(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140458
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】分岐部構造、及び分岐部構造に備えた仕切部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02G3/04 062
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051596
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩明
(72)【発明者】
【氏名】中川 大助
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 辰紀
(72)【発明者】
【氏名】東田 智久
(72)【発明者】
【氏名】鶴巻 直人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 文男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 文喜
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DD01
5G357DD13
5G357DE08
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】分岐部あるいは分岐部の近傍における、枝線に沿った方向に直交する直交断面において、複数の枝線を所定位置に配置できる分岐部構造、及び分岐部構造に備えた仕切部材を提供すること。
【解決手段】複数の電線を束ねたワイヤーハーネスWHにおける、分岐部4から枝線3が分岐する分岐部構造1において、所定方向Wに隣り合う枝線3同士を仕切る仕切壁部11を有する仕切部材10を分岐部4に配置し、分岐部4において複数の枝線3を仕切部材10と共に囲繞する外装部材5を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を束ねたワイヤーハーネスにおいて分岐部から枝線が分岐する分岐部構造であって、
所定方向に隣り合う枝線同士を仕切る仕切壁部を有する仕切部材が前記分岐部あるいは前記分岐部の近傍に配置され、
前記枝線同士に前記仕切部材が配置された配置箇所を囲繞する外装部材が設けられた
分岐部構造。
【請求項2】
前記仕切部材は、可撓性を有する可撓性部材で構成された
請求項1に記載の分岐部構造。
【請求項3】
前記仕切壁部は、前記所定方向において、前記枝線の径に応じた間隔を隔てて少なくとも2つ設けられるとともに、
前記仕切壁部に対して前記間隔を隔てた両外側に配置された側壁部と、
前記仕切壁部と前記側壁部及び前記仕切壁部同士を連結する連結部とが設けられ、
前記仕切壁部と前記側壁部と前記連結部及び前記仕切壁部同士と前記連結部とで前記枝線を配置する配置空間が形成された
請求項1に記載の分岐部構造。
【請求項4】
前記配置空間に配置された前記枝線を、前記枝線に沿った方向に直交する直交断面において前記所定方向に交差する交差方向に案内する案内部が前記仕切部材に設けられた
請求項3に記載の分岐部構造。
【請求項5】
前記枝線に沿った方向に直交する直交断面において前記所定方向に交差する交差方向に併設された前記仕切部材同士を接続する接続部が設けられた
請求項1に記載の分岐部構造。
【請求項6】
前記接続部は、前記仕切壁部の先端に設けられた先端側接続部を備えた
請求項5に記載の分岐部構造。
【請求項7】
前記仕切部材に、前記枝線に沿って延出された延出片が設けられた
請求項1に記載の分岐部構造。
【請求項8】
前記仕切部材に、外装部材が連結された
請求項1に記載の分岐部構造。
【請求項9】
複数の電線を束ねたワイヤーハーネスにおいて複数の枝線が分岐する分岐部あるいは前記分岐部の近傍に配置され、
所定方向に隣り合う枝線同士を仕切る仕切壁部が設けられるとともに、
前記枝線同士に配置された配置箇所が外装部材によって囲繞された
仕切部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ワイヤーハーネスにおいて複数の電線を束ねた枝線が分岐する分岐部構造、及び分岐部構造に備えた仕切部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車両等に配索されるワイヤーハーネスは、分岐部において複数の枝線が分岐し、枝線の先端にコネクタを設けて、該コネクタを電気機器等に設けられたコネクタ接続部に接続する。
