(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014061
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】塗布装置、塗布方法及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20240125BHJP
B05C 11/04 20060101ALI20240125BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20240125BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240125BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B05C11/04
B05D1/28
B05D3/00 F
B05D1/36 Z
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116625
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小須田 賢
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC53
4D075AC54
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC92
4D075AE01
4D075BB05Z
4D075BB92Y
4D075CA47
4D075CA48
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4D075DA06
4D075DC38
4D075EA05
4D075EA07
4D075EA35
4D075EB51
4F040AA02
4F040AB01
4F040AC01
4F040BA13
4F040CB13
4F042AA02
4F042AB00
4F042DD02
4F042DD07
4F042DD19
(57)【要約】
【課題】塗膜の厚さのばらつきを抑制することができる塗布装置、塗布方法及び積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】塗布装置は、トレイと、第1スキージと、第2スキージと、ローラと、前記第1スキージを駆動して、前記トレイに収容された液体から第1膜厚を有する第1液膜を形成し、前記第1液膜の形成の後に、前記第2スキージを駆動して、前記トレイに収容された前記第1液膜から前記第1液膜よりも薄い所定の第2膜厚を有する第2液膜を形成するスキージ駆動部と、前記ローラを駆動して、前記ローラに前記第2液膜を付着させ、前記第2液膜が付着した前記ローラを被塗布部材に押し当てて前記被塗布部材の表面に塗膜を形成するローラ駆動部と、を有する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイと、
第1スキージと、
第2スキージと、
ローラと、
前記第1スキージを駆動して、前記トレイに収容された液体から第1膜厚を有する第1液膜を形成し、前記第1液膜の形成の後に、前記第2スキージを駆動して、前記トレイに収容された前記第1液膜から前記第1液膜よりも薄い所定の第2膜厚を有する第2液膜を形成するスキージ駆動部と、
前記ローラを駆動して、前記ローラに前記第2液膜を付着させ、前記第2液膜が付着した前記ローラを被塗布部材に押し当てて前記被塗布部材の表面に塗膜を形成するローラ駆動部と、
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記ローラ駆動部は、前記ローラに前記第2液膜を付着させる際に、前記液体を収容した前記トレイの底面に前記ローラを押し付けることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記液体の粘度は10mPa・s以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
第1スキージを用いてトレイに収容された液体から第1膜厚を有する第1液膜を形成する工程と、
前記第1液膜の形成の後に、第2スキージを用いて前記トレイに収容された前記第1液膜から前記第1液膜よりも薄い所定の第2膜厚を有する第2液膜を形成する工程と、
ローラに前記第2液膜を付着させる工程と、
前記第2液膜が付着した前記ローラを被塗布部材に押し当てて前記被塗布部材の表面に塗膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする塗布方法。
【請求項5】
