(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140693
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241003BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241003BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20241003BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
H01L21/302 101H
C23C16/50
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051985
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 八城
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030FA01
5F004AA01
5F004AA13
5F004BD04
5F004DA04
5F004DA07
5F004DA17
5F004DA23
5F004DA29
5F004DB20
5F004EA28
5F045AA08
5F045BB01
5F045EF05
5F045EH11
5F045EH18
(57)【要約】
【課題】 処理容器内に収容された基板あるいは処理容器内に対して、トロイダル磁場を利用した誘導結合プラズマを用いてプラズマ処理を行うこと。
【解決手段】基板処理装置は、基板が収容され、内部が排気される処理容器と、処理容器内に処理ガスを供給する第1ガス供給部と、処理容器の外部にガス流路を形成すると共に、ガス流路の複数の端部が側方から処理容器内に接続されるように設けられ、誘電体により構成される流路形成部と、処理容器内とガス流路とにより形成される周回路にプラズマ生成用ガスを供給する第2ガス供給部と、プラズマ生成用ガスをプラズマ化して周回路を流れるプラズマを形成し、基板あるいは処理容器内をプラズマ処理するために、電源から電流が供給されてガス流路に磁場を作用させるコイルが各々巻回され、処理容器の外部にガス流路の端部の数以上の数だけ設けられる磁性体のコアと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が収容され、内部が排気される処理容器と、
前記処理容器内に前記基板を処理するための処理ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記処理容器の外部にガス流路を形成すると共に、前記ガス流路の複数の端部が側方から前記処理容器内に接続されるように設けられ、誘電体により構成される流路形成部と、
前記処理容器内と前記ガス流路とにより形成される周回路にプラズマ生成用ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記プラズマ生成用ガスをプラズマ化して前記周回路を流れるプラズマを形成し、前記基板あるいは前記処理容器内をプラズマ処理するために、電源から電流が供給されて前記ガス流路に磁場を作用させるコイルが各々巻回され、前記処理容器の外部に前記ガス流路の端部の数以上の数だけ設けられる磁性体のコアと、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記流路形成部は管であり、前記コアは前記管を囲む環状体である請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記管には分岐が設けられず、両端部が前記処理容器に側方から接続され、
当該管は当該処理容器の側方に複数設けられる請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
各管の両端は前記処理容器の周方向の異なる位置に開口し、平面視で当該管毎の一端から他端に至る領域は、当該処理容器の周方向に互いにずれており、
前記各管を周方向に順番にプラズマが通過するように、各管について前記周方向の一方の端部が前記プラズマの入口、他方の端部が前記プラズマの出口となるように前記第2ガス供給部による当該プラズマ生成用ガスの供給が行われる請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
平面視で前記周回路が前記基板の一端側と他端側とを横断して形成されるように、
平面視で処理容器内を二等分した一方側の領域に一の前記管の両端部が開口し、他方側の領域に他の前記管の両端部が開口する請求項3記載の基板処理装置。
【請求項6】
各管の両端は前記処理容器の周方向の異なる位置に開口し、平面視で当該管毎の一端から他端に至る領域は、当該処理容器の周方向に互いにずれており、
周方向においての前記プラズマの入口となる側及び前記プラズマの出口となる側が、各管の間で異なる請求項3記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記複数の管のうちの選択された管に前記プラズマの流れが形成され、且つ選択された管を切り替えるように、前記電源から供給される電流の供給先が切り替えられる請求項5記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記管を第1管、前記周回路を第1周回路とすると、
前記処理容器の天井に両端が開口する誘電体からなる第2管が設けられ、
前記第2ガス供給部は、前記処理容器内と前記第2管内とにより形成される第2周回路にプラズマ生成用ガスを供給し、
前記第2周回路を流れるプラズマを形成するために、前記第2管を囲む環状体である前記コアが複数設けられる請求項3記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記処理容器内には前記基板が載置される載置台が設けられ、
前記管の端部は前記載置台に載置される前記基板よりも上方で、前記処理容器内の互いに異なる高さに開口する請求項2記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記管の各端部は前記処理容器の周方向の異なる位置に開口し、
前記管は鉛直面及び水平面に対して傾いて伸びる部位を備える請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理容器内を上方領域と下方領域とに区画する区画部が設けられ、
前記下方領域に前記基板を載置する載置台が設けられ、
前記管は上方領域に開口し、
前記区画部には、プラズマを前記下方領域に供給するために、前記上方領域と前記下方領域とを連通させる連通路が設けられる請求項2記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記処理容器の側壁に形成された開口部に前記管の端部が設けられ、
前記第2ガス供給部は、
前記開口部と前記管の端部の外周面との間に形成されて前記処理容器内に連通し、前記処理容器の外部から前記プラズマ生成用ガスが供給される第1隙間と、
前記第1隙間について前記処理容器の外側に向かう側を塞ぐように当該処理容器に設けられる閉塞部と、
を備える請求項2記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第1隙間及び閉塞部は、前記管の一端部側、他端部側の各々に設けられ、
前記処理容器の側壁は、前記管の前記一端部側の先端に間隔を空けて対向し、前記隙間に連通する第2隙間を形成する対向部を備え、
前記対向部は前記第1隙間から前記第2隙間へ流れた前記プラズマ生成用ガスが当該管の前記ガス流路に折り返されて吐出されるように当該プラズマ生成用ガスの流れを規制する規制部を備える請求項12記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記周回路におけるプラズマの流れ方向を切り替えるために、
前記ガス流路において前記プラズマ生成用ガスが吐出される方向と、前記コイルにて電流が流れる方向と、を切り替える切替え機構が設けられる請求項2記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記プラズマ生成用ガスは前記処理ガスとは異なるガスであり、
前記第1ガス供給部は、前記下方領域において前記載置台の上方を横方向に移動し、前記処理ガスの吐出口を備える供給部本体を備える請求項11記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第1ガス供給部は、
前記処理容器の天井を貫通して縦方向に伸長すると共に、前記処理ガスの上流側流路を形成するシャフトと、
前記処理容器の外部に設けられ、前記シャフトを軸回りに回転させる回転機構と、
を備え、
前記シャフトから平面視で放射状に広がるように前記供給部本体は複数設けられ、当該供給部本体は前記上流側流路から前記吐出口に前記処理ガスを供給する下流側流路を備える請求項15記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記管において、前記処理容器の外側に露出する部位の各端部に前記コアが設けられる請求項2記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記露出する部位の一端部、他端部、前記ガス流路の流路方向における一端部と他端部との間の各々に前記コアが設けられる請求項17記載の基板処理装置。
