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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140487
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】研削装置及び研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20241003BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241003BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B7/04 A
B24B49/18
H01L21/304 631
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051643
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】佃 昌治
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034BB93
3C034CA22
3C034CA26
3C034CA30
3C034CB20
3C034DD10
3C034DD20
3C043BA03
3C043BA09
3C043CC04
3C043DD06
3C043EE03
5F057AA20
5F057DA11
5F057EB15
5F057FA13
5F057FA39
5F057GA28
5F057GB02
5F057GB12
(57)【要約】
【課題】研削砥石の摩耗等の状態を監視し、研削砥石を常に良好な状態に管理して、ウェハの裏面等を精度良く研削できる研削装置及び研削方法を提供する。
【解決手段】ウェハWを保持する保持面13aを有したチャックテーブルと、研削ホイール14と一体に、環状の軌跡を描いて回転している研削砥石15の砥石面15aに向けて検出信号を照射する照射部18と砥石面15で反射した検出信号を受ける受信部18bとを有するセンサ部18と、受信部18bが受けた検出信号に基づき、研削砥石15の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して研削砥石15の摩耗の適否の判定を行う制御ユニット19と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを研削する研削砥石が環状に配置されている研削ホイールと、前記研削ホイールを回転させる回転手段と、を備える研削装置であって、
回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射する照射部と、前記砥石面で反射した前記検出信号を受ける受信部と、を有するセンサ部と、
前記受信部が受けた前記検出信号に基づき、前記研削砥石の前記砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
ウェハを粗研削する粗研削ステージと前記ウェハを精研削する精研削ステージに、前記ウェハを研削する研削砥石が環状に配置されている研削ホイールと、前記研削ホイールを回転させる回転手段と、を各々備える研削装置であって、
回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射する照射部と、前記砥石面で反射した前記検出信号を受ける受信部と、を有するセンサ部と、
前記受信部が受けた前記検出信号に基づき、前記研削砥石の前記砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否を判定する判定手段と、
が前記粗研削ステージと前記精研削ステージに各々設けられていることを特徴とする研削装置。
【請求項3】
前記粗研削ステージの前記研削砥石の摩耗適否判定基準と前記精研削ステージの前記研削砥石の前記摩耗適否判定基準が異なる、ことを特徴とする請求項2に記載の研削装置。
【請求項4】
研削砥石が環状に配置された研削ホイールを回転させて、前記研削砥石でウェハの裏面を研削する研削方法であって、
回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射し、前記砥石面で反射した前記検出信号を受ける工程と、
前記研削砥石の前記砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出する工程と、