前記ローラに前記第2液膜を付着させる工程において、前記第2スキージは、前記液体のうちで前記第2液膜に含まれない部分を前記トレイの内面と前記第2スキージとの間に押しとどめていることを特徴とする請求項4に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記液体の粘度は10mPa・s以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗布方法。
【請求項7】
第1スキージを用いてトレイに収容された接着成分を含む液体から第1膜厚を有する第1液膜を形成する工程と、
前記第1液膜の形成の後に、第2スキージを用いて前記トレイに収容された前記第1液膜から前記第1液膜よりも薄い所定の第2膜厚を有する第2液膜を形成する工程と、
ローラに前記第2液膜を付着させる工程と、
前記第2液膜が付着した前記ローラを被塗布部材に押し当てて前記被塗布部材の表面に塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を介して前記被塗布部材に被接着部材を貼り付ける工程と、
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項8】
前記ローラに前記第2液膜を付着させる工程において、前記第2スキージは、前記液体のうちで前記第2液膜に含まれない部分を前記トレイの内面と前記第2スキージとの間に押しとどめていることを特徴とする請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記液体の粘度は10mPa・s以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布装置、塗布方法及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤等の溶液をグリーンシート等の被塗布部材に塗布することがある。この塗布の際には、溶液が入れられたトレイ内でローラを回転させてローラに溶液を付着させ、被塗布部材上でローラを回転させることで被塗布部材の表面に塗膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の塗布方法では、ローラに付着させる溶液の量にばらつきが生じやすい。特に、ローラに付着させる溶液の量が少ない場合にばらつきが顕著となりやすい。このようなばらつきが生じると、被塗布部材内で塗布むらが生じたり、複数の被塗布部材の間で塗膜の厚さにばらつきが生じたりする。
【0005】
本開示は、塗膜の厚さのばらつきを抑制することができる塗布装置、塗布方法及び積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、トレイと、第1スキージと、第2スキージと、ローラと、前記第1スキージを駆動して、前記トレイに収容された液体から第1膜厚を有する第1液膜を形成し、前記第1液膜の形成の後に、前記第2スキージを駆動して、前記トレイに収容された前記第1液膜から前記第1液膜よりも薄い所定の第2膜厚を有する第2液膜を形成するスキージ駆動部と、前記ローラを駆動して、前記ローラに前記第2液膜を付着させ、前記第2液膜が付着した前記ローラを被塗布部材に押し当てて前記被塗布部材の表面に塗膜を形成するローラ駆動部と、を有する塗布装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、塗膜の厚さのばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る塗布装置を例示する上面図である。
【
図2】実施形態に係る塗布装置を例示する正面図である。
【
図3】実施形態に係る塗布装置を例示する側面図である。
【
図4】Z軸駆動装置及びローラを例示する断面図である。
【
図8】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示するフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示する図(その1)である。
【
図10】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示する図(その2)である。
【
図11】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示する図(その3)である。
【
図12】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示する図(その4)である。
【
図13】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示する図(その5)である。
【
