(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140689
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】中華麺食品
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20241003BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20241003BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20241003BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20241003BHJP
【FI】
A23L7/113
A23L35/00
A23L7/109 A
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051981
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋草 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】山田 みのり
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
【テーマコード(参考)】
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LC05
4B036LE05
4B036LF01
4B036LF19
4B036LH09
4B036LH50
4B036LP19
4B046LA05
4B046LB20
4B046LC01
4B046LC09
4B046LC17
4B046LE15
4B046LE19
4B046LG04
4B046LG15
4B046LG29
4B046LG60
4B046LP01
4B046LP14
4B046LP41
4B046LP71
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】スープに浸漬した状態で一定時間保持されても、中華麺の風味が損なわれにくく、環境にも優しい、テイクアウトや宅配等の持ち運びに適した中華麺食品の提供。
【解決手段】茹でた中華麺をゲル化していない液状スープに浸した状態で10~90分間持ち運びされる中華麺食品であって、前記液状スープがデキストリンを10~45質量%含有する中華麺食品である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹でた中華麺をゲル化していない液状スープに浸した状態で10~90分間持ち運びされる中華麺食品であって、
前記液状スープがデキストリンを10~45質量%含有することを特徴とする中華麺食品。
【請求項2】
前記中華麺のpHが8.5~11.0である請求項1に記載の中華麺食品。
【請求項3】
前記中華麺100質量部に対して前記液状スープが50~500質量部である請求項1または2に記載の中華麺食品。
【請求項4】
前記デキストリンのDE値が30以下である請求項1または2に記載の中華麺食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華麺食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テイクアウトや宅配で、様々な食品が提供されている。
【0003】
例えば、冷凍麺と、中皿と、加温された液体スープと、電子レンジ調理可能な容器と、及び電磁レンジ調理可能な蓋と、を含むデリバリー用電子レンジ調理麺類であって、下から前記容器、前記液体スープ、前記中皿、前記冷凍麺、前記蓋の順に配置された状態でデリバリーされるデリバリー用電子レンジ調理麺類が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、適宜太さと長さにうたれたのち熱湯で茹でられた生麺の表面にデキストリン水溶液が噴霧または塗布されて開閉自在な携行容器に装填されて成る携行容器に装填された生麺食品が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
他方、煮崩れが少なく、かつ長期保存しても、食感が変わらない麺類の調理済みレトルト食品を提供する技術として、茹で済み麺類を、DE4~8のデキストリンを30~35重量%含有する調味液中で加熱殺菌する麺類の調理済みレトルト食品の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-78472号公報
【特許文献2】特開平6-319474号公報
【特許文献3】特開2019-71838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かんすいを使用する中華麺は、そのかんすい由来の風味が中華麺の美味しさに大きく寄与しているが、スープに浸して食べる中華麺食品では、スープに浸した状態で持ち運びされた場合、短時間で中華麺の風味が飛んでしまう。そのため、持ち運びされる中華麺食品では、中華麺とスープとが別々に収容されることが多く、それに伴い、容器や包材を余計に使用する必要があった。
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、スープに浸漬した状態で一定時間保持されても、中華麺の風味が損なわれにくく、環境にも優しい、テイクアウトや宅配等の持ち運びに適した中華麺食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決するため検討した結果、デキストリンを10~45質量%含有するゲル化していない液状スープを用いることで、茹でた麺類を液状スープに浸した状態で一定時間保持した場合でも、中華麺の風味が損なわれにくい、環境にも優しい中華麺食品とできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らの知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 茹でた中華麺をゲル化していない液状スープに浸した状態で10~90分間持ち運びされる中華麺食品であって、
前記液状スープがデキストリンを10~45質量%含有することを特徴とする中華麺食品である。
<2> 前記中華麺のpHが8.5~11.0である前記<1>に記載の中華麺食品である。
<3> 前記中華麺100質量部に対して前記液状スープが50~500質量部である前記<1>または<2>に記載の中華麺食品である。