前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否を判定する工程と、
を有する、ことを特徴とする研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研削装置及び研削方法に関するものであり、特に、研削砥石の摩耗等の状態を監視可能な研削装置及び研削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を薄膜に形成するのに、ウェハの裏面を研削する裏面研削が行われている。このような裏面研削を行う研削装置として、ウェハを目標厚みより厚く粗研削した後、そのウェハを更に目標厚みに精研削するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の研削装置では、複数個の研削砥石(これを「セグメント」とも呼ぶ)を略等間隔で環状に配置した研削ホイールを使用し、研削ホイールと共に研削砥石を回転させ、その回転している研削砥石をウェハの裏面に当接させて、ウェハの研削が行われている。なお、研削ホイールに配設される研削砥石の数は種々あり、一般的には約40個程度である。
【0004】
ところで、複数個の研削砥石を環状に配置した研削ホイールを使用しての研削では、加工条件、装置の振れ精度、ウェハの状態等により、研削砥石間の摩耗量や目詰まりにバラツキが発生する場合がある。このバラツキが一定以上になると、研削ホイール1回転辺りの各セグメントのウェハへの当たり方にバラつきが発生し、研削条痕の異常、研削熱の上昇による面焼け、研削中の振動等、様々な異常を引き起こしてしまう。そこで、従来では、研削砥石の状態を監視する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
従来の研削砥石の状態の監視では、個々の研削砥石の高さ、すなわち研削砥石全体の摩耗量のみを監視し、摩耗量から寿命を迎えた研削砥石の交換のタイミングを見ていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6379232号公報
【特許文献2】特開2021-183359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の技術のように、研削砥石の状態の監視を、個々の研削砥石の高さ、すなわち摩耗量のみを監視して、寿命を迎えた研削砥石の交換タイミングを見ている方法では、加工条件、装置の振れ精度、ウェハの状態等により、研削砥石の摩耗量に局所的なバラつきが発生する場合がある。このバラつきが一定以上になると、研削ホイール1回転辺りの各セグメントのウェハへの当たり方にバラつきが発生し、研削条痕の異常、研削熱の上昇による面焼け、研削中の振動等、様々な異常を引き起こしてしまうことがある。また、このような研削の加工品質・精度の確認は、加工後の検査が主流となり、不良品を多量に排出する虞があった。
【0008】
また、ウェハの裏面を研削する裏面研削では、粗研削ステージと精研削ステージを隣り合わせに用意し、粗研削ステージでウェハを目標厚みより厚く研削した後、精研削ステージで粗研削後のウェハを目標厚みに精研削する方法も知られている。
【0009】
このように粗研削ステージと精研削ステージを隣り合わせに用意し、各ステージにおいて研削を同時に行う研削装置では、各ステージから受ける振動などの影響が大きいため、研削ムラが発生し易い。これは加工条件やワーク種類から影響を受ける場合もある。特に、粗研削は、研削精度が荒いので砥石の摩耗ムラが発生し易く、精研削では、研削精度が高いので摩耗ムラはシビアにコントロールしなければならない。そのため、粗研削ステージで使用している研削砥石の再ドレス実施基準若しくは交換基準と精研削ステージで使用している研削砥石の再ドレス実施基準若しくは交換基準を同じにしていると、粗研削ステージで使用している研削砥石を基準としている場合では、精研削ステージで使用している研削砥石の再ドレス実施若しくは交換時期が遅れ、反対に、精研削ステージで使用している研削砥石を基準とした場合では、粗研削ステージで使用している粗研削砥石の再ドレス実施若しくは交換時期が早まり、砥石寿命が無駄になる虞がある。
【0010】
