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特開2024-140408重合体及びその製造方法と、共重合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140408
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】重合体及びその製造方法と、共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/34 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08G64/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051539
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】青木 豊
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 恵里子
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
(72)【発明者】
【氏名】依馬 正
(72)【発明者】
【氏名】前田 千尋
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AD01
4J029HC07
4J029JA061
4J029JB242
4J029JB272
4J029JB302
4J029JC281
4J029JF221
4J029KD02
4J029KD06
4J029KE09
(57)【要約】
【課題】副生成物の生成量を抑えながら重合性官能基が導入されたポリカーボネート樹脂及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される構成単位(a1)と、下記式(2)で表される構成単位(a2)とを含む、重合体。
[化1]
式(2)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構成単位(a1)と、下記式(2)で表される構成単位(a2)とを含む、重合体。
【化1】
【化2】
式(2)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【請求項2】
数平均分子量が1000~800000である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)の合計を100mol%としたとき、前記構成単位(a2)の割合が0.1~20mol%である、請求項1に記載の重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体由来の構成単位(b1)と、(メタ)アクリル酸メチルに由来する構成単位(b2)とを含む、共重合体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体の製造方法であって、
下記式(3)で表される化合物及び二酸化炭素の存在下に、下記式(5)で表される化合物と下記式(6)で表される化合物とを共重合させる工程を含む、重合体の製造方法。
【化3】
式(3)中、R2a~R2dは各々独立に、下記式(4)で表される基であり、Xはアニオン性軸配位子である。
【化4】
式(4)中、R3a~R3cは各々独立に、炭素数1~8のアルキル基であり、Yはアニオンであり、cは2~10の整数である。
【化5】
【化6】
式(6)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体と、(メタ)アクリル酸メチルとを共重合させる工程とを含む、共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体及びその製造方法と、共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラル社会の実現のため、樹脂材料の製造においても、例えばバイオマス原料やリサイクル材の活用を推進する取り組みが行われている。
しかし、バイオマス原料の活用においては、その安定供給能などに課題を有する。一方、リサイクル材の活用においては、バージン材と比較し性能の振れが大きいことなどが課題にある。
そこで、直接、二酸化炭素を原料として樹脂材料中に取り込む研究開発が近年進められている。
【0003】
二酸化炭素を樹脂材料の構成要素に取り込める樹脂種類は限られている。すなわち二酸化炭素を一部に有する必要がある。そのような樹脂として例えばポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂が挙げられる。
しかし、これらの樹脂のみでは、展開できる用途が限られてしまうという課題がある。
【0004】
特許文献1には、二酸化炭素からポリカーボネート樹脂を製造する方法が開示されている。特許文献1に記載の製造方法では、ポリカーボネート樹脂の一部に重合性官能基を導入することで、ポリカーボネート樹脂に他の樹脂種の性能を付与することができ、展開用途先の拡充を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2015-533920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、重合性官能基の導入において、重合性官能基の比率が多くなると不純物である副生成物の生成量も増えるという課題がある。