<4> 前記デキストリンのDE値が30以下である前記<1>~<3>のいずれかに記載の中華麺食品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、スープに浸漬した状態で一定時間保持されても、中華麺の風味が損なわれにくく、環境にも優しい、テイクアウトや宅配等の持ち運びに適した中華麺食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(中華麺食品)
本発明の中華麺食品は、茹でた中華麺をゲル化していない液状スープに浸した状態で10~90分間持ち運びされる中華麺食品である。
【0013】
<液状スープ>
前記液状スープは、ゲル化していない液状スープである。
前記液状スープは、味のついたスープのことをいい、例えば冷やし中華であれば「つゆ」とも呼称されるものも該当する。
【0014】
前記液状スープとしては、デキストリンを配合する以外は、特に制限はなく、通常スープに使用される原料を適宜使用することができる。
前記スープに使用される原料としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、核酸、蛋白加水分解物、アミノ酸、クエン酸、酢酸などの酸味料、醤油、酒、みりん、澱粉、ゼラチン、増粘剤、油脂、動植物粉末、動植物エキス、香辛料、色素、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記液状スープにおけるこれらの原料の含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0015】
-デキストリン-
本発明で用いられるデキストリンは、原料澱粉を低分子化したものであり、乾式分解した焙焼デキストリンでもよいし、湿式分解したもの、例えば酸処理澱粉、酸化澱粉、酵素変性デキストリンでもよい。また、これらのデキストリンに、水素添加し還元したものを使用してもよく、特に限定されるものではない。また、シクロデキストリン、イソマルトデキストリンを用いてもよい。
【0016】
前記デキストリンのデキストロース当量(DE)の値(以下、「DE値」と称することがある。)としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、3~45であることが好ましく、30以下がより好ましい。また、風味への影響を抑える観点から、3~30であることが好ましく、より好ましくは3~20、さらに好ましくは3~15である。
【0017】
前記デキストリンの前記液状スープにおける含有量(液状スープにおける濃度)としては、10~45質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。前記デキストリンの含有量が10~45質量%である液状スープを用いることで、液状スープに浸漬していても、中華麺の風味が飛びづらくなる。前記デキストリンの前記液状スープにおける含有量が10質量%未満であると、効果が十分に奏されず、45質量%を超えると、液状スープの粘度が高くなる、中華麺食品の味への影響が大きくなるなどの恐れがある。
【0018】
前記液状スープの製造方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、前記デキストリンを、液状スープに添加する方法などが挙げられる。
【0019】
前記液状スープの温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、冷たいスープであってもよいし、温かいスープであってもよい。
【0020】
<中華麺>
前記中華麺食品における中華麺は、茹でた中華麺(以下、「茹で中華麺」と称することがある。)である。
【0021】
前記茹で中華麺は、通常の中華麺の製造に用いられる原料を用いて製造した麺線を、通常の方法で茹でることにより、製造することができる。例えば、穀粉類、すなわち穀粉、澱粉類を主体とする原料粉に水、かんすい、必要に応じて食塩等の副原料を加えて調製した生地から麺帯を作製し、これを切り出して製造した麺線を茹でることで、茹で中華麺を製造することができる。
【0022】
前記穀粉としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉、ライ麦粉などが挙げられる。これらの中でも、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉が好ましい。前記穀粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記穀粉は、小麦粉を含むことが好ましい。
前記小麦粉としては、特に制限はなく、麺類の製造に一般に使用されるものを適宜選択することができ、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、ふすま粉、熱処理粉(α化小麦粉、部分α化小麦粉、焙焼小麦粉等)などが挙げられる。前記小麦粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記穀粉における小麦粉の含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0025】
前記澱粉類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及びそれらを加工(例えば、架橋化、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化など)した加工澱粉が挙げられる。前記澱粉類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記澱粉類の中でも、タピオカを由来とする澱粉が好ましい。また、前記澱粉類は、加工澱粉が好ましい。前記加工澱粉は、加工タピオカ澱粉が好ましく、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群より選択される1種以上の加工を行ったタピオカ澱粉がより好ましい。
【0026】
前記かんすい(「かんすい原料」と称することもある。)としては、特に制限はなく、中華麺の製造に通常用いられるものを適宜選択することができ、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。前記かんすい原料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記かんすい原料の中でも、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又はこれらの組み合わせを主体とするかんすい原料が好ましい。
前記かんすい原料は市販品であってもよく、例えば、炭酸カリウム及び/又は炭酸ナトリウムを含有する市販のかんすい原料(例えば、オリエンタル酵母工業株式会社製の商品名「粉末かんすい青」)を好適に使用することができる。
【0027】