図14】実施形態に係る塗布装置を用いた塗布方法を例示する図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、本開示においては、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面と記載し、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面と記載し、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面と記載する。なお、便宜上、Z1-Z2方向を上下方向とし、Z1側を上側、Z2側を下側とする。また、平面視とは、Z1側から対象物を視ることをいい、平面形状とは、対象物をZ1側から視た形状のことをいう。
【0010】
本実施形態は塗布装置に関する。
図1は、実施形態に係る塗布装置を例示する上面図である。
図2は、実施形態に係る塗布装置を例示する正面図である。
図3は、実施形態に係る塗布装置を例示する側面図である。
図1は、Z1側から視たときの塗布装置を示し、
図2は、Y2側から視たときの塗布装置を示し、
図3は、X1側から視たときの塗布装置を示す。
【0011】
図1~
図3に示すように、実施形態に係る塗布装置1は、ステージ10と、ローラ20と、ローラ駆動部30と、液体付着部40と、固定装置50とを有する。
【0012】
ローラ駆動部30は、Y軸駆動装置11と、X軸駆動装置12と、Z軸駆動装置13とを有する。
【0013】
Y軸駆動装置11はステージ10に固定されており、X軸駆動装置12をY1-Y2方向に移動させる。Y軸駆動装置11はステージ10のZ1側に配置されている。Y軸駆動装置11は、例えば、レール及びスライダを有する。レールはY1-Y2方向に延びるようにしてステージ10に固定されている。スライダはY1-Y2方向に移動可能にレールに取り付けられている。
【0014】
X軸駆動装置12はY軸駆動装置11に固定されており、Z軸駆動装置13をX1-X2方向に移動させる。X軸駆動装置12は、例えば、レール及びスライダを有する。レールはX1-X2方向に延びる。スライダはX1-X2方向に移動可能にレールに取り付けられている。
【0015】
Z軸駆動装置13はX軸駆動装置12に固定されており、ローラ20をZ1-Z2方向に移動させる。
図4は、Z軸駆動装置13及びローラ20を例示する断面図である。
【0016】
ローラ20はX1-X2方向に延びる円柱状又は円筒状の軸21と、軸21の周面に設けられ、液体の吸収及び排出が可能なシート22とを有する。シート22は柔軟性を備えることが好ましい。シート22は、例えばスポンジ等の柔軟性を備えた多孔質体から構成される。
【0017】
Z軸駆動装置13は、フレーム61と、ベアリング62と、エアシリンダ63と、2つのリニアブッシュ64と、連結部材65と、電空レギュレータ66とを有する。フレーム61はベアリング62を介してローラ20の軸21の両端を回転可能に保持する。フレーム61は、ローラ20のZ1側に位置してX1-X2方向に延びるX軸延在部61Aを含む。X1-X2方向で、X軸延在部61Aの中心部にエアシリンダ63が固定され、エアシリンダ63を間に挟むようにして2つのリニアブッシュ64がX軸延在部61Aに固定されている。また、連結部材65は、Z1-Z2方向でフレーム61から離れた位置でX軸延在部61A及び2つのリニアブッシュ64を連結している。電空レギュレータ66はエアシリンダ63を駆動する。電空レギュレータ66によりエアシリンダ63が駆動されると、2つのリニアブッシュ64及び連結部材65によって姿勢を保持されながら、ローラ20がZ1-Z2方向に移動する。
【0018】
次に、液体付着部40について説明する。
図5は、液体付着部40を例示する上面図である。
図6は、液体付着部40を例示する正面図である。
図7は、液体付着部40を例示する側面図である。
図5は、Z1側から視たときの液体付着部40を示し、
図6は、Y2側から視たときの液体付着部40を示し、
図7は、X1側から視たときの液体付着部40を示す。
図5~
図7では、一部の構成要素を断面で示し、一部の構成要素を省略してある。
【0019】
図5~
図7に示すように、液体付着部40は、トレイ43と、ステージ44と、リニアガイド45と、Y軸可動部材46と、ボールねじ47とを有する。液体付着部40は、更に、整膜スキージ71と、ならしスキージ72と、スキージ支持部材73及び74と、エアシリンダ75及び76と、リニアガイド77及び78とを有する。ならしスキージ72は第1スキージの一例であり、整膜スキージ71は第2スキージの一例である。リニアガイド45と、Y軸可動部材46と、ボールねじ47と、スキージ支持部材73及び74と、エアシリンダ75及び76と、リニアガイド77及び78とがスキージ駆動部に含まれる。
【0020】