本発明は、副生成物の生成量を抑えながら重合性官能基が導入されたポリカーボネート樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 下記式(1)で表される構成単位(a1)と、下記式(2)で表される構成単位(a2)とを含む、重合体。
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
式(2)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【0010】
[2] 数平均分子量が1000~800000である、前記[1]の重合体。
[3] 前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)の合計を100mol%としたとき、前記構成単位(a2)の割合が0.1~20mol%である、前記[1]又は[2]の重合体。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかの重合体由来の構成単位(b1)と、(メタ)アクリル酸メチルに由来する構成単位(b2)とを含む、共重合体。
[5] 前記[1]~[3]のいずれかの重合体の製造方法であって、
下記式(3)で表される化合物及び二酸化炭素の存在下に、下記式(5)で表される化合物と下記式(6)で表される化合物とを共重合させる工程を含む、重合体の製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
式(3)中、R2a~R2dは各々独立に、下記式(4)で表される基であり、Xはアニオン性軸配位子である。
【0013】
【化4】
【0014】
式(4)中、R3a~R3cは各々独立に、炭素数1~8のアルキル基であり、Yはアニオンであり、cは2~10の整数である。
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
式(6)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
【0018】
[6] 前記[1]~[3]のいずれかの重合体と、(メタ)アクリル酸メチルとを共重合させる工程とを含む、共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、副生成物の生成量を抑えながら重合性官能基が導入されたポリカーボネート樹脂及びその製造方法することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
なお、以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「構成単位」とは、単量体に由来する構成単位、すなわち単量体が重合することによって形成された構成単位、又は重合体を処理することによって構成単位の一部が別の構造に変換された構成単位を意味する。
「数平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリルの総称である。同様に、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0021】
[重合体]
本発明に係る重合体(以下、「重合体(X)」ともいう。)は、以下に示す構成単位(a1)と、構成単位(a2)とを含む、ポリカーボネート樹脂である。
重合体(X)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、構成単位(a1)及び構成単位(a2)に加えて、これら以外の構成単位(a3)をさらに含んでいてもよい。
【0022】
<構成単位(a1)>
構成単位(a1)は、下記式(1)で表される構成単位である。具体的には、後述する化合物(5)及び二酸化炭素に由来する構成単位である。
重合体(X)が構成単位(a1)を含むことで、重合体(X)の成形加工性が良好となる。
【0023】
【化7】
【0024】
構成単位(a1)と構成単位(a2)の合計を100mol%としたとき、構成単位(a1)の割合は80~99.9mol%であることが好ましい。構成単位(a1)の割合が上記下限値以上であれば、重合体(X)の成形加工性が高まる傾向にある。構成単位(a1)の割合が上記上限値以下であれば、重合体(X)中の重合性官能基の反応性が高まる傾向にある。
構成単位(a1)の割合の下限値は、85mol%であることがより好ましく、90mol%であることがさらに好ましい。構成単位(a1)の割合の上限値は、99.8mol%であることがより好ましく、99.7mol%であることがさらに好ましい。
ここで、「重合体(X)中の重合性官能基」とは、カーボネート基(-O-(C=O)-O-)のことである。
【0025】
<構成単位(a2)>
構成単位(a2)は、下記式(2)で表される構成単位である。具体的には、後述する化合物(6)及び二酸化炭素に由来する構成単位である。
重合体(X)が構成単位(a2)を含むことで、重合体(X)と(メタ)アクリル酸メチルとの反応性が向上し、ポリカーボネート樹脂に様々な機能性能を付与することができる。
