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特開2024-140598非破壊検査システム、非破壊検査方法、および非破壊検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140598
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】非破壊検査システム、非破壊検査方法、および非破壊検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20241003BHJP
   G01R 33/07 20060101ALI20241003BHJP
   G01R 33/10 20060101ALI20241003BHJP
   G01N 27/83 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/07
G01R33/10
G01R33/02 K
G01N27/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051801
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 誠
【テーマコード(参考)】
2G017
2G053
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AA08
2G017AC07
2G017AD53
2G017AD63
2G017BA15
2G017BA18
2G053AA11
2G053AB22
2G053BA03
2G053BA13
2G053BB11
2G053BC20
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB24
2G053CB29
2G053DB03
2G053DB20
(57)【要約】
【解決手段】各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイと、磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、計測データによって示される磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する信号空間分離部と、測定対象磁場の情報を出力する出力部とを備える非破壊検査システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの前記磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイと、
前記磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、
各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、前記計測データによって示される前記磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する信号空間分離部と、
前記測定対象磁場の情報を出力する出力部とを備える
非破壊検査システム。
【請求項2】
前記抽出された前記測定対象磁場から、前記測定対象の破断を検出する検出部を更に備え、
前記出力部は、前記測定対象の破断情報を、前記測定対象磁場の情報として出力する
請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記測定対象磁場の磁気イメージに基づいて前記測定対象の破断を検出する
請求項2に記載の非破壊検査システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記測定対象磁場の前記磁気イメージ内で磁気ダイポールに対応する磁気分布を検出することによって、前記測定対象の破断を検出する
請求項3に記載の非破壊検査システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記測定対象磁場の前記磁気イメージ内で、前記磁気ダイポールに対応する磁気分布から前記磁気ダイポールの向きを検出することによって、前記測定対象の破断を検出する
請求項4に記載の非破壊検査システム。
【請求項6】
前記出力部は、前記測定対象磁場の磁気イメージを表示装置に表示させる表示データを、前記測定対象磁場の情報として出力する
請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項7】
前記磁気センサセルは、前記磁性体コア上に配置され、前記入力された磁場に応じた前記計測データを出力する複数のホール素子を更に含む
請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項8】
前記複数のホール素子は、それぞれ、前記磁性体コアの表面に沿って直交する2つの軸上に配置され、ホール素子の出力の加減算により前記磁場を3軸方向で検出する
請求項7に記載の非破壊検査システム。
【請求項9】
前記磁気センサアレイは、着磁された前記測定対象からの前記磁場を3軸方向で検出する
請求項1に記載の非破壊検査システム。
【請求項10】
前記信号空間分離部は、信号空間分離の計算のための座標原点を複数設定し、前記設定した各座標原点において測定対象磁場を抽出する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の非破壊検査システム。
【請求項11】
各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの前記磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する段階と、
各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、前記計測データによって示される前記磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する段階と、
前記測定対象磁場の情報を出力する段階とを備える
非破壊検査方法。
【請求項12】
コンピュータを、
各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの前記磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、
各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、前記計測データによって示される前記磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する信号空間分離部と、
前記測定対象磁場の情報を出力する出力部
として機能させるための非破壊検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査システム、非破壊検査方法、および非破壊検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「検査対象鉄筋以外の強磁性体からの磁気の影響を低減し、中でも、一般に設置数量が多く、検査対象鉄筋と略直交して設けられる交差鉄筋からの磁気の影響を顕著に低減すると共に、検査対象鉄筋が破断部を有する場合に特徴的に現れる磁束密度の変化の性質を利用することで、破断部の有無を極めて正確に検出することができる非破壊検査方法」が記載されている(段落7)。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特許第6305860号
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイと、磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、計測データによって示される磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する信号空間分離部と、測定対象磁場の情報を出力する出力部とを備える非破壊検査システムを提供する。
【0004】
上記の非破壊検査システムにおいて、抽出された測定対象磁場から、測定対象の破断を検出する検出部を更に備え、出力部は、測定対象の破断情報を、測定対象磁場の情報として出力してよい。
【0005】
上記の非破壊検査システムにおいて、検出部は、測定対象磁場の磁気イメージに基づいて測定対象の破断を検出してよい。
【0006】
上記の非破壊検査システムにおいて、検出部は、測定対象磁場の磁気イメージ内で磁気ダイポールに対応する磁気分布を検出することによって、測定対象の破断を検出してよい。
【0007】
上記の非破壊検査システムにおいて、検出部は、測定対象磁場の磁気イメージ内で、磁気ダイポールに対応する磁気分布から磁気ダイポールの向きを検出することによって、測定対象の破断を検出してよい。
【0008】
上記のいずれかの非破壊検査システムにおいて、出力部は、測定対象磁場の磁気イメージを表示装置に表示させる表示データを、測定対象磁場の情報として出力してよい。