【請求項19】
基板が収容される処理容器の内部を排気する工程と、
前記処理容器内に第1ガス供給部から処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
第2ガス供給部により誘電体により構成される流路形成部によって前記処理容器の外部に形成されると共に、前記ガス流路の複数の端部が側方から前記処理容器内に接続されるように設けられるガス流路と前記処理容器内と前記ガス流路とにより形成される周回路にプラズマ生成用ガスを供給する工程と、
前記処理容器の外部に前記ガス流路の端部の数以上の数だけ設けられる磁性体のコアに各々巻回されるコイルに電流を供給し、前記ガス流路に磁場を作用させる工程と、
前記磁場により前記プラズマ生成用ガスをプラズマ化して前記周回路を流れるプラズマを形成し、前記基板あるいは前記処理容器内をプラズマ処理する工程と、
を備える基板処理方法。
【請求項20】
前記周回路において前記プラズマが流れる方向を切り替えるか、
あるいは前記流路形成部が複数設けられ、複数の流路形成部間で前記プラズマの流れが形成される前記流路形成部を切り替える工程を備える請求項19記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造工程においては、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記載する)に対して処理ガスをプラズマ化することにより得られた反応性の高い活性種を用いて、成膜処理やエッチング処理を行うことが知られている。プラズマを生成する手法としては、トロイダル磁場を利用した誘導結合プラズマ(ICP)を利用する場合がある。
【0003】
特許文献1には、プラズマリアクタチャンバの天井に、トロイダル中空チューブの導管(中空導管)が複数配列されている構成が提案されている。また、中空導管の開口端が、チャンバの天井に接続される構成と、チャンバの側壁に接続される構成が例示されている。
【0004】
特許文献2には、処理チャンバの天井に、2本の中空な外部凹角導管を互いに直交するように、夫々の開口端がチャンバの天井に接続される構成が提案されている。夫々の外部凹角導管には、トロイダルコアが設けられ、各トロイダルコアには導電性コイルが巻かれる例が記載されている。
特許文献1及び特許文献2には、コイルがインピーダンス整合回路を介してRF電源に接続されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004-506339号公報
【特許文献2】特表2012-507867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、処理容器内に収容された基板あるいは処理容器内に対して、トロイダル磁場を利用した誘導結合プラズマを用いてプラズマ処理を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の基板処理装置は、
基板が収容され、内部が排気される処理容器と、
前記処理容器内に前記基板を処理するための処理ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記処理容器の外部にガス流路を形成すると共に、前記ガス流路の複数の端部が側方から前記処理容器内に接続されるように設けられ、誘電体により構成される流路形成部と、
前記処理容器内と前記ガス流路とにより形成される周回路にプラズマ生成用ガスを供給する第2ガス供給部と、
前記プラズマ生成用ガスをプラズマ化して前記周回路を流れるプラズマを形成し、前記基板あるいは前記処理容器内をプラズマ処理するために、電源から電流が供給されて前記ガス流路に磁場を作用させるコイルが各々巻回され、前記処理容器の外部に前記ガス流路の端部の数以上の数だけ設けられる磁性体のコアと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、処理容器内に収容された基板あるいは処理容器内に対して、トロイダル磁場を利用した誘導結合プラズマを用いてプラズマ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の基板処理装置の第1実施形態を示す縦断側面図である。
【
図2】処理容器の一例の一部を示す概略斜視図である。
【
図6】コイルの接続の第1の例を示す説明図である。
【
図7】第1ガス供給部の一例を示す概略斜視図である。
【
図8】プラズマの流れの第1の例を示す平面図である。
【
図9】プラズマの流れの第1の例を示す縦断側面図である。
【
図10A】基板処理装置の第2実施形態を示す処理容器と第1管を示す縦断側面図である。
【
図10B】コイルの切替え部の構成例を示す説明図である。
【
図11】コイルの接続の第2の例を示す説明図である。
【
図12】プラズマの流れの第2の例を示す平面図である。
【
図13】プラズマの流れの第2の例を示す縦断側面図である。
【
図14】コイルの接続の第3の例を示す説明図である。
【
図15】プラズマの流れの第3の例を示す平面図である。
【
図16】プラズマの流れの第3の例を示す縦断側面図である。
【
図17】基板処理装置の第3実施形態を示す平面図である。
【
図18】基板処理装置の第3実施形態を示す平面図である。
【
図19】第1管のさらに他の例を示す平面図である。
【
図20】基板処理装置の第4実施形態を示す縦断側面図である。
【
図21】基板処理装置の第4実施形態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<基板処理装置の第1実施形態>
本開示の基板処理装置の構成について、基板の処理が成膜処理である場合を例にし、
図1~
図5を参照して説明する。
基板処理装置1は、基板であるウエハWを格納して、内部が排気される処理容器10を備えている。処理容器10は、例えばアルミニウム(Al)により構成され、処理容器10の内部は、その上方領域がプラズマ室2、下方領域が基板処理室11として形成されている。プラズマ室2及び基板処理室11は夫々例えば略円筒形状に形成され、プラズマ室2は基板処理室11よりも直径が小さい円筒形状に構成されている。プラズマ室2と、後述のプラズマ生成用の管とがなす環状の空間を周回する誘導結合プラズマの流れを形成することで、ウエハWに処理が行われるように基板処理装置1が構成されている。
【0011】
<基板処理室>
基板処理室11の側面には、外部の不図示の真空搬送室との間でウエハWの受け渡しを行うための搬入出口12が、ゲートバルブ13により開閉自在に設けられている。
基板処理室11の側面における搬入出口12よりも上方には、複数の排気口14が、周方向の離れた位置に夫々形成されている。排気口14には、排気路15を介して、真空ポンプや圧力調節バルブ等からなる排気機構16が接続され、処理容器10内が減圧雰囲気に設定される。
【0012】
基板処理室11内には、ウエハWが載置される載置台3が、昇降軸31を介して昇降機構32により、
図1に実線にて示す処理位置と、一点鎖線にて示す受け渡し位置との間で、気密に昇降自在に設けられている。受け渡し位置は、搬入出口12を介して不図示の基板搬送機構との間でウエハWの受け渡しを行う位置である。また、載置台3の下方には、ウエハWの受け渡し時に、ウエハWを下面側から支持して持ち上げる複数の支持ピン33が、昇降機構34により昇降自在に設けられている。
図1中、符号30は載置台3に設けられた支持ピン33用の貫通孔、符号35はシールド部材を夫々示している。
【0013】
<プラズマ室>
プラズマ室2は、側壁21と天井22とを備えており、例えば側壁21の内面は、平面的に見て、処理位置にある載置台3に載置されたウエハWの外縁よりも僅かに外方に位置している。
このプラズマ室2には、処理容器10であるプラズマ室2の外部にガス流路を形成するための流路形成部が設けられている。流路形成部は、ガス流路の複数の端部が側方からプラズマ室2内に接続されるように設けられ、例えばガラスやセラミックなどの誘電体の管(プラズマ生成管)により構成されている。
【0014】
この例では、プラズマ生成管として、プラズマ室2の側壁21に接続される複数例えば8本の第1管4Aと、プラズマ室2の天井22に接続される例えば2本の第2管4Bと、を備えている。これら第1管4A及び第2管4Bは、
図1~
図3に示すように、中空の直管の一端側と他端側とが同じ方向に屈曲されることによってU字状に形成され、その内部がガス流路40として構成されている。
【0015】
8本の第1管4Aは、プラズマ室2の側壁21に接続されている。これら第1管4Aの両端部(一端部41、他端部42)は、
図2~
図4に示すように、プラズマ室2の周方向の異なる位置に夫々開口し、平面視で第1管4A毎の一端から他端に至る領域は、プラズマ室2の周方向に互いにずれるように配置されている。例えば8本の第1管4Aは、
図3及び
