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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140541
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】窒化物半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/08 20100101AFI20241003BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20241003BHJP
   H01L 33/06 20100101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L33/32
H01L33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051721
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】川田 至孝
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA04
5F241AA24
5F241CA04
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CB11
5F241CB28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】順方向電圧の上昇が低減され、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】窒化物半導体発光素子10は、第1n側半導体層112と、交互に配置された第1障壁層113bと第1井戸層113aとを有する第1活性層113と、第1p側半導体層114と、第2n側半導体層121と、第2活性層122と、第2p側半導体層123とが順に積層されている。第1障壁層は、最も第1n側半導体層側に位置する第1層113b1と、最も第1p側半導体層側に位置する第2層113b2と、第1層と第2層との間に位置する複数の第3層113b3とを有する。複数の第3層は、1層以上の第3層を含む第1群113bsと、第1群よりも第1p側半導体層側に位置する1層以上の第3層を含む第2群113btとを有し、第2群の第3層の膜厚Ttは、第1群の第3層の膜厚Tsよりも薄い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1n側半導体層と、
前記第1n側半導体層上に配置され、交互に配置された第1障壁層と第1井戸層とを有する第1活性層と、
前記第1活性層上に配置される第1p側半導体層と、
前記第1p側半導体層上に配置され、前記第1p側半導体層に接する第2n側半導体層と、
前記第2n側半導体層上に配置される第2活性層と、
前記第2活性層上に配置される第2p側半導体層と、を備え、
前記第1障壁層は、最も前記第1n側半導体層側に位置する第1層と、最も前記第1p側半導体層側に位置する第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置する複数の第3層とを有し、
前記複数の第3層は、1層以上の前記第3層を含む第1群と、前記第1群よりも第1p側半導体層側に位置する1層以上の前記第3層を含む第2群とを有し、
前記第2群の第3層の膜厚は、前記第1群の第3層の膜厚よりも薄い、
窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1群に含まれる前記第3層の層数は、s(sは自然数とする)であり、
前記第2群に含まれる前記第3層の層数は、t(tは自然数とする)であり、
前記複数の第3層において、s<tとなる、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1群の第3層の膜厚は、前記第1井戸層の膜厚よりも厚く、
前記第2群の第3層の膜厚は、前記第1井戸層の膜厚よりも薄い、請求項2に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2活性層は、交互に配置された第2障壁層と第2井戸層とを有し、
前記第2障壁層は、最も前記第2n側半導体層側に位置する第4層と、最も前記第2p側半導体層側に位置する第5層と、前記第4層と前記第5層との間に位置する複数の第6層とを有し、
前記複数の第6層は、1層以上の前記第6層を含む第3群と、前記第3群よりも前記第2p側半導体層側に位置する1層以上の前記第6層を含む第4群とを有し、
前記第4群の第6層の膜厚は、前記第3群の第6層の膜厚よりも薄い、請求項2または請求項3に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記第3群に含まれる前記第6層の層数は、u(uは自然数とする)であり、
前記第4群に含まれる前記第6層の層数は、v(vは自然数とする)であり、
前記複数の第6層において、u<vとなる、請求項4に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記第3群の各第6層の膜厚は、前記第2井戸層の膜厚よりも厚く、
前記第4群の各第6層の膜厚は、前記第2井戸層の膜厚よりも薄い、請求項4に記載の窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
前記第3層の層数は、前記第6層の層数と同じであり、
前記第2群と前記第4群とにおいて、t>vとなる、請求項5に記載の窒化物半導体発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、第1のn型層、第1の活性層、および第1のp型層を含む第1発光部と、第1発光部上に配置されたトンネル接合部と、トンネル接合部上に配置され、第2のn型層、第2の活性層、および第2のp型層を含む第2発光部と、を備える発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-128502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一実施形態は、順方向電圧の上昇が低減され、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態は、
第1n側半導体層と、
前記第1n側半導体層上に配置され、交互に配置された第1障壁層と第1井戸層とを有する第1活性層と、
前記第1活性層上に配置される第1p側半導体層と、
前記第1p側半導体層上に配置され、前記第1p側半導体層に接する第2n側半導体層と、
前記第2n側半導体層上に配置される第2活性層と、
前記第2活性層上に配置される第2p側半導体層と、を備え、
前記第1障壁層は、最も前記第1n側半導体層側に位置する第1層と、最も前記第1p側半導体層側に位置する第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置する複数の第3層とを有し、
前記複数の第3層は、1層以上の前記第3層を含む第1群と、前記第1群よりも第1p側半導体層側に位置する1層以上の前記第3層を含む第2群とを有し
前記第2群の第3層の膜厚は、前記第1群の第3層の膜厚よりも薄い。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施形態によれば、順方向電圧の上昇が低減され、発光出力が高い窒化物半導体発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る窒化物半導体発光素子を示す断面図である。
図2A図1の第1活性層を拡大して示す断面図である。
図2B図1の第2活性層を拡大して示す断面図である。
図3】第2実施形態の第2活性層を拡大して示す断面図である。
図4】窒化物半導体発光素子の製造方法を示すフローチャートである。
図5】第1実証試験の結果を示す表である。
図6】第2実証試験の結果を示す表である。
図7】第3実証試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特許文献1に記載の発光素子は、トンネル接合部の下側に第1発光部を有し、トンネル接合部の上側に第2発光部を有している。第1発光部には、発光素子の電極側から供給されるキャリア(例えば、電子)およびトンネル接合を介して供給されるキャリア(例えば、ホール)が生じ、第2発光部には、発光素子の電極によって生成されるキャリア(例えば、ホール)およびトンネル接合を介して供給されるキャリア(例えば、電子)が生じる。これにより、第1発光部および第2発光部に所望のキャリアが生じて第1発光部および第2発光部が発光される。
【0009】
ここで、トンネル接合部を介して供給されるキャリアは、発光素子の電極によって生成されるキャリアより少ない、より具体的には、トンネル接合部下側の発光部の活性層に供給されるキャリア(例えば、ホール)が少ない、といった課題を本願発明者は見出した。
