(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140584
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】原料チャージ補助具
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20241003BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C30B29/06 502A
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051776
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 修三
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF05
4G077EG30
4G077PB09
4G077PB11
(57)【要約】
【課題】適切な粒径を持つシリコン原料のチャージ管内へのチャージを容易にし、微粉のチャージを極力阻止することが可能な原料チャージ補助具を提供する。
【解決手段】本発明による原料チャージ補助具1は、単結晶引き上げ装置内に粒状のシリコン原料をリチャージ又は追加チャージするためのチャージ管に対して着脱自在であり、チャージ管内にシリコン原料をチャージするための道具であって、石英製の略板状の部材からなり、シリコン原料の流路を構成するスライダー10を備えている。スライダー10の先端部にはチャージ管の開口内に挿入される管状の差込部13が設けられ、スライダー10には表面から背面まで貫通する複数の貫通部が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶引き上げ装置内に粒状のシリコン原料をリチャージ又は追加チャージするためのチャージ管に対して着脱自在であり、前記チャージ管内に前記シリコン原料をチャージする原料チャージ補助具であって、
石英製の略板状の部材からなり、前記シリコン原料の流路を構成するスライダーを備え、
前記スライダーの先端部には前記チャージ管の開口内に挿入される管状の差込部が設けられ、前記スライダーには表面から背面まで貫通する複数の貫通部が設けられていることを特徴とする原料チャージ補助具。
【請求項2】
前記貫通部はスリットである、請求項1に記載の原料チャージ補助具。
【請求項3】
前記スリットの幅が3~10mmである、請求項2に記載の原料チャージ補助具。
【請求項4】
前記貫通部は丸穴である、請求項1に記載の原料チャージ補助具。
【請求項5】
前記丸穴の直径が3~10mmである、請求項4に記載の原料チャージ補助具。
【請求項6】
前記スライダーは、
湾曲面を有する細長い略板状の部材からなるメインガイド部と、
前記メインガイド部の幅方向の一方の端部に設けられ、前記メインガイド部に向かって下りの傾斜面を有する第1ウィング部と、
前記メインガイド部の幅方向の他方の端部に設けられ、前記メインガイド部に向かって下りの傾斜面を有する第2ウィング部とを備え、
前記貫通部は前記メインガイド部、前記第1ウィング部及び前記第2ウィング部にそれぞれ設けられている、請求項1に記載の原料チャージ補助具。
【請求項7】
前記スライダーの背面側に着脱自在に設けられ、前記貫通部から落下した原料粉の受け皿となるバックプレートをさらに備える、請求項1に記載の原料チャージ補助具。
【請求項8】
前記バックプレートには排気口が設けられている、請求項7に記載の原料チャージ補助具。
【請求項9】
前記スライダーの背面には取っ手が設けられており、
前記バックプレートには前記取っ手を貫通させる開口が設けられている、請求項7に記載の原料チャージ補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)によるシリコン単結晶の製造で用いられる、チャージ管内に多結晶シリコン原料をチャージする際に用いられる原料チャージ補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CZ法によるシリコン単結晶の製造方法としてマルチプリング法が知られている。マルチプリング法では、シリコン単結晶を引き上げた後、同一の石英ルツボ内にシリコン原料を追加供給(リチャージ)して融解し、得られたシリコン融液からシリコン単結晶の引き上げを行い、このような原料供給工程と単結晶引き上げ工程を繰り返すことにより、一つの石英ルツボから複数本のシリコン単結晶を製造する。マルチプリング法によれば、シリコン単結晶一本当たりの石英ルツボの原価コストを低減することが可能である。またチャンバーを解体して石英ルツボを交換する頻度を低減できるため、操業効率を向上させることが可能である。