図4に示すように、プラズマ室2の側壁21の周方向の8か所の位置に、平面視で夫々の管が重ならずに、プラズマ室2の中央を介して互いに対向する4組の第1管4Aを備えるように設けられている。なお、このように第1管4Aが設けられることで、平面視で円形のプラズマ室2を二等分した一方側の領域に一つの第1管4Aの両端部が開口し、他方側の領域に別の第1管4Aの両端部が開口するという位置関係となっている。この位置関係により、後に第2、第3のプラズマ生成例として示すように、プラズマの周回路をプラズマ室の一端側と他端側とを横断するように形成することができる。
【0016】
また、
図2に示すように、各第1管4Aの一端部41及び他端部42は、プラズマ室2内の互いに異なる高さに開口するように夫々設けられている。この例では、各第1管4Aは、プラズマ室2の側壁21に対して、一端部41が基板処理室11側である下方位置に接続され、他端部42が天井22側である上方位置であって、一端部41よりも周方向にずれた位置に接続される。従って、第1管4Aは、側方から見て一端部41と他端部42とを結ぶ部位44が、夫々鉛直面及び水平面に対して傾いて伸びる部位として形成される。
【0017】
そして、当図に示すように、8本の第1管4Aは、第1管4A同士の間で、一端部41及び他端部42の高さ位置が夫々揃えられている。また、ある第1管4Aの一端部41と、これに隣接する第1管4Aの他端部42とが周方向に重ならずに並ぶように設けられている。このように8本の第1管4Aの一端部41と他端部42とは、プラズマ室2の側方に周方向に順番に並ぶように接続され、プラズマ室2内と第1管4Aの内部のガス流路40とにより周回路(第1周回路)が構成される。この第1周回路は、
図4に破線にて示すように、ある第1管4Aの他端部42からプラズマ室2を介して、隣接する第1管4Aの一端部41に至り、当該第1管4Aのガス流路40を通って他端部42からプラズマ室2に至る経路であって、8つの第1管4A及びプラズマ室2によって形成される1つの周回路である。この第1周回路を周回するプラズマの流れが形成されるように、プラズマ生成用ガスの通流と、各第1管4Aに設けられるプラズマ生成用のコイル(後述する)への電流の供給と、が行われる。
【0018】
このような第1管4Aは、プラズマ室2の側壁21に、
図5に示すように接続されている。
図5は、第1管4Aとプラズマ室2の接続構造の一例を示している。この図に示すように、プラズマ室2の側壁21に設けられる開口部23A、23Bに、第1管4Aの一端部41、他端部42が夫々差し込まれることで第1管4Aはプラズマ室2に開口する。開口部23A、23Bは側方に向けて開口し、開口方向に見て円形である。開口部23Aについては段が形成され、プラズマ室2の内側寄りの部位に比べてプラズマ室2の外側寄りの部位は拡径されることで拡径部23Cとして形成されており、拡径部23Cの径は一端部41の径よりも若干大きい。
【0019】
第1管4Aの一端から若干離れた位置に、当該第1管4Aの一端部41を囲む円環状の閉塞部251が設けられており、閉塞部251が側壁21に固定されることで、当該一端部41が側壁21に固定されている。拡径部23Cの周面と第1管4Aの一端部41の外周面との間には、第1隙間である円環状の外周隙間241が形成され、この外周隙間241は閉塞部251によってプラズマ室2の外側から塞がれている。
【0020】
また、開口部23Aの段は、第1管4Aの一端部41の先端に間隔を開けて対向する対向部26をなしている。当該一端部41の先端と対向部26との間は環状の第2隙間である対向隙間27として形成されており、対向隙間27は、外周隙間241と連通する。さらに、対向部26には、外周隙間241から対向隙間27へ流れたプラズマ生成用ガスの流れを規制する規制部28が設けられている。この規制部28は、対向部26の内周縁が第1管4Aの一端部41に向けて突出するように形成され、当該一端部41内に若干進入している。対向部26は、一端部41に対応して環状に形成されているので、一端部41の先端側には、規制部28が環状に設けられる。
【0021】
規制部28は、後述するように外周隙間241に供給されるプラズマ生成ガスが、第1管4Aの一端に向けて流れ、対向隙間27を介して第1管4A内のガス流路40に折り返されて吐出されるように、プラズマ生成ガスの流れをガイドする傾斜面を備えている。さらに詳しくは、
図5に示すように横断面視において当該傾斜面は一端部41をなす第1管4Aの奥に向うにつれて管の中心軸に向かうように伸びることで、プラズマ生成ガスの流れをガイドする。
【0022】
第1管4Aの他端から若干離れた位置に、当該第1管4Aの他端部42を囲む円環状の閉塞部252が設けられており、閉塞部252が側壁21に固定されることで、当該他端部42が側壁21に固定されている。開口部23Bの周面と第1管4Aの他端部42の外周面との間には、第1隙間である円環状の外周隙間242が形成され、この外周隙間242は閉塞部252によってプラズマ室2の外側から塞がれている。この例では、平面的に見て、他端部42の先端は、一端部41の先端よりもプラズマ室2内に近い位置に配置されている。なお、開口部23Bは、開口部23Aと異なり対向部26が形成されていない。そのため、後述するように外周隙間242に導入されるプラズマ形成ガスは、プラズマ室2へ向けて流れる。
【0023】
プラズマ室2の側壁21の外周面には、供給管51、52の下流端が接続されている。供給管51、52は側壁21に形成される流路291、292を介して外周隙間241、242に夫々開口し、プラズマ室2の外部から当該外周隙間241、242にプラズマ生成用ガスが供給される。外周隙間241、対向隙間27や、規制部28と一端部41との間の隙間は、流路291よりも狭い空間として形成されている。供給管51、52を含む第2ガス供給部5については後述する。
【0024】
第2管4Bは、プラズマ室2(処理容器10)の天井22に両端が開口するように設けられている。この例では、第2管4Bは2本設けられており、
図3に示すように、天井22の中央部に設けられた後述する第1ガス供給部7の回転機構72を挟むように配置されている。第2管4Bは、例えば第1管4Aとプラズマ室2の側壁21との接続構造と同様に、天井22に接続されている。そして、一端部41側から第2管4Bのガス流路40にプラズマ生成ガスが供給され、他端部42からプラズマ室2に向けてプラズマ生成ガスを吐出するように構成されている。
【0025】
こうして、プラズマ室2内と第2管4Bの内部のガス流路40とにより第2周回路が構成されている。この第2周回路は、
図4に一点鎖線にて示すように、一方の第2管4Bの他端部42からプラズマ室2を介して他方の第2管4Bの一端部41に至り、当該第2管4Bのガス流路40を通って他端部42からプラズマ室2に至るように周回するものである。従って、この第2周回路は、2つの第2管4B及びプラズマ室2によって形成される1つの周回路である。ウエハWを処理するにあたって、上記した第1周回路に沿ったプラズマの流れの他に、この第2周回路に沿ったプラズマの流れも形成される。なお、このように2つの第2管4Bを跨ぐプラズマの周回路を形成することには限られず、各第2管4Bにより個別の周回路が形成される構成であってもよい。
【0026】
<プラズマ形成部>
図1及び
図3に示すように、各第1管4A及び各第2管4Bには、磁性体例えばフェライトのコア61を備えたプラズマ形成部6が設けられている。なお、
図2、
図4及び
図5ではプラズマ形成部6の図示を省略している。コア61は、各第1管4A、各第2管4Bにおいて、各々のガス流路40の端部の数つまり2個設けられている。上記したように第1管4A、第2管4Bの両端部は側壁21に埋設されており、他の部位がプラズマ室2の外側に露出している。そのプラズマ室2の外側に露出する部位の両端部に、プラズマ形成部6が取付けられている。より具体的には、上記したように第1管4A、第2管4Bは、直管の両端部における部位が屈曲された構成であるが、プラズマ形成部6は、その屈曲された部位を囲むように設けられている。なお、
図3では、第2管4Bに設けられたコア61は図示を省略している。
【0027】
これらコア61は、
図3に示すように、第1管4A、第2管4Bの一部を囲むように設けられた環状体であり、この例では環状体の外縁及び内縁が平面視円形に構成されている。但し、環状体は、第1管4A、第2管4Bの形状に合わせて、その外縁や内縁を平面視楕円形や矩形に形成してもよい。また、夫々のコア61には例えば銅線よりなるコイル62が各々同じ向きにらせん状に巻回されており、各コイル62には共通の電源63から電流が供給され、第1管4A及び第2管4B内部のガス流路40に磁場を作用させるように構成されている。電源63としては、例えば100kHz~2MHzの低周波電力を出力する低周波電源が用いられる。
【0028】
コア61は、例えば環状体の一部分をなす複数の部材同士を、接着剤を用いて固定接合することにより形成され、第1管4A、第2管4Bに取付けられる。
また、この例においては、第1管4Aに設けられた各コイル62は、
図6に概略的に示すように、全て直列に接続され、電源63から電流が供給されるように構成されている。さらに詳しく述べると、直列に接続されるコイル62群の一端側が電源63に接続され、他端側がグランドに接続されている。なお、
図6では、第1管4Aに設けられた2つのコイル62を1つに纏めて描いている。さらに、第2管4Bに設けられた各コイル62も直列に電源63に接続されている。
【0029】