そこで、研削砥石の摩耗等の状態を監視し、研削砥石を常に良好な状態に管理して、ウェハの裏面等を精度良く研削できる研削装置及び研削方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、ウェハを研削する研削砥石が環状に配置されている研削ホイールと、前記研削ホイールを回転させる回転手段と、を備える研削装置であって、回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射する照射部と、前記砥石面で反射した前記検出信号を受ける受信部と、を有するセンサ部と、前記受信部が受けた前記検出信号に基づき、前記研削砥石の前記砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否を判定する判定手段と、を備える研削装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、研削砥石の再ドレス等のメンテナンス実施の必要性若しくは交換の時期などの判定は、研削ホイールに環状に配置されている研削砥石における砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、その算出した摩耗量のバラつきを基準値と比較して研削砥石の摩耗の適否を判定するので、より正確な判定が可能になる。すなわち、例えば環状に配置されている研削砥石の砥石面が平均的に摩耗等をしている場合と、偏って摩耗等をしている場合等、研削砥石における砥石面の周方向における摩耗量のバラつき(位置的差異)を考慮して、常に良好な状態の判定を行うことができる。これにより、例えば全ての研削砥石における砥石面の摩耗等が平均的に摩耗等をしている場合には、そのまま作業を続行させることが可能であり、偏って摩耗等をしている場合には再ドレス若しくは早めの交換を行う等、その切削砥石のメンテナンス時期若しくは交換時期のタイミングを的確に判定できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ウェハを粗研削する粗研削ステージと前記ウェハを精研削する精研削ステージに、前記ウェハを研削する研削砥石が環状に配置されている研削ホイールと、前記研削ホイールを回転させる回転手段と、を各々備える研削装置であって、回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射する照射部と、前記砥石面で反射した前記検出信号を受ける受信部と、を有するセンサ部と、前記受信部が受けた前記検出信号に基づき、前記研削砥石の前記砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否を判定する判定手段と、が前記粗研削ステージと前記精研削ステージに各々設けられている研削装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、粗研削ステージで使用している研削砥石の再ドレス実施の必要性若しくは交換時期の基準判定と精研削ステージで使用している研削砥石の再ドレス実施の必要性若しくは交換時期の基準判定とを別々に判定することができる。これは、例えば粗研削ステージと精研削ステージを隣り合わせに用意して、各ステージで研削を同時に行う場合、各ステージでは、隣りから受ける振動などの影響で研削ムラが発生し易い。また、加工条件やワーク種類から影響を受ける場合もある。そのため、粗研削は研削精度が荒いので砥石の摩耗ムラが発生し易く、精研削では、研削精度が高いので摩耗ムラはシビアにコントロールしなければならないが、本構成のように各ステージにセンサ部と判定部を個々に設けておくと、各ステージにおける研削砥石の再ドレス実施の必要性若しくは交換時期の判定等をシビアにコントロールできる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成において、前記粗研削ステージの前記研削砥石の摩耗適否判定基準と前記精研削ステージの前記研削砥石の前記摩耗適否判定基準が異なる、研削装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、粗研削は研削精度が荒いので砥石の摩耗ムラが発生し易く、精研削では、研削精度が高いので摩耗ムラはシビアにコントロールしなければならない。そのため、粗研削ステージで使用している研削砥石の交換を促す摩耗適否判定基準と精研削ステージで使用している研削砥石の交換を促す摩耗適否判定基準を同じにしていると、粗研削ステージで使用している研削砥石を基準とした場合では、精研削ステージで使用している研削砥石の再ドレス実施若しくは交換時期が遅れ、反対に、精研削ステージで使用している研削砥石を基準とした場合では、粗研削ステージで使用している粗研削砥石の再ドレス実施若しくは交換時期が早まり、砥石寿命が無駄になる虞がある。しかし、粗研削ステージで使用している研削砥石の交換時期の摩耗適否判定基準と精研削ステージで使用している研削砥石の交換時期の摩耗適否判定基準を別々に設定し、交換時期を個々に判定できるようにしておくと、各ステージ毎における研削砥石のメンテナンス時期若しくは交換時期の判定を的確に行える。