【0010】
本開示は、上記知見に基づき鋭意検討した結果なされたものであり、トンネル接合部下側の発光部に供給されるキャリアを増やすことによって、順方向電圧Vfの上昇が低減され、より発光出力が高い窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする開示である。
【0011】
具体的には、本開示の一実施形態に係る窒化物半導体発光素子は、第1n側半導体層と、第1n側半導体層上に配置され、交互に配置された第1障壁層と第1井戸層とを有する第1活性層と、第1活性層上に配置される第1p側半導体層と、第1p側半導体層上に配置され、第1p側半導体層に接する第2n側半導体層と、第2n側半導体層上に配置される第2活性層と、第2活性層上に配置される第2p側半導体層と、を備えている。そして、第1障壁層は、最も第1n側半導体層側に位置する第1層と、最も第1p側半導体層側に位置する第2層と、第1層と第2層との間に位置する複数の第3層とを有し、複数の第3層は、1層以上の第3層を含む第1群と、第1群よりも第1p側半導体層側に位置する1層以上の第3層を含む第2群とを有し、第2群の第3層の膜厚は、第1群の第3層の膜厚よりも薄くしている。
【0012】
このように、第1活性層の第1障壁層において、第2群の各第3層の膜厚を第1群の各第3層の膜厚よりも薄くすることにより、トンネル接合部として機能する第1p側半導体層から第1活性層に供給されるキャリア(ホール)を増やすことができる。これにより、順方向電圧Vfの上昇が低減され、発光出力が高い発光特性を有する窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【0013】
以下、より具体的な形態について詳細に説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
また、以下では、説明をわかりやすくするために、XYZ直交座標系を用いて、各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交している。またX軸が延びる方向を「X方向」とし、Y軸が延びる方向を「Y方向」とし、Z軸が延びる方向を「Z方向」とする。また、説明をわかりやすくするために、上方をZ方向、下方をその反対方向とするが、これらの方向は、相対的なものであり重力方向とは無関係である。
【0015】
[本開示の第1実施形態]
本開示の第1実施形態について図1および2を参照しながら説明する。窒化物半導体発光素子10は、図1に示すように、基板11と、半導体構造体12と、n側電極13と、p側電極14と、を備える。以下、窒化物半導体発光素子10を単に「発光素子10」ともいう。
【0016】
・基板
基板11の形状は平板状である。基板11の上面および下面は、例えば、X-Y平面に概ね平行である。基板11は、例えば、サファイア(Al)からなる。ただし、基板11には、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、または窒化ガリウム(GaN)等他の材料を用いてもよい。基板11の上には、半導体構造体12が配置されている。
【0017】
・半導体構造体
半導体構造体12は、例えば、窒化物半導体からなる複数の半導体層が積層された積層体である。ここで、「窒化物半導体」とは、窒素を含む半導体であって、典型的には、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比xおよびyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものである。このように、本明細書において、「窒化物半導体発光素子」とは、発光素子を構成する各半導体層が窒化物半導体からなる発光素子を意味する。
【0018】
半導体構造体12は、図1に示すように、下方から上方に向かって順に、第1発光部110と、第2発光部120と、を有する。第1発光部110は、下方から上方に向かって順に、第1n側半導体層112と、第1活性層113と、第1p側半導体層114と、を含む。第1発光部110は、第1n側半導体層112の下に配置された下地層111をさらに含む。第2発光部120は、下方から上方に向かって順に、第2n側半導体層121と、第2活性層122と、第2p側半導体層123と、を含む。以下、半導体構造体12の各部について詳述する。
【0019】
第1発光部110の下地層111は、基板11の上に配置されている。下地層111は、例えば、アンドープの半導体層を含む。本明細書において、「アンドープ」とは、n型不純物およびp型不純物を意図的にドープしていないことを意味する。すなわち、アンドープの半導体層は、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスを供給させずに形成した半導体層である。「n型不純物」とは、ドナーとなる不純物を意味する。「p型不純物」とは、アクセプターとなる不純物を意味する。アンドープの半導体層が、n型不純物および/またはp型不純物を意図的にドープした層と隣接している場合、その隣接した層からの拡散等によって、アンドープの半導体層にn型不純物および/またはp型不純物が含まれる場合がある。
【0020】
下地層111におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。下地層111の上には、第1n側半導体層112が配置されている。ただし、第1発光部に下地層が配置されておらず、第1n側半導体層が基板上に直接配置されていてもよい。
【0021】
第1n側半導体層112は、1層以上のn型半導体層を含む。第1n側半導体層112におけるn型半導体層は、例えば、n型不純物であるシリコン(Si)がドープされたGaNを含む。第1n側半導体層112におけるn型半導体層は、インジウム(In)またはアルミニウム(Al)等をさらに含んでもよい。第1n側半導体層112におけるn型半導体層は、n型不純物としてゲルマニウム(Ge)を含んでもよい。
【0022】
また、第1n側半導体層112は、電子を供給するという機能を有していればよく、1層以上のアンドープの半導体層をさらに含んでいてもよい。第1n側半導体層112におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。
【0023】
また、第1n側半導体層112上には、第1超格子層を配置してよい。第1超格子層を配置することによって、第1超格子層上に形成される半導体層への応力を緩和することができる。第1超格子層は、例えば、格子定数の異なる半導体層を交互に積層した積層構造とすることができる。
【0024】
第1活性層113は、第1n側半導体層112から第1p側半導体層114に向かう積層方向、すなわちZ方向において、図2Aに示すように、交互に並ぶ第1井戸層113aおよび第1障壁層113bを有する。本実施形態では、第1活性層113は、8層の第1井戸層113aと、9層の第1障壁層113bとを含む。ただし、第1井戸層の数および第1障壁層の数は上記に限定されない。このように、本実施形態の第1活性層113は、複数の第1井戸層113aを含む多重量子井戸構造を有する。
【0025】
各第1井戸層113aは、例えば、In,GaおよびNを含有する窒化インジウムガリウム(InGaN)を含むアンドープの半導体層である。ただし、複数の第1井戸層113aの少なくとも一層にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第1井戸層113aは、Alをさらに含んでもよい。また、第1井戸層113aは、例えば、Al,GaおよびNを含有する窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)としてよい。
【0026】
各第1井戸層113aの膜厚は、例えば、2nm以上かつ5nm以下としてよい。なお、複数の第1井戸層113aの膜厚は概ね同じとしてよいが、最も第1p側半導体層114側に位置する第1井戸層113aの膜厚は、それ以外の第1井戸層113a(図1では、7層の第1井戸層)の膜厚よりも厚くしてよい。一例として、最も第1p側半導体層114側に位置する第1井戸層113aの膜厚は、最も第1p側半導体層114側に位置する第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚に対して10%~20%ほど厚くしてよい。
【0027】
第1障壁層113bは、最も第1n側半導体層112側に位置する第1層113b1と、最も第1p側半導体層114側に位置する第2層113b2と、第1層113b1と第2層113b2との間に位置する複数の第3層113b3とを有している。
【0028】
第1層113b1は、例えば、アンドープの半導体層と、n型不純物を含む半導体層と、の積層構造を有する。第1層113b1におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。第1層113b1におけるn型不純物を含む半導体層は、例えばn型不純物であるSiがドープされたInGaNを含む。また、第1層113b1は、当該第1層113b1を介して第1井戸層113aに電子を供給する機能を有している。