コイル62への電流の供給によって各管4A、4Bの周囲に磁場が発生し、プラズマ生成用ガスをプラズマ化する。その際に管路に沿って流れるプラズマ電流の方向は、磁場の向きに応じたものとなる。後述のようにプラズマ流を形成するために、プラズマ電流の流れる方向と、プラズマ生成用ガスの流れ方向とが揃えられる。各コイル62は、そのようにガスの流れ方向に揃ったプラズマ電流を形成できるように設けられている。なお、コイル62の巻回方向が変化しないとして、上記した磁場の向きはコイル62への電流の供給方向に応じて変化する。そのため、後述する実施形態で示すように、コイル62への電流の供給方向と、ガスの通流方向とを共に切り替えることで、プラズマ流の向きを変更することができる。
【0030】
<第1ガス供給部>
続いて、処理容器10に、ウエハWを処理する処理ガスを供給する第1ガス供給部7について説明する。第1ガス供給部7は、処理位置にある載置台3の上方に設けられ、処理ガスの吐出口が形成された供給部本体を備えて構成されている。この例の第1ガス供給部7は、例えば
図1及び
図7に示すように、処理容器10(プラズマ室2)の天井を貫通して鉛直方向(即ち、縦方向)に伸長すると共に、処理ガスの上流側通路を形成するシャフト71を備えている。シャフト71の上流側はプラズマ室2の天井を貫通し、プラズマ室2の外部に設けられた回転機構72に接続されており、回転機構72によりシャフト71が軸周りに回転自在に構成されている。また、シャフト71の下流側には、シャフト71から平面視で放射状に広がるように、供給部本体をなすガスノズル73が複数例えば3本設けられている。
【0031】
各ガスノズル73は、
図1に示すように、処理位置にある載置台3の表面近傍において、当該表面に沿って水平に伸びるように構成されている。従って、シャフト71を回転軸として、ガスノズル73は回転(即ち、横方向移動)する。この回転は、例えばガスノズル73からのガスの吐出と並行して行われる。ガスノズル73の内部は、シャフト71内部の上流側通路と連通する下流側通路を備えており、ガスノズル73の下面には、その長さ方向に沿って複数の孔状の吐出口74が間隔を開けて形成されている。吐出口74はスリット状に形成することもできる。
【0032】
このようなシャフト71の上流側は、バルブやマスフローコントローラを含む流量調整部75を備えた処理ガス供給路76を介して処理ガス供給源77に接続されている。こうして、処理ガス供給源77から処理ガスがシャフト71の上流側通路及びガスノズル73の下流側通路を介して供給され、吐出口74から、載置台3に載置されたウエハWに向かって吐出される。この例において第1ガス供給部7は、処理ガス供給源77、処理ガス供給路76、シャフト71、ガスノズル73を備えている。
【0033】
<第2ガス供給部>
次いで、第2ガス供給部5について、
図5を参照し、第1管4Aを例にして説明する。第2ガス供給部5は、既述の第1周回路及び第2周回路にプラズマ生成ガスを供給するものである。プラズマ生成ガスとしては、例えばアルゴン(Ar)ガス、窒素(N
2)ガス等の不活性ガスを用いることができ、
図5においてプラズマ生成ガスの流れを破線にて示している。
【0034】
この例では、
図5に示すように、第1管4Aの一端部41及び他端部42の外周隙間241、242は、夫々供給管51、52により、バルブやマスフローコントローラを含む流量調整部53(531、532)を介してプラズマ生成ガスの供給源54に接続されている。
そして、一端部41では、供給管51から外周隙間241に供給されたプラズマ生成ガスは、外周隙間241を介して対向隙間27に流れ、規制部28にてガスの流れが折り返されて、ガス流路40に向かって吐出される。この例において第2ガス供給部5は、プラズマ生成ガスの供給源54、プラズマ生成ガスの供給管51、外周隙間(第1隙間)241、対向隙間(第2隙間)27を備えている。
【0035】
既述のように、外周隙間241、対向隙間27や規制部28と一端部41との間の隙間は狭い空間として形成されているので、プラズマ生成ガスは規制部28の傾斜面によりガイドされて、ガス流路40内に大きな流速で勢いよく吐出される。このように、一端部41において、プラズマ生成ガスがガス流路40内に大きな流速で吐出されると、この吐出領域近傍で圧力が低下する。このため、プラズマ室2内の雰囲気が開口部23Aを介してガス流路40側へ引き込まれる。こうして、第1管4Aのガス流路40では、供給管51を介してプラズマ生成ガスが供給されると共に、プラズマ室2内側からもプラズマ生成ガスが入り込み、このプラズマ生成ガスはガス流路40内を他端部42に向けて流れていく。
【0036】
そして、プラズマ生成ガスは第1管4Aの他端部42からプラズマ室2に向けて吐出される。また、他端部42において、供給管52から外周隙間242に供給されたプラズマ生成ガスは、プラズマ室2へ向けて流れる。この外周隙間242から流れるプラズマ生成ガスは、他端部42からプラズマ室2に吐出されるプラズマ生成ガスの流れをアシストする役割を果たしている。
【0037】
この例では、既述のように、8本の第1管4Aは、プラズマ室2からプラズマ生成ガスが入り込む一端部41と、プラズマ室2内にプラズマ生成ガスを吐出する他端部42とが、プラズマ室2の周方向に交互に順番に並んでいる。従って、プラズマ生成ガスは、
図4に破線にて示す第1周回路に沿って、プラズマ室2を介して8つの第1管4Aを周方向に順番に通過していく。
【0038】
第2管4Bについても、一方の第2管4Bの一端部41からガス流路40に供給されたプラズマ生成ガスが当該管4Bの他端部42に向けて流れ、当該他端部42からプラズマ室2に吐出される。そして、プラズマ生成ガスは、
図4に一点鎖線にて示す第2周回路に沿って、プラズマ室2を介して2本の第2管4Bを順番に通過していく。
【0039】
<プラズマの生成例1>
このように第1周回路、第2周回路にプラズマ生成ガスを供給する一方、各第1管4A、第2管4Bに設けられたコイル62に電源63から電流を供給すると、コア61の内部、即ち第1管4A、第2管4Bの周囲を囲むように環状の磁場が生成される。そして、第1管4A及び第2管4B内に供給されたプラズマ生成ガスが、磁場によってプラズマ化し、プラズマ室2内と第1管4A、第2管4Bにより形成された第1周回路、第2周回路を周回するトロイダル型のプラズマが形成される。
【0040】
既述のように、8本の第1管4Aの夫々に設けられたコイル62が直列に電源63に接続されると共に、プラズマ生成ガスが8本の第1管4Aを周方向に順番に通過するように供給され、プラズマ電流の流れる方向と、プラズマ生成用ガスの流れ方向とが揃えられる。従って、プラズマは、
図8に実線にて示すように、プラズマ生成ガスの流れと同様に、8本の第1管4Aを周方向に順番に通過していく。こうして、プラズマ室2から見ると、第1管4Aの他端部42がプラズマ室2へのプラズマの入口、一端部41がプラズマ室2からのプラズマの出口となるように、第1周回路を周回していく。
【0041】
第2周回路においても、同様にプラズマ室2の天井22の下方側にてトロイダル型のプラズマが生成される。このプラズマは、プラズマ生成ガスの流れと同様に2本の第2管4Bを通過していき、第2周回路を周回していく。こうして第1周回路及び第2周回路にて生成されたプラズマには、高エネルギーイオンや低エネルギーイオン、ラジカル、中性粒子、電子が含まれている。
【0042】
<区画部>
図1に戻って基板処理装置1の説明を続けると、処理容器10には、上方領域であるプラズマ室2と下方領域である基板処理室11とを区画する区画部17が設けられている。この区画部17は、例えば導電部材により構成され、プラズマ室2と基板処理室11とを連通させる連通路18を備えている。この例の区画部17は、処理位置にある載置台3の表面と対向する平面視円形状の水平部171と、水平部171の外縁から下方に向けて外方に広がる傾斜部172と、を備え、略円錐台形状に構成されている。
【0043】
水平部171及び傾斜部172の全面には、連通路18をなす多数の孔が設けられている。水平部171はガスノズル73よりも上方側に位置し、水平部171の中央にはシャフトが貫通する貫通孔173が形成されて、シャフト71が回転できるように構成されている。また、傾斜部172の下端は、例えばプラズマ室2と基板処理室11との境界にある処理容器10の内壁近傍まで延びると共に、ガスノズル73の先端の上方近傍に位置している。
【0044】
この区画部17はイオントラップとして用いられるものである。プラズマに含まれるイオンは、ウエハに成膜される膜や下地に対して、電気的ダメージや、高速に移動して衝突することによる物理的ダメージを発生させるおそれがある。区画部17を設けて、イオンをこの区画部17に衝突させて基板処理室11への供給を阻害することにより、上記の各ダメージの発生が抑制される。区画部17は、略円錐台形状に構成されているので、プラズマと接触する表面積が大きくなり、イオンを効率よくトラップすることができる。なお、区画部17としては導電部材に限られず、セラミックやガラス等の誘電体材料により構成してもよい。
【0045】
<制御部>