【0017】
請求項4に記載の発明は、研削砥石が環状に配置された研削ホイールを回転させて、前記研削砥石でウェハの裏面を研削する研削方法であって、回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射し、前記砥石面で反射した前記検出信号を受ける工程と、前記研削砥石の前記砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出する工程と、前記摩耗量のバラつきを基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否を判定する工程と、を有する、研削方法を提供する。
【0018】
この方法によれば、研削砥石の再ドレス等のメンテナンス実施の必要性若しくは交換の時期などの判定は、研削ホイールに環状に配置されている研削砥石における砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを算出し、その算出した摩耗量のバラつきを基準値と比較して研削砥石の摩耗の適否を判定するので、より正確な判定が可能になる。すなわち、環状に配置されている研削砥石の砥石面が平均的に摩耗等をしている場合と、偏って摩耗等をしている場合等、研削砥石における砥石面の周方向における摩耗量のバラつき(位置的差異)を考慮して、常に良好な判定を行うことができる。これにより、全ての研削砥石における砥石面の摩耗等が平均的に摩耗等をしている場合にはそのまま作業を続行させることが可能であり、また偏って摩耗等をしている場合には再ドレス若しくは早めの交換を行う等、その切削砥石のメンテナンス時期若しくは交換時期のタイミングを的確に判定することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、研削砥石の再ドレス等のメンテナンス実施の必要性若しくは交換の時期の判定を、実際にウェハを研削する砥石面の周方向における摩耗量のバラつきを検出して行うので、より正確な判定が可能になる。また、研削ホイールに環状に配置されている研削砥石における砥石面の周方向における摩耗量のバラつき状態を検出するので、環状に配置された全ての研削砥石における砥石面が平均的に摩耗等をしている場合と、偏って摩耗等をしている場合等、研削砥石における砥石面の位置的差異も簡単に検出できる。これにより、研削砥石における砥石面の摩耗等が平均的に摩耗等をしている場合には、そのまま作業を続行させ、偏って摩耗等をしている場合には、再ドレス若しくは早めの交換を行うなど、その切削砥石のメンテナンス時期若しくは交換時期のタイミングを的確に判定することが可能になる。したがって、環状に配置された研削砥石を常に良好な状態に管理して、ウェハの裏面などを精度良く研削することができるので、品質向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る一実施例を示すものであり、(a)はアライメントステージと粗研削ステージと精研削ステージを有するインデックステーブルタイプの研削装置の概略要部構成配置図、(b)は研削砥石の摩耗の適否を判定する処理装置の一例を示すブロック構成図である。
図2図1の研削ステージに設けられた研削機構の一例を示し、(a)は研削機構の側面図、(b)はウェハを配置したチャックテーブルと研削ホイールとセンサ部との位置関係を示す概略構成配置図である。
図3】センサ部が研削砥石における砥石面の検査をしている状態を模式的に示す図である。
図4】粗研削機構において判定手段から得られるデータの一例を示す図であり、(a)は研削砥石の局所的な過摩耗に起因して砥石面の高さにバラつきが生じている一例を示す図、(b)は研削砥石の局所な摩耗不足(目詰まり)に起因して砥石面の高さにバラつきが生じている一例を示す図である。