【0003】
上述のワイヤーハーネスは、例えば特許文献1に示すように、作業台に立設する治具に電線を布線し、複数の枝線が分岐部で分岐する所望の構成で形成することができる。
このとき、複数の枝線は、先端に設けたコネクタをコネクタ接続部に接続できる長さに形成するとともに、分岐部の断面(以下において「分岐部断面」とする)における所定位置に夫々を配置することが望ましい。
【0004】
しかしながら、例えばテープによってワイヤーハーネスの外側にテープの巻き付けを施すと、分岐部断面において隣り合う枝線同士の位置が入れ替わるなどして所定位置と異なる位置に各枝線が配置されることがあった。
【0005】
このように、分岐部断面において所定位置と異なる位置に枝線が配置されると、先端に設けたコネクタをコネクタ接続部に接続するために配索する枝線の経路が代わったり、枝線に捻れが生じたりして、コネクタ接続部へのコネクタの接続が困難になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、分岐部あるいは分岐部の近傍における、枝線に沿った方向に直交する直交断面において、複数の枝線を所定位置に配置できる分岐部構造、及び分岐部構造に備えた仕切部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスにおいて分岐部から枝線が分岐する分岐部構造であって、所定方向に隣り合う枝線同士を仕切る仕切壁部を有する仕切部材が前記分岐部あるいは前記分岐部の近傍に配置され、前記枝線同士に前記仕切部材が配置された配置箇所を囲繞する外装部材が設けられたことを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスにおいて複数の枝線が分岐する分岐部あるいは前記分岐部の近傍に配置され、所定方向に隣り合う枝線同士を仕切る仕切壁部が設けられるとともに、前記枝線同士に配置された配置箇所が外装部材によって囲繞された仕切部材であることを特徴とする。
【0010】
この発明により、前記分岐部あるいは前記分岐部の近傍における、枝線に沿った方向に直交する直交断面において、複数の枝線を所定位置に配置できる。従って、枝線に備えたコネクタを電気機器のコネクタ接続部に対してスムーズかつ確実に接続することができる。
【0011】
詳述すると、前記分岐部あるいは前記分岐部の近傍の前記配置箇所において、前記仕切部材で複数の枝線を所定方向に仕切るとともに、複数の枝線と前記仕切部材とを前記外装部材でまとめて外装することで、分岐部あるいは分岐部の近傍における、枝線に沿った方向に直交する直交断面において、複数の枝線を所定位置に配置できる。
【0012】
従って、枝線にねじれが生じることや、前記分岐部から電気機器のコネクタ接続部までの枝線の経路が変わることがないため、枝線に備えたコネクタを電気機器のコネクタ接続部に対してスムーズかつ確実に接続することができる。
【0013】
この発明の態様として、前記仕切部材は、可撓性を有する可撓性部材で構成されてもよい。
この発明により、枝線と、該枝線を仕切る前記仕切部材とを前記外装部材でまとめて外装することで、可撓性を有する仕切部材が枝線に密着するように弾性変形するため、前記外装部材の内部において枝線が前記仕切部材との隙間を通じて不用意に移動することを防止できる。
従って、所定方向に隣り合う枝線同士を前記仕切部材により、確実に仕切ることができるとともに、前記配置箇所をコンパクトにすることができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記仕切壁部は、前記所定方向において、前記枝線の径に応じた間隔を隔てて少なくとも2つ設けられるとともに、前記仕切壁部に対して前記間隔を隔てた両外側に配置された側壁部と、前記仕切壁部と前記側壁部及び前記仕切壁部同士を連結する連結部とが設けられ、前記仕切壁部と前記側壁部と前記連結部及び前記仕切壁部同士と前記連結部とで前記枝線を配置する配置空間が形成されてもよい。
前記連結部は、前記仕切壁部および前記側壁部の前記所定方向に交差する交差方向の端部を連結してもよいし、前記仕切壁部および前記側壁部の前記交差方向の中央を連結してもよい。
【0015】