【0029】
第1層113b1の膜厚は、後述する第2層113b2の膜厚および第3層113b3の膜厚よりも厚くてよい。例えば、第1層113b1の膜厚は、例えば、2nm以上かつ6nm以下であって、第2層113b2の膜厚または第3層113b3の膜厚に対して、1倍より大きく1.5倍以下としてよい。このように第1層113b1の膜厚を設定することにより、第1層113b1から第1井戸層113aに電子を供給させやすくすることができる。
【0030】
第2層113b2は、例えば、GaNを含むアンドープの半導体層である。ただし、第2層113b2の少なくとも一部にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第2層113b2は、Alをさらに含んでもよい。第2層113b2の膜厚は、第1層113b1の膜厚よりも薄い。第2層113b2の膜厚は、例えば、2nm以上かつ6nm以下である。また、第2層113b2は、当該第2層113b2を介して第1井戸層113aにホールを供給する機能を有している。
【0031】
第3層113b3は、例えば、GaNを含むアンドープの半導体層である。ただし、複数の第3層113b3の少なくとも一層にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第3層113b3は、Alをさらに含んでもよい。
【0032】
第3層113b3は、1層以上の第3層113b3を含む第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する1層以上の第3層113b3を含む第2群113btとを有している。第1群113bsに含まれる第3層113b3の層数は、s(sは自然数である)である。第2群113btに含まれる第3層113bの層数は、t(tは自然数である)である。
【0033】
ここで、第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttは、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsよりも薄い。一例として、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsが2nm以上かつ6nm以下であるのに対し、第2群113btの各第3層113b3の膜厚Tsは、2nm以上かつ5nm以下であって、各第3層113b3の膜厚Ttよりも薄い。このように第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttを第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsより薄くすることにより、トンネル接合部として機能する第1p側半導体層114から第1活性層113に供給されるキャリア(ホール)を増やすことができる。これにより、窒化物半導体発光素子の発光出力をより向上させること及び窒化物半導体発光素子の順方向電圧Vfを下げることができる。なお、複数の第1群113bsの各第3層113b3の膜厚は概ね同じとしてよく、複数の第2群113btの各第3層113b3の膜厚は概ね同じとしてよい。
【0034】
第1群113bsの層数と第2群113btの層数との関係として、s<tが成立してよい。一例を示す図2Aにおいて、第1群113bsを2層、第2群113btを5層の実施形態を例示している。このような第1群113bsの層数と第2群113btの層数との関係とし、膜厚の薄い障壁層を多く配置することによって第1活性層113により多くのキャリア(ホール)を供給することができる。これにより、窒化物半導体発光素子の発光出力をより高くし、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0035】
第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsは、第1井戸層113aの膜厚Ta1よりも厚くてよい。一例として、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsは、第1井戸層113aの膜厚Ta1の1倍より大きく1.5倍以下としてよい。より具体的には、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsは、2nm以上かつ6nm以下であるのに対し、上述したとおり、第1井戸層113aの膜厚Ta1は、2nm以上かつ5nm以下であって第3層113b3の膜厚Tsよりも薄い。このような第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsと第1井戸層113aの膜厚Ta1とすることにより、第1活性層113に供給されるキャリア(ホール)をさらに増やすことができ、窒化物半導体発光素子の発光出力をより高くし、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0036】
第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttは、第1井戸層113aの膜厚Ta1よりも薄くてよい。一例として、第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttは、第1井戸層113aの膜厚Ta1の1倍より小さく0.5倍以上としてよい。より具体的には、第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttは、2nm以上かつ5nm以下であるのに対し、上述したとおり、第1井戸層113aの膜厚Ta1は、2nm以上かつ5nm以下であって各第3層113b3の膜厚Ttよりも厚い。このような第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttと第1井戸層113aの膜厚Ta1とすることにより、第1p側半導体層114から第1活性層113に供給されるキャリア(ホール)をさらに増やすことができ、窒化物半導体発光素子の発光出力をより高くし、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0037】
第1活性層113の上、すなわち最も上方に位置する第1障壁層113bの上には、図1に示すように、第1p側半導体層114が配置されている。
【0038】
第1p側半導体層114は、例えば、第1活性層113にホールを供給する機能を有する1以上のp型の半導体層を含む。第1p側半導体層114におけるp型半導体層は、例えば、p型不純物であるマグネシウム(Mg)がドープされたGaNを含む。第1p側半導体層114におけるp型半導体層は、Alをさらに含んでもよい。
【0039】
また、第1p側半導体層114は、1層以上のアンドープの半導体層をさらに含んでいてもよい。第1p側半導体層114におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。第1p側半導体層114におけるアンドープの半導体層は、Alをさらに含んでもよい。また、第1p側半導体層114は、第2n側半導体層121にトンネル接合するp型半導体層をさらに含んでもよい。第2n側半導体層121にトンネル接合するp型半導体層は、例えば、p型不純物としてMgがドープされたGaNを含む。第2n側半導体層121にトンネル接合するp型半導体層のp型不純物濃度は、例えば、第1p側半導体層114においてp型半導体層の下方に位置するp型半導体層のp型不純物濃度よりも高い。第1p側半導体層114上には、第2n側半導体層121が配置されている。
【0040】
図1に示すように、第2n側半導体層121は、例えば、第2活性層122に電子を供給する機能を有する1層以上のn型半導体層を含む。第2n側半導体層121におけるn型半導体層は、例えば、n型不純物であるシリコン(Si)がドープされたGaNを含む。第2n側半導体層121におけるn型半導体層は、インジウム(In)またはアルミニウム(Al)等をさらに含んでもよい。第2n側半導体層121おけるn型半導体層は、n型不純物としてゲルマニウム(Ge)含んでもよい。また、第2n側半導体層121は、第1p側半導体層114にトンネル接合するn型半導体層をさらに含んでもよい。第1p側半導体層114にトンネル接合するn型半導体層は、例えば、n型不純物としてSiがドープされたGaNを含む。第1p側半導体層114にトンネル接合するn型半導体層のn型不純物濃度は、例えば、第2n側半導体層121において第1p側半導体層114にトンネル接合するn型半導体層の上方に位置するn型半導体層のn型不純物濃度よりも高い。
【0041】
また、第2n側半導体層121は、電子を供給するという機能を有していればよく、1層以上のアンドープの半導体層をさらに含んでいてもよい。第2n側半導体層121におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。