【0009】
前上記のいずれかの非破壊検査システムにおいて、記磁気センサセルは、磁性体コア上に配置され、入力された磁場に応じた計測データを出力する複数のホール素子を更に含んでよい。
【0010】
上記の非破壊検査システムにおいて、複数のホール素子は、それぞれ、磁性体コアの表面に沿って直交する2つの軸上に配置されてよい。
【0011】
上記のいずれかの非破壊検査システムにおいて、磁気センサアレイは、着磁された測定対象からの磁場を3軸方向で検出してよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する段階と、各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、計測データによって示される磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する段階と、測定対象磁場の情報を出力する段階とを備える非破壊検査方法を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様においては、コンピュータを、各々が磁場の入力方向を変換する磁性体コアを含む磁気センサセルを複数有し、測定対象からの磁場を3軸方向で検出可能な磁気センサアレイによって計測された計測データを取得する磁場取得部と、各磁気センサセルの位置および磁気感度に基づき、計測データによって示される磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する信号空間分離部と、測定対象磁場の情報を出力する出力部として機能させるための非破壊検査プログラムを提供する。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る非破壊検査システム10の構成を示す。
図2】本実施形態に係る磁気センサユニット40の少なくとも一部の構成を示す。
図3】本実施形態に係る複数の磁気センサセル220のうちの1つの磁気センサセル220の構成例を示す。
図4】本実施形態に係る第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対がX軸方向の磁界を検出する場合の一例を示す。
図5】本実施形態に係る第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対がZ軸方向の磁界を検出する場合の一例を示す。
図6】本実施形態に係る非破壊検査システム10の少なくとも一部のブロック図を示す。
図7】本実施形態に係る情報処理装置50の信号空間分離部640が磁場の空間分布を信号分離するフローを示す。
図8】測定対象20の破断により生じる磁場を説明するための説明図である。
図9】非破壊検査システム10による測定対象20の破断検出動作のフローを示す。
図10】参考例の非破壊検査システム10において、信号空間分離を行っていない磁束密度から作成された磁気イメージの一例を示す。
図11】本実施形態の非破壊検査システム10において得られた磁束密度Bxから作成された磁気イメージの一例を示す。
図12】本実施形態の非破壊検査システム10において得られた磁束密度Byから作成された磁気イメージの一例を示す。
図13】本実施形態の非破壊検査システム10において得られた磁束密度Bzから作成された磁気イメージの一例を示す。
図14】鉄筋コンクリート30内に配置された鉄筋(主筋)および交差鉄筋からの磁場を説明するための説明図である。
図15】本実施形態の非破壊検査システム10において、鉄筋コンクリート30内に配置された交差鉄筋からの磁場の磁束密度Bxから作成した磁気イメージを示す。
図16】本実施形態の非破壊検査システム10において、鉄筋コンクリート30内に配置された交差鉄筋からの磁場の磁束密度Byから作成した磁気イメージを示す。
図17】本実施形態の非破壊検査システム10において、鉄筋コンクリート30内に配置された交差鉄筋からの磁場の磁束密度Bzから作成した磁気イメージを示す。
図18】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る非破壊検査システム10の構成を示す。非破壊検査システム10は、磁場計測により、測定対象20の非破壊検査を行う。非破壊検査システム10は、一例として、橋、ビルまたはコンクリートポールなどの鉄筋コンクリート構造物の鉄筋コンクリート30内に配置された鉄筋を測定対象20として、当該測定対象20の破断または傷等の異常部分を検出する検査のために用いられてよい。非破壊検査システム10は、磁気センサユニット40と、情報処理装置50とを備える。
【0018】
磁気センサユニット40は、情報処理装置50に有線または無線で接続され、測定対象20からの磁場をセンシングするためのコンポーネントである。磁気センサユニット40は、測定対象20である鉄筋が磁石により着磁された後に、鉄筋コンクリート30の表面に沿って作業者等により移動されながら、測定対象20からの磁場をセンシングする。
【0019】
ここで、着磁に用いる磁石は、ネオジムのような希土類金属からなる永久磁石または電磁石であってよく、作業者は、鉄筋コンクリート30の表面に沿って磁石を移動させて着磁を行ってよい。
【0020】
情報処理装置50は、磁気センサユニット40による計測データを処理して表示・印刷等により出力するためのコンポーネントである。情報処理装置50は、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ワークステーション、サーバコンピュータ、または汎用コンピュータ等のコンピュータであってよく、複数のコンピュータが接続されたコンピュータシステムであってもよい。これに代えて、情報処理装置50は、磁場計測の情報処理用に設計された専用コンピュータであってもよく、専用回線によって実現された専用ハードウェアであってもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係る磁気センサユニット40の少なくとも一部の構成を示す。磁気センサユニット40は、磁気センサアレイ210と、センサデータ収集部230とを有する。磁気センサアレイ210は、着磁された測定対象20からの磁場を3軸方向で検出可能である。磁気センサアレイ210は、磁気センサセル220を複数有し、複数の磁気センサセル220を二次元に配列して構成されてよい。本図において、磁気センサアレイ210は、X方向、およびY方向のそれぞれに複数の磁気センサセル220(例えば、X方向に8個およびY方向に8個の計64個の磁気センサセル220)が平面に沿って配置されている。
【0022】
複数の磁気センサセル220は、X軸方向に沿ってΔx、Y軸方向に沿ってΔyの間隔でそれぞれ等間隔に配列されている。磁気センサアレイ210における各磁気センサセル220の位置は、X方向の位置iおよびY方向の位置jの組[i,j]により表される。ここで、iは0≦i≦Nx-1を満たす整数であり(NxはX方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)、jは0≦j≦Ny-1を満たす整数である(NyはY方向に配列された磁気センサセル220の個数を示す)。
【0023】
センサデータ収集部230は、磁気センサアレイ210に含まれる複数の磁気センサセル220に電気的に接続され(図示せず)、複数の磁気センサセル220からのセンサデータ(検出信号)を収集して情報処理装置50へと供給する。
【0024】
図3は、本実施形態に係る複数の磁気センサセル220のうちの1つの磁気センサセル220の構成例を、X軸、Y軸、およびZ軸とともに示す。磁気センサアレイ210における各磁気センサセル220は、測定対象20からの磁場を3軸方向で検出可能である。各磁気センサセル220の位置[i,j]は、図3に示す3軸の原点位置であってよい。磁気センサセル220は、ICチップ300上に配置された第1ホール素子310と、第2ホール素子320と、第3ホール素子330と、第4ホール素子340と、磁性体コア350とを有する。磁気センサセル220は、第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340の出力の加減算により磁場を3軸方向で検出してよい。
【0025】
ICチップ300は、センサデータ収集部230に接続される。ICチップ300は、シリコン等の半導体によって形成される回路および素子等を含む。図3において、ICチップ300の一方の表面を、X軸およびY軸を有するXY面とし、XY面に垂直な軸をZ軸とした。即ち、X、Y、Z軸は互いに直交する座標系である。
【0026】
第1ホール素子310および第2ホール素子320は、ICチップ300上に形成され、当該ICチップ300に形成された回路等に接続される。第1ホール素子310および第2ホール素子320は、磁性体コア350上に配置され、入力された磁場に応じた計測データを出力する。第1ホール素子310および第2ホール素子320は、一例として、磁性体コア350の表面に沿ったX軸上に配置される。第1ホール素子310および第2ホール素子320は、X軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたY軸方向の起電力(ホール効果)を発生させる。第1ホール素子310および第2ホール素子320は、半導体等で形成されてよい。