【0003】
シリコン原料の追加供給は、一つの石英ルツボから一本のシリコン単結晶だけを製造するいわゆるシングルプリング法においても行われる場合がある。石英ルツボ内に初期チャージされた固体のシリコン原料を融解すると体積が減少して空き容量が発生するが、この石英ルツボ内にシリコン原料を追加チャージし、多量のシリコン融液から単結晶を引き上げることにより、長尺なシリコン単結晶を育成することができ、これにより操業効率を向上させることができる。
【0004】
上述したマルチプリング法においてシリコン原料をマルチ投入するリチャージ工程や石英ルツボ内の原料充填率を上げるための追加チャージ工程では、チャージ管と呼ばれる特別な原料供給装置が用いられる(特許文献1、2参照)。チャージ管は石英製の円筒状の容器であり、チャージ管の下端に設けられた底蓋を開いてチャージ管内のシリコン原料を落下させることによりシリコン原料を単結晶引き上げ装置内の石英ルツボ内にチャージする。
【0005】
チャージ管を用いて単結晶引き上げ装置内にシリコン原料をリチャージ又は追加チャージするためには、まずチャージ管内にシリコン原料をチャージしなければならない。チャージ管内にシリコン原料をチャージする際に治具として、例えば特許文献3には、チャージ管の開口に取り付けられ、シリコン原料をチャージ管内に流し込むようにガイドする原料チャージ補助具が記載されている。この原料チャージ補助具は、少なくともシリコン原料と接触する部分が石英からなり、シリコン原料の流路を構成するメインガイド部を備えている。原料チャージ補助具を使用することにより、シリコン原料をチャージする際にチャージ管にシリコン原料がこぼれにくく、またチャージ管に付属の部品がシリコン原料のチャージに対する妨げとならず、シリコン原料をチャージしやすく、さらにはシリコン原料の汚染を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-089294号公報
【特許文献2】特開2008-088002号公報
【特許文献3】特開2017-202947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
リチャージ又は追加チャージに用いられるシリコン原料は、平均粒径が40~50mm程度のチャンクと呼ばれる不定形の塊粒状シリコンであり、多量のシリコン粒をチャージ管内に流し込むことにより、チャージ管内へのシリコン原料のチャージが行われる。
【0008】
塊粒状シリコンは所定サイズごとに袋詰めされた状態で納品されるが、塊粒状シリコンは多結晶シリコンロッドを破砕することにより製造されるため、鋭利な角部を有する形状を呈しており、袋詰めされた塊粒状シリコン原料を輸送中に塊粒状シリコン同士が衝突したり擦れたりして袋内に微粉が不可避的に発生する。また、特許文献3で示されるようなチャージ補助具上に塊粒状シリコンを落下投入させた際にも、落下衝撃により塊粒状シリコンが割れてしまい、原料微粉が発生する。そのため、シリコン原料をそのままチャージ管内にチャージすると、シリコンの微粉もチャージ管内にチャージされてしまうことになる。
本発明者の実験によれば、チャージ管内のシリコン原料が多量の微粉を含む場合、チャージ管内のシリコン原料を石英ルツボの上方から落下させて石英ルツボ内にリチャージ又は追加チャージする際、微粉が空中に舞い上がってしまい、石英ルツボよりも上方に位置する炉内構造物(特に熱遮蔽体の内面)に付着することが確認された。炉内構造物に付着したシリコン微粉は、その後、単結晶育成中にシリコン融液表面上に落下し、シリコン微粉がシリコン融液に溶け込む前に固液界面に取り込まれた場合、シリコン単結晶の有転位化、或いは双晶形成の原因となる。
【0009】
このため、チャージ管内に微粉が取り込まれないように、シリコン原料中から微粉を除去する必要があるが、人の手作業でシリコン微粉(~数mm)のみを除去することは困難である。
【0010】