【0042】
また、第2n側半導体層121上には、第2超格子層を配置してよい。第2超格子層を配置することによって、第2超格子層上に形成される半導体層への応力を緩和することができる。第2超格子層には、上述した第1超格子層と同じ積層構造の半導体構造を用いることができる。
【0043】
第2活性層122は、積層方向すなわちZ方向において、図2Bに示すように、交互に並ぶ第2井戸層122aおよび第2障壁層122bを有する。本実施形態では、第2活性層122は、8層の第2井戸層122aと、9層の第2障壁層122bとを含む。ただし、第2井戸層の層数および第2障壁層の層数は上記に限定されない。このように、本実施形態の第2活性層122は、複数の第2井戸層122aを含む多重量子井戸構造を有する。
【0044】
各第2井戸層122aは、例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)を含むアンドープの半導体層である。ただし、複数の第2井戸層の少なくとも一層にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第2井戸層122aは、Alをさらに含んでもよい。また、第2井戸層122aは、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)としてよい。
【0045】
各第2井戸層122aの膜厚は、例えば、2nm以上かつ5nm以下としてよい。なお、複数の第2井戸層122aの膜厚は概ね同じとしてよいが、最も第2p側半導体層123側に位置する第2井戸層122aの膜厚は、それ以外の第2井戸層122a(図2Bでは、7層の第2井戸層)の膜厚よりも厚くしてよい。一例として、最も第2p側半導体層123側に位置する第2井戸層122aの膜厚は、最も第2p側半導体層123側に位置する第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚に対して10%~20%ほど厚くしてよい。
【0046】
第2障壁層122bは、最も第2n側半導体層121側に位置する第4層122b4と、最も第2p側半導体層123側に位置する第5層122b5、第4層122b4と第5層122b5との間に位置する複数の第6層122b6とを有している。
【0047】
第4層122b4は、例えば、アンドープの半導体層と、n型不純物を含む半導体層と、の積層構造を有する。第4層122b4におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。第4層122b4におけるn型不純物を含む半導体層は、例えばn型不純物であるSiがドープされたInGaNを含む。また、第4層122b4は、当該第4層122b4を介して第2井戸層122aに電子を供給する機能を有している。
【0048】
第4層122b4の膜厚は、後述する第5層122b5の膜厚および第6層122b6の膜厚よりも厚くてよい。例えば、第4層122b4の膜厚は、例えば、2nm以上かつ6nm以下であって、第5層122b5の膜厚および第6層122b6の膜厚に対して、1倍より大きく1.5倍以下としてよい。このように第4層122b4の膜厚を設定することにより、第4層122b4から第2井戸層122aに電子を供給させやすくすることができる。
【0049】
第5層122b5は、例えば、GaNを含むアンドープの半導体層である。ただし、複数の第5層122b5の少なくとも一層にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第5層122b5は、Alをさらに含んでもよい。第5層122b5の膜厚は、第4層122b4の膜厚よりも薄く、例えば、2nm以上かつ6nm以下である。また、第5層122b5には、当該第5層122b5を介して第2井戸層122aにホールを供給する機能を有している。
【0050】
第6層122b6は、例えば、GaNを含むアンドープの半導体層である。ただし、複数の第6層122b6の少なくとも一層にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第6層122b6は、Alをさらに含んでもよい。第6層122b6の膜厚は、第5層122b5の膜厚と概ね同じとしてよい。第6層122b6の膜厚は、例えば、2nm以上かつ6nm以下である。なお、複数の第6層122b6の各膜厚は概ね同じとしてよい。
【0051】
第2活性層122の上には、第2p側半導体層123が配置されている。第2p側半導体層123は、例えば、1層以上のp型半導体層を含む。第2p側半導体層123におけるp型半導体層は、例えば、p型不純物であるMgがドープされたGaNを含む。第2p側半導体層123におけるp型半導体層は、Alをさらに含んでもよい。
【0052】
また、第2p側半導体層123は、第2活性層122にホールを供給するという機能を有していればよく、1層以上のアンドープの半導体層をさらに含んでいてもよい。第2p側半導体層123におけるアンドープの半導体層は、例えばGaNを含む。第2p側半導体層123におけるアンドープの半導体層は、Alをさらに含んでもよい。
【0053】
n側電極13は、図1に示すように、第1n側半導体層112の第1面112s1上に配置されている。n側電極13は、第1n側半導体層112に電気的に接続されている。p側電極14は、第2p側半導体層123上に配置されている。p側電極14は、第2p側半導体層123に電気的に接続されている。n側電極13とp側電極14との間に順方向電圧Vfを印加することで第1活性層113および第2活性層122が発光する。
【0054】
第1活性層113および第2活性層122が発する光は、例えば、紫外光または可視光である。第1活性層113の発光ピーク波長と第2活性層122の発光ピーク波長と同じとすることができる。例えば、第1活性層113と第2活性層122が青色光を発してもよい。第1活性層113の発光ピーク波長と第2活性層122の発光ピーク波長は異なっていてもよい。例えば、第1活性層113が青色光を発し、第2活性層122が緑色光を発してもよい。青色光の発光ピーク波長は、例えば、430nm以上490nm以下である。緑色光の発光ピーク波長は、例えば、500nm以上540nm以下である。
【0055】
n側電極13とp側電極14との間に順方向電圧Vfが印加された場合、すなわち、p側電極14に正電位が、n側電極13にp側電極14よりも低い電位が印加された場合、第2n側半導体層121と第1p側半導体層114との間には逆方向にバイアスがかる。そのため、第2n側半導体層121と第1p側半導体層114との間に電流を流すために、第2n側半導体層が第1p側半導体層114にトンネル接合されていることによるトンネル効果を利用する。具体的には、第1p側半導体層114の価電子帯に存在する電子を、第2n側半導体層121の伝導帯にトンネリングさせることで第2n側半導体層121と第1p側半導体層114との間に電流を流す。換言すれば、窒化物半導体発光素子10に順方向電圧Vfを印加した場合に、第2n側半導体層121と第1p側半導体層114との間に電流が流れれば、第2n側半導体層121が第1p側半導体層114にトンネル接合されているということである。
【0056】
以上説明したとおり、本実施形態の窒化物半導体発光素子によれば、第1活性層113の第1障壁層113bにおいて、第2群113btの各第3層113b3の膜厚が第1群113bsの各第3層113b3の膜厚よりも薄いため、トンネル接合部として機能する第1p側半導体層114から第1活性層113に供給されるキャリア(ホール)が増える。したがって、順方向電圧Vfが低く、発光出力が高い発光特性を有する窒化物半導体発光素子10とすることができる。
【0057】
[本開示の第2実施形態]
本開示の第2実施形態について図3を参照しながら説明する。第2実施形態は、第2活性層122の第6層122b6の構造が、上述した第1実施形態と相違し、その他の構造については、上述した第1実施形態と基本的に同じである。上述した第1実施形態では、第1活性層113の第3層113b3の一部の膜厚を薄くしているのに対して、第2実施形態では、第1活性層113の第3層113b3の一部の膜厚と、第2活性層122の第6層122b6の一部の膜厚とを薄くしている。以下、第2実施形態の構造のうち上述した第1実施形態と相違する構造を説明する。
【0058】
第6層122b6は、例えば、GaNを含むアンドープの半導体層である。ただし、複数の第6層122b6の少なくとも一層にn型不純物および/またはp型不純物が含有されていてもよい。第6層122b6は、Alをさらに含んでもよい。
【0059】
第6層122b6は、1層以上の第6層122b6を含む第3群122buと、第3群122buよりも第2p側半導体層123側に位置する1層以上の第6層122b6を含む第4群122bvとを有している。第3群122buに含まれる第6層122b6の層数は、u(uは自然数である)である。第4群122bvに含まれる第5層122b6の層数は、v(vは自然数である)である。