図5】精研削機構において判定手段から得られるデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、研削砥石の摩耗等の状態を監視し、研削砥石を常に良好な状態に管理して、ウェハの裏面等を精度良く研削できる研削装置及び研削方法を提供するという目的を達成するために、ウェハを保持する保持面を有したチャックテーブルと、前記保持面に保持されている前記ウェハを研削する複数個の研削砥石が環状に配置されている研削ホイールと、前記研削ホイールを回転させる回転手段とを備える研削装置であって、前記研削ホイールと一体に、環状の軌跡を描いて回転している前記研削砥石の砥石面に向けて検出信号を照射する照射部と前記砥石面から反射して来る前記検出信号を受ける受信部とを有したセンサ部と、前記センサ部での前記検出信号に基づき、前記複数個の研削砥石の位置的差異を算出し、前記位置的差異を基準値と比較して前記研削砥石の摩耗の適否の判定を行う制御部と、を備える構成にしたことにより実現した。
【実施例0022】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0023】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0024】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0025】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の研削装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0026】
図1は本発明に係る研削装置10の一実施例を示すものであり、(a)は研削装置の概略要部構成配置図、(b)は研削砥石の摩耗の適否を判定する装置の一例を示すブロック構成図である。図1において、研削装置10は、インデックステーブル11を使用した場合の一例を示す。インデックステーブル11は、図示しないステージ搬送機構に設けたモータの駆動により回転する回転軸回りに、中心O1を支点にして回転する。
【0027】
インデックステーブル11上には、ウェハWを保持して回転するチャックテーブル13、を各々有する3つのステージが設けられている。3つのステージに各々設けられたチャックテーブル13は、中心O1を軸とした円状の仮想線T1上に、それぞれウェハWの略中心O2が配置されるようにして設けられている。
【0028】
インデックステーブル11は、ステージ搬送機構の移送手段としてのモータの駆動力により、非研削位置P1(アライメントステージ)-粗研削位置P2(粗研削ステージ)-精研削位置P3(精研削ステージ)を順に通って回転する。また、粗研削位置P2と精研削位置P3には、ウェハWの裏面を研削する研削砥石15を設けた研削ホイール14を備える研削機構16が各々設けられている。そして、研削加工前のウェハWは、アライメントステージとしての非研削位置P1でチャックテーブル13上に載せられ、その後、チャックテーブル13と共に粗研削ステージとしての粗研削位置P2、精研削ステージとして精研削位置P3、に順に送られて、各ステージで所定の加工が行われた後、再び非研削位置P1に戻って取り除かれ、その後、再び新しいウェハWと交換される手順で処理される。
【0029】
粗研削位置P2に設けられている粗研削機構16aは、ウェハWを目標厚みより厚く粗研削するものであり、精研削位置P3に設けられている精研削機構16bは、粗研削後のウェハWを目標厚みに精研削するものであるが、粗研削機構16aと精研削機構16bは、基本的には同じ構造である。したがって、以後の説明において、特に区別をする必要のない場合は、粗研削位置P2の粗研削機構16aと精研削位置P3の精研削機構16bは、単に研削機構16として説明し、対応する部材には同一の符号を付けて説明する。
【0030】
粗研削位置P2と精研削位置P3に各々配置されている研削機構16は、図2に示す。図2は、図1の研削ステージに設けられた研削機構の一例を示し、(a)は研削機構の側面図、(b)はウェハを配置したチャックテーブルと研削ホイールとセンサ部との位置関係を示す概略構成配置図である。図2において、研削機構16は、ウェハWを保持して回転するチャックテーブル13と、研削ホイール14と、研削ホイール14を回転させる回転手段であるスピンドル機構17を備えている。
【0031】
チャックテーブル13は、上面にウェハWを保持する保持面13aを有している。保持面13aは、図示しないが、アルミナ等の多孔質材料からなる吸着体が埋設されている。また、チャックテーブル13の内部には、埋設された吸着体の保持面13aとは反対側に延びる管路を備えており、管路は図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、保持面13aに載置されたウェハWが保持面13aに吸着保持される。また、圧縮空気源、又は給水源が起動すると、ウェハWと保持面13aとの吸着保持が解除される。