本発明は、追加チャージやリチャージを行う際、シリコン微粉の供給が単結晶への有転位化の原因となるという知見に基づき完成された発明であり、本発明の目的は、適切な粒径を持つシリコン原料のチャージ管内へのチャージを容易にし、微粉のチャージを極力阻止することが可能な原料チャージ補助具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による原料チャージ補助具は、単結晶引き上げ装置内に粒状のシリコン原料をリチャージ又は追加チャージするためのチャージ管に対して着脱自在であり、前記チャージ管内に前記シリコン原料をチャージする原料チャージ補助具であって、石英製の略板状の部材からなり、前記シリコン原料の流路を構成するスライダーを備え、前記スライダーの先端部には前記チャージ管の開口内に挿入される管状の差込部が設けられ、前記スライダーには表面から背面まで貫通する複数の貫通部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明による原料チャージ補助具は、チャージ管の開口に取り付けられてシリコン原料のチャージ管内への流れ込みをガイドするので、チャージ管の間口を広げてシリコン原料を容易にチャージすることができる。また本発明によれば、適切な粒径を有するシリコン粒だけをチャージ管内に送り込むことができ、チャージ管内にシリコン原料を送り込む途中でシリコン原料に含まれる微粉を振い落すことができる。したがって、微粉を原因とするシリコン単結晶の有転位化や双晶化を防止することができる。
【0013】
本発明において、前記貫通部は、前記シリコン原料を流し込む方向と平行なスリットであってもよく、丸穴であってもよい。この場合、前記スリットの幅又は前記丸穴の直径は3~10mmであることが好ましい。このように、貫通部を適切な形状及びサイズとすることにより、シリコン原料に含まれる微粉を排除して所望の粒径を持つシリコン粒だけチャージ管内に送り込むことができる。
【0014】
本発明において、前記スライダーは、湾曲面を有する細長い略板状の部材からなるメインガイド部と、前記メインガイド部の幅方向の一方の端部に設けられ、前記メインガイド部に向かって下りの傾斜面を有する第1ウィング部と、前記メインガイド部の幅方向の他方の端部に設けられ、前記メインガイド部に向かって下りの傾斜面を有する第2ウィング部とを備え、前記貫通部は前記メインガイド部、前記第1ウィング部及び前記第2ウィング部にそれぞれ設けられていることが好ましい。このように、スライダーの幅を広げることでシリコン原料の受け入れを容易にすることができる。
【0015】
本発明による原料チャージ補助具は、前記スライダーの背面側に着脱自在に設けられ、前記貫通部から落下した原料粉の受け皿となるバックプレートをさらに備えることが好ましい。この場合において、前記バックプレートは、前記メインガイド部の背面を覆うセンターカバー部と、前記第1ウィング部の背面を覆う第1ウィングカバー部と、前記第2ウィング部の背面を覆う第2ウィングカバー部とを備えることが好ましい。また前記バックプレートは、耐久性の観点から、テフロン(登録商標)、塩化ビニル樹脂、石英などで構成することが好ましい。これにより、シリコン原料の微粉を確実に回収することができ、微粉が作業室内に散乱することによる室内環境の悪化を防止することができる。
【0016】
前記バックプレートには排気口が設けられていることが好ましく、前記排気口は前記センターカバー部の長手方向の中央部よりも先端部寄りに設けられていることが好ましい。排気口にバキューム装置を接続して吸引することにより、バックプレート上の微粉を回収することができる。またスライダー上の微粉の貫通部への落下を促進させることができる。
【0017】
前記スライダーの前記背面には取っ手が設けられており、前記バックプレートには前記取っ手を貫通させる開口が設けられていることが好ましい。これにより、スライダーへのバックプレートの位置合わせを容易にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、適切な粒径を持つシリコン原料のチャージ管内へのチャージを容易にし、微粉のチャージを極力阻止することが可能な原料チャージ補助具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(a)~(d)は、単結晶引き上げ装置内にシリコン原料をリチャージ又は追加チャージする際に用いられるチャージ管の構成を示す図であって、(a)は底蓋が閉じられ且つシリコン原料が収容されていない状態、(b)は底蓋が閉じられ且つシリコン原料が収容された状態、(c)は底蓋が開かれ且つシリコン原料が収容されていない状態、(d)は底蓋が開かれて内部のシリコン原料が放出されている状態をそれぞれ示している。