【0060】
ここで、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvは、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuよりも薄い。一例として、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuが2nm以上かつ6nm以下であるのに対し、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvは、2nm以上かつ5nm以下であって第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuよりも薄い。このように第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvを第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuより薄くすることにより、窒化物半導体発光素子の順方向電圧Vfを低減しつつ、発光出力をより高くすることができる。なお、第3群122buの各第6層122b6の膜厚は概ね同じとしてよく、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚は概ね同じとしてよい。
【0061】
第3群122buの層数と第4群122bvの層数との関係として、u<vが成立してよい。図3には、第3群122buが3層、第4群122bvが4層である実施形態を例示している。このような第3群122buの層数と第4群122bvの層数との関係によれば、窒化物半導体発光素子の発光出力をより向上させ、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0062】
第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuは、第2井戸層122aの膜厚Ta2よりも厚くてよい。一例として、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuは、第2井戸層122aの膜厚Ta2の1倍より大きく1.5倍以下としてよい。より具体的には、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuは、2nm以上かつ6nm以下であるのに対し、第2井戸層122aの膜厚Ta2は、2nm以上かつ5nm以下であって第3群122buの第6層122b6の膜厚Tuよりも薄い。このような第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuと第2井戸層122aの膜厚Ta2とすることにより、窒化物半導体発光素子の発光出力をより高くし、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0063】
第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvは、第2井戸層122aの膜厚Ta2よりも薄くてよい。一例として、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvは、第2井戸層122aの膜厚Ta2の1倍より小さく0.5倍以上としてよい。より具体的には、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvは、2nm以上かつ5nm以下であるのに対し、第2井戸層122aの膜厚Ta2は、2nm以上かつ5nm以下であって第4群122bvの第6層122b6の膜厚Tvよりも厚い。このような第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvと第2井戸層122aの膜厚Ta2とすることにより、窒化物半導体発光素子の発光出力をより高くし、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0064】
また、窒化物半導体発光素子10の態様として、第3層113b3の層数は、第6層122b6の層数と同じであり、第2群113btと第4群122bvとにおいて、t>vとしてよい。図2Aおよび図3には、第3層113b3の層数が7層であり、第6層122b6の層数が7層である実施形態を例示している。また、第2群113btは5層の第3層113b3を含み、第4群122bvは4層の第6層122b6を含む。このように第3層113b3、第6層122b6、第2群113btおよび第4群122bvの層数を設定することにより、トンネル接合部として機能する第1p側半導体層114から第1活性層113に供給されるキャリア(ホール)をより効果的に増やすことができる。これにより、窒化物半導体発光素子10の発光出力をより高くし、順方向電圧Vfをより低くすることができる。
【0065】
[本開示の実施形態の製造方法]
次に、窒化物半導体発光素子10の製造方法を説明する。図4は、本実施形態に係る窒化物半導体発光素子10の製造方法を示すフローチャートである。
【0066】
窒化物半導体発光素子10の製造方法は、図4に示すように、第1発光部110を形成する工程S1と、第2発光部120を形成する工程S2と、n側電極13およびp側電極14を形成する工程S3と、を備える。
【0067】
半導体構造体12に含まれる第1発光部110および第2発光部120は、例えば、圧力および温度の調整が可能な炉内において、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により形成される。具体的には、半導体構造体12は、炉内にキャリアガスおよび原料ガスを供給することで基板11上に形成される。
【0068】
キャリアガスとしては、例えば、水素(H)ガスまたは窒素(N)ガス等を用いることができる。
【0069】
原料ガスは、形成する半導体層に応じて適宜選択される。Gaを含む半導体層を形成する場合は、例えば、トリメチルガリウム(TMG)ガスまたはトリエチルガリウム(TEG)ガス等のGaを含む原料ガスが用いられる。Nを含む半導体層を形成する場合は、例えば、アンモニア(NH)ガス等のNを含む原料ガスが用いられる。Alを含む半導体層を形成する場合は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA)ガス等のAlを含む原料ガスが用いられる。Inを含む半導体層を形成する場合は、例えば、トリメチルインジウム(TMI)等のInを含む原料ガスが用いられる。Siを含む半導体層を形成する場合は、例えば、モノシラン(SiH)ガス等のSiを含むガスが用いられる。Mgを含む半導体層を形成する場合は、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)ガス等のMgを含む原料ガスが用いられる。なお、以下において、炉内に、一の元素を含む原料ガスおよび他の元素を含む原料ガスを供給することを、単に「一の元素および他の元素を含む原料ガスを供給する」ともいう。以下、各工程について詳述する。
【0070】
先ず、第1発光部110を形成する工程S1を行う。第1発光部110を形成する工程S1は、下地層111を形成する工程S11と、第1n側半導体層112を形成する工程S12と、第1活性層113を形成する工程S13と、第1p側半導体層114を形成する工程S14と、を含む。
【0071】
下地層111を形成する工程S11においては、炉内に、下地層111に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、下地層111を基板11上に形成する。
【0072】
第1n側半導体層112を形成する工程S12においては、炉内に、第1n側半導体層112に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第1n側半導体層112を下地層111上に形成する。
【0073】
第1活性層113を形成する工程S13は、第1井戸層113aおよび第1障壁層113bを形成する工程を含む。炉内に、キャリアガスと、GaおよびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスを供給しない場合、アンドープのGaN層である第1障壁層113bが形成される。また、炉内に、キャリアガスと、In、GaおよびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型を不純物およびp型不純物を含む原料ガスを供給しない場合、アンドープのInGaN層である第1井戸層113aが形成される。本実施形態では、第1井戸層113aの形成と第1障壁層113bの形成を、交互に複数回行う。これにより、積層方向、すなわちZ方向において交互に並ぶ第1井戸層113aおよび第1障壁層113bを含む積層体を、第1n側半導体層112上に形成する。
【0074】