この発明により、枝線を前記配置空間に配置することで、前記所定方向に隣り合う枝線同士を確実に仕切ることができる。さらに、前記分岐部が、枝線が前記所定方向に加えて所定方向に交差する方向にも隣り合う多重分岐部であっても、隣り合う枝線同士が不用意に移動しないように規制することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記配置空間に配置された前記枝線を、前記枝線に沿った方向に直交する直交断面において前記所定方向に交差する交差方向に案内する案内部が前記仕切部材に設けられてもよい。
前記案内部は、前記仕切部材と一体に設けてもよいし、前記仕切部材と別部材で設けてもよい。
【0017】
この発明により、枝線と前記仕切部材とを前記外装部材でまとめて外装する際に前記所定方向に隣り合う枝線が、前記交差方向に相対移動しようとしても意図する方向に案内することができる。すなわち、案内部を設けることで枝線を所望の位置に案内できるとともに、配置空間における枝線の動きを抑制できる。
【0018】
従って、前記配置箇所において、まとめられた複数の枝線の断面位置を所望の位置とすることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記枝線に沿った方向に直交する直交断面において前記所定方向に交差する交差方向に併設された前記仕切部材同士を接続する接続部が設けられてもよい。
この発明により、前記交差方向に併設された前記仕切部材同士を一体化できるため、前記直交断面において外装部材の内部に備えた前記仕切部材同士の不用意な移動を防止することができる。
従って、前記配置箇所に前記所定方向および前記交差方向に沿って多重に配置された複数の枝線の断面位置を所望の位置とすることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記接続部は、前記仕切壁部の先端に設けられた先端側接続部を備えてもよい。
この発明により、前記先端側接続部を利用して前記仕切部材同士を前記所定方向に交差する方向に積層した状態となるように確実に接続することができる。
さらに、前記先端側接続部によって、前記仕切り壁の先端への突出量を確保できるため、隣り合う前記枝線同士を前記仕切壁部によって確実に仕切ることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記仕切部材に、前記枝線に沿って延出された延出片が設けられてもよい。
この発明により、前記仕切部材に仕切られた枝線に対して前記延出片をテープ巻き等により一体に固定することで、前記仕切部材の枝線に沿った移動を規制することができる。
これにより、前記配置箇所において、まとめられた複数の枝線の断面位置が変動することがなく、複数の枝線を所望の位置とすることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記仕切部材に、外装部材が連結されてもよい。
この発明により、前記仕切部材と前記外装部材とを一部品としてまとめることができるため、別部材である場合と比して扱い易くなり、複数の枝線を前記仕切部材と共に前記外装部材で容易に外装することができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、分岐部あるいは分岐部の近傍における、枝線に沿った方向に直交する直交断面において、複数の枝線を所定位置に配置できる分岐部構造、及び分岐部構造に備えた仕切部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】電気機器のコネクタ接続部に接続する様子を示す、ワイヤーハーネスに備えた本実施形態の分岐部構造の外観図
【
図2】分岐部に備えた仕切部材を先端側から示した外観図
【
図3】(a)は2つの仕切部材を上下に積層した状態を示す外観図、(b)は(a)の状態から分解して示す外観図
【
図5】(a)は外装バンドで枝線を外装する前の状態を示す変形例2の仕切部材の外観図、(b)変形例2の仕切部材の使用状態を示す外観図
【
図6】(a)はテープで外装する前の状態の変形例3の仕切部材を先端側から視た断面図、(b)は変形例3の仕切部材を備えた分岐部を先端側から視た断面図、(c)は案内部を備えない仕切部材を(b)に対応して示した断面図
【
図7】(a)は変形例4の仕切部材を
図3(a)に対応して示した外観図、(b)は変形例5の仕切部材を
図3(a)に対応して示した外観図