トレイ43は、テーブル41と、枠42とを有する。テーブル41は、例えば、平面形状が長方形状の板材であり、外縁に沿って上面の位置が中央部よりも下面側に下がった切り欠き部41Aを有する。枠42は切り欠き部41Aの外側面に沿って配置されている。枠42の上面はテーブル41の上面よりも上方にあり、枠42の内側でテーブル41の上面の上に溶液を溜められるように構成されている。トレイ43は溶液を収容する。例えば、テーブル41の上面は水平面である。
【0021】
整膜スキージ71及びならしスキージ72はトレイ43の上方に配置されている。整膜スキージ71及びならしスキージ72はX1-X2方向に延び、ZX面に略平行な面を有する。整膜スキージ71及びならしスキージ72は、平面視で枠42の内側に配置されている。スキージ支持部材73は整膜スキージ71を支持し、スキージ支持部材74はならしスキージ72を支持する。スキージ支持部材73及び74はX1-X2方向に延びており、平面視で、スキージ支持部材73及び74の両端部はトレイ43の外側に位置する。
【0022】
トレイ43の下方にステージ44が配置されており、トレイ43はステージ44に固定されている。また、Y1-Y2方向に延びるようにして2つのリニアガイド45がステージ44に固定されている。リニアガイド45は、例えば、レール及びスライダを有する。レールはY1-Y2方向に延びるようにしてステージ44に固定されている。スライダはY1-Y2方向に移動可能にレールに取り付けられている。リニアガイド45はステージ44とトレイ43との間に位置する。Y軸可動部材46は、基部46Aと、2つのリニアガイド固定部46Bと、2つのエアシリンダ保持部46Cとを有する。基部46AはX1-X2方向に延びており、平面視で、基部46Aの両端部はトレイ43の外側に位置する。一方のリニアガイド固定部46Bは、基部46AのX1側の端部につながり、YZ面に平行な面をX1側に備える。他方のリニアガイド固定部46Bは、基部46AのX2側の端部につながり、YZ面に平行な面をX2側に備える。一方のエアシリンダ保持部46Cは、X1側のリニアガイド固定部46Bの下端からX1側に延び、XY面に平行な面をZ1側に備える。他方のエアシリンダ保持部46Cは、X2側のリニアガイド固定部46Bの下端からX2側に延び、XY面に平行な面をZ1側に備える。
【0023】
基部46Aは、リニアガイド45のスライダに固定されている。また、基部46Aには、2つのリニアガイド45の間でY1-Y2方向に延びるボールねじ47が取り付けられている。従って、Y軸可動部材46は、リニアガイド45に案内されながら、ボールねじ47によりY1-Y2方向に移動可能である。
【0024】
Z1-Z2方向に延びるようにして、一方の一組のリニアガイド77及び78がX1側のリニアガイド固定部46Bに固定され、他方の一組のリニアガイド77及び78がX2側のリニアガイド固定部46Bに固定されている。リニアガイド77はリニアガイド78のY1側に位置する。リニアガイド77及び78は、例えば、レール及びスライダを有する。レールはX1-X2方向に延びるようにしてリニアガイド固定部46Bに固定されている。スライダはZ1-Z2方向に移動可能にレールに取り付けられている。
【0025】
X1側のエアシリンダ保持部46Cの上に一組のエアシリンダ75及び76が保持され、X2側のエアシリンダ保持部46Cの上に他方の一組のエアシリンダ75及び76が保持されている。エアシリンダ75はエアシリンダ76のY1側に位置する。
【0026】
整膜スキージ71を支持するスキージ支持部材73は、リニアガイド77のスライダに固定されている。また、スキージ支持部材73にはエアシリンダ75がつながっている。従って、整膜スキージ71は、リニアガイド77に案内されながら、エアシリンダ75によりZ1-Z2方向に移動可能である。
【0027】
ならしスキージ72を支持するスキージ支持部材74は、リニアガイド78のスライダに固定されている。また、スキージ支持部材74にはエアシリンダ76がつながっている。従って、ならしスキージ72は、リニアガイド78に案内されながら、エアシリンダ76によりZ1-Z2方向に移動可能である。
【0028】
また、上述のように、ボールねじ47によりY軸可動部材46をY1-Y2方向に移動させることができる。従って、ボールねじ47によりY軸可動部材46を介して整膜スキージ71及びならしスキージ72をY1-Y2方向に移動させることも可能である。
【0029】
次に、実施形態に係る塗布装置1を用いた塗布方法について説明する。
図8は、実施形態に係る塗布装置1を用いた塗布方法を例示するフローチャートである。
図9~
図14は、実施形態に係る塗布装置1を用いた塗布方法を例示する図である。この例では、複数のグリーンシートに溶液として接着剤を塗布する。グリーンシートは被塗布部材の一例であり、接着剤は液体の一例である。
【0030】
まず、ステップS1において、