【
図2】
図2は、チャージ管の上端側の開口の構成を示す略平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態による原料チャージ補助具の構成を示す略斜視図であって、特に上側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態による原料チャージ補助具の構成を示す略斜視図であって、特に下側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、スライダーを単独で示す略斜視図である。
【
図6】
図6は、バックプレートを単独で示す略斜視図である。
【
図7】
図7は、原料チャージ補助具を用いたチャージ管へのシリコン原料のチャージ方法について説明するための略側面図である。
【
図8】
図8は、シリコン原料のリチャージ又は追加チャージ工程を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施の形態による原料チャージ補助具の構成を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために、便宜上、要部を強調して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じとは限らない。
【0021】
始めに、単結晶引き上げ装置内にシリコン原料をリチャージ又は追加チャージする際に用いるチャージ管について説明する。
【0022】
図1(a)~(d)は、本発明の実施の形態によるチャージ管の構成を示す略断面図であって、(a)は底蓋が閉じられ且つシリコン原料が収容されていない状態、(b)は底蓋が閉じられ且つシリコン原料が収容された状態、(c)は底蓋が開かれ且つシリコン原料が収容されてない状態、(d)は底蓋が開かれて内部のシリコン原料が放出された状態をそれぞれ示している。
【0023】
図1(a)~(d)に示すように、このチャージ管100は、粒状のシリコン原料Sを収容するチャージ管本体101と、チャージ管本体101の上端の開口101aに設けられた金属製のフランジ部材102と、チャージ管本体101の下端の開口101bを開閉する底蓋103と、底蓋103を支持するシャフト104と、シャフト104が挿入されたガイド管105とを備えている。
【0024】
チャージ管本体101は、石英ガラス製の円筒状の部材であり、その直径は引き上げられるシリコン単結晶の直径と同等かそれよりも少し小さく設定される。チャージ管本体101の上端の開口101aを部分的に閉止するフランジ部材102の中央部には貫通孔が設けられており、シャフト104及びガイド管105は貫通孔を通ってチャージ管本体101内に挿入され、チャージ管本体101内を通って底蓋103の上端まで達している。
【0025】
底蓋103は断熱性を有する円錐形状の部材であり、底蓋103を開いたときにチャージ管本体101内の原料をスムーズに転落させるための傾斜面を有している。
【0026】
シャフト104は、底蓋103を昇降させるための部材であり、ガイド管105を通過して垂直方向に延びて底蓋103の上端に接続されている。シャフト104の上端部はチャージ管本体101の上端の開口101aよりも上方に突出している。
【0027】
ガイド管105はシャフト104がチャージ管本体101内のシリコン原料Sと接触することを防止するために設けられている。ガイド管105はチャージ管本体101と同様に石英ガラスからなり、その下端は底蓋103の上端部に接続されており、ガイド管105は底蓋103と一体化されている。またガイド管105の上端部はフランジ部材102の中心の貫通孔を通過してフランジ部材102よりも上方に突出しており、その突出量は、底蓋103を最も低い位置まで降下させた場合でも突出状態が維持される程度とされる。
【0028】
図2は、チャージ管100の上端側の開口101aの構成を示す略平面図である。
【0029】
図2に示すように、チャージ管本体101の上端側に設けられたフランジ部材102の適所にはねじ穴102aが設けられている。またフランジ部材102はチャージ管100の中心に向って延びる支持片102bを有しており、支持片102bの先端にはシャフト104及びガイド管105が貫通する貫通孔102cが設けられている。これにより、シャフト104及びガイド管105はチャージ管100の中心軸上に配置される。このように、原料チャージ口であるチャージ管100の開口101aは完全に開放されておらず、チャージ管100に付属する部品によって部分的に閉止されているので、シリコン原料Sをチャージしにくい構造となっている。