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。なお、以下では、発明の分岐部構造を、自動車に配索されるワイヤーハーネスの中でもインストルメントパネル内部に配索するインパネハーネスとも称されるワイヤーハーネスWHに適用した実施例について説明する。
【0026】
図中、矢印YはワイヤーハーネスWHの長手方向、矢印Wは分岐部4の断面(以下において「分岐部断面」とする)における幅方向、矢印Zは長手方向Yおよび幅方向Wに直交する方向、すなわち分岐部断面の上下方向を夫々示すものとする。さらに、図中、矢印Yaは先端側、矢印Ybは基端側、矢印Waは幅方向一方側、矢印Wbは幅方向他方側、矢印Zaは上方向、矢印Zbは下方向を夫々示すものとする。
なお、ワイヤーハーネスWHのYa側は、インストルメントパネルに組み込まれたオーディオやナビゲーション等の電気機器50に接続する側であり、Yb側は、バッテリ等の電源やECU等に接続する側である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のワイヤーハーネスWHの分岐部構造1は、複数本の電線9を束ねた1本の幹線2の分岐部4において、該幹線2から分岐する6本の枝線3を備えている。なお、枝線3は6本以外の複数本を備えてもよく、また、本実施形態において、複数の枝線3は便宜上同一径で形成されているものとする。
【0028】
さらに、分岐部構造1は、分岐部4において、幅方向Wに隣り合う枝線3同士を仕切るように配置された仕切部材10と、長手方向Yの少なくとも分岐部4に巻き付けられたテープ5を備えている。
【0029】
幹線2は、複数本の電線9に対して基端側Ybから先端側Yaの分岐部4までテープ5が巻き付けられている。分岐部4から先端側Yaに延出される複数の電線9は、分岐部4から分岐する枝線3ごとに束ねられ、図示省略するテープが巻き付けられている。
【0030】
このように構成された枝線3は、先端にコネクタ6が設けられ、電気機器50に設けられたコネクタ接続部51にコネクタ6を介して接続される。
詳しくは、分岐部4から分岐する各枝線3は、電気機器50の裏面に配設された複数のコネクタ接続部51における所定のコネクタ接続部51にコネクタ6を介して接続される。
【0031】
そして、各枝線3は、所定のコネクタ接続部51に接続可能な長さに設定されるとともに、所定のコネクタ接続部51に接続されるように分岐部4において分岐部断面における所定位置に配置されている。
【0032】
図2に示すように、本実施形態の分岐部4において、6本の枝線3は、電気機器50の裏面に配設された6つのコネクタ接続部51の配置形態に対応する配置となるように配置されている。さらに本実施形態の分岐部4において、6本の枝線3は、幅方向Wに3列に配置されるとともに上下各側に2段に配置されている。
これにより、本実施形態の分岐部4は、2段3列の多重分岐部としている。
【0033】
図2、
図3(a)(b)に示すように、仕切部材10は、分岐部4において2つが備えられ、形状、大きさ、および材料が互いに同一に形成されている。2つの仕切部材10は、何れか一方の仕切部材10に対して他方の仕切部材10を積載可能に併設されるため、以下の説明において、上下各側の仕切部材10を区別する場合には、上側に配置された仕切部材10uを上側仕切部材10uとし、下側に配置された仕切部材10sを下側仕切部材10sとする。
【0034】
分岐部4において、上側仕切部材10uは、2段3列に配置された6本の枝線3のうち上側3列の枝線3を幅方向Wに仕切るとともに、下側仕切部材10sは、下側3列の枝線3を幅方向Wに仕切る。そして、6本の枝線3は、これら2つの仕切部材10と共にテープ5が巻き付けられている。
仕切部材10は、仕切壁部11と側壁部12と連結部13と嵌合突部14を備え、全体をシリコンを用いた成形により全体が可撓性を有するように一体に形成されている。
【0035】
仕切壁部11は、幅方向Wに配置された3本の枝線3のうち、一方側Waで隣り合う2本の枝線3を仕切るようにこれら枝線3の間に設けられた一方側仕切壁部11aと、他方側Wbで隣り合う2本の枝線3を仕切るようにこれら枝線3の間に設けられた他方側仕切壁部11bとを備えている。
一方側仕切壁部11aと他方側仕切壁部11bとは、幅方向Wにおいて枝線3の径に応じた間隔を隔てて設けられている。
【0036】