重合体(X)は、1種類の構成単位(a2)のみを含んでいてもよいし、2種類の構成単位(a2)を含んでいてもよい。
【0026】
【化8】
【0027】
式(2)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
1価の炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。前記アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。前記アルキル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基などが挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
としては、水素原子又はアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0028】
構成単位(a1)と構成単位(a2)の合計を100mol%としたとき、構成単位(a2)の割合は0.1~20mol%であることが好ましい。構成単位(a2)の割合が上記下限値以上であれば、重合体(X)中の重合性官能基の反応性が高まる傾向にある。構成単位(a2)の割合が上記上限値以下であれば、重合体(X)の成形加工性が高まる傾向にある。
構成単位(a2)の割合の下限値は、0.2mol%であることがより好ましく、0.3mol%であることがさらに好ましい。構成単位(a2)の割合の上限値は、15mol%であることがより好ましく、10mol%であることがさらに好ましい。
【0029】
<構成単位(a3)>
構成単位(a3)は、構成単位(a1)及び構成単位(a2)以外の構成単位である。具体的には、以下に示す他の単量体(m1)に由来する構成単位である。
他の単量体(m1)は、後述の化合物(5)及び化合物(6)以外の単量体である。他の単量体(m1)としては、後述の化合物(5)及び化合物(6)と共重合可能であれば特に限定されないが、例えば1,2-エポキシシクロペンタン、1-メチル-1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、イソホロンオキシド、7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボン酸tert-ブチル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。
重合体(X)は、1種類の構成単位(a3)のみを含んでいてもよいし、2種類以上の構成単位(a3)を含んでいてもよい。
【0030】
構成単位(a3)の割合は、重合体(X)を構成する全ての構成単位の合計、すなわち、構成単位(a1)、構成単位(a2)及び構成単位(a3)の合計を100mol%としたとき、10mol%以下であることが好ましい。構成単位(a3)の割合が上記上限値以下であれば、重合体(X)の製造時の副生成物の生成量をより低減できる。
構成単位(a3)の割合の上限値は、5mol%であることがより好ましく、1mol%であることがさらに好ましい。構成単位(a3)の割合の下限値は、0mol%であることが好ましい。
【0031】
<分子量>
重合体(X)の数平均分子量は、1000~800000であることが好ましい。重合体(X)の数平均分子量が上記下限値以上であれば、重合体(X)の機械物性が高まる傾向にある。重合体(X)の数平均分子量が上記上限値以下であれば、重合体(X)の成形加工性が高まる傾向にある。
重合体(X)の数平均分子量の下限値は、5000であることがより好ましく、10000であることがさらに好ましく、20000であることが特に好ましい。重合体(X)の数平均分子量の上限値は、700000であることがより好ましく、600000であることがさらに好ましく、500000であることが特に好ましい。
【0032】
<製造方法>
本発明に係る重合体の製造方法は、以下に示す化合物(3)及び二酸化炭素の存在下に、以下に示す化合物(5)と化合物(6)とを共重合させる工程(以下、「第一の共重合工程」ともいう。)を含む。
第一の共重合工程においては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、化合物(5)と、化合物(6)と、上述した他の単量体(m1)とを共重合してもよい。
【0033】
(化合物(3))
化合物(3)は、下記式(3)で表される化合物である。化合物(3)はアルミニウムポルフィリン錯体触媒である。
化合物(3)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0034】
【化9】
【0035】
式(3)中、R2a~R2dは各々独立に、下記式(4)で表される基であり、Xはアニオン性軸配位子である。
式(3)中のR2a~R2dは、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0036】