【0030】
このようなチャージ管100は、単結晶引き上げ装置の引き上げ軸(ワイヤー)の先端に連結されて装置内に設置される。詳細には、チャージ管100のシャフト104の上端がワイヤーの先端に接続され、これによりチャージ管100は単結晶引き上げ装置内の石英ルツボの上方に配置される。その後、ワイヤーを巻き下げてチャージ管100を降下させた後、チャージ管本体101を相対的に持ち上げて底蓋103を開くことによりシリコン原料Sを石英ルツボ内に落下させる。
【0031】
次に、このようなチャージ管100にシリコン原料Sをチャージする際に用いる原料チャージ補助具について説明する。
【0032】
図3及び
図4は、本発明の第1の実施の形態による原料チャージ補助具1の構成を示す略斜視図であって、
図3は上側から見た斜視図、
図4は下側から見た斜視図である。
【0033】
図3及び
図4に示すように、この原料チャージ補助具1は、チャージ管100に対して着脱自在な部材であって、シリコン原料Sの受け皿になると共に当該シリコン原料Sをチャージ管100内に流し込む流路を構成するスライダー10と、スライダー10の背面側に設けられたバックプレート20とを備えている。
【0034】
図5は、スライダー10を単独で示す略斜視図である。
【0035】
図3、
図4及び
図5に示すように、スライダー10は、シリコン原料Sの流路を構成する石英ガラス製の略板状の部材であって、幅方向中央に設けられたシリコン原料Sの流路を構成するメインガイド部11と、メインガイド部11の後方から見て左右にそれぞれ設けられたウィング部12と、メインガイド部11の先端部であってチャージ管100の開口101aに差し込まれる差込部13と、メインガイド部11の背面に設けられた取っ手14とを有している。本実施形態による原料チャージ補助具1は、スライダー10の全体が高純度石英製の部材からなるので、シリコン原料Sの汚染を防止することができる。
【0036】
メインガイド部11は図中Y方向に細長い板状の部材であって、長手方向と直交する幅方向(X方向)の両端から中央に向かって高さが低くなる湾曲面を有している。湾曲面の曲率はチャージ管100の曲率と同程度であることが好ましい。メインガイド部11の長さは、チャージ管100のシャフト104の上端突出部分よりも十分に長いことが好ましい。
【0037】
ウィング部12は、メインガイド部11だけでは十分に広いとは言えないシリコン原料Sの受け皿の範囲(チャージ範囲)を広げると共に、チャージ管100の開口101aから突出するシャフト104を避けながらシリコン原料Sをチャージするために設けられている。ウィング部12は、シリコン原料が流れる方向(Y方向)に向かってメインガイド部11の左側の端部に設けられた左ウィング部12L(第1ウィング部)と、メインガイド部11の右側の端部に設けられた右ウィング部12R(第2ウィング部)とで構成され、幅方向の外側から中央部(メインガイド部11)に向かって下りの傾斜面となっている。よって、左ウィング部12L及び右ウィング部12R上に落下したシリコン原料Sは傾斜面を下ってメインガイド部11に寄せ集められる。
【0038】
本実施形態において、左ウィング部12Lの形状は右ウィング部12Rと異なり、左ウィング部12Lのサイズは右ウィング部12Rよりも大きい。これは、シリコン原料Sのチャージ方向としてよく利用される左ウィング部12Lのサイズだけを大きくし、原料チャージ補助具1が必要以上に大型化・大重量化することを防止したものである。
【0039】
ウィング部12は、大型のチャージ管100にシリコン原料Sをチャージする場合に特に有利である。大型のチャージ管100には多量のシリコン原料Sをチャージする必要があり、そのためには原料チャージ補助具1も大きくする必要があり、原料チャージ補助具1の取り扱いが大変となるからである。そのため、直径300mm以上のシリコン単結晶を引き上げる単結晶引き上げ装置内にシリコン原料Sを追加供給する際に用いられるチャージ管100にシリコン原料Sをチャージする場合、ウィング部12が設けられた原料チャージ補助具1を用いることが好ましい。
【0040】
差込部13は、天井面13aが設けられることによって全周が取り囲まれた通路をなしており、差込部13の先端の開口13bがシリコン原料Sの排出口となっている。