側壁部12は、一方側仕切壁部11aに対して枝線3の径に応じた間隔を隔てて一方側Waに配置された一方側側壁部12aと、他方側仕切壁部11bに対して枝線3の径に応じた間隔を隔てて他方側Wbに配置された他方側側壁部12bとを備えている。
すなわち、仕切壁部11は、幅方向Wの一方側Waから他方側Wbに向かって、一方側側壁部12a、一方側仕切壁部11a、他方側仕切壁部11b、他方側側壁部12bがこの順に配設されている。
【0037】
連結部13は、一方側側壁部12aと一方側仕切壁部11a、一方側仕切壁部11aと他方側仕切壁部11bおよび他方側仕切壁部11bと他方側側壁部12bを、夫々の下端部において連結可能に幅方向Wに延びている。
換言すると、一方側側壁部12a、一方側仕切壁部11a、他方側仕切壁部11bおよび他方側側壁部12bは、連結部13から枝線3の径よりも上方へ立設されている。
【0038】
さらに、
図3(a)に示すように、一方側側壁部12a、一方側仕切壁部11a、他方側仕切壁部11bおよび他方側側壁部12bは、各上端部によって2つの仕切部材10を上下各側に積層配置した状態において、上側仕切部材10uの連結部13を支持可能に同じ高さで形成されている。
【0039】
また、一方側側壁部12aと一方側仕切壁部11aと連結部13、一方側仕切壁部11aと他方側仕切壁部11bと連結部13、および他方側仕切壁部11bと他方側側壁部12bと連結部13によって、これらの間には、枝線3を配置する配置空間16が形成されている。
【0040】
これにより、仕切部材10には、幅方向Wにおいて3つの配置空間16を備え、3つの配置空間16は、仕切部材10に対して上方Zaから枝線3を挿入可能に何れも上方Zaへ向けて開口する。
【0041】
なお、一方側側壁部12a、一方側仕切壁部11a、他方側仕切壁部11bおよび他方側側壁部12bは、下部、すなわち連結部13との付け根部分が、配置空間16に配置された枝線3の外面に対応して下方ほど幅広形状に形成され、配置空間16において枝線3を安定して配置可能に形成されている。
【0042】
図3(a)(b)に示すように、嵌合突部14は、2つの仕切部材10を積層した状態において、上側仕切部材10uに嵌合可能に一方側仕切壁部11aおよび他方側仕切壁部11bの各上端から上方に突出して形成されている。嵌合突部14は、一方側仕切壁部11aおよび他方側仕切壁部11bの各上端面において長手方向Yの両端部を除く部位に長手方向Yに沿って形成されている。
なお、嵌合突部14は、上側仕切部材10uにおいても一方側仕切壁部11aおよび他方側仕切壁部11bの各上端から上方に突出して形成されている。
【0043】
2つの仕切部材10を積層した状態において、上側仕切部材10uの連結部13における、平面視で下側仕切部材10sの嵌合突部14に対応する位置には、嵌合凹部15が設けられている。嵌合凹部15は、嵌合突部14と嵌合可能に連結部13の下面に対して上方Zaへ凹状に設けられている。
【0044】
続いて仕切部材10を用いたワイヤーハーネスWHの布線作業について説明する。
まず、作業者は、分岐部4において複数本の枝線3を、各枝線3が電気機器50に設けられた複数のコネクタ接続部51のうち所定のコネクタ接続部51に接続されるように仕切部材10における所定の配置空間16に配置する。このような枝線3の配置作業を上側仕切部材10uと下側仕切部材10sとの夫々について行う。
【0045】
さらに、作業者は、分岐部4において、これら2つの仕切部材10を上下に積層し、下側仕切部材10sの嵌合突部14と上側仕切部材10uの嵌合凹部15とを嵌合して互いに接続する。これにより、分岐部4を上述した多重分岐部とすることができるとともに、各枝線3が2つの仕切部材10によって幅方向Wおよび上下方向Zに仕切られた状態となる。
【0046】
さらに、作業者は、複数本の電線9に対して基端側Ybから先端側Yaの分岐部4までテープ5を巻き付けることで幹線2を構成する。その際、分岐部4においては2段3列に配置された6本の枝線3を仕切部材10と共にテープ5が巻き付けられた状態となる。
【0047】
上述した本実施形態の分岐部構造1は、
図1、
図2に示すように、幅方向Wに隣り合う枝線3同士を仕切るように分岐部4に配置される仕切部材10と、分岐部4において複数本の枝線3を仕切部材10と共に巻き付けるテープ5とが備えられたため、分岐部断面において各枝線3を所定位置に配置できる。
【0048】