前記かんすい原料の使用量としては、特に制限はなく、使用するかんすい原料の種類や所望の中華麺のpHなどに応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記中華麺のpHとしては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、8.5~11.0が好ましい。前記pHが8.5未満であると、時間とともにかんすい風味が減衰していく恐れがある。
本明細書において、pHは、茹でた麺1gを水10mLに懸濁させた懸濁液のpH(25℃)をいう。
【0029】
前記中華麺の厚みとしては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0030】
<中華麺食品>
前記中華麺食品は、茹でた中華麺をゲル化していない液状スープに浸した状態で10~90分間持ち運びされる。
【0031】
前記中華麺食品は、前記液状スープに前記中華麺の少なくとも一部が浸されていればよく、前記中華麺の全体が液状スープに浸されていてもよい。
【0032】
前記中華麺食品における前記液状スープの使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、前記中華麺100質量部に対して、50~500質量部であることが好ましい。
【0033】
前記中華麺食品は、前記中華麺、前記液状スープ以外に、必要に応じて更に具材等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0034】
前記中華麺食品の製造方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、所望の形状、構造、大きさの容器に、前記中華麺と、前記液状スープと、必要に応じて前記その他の成分とを入れ、製造することができる。
前記容器の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記中華麺食品は、例えば、テイクアウト用、宅配用として好適に用いることができる。
【0036】
前記中華麺食品を持ち運びする際の温度としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0037】
前記中華麺食品の具体例としては、ラーメン、冷やし中華などが挙げられるが、これらに限定されない。
なお、前記中華麺食品は、レトルト食品のような加圧加熱処理された食品ではない。
【0038】
前記中華麺食品は、例えば、喫食直前に電子レンジで加熱されてもよいし、加熱せず直接食べることもできる。
【0039】
本発明によれば、スープに浸漬した状態で一定時間保持されても、中華麺の風味が損なわれにくい中華麺食品を提供することができる。したがって、本発明は、デキストリンを10~45質量%含有するゲル化していない液状スープに茹でた中華麺を浸すことを特徴とする中華麺の風味の低下を抑制する方法にも関する。
【実施例0040】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明は、これらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(試験例1)
<茹で中華麺の製造>
小麦粉(中力粉、特ナンバーワン(日清製粉株式会社製))100質量部に、かんすい(粉末かんすい青、オリエンタル酵母工業株式会社製)1質量部および水34質量部からなる溶液を加えて、減圧(-0.093MPa)下で混捏して生地を調製した。該生地を、製麺ロールを用いて圧延・複合して麺帯を作製し、切り刃(♯20角)で切り出して麺線を製造した(麺厚1.35mm)。
得られた麺線を、歩留まり(対生麺)が175%となるように茹で、茹で中華麺を得た。
【0042】
<液状スープの調製>
市販のラーメンスープ(デキストリン不含有)に、デキストリン(グリスターP(松谷化学工業株式会社製、DE15))を添加し、加熱し、水で歩留まりを調整することで、下記の表1に記載のデキストリン濃度の液状スープを得た。
【0043】
<評価>
プラスチック製の容器に、上記茹で中華麺100質量部と、70℃に加温した上記液状スープ300質量部を充填し、ふたをした。これを0~90分間常温で静置した後、訓練された10名の評価者が喫食し、下記の評価基準で中華麺の風味(かんすい風味)を評価した。評価結果(平均点)を下記の表1に示す。
[中華麺のかんすい風味の評価基準]
5点 : かんすい風味を非常に強く感じる。
4点 : かんすい風味を強く感じる。
3点 : かんすい風味を感じる。
2点 : かんすい風味をほとんど感じない。
1点 : かんすい風味を感じない。
【0044】
【0045】
液状スープにおけるデキストリンの濃度が60質量%の場合、かんすい風味は保持されていたものの、液状スープの粘度が高くなりすぎ、また、液状スープにおけるデキストリンの濃度が20質量%及び40質量%の場合と比べて、味の点で劣るものであった。
【0046】
(試験例2)
<茹で中華麺の製造>
かんすいの量を表2に記載の量とした以外は、試験例1と同様にして、茹で中華麺を得た。
【0047】
<液状スープの調製>
液状スープにおけるデキストリン濃度を20質量%とした以外は、試験例1と同様にして、液状スープを得た。
【0048】
<評価>
試験例1と同様にして、中華麺の風味(かんすい風味)を評価した。評価結果を下記の表2に示す。
【0049】
【0050】
(試験例3)
<茹で中華麺の製造>
試験例1と同様にして、茹で中華麺を得た。
【0051】
<液状スープの調製>
下記の表3に記載のデキストリンを用い、液状スープにおけるデキストリン濃度を20質量%とした以外は、試験例1と同様にして、液状スープを得た。なお、使用したデキストリンの詳細は、下記のとおりである。
A : パインデックス#100(DE:4、松谷化学工業株式会社製)
B : グリスターP(DE:15、松谷化学工業株式会社製)
C : パインデックス#3(DE:25、松谷化学工業株式会社製)
D : パインデックス#6(DE:40、松谷化学工業株式会社製)
E : クラスターデキストリン(シクロデキストリン、グリコ栄養食品株式会社製)
【0052】
<評価>
試験例1と同様にして、中華麺の風味(かんすい風味)を評価した。評価結果を下記の表3に示す。
【0053】
【0054】
DE値が40のデキストリンを用いた場合、かんすい風味は保持されていたものの、DE値が4~25のデキストリンを用いた場合と比べて、味の点でやや劣るものであった。
【0055】
以上のように、本発明によれば、スープに浸漬した状態で一定時間保持されても、中華麺の風味が損なわれにくく、環境にも優しい中華麺食品を提供することができることが確認された。本発明の中華麺食品は、テイクアウトや宅配等の持ち運びをする食品に好適に用いることができる。