図9(a)に示すように、トレイ43内に溶液80を供給する。溶液80は、例えばトリアセチン、ポリエチレングリコール(PEG)及び非イオン系界面活性剤の混合液である。非イオン系界面活性剤としては、例えばトリトンX(商品名)を用いることができる。溶液80の粘度は限定されないが、グリーンシートの接着剤として用いる溶液80の粘度は、例えば10mPa・s以上である。溶液80の供給の際には、整膜スキージ71及びならしスキージ72は、予め定められた待機位置に位置させておく。待機位置は、例えば、テーブル41の上面から、Z1側に予め定められた距離だけ離れた位置である。なお、溶液80の粘度によっては、溶液80が濡れ広がりにくく、テーブル41の上面の一部に円頂状に供給されてもよい。
【0031】
次に、ステップS2において、トレイ43に収容された溶液80から第1液膜を形成する。第1液膜の形成では、まず、
図9(b)に示すように、エアシリンダ76によりならしスキージ72を下降させる。このとき、ならしスキージ72の下端は、テーブル41の上面に接触させず、テーブル41の上面との間に、形成しようとする第1液膜の厚さと等しい距離を確保する。そして、
図10(a)に示すように、ボールねじ47によりならしスキージ72をY1側に移動させる。この結果、溶液80の表面がならされ、所定の膜厚を有する第1液膜81が溶液80から形成される。ならしスキージ72のY1-Y2方向での1回の移動だけでは所定の膜厚を有する第1液膜81が形成されない場合には、ならしスキージ72のY1-Y2方向での移動を複数回行ってもよい。なお、整膜スキージ71はならしスキージ72と共通のY軸可動部材46に取り付けられているため、ならしスキージ72の移動に伴って整膜スキージ71もY1-Y2方向に移動する。整膜スキージ71の下端がならしスキージ72の下端よりも上方にあれば、整膜スキージ71が溶液80に接触してもよい。
【0032】
次に、ステップS3において、第1液膜81よりも薄い第2液膜を第1液膜81から形成する。第2液膜の形成では、まず、
図10(b)に示すように、エアシリンダ76によりならしスキージ72を上昇させ、かつエアシリンダ75により整膜スキージ71を下降させる。このとき、整膜スキージ71の下端は、テーブル41の上面に接触させず、テーブル41の上面との間に、形成しようとする第2液膜の厚さと等しい距離を確保する。
【0033】
そして、
図11(a)に示すように、ボールねじ47により整膜スキージ71をY2側に移動させる。この結果、所定の膜厚を有する第2液膜82が第1液膜81から形成される。なお、ならしスキージ72は整膜スキージ71と共通のY軸可動部材46に取り付けられているため、整膜スキージ71の移動に伴ってならしスキージ72もY1-Y2方向に移動する。第2液膜82の厚さは、例えば数十μm程度である。
【0034】
なお、整膜スキージ71がテーブル41の上面に接触していなくても、整膜スキージ71により堰き止められ、整膜スキージ71とY2側の枠42との間に溜まった溶液80は第2液膜82に向けて流れ出しにくい。特に、溶液80の粘度が10mPa・s以上であれば、溶液80は第2液膜82に向けて流れ出しにくい。
【0035】
次に、ステップS4において、ローラ20に第2液膜82(溶液80)を付着させる。ローラ20への付着では、まず、電空レギュレータ66によってエアシリンダ63を駆動し、
図11(b)に示すように、ローラ20を下降させてテーブル41の上面に、荷重F11で押し付ける。この結果、ローラ20のシート22が第2液膜82に接触する。ローラ20に第2液膜82(溶液80)を付着させる間、整膜スキージ71は、溶液80のうちで第2液膜82に含まれない部分をトレイ43の内面と整膜スキージ71との間に押しとどめていることが好ましい。
【0036】
次に、
図12(a)に示すように、ローラ20をテーブル41の上面に荷重F11で押し付けながら、Y軸駆動装置11によりローラ20をY2側に予め定められた距離だけ移動させる。移動の際にローラ20が回転し、ローラ20の周面に第2液膜82が付着する。例えば、スポンジ製のシート22に第2液膜82が吸収される。ローラ20の移動距離は限定されないが、例えばローラ20の1回転分とする。荷重F11は、ローラ20の周面に第2液膜82が付着しやすい程度の荷重とする。
【0037】
そして、ローラ20を移動させた後には、電空レギュレータ66によってエアシリンダ63を駆動し、
図12(b)に示すように、ローラ20を上昇させて第2液膜82から離す。
【0038】
次に、ステップS5において、グリーンシートに塗膜を形成する。塗膜の形成では、まず、
図13(a)に示すように、固定装置50にグリーンシート51を固定させる。例えば、固定装置50は静電吸着によりグリーンシート51を固定する。また、Y軸駆動装置11によりローラ20を液体付着部40の上方から固定装置50の上方まで移動させる。そして、電空レギュレータ66によってエアシリンダ63を駆動し、ローラ20を下降させてグリーンシート51の上面に荷重F21で押し付ける。