本実施形態では、第1障壁層113bとして、最も第1n側半導体層112側に位置する第1層113b1と、最も第1p側半導体層114側に位置する第2層113b2と、第1層113b1と第2層113b2との間に位置する複数の第3層113b3とを形成する。ここで、複数の第3層113b3は、s層(sは、自然数であり、一例を示す図2Aでは2層)の第3層113b3を含む第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置するt層(tは、自然数であり、一例を示す図2Bでは、5層)の第3層113b3を含む第2群113btとを有するようにする。そして、第2群113btの各第3層113b3の膜厚Ttは、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsよりも薄くなるように処理条件(例えば、処理時間、ガス供給量等)を調整する。
【0075】
s層の第3層113b3を含む第1群113bsと、t層の第3層を含む第2群113btの層数の関係として、s<tとなるように層数が設定されてよい。
【0076】
また、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚、第2群の各第3層113b3の膜厚の態様として、第1群113bsの各第3層113b3の膜厚Tsは、第1井戸層113aの膜厚Ta1よりも厚く、第2群113btの各第3層の膜厚Ttは、第1井戸層113aの膜厚Ta1よりも薄くしてよい。
【0077】
第1p側半導体層114を形成する工程S14においては、炉内に、第1p側半導体層114に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第1p側半導体層114を第1活性層113の上、すなわち最も上方に位置する第1障壁層113b上に形成する。
【0078】
以上により、下地層111、第1n側半導体層112、第1活性層113、および第1p側半導体層114を含む第1発光部110が基板11上に形成される。
【0079】
次に、第2発光部120を形成する工程S2を行う。第2発光部120を形成する工程S2は、図4に示すように、第2n側半導体層121を形成する工程S21と、第2活性層122を形成する工程S22と、第2p側半導体層123を形成する工程S23と、を含む。
【0080】
第2n側半導体層121を形成する工程S21においては、炉内に、第2n側半導体層121に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第2n側半導体層121を第1p側半導体層114上に形成する。
【0081】
第2活性層122を形成する工程S22は、第2井戸層122aおよび第2障壁層122bを形成する工程を含む。炉内に、キャリアガスと、GaおよびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスを供給しない場合、アンドープのGaN層である第2障壁層122bが形成される。また、炉内に、キャリアガスと、In、GaおよびNを含む原料ガスを供給する。この際、n型不純物およびp型不純物を含む原料ガスを供給しない場合、アンドープのInGaN層である第2井戸層122aが形成される。本実施形態では、第2井戸層122aの形成と第2障壁層122bの形成を、交互に複数回行う。これにより、積層方向、すなわちZ方向において交互に並ぶ第2井戸層122aおよび第2障壁層122bを含む積層体を、第2n側半導体層121上に形成する。
【0082】
一実施形態では、第2障壁層122bとして、図2Bに示すとおり、最も第2n側半導体層121側に位置する第4層122b4と、最も第2p側半導体層123側に位置する第5層122b5と、第4層122b4と第5層122b5との間に位置する複数の第6層122b6とを形成してよい。
【0083】
また他の実施形態では、第2障壁層として、図3に示すとおり、複数の第6層122b6は、1層以上の第6層122b6を含む第3群122buと、第3群122buよりも第2p側半導体層123側に位置する1層以上の第6層122b6を含む第4群122bvとを有するようにしてよい。第3群122buに含まれる第6層122b6の層数は、u(uは自然数である)である。第4群122bvに含まれる第5層122b6の層数は、v(vは自然数である)である。図3には、第3群122buが3層の第6層122b6を含み、第4群122bvが4層の第6層122b6を含む実施形態を例示している。そして、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚Tvは、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuよりも薄くなるように処理条件(例えば、処理時間、ガス供給量等)を調整してよい。
【0084】
第2活性層122を形成する工程S22において、u層の第6層122b6を含む第3群122buと、v層の第6層122b6を含む第4群122bvの層数の関係として、u<vとなるように層数が設定されてよい。
【0085】
また、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tu、第4群122bvの各第6層122b6の膜厚の態様として、第3群122buの各第6層122b6の膜厚Tuは、第2井戸層122aの膜厚Ta2よりも厚く、第4群122bvの各第6層の膜厚Tvは、第2井戸層122aの膜厚Ta2よりも薄くしてよい。
【0086】
また、実施形態として、第3層113b3の層数は、第6層122b6の層数と同じであり、第2群113btと第4群122bvとにおいて、t>vとなるように層数が設定されてよい。
【0087】
第2p側半導体層123を形成する工程S23においては、炉内に、第2p側半導体層123に対応するキャリアガスおよび原料ガスを供給する。これにより、第2p側半導体層123を第2活性層122の上、すなわち最も上方に位置する第2障壁層122b上に形成する。
【0088】
以上により、第2n側半導体層121、第2活性層122、および第2p側半導体層123を含む第2発光部120が第1発光部110上に形成される。
【0089】
次に、n側電極13およびp側電極14を形成する工程S3を行う。n側電極13およびp側電極14を形成する工程S3では、先ず、図1に示すように、半導体構造体12の一部を除去して、第1n側半導体層112の第1面112s1および第3面112s3を、第1活性層113、第1p側半導体層114、および第2発光部120から露出させる。半導体構造体12の一部は、例えば、レジストを用いて選択的にエッチングすることにより除去することができる。
【0090】
次に、露出した第1面112s1の上にn側電極13を形成する。また、第2p側半導体層123上にp側電極14を形成する。n側電極13およびp側電極14は、例えば、スパッタリング法または蒸着法により形成することができる。
【0091】
以上により、窒化物半導体発光素子10を得ることができる。ただし、窒化物半導体発光素子10の製造方法は、上記の方法に限定されない。例えば、窒化物半導体発光素子10の製造方法は、下地層111を形成する工程S11を含まず、基板11上に第1n側半導体層112が直接形成されてもよい。
【0092】
<実施例>
本開示の窒化物半導体発光素子に関して実証試験を行った。具体的には、以下に示す比較例および実施例の窒化物半導体発光素子を製造した。なお、下記の実証試験1~3において、各実証試験は独立して行われた実証試験である。つまり、実証試験内でのサンプルの数値を比較してサンプルごとの性能を評価することは可能である。しかしながら、異なる実証試験の数値同士を厳密に比較することはできない。例えば、実証試験1の結果と、実証試験2の結果または実証試験3の結果を厳密に比較することはできない。
【0093】
-実証試験1-
実証試験1の窒化物半導体発光素子の基本構造について説明する。実証試験1に用いた窒化物半導体発光素子10は、第1n側半導体層112と、第1n側半導体層112上に配置され、交互に配置された第1障壁層113bと第1井戸層113aとを有する第1活性層113と、第1活性層113上に配置される第1p側半導体層114と、第1p側半導体層114上に配置され、第1p側半導体層114に接する第2n側半導体層121と、第2n側半導体層上に配置される第2活性層122と、第2活性層122上に配置される第2p側半導体層123と、を備えている。そして、第1障壁層113bは、最も第1n側半導体層112側に位置する第1層113b1と、最も第1p側半導体層114側に位置する第2層113b2と、第1層113b1と第2層113b2との間に位置する7層の第3層113b3とを有している。
【0094】
また、実証試験1では、第1発光部110における第1層113b1の第1障壁層113bの膜厚は、5.1nm、第2層113b2の第1障壁層113bの膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。
【0095】