図1に示すように、基板処理装置1は、当該装置1を構成する各部の動作を制御する制御部100を備えている。この制御部100は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には、後述する成膜処理やエッチング処理、クリーニング処理などの処理を行うために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード、不揮発性メモリ等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0046】
<基板処理方法の第1例>
続いて、以上に説明した構成を備えた基板処理装置1にて実施される基板処理方法の第1例として、CVD(chemical vapor deposition)法にて実施される成膜処理について説明する。
この例では、処理容器10の内部を排気して真空雰囲気に減圧した後、図示しない外部の搬送機構と支持ピン33との協働作業により、受け渡し位置にある載置台3上にウエハWを載置し、載置台3を処理位置に移動する。
【0047】
次いで、第1ガス供給部7から処理ガスである成膜ガスを供給する。第1ガス供給部7では、回転機構72によりシャフト71を軸回りに回転させながら、ガスノズル73の吐出口74から成膜ガスを載置台3上のウエハWに向けて吐出する。
一方、第2ガス供給部5から、第1管4A及び第2管4Bにプラズマ生成ガスを供給し、第1管4A及び第2管4Bに設けられた各コイル62に電源63から電流を供給して、これら管4A、4Bのガス流路40に磁場を作用させる。そして、既述のようにプラズマ生成ガスをプラズマ化して、第1周回路及び第2周回路を流れるプラズマを形成する。
【0048】
第1周回路及び第2周回路にて生成されるプラズマには、既述のようにイオンや電子、ラジカル、中性粒子が含まれる。上記のようにこれらの成分はプラズマ流を形成するが、一部はこの流れから外れてプラズマ室2を下降する。このプラズマの成分のうちラジカル及び中性粒子は、電場や磁場の影響を受けにくいため、比較的多くの量が下降すると推察される。そして区画部17を通過したプラズマの各成分は基板処理室11を拡散し、載置台3に載置されたウエハWに到達する。そして、ガスノズル73から供給され、ウエハWの近傍に拡散している成膜ガスにラジカル等が衝突し、エネルギーを与えて、ウエハW表面あるいは気相での化学反応を誘発し、ウエハWに膜が成膜される。このようにして、ウエハWに対してCVD法による成膜処理が実施される。
【0049】
<基板処理方法の第2例>
続いて、基板処理方法の第2例として、ALD(Atomic Layer Deposition)法による成膜処理について説明する。この例が第1例と異なる点は、第1ガス供給部7のガスノズル73から供給される処理ガスが原料ガスであり、第1管4A及び第2管4Bにプラズマ生成ガスとして前記原料ガスと反応する反応ガスを供給することである。反応ガスとしては、例えば酸素(O2)ガス、あるいは水素(H2)ガスを用いることで、原料ガスに含まれる成分について、酸化あるいは還元反応を起こし、成膜することができる。なお、ガスノズル73からは、基板処理室11をパージするための不活性ガスの供給も行えるように、シャフト71に接続される流路を構成する。
【0050】
そして、ガスノズル73からの原料ガスの供給→ガスノズル73からの不活性ガスの供給によるパージ→プラズマ室2における各隙間からの反応ガスの供給→ガスノズル73からの不活性ガスの供給によるパージからなるサイクルを繰り返す。このサイクル中で、反応ガスの供給を行う際には、第1例と同様にプラズマを形成し、プラズマ化した反応ガスをウエハWに供給する。以上のように基板処理装置1はCVDを行う成膜装置及びALDを行う成膜装置のうちのいずれとしても用いることができる。
【0051】
このような実施形態によれば、処理容器10内と、処理容器10に側方から接続されるガス流路40とにより周回路を構成し、コイル62が巻回されたコア61によりガス流路40に磁場を作用させて、トロイダル型の誘導結合プラズマ(ICP)を生成している。基板処理装置1ではこのICPを生成するにあたり、低周波電力を利用することで整合器を必要とせず、装置構成の簡略化が図られている。
【0052】
上記の整合器に関して補足して説明する。従来のICPを用いる成膜装置としては、処理容器の上部壁にICPコイルを設けた装置が知られている。このような装置では一般的に、コイルのインダクタンスを低く抑える代わりに、大電流を供給することでプラズマを生成している。そのように大電流を供給することから、例えば13.56MHzなどの高周波電力を印可する必要があるが、ICPコイルに高周波電力を印可すると、電力の伝送経路で、反射波などの不要なエネルギーも生成してしまう。この不要な反射波などを除去するために整合器が必要とされる。
また、このような大電流を供給する装置においては、導電路における電極の金属表面が表皮効果により発熱し、エネルギー損失の要因となっている。
【0053】
一方、本開示の基板処理装置1ではトロイダル型のプラズマ生成を行う構成とされ、コイル62についてはコア61に巻回するように設けられることで、少ない電流で第1管4A、第2管4Bの周囲に比較的強い磁場を形成することができる。そして、そのコイル62及びコア61からなるプラズマ形成部6については、1つのガス流路40に対して、その端部の数と同じ2つ(即ち端部の数以上の数)が設けられ、ガス流路40の異なる位置でプラズマの生成がなされる構成とされている。そのため、各コイル62に供給する電流を抑えつつ、プラズマの生成量が不足することが防止される。それ故に基板処理装置1については、低周波電力でのプラズマの生成を可能として、上記した整合器が不要な構成とし、且つ発熱によるエネルギー損失について抑制することができる。なお、特許文献1、特許文献2には、トロイダル型のプラズマを生成するにあたり、1つのガス流路に1つのみのコイルを備える構成が記載されているが、この場合には、プラズマの十分な生成量を確保するためにコイルに大電流を供給することが必要と考えられ、当該特許文献1、2の装置には整合器が設けられている。
【0054】
また、上記した従来のICPコイルを用いる成膜装置では、プラズマを形成するためにプラズマとコイルとの間の容量結合を低減させることを目的としてファラデーシールドを設ける構成とされるが、コイルに供給する電流が比較的小さいとこの容量結合は起こりにくい。従って、当該ファラデーシールドについて、基板処理装置1では設けなくてよい。
【0055】
さらに、第1管4Aは、そのガス流路40の両端部が側方からプラズマ室2内に接続されるように設けられているので、ガス流路40の両端部が、載置台3に載置されたウエハWと対向しない。従って、ガス流路40の他端部42からプラズマがプラズマ室2に入り込んだときに、ウエハWに対しては平面視側方からプラズマが供給されることになり、プラズマに含まれる高エネルギーイオンがウエハWに到達するリスクを低減することができる。
【0056】
さらにまた、第1管4Aの一端部41及び他端部42において、プラズマ室2へのプラズマの入口となる他端部42は、一端部41よりも高い位置に開口するように形成されている。従って、プラズマ室2には、載置台3上のウエハWの側方において、より離れた位置からプラズマが入り込むため、プラズマに含まれる高エネルギーイオンがウエハWに到達するリスクをより低く抑えることができる。
【0057】
また、この例では、プラズマ室2の天井に第2管4Bを設け、プラズマ室2内と第2管4Bとにより形成される第2周回路にプラズマを生成している。プラズマ室2内と第1管4Aとにより形成される第1周回路では、プラズマ室2の側壁21側にプラズマが生成する。従って、第2周回路にてプラズマ室2の中央部にてプラズマを生成することで、第1周回路にて生成されたプラズマを補うことができ、プラズマの密度分布の面内均一性を改善することができる。
【0058】
なお、第2管4Bの両端部はプラズマ室2の天井22に設けられ、ウエハWと対向する位置に開口しているが、第2管4Bがプラズマ室2に開口する開口端は、第1管4Aの開口端よりも上方に位置しており、第1管4AよりもウエハWから離れている。従って、第2管4Bにより発生するプラズマに含まれる高エネルギーイオンがウエハWに到達するリスクは小さいと考えられ、第1管4Aによるプラズマ生成をアシストするために、第2管4Bを設けることは有効である。
【0059】
また、基板処理装置1は、従来のICPコイルを用いる成膜装置とは異なり、処理容器の上部壁においてICPコイルを設ける必要が無い。そのようにコイルが不要なことで上部壁の上方に形成されるスペースを利用して、回転機構72を設けて処理容器10内ガスノズル73を回転させて、ウエハWの表面全体にガスが供給される。
【0060】
ウエハWの表面全体にガスを供給するために、成膜装置はシャワーヘッドを備える構成とされる場合が有り、そのようなシャワーヘッドがプラズマ室2と基板処理室11との間に設けられていてもよい。しかし、シャワーヘッドは平面視での面積が比較的大きいため、プラズマ室2から基板処理室11に向かうラジカル等の移動が妨げられてしまうおそれが有る。これに対して、回転機構72によって回転するガスノズル73がプラズマ室2と基板処理室11との間に設けられることは、ガスノズル73の平面視での面積を比較的小さなものとし、上記のラジカル等の移動について、妨げられ難くすることができる。
【0061】