【0027】
第1ホール素子310および第2ホール素子320は、一例として、ICチップ300上において、Y軸に対して線対称に配置される。これに代えて、第1ホール素子310および第2ホール素子320は、原点に対して点対称に配置されてもよい。
【0028】
第3ホール素子330および第4ホール素子340は、ICチップ300上に形成され、当該ICチップ300に形成された回路等に接続される。第3ホール素子330および第4ホール素子340は、磁性体コア350上に配置され、入力された磁場に応じた計測データを出力する。第3ホール素子330および第4ホール素子340は、一例として、磁性体コア350の表面に沿ってX軸と直交するY軸上に配置される。第3ホール素子330および第4ホール素子340は、一例として、Y軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたX軸方向の起電力(ホール効果)を発生させる。第3ホール素子330および第4ホール素子340は、半導体等で形成されてよい。
【0029】
第3ホール素子330および第4ホール素子340は、一例として、ICチップ300上において、X軸に対して線対称に配置される。これに代えて、第3ホール素子330および第4ホール素子340は、原点に対して点対称に配置されてもよい。
【0030】
磁性体コア350は、測定対象20から入力する磁場を内部に引き込み曲げることにより、当該磁場の入力方向を変換する。磁性体コア350は、第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340の一部または全体を覆うように配置され、第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340に入力する磁場を曲げる。磁性体コア350は、パーマロイなどの磁性材料で形成され、例えば、X軸方向および/またはY軸方向の磁場を、Z軸方向の成分が発生するように曲げ、Z軸方向に感度を有する第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340に入力させる。磁性体コア350は、ICチップ300の上面に形成されてよく、これに代えて、ICチップ300の上方に、絶縁層等を介して形成されてもよい。
【0031】
センサデータ収集部230は、第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340に接続され、第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340の出力信号を受信し、情報処理装置50に送信する。なお、磁気センサアレイ210における他の磁気センサセル220についても同様の構成を有してよい。
【0032】
図4は、本実施形態に係る第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対がX軸方向の磁界を検出する場合の一例を示す。図4において、水平方向をX軸、奥行き方向をY軸、垂直方向をZ軸方向とする。
【0033】
ここで、磁気センサセル220に入力する磁場ベクトルH(H,H,H)が、磁性体コア350で曲げられ、第1ホール素子310に入力する磁束密度ベクトルB(Hall,X1)は、第1ホール素子310の位置における透磁率Mu(Hall,X1)を用いて、次式で示される。ここで、透磁率Mu(Hall,X1)は、2階のテンソル(3行3列の行列)となる。
【数1】
【0034】
同様に、第2ホール素子320に入力する磁束密度ベクトルB(Hall,X2)は、第2ホール素子320の位置における透磁率Mu(Hall,X2)を用いて、次式で示される。
【数2】
【0035】
第1ホール素子310および第2ホール素子320は、Z軸方向の磁場を検出する。したがって、第1ホール素子310および第2ホール素子320は、次式で示すように、磁性体コア350で曲げられたZ軸方向の磁束密度Bを検出することになる。
【数3】
【0036】
ここで、図4に示すように、磁気センサセル220の上方に-X軸方向の磁場ベクトルHin(H,0,0)が入力する例を説明する。磁性体コア350は、一例として、図中の磁束密度ベクトルBのように、入力した磁場を曲げ、第1ホール素子310に+Z軸方向の磁束を入力させる。
【0037】
また、磁性材料等で形成された磁性体コア350の透磁率は、空気の透磁率と比較して値が高くなるので、空気中の磁束密度と比較して、当該磁性体コア350内の磁束密度は高くなる。例えば、第1ホール素子310の位置におけるZ軸方向の磁束密度は、次式で示すように、入力磁場Hに空気の透磁率μを乗じて得られる磁束密度に比較して、略1.4倍程度高くなる。
【数4】
【0038】
同様に、磁性体コア350は、一例として、第2ホール素子320に-Z軸方向の磁束を発生させ、第2ホール素子320の位置におけるZ軸方向の磁束密度は、次式で示される。
【数5】
【0039】
第1ホール素子310および第2ホール素子320は、このようにZ軸方向に入力する磁束密度に応じて、ホール起電力を発生させる。ここで、第1ホール素子310および第2ホール素子320が略同一形状、略同一材料で形成される場合、それぞれの磁気感度は略等しくなる。また、第1ホール素子310および第2ホール素子320に入力する磁束密度は互いに逆向きとなるので、発生するそれぞれのホール起電力は正負の符号が異なる。
【0040】
そこで、当該磁気感度をSとすると、第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対のホール起電力信号Vを、第1ホール素子310のホール起電力Vsig(Hall,X1)および第2ホール素子320のホール起電力Vsig(Hall,X2)の差分である次式のように定めることができる。
【数6】
【0041】
これによって、非破壊検査システム10は、ホール起電力信号Vを算出することで、X軸方向に入力される磁場ベクトルHin(H,0,0)に応じたホール起電力を算出することができる。また、ホール起電力信号Vを、各ホール素子のホール起電力の差分としたので、第1ホール素子310および第2ホール素子320に同一方向(+Z軸方向または-Z軸方向)で、かつ、絶対値が略同一の磁場によって生じるホール起電力は、相殺されて略零となる。
【0042】
即ち、情報処理装置50は、ホール起電力信号Vを算出することで、XZ面に平行な方向の磁場ベクトルHXZ(H,0,H)が入力しても、X軸方向の磁場ベクトルの成分H(H,0,0)に応じたホール起電力を算出することができる。また、第1ホール素子310および第2ホール素子320は、Y軸方向の磁場には感度がなく、また、磁性体コア350は、理想的にはY軸方向の磁場をZ軸方向には変換しない。したがって、磁気センサセル220は、ホール起電力信号Vを算出することで、直交する3つの各成分が零ではない(任意の方向の)磁場ベクトルHXYZ(H,H,H)が入力しても、X軸方向の磁場ベクトルの成分H(H,0,0)に応じたホール起電力を検出することができる。
【0043】
以上のように、X軸方向に配列した第1ホール素子310および第2ホール素子320によるX軸方向の磁場の算出と同様に、Y軸方向に配列した第3ホール素子330および第4ホール素子340からなるホール素子対は、Y軸方向の磁場を算出することができる。即ち、非破壊検査システム10は、第3ホール素子330および第4ホール素子340を用いて、次式のホール起電力信号Vを算出することで、磁場ベクトルHXYZ(H,H,H)が入力しても、Y軸方向の磁場ベクトルの成分H(0,H,0)に応じたホール起電力を算出することができる。
【数7】
【0044】
図5は、本実施形態に係る第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対がZ軸方向の磁界を検出する場合の一例を示す。図5は、図4と同様に、水平方向をX軸、垂直方向をZ軸方向とする。
【0045】
図5は、磁気センサセル220に+Z軸方向の磁場ベクトルHin(0,0,H)が入力する例を説明する。磁性体コア350は、一例として、図中の磁束密度ベクトルBのように、入力した磁場を曲げ、第1ホール素子310および第2ホール素子320に+Z軸方向の磁束を入力させる。
【0046】
磁性体コア350がZ軸方向の入力磁場を収束させて、第1ホール素子310および第2ホール素子320のそれぞれの位置におけるZ軸方向に入力させる磁束密度は、一例として、次式に示すように、入力磁場Hに空気の透磁率μを乗じて得られる磁束密度に比較して、略1.1倍程度高くなる。即ち、本実施例の磁性体コア350は、X軸方向およびY軸方向の磁気収束効果がそれぞれ異なる値となる例を説明する。
【数8】
【0047】
第1ホール素子310および第2ホール素子320は、Z軸方向に入力する磁束密度に応じて、ホール起電力が発生する。また、第1ホール素子310および第2ホール素子320に入力する磁束密度は同一方向となるので、発生するそれぞれのホール起電力の符号も同一となる。そこで、第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対のホール起電力信号Vを、第1ホール素子310のホール起電力Vsig(Hall,X1)および第2ホール素子320のホール起電力Vsig(Hall,X2)の和である次式のように定めることができる。