【0039】
次に、
図13(b)に示すように、ローラ20をグリーンシート51の上面に荷重F21で押し付けながら、Y軸駆動装置11によりローラ20をY2側に移動させる。移動の際にローラ20が回転し、ローラ20の周面に付着していた第2液膜82の少なくとも一部がグリーンシート51の上面に付着し、塗膜52が形成される。荷重F21は、ローラ20の周面から第2液膜82がグリーンシート51の上面に移動しやすい程度の荷重とする。荷重F21が荷重F11と相違していてもよい。例えば、荷重F21が荷重F11より大きくてもよい。
【0040】
その後、
図14(a)に示すように、ローラ20をグリーンシート51の上面に荷重F22で押し付けながら、Y軸駆動装置11によりローラ20をY1-Y2方向で往復移動させる。往復移動の際にローラ20が回転し、ローラ20の周面に付着していた第2液膜82がグリーンシート51の上面に更に付着し、塗膜52が厚くなる。荷重F22は、ローラ20の周面から第2液膜82がグリーンシート51の上面に更に移動しやすい程度の荷重とする。荷重F22が荷重F21及びF21と相違していてもよい。例えば、荷重F22が荷重F11及びF21より小さくてもよい。第2液膜82の全部がグリーンシート51の上面に移動することが好ましいが、第2液膜82の一部がローラ20の周面に残存してもよい。往復移動の回数は、例えば、第2液膜82のグリーンシート51の上面への移動が実質的に生じなくなる程度とする。往復移動の回数を予め定めておいてもよい。
【0041】
そして、ローラ20を往復移動させた後には、電空レギュレータ66によってエアシリンダ63を駆動し、
図14(b)に示すように、ローラ20を上昇させて塗膜52から離す。
【0042】
次に、ステップS6において、所定数の処理、すなわち所定数のグリーンシート51への塗膜52の形成が完了したか判断する。所定数の処理が完了していれば、そのまま終了する。
【0043】
一方、所定数の処理が完了していなければ、トレイ43内の溶液80の残量が所定値以上であるか判断する。すなわち、塗膜52の形成毎にトレイ43内の溶液80の量が減少するため、続けて処理を実行できる程度の溶液80が残っているか判断する。そして、トレイ43内の溶液80の残量が所定値以上であれば、ステップS2に戻り、トレイ43内に残存している溶液80から第1液膜81を形成し、その後にステップS3以降の処理を行う。また、トレイ43内の溶液80の残量が所定値未満であれば、ステップS1に戻り、溶液80を供給し、その後にステップS2以降の処理を行う。
【0044】
このような塗布装置1を用いた塗布方法によれば、ローラ20に付着させる第2液膜82の厚さを一定にすることができるため、ステップS4でローラ20を移動させる距離を一定にすることで、ローラ20に付着させる溶液80の量が少ない場合であっても、ローラ20に付着させる溶液80の量の変動を抑制することができる。このため、グリーンシート51内での塗膜52の厚さの均一性を向上して塗布むらを抑制することができ、また、複数のグリーンシート51の間での塗膜52の厚さの均一性を向上することができる。
【0045】
また、塗布装置1においては、電空レギュレータ66を用いてエアシリンダ63を制御しており、ローラ20をテーブル41又はグリーンシート51の上面に押し付ける際の荷重が可変である。従って、ローラ20に第2液膜82(溶液80)を付着させやすくしながら、ローラ20からグリーンシート51へと第2液膜82(溶液80)を移動させやすくすることができる。このため、塗膜52の厚さに優れた均一性を得ることができる。なお、ローラ20をテーブル41又はグリーンシート51の上面に押し付ける際の荷重は、モータ駆動等により可変としてもよい。
【0046】
被塗布部材はグリーンシート51に限定されず、他の部材が用いられてもよい。また、溶液80に代えて他の液体が被塗布部材に塗布されてもよい。
【0047】
塗布装置1は積層体の製造方法に用いることができる。例えば、接着成分を含む溶液80を用いてグリーンシート51の上に塗膜52を形成し、塗膜52を介してグリーンシート51に他のグリーンシートを貼り付けることで積層体を製造することができる。例えば、積層体として静電チャック等のセラミック積層体を製造することができる。
【0048】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 塗布装置
20 ローラ
21 軸
22 シート
30 ローラ駆動部
40 液体付着部
43 トレイ
50 固定装置
51 グリーンシート
52 塗膜
71 整膜スキージ
72 ならしスキージ
80 溶液