式(3)中のXにおけるアニオン性軸配位子としては、F、Cl、Br、I等のハロゲン化物イオン;ヒドロキシド(OH);アジド(N );アセテート、トリフルオロアセテート、トリクロロアセテート、プロピオナート等の脂肪族カルボキシラート由来のアニオン;ベンゾエート、p-メチルベンゾエート、3,5-ジクロロベンゾエート、4-ジメチルアミノベンゾエート、ペンタフルオロベンゾエート等の芳香族カルボキシラート由来のアニオン;メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等のアルコキシド由来のアニオン;フェノキシド、p-ニトロフェノキシド、2,4-ジニトロフェノキシド、2,4-ジクロロフェノキシド、ペンタフルオロフェノキシド、1-ナフトキシド等のアリールオキシド由来のアニオンなどが挙げられる。これらのアニオンの中でも、ハロゲン化物イオンが好ましく、Br及びClがより好ましく、Brがさらに好ましい。
【0037】
【化10】
【0038】
式(4)中、R3a~R3cは各々独立に、炭素数1~8のアルキル基であり、Yはアニオンであり、cは2~10の整数である。
式(4)中のR3a~R3cにおけるアルキル基の炭素数は2以上が好ましく、3以上がより好ましい。また、前記炭素数は、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。中でも、前記炭素数は4であることが特に好ましい。前記アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基などが挙げられる。これらの中でも、n-ブチル基が好ましい。
式(4)中のR3a~R3cは、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0039】
式(4)中のYにおけるアニオンとしては、式(3)中のXで表されるアニオン性軸配位子として用いられるアニオンと同様のものが挙げられる。式(4)中のYと、式(3)中のXは、同じ種類のアニオンであることが好ましい。
式(4)中のcは2~8の整数であり、3~6の整数が好ましく、3~5の整数がより好ましく、4であることが特に好ましい。
【0040】
(化合物(5))
化合物(5)は、下記式(5)で表される化合物、すなわち1,2-エポキシシクロヘキサンである。
【0041】
【化11】
【0042】
(化合物(6))
化合物(6)は、下記式(6)で表される化合物、すなわち3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートである。
【0043】
【化12】
【0044】
式(6)中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい1価の炭化水素基である。
式(6)中のRと、式(2)中のRは、同じ基である。
【0045】
(重合条件)
重合体(X)は、化合物(3)及び二酸化炭素の存在下、化合物(5)と、化合物(6)と、必要に応じて他の単量体(m1)とを共重合することで得られる。すなわち、重合体(X)は、共重合体であるともいえる。本明細書において、重合体(X)を「共重合体(X)」又は「第一の共重合体(X)」ともいう。
化合物(6)は1種単独で用いられてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
他の単量体(m1)は1種単独で用いられてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0046】
化合物(5)及び化合物(6)の合計を100mol%としたとき、化合物(5)の割合は、80~99.9mol%であることが好ましく、85~99.8mol%であることがより好ましく、90~99.7mol%であることがさらに好ましい。
化合物(5)及び化合物(6)の合計を100mol%としたとき、化合物(6)の割合は、0.1~20mol%であることが好ましく、0.2~15mol%であることがより好ましく、0.3~10mol%であることがさらに好ましい。
化合物(5)、化合物(6)及び他の単量体(m1)の総モル数に対して、他の単量体(m1)の割合は、0~10mol%であることが好ましく、0~5mol%であることがより好ましく、0~1mol%であることがさらに好ましい。
【0047】
化合物(5)、化合物(6)及び他の単量体(m1)(以下、これらを総称して「単量体成分(M)ともいう。」)の総モル数に対する化合物(3)のモル数の比率(化合物(3)/単量体成分(M))(以下、「モル比」ともいう。)は、1/1000以下であることが好ましく、1/10000以下であることがより好ましい。前記モル比が上記上限値以下であれば、ポリカーボネート樹脂である重合体(X)及び後述の共重合体(Y)の着色を抑えることができる。
前記モル比は、1/1000000以上であることが好ましく、5/1000000以上であることがより好ましい。モル比が上記上限値以下であれば、反応時間を短縮できる。
【0048】
二酸化炭素の圧力は、0.1MPa以上であることが好ましい。二酸化炭素の圧力が上記下限値以上であれば、ポリカーボネート樹脂である重合体(X)中に二酸化炭素を安定的に導入できる。
【0049】
化合物(5)と、化合物(6)と、必要に応じて他の単量体(m1)との共重合の方法としては特に限定されないが、例えば公知の界面重合法、溶液重合法、塊状重合法などが挙げられる。
重合温度は、30~150℃であることが好ましく、50~130℃であることがより好ましい。
重合時間は、0.1~72時間であることが好ましく、6~48時間であることがより好ましい。