【数9】
【0048】
これによって、非破壊検査システム10は、ホール起電力信号Vを算出することで、Z軸方向に入力される磁場ベクトルHin(0,0,H)に応じたホール起電力を算出することができる。また、ホール起電力信号Vを、各ホール素子のホール起電力の和としたので、第1ホール素子310および第2ホール素子320に互いに逆向きに入力され、かつ、絶対値が略同一の磁場によって生じるホール起電力は、相殺されて略零となる。
【0049】
即ち、図4で説明したように、磁気センサセル220にX軸方向の磁界が入力された場合、磁性体コア350が第1ホール素子310および第2ホール素子320に互いに逆向きの磁束を入力させるので、発生するホール起電力は相殺されて略零となる。したがって、磁気センサセル220は、ホール起電力信号Vを算出することで、X軸成分とZ軸成分を含む磁場ベクトルHXZ(H,0,H)が入力しても、Z軸方向の磁場ベクトルの成分H(0,0,H)に応じたホール起電力を算出することができる。
【0050】
また、第1ホール素子310および第2ホール素子320は、Y軸方向の磁場には感度がない。したがって、非破壊検査システム10は、ホール起電力信号Vを算出することで、直交する3つの各成分が零ではない(任意の方向の)磁場ベクトルHXYZ(H,H,H)が入力しても、Z軸方向の磁場ベクトルの成分H(0,0,H)に応じたホール起電力を算出することができる。
【0051】
以上のように、非破壊検査システム10は、第1ホール素子310および第2ホール素子320の出力信号に基づき、入力する磁場ベクトルHXYZ(H,H,H)のX軸成分H(H,0,0)およびZ軸成分H(0,0,H)に対応するホール起電力信号VおよびVを算出する。即ち、磁気センサセル220は、X軸成分とZ軸成分を含む磁場に対応する起電力を、X軸成分およびZ軸成分に分解して算出することができる。
【0052】
以上のように、X軸方向に配列した第1ホール素子310および第2ホール素子320によるZ軸方向の磁場の検出と同様に、Y軸方向に配列した第3ホール素子330および第4ホール素子340は、Z軸方向の磁場を検出することもできる。また、第3ホール素子330および第4ホール素子340は、Y軸方向の磁場ベクトルの成分H(0,H,0)を検出することができるので、磁気センサセル220は、第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340を用いることで、3軸の磁場を検出することができる。ここで、非破壊検査システム10は、第1ホール素子310および第2ホール素子320を用いてX軸成分Hを算出し、第3ホール素子330および第4ホール素子340を用いてY軸成分HおよびZ軸成分Hを算出してもよい。
【0053】
図6は、本実施形態に係る非破壊検査システム10の少なくとも一部のブロック図を示す。図6は、非破壊検査システム10における、磁気センサアレイ210と、センサデータ収集部230と、情報処理装置50とを示す。本図においては、磁気センサアレイ210が各次元方向に有する複数の磁気センサセル220のうち、XY座標における位置[i,j]、[i+1,j]、[i,j+1]、および[i+1,j+1]の4つの磁気センサセル220を示す。
【0054】
各磁気センサセル220における第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340は、それぞれ異なる電流源に接続され、予め定められた電流が流れる。第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340は、それぞれ、当該電流と入力する磁場に応じたホール起電力をそれぞれ出力する。例えば、第1ホール素子310のホール起電力Vsig(Hall,X1)は、電流および入力磁場の両方に直交する第1ホール素子310の電極間の電圧となる。
【0055】
各磁気センサセル220における第1ホール素子310、第2ホール素子320、第3ホール素子330、および第4ホール素子340は、センサデータ収集部230に接続され、それぞれの出力電圧をセンサデータ収集部230に供給する。センサデータ収集部230は、複数の増幅部600と、複数のAD変換器610と、クロック発生器612とを有する。
【0056】
増幅部600は、各ホール素子およびAD変換器610に接続され、受け取った信号の差または和に応じた増幅信号を出力する。また、増幅部600は、受け取った信号を増幅して出力してもよい。増幅部600は、増幅率Gの差動増幅器を含んでよい。増幅部600は、スイッチ等により、各ホール素子から増幅部600への接続を切り替えてよい。例えば、増幅部600は、スイッチ等により、第1ホール素子310および第2ホール素子320を増幅部600に接続して、第1ホール素子310および第2ホール素子320からなるホール素子対の各出力電圧を受け取り、増幅してよい。また、増幅部600は、スイッチ等により、第3ホール素子330および第4ホール素子340を増幅部600に接続して、第3ホール素子330および第4ホール素子340からなるホール素子対の各出力電圧を受け取り、増幅してよい。
【0057】
例えば、センサデータ収集部230がホール起電力信号Vを算出する場合、増幅部600は、スイッチ等を介して、第1ホール素子310および第2ホール素子320から受け取った信号の差を増幅した増幅信号を出力する。
【0058】
この場合、増幅部600への入力信号は、第1ホール素子310のホール起電力Vsig(Hall,X1)および第2ホール素子320のホール起電力Vsig(Hall,X2)となるので、増幅部600は、次式のように、(数6)式で示すホール起電力信号Vの定数倍の値の信号VXoutを出力する。
【数10】
【0059】
また、センサデータ収集部230がホール起電力信号Vを算出する場合、増幅部600は、スイッチ等を介して、第1ホール素子310および第2ホール素子320から受け取った信号の和を増幅した増幅信号を出力する。即ち、増幅部600は、次式のように、(数9)式で示すホール起電力信号Vの定数倍の値の信号VZoutを出力する。
【数11】
【0060】
同様に、センサデータ収集部230がホール起電力信号Vを算出する場合、増幅部600は、スイッチ等を介して、第3ホール素子330および第4ホール素子340から受け取った信号の差を増幅した増幅信号を出力する。即ち、増幅部600は、次式のように、(数7)式で示すホール起電力信号Vの定数倍の値の信号VYoutを出力することができる。
【数12】
【0061】
ここで、センサデータ収集部230がホール起電力信号Vを算出する場合、増幅部600は、第3ホール素子330および第4ホール素子340から受け取った信号の和を増幅した増幅信号を出力してもよい。増幅部600は、以上のように算出したホール起電力信号を、それぞれAD変換器610に供給する。
【0062】
AD変換器610は、クロック発生器612および情報処理装置50に接続され、受け取ったホール起電力信号をデジタル信号に変換する。AD変換器610は、変換したデジタル信号をレジスタ等の記憶装置に記憶させ、センサデータ収集部230は、情報処理装置50からの読み出し要求等に応じて、記憶したデジタル信号を要求元に供給してよい。
【0063】
クロック発生器612は、サンプリングクロックを発生させ、共通のサンプリングクロックを複数のAD変換器610のそれぞれへ供給する。複数のAD変換器610のそれぞれは、クロック発生器612から供給された共通のサンプリングクロックに応じてAD変換を行う。したがって、異なる位置に設けられた複数の磁気センサセル220の出力をそれぞれAD変換する複数のAD変換器610の全てが同期動作をする。これにより、複数のAD変換器610は、異なる空間に設けられた磁気センサセル220の検出結果を同時にサンプリングすることができる。
【0064】
情報処理装置50は、複数の磁気センサセル220のそれぞれに対応して設けられた複数の磁場取得部620と、複数の演算部630と、信号空間分離部640と、基底ベクトル記憶部650と、検出部660と、出力部670とを有する。
【0065】
磁場取得部620は、それぞれ対応する磁気センサセル220に接続された3つのAD変換器610に接続され、磁気センサアレイ210によって計測された計測データを取得する。磁場取得部620は、ホール起電力信号VXout、ホール起電力信号VYout、およびホール起電力信号VZoutを、計測データとして取得する。磁場取得部620は、磁性体コア350のX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の磁気収束効果の差、増幅部600の増幅率、および伝送損失等に応じて、取得したホール起電力信号をそれぞれ規格化(予め定められた定数を用いて定数倍)してよい。これにより、磁場取得部620は、入力する磁場ベクトルHX、Y、に対応するホール起電力信号V、V、Vを取得することができる。磁場取得部620は、AD変換器610によってデジタルに変換されたデジタルの計測データ(VXout,VYout,VZout)を所定のタイミングTでラッチして取得するフリップフロップ等を有してよい。