【0032】
研削ホイール14は、図2及び図3に示すように、円板状をした下面に、その外周に沿って複数個(本実施例では40個のセグメント)の研削砥石15を、略等間隔で環状に配置している。研削ホイール14は、図2に示すようにスピンドル機構17の回転軸17aの下端に取り付けられており、回転軸17aと一体に回転する。回転軸17aの回転駆動には、例えば誘導モータが用いられている。なお、チャックテーブル13及び研削ホイール14の回転方向は、図1図3中の矢印の向きに限定されず、反対向きであっても構わない。そして、複数個の研削砥石15と一体に研削ホイール14が回転すると、これら複数個の研削砥石15は、それぞれ環状の軌跡T2を描いて回転する。
【0033】
図2において、スピンドル機構17は、研削ホイール14を上下方向に昇降させる。スピンドル機構17は、公知の構成であり、例えば研削ホイール14の移動方向を案内する複数のリニアガイドと、研削ホイール14と回転軸17aを昇降させるボールネジスライダ機構と、研削ホイール14を回転させる回転手段等で構成されている。
【0034】
図2及び図3において、研削ホイール14の下方には、研削砥石15の摩耗及び目詰まり等の状態を検出するセンサ部18が、研削機構16側の定位置に取り付けられている。センサ部18は、公知の構成であり、研削ホイール14と共に環状の軌跡を描いて回転している研削砥石15の砥石面15aに向けてレーザー等の検出信号を照射する照射部18aと砥石面15aから反射して来る検出信号を受ける受信部18bとを有する非接触型のセンサである。センサ部18は、図1の(b)及び図2の(a)に示すように、制御ユニット19と接続されている。
【0035】
制御ユニット19は、例えばCPU、メモリ等により構成され、予め組み込まれたソフトウエアによる手順にしたがって研削装置10全体の動作を制御する制御部20と、センサ部18からの信号を受けて研削砥石15の交換の要否等を判定する判定手段21等を有している。
【0036】
次に、このように構成された研削装置10の動作を説明する。ウェハWは、非研削位置P1でチャックテーブル13の保持面13aに、裏面を上側にして載せられて固定される。その後、インデックステーブル11の回転動作により粗研削位置P2に送られる。粗研削位置P2では、粗研削機構16aの回転している研削ホイール14が下降し、粗研削機構16aの研削砥石15がウェハWの裏面上に押し付けられ、ウェハWの粗研削が行われる。ここでの研削加工は、ウェハWを目標厚みより厚く粗研削する。粗研削位置P2での粗研削が終了すると、研削ホイール14が上昇してウェハWの裏面から離れる。その後、インデックステーブル11が精研削位置P3に向かって回転され、粗研削が終了したウェハWが精研削位置P3に送られる。精研削位置P3では、精研削機構16bの研削ホイール14が下降して、精研削機構16bの研削砥石15により粗研削後のウェハWを目標厚みに精研削する。精研削位置P3での精研削が了すると、研削ホイール14が上昇してウェハWの裏面から離れる。その後、インデックステーブル11が非研削位置P1に向かって回転され、精研削が終了したウェハWが非研削位置P1に送られる。非研削位置P1では、精研削を終えたウェハWがチャックテーブル13から取り除かれ、研削前のウェハWと交換される。そして、再び非研削位置P1から粗研削位置に向かって送られ、同じ動作が繰り返される。
【0037】
一方、粗研削位置P2及び精研削位置P3では、研削ホイール14に配設されている各研削砥石15毎の砥石面15aの摩耗量等による高さのバラつき(砥石面振れ)の測定が行われる。研削砥石15における砥石面15aの測定は、研削砥石15が環状軌跡を描いて回転しているウェハWの研削途中のであってもよいし、あるいは研削が終了した後に、研削砥石15を研削ホイール14と共に回転させて測定をしてもよい。
【0038】
研削砥石15における砥石面15aの摩耗量の測定は、図3に示すように、センサ部18の上方で、研削ホイール14と一体に、環状の軌跡を描いて回転している全ての研削砥石15の砥石面15aに対して、センサ部18の照射部18aから研削砥石15の砥石面15aに向けてレーザー等の検出信号を照射し、研削砥石15の砥石面15aから反射して戻って来る検出信号を受信部18bで受ける(これが、「砥石面15aの状態を検出する工程」)。また、その信号をセンサ部18から判定手段21に研削砥石15の砥石面15a毎の高さ情報として送る。図4は、粗研削機構16aにおける判定手段21で得られたデータの一例である。