図4(a)及び(b)に示すように、メインガイド部11の先端部の背面にはストッパー16が設けられており、ストッパー16がチャージ管100のリム上端のフランジ部材102に当接することにより差込部13のそれ以上奥への差し込みが制限される。
【0041】
メインガイド部11の背面には取っ手14が設けられている。大型の石英ガラス製品は重量物で割れやすく、しかもウィング部12が付いた特殊な形状のものはその取り扱いが非常に難しい。しかし、原料チャージ補助具1に取っ手14を設けることにより、取り扱いを容易にして安全性を高めることができる。取っ手14の設置位置はどこでもよく、原料チャージ補助具1を取り扱いやすい位置に設けることができる。
【0042】
本実施形態において、メインガイド部11、左ウィング部12L及び右ウィング部12Rには複数のスリット15が設けられている。スリット15はメインガイド部11、左ウィング部12L及び右ウィング部12Rの上面(表面)から下面(背面)まで貫通する平面視で線状の貫通部であり、スライダー10の上面を転がるシリコン原料Sに含まれる微細な原料粉がスリット15を通って落下するように構成されている。
【0043】
スリット15の幅は3~10mm程度であることが好ましい。スリット15の幅が小さすぎるとシリコン微粉を除去できず、また大きすぎると使用可能なシリコン粒まで除去してしまうためである。通常、シリコン粒のサイズは30~60mmであり、小さいものでも20mm前後である。よってスリット15の幅を3~10mmとすれば、原料として適したサイズのシリコン粒だけをチャージ管100内に送り込むことができ、スリット15の幅未満のシリコン微粉を除去することができる。
【0044】
スリット15の長さ及びピッチはシリコン微粉を除去できる限りにおいて特に限定されず、メインガイド部11及びウィング部12の強度と微粉除去能力とのバランスを考慮して適宜決定される。スリット15はシリコン原料Sの送り方向と平行に形成されることが好ましいが、送り方向と直交する方向に形成されてもよく、送り方向に対して斜めに形成されていてもよい。
【0045】
スライダー10の背面側には、スリット15から落下した微粉の受け皿となるバックプレート20が取り付けられている。バックプレート20は、耐久性の観点から、テフロン(登録商標)、塩化ビニル樹脂、石英などで構成することが好ましい。バックプレート20はスライダー10に対して着脱自在に構成されており、スライダー10の背面側から嵌め合わせることで簡単に取り付けることができる。スライダー10の背面とバックプレート20の上面との間には数cm程度の隙間があり、微粉を閉じ込める閉空間が形成されている。
【0046】
図6は、バックプレート20を単独で示す略斜視図である。
【0047】
図3、
図4及び
図6に示すように、バックプレート20は、メインガイド部11の背面を覆うセンターカバー部21と、ウィング部12の背面を覆うウィングカバー部22と、ウィングカバー部22の外周部に設けられた壁部23とで構成されている。ウィングカバー部22は、センターカバー部21の左側に設けられた左ウィングカバー部22Lと、センターカバー部21の右側に設けられた右ウィングカバー部22Rとで構成されている。
【0048】
左ウィングカバー部22Lは平面視でスライダー10の左ウィング部12Lと略同一形状を有し、左ウィング部12Lの背面全体を覆っている。右ウィングカバー部22Rは平面視でスライダー10の右ウィング部12Rと略同一形状を有し、右ウィング部12Rの背面全体を覆っている。
【0049】
バックプレート20のセンターカバー部21は平面視でメインガイド部11と略同一形状を有し、メインガイド部11の背面全体を覆っている。ただし、バックプレート20のセンターカバー部21には、メインガイド部と組み合わせたときにスライダー10の取っ手14との干渉を防止するための開口部20aが設けられている。これにより、取っ手14をバックプレート20よりも下方に突出させることができる。
【0050】
本実施形態において、バックプレート20の先端寄りには、微粉を回収するための排気口20bが設けられている。排気口20bは、センターカバー部21の長手方向の中央部よりも先端寄りに設けられていることが好ましい。排気口20bにバキューム装置を接続して吸引することにより、スライダー10上の微粉の落下を促進させることができ、スライダー10の背面とバックプレート20の上面との間の空間に存在する微粉を吸い取って回収することができる。
【0051】