【0066】
演算部630は、磁場取得部620に接続され、磁場取得部620が取得した計測データを較正パラメータを用いて較正する。演算部630による計測データの較正の概要は以下のとおりである。位置[i,j]にある磁気センサセル220に入力される磁場をB(Bx,By,Bz)とし、磁気センサセル220による検出結果をV(Vx,Vy,Vz)とする。この場合、磁気センサセル220の磁気センサ特性を行列Sとすると、磁気センサセル220の検出結果Vは次式のように示すことができる。
【数13】
【0067】
ここで、Sxx、Syy、およびSzzは、それぞれ、磁気センサセル220の各軸に対応するホール素子対(例えば、X軸方向の磁場を検出するための第1ホール素子310および第2ホール素子320、Y軸方向の磁場を検出するための第3ホール素子330および第4ホール素子340、Z軸方向の磁場を検出するための第1ホール素子310および第2ホール素子320)の主軸方向の感度(主軸感度)を表し、Sxy、Sxz、Syx、Syz、Szx、およびSzyは他軸方向の感度(他軸感度)を表している。また、Vos,x、Vos,y、およびVos,zは、それぞれ磁気センサセル220の各軸に対応するホール素子対のオフセットを表している。ここで主軸方向とは、磁気センサセル220の各軸に対応するホール素子対が主として計測する方向であり、他軸方向とは、それらが主として計測しない方向である。磁場の計測において、主軸方向は磁場が入力されたときに、対応するホール素子対が最大の感度を示す方向(入力軸方向、感度軸方向)である。他軸方向は、主軸方向と垂直な軸とする。なお、磁気センサセル220の対応するホール素子対の主軸感度と他軸感度の3成分であらわされる縦ベクトルを、感度ベクトルと呼ぶ。例えばX軸方向の磁場を検出するためのホール素子対の感度ベクトルnxは、(Sxx、Sxy、Sxz)の3成分で表される。この時、当該ホール素子対の出力は、入力磁場と、感度ベクトルnxとの内積となる。また、同様に、Y軸方向の磁場を検出するためのホール素子対の感度ベクトルnyは、(Syx、Syy、Syz)の3成分で表され、Z軸方向の磁場を検出するためのホール素子対の感度ベクトルnzは、(Szx、Szy、Szz)の3成分で表される。
【0068】
磁気センサセル220のホール素子対のそれぞれが、検出すべき入力磁場の範囲において、当該入力磁場に対する検出結果が線形性を有するので、行列Sの各要素は、入力磁場Bの大きさとは無関係な略一定の係数となる。また、磁気センサセル220のホール素子対が他軸感度を有していても、ホール素子対の検出結果が線形性を有していれば、行列Sの各要素は、入力磁場Bの大きさとは無関係な略一定の係数となる。
【0069】
したがって、演算部630は、行列Sの逆行列S-1とオフセット(Vos,x,Vos,y,Vos,z)とを用いることで、次式のように、計測データV(Vx,Vy,Vz)を元の入力される磁場を示す磁場計測データB(Bx,By,Bz)に変換することができる。つまり、演算部630は、磁場取得部620からのデジタルの計測データVを、主軸感度、他軸感度、および、オフセットを用いて較正する。これにより、演算部630は、オフセット、主軸方向の感度、他軸方向の感度を補正する。なお、磁気センサセル220の出力から演算部630までに、ハイパスフィルタ等を備えることにより、計測データVを交流成分とする場合は、オフセットの較正は省略してもよい。すなわち、演算部630は、磁場取得部620からのデジタルの計測データVを、主軸感度、他軸感度、および、オフセットの少なくともいずれかを用いて較正してもよい。なお、これらの較正パラメータは、あらかじめ既知の直流または交流の磁場を計測することによって算出されていてよい。また、本実施形態における演算部630は、各磁気センサセル220からの出力を、独立な3つのベクトルで形成される座標系として表現した成分として較正できればよく、必ずしも直交している3つのベクトルの座標系(いわゆる直交座標系)として表現した3軸成分に補正する必要はない。すなわち、すべての磁気センサセル220が同一の磁場を測定している場合に、各磁気センサセル220に対応したそれぞれの演算部630は、対応する磁場取得部620からのデジタルの計測データVを、独立な3軸成分で表現された、同一の磁場計測データBに較正してよい。
【数14】
【0070】
演算部630は、環境磁場計測データを用いて行列Sの逆行列S-1およびオフセット(Vos,x,Vos,y,Vos,z)を算出し、磁場取得部620により取得された磁場計測データを、これらの較正パラメータを用いて磁場計測データBに変換する。演算部630は、較正した磁場計測データBを信号空間分離部640に供給する。
【0071】
基底ベクトル記憶部650は、信号空間分離部640に接続される。基底ベクトル記憶部650は、信号空間分離部640が磁場計測データBを信号分離するために必要な基底ベクトルを予め記憶し、これを信号空間分離部640へ供給する。
【0072】
信号空間分離部640は、各磁気センサセル220の位置および磁気感度に基づき、計測データによって示される磁場の空間分布から、測定対象磁場を抽出する。信号空間分離部640は、演算部630から供給された磁場計測データB、すなわち、デジタルの計測データVを較正した磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、正規直交関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出したときに複数の磁気センサセル220のそれぞれが出力する信号ベクトルを基底ベクトルとして信号分離する。この際、信号空間分離部640は、信号分離に必要な基底ベクトルを、基底ベクトル記憶部650から取得する。信号空間分離部640は、基底ベクトル記憶部650から取得した基底ベクトルを用いて、磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、測定対象磁場(信号源空間信号)と、外乱磁場(外乱空間信号)とに信号分離し、測定対象磁場を抽出し、これを出力する。
【0073】
検出部660は、信号空間分離部640に接続され、信号空間分離部640で抽出された測定対象磁場から、測定対象20の破断を検出する。検出部660は、測定対象磁場から磁場イメージを作成して、機械学習により作成されたモデルで磁場イメージの画像解析等を行い、測定対象20の破断を検出してよい。検出部660は、測定対象磁場から、磁束密度の大きさに応じた色を示す(例えば磁束密度の絶対値が大きいほど色が濃い、又は磁束密度のプラスとマイナスで異なる色を用いる等)磁気イメージ、磁束密度の大きさを領域毎に数値で示す磁気イメージ、または磁場の流れる方向を矢印で示す磁気イメージを作成してよい。
【0074】
出力部670は、検出部660に接続され、測定対象磁場の情報を出力する。出力部670は、検出部660で検出した測定対象20の破断情報を、測定対象磁場の情報として出力してよい。出力部670は、測定対象20が破断しているか否か、破断した位置、破断の程度等を示す破断情報を出力してよい。また、出力部670は、測定対象磁場の磁気イメージまたは位置と磁束密度との関係を示すグラフを表示装置に表示させる表示データを、測定対象磁場の情報として出力してもよい。出力部670は、情報処理装置50のディスプレイ、または情報処理装置50の外部のPC等の表示装置に表示データを出力してよい。
【0075】
図7は、本実施形態に係る情報処理装置50の信号空間分離部640が磁場の空間分布を信号分離するフローを示す。ステップ910において、基底ベクトル記憶部650は、基底ベクトルを記憶する。一例として、基底ベクトル記憶部650は、測定対象磁場の測定前に、球面調和関数の空間分布を持つ磁場を磁気センサアレイ210で検出したときに複数の磁気センサセル220のそれぞれが出力する信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶する。すなわち、基底ベクトルは、磁気センサアレイ210の各磁気センサセル220の位置と感度ベクトルから計算によってあらかじめ算出し、基底ベクトル記憶部650に記憶しておいてよい。基底ベクトル記憶部650は、空間内の予め定められた点を座標原点に指定した時に球面調和関数を空間サンプリングして得られる磁場信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶する。換言すれば、基底ベクトル記憶部650は、空間の磁場を、球面調和関数の級数展開をもとに2つの部分空間(信号源空間と外乱空間)で表現した磁場信号ベクトルを、各磁気センサセル220の位置と感度ベクトルから計算によって予め算出し、基底ベクトルとして記憶する。ここで、球面調和関数とは、n次元ラプラス方程式の解となる斉次多項式を単位球面に制限することで得られる関数であり、球面上での正規直交性を有する。なお、本図においては、一例として、基底ベクトル記憶部650が基底ベクトルを記憶するステップ910を、情報処理装置50による磁場の空間分布を信号分離するフローにおける最初のステップとした場合について示す。しかしながら、基底ベクトル記憶部650は、情報処理装置50による磁場の空間分布を信号分離するフローの前に、基底ベクトルを事前に記憶しておいてもよい。また、基底ベクトル記憶部650は、シミュレーション結果等により予め決められている信号ベクトルを基底ベクトルとして記憶してもよい。