【0039】
図4に示すデータにおいて、番号1~40は研削ホイール14に配列されている40個の研削砥石15毎に付された番号である。また、符号U0で示す環状円上のデータは、研削砥石15が交換されて研削が開始された直後、すなわち初期状態での研削砥石15における砥石面15a毎の高さデータであり、符号U25で示す略環状円上のデータは、初期状態からウェハWを25枚研削した後に得られた研削砥石15における砥石面15a毎の高さデータ、符号U50で示す略環状円上のデータは、初期状態からウェハWを50枚研削した時に得られた研削砥石15における砥石面15a毎の高さデータである。各データでは、初期状態における砥石面15aの高さを摩耗量0とし、中心に進むほど砥石面15aが摩耗して高さが低くなって行き、各研削砥石15の凸凹は高さのバラつき、すなわち研削ホイール14が回転したときに、研削ホイール14の各位置に配置されている砥石面15aの位置毎の高さのバラつき、すなわち研削砥石15における砥石面15aの周方向における摩耗量のバラつき状態(位置的差異)を表している。
【0040】
さらに詳述すると、図4の(a)に示すデータは、研削砥石の局所的な過摩耗に起因して砥石面の高さにバラつきが生じている一例を示す図であり、(b)は研削砥石の局所な摩耗不足(目詰まり)に起因して砥石面の高さにバラつきが生じている一例を示す図である。研削砥石15がウェハWの表面に平均的に当接して局所的な過摩耗が生じていない場合は、番号1~40の各研削砥石15の砥石面15aの高さは常に均一に摩耗し、開始直後と、25枚のウェハWを研削加工した後と、50枚のウェハWを研削加工した後も、それぞれ平均的に摩耗をし、符号U0、符号U25、符号50で示すデータは略真円をしたデータが得られる。
【0041】
しかし、図4に示すデータのように、局所的な過摩耗があると、複数枚のウェハWの加工が進むにしたがって砥石面15aの高さに、周方向において位置的差異(特に、番号30~40付近の研削砥石15が過摩耗)が現れる。また、符号U25で示すように凸凹な円を有したデータが得られたことを示している。また、図4の(b)に示すデータのように、局所的な目詰まりがあると、複数枚のウェハWの加工が進むにしたがって砥石面15aの高さに、周方向において位置的差異(特に、番号5~11付近の研削砥石15が摩耗不足)が現れる。
【0042】
そして、判定手段21では、予め設定された周方向における摩耗量等のバラつきに関する摩耗適否判定基準等の基準値と比較し(これが「位置的差異の状態を算出する工程」)、摩耗している研削砥石15の状態が、未だ所望の加工をするのに適する許容範囲内にあるか否か、すなわち研削砥石15の摩耗の適否の判定を行い(これが「研削砥石の摩耗の適否を判定する工程」)、その結果を制御部20に送る。制御部20では、研削砥石15の再ドレス等若しくは交換が必要ない場合はそのまま作業を続行させ、再ドレス若しくは交換等の必要がある場合は、メンテナンス等を促す警報を発生する。
【0043】
なお、判定手段21での判定は、番号1~40の各研削砥石15の砥石面15aの高さが常に均一に摩耗し、開始直後と、25枚のウェハWを研削加工した後と、50枚のウェハWを研削加工した後も、それぞれ平均的に摩耗をしている場合、すなわち周方向における摩耗量等のバラつき(位置的差異)が少ない場合の研削砥石15の再ドレス時期若しくは交換時期の摩耗適否判定基準の許容値と、図4の(a)に示したデータのように、局所的に過摩耗(番号30~40付近の研削砥石15)がある場合の研削砥石15の再ドレス時期若しくは交換時期の摩耗適否判定基準の許容値と、図4の(b)に示したデータのように、目詰まりにより局所的に摩耗不足(番号5~11付近の研削砥石15)がある場合の研削砥石15の再ドレス時期若しくは交換時期の摩耗適否判定基準の許容値とで、それぞれ異なる許容値を設定する。
【0044】