従って、枝線3の先端を電気機器50に設けられたコネクタ接続部51に対してスムーズかつ確実にコネクタ6を介して接続することができる。
詳述すると、ワイヤーハーネスWHの布線作業において、分岐部4において、複数本の枝線3を、これら枝線3を幅方向Wに仕切る仕切部材10と共にテープ5を巻き付けることで、分岐部断面において枝線3が相互に入れ替わるなどして各枝線3の位置が意に反して変動することがなく、分岐部断面において各枝線3を所定位置に配置した状態に保つことができる。
【0049】
従って、分岐部4から分岐された枝線3にねじれが生じることや、分岐部4から電気機器50のコネクタ接続部51までの枝線3の経路が変わることがないため、枝線3の先端を電気機器50のコネクタ接続部51に対してコネクタ6を介してスムーズかつ確実に接続することができる。
【0050】
また、仕切部材10は、可撓性部材であるシリコンで形成されたため、分岐部4において複数本の枝線3を仕切部材10と共にテープ5を巻き付けることで、
図2に示すように、可撓性を有する仕切部材10が枝線3に密着するように変形するため、分岐部断面において枝線3が仕切部材10との隙間を通じて意に反して移動することを防止できる。
従って、分岐部4において仕切部材10によって複数本の枝線3を確実に仕切ることができるとともに、分岐部4をコンパクトにすることができる。
【0051】
また、仕切壁部11と側壁部12と連結部13および仕切壁部11同士と連結部13とで枝線3を配置する配置空間16が形成されたため、枝線3を配置空間16に配置することで幅方向Wに隣り合う枝線3同士を確実に仕切ることができる。
さらに、分岐部4が、枝線3が幅方向Wに加えて上下方向Zにも隣り合う多重分岐部であっても、隣り合う枝線3同士が不用意に移動しないように規制することができる。
【0052】
また上述したように、分岐部4において、上下方向Zに併設された仕切部材10同士を接続する嵌合突部14および嵌合凹部15が設けられたため、嵌合突部14と嵌合凹部15とを嵌合して接続することで、上下方向Zに併設された仕切部材10同士を一体化できる。
【0053】
従って、分岐部4が多重分岐部であっても、分岐部断面において仕切部材10同士の不用意な移動を防止でき、結果として、分岐部断面において、まとめられた各枝線3の断面位置を所望の位置とすることができる。
【0054】
また上述したように、嵌合突部14は、仕切壁部11の上端に設けられるとともに、嵌合凹部15は、嵌合突部14と嵌合可能に連結部13に設けられたため、仕切部材10同士を上下方向Zに併設した際に、下側仕切部材10sの嵌合突部14に対して上方Zaで上側仕切部材10uの嵌合凹部15が対向する。これにより、下側仕切部材10sの嵌合突部14と上側仕切部材10uの嵌合凹部15とを嵌合して両者を確実に接続することができる。
【0055】
さらに、仕切壁部11の先端に設けられた嵌合突部14によって、仕切壁部11の上方Zaへの突出量を確保できるため、分岐部4においてひとつの仕切部材10のみを備える場合においても隣り合う枝線3同士を仕切壁部11によって幅方向Wに確実に仕切ることができる。
【0056】
続いて、上述した実施形態の仕切部材10の変形例に係る仕切部材10a,10b,10c,10d,10eについて説明する。但し、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
(変形例1)
変形例1の仕切部材10aは、
図4に示すように、枝線3に沿って延出された延出片21を備えている。
なお、
図4は、分岐部における2つの仕切部材10aのうち、下側仕切部材10saおよび該下側仕切部材10saに仕切られた下側の枝線3のみを図示している。
【0058】
延出片21は、枝線3に沿うように他方側側壁部12bから基端側Ybへ直線状に延出されている。そして、延出片21を他方側Wbの枝線3bに対してテープ5aを巻き付ける等により一体に固定することで、仕切部材10aの長手方向Yに沿った移動を規制することができる。
【0059】
これにより、分岐部断面において、まとめられた各枝線3の断面位置を所望の位置とすることができる。
さらに変形例1のように、延出片21を仕切部材10aの基端側Ybの端部よりも基端側Ybへ延出することで、ワイヤーハーネスWHの布線作業等において、幹線2に対して基端側Ybから先端側Yaの分岐部4までテープ5を巻き付ける際に、他方側Wbの枝線3bに対して延出片21も含めてテープ5巻きが施されるため、他方側Wbの枝線3bに対する延出片21の一体性を高めることができる。