【0050】
なお、本発明に係る重合体(X)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、重合体(X)及び後述する共重合体(Y)以外の他の樹脂と混合されて、樹脂組成物(以下、「第一の樹脂組成物」ともいう。)として用いられてもよい。
第一の樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃化剤等)、各種フィラー(ガラス、マイカ、ゴム粒子等)などをさらに含んでもよい。
【0051】
[共重合体]
本発明に係る共重合体(以下、「共重合体(Y)」又は「第二の共重合体(Y)」ともいう。)は、上述した本発明の重合体(X)由来の構成単位(b1)と、(メタ)アクリル酸メチルに由来する構成単位(b2)とを含む、ポリカーボネート樹脂である。
共重合体(Y)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、構成単位(b1)及び構成単位(b2)に加えて、これら以外の構成単位(b3)をさらに含んでいてもよい。
【0052】
<構成単位(b1)>
構成単位(b1)は、重合体(X)に由来する構成単位である。
共重合体(Y)が構成単位(b1)を含むことで、共重合体(Y)の成形加工性が良好となる。
共重合体(Y)は、1種類の構成単位(b1)のみを含んでいてもよいし、2種類以上の構成単位(b1)を含んでいてもよい。
【0053】
構成単位(b1)の割合は、共重合体(Y)を構成する全ての構成単位の合計、すなわち、構成単位(b1)、構成単位(b2)及び構成単位(b3)の合計を100質量%としたとき、80~99.9質量%以下であることが好ましい。構成単位(b1)の割合が上記下限値以上であれば、重合体(X)と(メタ)アクリル酸メチルとの反応性が良好となる。構成単位(b1)の割合が上記上限値以下であれば、共重合体(Y)の流動特性が良好となる。
構成単位(b1)の割合の下限値は、85質量%であることがより好ましく、90質量%であることがさらに好ましい。構成単位(b1)の割合の上限値は、99.8質量%であることがより好ましい。
【0054】
<構成単位(b2)>
構成単位(b2)は、(メタ)アクリル酸メチルに由来する構成単位である。
共重合体(Y)が構成単位(b2)を含むことで、共重合体(Y)に剛性を付与することができる。
共重合体(Y)は、1種類の構成単位(b2)のみを含んでいてもよいし、2種類の構成単位(b2)を含んでいてもよい。
【0055】
構成単位(b2)の割合は、共重合体(Y)を構成する全ての構成単位の合計、すなわち、構成単位(b1)、構成単位(b2)及び構成単位(b3)の合計を100質量%としたとき、0.1~20質量%以下であることが好ましい。構成単位(b2)の割合が上記下限値以上であれば、共重合体(Y)の流動特性が良好となる。構成単位(b2)の割合が上記上限値以下であれば、重合体(X)と(メタ)アクリル酸メチルとの反応性が良好となる。
構成単位(b2)の割合の下限値は、0.2質量%であることがより好ましい。構成単位(b2)の割合の上限値は、15質量%であることがより好ましく、10質量%であることがさらに好ましい。
【0056】
<構成単位(b3)>
構成単位(b3)は、構成単位(b1)及び構成単位(b2)以外の構成単位である。具体的には、以下に示す他の単量体(m2)に由来する構成単位である。
他の単量体(m2)は、重合体(X)及び(メタ)アクリル酸メチル以外の単量体である。他の単量体(m2)としては、重合体(X)及び(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能であれば特に限定されないが、例えばエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のメチルメタクリレート以外のメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、フェニルアクリレート、1-ナフチルアクリレート、2-ナフチルアクリレート、p-ジフェニルアクリレート、o-ジフェニルアクリレート、o-クロロフェニルアクリレート、4-メトキシフェニルアクリレート、4-クロロフェニルアクリレート、2、4、6-トリクロロフェニルアクリレート、4-tertブチルフェニルアクリレート等のメチルアクリレート以外のアクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸系ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-メチルマレイミド等のマレイミド系単量体などが挙げられる。
また、他の単量体(m2)は、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,3-ブチレンジメタクリレート等の架橋剤であってもよい。
共重合体(Y)は、1種類の構成単位(b3)のみを含んでいてもよいし、2種類以上の構成単位(b3)を含んでいてもよい。
【0057】
構成単位(b3)の割合は、共重合体(Y)を構成する全ての構成単位の合計、すなわち、構成単位(b1)、構成単位(b2)及び構成単位(b3)の合計を100質量%としたとき、5質量%以下であることが好ましい。構成単位(b3)の割合が上記上限値以下であれば、共重合体(Y)の製造時の副生成物の生成量をより低減できる。