また、実証試験1では、第2発光部120における第4層122b4の第2障壁層122bの膜厚は、5.1nm、第5層122b5の第2障壁層122bの膜厚は、4.0nm、第6層122b6の第2障壁層122bの膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。第2障壁層122bの層数は、9層であり、第2井戸層122aの層数は、図2Bに示すとおり8層である。
【0096】
実証試験1の実施例1~5、比較例1、2の窒化物半導体発光素子において、上記実証試験1の窒化物半導体発光素子の基本構造のうち複数の第3層113b3の構造のみをそれぞれ変更している。まず、実施例1~5における窒化物半導体発光素子の複数の第3層113b3の構造を詳述する。
【0097】
・実施例1
実施例1の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3は、6層の第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する1層の第2群113btと、を備えている。そして、第1群113bsの第3層113b3の膜厚Tsは4.0nmであり、第2群113btの第3層113b3の膜厚Ttは3.6nmである(図5参照)。
【0098】
・実施例2
実施例2の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3は、4層の第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する3層の第2群113btと、を備えている。そして、第1群113bsの第3層113b3の膜厚Tsは4.0nmであり、第2群113btの第3層113b3の膜厚Ttは3.6nmである(図5参照)。
【0099】
・実施例3
実施例3の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3は、2層の第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する5層の第2群113btと、を備えている。そして、第1群113bsの第3層113b3の膜厚Tsは4.0nmであり、第2群113btの第3層113b3の膜厚Ttは3.6nmである(図5参照)。
【0100】
・実施例4
実施例4の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3は、4層の第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する3層の第2群113btと、を備えている。そして、第1群113bsの第3層113b3の膜厚Tsは4.0nmであり、第2群113btの第3層113b3の膜厚Ttは3.2nmである(図5参照)。
【0101】
・実施例5
実施例5の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3は、2層の第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する5層の第2群113btと、を備えている。そして、第1群113bsの第3層113b3の膜厚Tsは4.0nmであり、第2群113btの第3層113b3の膜厚Ttは3.2nmである(図5参照)。
【0102】
次に、比較例1~2の窒化物半導体発光素子における複数の第3層113b3の構造を詳述する。
【0103】
・比較例1および比較例2
比較例1の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3の膜厚は、4.0nmである。また、比較例2の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3の膜厚は、3.6nmである(図5参照)。比較例1および比較例2では、実施例1~5のように複数の第3層113b3が第1群および第2群を備えず、複数の第3層113b3の膜厚をすべて同じとしている。
【0104】
上記実施例1~5および比較例1,2の窒化物半導体発光素子に対する発光出力Poおよび順方向電圧Vfの評価結果を図5に示す。なお、発光出力Poおよび順方向電圧Vfの値は、窒化物半導体発光素子に120mAの電流を流したときの値である。
【0105】
図5によれば、実施例1~5の窒化物半導体発光素子の発光出力Poは、比較例1~2の窒化物半導体発光素子の発光出力Poよりも高い結果が得られた。また、実施例1~5の窒化物半導体発光素子の順方向電圧Vfは、比較例1~2の窒化物半導体発光素子の順方向電圧Vfに対して同等あるいは低い結果が得られた。
【0106】
-実証試験2-
・実施例6
実証実験2の実施例6の窒化物半導体発光素子の基本構造について説明する。実施例6に用いた窒化物半導体発光素子10は、第1n側半導体層112と、第1n側半導体層112上に配置され、交互に配置された第1障壁層113bと第1井戸層113aとを有する第1活性層113と、第1活性層113上に配置される第1p側半導体層114と、第1p側半導体層114上に配置され、第1p側半導体層114に接する第2n側半導体層121と、第2n側半導体層上に配置される第2活性層122と、第2活性層122上に配置される第2p側半導体層123と、を備えている。そして、第1障壁層113bは、最も第1n側半導体層112側に位置する第1層113b1と、最も第1p側半導体層114側に位置する第2層113b2と、第1層113b1と第2層113b2との間に位置する複数の第3層113b3とを有している。第2障壁層122bは、最も第2n側半導体層121側に位置する第4層122b4と、最も第2p側半導体層123側に位置する第5層122b5と、第4層122b4と第5層122b5との間に位置する複数の第6層122b6とを有している。
【0107】
また、実施例6の窒化物半導体発光素子では、第1層113b1の膜厚は、5.1nm、第2層113b2の膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。
【0108】
また、実施例6の窒化物半導体発光素子では、第4層122b4の膜厚は、5.1nm、第5層122b5の膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。
【0109】
次に、実施例6の窒化物半導体発光素子における複数の第3層113b3の構造と複数の第6層122b6の構造とについて詳述する。
【0110】
実施例6の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3は、5層の第1群113bsと、第1群113bsよりも第1p側半導体層114側に位置する2層の第2群113btと、を備えている。そして、第1群113bsの第3層113b3の膜厚は4.0nmであり、第2群113btの第3層113b3の膜厚Ttは3.0nmである。
【0111】
また、実施例6の窒化物半導体発光素子において、複数の第6層122b6は、5層の第3群122buと、第3群122buよりも第2p側半導体層123側に位置する2層の第4群122bvと、を備えている。そして、第3群122buの第6層122b6の膜厚Tuは4.0nmであり、第4群122bvの第6層122b6の膜厚Ttは3.0nmである。
【0112】
次に、比較例3の窒化物半導体発光素子において、実施例6の窒化物半導体発光素子と異なる点を詳述する。
【0113】
・比較例3
比較例3の窒化物半導体発光素子において、複数の第3層113b3の膜厚は、4.0nmである。つまり、比較例3の窒化物半導体発光素子では、実施例6の窒化物半導体発光素子のように複数の第3層113b3が第1群および第2群を備えず、複数の第3層113b3の膜厚をすべて同じとしている。また、比較例3の窒化物半導体発光素子では、実施例6の窒化物半導体発光素子のように複数の第6層122b6が第3群および第4群を備えず、複数の第6層122b6の膜厚をすべて同じとしている。
【0114】
上記実施例6および比較例3の窒化物半導体発光素子に対する発光出力Poおよび順方向電圧Vfの評価結果を図6に示す。なお、発光出力Poおよび順方向電圧Vfの値は、窒化物半導体発光素子に120mAの電流を流したときの値である。
【0115】
図6によれば、実施例6の窒化物半導体発光素子は、比較例3の窒化物半導体発光素子よりも低い順方向電圧Vfを得つつ、より高い発光出力Poが得られた。
【0116】
-実証試験3-
実証試験3の窒化物半導体発光素子の基本構造について説明する。実証試験3に用いた窒化物半導体発光素子10は、第1n側半導体層112と、第1n側半導体層112上に配置され、交互に配置された第1障壁層113bと第1井戸層113aとを有する第1活性層113と、第1活性層113上に配置される第1p側半導体層114と、第1p側半導体層114上に配置され、第1p側半導体層114に接する第2n側半導体層121と、第2n側半導体層上に配置される第2活性層122と、第2活性層122上に配置される第2p側半導体層123と、を備えている。そして、第1障壁層113bは、最も第1n側半導体層112側に位置する第1層113b1と、最も第1p側半導体層114側に位置する第2層113b2と、第1層113b1と第2層113b2との間に位置する7層の第3層113b3とを有している。第2障壁層122bは、最も第2n側半導体層121側に位置する第4層122b4と、最も第2p側半導体層123側に位置する第5層122b5と、第4層122b4と第5層122b5との間に位置する7層の第6層122b6とを有している。