【0060】
もっとも本発明の延出片21は、変形例1の延出片21のように仕切部材10aに対して基端側Ybへ延出するに限らず、先端側Yaへ延出してもよく、また、他方側側壁部12bに限らず、一方側壁部12、側壁部12、或いは連結部13等において少なくとも1つを備えてもよい。
【0061】
(変形例2)
変形例2の仕切部材10bは、
図5(a)(b)に示すように、側壁部12、仕切壁部11および連結部13に相当する本体部25と、本体部25の一部に連結された外装バンド26を備えている。
なお、変形例2の仕切部材10bは、構成を明確にするために、嵌合突部14および嵌合凹部15の構成は省略しており、仕切壁部11は側壁部12と同じ高さで形成されている。
【0062】
外装バンド26は、本体部25を囲繞可能な長さを有する帯状に形成され、長手方向の基端部が本体部25の他方側側壁部12bの上端に一体に連結されている。さらに、外装バンド26の長手方向の先端側には、本体部25を囲繞した状態において、外装バンド26の長手方向の基端側と重合する側の面に粘着層27が形成されている。
【0063】
上述により、分岐部4において、複数本の枝線3を各配置空間16に配置した状態とし、
図5(b)に示すように、長手方向Yの先端側Yaから視て時計回りに外装バンド26を本体部25に巻き付けるようにして囲繞し、外装バンド26の長手方向において先端側を、該先端側が対向する基端側に重合させて該基端側に対して粘着層27を介して固着することで、複数本の枝線3を仕切部材10bの本体部25と共に外装バンド26で外装することができる。
【0064】
そして、変形例2の仕切部材10bは、外装バンド26が本体部25に一体に連結された構成とすることで、本体部25と外装バンド26とを一部品としてまとめることができるため、別部材である場合と比して扱い易くなり、仕切部材10bの本体部25に仕切られた複数の枝線3を外装バンド26によって容易に外装することができる。
【0065】
なお、本発明の仕切部材は、外装バンド26が本体部25に着脱可能に形成されてもよく、また、上下に積層した上側仕切部材10uと下側仕切部材10sのうち、何れか一方に外装バンド26を備え、外装バンド26によって、枝線3を仕切った状態の上側仕切部材10buと下側仕切部材10bdとをまとめて巻き付けて外装してもよい。
【0066】
(変形例3)
変形例3の仕切部材10cは、
図6(a)(b)に示すように、分岐部断面において枝線3を上方向Zaに案内する案内部31が設けられた構成としてもよい。変形例3の仕切部材10cは、幅方向Wに並ぶ3つの配置空間16を備えているが、夫々の配置空間16は、2本の枝線3を上下各側にまとめて配置可能に形成されている。
【0067】
さらに、
図6(a)に示すように、変形例3の仕切部材10cは、幅方向Wの中央の配置空間16の下部に案内部31が設けられている。案内部31によって、幅方向Wの中央の配置空間16は、両側の配置空間16に対して底上げされている。
【0068】
変形例3の仕切部材10cのように、案内部31を備えることで、枝線3と仕切部材10cとをテープ5を巻き付けた状態において、分岐部断面において、まとめられた複数の枝線3の断面位置を所望の位置とすることができる。
【0069】
詳しくは、分岐部4において、配置空間16に配置した枝線3に対して仕切部材10cごとテープ5を巻き付けると、可撓性を有する仕切部材10cが枝線3との隙間を埋めるように弾性変形する。
【0070】
その際、例えば、仕切部材10cに案内部31を備えていない場合には、
図6(c)に示すように、幅方向Wの中央の配置空間16に配置された枝線3が両側の配置空間16に配置された枝線3に対して意に反して下方へ位置ずれするなど、まとめられた複数の枝線3の断面位置が所望の位置から位置ずれするおそれがある。
【0071】
これに対して仕切部材10cに案内部31を備えることで、
図6(b)に示すように、幅方向Wの中央の枝線3が幅方向Wの両側の枝線3に対して下方Zbに相対移動しようとしても、幅方向Wの中央の枝線3を上方Za、すなわち意図する方向に案内することができる。
従って、分岐部4において、まとめられた複数の枝線3の断面位置を所望の位置とすることができる。
【0072】
なお、