また、判定手段21での判定は、粗研削位置P2に配置された粗研削機構16aの基準値及び許容値と、精研削位置P3に配置された精研削機構16bでの基準値及び許容値とで、異なる摩耗適否判定基準値及び許容値を設定する。これは、粗研削位置P2に配置された粗研削機構16aによる粗研削は、研削精度が荒いので砥石の摩耗ムラが発生し易い。反対に、精研削では、研削精度は高いが摩耗ムラはシビアにコントロールしなければならない。そのため、粗研削ステージの粗研削機構16aで使用している研削砥石15の摩耗適否判定基準と精研削ステージの精研削機構16bで使用している研削砥石15の摩耗適否判定基準を同じにしていると、粗研削ステージで使用している研削砥石15を基準としている場合では、精研削ステージで使用している粗研削機構16aでの研削砥石15の再ドレス実施若しくは交換時期が遅れる。また、反対に、精研削ステージで使用している研削砥石15を基準としている場合では、粗研削ステージで使用している粗研削機構16aにおける研削砥石15では再ドレス実施若しくは交換時期が早まり、砥石寿命が無駄になる虞がある。しかし、粗研削ステージで使用している研削砥石15の交換時期の摩耗適否判定基準と精研削ステージで使用している研削砥石15の交換時期の摩耗適否判定基準とを別々にして個々に判定できるようにしておくと、各ステージにおける研削砥石15の交換時期の判定を的確に行える。
【0045】
なお、研削砥石15の交換時期(許容値)の一例を、図5に示す。すなわち、図5において、粗研削ステージ(粗研削工程)で、研削砥石15の番手を#325、砥石周速度を1885(m/min)、最大送り速度を4.0(um/s)、加工するウェハWのタイプがミラーウェハであるとした場合であり、この周方向における摩耗量のバラつき(位置的差異)の許容値は、約20umよりも小さく(≦約20um)設定される。これに対して、精研削ステージ(精研削工程)で、研削砥石15の番手を#3600、砥石周速度を2513(m/min)、最大送り速度を0.6(um/s)、加工するウェハWのタイプがミラーウェハであるとした場合の周方向における摩耗量のバラつき(位置的差異)の許容値は、約4umよりも小さく(≦約4um)設定される。
【0046】
したがって、本実施例による研削装置10によれば、研削ホイール14と一体に、環状の軌跡を描いて回転している研削砥石15の砥石面15aに向けて照射部18aにより検出信号を照射し、砥石面15aから反射して来る検出信号を受信部18bで受けるセンサ部18を有し、受信部18bでの信号を判定手段21を介して制御部20に送り、判定手段21と制御部20とにより複数個の研削砥石15の砥石面15a毎における高さ、すなわち周方向における摩耗量のバラつき(位置的差異)を算出し、その算出された周方向における摩耗量のバラつきを予め設定されている摩耗適否判定の基準値と比較し、その比較された結果から研削砥石15の交換の適否判定を行うので、より正確な判定が可能になる。また、研削ホイール14に環状に配置されている全ての研削砥石15における砥石面15aの状態を検出することができる。これにより、環状に配置された、全て研削砥石15における砥石面15aが平均的に摩耗等をしている場合と、偏って摩耗等をしている場合等、全ての研削砥石15における砥石面15aの周方向における摩耗量のバラつき(位置的差異)を簡単に検出することができ、全ての研削砥石における砥石面の摩耗等が平均的に摩耗等をしている場合にはそのまま作業を続行させ、偏って摩耗等をしている場合には再ドレス若しくは早めの交換を行う等、その切削砥石のメンテナンス時期若しくは交換時期のタイミングを的確に判定することが可能になる。
【0047】
なお、上記実施例では、粗研削機構16aと精研削機構16bの、二つの研削機構を有する場合について説明したが、粗研削機構16aと精研削機構16bの何れか一方の研削機構16を備える場合であっても構わないものである。
【0048】
また、上記実施例では、研削ホイール14に設けた研削砥石15は、複数個(本実施例では40個のセグメント)の研削砥石15に分割されて、これらが略等間隔で環状に配置している構造を開示したが、複数個の研削砥石15に分割せずに、1つのリング状(環状)にした研削砥石15を使用しても同じであり、本発明はこれら1つのリング状をした研削砥石15を使用する場合も含むものである。
【0049】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0050】
10 :研削装置
11 :インデックステーブル
13 :チャックテーブル
13a :保持面
14 :研削ホイール
15 :研削砥石
15a :砥石面
16 :研削機構
16a :粗研削機構
16b :精研削機構
17 :スピンドル機構
17a :回転軸
18 :センサ部
18a :照射部
18b :受信部
19 :制御ユニット
20 :制御部
21 :判定手段
P1 :非研削位置
P2 :粗研削位置
P3 :精研削位置
図1
図2
図3
図4
図5