ100の外周部を反らせて保持面22から離隔することが容易となる。その結果、ウェーハ100を保持している保持面22(ポーラス部材21)の真空を容易に破壊することが可能である。
【0114】
なお、この構成では、搬送パッド80の外周吸引部91と中央吸引部92とを、ウェーハ100の裏面102に接触させたとき(
図9参照)、および、外周吸引部91によってウェーハ100の外周部のみを保持面22から離隔させるとき(
図10参照)に、制御部7は、中央エアバルブ97を閉じたままにしてもよい。この場合、
図9および
図10に示す状態では、中央吸引部92の中央吸盤922によるウェーハ100の裏面102の中央部分の吸引保持は実施されない。
【0115】
さらに、この構成では、制御部7は、ウェーハ100の外周部を保持面22から離隔して、保持面22(ポーラス部材21)の真空を破壊した後、移動機構50によって搬送パッド80を上昇させてウェーハ100を保持面22から完全に離脱させるとき(
図11参照)にも、中央吸引部92の中央吸盤922によるウェーハ100の裏面102の中央部分の吸引を実施しなくてもよい。この場合、搬出機構172は、中央が下方に突出した中凸形状のウェーハ100を、搬送パッド80によって保持して搬送することとなる。
【0116】
また、本実施形態では、外周吸引部91によってウェーハ100の外周部のみを保持面22から離隔させるとき(
図5および
図10参照)、あるいは、移動機構50によって搬送パッド80を上昇させてウェーハ100を保持面22から完全に離脱させるとき(
図6および
図11参照)、流体流通機構46のエア供給開閉弁485および/または水供給開閉弁495を開けて、保持面22をエア供給源48および/または水供給源49に連通させることにより、保持面22からエア、水あるいはエアと水との混合流体を噴出してもよい。これにより、保持面22からのウェーハ100の離脱を容易に実施することができる。
【0117】
また、搬送パッド80に中央吸引部92が形成されている場合、中央吸引部92の中央吸盤922を支持している伸縮部921は、バネ性を有していなくてもよい。この場合、ウェーハ100の裏面102の外周部を保持している外周吸引部91が所定の距離だけ上昇したとき、伸縮部921は、中央吸盤922および伸縮部921の重さによって下方に向かって伸びて、ウェーハ100を中凸形状とする。したがって、この構成でも、ウェーハ100の外周部のみが保持面22から離隔され、外周部から保持面22に大気が導入されて、保持面22(ポーラス部材21)の真空が破壊される。
【0118】
また、本実施形態では、研削装置1は、チャックテーブル20の保持面22に連通される第1吸引源47、搬送パッド80の外周吸引部91に連通される第2吸引源95、および、中央吸引部92に連通される第3吸引源98を備えている。これに関し、第1吸引源47、第2吸引源95および第3吸引源98は、それぞれ別の吸引源であってもよいし、1つあるいは2つの共通の吸引源であってもよい。
【符号の説明】
【0119】
1:研削装置、7:制御部、10:第1の装置ベース、11:第2の装置ベース、
12:蛇腹カバー、13:開口部、15:コラム、20:チャックテーブル、
21:ポーラス部材、22:保持面、23:枠体、24:枠体面、25:無端ベルト、
26:駆動部、27:支持柱、28:支持部材、29:チャックテーブルベース、
30:ウェーハ保持機構、39:カバー板、40:Y軸方向移動機構、41:保持台、
42:Y軸ガイドレール、43:Y軸ボールネジ、44:Y軸モータ、
45:Y軸移動テーブル、46:流体流通機構、47:第1吸引源、48:エア供給源、
49:水供給源、50:移動機構、51:コラム、52:ボールネジ、
53:ガイドレール、54:モータ、55:ナット、57:エンコーダ、
60:研削送り機構、61:Z軸ガイドレール、62:Z軸ボールネジ、
63:Z軸移動テーブル、64:Z軸モータ、65:Z軸エンコーダ、66:ホルダ、
67:厚み測定器、68:保持面ハイトゲージ、69:上面ハイトゲージ、
70:研削機構、71:スピンドルハウジング、72:スピンドル、
73:スピンドルモータ、74:ホイールマウント、75:研削ホイール、
76:ホイール基台、77:研削砥石、80:搬送パッド、81:アーム、
82:回動柱部、84:ボルト、89:吸引路、90:基台プレート、90a:下面、
91:外周吸引部、92:中央吸引部、93:外側吸引路、94:外側エアバルブ、
95:第2吸引源、96:中央吸引路、97:中央エアバルブ、98:第3吸引源、
99:流量調整弁、100:ウェーハ、101:表面、102:裏面、
152:仮置き機構、153:位置合わせ部材、154:仮置きテーブル、
155:ロボット、156:スピンナ洗浄機構、157:スピンナテーブル、
158:ノズル、160:第1のカセットステージ、161:第1のカセット、
162:第2のカセットステージ、163:第2のカセット、170:搬入機構、
172:搬出機構、403:吸引溝、470:吸引流路、
471:吸引配管、473:吸引流量調整部、475:吸引開閉弁、
481:エア配管、483:エア調整部、485:エア供給開閉弁、
491:水配管、493:水調整部、495:水供給開閉弁、
521:回転軸、811:円板部材、812:貫通孔、821:回転軸、841:軸部、
842:頭部、843:スプリング、911:柱状部材、912:外周吸盤、
921:伸縮部、922:中央吸盤