【0076】
次に、ステップ920において、信号空間分離部640は、磁気センサアレイ210によって計測され、演算部630によって算出された磁場計測データBを、演算部630から取得する。
【0077】
また、ステップ930において、信号空間分離部640は、ステップ910において基底ベクトル記憶部650が基底ベクトルとして記憶した信号ベクトルを、基底ベクトル記憶部650から取得する。なお、本フローにおいて、ステップ920とステップ930とはどちらが先に行われてもよい。
【0078】
ステップ940において、信号空間分離部640は、ステップ920において取得した磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、ステップ930において取得した信号ベクトルを基底ベクトルとして利用して級数展開する。信号空間分離部640は、級数展開によって得られたベクトルから、磁場の空間分布を測定対象磁場(信号源空間信号)と外乱磁場(外乱空間信号)とに信号分離する。なお、正規直交関数は球面調和関数であってよい。また、信号空間分離部640は、信号分離するにあたって、基底ベクトルの級数展開係数を最小2乗法により計算する。
【0079】
ステップ950において、信号空間分離部640は、ステップ940において信号分離した結果に基づいて、外乱磁場を抑制して測定対象磁場だけを算出して出力し、処理を終了する。以下、これについて詳細に説明する。
【0080】
静磁場B(r)は、ラプラス方程式ΔV(r)=0を満たすポテンシャルV(r)を用いて、次式のように、ポテンシャルV(r)の空間勾配(gradient)として求められる。ここで、rは座標原点からの位置を表す位置ベクトルであり、Δはラプラシアンであり、μは透磁率であり、∇はベクトル微分演算を表す演算子である。
【数15】
【0081】
ラプラス方程式の解は、一般に、正規直交関数系である球面調和関数Yl,m(θ,φ)を使った級数展開の形での解を持つため、ポテンシャルV(r)は次式で表すことができる。ここで、|r|は位置ベクトルrの絶対値(座標原点からの距離)であり、θおよびφは球座標における2つの偏角であり、lは方位量子数であり、mは磁気量子数であり、αおよびβは多極モーメントであり、LinおよびLoutはそれぞれ測定対象20から見て磁気センサアレイ210の手前の空間と奥の空間のそれぞれについての級数の数である。方位量子数lは正の整数をとり、磁気量子数mは-lから+lまでの整数をとる。すなわち、例えばlが1のとき、mは-1、0、および1であり、例えばlが2のとき、mは-2、-1、0、1、および2である。なお、磁場においては単磁極が存在しないことから、(数16)において方位量子数lは、0からではなく1から始まっている。(数16)における第1項は、座標原点からの距離に反比例する項であり、座標原点を測定対象20と磁気センサアレイ210の間に置いた場合、測定対象20から見て磁気センサアレイ210の手前の空間に存在するポテンシャルを示している。また、(数16)における第2項は、座標原点からの距離に比例する項であり、測定対象20から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在するポテンシャルを示している。
【数16】
【0082】
したがって、(数15)および(数16)によれば、静磁場B(r)は、次式で表すことができる。ここで、(数17)における第1項は、測定対象20と磁気センサアレイ210の間の空間に存在する磁場源、すなわち、着磁された鉄筋等の測定対象20が生じる磁場(測定対象磁場)を示している。また、(数17)における第2項は、測定対象20から見て磁気センサアレイ210の奥の空間に存在する磁場源が作る外乱磁場を示している。
【数17】
【0083】
球面調和関数を使った級数展開の形でラプラス方程式の解を表した場合、その一般解は無限級数となるが、鉄筋コンクリート30内に配置された鉄筋等からの磁場を計測するのに十分なSNR(信号ノイズ比、すなわち、外乱磁場およびセンサノイズに対する測定対象磁場信号の比)が得られればよく、実際には10項程度の級数で表せば十分である。また、例えば脳磁計等における信号空間分離の級数については、Lin=8、Lout=3前後が一般的に利用されている。したがって、本実施形態においても、LinおよびLoutは、上記と同程度の値を用いればよい。しかしながら、LinおよびLoutの値は、これに限定されるものではなく、外乱磁場を十分抑制し測定対象磁場だけを算出するのに十分な、いかなる数値であってもよい。
【0084】
ここで、磁気センサアレイ210に用いられている全部でN個のセンサに対し、al,mおよびbl,mを次式のように定義する。ここで、n1、n2、・・・nNは、各磁気センサセル220におけるX軸,Y軸,およびZ軸の感度ベクトルである。なお、このal,mおよびbl,mは磁気センサセル220の個数を(各磁気センサセル220が3軸で磁場を検出するため)3倍した数の次元を持つベクトルとなる。つまり、全センサ数の次元を持つベクトルとなる。一例として、このベクトル(al,m、bl,m)は、各磁気センサセル220の出力から、演算部630により算出されたデータを用いて計算される。このように、磁気センサセル220の主軸方向の感度と他軸方向の感度補正(補正された感度ベクトル)を含めて計算されたal,mおよびbl,mの値は基底ベクトル記憶部650に記憶される。基底ベクトル記憶部650が、磁気感度(主軸感度、他軸感度)の補正を含めて計算されたal,mおよびbl,mの値を記憶する本実施形態に係る情報処理装置50は、動作時に、磁場取得部620によって取得されたデータに対して演算部630における補正を行うことで、各磁気センサセル220の磁気感度(主軸感度、他軸感度)の補正を行うことが可能となる。また別の一例として、基底ベクトル記憶部650が、磁気感度(主軸感度、他軸感度)の補正がなされていない(補正されてない感度ベクトルによる)既定のal,mおよびbl,mの値を記憶している場合は、各磁気センサセル220の出力から、演算部630において、(数14)のように、各磁気センサセル220の既定の感度ベクトルに一致するように磁気感度の補正がなされたデータに変換し、信号空間分離部640での演算が実施される。
【数18】
【0085】
このようにal,mおよびbl,mを定義したので、ある時刻にそれぞれの磁気センサセル220において出力されるセンサ出力ベクトルΦは、以下の式で表すことができる。
【数19】
【0086】
さらに、Sin、Sout、Xin、およびXoutをそれぞれ次のように定義する。すなわち、Sinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各ベクトルaを順に列に並べた、計Lin×(Lin+2)列のベクトルと定義する。また、Soutを、l=1からL=Loutまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各ベクトルbを順に列に並べた、計Lout×(Lout+2)列のベクトルと定義する。また、Xinを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=-lからlまでの整数をとった時の各多極モーメントαl,mを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lin×(Lin+2)行のベクトルと定義する。また、Xoutを、l=1からl=Linまで、各lにおいてm=-1からlまでの整数をとった時の各多極モーメントβl,mを順に列に並べたベクトルを転置した、計Lout×(Lout+2)行のベクトルと定義する。
【数20】
【0087】
そうすると、センサ出力ベクトルΦは、次式に示すように、行列Sと縦ベクトルXの内積の形で表すことができる。ここで、行列Sは、基底ベクトルを示し、例えば、ステップ930において、信号空間分離部640が基底ベクトル記憶部650から取得したものである。また、縦ベクトルXは、基底ベクトルに係る係数を示す。
【数21】
【0088】
本実施形態に係る信号空間分離部640は、ステップ940において、この(数21)で得られたセンサ出力ベクトルΦのモデル式に基づいて、次式(数22)を用いてΦ=SXを最小2乗近似で満たす縦ベクトルXを決定する。これにより、信号空間分離部640は、ステップ940において、磁場の空間分布を解くことができる。つまり磁場の空間分布を推定できるようになる。すなわち、測定対象磁場をφin_h=SinXin、外乱磁場をφout_h=SoutXoutとして推定できる。この際、信号空間分離部640は、外乱磁場の大きさが予め定められた範囲を超える場合に、測定対象磁場を高精度に計測できない旨の警告を出してもよい。これにより、非破壊検査システム10は、装置が故障している場合や、測定対象磁場を高精度に計測することができない程大きな外乱磁場が存在している場合等の状況において、測定対象磁場を計測してしまうことを事前に防止することができる。この場合に、信号空間分離部640は、例えば、SoutXoutの各成分のいずれかの大きさが予め定められた閾値を超える場合に外乱磁場の大きさが予め定められた範囲を超えると判断してもよいし、SoutXoutの各成分の大きさの和や平均が予め定められた閾値を超える場合に外乱磁場の大きさが予め定められた範囲を超えると判断してもよい。