図6(a)(b)(c)中の符号Cは、枝線3の断面中心を示すものとする。また、当例の案内部31は、仕切部材10cの幅方向Wに並ぶ3つの配置空間16のうち中央に限らず、少なくとも一つの配置空間16に備えてもよい。また、案内部31は、仕切部材10cの側壁部12、仕切壁部11および連結部13に対して別部材で併設されているが、仕切部材10cの一部として一体に形成されてもよい。さらにまた、当例の仕切部材10cはシリコン製であるが、シリコン以外の部材で形成されてもよい。
【0073】
(変形例4)
変形例4の仕切部材10dは、
図7(a)に示すように、側壁部12および仕切壁部11を夫々の上下方向Zの中間部において連結部13dによって幅方向Wに連結する2段3列の格子構造としている。
【0074】
このような仕切部材10dは、2段3列の配置空間16を設けることができるため、2つを積層させずとも単品で複数の枝線3を幅方向Wのみならず上下各側においても仕切ることができる。
【0075】
(変形例5)
変形例5の仕切部材10eは、変形例4の仕切部材10dに付随する構成として、
図7(b)に示すように、
図7(a)に示す仕切部材10dに対して一方側側壁部12aと他方側側壁部12bとを備えない形態としている。
【0076】
このような仕切部材10eは、一方側側壁部12aと他方側側壁部12bとを備えない形態であっても、テープ5を巻き付けた際に、幅方向Wの両側の枝線3に対してテープ5が直接接触するように外装されるため、分岐部断面において、まとめられた複数の枝線3の断面位置を所望の位置に保つことができる。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
交差方向に併設された前記仕切部材は、上側仕切部材10uおよび下側仕切部材10sに対応し、以下同様に
外装部材は、テープ5に対応し、
請求項6の接続部は、嵌合凹部15および嵌合突部14に対応し、
先端側接続部並びに請求項13および請求項14の接続部は、嵌合突部14に対応し、
仕切壁部の先端は、仕切壁部11の上端に対応し、
仕切部材に連結された外装部材は外装バンド26に対応し、
可撓性部材は、シリコンに対応し、
他の仕切部材は下側仕切部材10sに対応し、
所定方向は、幅方向Wに対応し、
所定方向に交差する交差方向は、上下方向Zに対応する。
【0078】
上述したようにこの発明は、上述した実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0079】
例えば、ワイヤーハーネスWHの布線作業等において、幹線2を構成する複数本の電線9に対してテープ5を巻き付ける際に、基端側Ybから先端側Yaの分岐部4まで巻き付けたテープ5は、さらに分岐部4を越えて先端側Yaまで、すなわち幹線2の途中部まで巻き付けてもよい。
【0080】
但し、幹線2を構成する複数本の電線9に巻き付けるテープ5は、上述した実施形態のように、分岐部4までに留めておくことで、分岐部4の位置が目視により把握し易くなるため、分岐部4からコネクタ接続部51までの距離の寸法管理が容易となる。
【0081】
また、上述した実施形態において、仕切部材10は分岐部4に配置されたが、分岐部4に限らず、分岐部4の近傍の配置箇所に配置されてもよい。すなわち、本発明の配置箇所は、分岐部4またはその近傍に設定することができる。
【0082】
さらに、本発明の仕切部材は、上述した実施形態のようにシリコンに限らず、例えば、ゴムや軟質樹脂などの他の可撓性部材で形成されてもよい。
本発明の外装部材は、テープ5、すなわち粘着テープに限らず、分岐部において複数の枝線を仕切部材と共に外装可能な構成であれば、例えば、タイバンド、コルゲート又は熱収縮性を有するチューブ或いはシートのうち少なくともひとつとしてもよい。
【0083】
また、本発明の枝線は、分岐部4から分岐するが、分岐元の複数本の電線9は、各枝線3を構成する複数本の電線9よりも太径であれば、上述した実施形態のように幹線2、すなわちメインハーネスに限らず、メインハーネスから分岐したサブハーネスであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
WH…ワイヤーハーネス
1…分岐部構造
3…枝線
4…分岐部
5…テープ
9…電線
10,10a,10b,10c,10d,10e…仕切部材
10s…下側仕切部材
11…仕切壁部
12…側壁部
13…連結部
14…嵌合突部
15…嵌合凹部
16…配置空間
21…延出片
26…外装バンド
31…案内部
W…幅方向
Z…上下方向