つまり、基板処理装置1では、ウエハWの表面全体にプラズマ化されないガスの供給を行う一方で、プラズマを効率良くウエハWに供給することによる処理効率の向上を図ることができる。さらに、シャワーヘッドを設ける必要がないことで、イオントラップをなす区画部17について、設置可能なスペースの高さを比較的大きくすることができる。そのため、既述したように区画部17については、上面の高さが周方向の異なる位置で異なるように形成することができる。そのため、表面積を比較的大きなものとし、トラップ効率を高くすることができる。
【0062】
<基板処理装置の第2実施形態>
上述の第1実施形態においても、プラズマ形成部6を備えた第1管4A(第2管4B)にてプラズマを生成しているため、プラズマ室2に接続する第1管4A(第2管4B)の数や、第1管4Aの端部の接続部位を変えることにより、周回路の形状を変え、プラズマの流れを調整することができる。さらに、コイル62の銅線の巻き方や巻き数を変えることにより、プラズマ室2内にて形成されるプラズマの密度の調整を行うことができる。
【0063】
これに対して、本実施形態は、1つの装置において、処理に応じて、プラズマ室2にて生成されるプラズマの生成状態を制御できるように構成したものである。このため、この実施形態では、第1周回路におけるプラズマの流れ方向を切り替えるために、第1管43のガス流路においてプラズマ生成ガスが吐出される方向と、第1管43に設けられたプラズマ形成部6にて電流が流れる方向と、を切り替える切替え機構を備えている。
【0064】
この例の第1管43は、
図10Aに一例を示すように、第1管43の一端部411及び他端部421が、いずれも
図5に示す第1管4Aの一端部41と同様に、外周隙間(第1隙間)241、対向部26、対向隙間(第2隙間)27及び規制部28を備えるように構成される。また、一端部411及び他端部421の外周隙間241は、供給管51A、51Bにより、夫々切替えバルブ551、552を介してプラズマ生成ガスの供給源54に接続されている。
【0065】
こうして、切替えバルブ551、552により、第1管43の一端部411及び他端部421に対するプラズマ生成ガスの供給先を切り替えることによって、各第1管43のガス流路430において、夫々プラズマ生成ガスが吐出される方向を切り替えることができる。
つまり、プラズマ生成ガスの供給先を一端部411に設定すれば、当該ガス流路430では、一端部411から他端部421へプラズマ生成ガスが流れ、他端部421からプラズマ室2にプラズマ生成ガスが吐出される。一方、プラズマ生成ガスの供給先を他端部421に設定すれば、当該ガス流路430では、他端部421から一端部411へプラズマ生成ガスが流れ、一端部411からプラズマ室2にプラズマ生成ガスが吐出される。
【0066】
また、この例の第1管43に設けられたプラズマ形成部6は、夫々のコイル62の両端の内、電源63に接続される側と、接地される側(グランドに接続される側)とが、例えば
図10Bにコイル62の一部(621、622)を用いて簡略化して示すように、スイッチよりなる切替え部60にて切替えられるように構成されている。
図10Bにおいては、コイル621、622が直列に電源63に接続される例において、当図(a)では、コイル622が電源63、コイル621がグランドに夫々接続され、当図(b)では、コイル621が電源63、コイル622がグランドに夫々接続されるように切替え部60にて切り替えられている。また、当図では電流の流れ方向を矢印して示している。
【0067】
さらに、切替え部60は、
図14にスイッチ64の一部(641~644)を示すように、各コイル62と電源63とを接続するスイッチ64も備えており、各第1管43のコイル62のうち、選択されたコイル62に電流を供給することができる。こうして、コイル62毎に電流の流れ方向及び、各コイル62の接続の仕方が切り替えられるようになっている。電流の流れ方向を変えることによる磁場の向きの変化と、プラズマ生成ガスの流れ方向と、を切り替えることにより、プラズマの流れ方向を制御することができる。この例では、切替えバルブ551、552と切替え部60とにより、切り替え機構が構成されている。その他の構成については、第1実施形態と同様に構成されており、同じ構成部材については同符号を付し、説明を省略する。
【0068】
<プラズマの生成例2>
このようにこの実施形態では、切替え機構によりプラズマの流れ方向を切り替えることができ、
図11~
図13を用いて、プラズマの生成例2について説明する。この生成例2は、処理容器10内にて平面的に見て、プラズマがウエハWの直径近傍にてウエハWの一端側から他端側に横断するように形成される例を示している。
【0069】
図11は、第1管43(431~438)のコイル62の接続状態を、
図12及び
図13はプラズマ室2内におけるプラズマの流れ方向を実線にて夫々している。
図12及び
図13に示すプラズマの流れ方向とプラズマ生成ガスの流れ方向とは同じであり、
図12においては、破線にてウエハWを示している。
図12に示すように、ウエハWの直径の一端側と他端側に対向する2つの第1管431、435については、一端部411がプラズマ室2へのプラズマの入口、他端部421がプラズマ室2からのプラズマの出口となるように、切替えバルブ551、552が切り替えられる。そして、残りの第1管432、433、434、436、437、438については、一端部411がプラズマの出口、他端部421がプラズマの入口となるように、切替えバルブ551、552が夫々切り替えられる。
【0070】
また、各第1管43(431~438)に設けられたコイル62については、
図11に示すように、第1管431、435の各コイル62を直列(コイル群1)、第1管432、433、434の各コイル62を直列(コイル群2)、第1管436、437、438の各コイル62(コイル群3)を直列に夫々接続する。そして、これらコイル群1、2、3を並列に電源63に接続する。従って、コイル群1、2、3の各一端側が電源63に、他端側がグランドに接続されている。
【0071】
これにより、
図12及び
図13に示すように、プラズマ室2内と第1管432、433、434のガス流路430とにより周回路1、プラズマ室2内と第1管436、437、438のガス流路430とにより周回路2、プラズマ室2内と第1管431のガス流路430により周回路3、プラズマ室2内と第1管435のガス流路430により周回路4が夫々形成される。そして、夫々の周回路1~4に沿って、プラズマ化されたプラズマ生成ガスが流れていく。周回路1、2では、夫々ウエハWの直径近傍をウエハWの一端側から他端側に横断するようにプラズマが形成される。つまり、本例では第1管43によってウエハWの中心部上にもプラズマ流が形成される。そのようにプラズマ流を形成することによって、ウエハWの処理の面内均一性についての向上が図られている。
【0072】
ところで、プラズマ室2における周回路1、2のプラズマの経路としては比較的長い。しかし、周回路1、2のプラズマの出口と、周回路3、4のプラズマの出口は夫々平面視で隣接しているので、周回路3、4を形成することにより、周回路1、2におけるプラズマの流れがアシストされる。具体的に説明すると、例えば周回路2の第1管438からプラズマ室2の一端に放出されたプラズマ流を構成するラジカル等の成分は、第1管431のプラズマ流に付勢されてプラズマ室2を他端に向けて流れる。そして、その他端付近でさらに第1管435のプラズマ流に付勢されて第1管436へと流れる。周回路1のプラズマ流を構成する成分も同様に、第1管431、435のプラズマ流によって付勢される。従って、周回路1、2のプラズマ流を構成する成分がプラズマ室2を移動中に過剰に下降してしまうことが起きることが防止されるため、ウエハWに対するプラズマ処理の面内均一性の向上を図ることができる。
【0073】
<プラズマの生成例3>
続いて、
図14~
図16を用いて、プラズマの生成例3について説明する。この例では、切替え機構により8本の第1管43(431~438)の内の選択された管にプラズマの流れが形成される。そして、例えば選択された管を切替えるように、電源63からコイル62への電流の供給先が例えば設定された時間毎に切替えられるように構成されている。
【0074】
図14は、第1管43(431~438)のコイル62の接続状態を示し、
図15及び
図16はプラズマ室2内におけるプラズマの流れ方向を実線にて夫々示す。
図15及び
図16に示すプラズマの流れ方向とプラズマ生成ガスの流れ方向とは同じであり、
図15においては、破線にてウエハWを示している。
図15に示すように、ウエハWの直径の一端側と他端側に対向する2つの第1管432、436がプラズマ生成ガスの供給先として選択され、夫々一端部411がプラズマ室2からのプラズマの出口、他端部421がプラズマ室2へのプラズマの入口となるように、切替えバルブ551、552が切り替えられる。そして、残りの第1管431、433、434、435、437、438については、プラズマ生成ガスの供給は停止される。
【0075】
また、各第1管43(431~438)に設けられたコイル62は、
図14に示すように、電源63にスイッチ64(641~644)を介して接続される。具体的には、第1管431、435の各コイル62を直列にスイッチ641を介して電源63に接続し、第1管432、436の各コイル62を直列にスイッチ642を介して電源63に接続する。また、第1管433、437の各コイル62を直列にスイッチ643を介して電源63に接続し、第1管434、438の各コイル62を直列にスイッチ644を介して電源63に接続する。この例では、スイッチ642のみが電源63に接続されている。そして、直列接続されるコイル62について、電源63に接続される側とは逆側は、グランドに接続される。