【0117】
実証試験3の参考例1~2、比較例4~6の窒化物半導体発光素子において、上記実証試験3の窒化物半導体発光素子の基本構造のうち複数の第3層113b3の構造と複数の第6層122b6の構造とをそれぞれ変更している。まず、参考例1~2における窒化物半導体発光素子における第1障壁層113bの構造と第2障壁層122bの構造とを詳述する。
【0118】
・参考例1
参考例1の窒化物半導体発光素子において、第1層113b1の膜厚は、5.1nm、第2層113b2の膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。7層の第3層113b3の各膜厚は、3.5nmである。
【0119】
第4層122b4の膜厚は、5.1nm、第5層122b5の膜厚は、4.0nm、第6層122b6の膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。
【0120】
・参考例2
参考例2の窒化物半導体発光素子において、第1層113b1の膜厚は、5.1nm、第2層113b2の膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。7層の第3層113b3の各膜厚は、3.0nmである。
【0121】
第4層122b4の膜厚は、5.1nm、第5層122b5の膜厚は、4.0nm、第6層122b6の膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。
【0122】
次に、比較例4~6の窒化物半導体発光素子における第1障壁層113bの構造と第2障壁層122bの構造とを詳述する。
【0123】
・比較例4
第1層113b1の膜厚は、5.1nm、第2層113b2の膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。7層の第3層113b3の各膜厚は、4.0nmである。
【0124】
第4層122b4の膜厚は、5.1nm、第5層122b5の膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。7層の第6層122b6の各膜厚は、4.0nmである。
【0125】
・比較例5
第1層113b1の膜厚は、5.1nm、第2層113b2の膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。7層の第3層113b3の各膜厚は、4.0nmである。
【0126】
第4層122b4の膜厚は、4.0nm、第5層122b5の膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。7層の第6層122b6の各膜厚は、3.5nmである。
【0127】
・比較例6
第1層113b1の膜厚は、5.1nm、第2層113b2の膜厚は、4.0nmである。複数の第1井戸層113aのうち最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113a以外の第1井戸層113aの膜厚は、3.4nmである。最も第1p側半導体層114側の第1井戸層113aの膜厚は、3.8nmである。7層の第3層113b3の各膜厚は、4.0nmである。
【0128】
第4層122b4の膜厚は、4.0nm、第5層122b5の膜厚は、4.0nmである。複数の第2井戸層122aのうち最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122a以外の第2井戸層122aの膜厚は、3.4nmである。最も第2p側半導体層123側の第2井戸層122aの膜厚は、3.8nmである。7層の第6層122b6の各膜厚は、3.0nmである。
【0129】
上記参考例1,2および比較例4~6の窒化物半導体発光素子に対する発光出力Poおよび順方向電圧Vfの評価結果を図7に示す。なお、発光出力Poおよび順方向電圧Vfの値は、窒化物半導体発光素子に120mAの電流を流したときの値である。
【0130】
図7によれば、参考例1,2の窒化物半導体発光素子のように、第1発光部110の第3層113b3の膜厚を第2発光部120の第6層122b6の膜厚よりも薄くすることで、比較例4~6の窒化物半導体発光素子の順方向電圧Vfと同等程度としつつ、より高い発光出力Poが得られた。また、比較例4~6の結果から、第2発光部120の第6層122b6の膜厚のみを第1発光部110の第3層113b3の膜厚よりも薄くすると、発光出力Poが低下する傾向があることが確認された。
【0131】
なお、今回開示した実施態様は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施態様のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本開示の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0132】
本開示は、以下の実施形態を含む。
[項1]
第1n側半導体層と、
前記第1n側半導体層上に配置され、交互に配置された第1障壁層と第1井戸層とを有する第1活性層と、
前記第1活性層上に配置される第1p側半導体層と、
前記第1p側半導体層上に配置され、前記第1p側半導体層に接する第2n側半導体層と、
前記第2n側半導体層上に配置される第2活性層と、
前記第2活性層上に配置される第2p側半導体層と、を備え、
前記第1障壁層は、最も前記第1n側半導体層側に位置する第1層と、最も前記第1p側半導体層側に位置する第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置する複数の第3層とを有し、
前記複数の第3層は、1層以上の前記第3層を含む第1群と、前記第1群よりも第1p側半導体層側に位置する1層以上の前記第3層を含む第2群とを有し、
前記第2群の第3層の膜厚は、前記第1群の第3層の膜厚よりも薄い、
窒化物半導体発光素子。
[項2]
前記第1群に含まれる前記第3層の層数は、s(sは自然数とする)であり、
前記第2群に含まれる前記第3層の層数は、t(tは自然数とする)であり、
前記複数の第3層において、s<tとなる、[項1]に記載の窒化物半導体発光素子。
[項3]
前記第1群の第3層の膜厚は、前記第1井戸層の膜厚よりも厚く、
前記第2群の第3層の膜厚は、前記第1井戸層の膜厚よりも薄い、[項2]に記載の窒化物半導体発光素子。
[項4]
前記第2活性層は、交互に配置された第2障壁層と第2井戸層とを有し、
前記第2障壁層は、最も前記第2n側半導体層側に位置する第4層と、最も前記第2p側半導体層側に位置する第5層と、前記第4層と前記第5層との間に位置する複数の第6層とを有し、
前記複数の第6層は、1層以上の前記第6層を含む第3群と、前記第3群よりも前記第2p側半導体層側に位置する1層以上の前記第6層を含む第4群とを有し、
前記第4群の第6層の膜厚は、前記第3群の第6層の膜厚よりも薄い、[項1]~[項3]のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
[項5]
前記第3群に含まれる前記第6層の層数は、u(uは自然数とする)であり、
前記第4群に含まれる前記第6層の層数は、v(vは自然数とする)であり、
前記複数の第6層において、u<vとなる、[項4]に記載の窒化物半導体発光素子。
[項6]
前記第3群の第6層の膜厚は、前記第2井戸層の膜厚よりも厚く、
前記第4群の第6層の膜厚は、前記第2井戸層の膜厚よりも薄い、[項4]または[項5]に記載の窒化物半導体発光素子。
[項7]
前記第3層の層数は、前記第6層の層数と同じであり、
前記第2群と前記第4群とにおいて、t>vとなる、[項5]または[項6]に記載の窒化物半導体発光素子。
【符号の説明】
【0133】
10 窒化物半導体発光素子
11 基板
12 半導体構造体
13 n側電極
14 p側電極
110 第1発光部
111 下地層
112 第1n側半導体層
112s1 第1面
112s2 第2面
112s3 第3面
113 第1活性層
113a 第1井戸層
113b 第1障壁層
113b1 第1層
113b2 第2層
113b3 第3層
113bs 第1群
113bt 第2群
114 第1p側半導体層
120 第2発光部
121 第2n側半導体層
122 第2活性層
122a 第2井戸層
122b 第2障壁層
122b4 第4層
122b5 第5層
122b6 第6層
122bu 第3群
122bv 第4群
123 第2p側半導体層
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7