【数22】
【0089】
ステップ950において、信号空間分離部640は、ステップ940において決定した縦ベクトルを用いて、SoutXoutを減少させて外乱磁場成分、すなわち、(数17)における第2項の成分を抑制した結果を出力する。信号空間分離部640は、SinXinだけを結果として出力することで、外乱磁場成分を抑制して、測定対象磁場成分、すなわち、(数17)における第1項の成分だけを出力してもよい。
【0090】
また上記の計算が理想的に成立するのは、磁気センサセル220の主軸感度、他軸感度、および、オフセットが演算部630により十分に較正されている場合である。測定対象磁場をΦin、磁気センサセル220の感度及びオフセットにより生じる誤差をerrとすると、誤差を含む磁気センサセル220の出力ベクトルΦerrは以下であらわされる。
【数23】
【0091】
上記Φerrに対して信号空間分離部640で計算を行った場合、最小2乗近似により縦ベクトルXを算出する計算の精度が劣化し、近似計算の残留誤差(Φresid)や推定した測定対象磁場Φin_hと外乱磁場Φout_hの分離誤差が生じ、以下の関係で示される。
【数24】
【0092】
ここでΦin_hを測定対象磁場として出力した場合、Φerr中の誤差errの成分は、Φin_h、Φout_h、Φresidに分散するため、Φin_hにおいて磁気センサセル220の誤差により生じる影響が低減される。外乱磁場が存在しないような場合も、このように磁気センサセル220の感度及びオフセットにより生じる誤差の影響を低減することも可能である。
【0093】
これにより、本実施形態に係る非破壊検査システム10によれば、磁気センサアレイ210を用いて計測された磁場計測データBによって示される磁場の空間分布を、測定対象磁場と外乱磁場とに信号分離することができる。また非破壊検査システム10は、磁気センサセル220の感度やオフセットによる影響も低減し、測定対象磁場成分だけを出力するので、測定対象磁場をより高精度に計測することができる。
【0094】
図8は、測定対象20の破断により生じる磁場を説明するための説明図である。図8において、測定対象20は、鉄筋コンクリート30内に配置された鉄筋である。図8に示すように、磁石により着磁された鉄筋は、1つの磁石となるため測定磁場は連続的な変化を有するが、破断部分において鉄筋の長軸方向に磁気ダイポールが発生し、破断部分の一方がS極となり他方がN極となる。これにより、破断部分における磁場の流れが変化するため、本実施形態の非破壊検査システム10により測定された磁束密度の分布に当該変化が現れる。非破壊検査システム10は、このような磁気ダイポールによる磁束密度の変化を検出することで測定対象20の破断を検出してよい。ここで、磁気ダイポールは、正負の磁極の対であり、例えば、破断部の一方に現れるS極と他方に現れるN極の対である。
【0095】
図9は、非破壊検査システム10による測定対象20の破断検出動作のフローを示す。図9のフローにおいて、非破壊検査システム10は、鉄筋コンクリート30内の鉄筋を測定対象20とする。ステップ1010において、作業者は、ネオジム等の磁石を鉄筋コンクリート30の表面に沿って移動させて、鉄筋コンクリート30内の測定対象20に着磁を行う。
【0096】
ステップ1020において、磁気センサユニット40は、着磁された測定対象20からの磁場を検出する。例えば、作業者が磁気センサユニット40を鉄筋コンクリート30の表面に接触させて測定し、測定対象20に沿った次の位置に移動させて測定することを繰り返すことで、磁気センサユニット40は、磁場を測定する。
【0097】
ステップ1030において、情報処理装置50は、磁気センサユニット40からの計測データを受け取り、測定対象磁場の磁束密度を算出する。情報処理装置50は、図6および図7において説明した信号空間分離を行い、測定対象磁場の磁束密度を算出してよい。
【0098】
ステップ1040において、検出部660は、測定対象磁場の磁束密度を示す磁気イメージを作成する。情報処理装置50は、一回の測定範囲において、領域毎又は座標毎に、測定対象磁場の磁束密度に応じた色、磁束密度の値、磁束密度の符号(マイナス及びプラス)、又は磁束密度のベクトル等を表す1つの磁気イメージを作成してよい。
【0099】
ステップ1050において、検出部660は、測定対象磁場の磁気イメージ内で磁気ダイポールに対応する磁気分布を検出することによって、測定対象20の破断を検出してよい。検出部660は、磁気イメージにおいて、測定対象20が破断している場合のパターンまたは当該破断している破断部の位置のパターンを画像解析等により検出することにより、破断を検出してよい。検出部660は、予め実験またはシミュレーション等により求めた当該破断パターンを記憶し、破断検出に用いてよい。
【0100】
図10は、参考例の非破壊検査システムにおいて、信号空間分離を行っていない磁束密度から作成された磁気イメージの一例を示す。図10は、測定対象(主筋)に関する、X軸方向の磁束密度Bxから作成された磁気イメージと、Y軸方向の磁束密度Byから作成された磁気イメージと、Z軸方向の磁束密度Bzから作成された磁気イメージとを示す。図10における磁気イメージは、磁束密度の絶対値がより大きい領域ほどより濃い色で示す。参考例の非破壊検査システムは、本実施形態の非破壊検査システム10と同様であってよく、ただし、信号空間分離部640を有さない。
【0101】
参考例の非破壊検査システムで作成された磁気イメージは、着磁誤差により測定磁場のオフセットや感度が変動し、磁気イメージが劣化している。磁気センサセルを一度較正することも可能であるが、磁気式の非破壊検査システムでは、着磁に使用する磁石や屋外で使用するため通過車両(電車、車)などの大きな磁場発生源が周囲にあり、較正後にも感度やオフセットが変動し、測定結果も変動してしまう。特に図3のような磁気センサ直上に磁性体コアを配置して磁場方向を変換して検出するような構造では、磁性体コア部の着磁による影響が顕著にあらわれる。
【0102】
図11は、本実施形態の非破壊検査システム10において得られた磁束密度Bxから作成された磁気イメージの一例を示す。図11における磁気イメージは、測定対象20(主筋)に関する、プラスの磁束密度の領域で磁束密度の絶対値がより大きい領域ほどより濃い色で、マイナスの磁束密度の領域で磁束密度の絶対値がより大きい領域ほどより濃い色で示す。図11は、測定範囲内で磁束密度が最大値(プラスで絶対値が最も大きい値)を有する位置を「+」で示し、測定範囲内で磁束密度が最小値(マイナスで絶対値が最も大きい値)を有する位置を「-」で示す。なお、磁気イメージにおいて、プラスの磁束密度の領域とマイナスの磁束密度の領域とで異なる色を用いてもよい。以下の図における磁気イメージについても同様である。
【0103】
測定対象20において、破断部にS極からN極に流れる磁場が生じるため、磁束密度Bxの磁気イメージは、破断部の直上で最も大きなプラスの磁束密度を示し、破断部から位置が離れるほど磁束密度が小さく変化するパターン1を示す。
【0104】
図12は、本実施形態の非破壊検査システム10において得られた磁束密度Byから作成された磁気イメージの一例を示す。測定対象20(主筋)において、破断部にS極からN極に流れる磁場が生じるため、測定対象20のY軸方向の一方側(磁気イメージの上側)に、X軸方向で、破断部のS極からプラスに向かい、N極に向かってマイナスに流れる磁場が生じる。また、測定対象20のY軸方向の他方側(磁気イメージの下側)に、X軸方向で、破断部のS極からマイナスに向かい、N極に向かってプラスに流れる磁場が生じる。これにより、磁束密度Byの磁気イメージは、磁束密度が、X軸の方向とY軸方向でそれぞれプラスの領域とマイナスの領域が生じるパターン2を有する。
【0105】
図13は、本実施形態の非破壊検査システム10において得られた磁束密度Bzから作成された磁気イメージの一例を示す。測定対象20(主筋)において、破断部にS極からN極に流れる磁場が生じるため、測定対象20のX軸方向の破断部を境界として、一方側にS極からZ軸方向のマイナスの磁場が生じ、N極に向かうZ軸方向のプラスの磁場が生じる。これにより、磁束密度Bzの磁気イメージは、磁束密度が、X軸方向で、Z軸方向の磁場がマイナスの領域からプラスの領域に変化し、マイナスの領域とプラスの領域の境界が磁気イメージのY軸方向の一方の端部から他方の端部にまで延びるパターン3を有する。
【0106】
本実施形態の非破壊検査システム10は、信号空間分離を行うことで、着磁による誤差(err=err_in+err_out+err_resid)を、信号源空間における測定対象磁場と外乱磁場空間における外乱磁場とに信号分離することにより、全体の誤差(err)を、信号源空間における誤差(err_in)と外乱磁場空間における誤差(err_out)、および近似計算の残留誤差err_residに分離できる。従って、本実施形態の非破壊検査システム10により、着磁による誤差は低減されて、磁気イメージの精度が良く、破断部の位置が明確に表示できる。