構成単位(b3)の割合の上限値は、3質量%であることがより好ましく、1質量%であることがさらに好ましい。構成単位(b3)の割合の下限値は、0質量%であることが好ましい。
【0058】
<分子量>
共重合体(Y)の数平均分子量は、2000~1000000であることが好ましい。共重合体(Y)の数平均分子量が上記下限値以上であれば、共重合体(Y)の機械物性が高まる傾向にある。共重合体(Y)の数平均分子量が上記上限値以下であれば、共重合体(Y)の成形加工性が高まる傾向にある。
共重合体(Y)の数平均分子量の下限値は、6000であることがより好ましく、12000であることがさらに好ましく、22000であることが特に好ましい。共重合体(Y)の数平均分子量の上限値は、800000であることがより好ましく、700000であることがさらに好ましく、600000であることが特に好ましい。
【0059】
<製造方法>
本発明に係る共重合体の製造方法は、上述した本発明の重合体(X)と、(メタ)アクリル酸メチルとを共重合させる工程(以下、「第二の共重合工程」ともいう。)とを含む。
第二の共重合工程においては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、重合体(X)と、(メタ)アクリル酸メチルと、上述した他の単量体(m2)とを共重合してもよい。
なお、共重合体の製造方法は、第二の共重合工程の前に、上述した重合体の製造方法により重合体(X)を得る工程を含んでもよい。この場合、共重合体の製造方法は、上述した重合体の製造方法により重合体(X)を得る工程と、得られた重合体(X)と、(メタ)アクリル酸メチルとを共重合させる工程とを含む。
【0060】
共重合体(Y)は、重合体(X)と、(メタ)アクリル酸メチルと、必要に応じて他の単量体(m2)とを共重合することで得られる。
重合体(X)は1種単独で用いられてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
(メタ)アクリル酸メチルは1種単独で用いられてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
他の単量体(m2)は1種単独で用いられてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0061】
重合体(X)、(メタ)アクリル酸メチル及び他の単量体(m2)の総質量に対して、重合体(X)の割合は、80~99.9質量%であることが好ましく、85~99.8質量%であることがより好ましく、90~99.8質量%であることがさらに好ましい。
重合体(X)、(メタ)アクリル酸メチル及び他の単量体(m2)の総質量に対して、(メタ)アクリル酸メチルの割合は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~15質量%であることがより好ましく、0.2~10質量%であることがさらに好ましい。
重合体(X)、(メタ)アクリル酸メチル及び他の単量体(m2)の総質量に対して、他の単量体(m2)の割合は、0~5質量%であることが好ましく、0~3質量%であることがより好ましく、0~1質量%であることがさらに好ましい。
【0062】
重合体(X)と、(メタ)アクリル酸メチルと、必要に応じて他の単量体(m2)との共重合の方法としては特に限定されないが、例えば公知の懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法などが挙げられる。
重合温度は、30~150℃であることが好ましく、30~120℃であることがより好ましい。
重合時間は、0.1~24時間であることが好ましく、1~16時間であることがより好ましい。
【0063】
本発明に係る共重合体(Y)は、第二の共重合工程の後に成形されたものであってもよい。
成形方法としては、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の公知の方法を用いることができる。
【0064】
なお、本発明に係る共重合体(Y)は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、重合体(X)及び共重合体(Y)以外の他の樹脂と混合されて、樹脂組成物(以下、「第二の樹脂組成物」ともいう。)として用いられてもよい。
第二の樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃化剤等)、各種フィラー(ガラス、マイカ、ゴム粒子等)などをさらに含んでもよい。
【実施例0065】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0066】
[分析方法]
H-NMRは、重水素化クロロホルム媒質で測定され、クロロホルムピークを基準にして解析された。構成単位(a2)の存在とその割合は、構成単位(a2)に残留するメチル(メタ)アクリレート由来の不飽和結合をNMR分析により確認して分析した。
【0067】
[実施例1]
アルミニウムポルフィリン錯体触媒として、前記式(3)中、R2a~R2dが前記式(4)で表される基であり、XがBrであり、前記式(4)中、R3a~R3cがn-ブチル基であり、YがBrであり、cが4である化合物(3-1)を用いた。