図7は、原料チャージ補助具1を用いたチャージ管100へのシリコン原料のチャージ方法について説明するための略側面図である。
【0052】
図7に示すように、チャージ管100へのシリコン原料Sのチャージでは、まず上端から下端に向かって下りの傾斜となるようにチャージ管100をキャリアケース110ごと傾けて設置する。チャージ管100の傾斜角度θは30~60度であることが好ましい。チャージ管100を直立させた状態でシリコン原料Sをチャージすると落下時の衝撃によりチャージ管100が割れるおそれがあるが、このようにチャージ管100を傾けた場合にはチャージ管100の破損を防止することができる。
【0053】
次に、取っ手14を持ちながらチャージ管100の上端の開口101aに原料チャージ補助具1をセットする。原料チャージ補助具1の差込部13はチャージ管100の開口101aに差し込まれ、ストッパー16がチャージ管100のフランジ部材102の端面に当接した状態となる。
【0054】
次に、原料チャージ補助具1のバックプレート20の排気口20bにバキューム装置200の吸込口201をセットする。このようにすることで、シリコン原料Sのチャージ中にバックプレート20上に落下したシリコン微粉Sbを吸い取ることができる。
【0055】
次に、チャージ管100の開口101aよりも上方に突出するシャフト104に樹脂製のカバー107を被せる。このようにすることで、金属製のシャフト104との接触によるシリコン原料Sの汚染を防止することができる。チャージ管100内においてシャフト104は石英製のガイド管105に覆われているので、チャージ管100内のシリコン原料Sが金属製のシャフト104と接触することはない。なおチャージ管100のシャフト104にカバー107を被せた後に原料チャージ補助具1をチャージ管100にセットしてもよい。
【0056】
次に、ウィング部12側からシリコン原料Sをチャージする。適正サイズのシリコン粒Saはウィング部12からメインガイド部11に流れ、さらにメインガイド部11を流れ落ちてチャージ管100内にチャージされる。チャージ管100の開口101aからはチャージ管100の底蓋103に接続されたシャフト104が突出しているため、シリコン原料Sを開口101aに直接流し込みにくいが、本実施形態では開口101aの外側に広がった原料チャージ補助具1のメインガイド部11及びウィング部12によってシリコン原料Sを集めて開口101a内に流し込むので、シリコン原料Sをチャージ管100内に容易にチャージすることができる。
【0057】
シリコン原料Sのチャージ中は、バキューム装置200を動作させて、スライダー10上のシリコン微粉Sbの落下を促進させると共に、バックプレート20上に落下したシリコン微粉Sbを回収する。このようにすることで、シリコン微粉Sbがチャージ管100内に流れ込むことを防止することができ、シリコン微粉Sbを効率よく回収することができる。さらに、シリコン微粉Sbの飛散による作業室内の清浄度の悪化を防止することができる。
【0058】
その後、チャージ管100から原料チャージ補助具1を取り外してシリコン原料Sをチャージ管100内にチャージすることで一連の作業工程が完了する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によるチャージ管100へのシリコン原料Sのチャージ方法は、チャージ管100を斜めに傾けた状態でシリコン原料Sをチャージするのでチャージ管100の割れを防止することができる。またチャージ管100を斜めに傾けた状態にすると開口101aからシリコン原料Sが入れにくくなるが、本実施形態による原料チャージ補助具1を用いることでチャージ管100内にシリコン原料Sを入れやすくすることができ、シリコン原料Sがこぼれ落ちることを防止することができる。また、チャージ管100の開口101aに取り付けられてシリコン原料Sをチャージ管100内に流し込むようにガイドするので、チャージ管100の間口を広げて原料をチャージしやすくすることができる。さらに、原料チャージ補助具1のスライダー10にはスリット15が設けられており、シリコン原料Sはチャージ管100に送り込まれる途中でスリット15から落下するので、チャージ管100内へのシリコン微粉のチャージを防止することができる。
【0060】
図8は、シリコン原料Sのリチャージ又は追加チャージ工程を説明するための模式図である。
【0061】