【0107】
図14は、鉄筋コンクリート30内に配置された鉄筋(主筋)および交差鉄筋からの磁場を説明するための説明図である。鉄筋コンクリート30内に配置された主筋を測定対象20とする場合、磁気センサアレイ210は、主筋および交差鉄筋の両方からの磁場を検出する。着磁された主筋は、破断すると、破断部に主筋の長軸方向の磁気ダイポールが生じ、さらに、着磁された交差鉄筋は、主筋の長軸方向に対して交差(直交)する方向に磁場が生じる。
【0108】
図15は、本実施形態の非破壊検査システム10において、鉄筋コンクリート30内に配置された交差鉄筋からの磁場の磁束密度Bxから作成した磁気イメージを示す。交差鉄筋から主筋方向に流れる磁場が生じるため、磁気イメージは、X軸の方向で、マイナスの領域からプラスの領域に変化するパターンを有する。
【0109】
図16は、本実施形態の非破壊検査システム10において、鉄筋コンクリート30内に配置された交差鉄筋からの磁場の磁束密度Byから作成した磁気イメージを示す。交差鉄筋から主筋方向に流れる磁場が生じるため、磁気イメージは、Y軸の方向で、マイナスの領域からプラスの領域に変化するパターンを有する。
【0110】
図17は、本実施形態の非破壊検査システム10において、鉄筋コンクリート30内に配置された交差鉄筋からの磁場の磁束密度Bzから作成した磁気イメージを示す。交差鉄筋から主筋方向に流れる磁場が生じるため、磁気イメージは、交差鉄筋の着磁部の直上で最も大きなマイナスの磁束密度を示し、交差鉄筋の着磁部から位置が離れるほど磁束密度が小さく変化するパターンを有する。
【0111】
図15から図17に示すように、交差鉄筋の磁気ダイポールは、主筋の破断部の磁気ダイポールとは異なる向きで生じるため、異なる磁気イメージが作成される。検出部660は、測定対象磁場の磁気イメージ内で、磁気ダイポールに対応する磁気分布から磁気ダイポールの向きを検出することによって、測定対象20(主筋)の破断を検出してよい。例えば、検出部660は、検出動作において、磁気イメージにおける磁気ダイポールの有無を検出した後に磁気ダイポールの向きを検出してよい。検出部660は、磁気ダイポールを検出すると、磁気ダイポールの向きが測定対象20の長軸方向である場合に破断を検出してよい。
【0112】
検出部660は、磁気イメージにおいて、図11から図13に示すパターン1-3のうちの少なくとも1つを検出することで、測定対象20の破断を検出してよい。検出部660は、磁束密度Bxの磁気イメージにおいて、X軸方向にプラスの領域とマイナスの領域がある場合にも、マイナス又はプラスの領域の一方が他方により挟まれていない場合には、交差鉄筋による磁気ダイポールであり、測定対象20は破断していないと判定してよい。検出部660は、磁束密度Byの磁気イメージにおいて、Y軸方向にプラスの領域とマイナスの領域がある場合にも、さらにX軸方向でマイナスの領域とプラスの領域が生じていない場合には、交差鉄筋による磁気ダイポールであり、測定対象20は破断していないと判定してよい。検出部660は、磁束密度Bzの磁気イメージにおいて、X軸方向にプラスの領域とマイナスの領域がある場合にも、プラスの領域とマイナスの領域の境界がY軸方向の一方の端部から他方の端部にまで延びていない場合には、交差鉄筋による磁気ダイポールであり、測定対象20は破断していないと判定してよい。
【0113】
検出部660は、交差鉄筋が配置されている場合も、破断部を精度良く検出することができる。検出部660は、ユーザ入力等により、鉄筋コンクリート30内に交差鉄筋が配置されていること、又は当該交差鉄筋の配置等を入力されてよい。これにより、検出部660は、磁気ダイポールの検出を効率的に実行できる。なお、検出部660は、信号空間分離した外乱磁場が閾値より小さい場合には、外乱磁場を抑制せずに、磁場計測データBから磁気イメージを作成して、破断検出を行ってもよい。
【0114】
以上のような本実施形態の非破壊検査システム10は、構造物の内部に配置された測定対象20からの磁場を信号空間分離により精度良く測定することができる。また、磁気センサアレイ210が、ホール素子で構成された磁気センサセル220を2次元配列で有するため、磁気センサセル220を3次元配列で有するよりも少ない数で、広い範囲の磁場検出を実行できる。
【0115】
なお、非破壊検査システム10は、信号空間分離部640における信号空間分離の計算のための座標原点を測定内部空間が測定対象20を含むように(例えば、座標原点が測定対象20上に又は近傍に位置するように)設定してよく、さらに、信号空間分離部640は、信号空間分離の計算のための座標原点を複数設定し、設定した各座標原点において測定対象磁場を抽出してもよい。例えば、非破壊検査システム10は、磁気センサアレイ210の一方の端部から他方の端部までの範囲内で、信号空間分離の計算のための複数の座標原点を測定対象20の長軸方向で並べて設定し、当該複数の座標原点の条件で、それぞれ信号空間分離の計算を行い、磁気イメージを作成してよい。このように複数の座標原点を設定することで、磁気センサアレイ210と測定対象20の間の信号源空間(すなわち測定対象磁場を精度良く測定できる範囲)をより広くすることができ、特に磁気センサアレイ210の端近傍における測定対象20の破断の検出精度を向上できる。
【0116】
なお、磁気センサセル220は、例えば、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magneto-Resistance)素子またはトンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto-Resistance)素子等を有し、これらの素子により3軸方向の磁場を検出してよい。
【0117】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0118】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0119】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0120】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能な処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0121】
図18は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0122】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0123】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0124】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0125】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0126】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0127】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0128】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0129】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0130】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0131】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0132】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0133】
10 非破壊検査システム
20 測定対象
30 鉄筋コンクリート
40 磁気センサユニット
50 情報処理装置
210 磁気センサアレイ
220 磁気センサセル
230 センサデータ収集部
300 ICチップ
310 第1ホール素子
320 第2ホール素子
330 第3ホール素子
340 第4ホール素子
350 磁性体コア
600 増幅部
610 AD変換器
612 クロック発生器
620 磁場取得部
630 演算部
640 信号空間分離部
650 基底ベクトル記憶部
660 検出部
670 出力部
2200 コンピュータ
2201 DVD-ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インタフェース
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD-ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18