30mL金属製オートクレーブ(予め150℃で2時間加熱したもの)中に、アルミニウムポルフィリン錯体触媒(0.2μmol)を加え、ガラス製漏斗をのせたガラス製の反応管を入れ、真空下放冷した。グローブボックス内で当該反応管に1,2-エポキシシクロヘキサン(19mmol)と3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(1mmol)を入れたのち、オートクレーブに二酸化炭素(2.0MPa)を充填し、80℃に加熱した。24時間後に加熱を停止して放冷し、粘液性の溶液を得た。得られた粘液性の溶液の一部を採取し、これに、NMR内部標準物質としてメシチレン(0.25mmol)を加え、反応混合物のH-NMRによる分析を行い、変換率を算出した。
得られた粘液性の溶液にクロロホルム10mLを追加的に投入して溶液の粘度を下げた後に、メタノール300mLに加えて白色固体を沈殿させた。次いで、濾過により白色固体を回収し、回収した白色固体を真空減圧して溶媒を除去し、重合体(X1)を得た。
得られた重合体(X1)についてH-NMRによる分析を行った結果、重合体(X1)の総質量に対する不純物(副生成物)であるシクロへキシルカーボネート(低分子化合物に相当)の生成割合は1質量%以下であることが確認された。
また、H-NMR分析結果により、重合体(X1)及び不純物は構成単位(a1)及び構成単位(a2)を含むものであることが確認された。重合体(X1)における、構成単位(a2)の割合を表1に示す。
また、GPCによる分析を行い、重合体(X1)の数平均分子量(Mn)を求めた。結果を表1に示す。
【0068】
[実施例2~4]
1,2-エポキシシクロヘキサンと3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートの仕込みの割合を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして重合体(X2)~(X4)を製造した。
得られた重合体(X2)~(X4)について、それぞれH-NMRによる分析を行った結果、重合体(X2)~(X4)の各重合体の総質量に対する不純物(副生成物)の生成割合は、それぞれ1質量%以下であることが確認された。
また、H-NMR分析結果により、重合体(X2)~(X4)及び不純物は、いずれも構成単位(a1)及び構成単位(a2)を含むものであることが確認された。重合体(X2)~(X4)における、構成単位(a2)の割合を表1に示す。
また、GPCによる分析を行い、重合体(X2)~(X4)の数平均分子量(Mn)を求めた。結果を表1に示す。
【0069】
[実施例5~7]
3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートの代わりに3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートを用い、かつ、1,2-エポキシシクロヘキサンとの仕込みの割合を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして重合体(X5)~(X7)を製造した。
得られた重合体(X5)~(X7)について、それぞれH-NMRによる分析を行った結果、重合体(X5)~(X7)の各重合体の総質量に対する不純物(副生成物)の生成割合は、それぞれ1質量%以下であることが確認された。
また、H-NMR分析結果により、重合体((X5)~(X7)及び不純物は、いずれも構成単位(a1)及び構成単位(a2)を含むものであることが確認された。重合体(X5)~(X7)における、構成単位(a2)の割合を表1に示す。
また、GPCによる分析を行い、重合体(X5)~(X7)の数平均分子量(Mn)を求めた。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1中、「構成単位(a2)の割合」は、重合体(X)を構成する構成単位(a1)と構成単位(a2)の合計を100mol%としたときの構成単位(a2)の割合(mol%)である。
実施例1~7で得られた重合体(X1)~(X7)は、不純物である副生成物の生成量を抑えながら重合性官能基が導入されたポリカーボネート樹脂であることが示された。
また、重合体(X1)~(X7)についてGPCによる分析を行ったところ、それぞれ二峰性のピークが確認された。この結果から、重合体(X1)~(X7)はそれぞれ、2種類の重合体の混合物であることが示された。
【0072】
[実施例8]
実施例4で得られた重合体(X4)を400倍等量(グラム等量)のメチルメタクリレートに溶解させ、重合開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名「パーオクタO」)をメチルメタクリレートに対し7000質量ppm添加し、チッソ雰囲気下80℃で5時間反応させ、共重合体(Y1)を得た。
得られた共重合体(Y1)は、重水素化クロロホルムやテトラヒドロフランに不溶であり、重合体(X4)中の重合性官能基部位とメチルメタクリレートとが共重合及び架橋反応を起こしたと推測される。
共重合体(Y1)は、副生成物の生成量を抑えながら重合性官能基が導入されたポリカーボネート樹脂であることが示された。