図8に示すように、シリコン原料Sがチャージされたチャージ管100は、単結晶引き上げ装置300内の石英ルツボ301の上方に設置され、シリコン原料Sのリチャージ又は追加チャージに使用される。チャージ管100内のシリコン原料Sを落下させて石英ルツボ301内にシリコン原料Sをリチャージ又は追加チャージする際、シリコン原料Sに多量のシリコン微粉Sbが含まれていると、シリコン原料Sの落下の途中でシリコン微粉Sbが乱気流に乗って舞い上がり、石英ルツボ301の上方に設置された熱遮蔽体302などの炉内構造物に付着するおそれがある。このような微粉が付着面から離れて再び舞い上がり、育成途中のシリコン単結晶とシリコン融液との固液界面に取り込まれた場合には、シリコン単結晶の有転位化又は結晶欠陥の発生の原因となる。
【0062】
しかしながら、本実施形態においては、原料チャージ補助具1を用いてチャージ管100内にシリコン原料Sをチャージする際、シリコン原料Sから微粉をできるだけ除去するので、チャージ管100内の微粉をできるだけ少なくすることができ、単結晶引き上げ装置300内に微粉が供給されることによるシリコン単結晶の有転位化又は結晶欠陥の発生確率を低減することができる。
【0063】
図9は、本発明の第2の実施の形態による原料チャージ補助具1の構成を示す略斜視図である。
図9に示すように、この原料チャージ補助具1の特徴は、スライダー10にスリット15ではなく多数の丸穴17が形成されている点にある。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。丸穴17の直径は3~10mmであることが好ましい。これは、丸穴17の直径が小さすぎると微粉を除去できず、また大きすぎると使用可能なシリコン粒まで除去してしまうためである。このように、本実施形態による原料チャージ補助具は、スライダー10に多数の丸穴17が形成されているので、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態による原料チャージ補助具1は、スライダー10にスリット15又は丸穴17からなる複数の貫通部を設け、シリコン原料Sに含まれる微粉を貫通部から落下させて除去し、ある程度の大きさを持ったシリコン粒のみをチャージ管100に送り込むので、新たな選別工程を追加することなく、従来のチャージ作業のみでシリコン微粉を除去することができる。
【0065】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明の範囲に包含されるものであることは言うまでもない。
【0066】
例えば、上記実施形態において、原料チャージ補助具1は、スライダー10とバックプレート20との組み合わせからなるが、バックプレート20を省略してスライダー10のみで構成することも可能である。
【0067】
また上記実施形態においては、スライダー10がメインガイド部11とウィング部12とで構成されているが、ウィング部12の片方又は両方を省略した構成であってもよい。すなわち、スライダー10には種々の形状を採用することができ、バックプレート20にもスライダー10に合わせた種々の形状を適用することができる。
【0068】
また上記第1の実施の形態においてはスライダー10に貫通部としてスリット15のみを形成し、第2の実施の形態では貫通部として丸穴17のみを形成したが、スリット15と丸穴17を適宜組み合わせて用いることも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 原料チャージ補助具
10 スライダー
11 メインガイド部
12 ウィング部
12L 左ウィング部(第1ウィング部)
12R 右ウィング部(第2ウィング部)
13 差込部
13a 天井面
13b 開口
14 取っ手
15 スリット(貫通部)
16 ストッパー
17 丸穴(貫通部)
20 バックプレート
20a 開口部
20b 排気口
21 センターカバー部
22 ウィングカバー部
22L 左ウィングカバー部
22R 右ウィングカバー部
23 壁部
100 チャージ管
101 チャージ管本体
101a チャージ管本体の上端側の開口
101b チャージ管本体の下端側の開口
102 フランジ部材
102a ねじ穴
102b 支持片
102c 貫通孔
103 底蓋
104 シャフト
105 ガイド管
107 樹脂製のカバー
110 キャリアケース
200 バキューム装置
201 吸込口
300 単結晶引き上げ装置
301 石英ルツボ
302 熱遮蔽体
S シリコン原料
Sa 適正サイズのシリコン粒
Sb シリコン微粉