【0076】
このように、選択された第1管432、436に対してプラズマ生成ガスと、コイル62への電流が夫々供給される。これにより、
図15及び
図16に示すように、プラズマ室2内と第1管432、436とにより周回路が形成され、ウエハWの直径近傍をウエハWの一端側から他端側に横断するようにプラズマが形成される。そして、例えば切替えバルブ551、552によりプラズマ生成ガスの供給先と、スイッチ64により電流の供給先を夫々例えば時計回りに切り替えることにより、前記ウエハWを横断するプラズマが時計回りに回転するように形成される。
また、既述のプラズマの生成例2においても、プラズマ生成ガスの供給先やコイルにて電流が流れる方向を、例えば時計回りに切り替えるようにしてもよい。
【0077】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果が得られる他、1つの基板処理装置1にてプラズマ室2内におけるプラズマの生成状態を制御できるため、プラズマ密度分布、ウエハWの処理の面内均一性などの制御に役立たせることができる。
なお、以上のプラズマの生成例2及びプラズマ生成例3では、端部が側方を向く第1管によってウエハWの中心部上にプラズマ流を形成することができるので、第1実施形態で示した端部が下方を向く第2管4Bによるプラズマ流の形成を行わなくてもよい。そのように第1管のみによってプラズマ流を形成することで、下方に向かうイオンの量を低減させ、イオンがウエハWに与えるダメージを、より確実に抑制することができる。
【0078】
<基板処理装置の第3実施形態>
続いて、基板処理装置の第3実施形態について、
図17、
図18を参照して説明する。この実施形態は、2本の第1管8(81、82)にて、プラズマ室2の外部にガス流路810、820を形成する構成例である。この例では、平面的に見て、プラズマ室2において、一方の第1管81の両端部811、812が、他方の第1管82の両端部821、822と夫々対向する位置に設けられ、夫々の第1管81、82の端部近傍にプラズマ形成部6が設けられている。その他の構成については、第1実施形態と同様に構成されており、同じ構成部材については同符号を付し、説明を省略する。
【0079】
この構成では、プラズマ室2内と第1管81とにより周回路が形成されると共に、プラズマ室2内と第1管82とにより周回路が形成されている。そして、プラズマ生成ガスの供給先と、コイル62にて電流が流れる方向を切り替える不図示の切替え機構を備えている。
図17、
図18では、点線にてプラズマ生成ガスの供給先、実線にてプラズマの流れを夫々示している。ここでは、説明の便宜上、プラズマ室2から第1管81、82を見たときに、第1管81、82の右側の端部を一端部811、821、左側の端部を他端部812、822とする。
【0080】
図17では、第1管81の一端部811、第1管82の他端部812にプラズマ生成ガスが図示しない供給管から供給され、プラズマガスは、第1管81のガス流路810では一端部811から他端部812に向けて流れ、第1管82のガス流路820では他端部822から一端部821に向けて流れる。
【0081】
一方、
図18では、第1管81の他端部812、第1管82の一端部821にプラズマ生成ガスが供給されるように供給先が切り替えられている。これにより、プラズマガスは、第1管81のガス流路810では他端部812から一端部811に向けて流れ、第1管82のガス流路820では一端部821から他端部822に向けて流れる。そして、
図17と
図18とでは、プラズマ形成部6のコイル62への電流の流れる方向が反対になるように、各コイル62と電源63との接続が切り替えられている。
このように、切替え機構により、プラズマ生成ガスの供給先と、コイルにて電流が流れる方向を切り替えることによって、
図17、
図18に示すように、プラズマの生成状態を調整することができる。
【0082】
<基板処理装置の第4実施形態>
続いて、基板処理装置の第4実施形態について、
図19を参照して説明する。この実施形態は、第1管83、84に分岐が設けられ、当該第1管83、84が2つ以上の端部この例では3つの端部を備える構成例である。ここでは、2本の第1管83、84にて、プラズマ室2の外部に夫々ガス流路830、840を形成する場合について説明する。この例では、プラズマ室2において、平面的に見て、一方の第1管83の3つの端部が、他方の第1管84の3つの端部と夫々対向する位置に設けられており、夫々の第1管83、84は端部毎に、プラズマ形成部6を備えている。その他の構成については、第1実施形態と同様に構成されており、同じ構成部材については同符号を付し、説明を省略する。
【0083】
この例においては、プラズマ室2内と第1管83のガス流路830とにより周回路が形成されると共に、プラズマ室2内と第1管84のガス流路840とにより周回路が形成されている。そして、プラズマ生成ガスの供給先と、各プラズマ形成部6のコイル62にて電流が流れる方向を切り替える不図示の切替え機構を備えている。こうして、プラズマ生成ガスの供給先と、コイル62にて電流が流れる方向を切り替えることにより、
図19に実線にて示すようなプラズマの流れや、一点鎖線にて示すようなプラズマの流れを形成することができる。
【0084】
<基板処理装置の第5実施形態>
続いて、基板処理装置の第5実施形態について、
図20、
図21を参照して説明する。この実施形態は、本開示を、縦型の処理容器9内にて、複数の基板に対して一括して処理を行う装置に適用した例である。この例においては、処理容器9内には、ウエハWが多段に載置される載置台をなすウエハボート91が処理容器9の下端から搬入出自在に設けられている。
【0085】
また、処理容器9の外部にガス流路90を形成するプラズマ生成管92が、処理容器9の側壁93に沿って縦方向に伸びるように設けられる。このプラズマ生成管92のガス流路90は3つの端部921、922、923を備え、これら端部921、922、923が処理容器9の側壁93に接続されている。こうして、処理容器9内とプラズマ生成管92のガス流路90とにより周回路が形成され、プラズマ生成管92の端部921、922、923近傍には夫々プラズマ形成部6が設けられている。図中94は、処理容器9内に処理ガスを供給するための第1ガス供給部をなすガスノズルである。プラズマ形成部6など、第1実施形態と同様に構成された部材については同符号を付し、説明を省略する。
【0086】
そして、図示しない第2ガス供給部から周回路にプラズマ生成ガスが供給され、各プラズマ形成部6のコイル62に電源63から電流が供給される。さらに、ガス流路90においてプラズマ生成ガスが吐出される方向を切替えられると共に、各プラズマ形成部6においてコイル62にて電流が流れる方向を切り替えられるように、不図示の切替え機構を備えている。
【0087】
図20、
図21では、破線にてプラズマ生成ガスの供給先を示し、実線にてプラズマの流れを示している。これらの図において、説明の便宜上、プラズマ生成管92の3つの端部921、922、923を上端部921、中端部922、下端部923とする。
図20では、プラズマ生成管92の下端部923にプラズマ生成ガスが図示しない供給管から供給される。このプラズマ生成ガスは、ガス流路90内を下端部923から中端部922、上端部921に向けて流れ、中端部922、上端部921から処理容器9内に吐出される。
【0088】
一方、
図21では、プラズマ生成管92の上端部921、中端部922にプラズマ生成ガスが図示しない供給管から供給される。このプラズマ生成ガスは、ガス流路90内を上端部921、中端部922から下端部923に向けて流れ、下端部923から処理容器9へ吐出される。
そして、
図20と
図21とでは、各プラズマ形成部6のコイル62への電流の流れる方向が夫々反対になるように、各コイル62と電源63との接続が切り替えられている。このように、切替え機構により、プラズマ生成ガスの供給先と、コイルにて電流が流れる方向を切り替えることにより、
図20、
図21に示すように、プラズマの生成状態を調整することができる。
【0089】
このような第3~第5実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる他、既述のように、1台の基板処理装置1において、処理に応じて処理容器10、9内におけるプラズマの生成状態を調整することができる。
【0090】
<基板処理方法の第3例>
以上において、本開示は成膜処理には限定されず、ウエハWに形成された膜のエッチングを行うエッチング装置や、プラズマ化された改質ガスにより、当該膜の改質を行う改質処理を行う改質装置に適用することもできる。
図1の基板処理装置1で、これらの処理を行うものとして例示する。先ず、エッチング処理について、ウエハW表面に形成されたガリウムヒ素膜(GaAs膜)に対して原子層エッチング(Atomic Layer Etching)処理を行う例を示す。このエッチングでは、基板処理室11に、ガスノズル73からエッチャントガスを供給し、載置台3上のウエハ表面に形成されたGaAs膜に吸着させる。エッチャントガスとしては、塩素(Cl
2)ガス、塩化水素(HCl)ガスなどの腐食性ガスを用いることができる。そして、第2ガス供給部5からArガスなどのプラズマを形成するガス(活性化ガスとする)をエッチャントガスが吸着されたウエハWに供給し、エッチャントを活性化して、膜の表層をエッチングする。
【0091】
さらに、処理を具体的に述べると、上記したALDによる成膜処理において、原料ガスの代わりにエッチャントガスを、反応ガスの代わりに活性化ガスを供給し、エッチャントガス→パージガス→活性化ガス→パージガスからなるサイクルを繰り返し行うことで、所望のエッチング量とすることができる。従って、ガスノズル73からはエッチャントガス、パージガスを夫々供給し、プラズマ室2においては活性化ガスのプラズマ化を行うことでウエハWに処理を行えばよい。なお、GaAs膜のエッチングを例示したが、同様にして所望の膜をエッチングすることができる。エッチャントガスや活性化ガスは、膜に応じて適宜選択すればよい。
【0092】
続いて、改質処理の例を挙げると、例えば、基板処理装置1とは別の成膜装置において、塩素を含む成膜ガスによってSi膜が形成されたウエハWを基板処理装置1に搬送する。基板処理装置1では、水素(H
2)ガスのプラズマをSi膜に供給し、Si膜中に含まれる塩素を水素プラズマと反応させて除去し、改質する。ところで
図1等で述べた各例では、ガスノズル73から処理ガスとしてプラズマ化されないガスをウエハWに供給する構成であった。即ち、処理ガスとプラズマ生成用ガスとが別々のガスであったが、この改質処理の例では、プラズマ生成用ガスであるH
2ガスが処理ガスでもあり、プラズマ生成ガスを供給する第2ガス供給部はウエハWの処理ガスを供給する第1ガス供給部を兼用している。以上のように、処理ガスとプラズマ生成用ガスとは別々のガスであることに限られない。そして、プラズマ化されないガスを供給するガスノズル73については、設けられない装置構成としてもよい
【0093】
<基板処理方法の第4例>
さらに、本開示はウエハWに対する処理には限定されず、処理容器内に対する処理に適用してもよい。処理容器内に対する処理としては、クリーニング処理を例示できる。例えば基板処理室11に、ガスノズル73から成膜ガスを供給し、載置台3上のウエハ表面に対して例えば熱CVDにより成膜を行う。こうして、複数枚のウエハWに対して成膜処理を実施した後、処理容器10内に対してクリーニング処理を実施する。クリーニングガスとしては例えばNF3ガス、CLF3ガスなどの腐食性ガスを用い、第2ガス供給部5から供給される。
【0094】
処理容器10内にウエハWが格納されていない状態で、プラズマ室2にこのクリーニングガスによるプラズマを生成する。このクリーニングガスのプラズマは区画部17を介して処理容器10内に拡散し、処理容器10内に付着した膜や副生成物と接触して、当該膜や副生成物を処理容器10から剥離させる。剥離した膜や副生成物を含むクリーニングガスは、排気機構16による排気に伴い、排気口14を介して処理容器10の外部へ排出される。以上のようにプラズマ室2で生成するプラズマについて、ウエハWに対する処理には用いられずに処理容器10に対する処理に用いられるように装置が運用されてもよい。なお、基板処理方法の第3例、第4例で述べた各プラズマの形成については、第1実施形態で説明したようにプラズマ室2及び第1管、第2管への各ガスの供給と、各コイル62への電流の供給とによって行えばよい。
【0095】
以上において、処理容器10の外部にガス流路を形成する流路形成部は、ガス流路の複数の端部が側方から処理容器内に接続される構造であればよい。例えばプラズマ室2の側方に、ガス流路が形成されたブロック状の部材を接続してもよい。
また、コイル62が巻回されたコア61からなるプラズマ形成部6は、ガス流路40、90等に対して、ガス流路40の端部の数よりも多い数を設けるようにしてもよい。例えばガス流路90は縦長であり、
図20に示した例では横方向に伸びる部位のみにプラズマ形成部6を設けているが、縦方向に伸びる部位にもプラズマ形成部6を設ける。そのようにすることで、ガス流路90をプラズマが移動中にエネルギーが失われ、ウエハWに対する作用が低下することを防止する。つまり、エネルギーの弱いところにアシストするようにプラズマ形成部6を設けることにより、プラズマを効率よく維持できる。
【0096】
さらに、コイル62が巻回されたコア61は、流路形成部をなす管において、処理容器10の外側に露出する部位の一端部と他端部との間の位置に設けるようにしてもよい。従って、
図2に示す第1管4Aの縦方向に伸びる部位や第2管4Bの横方向に伸びる部位に、プラズマ形成部6を設けてもよい。
また、コア61は管を囲む環状体には限られず、棒状のコアにコイルを巻回してトロイダルコアトランスを構成するようにしてもよい。例えば上記したように流路をブロックにより構成した場合には、そのブロックの近傍に棒状のコアを配置し、流路にプラズマを形成すればよい。ただし環状体とすることで磁束がこの環状体の環に沿って形成され、管の周囲における磁場の強度を大きくすることができる。既述したように低周波を用いてプラズマを生成するにあたり、プラズマの強度を十分なものとするために、コア61は、このように環状体にすることが好ましい。
【0097】
さらにまた、第1管4Aの一端部と他端部とは、処理容器10内の互いに同じ高さに開口するように設け、第1管4Aが水平に伸びる部位を備えるように構成してもよい。また、第2管4Bを設けることにより、処理容器10の中央部のプラズマ密度の制御が容易になるが、第2管4Bは必ずしも設ける必要はない。
さらに、
図5にて説明した第1管4Aでは、他端部42の先端側において、ガス流路40の周囲に外周隙間(第1隙間)242が形成されているが、この外周隙間242にガス流路40を通流するプラズマ生成ガスとは異なる種類のガスを供給するようにしてもよい。例えば、ガス流路40にプラズマ生成ガスとして不活性ガスを供給し、外周隙間242にALD法にて用いられるH
2ガス、O
2ガスや、クリーニングにて用いられるNF
3ガス、ClF
3ガスを供給するようにしてもよい。
【0098】
また、イオントラップとして機能する区画部17は、載置台3に対向するように配設ける構成には限らず、処理容器10内の側壁に沿って設けるようにしてもよいし、処理容器10に開口するガス流路40の端部41、42近傍に、当該端部41、42から吐出されるプラズマと接触するように配置してもよい。また、ガス流路40の端部41、42を覆うように設けてもよいし、プラズマの周回路に沿って設けるようにしてもよい。さらに、区画部17の形状は、円錐台形状、半球形状、多角面形状にすることで、プラズマと接触する面積を大きくすることができるが、円板形状に構成してもよい。さらにまた、イオントラップをなす区画部17をメッシュ状や網状の構造体、エキスパンドメタルや多孔性焼結材などで構成することにより、ラジカル等を通過させる連通路を備える構成としてもよい。このように区画部17の材質や形状を工夫することによって、プラズマに含まれる高エネルギーイオンはトラップして除去し、処理に適したエネルギーのイオンやラジカルのみを連通路18を通過させて、ウエハWや処理容器10の処理に用いることができる。但し、ウエハWや処理容器10、9に対するプラズマ処理によっては、必ずしも区画部17は設ける必要はない。
【0099】
さらに、第1ガス供給部は、処理容器内に処理ガスを供給する構成であれば上述のガスノズル73の例には限らない。また、第1ガス供給部に設けられたシャフトと、吐出口を備える供給部本体は、シャフトを多重円筒管により構成し、複数のガスを切り替えて供給部本体に導入できるようにしてもよい。上述の例では、シャフトから平面視で放射状に広がるように複数の供給部本体を設けたが、シャフトに接続される供給部本体は1本でもよい。さらに、シャフトを回転させる回転機構を設けず、代わりにシャフトを横方向に直線移動させることで供給部本体であるガスノズル73を直線移動させてもよい。また、そのように吐出口を備える供給部本体について、移動させない構成でもよく、既述したシャワーヘッドを設けて、ウエハWにガスを供給してもよい。
【0100】
第2ガス供給部は、処理容器10内とガス流路とにより形成される周回路にプラズマ生成ガスを供給する構成であればよく、上述の実施形態には限定されない。上述の構成では、プラズマ生成ガスを第1管4Aの一端部41に、プラズマ室2の側壁21を介して供給するようにしたが、この例には限らない。第1管4Aの一端にプラズマ生成ガス供給用の管を接続することで、周回路へのガスの供給を行ってもよい。
【0101】
ところで、コイル62に電流を供給するにあたって低周波電力を出力する電源63を用いることが望ましく、高周波電源及び整合器を用いないことの利点を述べたが、高周波電源及び整合器を用いることを禁ずるものではなく、整合器を介して高周波電源から高周波をコイル62に供給してプラズマを形成してもよい。なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更、組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0102】
W 半導体ウエハ
1 基板処理装置
10、9 処理容器
40 ガス流路
41、42 端部
5 第2ガス供給部
61 コア
62 コイル
63 電源
7 第1ガス供給部